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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162006
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ロータの製造方法及びロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241114BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077124
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本間 大介
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】磁石の冷却性を高めることができるロータの製造方法及びロータを提供する。
【解決手段】ロータの製造方法は、第1型22と第2型23との間に複数の磁石収容孔15を有するコア13を配置するとともに各磁石収容孔15に磁石17を収容して熱可塑性の樹脂材を注入する。磁石収容孔15は、コア13をコア13の軸線方向に貫通するとともにコア13の径方向と交差する方向に延びる長孔部19を有する。長孔部19及び磁石17は、長孔部19における長手方向と直交する方向である幅方向の長さと長孔部19に収容したときの磁石17における上記幅方向の長さとの差が0よりも大きく且つ0.45mm以下となるように構成される。ロータの製造方法は、磁石17を長孔部19に収容する磁石収容工程と、コア13を第1型22と第2型23とで型締めする型締め工程と、コア13の磁石収容孔15に樹脂材を注入する注入工程とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された第1型と第2型との間に複数の磁石収容孔を有するコアを配置するとともに複数の前記磁石収容孔の各々に磁石を収容した状態で、複数の前記磁石収容孔の各々に熱可塑性の樹脂材を注入して前記磁石を固定することによりロータを製造するロータの製造方法であって、
前記磁石収容孔は、前記コアを前記コアの軸線方向に貫通するとともに前記コアの径方向と交差する方向に延びる長孔部を有し、
前記長孔部及び前記磁石は、前記長孔部における長手方向と直交する方向である幅方向の長さと前記長孔部に収容したときの前記磁石における前記幅方向の長さとの差が0よりも大きく且つ0.45mm以下となるように構成され、
前記磁石を前記磁石収容孔の前記長孔部に収容する磁石収容工程と、
前記磁石収容工程において前記磁石収容孔の前記長孔部に前記磁石が収容された状態の前記コアを前記第1型と前記第2型とで型締めする型締め工程と、
前記型締め工程において前記第1型と前記第2型とで型締めされた状態の前記コアの前記磁石収容孔に前記樹脂材を注入する注入工程と、
を備えることを特徴とするロータの製造方法。
【請求項2】
複数の磁石収容孔を有するコアと、複数の前記磁石収容孔の各々に収容された状態で熱可塑性の樹脂材によって固定された磁石とを備えたロータであって、
前記磁石収容孔は、前記コアを前記コアの軸線方向に貫通するとともに前記コアの径方向と交差する方向に延びる長孔部を有し、
前記長孔部における長手方向と直交する方向である幅方向において、前記長孔部の両内面と前記長孔部に収容された前記磁石の両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方には、隙間が形成されていることを特徴とするロータ。
【請求項3】
前記隙間は、前記長孔部の前記幅方向において、前記長孔部の両内面と前記長孔部に収容された前記磁石の両側面とのそれぞれの間のうちの前記コアの周縁に近い方の間に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば磁石埋込型モータのロータの製造方法及びロータに関する。
【背景技術】
【0002】
磁石埋込型モータのロータは、複数の鉄心片が積層された構造のコアを有する。コアは、鉄心片の積層方向において貫通する複数の磁石収容孔を有している。磁石収容孔の各々には、磁石を収容した状態で樹脂材を充填することにより、磁石が固定されている。
【0003】
このようなロータの製造方法としては、従来、例えば特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1に示すロータを製造するための製造装置は、コアを間に挟む態様で対向して配置される第1型及び第2型を備えている。第1型は、型本体と、コアを支持する支持部材とを備えている。第2型は、型本体と、樹脂材を磁石収容孔に充填するための充填ポットを有したカルプレートとを備えている。
【0004】
そして、ロータを製造する場合には、まず、支持部材に支持されるとともに複数の磁石収容孔の各々に磁石が収容されたコアにカルプレートを取り付けた状態にする。この状態のコアを第1型の型本体と第2型の型本体とで挟んだ後、複数の磁石収容孔の各々にカルプレートの充填ポットから樹脂材を充填することにより磁石を固定する。これにより、ロータが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-140841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなロータの製造方法では、磁石収容孔に樹脂材が隈無く充填されるので、磁石収容孔に収容された磁石が樹脂材によって完全に覆われる。このため、磁石を冷却媒体などで直接冷却することができない。したがって、ロータにおける磁石の冷却性を高める上では、改善の余地を残すものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するロータの製造方法は、対向して配置された第1型と第2型との間に複数の磁石収容孔を有するコアを配置するとともに複数の前記磁石収容孔の各々に磁石を収容した状態で、複数の前記磁石収容孔の各々に熱可塑性の樹脂材を注入して前記磁石を固定することによりロータを製造するロータの製造方法であって、前記磁石収容孔は、前記コアを前記コアの軸線方向に貫通するとともに前記コアの径方向と交差する方向に延びる長孔部を有し、前記長孔部及び前記磁石は、前記長孔部における長手方向と直交する方向である幅方向の長さと前記長孔部に収容したときの前記磁石における前記幅方向の長さとの差が0よりも大きく且つ0.45mm以下となるように構成され、前記磁石を前記磁石収容孔の前記長孔部に収容する磁石収容工程と、前記磁石収容工程において前記磁石収容孔の前記長孔部に前記磁石が収容された状態の前記コアを前記第1型と前記第2型とで型締めする型締め工程と、前記型締め工程において前記第1型と前記第2型とで型締めされた状態の前記コアの前記磁石収容孔に前記樹脂材を注入する注入工程と、を備えることを特徴とするロータの製造方法。
【0008】
上記方法によれば、磁石を磁石収容孔の長孔部に収容すると、幅方向における磁石収容孔の長孔部の両内側面と当該長孔部に収容された磁石における幅方向の両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方には、隙間が形成される。この場合、上記隙間の幅方向の距離は0.45mm以下となるため、磁石収容孔に溶融状態の熱可塑性の樹脂材を注入しても当該樹脂材は上記隙間にほとんど入り込まない。このため、幅方向における長孔部の両内側面と当該長孔部に収容された磁石における幅方向の両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方に樹脂材が充填されない非充填領域が自動的に形成される。この非充填領域は、磁石を冷却するための冷却媒体を流す流路として機能させることができる。このため、磁石を冷却媒体によって直接冷却することができるので、磁石の冷却性を高めることができる。したがって、磁石の冷却性を高めることができるロータを容易に製造することができる。
【0009】
上記課題を解決するロータは、複数の磁石収容孔を有するコアと、複数の前記磁石収容孔の各々に収容された状態で熱可塑性の樹脂材によって固定された磁石とを備えたロータであって、前記磁石収容孔は、前記コアを前記コアの軸線方向に貫通するとともに前記コアの径方向と交差する方向に延びる長孔部を有し、前記長孔部における長手方向と直交する方向である幅方向において、前記長孔部の両内面と前記長孔部に収容された前記磁石の前記幅方向における両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方には、隙間が形成されていることを特徴とするロータ。
【0010】
上記構成によれば、上記隙間は、磁石を冷却するための冷却媒体を流す流路として機能させることができる。したがって、磁石を冷却媒体によって直接冷却することができるので、磁石の冷却性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の製造方法によって製造されるロータの斜視図である。
図2図1のロータの断面図である。
図3図2の3-3線矢視断面図である。
図4】支持部材によって支持された状態のコアを第1型と第2型とで型締めしたときの状態を示す断面図である。
図5】コアを支持部材によって支持したときの状態を示す平面図である。
図6】変更例のロータの要部を示す断面図である。
図7】別の変更例のロータの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ロータの製造方法及びロータの一実施形態を図面に従って説明する。
<ロータ11>
図1及び図2に示すように、ロータ11は、円形の電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片12を積層してなるコア13を備えている。すなわち、コア13は、複数枚の鉄心片12を積層してなる積層体によって構成されている。コア13は、中心孔14と、中心孔14の外周側に位置するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられた複数(本実施形態では、20個)の磁石収容孔15とを有している。
【0013】
中心孔14及び各磁石収容孔15は、コア13をコア13の軸線Cの延びる方向(軸線方向)に貫通している。すなわち、中心孔14及び各磁石収容孔15は、コア13を貫通する態様でコア13の軸線Cに沿って延びている。中心孔14の内周面には、コア13の径方向において互いに対向する一対の突条16が軸線Cに沿って延びるように設けられている。各磁石収容孔15の軸線Cの延びる方向から見たときの形状は、長手方向の両端部が丸みを帯びた略矩形状をなしている。
【0014】
各磁石収容孔15には、磁石17が収容されている。各磁石17は、軸線Cに沿って延びる直方体状をなしている。本実施形態における各磁石17は、二つの永久磁石を一体に吸着させて直方体状にしたものによって構成される。各磁石17は、一つの直方体状の永久磁石によって構成してもよい。各磁石収容孔15の内部には、磁石17を固定するための熱可塑性の樹脂材18が配置されている。樹脂材18は、例えばポリプロピレンなどによって構成される。
【0015】
<磁石収容孔15>
図2及び図3に示すように、磁石収容孔15は、軸線Cの延びる方向から見たときに、コア13の径方向と交差する方向に延びる長孔部19を有している。本実施形態では、磁石収容孔15全体が長孔部19になっている。磁石収容孔15は、軸線Cの延びる方向から見たときに、コア13の径方向と所定角度(本例では、約65°)で交差する方向に延びている。つまり、磁石収容孔15は、軸線Cの延びる方向から見たときに、その長手方向がコア13の径方向と上記所定角度で交差するように配置されている。
【0016】
磁石収容孔15(長孔部19)及び磁石17は、軸線Cの延びる方向から見たときに、磁石収容孔15における長手方向と直交する方向である幅方向の長さAと磁石収容孔15に収容したときの磁石17における上記幅方向の長さBとの差が0よりも大きく且つ0.45mm以下となるように構成されている。
【0017】
したがって、磁石収容孔15の上記幅方向において、磁石収容孔15の両内面と磁石収容孔15に収容された磁石17の両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方には、隙間20が形成される。本実施形態において、隙間20は、磁石収容孔15の上記幅方向において、磁石収容孔15の両内面と磁石収容孔15に収容された磁石17の両側面とのそれぞれの間のうちのコア13の周縁に近い方の間にのみ形成されている。
【0018】
すなわち、本実施形態では、磁石収容孔15の上記幅方向におけるコア13の周縁側とは反対側の内面と磁石17の上記幅方向におけるコア13の周縁側とは反対側の側面とが接触した状態で、磁石17が磁石収容孔15に収容されている。
【0019】
<ロータ11の製造装置21>
図4に示すように、ロータ11の製造装置21は、鉛直方向に対向して配置された第1型22と第2型23とを備えている。製造装置21によってロータ11を製造する際には、第1型22と第2型23との間に、支持部材24によって支持されるとともに複数の磁石収容孔15の各々に磁石17を収容した状態のコア13が配置される。そして、複数の磁石収容孔15の各々に樹脂材18を注入して磁石17を固定することによりロータ11が製造される。
【0020】
<第1型22>
図4に示すように、第1型22は、第1型本体25、支持部材24、及びワークスペーサ26を備えている。第1型22は、支持部材24とワークスペーサ26とが第1型22と第2型23とが対向する対向方向Zにおいて重ねられた構造になっている。対向方向Zは、第1型22と第2型23との間に配置されるコア13の軸線Cの延びる方向と一致する。
【0021】
<支持部材24>
図4及び図5に示すように、支持部材24は、第1型本体25上に載置される。支持部材24は、略矩形板状のベース部27と、ベース部27の上面の中央部に立設された円柱状のポスト部28とを備えている。支持部材24は、コア13の中心孔14にポスト部28を挿入することによって、コア13を支持する。ポスト部28の上端部は、コア13の上面よりも上方に突出している。
【0022】
ベース部27の下面は、第1型本体25の上面に接触している。ベース部27の上面は、ワークスペーサ26を介してコア13の下面に接触している。ポスト部28の外周面には、コア13の一対の突条16がそれぞれ係合される一対の係合溝29が軸線Cに沿って延びるように設けられている。ポスト部28の一対の係合溝29に対してコア13の一対の突条16がそれぞれ挿入されることで、ポスト部28に対するコア13の周方向の位置決めがなされる。
【0023】
<ワークスペーサ26>
図4及び図5に示すように、ワークスペーサ26は、略矩形板状をなしている。ワークスペーサ26の中央部には、支持部材24のポスト部28が挿入される円形状の貫通孔30が設けられている。ワークスペーサ26は、貫通孔30にポスト部28が挿入された状態でベース部27上に配置される。ワークスペーサ26は、上面がコア13の下面に接触するとともに下面がベース部27の上面に接触する態様で配置される。
【0024】
ワークスペーサ26は、コア13の各磁石収容孔15における下端開口31を塞ぐ。コア13の各磁石収容孔15に磁石17を挿入した状態では、ワークスペーサ26の上面に磁石17の下面が接触する。この場合、磁石17の下面とコア13の下面とが面一になる。
【0025】
<第2型23>
図4に示すように、第2型23は、第2型本体32と、ゲートプレート33とを備えている。ゲートプレート33は、板状をなすとともに第2型本体32とコア13との間に介在される。ゲートプレート33の下面の中央部には、ポスト部28の上端部が挿入される略円形の凹部34が形成されている。
【0026】
凹部34の側面には、ポスト部28の一対の係合溝29とそれぞれ係合する一対の係合凸部(図示略)が設けられている。ポスト部28の一対の係合溝29に対してゲートプレート33の一対の係合凸部(図示略)がそれぞれ挿入されることで、ゲートプレート33に対するポスト部28の周方向の位置決めがなされる。
【0027】
ゲートプレート33は、各磁石収容孔15の上端開口35を塞ぐように、コア13上に配置される。ゲートプレート33の下面は、コア13の上面に接触する。ゲートプレート33は、複数の磁石収容孔15に対してシリンダ(図示略)から溶融状態の樹脂材18をそれぞれ供給する複数の分岐通路36を有している。複数の分岐通路36は、複数の磁石収容孔15にそれぞれ対応するように、ゲートプレート33における軸線C上の中央位置から放射状に延びている。各分岐通路36の下流端は、磁石収容孔15の上端開口35に臨む注入口37になっている。
【0028】
<ロータ11の製造方法>
ロータ11の製造方法は、支持工程と、磁石収容工程と、型締め工程と、注入工程と、取出工程とを備える。
【0029】
<支持工程>
図4に示すように、支持工程では、ワークスペーサ26の貫通孔30に支持部材24のポスト部28を挿入した後、コア13の中心孔14に支持部材24のポスト部28をさらに挿入することにより、コア13を支持部材24によって支持する。
【0030】
<磁石収容工程>
図3及び図4に示すように、磁石挿入工程では、支持工程で支持部材24によって支持されたコア13の各磁石収容孔15に磁石17を挿入することによって収容する。このとき、磁石収容孔15の上記幅方向におけるコア13の周縁側とは反対側の内面と磁石17の上記幅方向におけるコア13の周縁側とは反対側の側面とを接触させる。これにより、磁石収容孔15の上記幅方向におけるコア13の周縁側の内面と磁石17の上記幅方向におけるコア13の周縁側の側面との間に隙間20が形成される。
【0031】
<型締め工程>
図4に示すように、型締め工程では、各磁石収容孔15に磁石17が収容されるとともに支持部材24によって支持された状態のコア13を第1型22と第2型23との間に配置する。その後、上記状態のコア13を第1型22と第2型23とで型締めする。これにより、ゲートプレート33の各分岐通路36が注入口37においてコア13の磁石収容孔15と連通する。
【0032】
<注入工程>
図4に示すように、注入工程では、シリンダ(図示略)から溶融状態の樹脂材18を各分岐通路36に供給する。これにより、溶融状態の樹脂材18は、各分岐通路36を流れて注入口37及び磁石収容孔15の上端開口35を介して磁石収容孔15に注入される。すなわち、注入工程では、型締め工程において第1型22と第2型23とで型締めされた状態のコア13の各磁石収容孔15に溶融状態の樹脂材18を注入する。
【0033】
このとき、各磁石収容孔15における上記幅方向の隙間20の距離は、0.45mm以下になっている。0.45mm以下の隙間20には、粘性の高い溶融状態の樹脂材18がほとんど流れ込まない。このため、図2及び図3に示すように、各磁石収容孔15に注入された溶融状態の樹脂材18は、磁石収容孔15の長手方向における磁石17よりも両端側の部分及び磁石収容孔15における磁石17よりも上側の部分に充填される。
【0034】
しかし、磁石収容孔15における隙間20には、充填されない。すなわち、磁石収容孔15における隙間20の上端部には樹脂材18が僅かに入り込むが、隙間20における上端部以外の領域には樹脂材18が全く入り込まない。したがって、磁石収容孔15の隙間20における上端部以外の領域は、溶融状態の樹脂材18が充填されない非充填領域となる。その後、磁石収容孔15で樹脂材18が冷えて固化することにより、磁石収容孔15にて磁石17が固定される。これにより、図1に示すロータ11が製造される。
【0035】
<取出工程>
取出工程では、製造装置21からロータ11を取り出すべく、第1型22と第2型23との型開きを行う。そして、支持部材24によって支持された状態のロータ11を第1型22と第2型23との間から取り出した後、支持部材24からロータ11を取り外す。これにより、図1に示すロータ11が得られる。
【0036】
<実施形態の作用>
磁石17を磁石収容孔15に収容すると、上記幅方向における磁石収容孔15の両内側面と当該磁石収容孔15に収容された磁石17における上記幅方向の両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方には、隙間20が形成される。この場合、隙間20の上記幅方向の距離は0.45mm以下となるため、磁石収容孔15に粘性の高い溶融状態の熱可塑性の樹脂材18を注入しても当該樹脂材18は隙間20にほとんど入り込まない。
【0037】
このため、上記幅方向における磁石収容孔15の両内側面と当該磁石収容孔15に収容された磁石17における上記幅方向の両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方に樹脂材18が充填されない非充填領域が自動的に形成される。この非充填領域は、磁石17を冷却するための冷却媒体(例えば、冷却オイルなど)を流す流路として機能させることができる。このため、磁石17を冷却媒体によって直接冷却することができるので、磁石17の冷却性が高められる。したがって、磁石17の冷却性を高めることができるロータ11が容易に製造される。
【0038】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ロータ11の製造方法は、対向して配置された第1型22と第2型23との間に複数の磁石収容孔15を有するコア13を配置するとともに複数の磁石収容孔15の各々に磁石17を収容した状態で、複数の磁石収容孔15の各々に熱可塑性の樹脂材18を注入して磁石17を固定する。磁石収容孔15は、コア13をコア13の軸線方向に貫通するとともにコア13の径方向と交差する方向に延びている。磁石収容孔15及び磁石17は、磁石収容孔15における長手方向と直交する方向である幅方向の長さAと磁石収容孔15に収容したときの磁石17における上記幅方向の長さBとの差が0よりも大きく且つ0.45mm以下となるように構成されている。
【0039】
上記方法によれば、上述した実施形態の作用により、磁石17の冷却性を高めることができるロータ11を容易に製造することができる。
(2)ロータ11は、複数の磁石収容孔15を有するコア13と、複数の磁石収容孔15の各々に収容された状態で熱可塑性の樹脂材18によって固定された磁石17とを備える。磁石収容孔15は、コア13をコア13の軸線方向に貫通するとともにコア13の径方向と交差する方向に延びている。磁石収容孔15における長手方向と直交する方向である幅方向において、磁石収容孔15の両内面と磁石収容孔15に収容された磁石17の両側面とのそれぞれの間のうちの少なくとも一方には、隙間20が形成されている。
【0040】
上記構成によれば、隙間20は、磁石17を冷却するための冷却媒体を流す流路として機能させることができる。したがって、磁石17を冷却媒体によって直接冷却することができるので、磁石17の冷却性を高めることができる。
【0041】
(3)ロータ11において、隙間20は、磁石収容孔15の上記幅方向において、磁石収容孔15の両内面と磁石収容孔15に収容された磁石17の両側面とのそれぞれの間のうちのコア13の周縁に近い方の間に形成されている。
【0042】
上記構成によれば、隙間20に存在する空気層により、コア13の外周に配置されるステータ(図示略)からの熱が磁石17に伝わることを抑制できるので、磁石17の温度上昇を抑制できる。
【0043】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
図6に示すように、磁石収容孔15における長手方向と直交する方向である幅方向において、磁石収容孔15の両内面と磁石収容孔15に収容された磁石17の両側面とのそれぞれの間の両方に隙間20を形成するようにしてもよい。このようにすれば、隙間20に冷却媒体を流すことで、磁石17を上記幅方向の両側から冷却媒体によって冷却することができる。したがって、磁石17の冷却性をより一層向上させることができる。
【0045】
図7に示すように、磁石収容孔15における長手方向と直交する方向である幅方向におけるコア13の周縁側とは反対側の内面と磁石17の上記幅方向におけるコア13の周縁側とは反対側の側面との間にのみ隙間20を形成するようにしてもよい。
【0046】
・ロータ11において、複数の磁石収容孔15にそれぞれ形成される隙間20は、図3に示す上記実施形態の態様のものと、上記図6に示す態様のものと、上記図7に示す態様のものとが混在していてもよい。
【0047】
・磁石収容孔15は、コア13の径方向と交差する方向に延びる長孔部19以外の部分を有していてもよい。磁石収容孔15は、コア13の径方向と交差する方向に延びる長孔部19を一部に有していれば、コア13の径方向に延びる部分を有していてもよい。
【0048】
・磁石収容孔15は、コア13の径方向と交差する方向に延びる長孔部19を少なくとも一部に有していれば、V字状やL字状に屈曲した形状であってもよい。
・第1型22と第2型23とは、水平方向に対向して配置してもよい。
【符号の説明】
【0049】
11…ロータ
12…鉄心片
13…コア
14…中心孔
15…磁石収容孔
16…突条
17…磁石
18…樹脂材
19…長孔部
20…隙間
21…製造装置
22…第1型
23…第2型
24…支持部材
25…第1型本体
26…ワークスペーサ
27…ベース部
28…ポスト部
29…係合溝
30…貫通孔
31…下端開口
32…第2型本体
33…ゲートプレート
34…凹部
35…上端開口
36…分岐通路
37…注入口
A,B…長さ
C…軸線
Z…対向方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7