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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162010
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H01R13/42 E
H01R13/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077134
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓也
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE07
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG15
5E087GG26
5E087GG31
5E087GG32
5E087HH04
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR49
(57)【要約】
【課題】異音の発生を好適に抑制することができるコネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】コネクタ1は、前後方向Xに端子42を挿入するハウジング10と、ハウジング10に対して上下方向Zに着脱可能に設けられるスペーサ30と、を備えている。ハウジング10及びスペーサ30には、ハウジング10にスペーサ30が装着された状態でハウジング10及びスペーサ30が上下方向Zに相対変位することを規制する第一規制部Aと、ハウジング10にスペーサ30が装着された状態でハウジング10及びスペーサ30が前後方向Xに相対変位することを規制する第二規制部Bと、が設けられている。ハウジング10の第一規制部A及び第二規制部Bは、ハウジング10から左右方向Yの外方に突出している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子付き電線の端子を挿入するハウジングと、
前記ハウジングに対して、前記端子の挿入方向に交差する交差方向に着脱可能に設けられ、前記端子の挿入を可能とする仮係止位置と、前記端子の変位を規制する本係止位置と、に変位可能なスペーサと、を備え、
前記ハウジング及び前記スペーサには、前記ハウジングに前記スペーサが装着された状態で前記ハウジング及び前記スペーサが前記交差方向に相対変位することを規制する第一規制部と、前記ハウジングに前記スペーサが装着された状態で前記ハウジング及び前記スペーサが前記端子の挿入方向に相対変位することを規制する第二規制部と、が設けられ、
前記ハウジングの前記第一規制部及び前記第二規制部は、前記ハウジングから前記交差方向に交差する幅方向の外方に突出して設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記交差方向は、前記挿入方向に直交する直交方向であり、
前記ハウジングには、前記挿入方向に延びる端子収容室と、前記端子収容室に連通し前記直交方向に開口するスペーサ取付部と、が設けられ、
前記スペーサ取付部における前記挿入方向の一方側には、前記ハウジングの外側から前記端子収容室側に向かうほど前記挿入方向の他方側に位置するように傾斜したガイド斜面が設けられ、
前記スペーサには、前記ガイド斜面に摺接する被ガイド斜面が設けられ、
前記第一規制部は、前記ハウジングに設けられて前記挿入方向に延びる垂直係止部と、前記スペーサに設けられて前記垂直係止部に係止される垂直係止突起と、を備え、
前記第二規制部は、前記ハウジングにおける前記垂直係止部の前記挿入方向の他方側に設けられて前記直交方向に延びる水平係止部と、前記スペーサに設けられて前記水平係止部に係止される水平係止突起と、を備え、
前記ガイド斜面に摺接して前記端子収容室側に向かう前記スペーサの前記水平係止突起は、前記水平係止部に向かって案内されることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記スペーサには、前記挿入方向の他方側に配置されて前記ガイド斜面よりも大きな傾斜角度で前記ガイド斜面と同じ方向に傾斜し前記端子の挿入方向の一方側の端部に当接する第一端子押圧部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記スペーサには、前記スペーサ取付部に取り付けられた状態で前記端子を前記幅方向に押圧する第二端子押圧部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記端子収容室の前記挿入方向の他方側の端部には、前記端子の前記挿入方向の他方側への変位を規制するストッパが設けられ、
前記スペーサには、前記スペーサ取付部に取り付けられた状態で前記端子における前記挿入方向の一方側の端部を、前記挿入方向の他方側に押圧する第三端子押圧部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記端子収容室には、前記端子収容室の壁面から前記端子収容室の内方に立ち上がるランスが設けられ、
前記端子には、前記ランスに向かって開口する係合孔が設けられ、
前記端子の前記係合孔の開口端縁には、前記ランスに係止される被係止部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線と、電線の端部に設けられるコンタクトと、コンタクトを収容するインシュレータと、を備えたコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のコネクタでは、インシュレータに、コンタクトを挿入するコンタクト収容室が設けられており、コンタクト収容室に収容されたコンタクトは、コンタクト収容室内部に形成されたランスに係合して抜き差しを規制される。インシュレータは、コンタクト収容室内部にアクセス可能な収容空間を有し、この収容空間には、ランスとともにコンタクトの抜き差しを規制する二重係止部材が、コンタクトの挿入方向に直交する方向に嵌め込まれるようになっている。二重係止部材には、インシュレータへの嵌め込みの際に、コンタクトに形成された傾斜面を押圧する係合部が設けられている。係合部が傾斜面を押圧することでコンタクトはコンタクトの挿入方向に変位し、コンタクトとインシュレータとの間における、コンタクト挿入方向のクリアランスがなくなるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-100434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のコネクタでは、使用時に意図せず二重係止部材が変位した場合、その変位によってインシュレータ、二重係止部材間で異音が発生することがある。また、二重係止部材が変位すると、上述したようなコンタクトとインシュレータとの間におけるクリアランスが再び生じることでコンタクトががたつき、インシュレータ、コンタクト間で異音が発生することがある。
【0005】
本発明の目的は、異音の発生を好適に抑制することができるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、コネクタは、端子付き電線の端子を挿入するハウジングと、前記ハウジングに対して、前記端子の挿入方向に交差する交差方向に着脱可能に設けられ、前記端子の挿入を可能とする仮係止位置と、前記端子の変位を規制する本係止位置と、に変位可能なスペーサと、を備え、前記ハウジング及び前記スペーサには、前記ハウジングに前記スペーサが装着された状態で前記ハウジング及び前記スペーサが前記交差方向に相対変位することを規制する第一規制部と、前記ハウジングに前記スペーサが装着された状態で前記ハウジング及び前記スペーサが前記端子の挿入方向に相対変位することを規制する第二規制部と、が設けられ、前記ハウジングの前記第一規制部及び前記第二規制部は、前記ハウジングから前記交差方向に交差する幅方向の外方に突出して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異音の発生を好適に抑制することができるコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタを構成するハウジングの斜視図。
図2図1のA-A線矢視断面図。
図3】ハウジングに取り付けられるスペーサの斜視図。
図4】ハウジングに挿入される端子付き電線の斜視図。
図5】スペーサが仮係止位置に位置している状態のコネクタの斜視図。
図6図5のB-B線矢視断面図。
図7図5のC-C線矢視断面図。
図8】スペーサが本係止位置に位置している状態のコネクタの斜視図。
図9図8のD-D線矢視断面図。
図10図8のE-E線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、コネクタ1の一実施形態について、図1~10に基づいて説明する。コネクタ1は、例えば、車両に搭載にされるワイヤハーネスの一部を構成するメスコネクタである。図1~4に示すように、コネクタ1は、箱状のハウジング10と、ハウジングに取り付けられるスペーサ30と、ハウジング10に収容される端子付き電線40と、を備えている。
【0010】
なお、本実施形態では、図面において、矢印X、矢印Y、矢印Zは、互いに直交(交差)する方向である。矢印Xは、端子付き電線40の端子42をハウジング10に挿入する挿入方向を示しており、本実施形態ではこの挿入方向を「前後方向X」と記し、前後方向Xの一方側を「後側X1」、他方側を「前側X2」と記す。また、矢印Yは、ハウジング10の幅方向を示しており、本実施形態では、この幅方向を「左右方向Y」と記し、左右方向Yの一方側を「左側Y1」、他方側を「右側Y2」と記す。なお、左右方向Yのうち、ハウジング10の内方に向かう方向を内方、内方側の反対側を外方と記すことがある。矢印Zは、ハウジング10の高さ方向であって、スペーサ30を着脱する直交方向を示しており、本実施形態では、この高さ方向を「上下方向Z」と記し、上下方向Zの一方側を「上側Z1」、他方側を「下側Z2」と記す。なお、これら方向の定義は、あくまでも説明の便宜のためのものであり、実際の使用状態におけるコネクタ1方向を限定するものではない。
【0011】
ハウジング10は、樹脂製の材料等を用いて前後方向Xに延びる略直方体の箱状に形成されている。ハウジング10には、前後方向Xに貫通する端子収容室11が、左右方向Yに並んで2個形成されている。端子収容室11は、端子付き電線40の端子を挿入する部分であり、図2に示すように、底壁12と、側壁13と、上壁14と、前壁15と、を備え、略角筒状に形成されている。底壁12は、前後方向Xに延びて形成されている。底壁12の前側X2部分には、上下方向Zに貫通する孔部12aが形成されている。孔部12aは、後述するランス収容室18に連通している。側壁13は、底壁12の左右方向Y両側の縁部から上側Z1に立ち上がっている。上壁14は、側壁13の上側Z1の端部同士を接続し、底壁12と上下方向Zに対向している。前壁15は、底壁12、側壁13、及び上壁14の前側X2の端部同士を接続している。
【0012】
前壁15は、挿入された端子42が前側X2に変位することを規制するストッパとして機能する部分であり、この前壁15には、前後方向Xに開口する相手端子挿入口16が形成されている。相手端子挿入口16には、端子収容室11に収容された端子42に接続される相手端子が、前側X2から後側X1に向かって挿入されるようになっている。一方、端子収容室11の後側X1の開口は、端子42を挿入する際の入口である端子挿入口17を構成している。ハウジング10において、端子収容室11の前側X2部分の下側Z2には、前側X2に開口するランス収容室18が設けられている。ランス収容室18には、ランス19が収容されている。ランス19は、端子収容室11に挿入された端子42を係止して端子42の抜け止めを行う部分である。図2に示すように、ランス19は、端子収容室11の底壁12の下側Z2の壁面から上側Z1に立ち上がり、上述した孔部12aを通って前側X2に傾きながら斜めに延びている。ランス19は、立ち上がり部分を支点として先端部が上下方向Zに弾性変形可能に設けられている。
【0013】
図1に示すように、ハウジング10の下側Z2の壁面及び左右方向Y両側の壁面には、スペーサ30を装着するためのスペーサ取付部20が形成されている。スペーサ取付部20は、ハウジング10の左右方向Y両側の壁面の下側Z2部分を左右方向Yに切り欠いて形成されている。図2に示すように、スペーサ取付部20は、端子収容室11に連通し、下側Z2に開口している。スペーサ取付部20は、スペーサガイド21(ガイド斜面)と、前端壁22と、を備えている。スペーサガイド21は、スペーサ取付部20の後側X1の壁面を構成しており、ハウジング10の外側から端子収容室11側に向かうほど前側X2位置するように傾斜した傾斜面となっている。すなわち、スペーサガイド21は、上側Z1に向かうに従って前側X2に位置するように傾斜している。前端壁22は、スペーサガイド21と前後方向Xに対向する壁面であり上下方向Zに延びて設けられている。
【0014】
図1に示すように、ハウジング10の左右方向Y両側の壁面において、スペーサ取付部20の上側Z1部分には、垂直係止部23と、水平係止部24と、がそれぞれ形成されている。垂直係止部23は、左右方向Yの外方に突出し前後方向Xに延びて形成されている。垂直係止部23は、後述するスペーサ30の垂直係止突起37とともに、ハウジング10及びスペーサ30が上下方向Zに相対変位することを規制する第一規制部Aを構成する部分である。垂直係止部23は、仮係止部23aと、本係止部23bと、を備えている。仮係止部23aは、ハウジング10に取り付けられたスペーサ30を、端子42の挿入が可能な仮係止位置に固定するための部分である。仮係止部23aの下側Z2の面は、スペーサ30の垂直係止突起37を案内するように傾斜した傾斜面となっている。仮係止部23aの上側Z1の面は、垂直係止突起37の下側Z2の面に当接して垂直係止突起37を係止し、スペーサ30の上下方向Zの変位を規制する平坦面となっている。
【0015】
本係止部23bは、ハウジング10に取り付けられたスペーサ30を、端子42の変位を規制する本係止位置に固定するための部分である。本係止部23bの下側Z2の面は、スペーサ30の垂直係止突起37を案内するように傾斜した傾斜面となっている。また、本係止部23bの上側Z1の面も、スペーサ30の垂直係止突起37を案内するように傾斜した傾斜面となっている。このため、仮係止位置から本係止位置に変位させたスペーサ30を、本係止部23bの傾斜面で案内して再び仮係止位置にスムーズに変位させることができるようになっている。一方、水平係止部24は、垂直係止部23の前側X2に配置され、左右方向Yの外方に突出し、上下方向Zに延びている。水平係止部24は、後述するスペーサ30の水平係止突起38とともに、ハウジング10及びスペーサ30が前後方向Xに相対変位することを規制する第二規制部Bを構成する部分である。水平係止部24の後側X1の面は、スペーサ30の水平係止突起38を案内するように傾斜した傾斜面となっている。水平係止部24の前側X2の面は、水平係止突起38の後側X1の面に当接して水平係止突起38を係止し、スペーサ30の前後方向Xの変位を規制する平坦面となっている。
【0016】
図3に示すように、スペーサ30は、ハウジング10のスペーサ取付部20に対して、上下方向Zに着脱可能に設けられる部材であり、サイドリテーナとも呼ばれる。スペーサ取付部20は、上述したハウジング10の仮係止部23aと本係止部23bとにそれぞれ係止される位置を変更することで、端子42の挿入を可能とする仮係止位置と、端子42の変位を規制する本係止位置と、に変位可能に設けられている。スペーサ30は、前後方向X及び左右方向Yに延在する板状の端子保持部31と、端子保持部31の左右方向Y両縁部から上側Z1に立ち上がるアーム32と、を備えている。端子保持部31は、スペーサ30がスペーサ取付部20に取り付けられた際に、端子42を下側Z2から支持する部分であり、第一端子押圧部33と、第二端子押圧部34と、第三端子押圧部35と、被ガイド斜面36と、を備えている。
【0017】
第一端子押圧部33は、端子保持部31の前側X2の端縁から前側X2に向かって斜めに立ち上がる傾斜面で構成されている。図10に示すように、第一端子押圧部33は、スペーサガイド21(ガイド斜面)よりも大きな傾斜角度でスペーサガイド21と同じ方向に傾斜している。すなわち、第一端子押圧部33は、スペーサガイド21よりも大きな傾斜角度で、上側Z1に向かうに従って前側X2に位置するように傾斜している。この第一端子押圧部33は、スペーサ30がスペーサ取付部20に取り付けられた際に、電気接続部45(端子42)の後側X1の端部に当接するようになっている。そして、この当接の際、第一端子押圧部33は、図10に示すように、端子42を、前側X2及び下側Z2に押圧するように設けられている。
【0018】
第二端子押圧部34は、端子保持部31の左右方向Y中央部から上側Z1に立ち上がり端子保持部31の前側X2の端縁から後側X1の端縁まで延びる板状の突起で構成されている。第二端子押圧部34は、図6に示すように、スペーサ30がスペーサ取付部20に取り付けられた際に、後述する電気接続部45の左右方向Yを向く壁面に当接するようになっている。そして、この当接の際、第二端子押圧部34は、端子42を左右方向Yの外方に押圧するように設けられている。第三端子押圧部35は、第一端子押圧部33の左右方向Yの外方に隣接し後側X1に凹む凹部で構成されている。第三端子押圧部35は、後述する端子42の後端部の一部を構成する後端突起48の後側X1を向く面に、当接するようになっている。そして、この当接の際、第三端子押圧部35は、後端突起48を前側X2に押圧するように設けられている。被ガイド斜面36は、第二端子押圧部34の後側X1の端面を構成する斜面であり、上述したスペーサ取付部20のスペーサガイド21に摺接可能なように、スペーサガイド21と略同じ傾きで傾斜している。
【0019】
アーム32は、樹脂製の材料を用いて前後方向X及び上下方向Z延在する矩形板状に形成され、端子保持部31との接続部を支点として左右方向Yに弾性変形可能に設けられている。アーム32の左右方向Yの内方の面は、スペーサ30をスペーサ取付部20に取り付けた際に、ハウジング10の左右方向Y両側の壁面と左右方向Yに対向するようになっている。アーム32の左右方向Yの内方の面には、左右方向Yの内方に突出し前後方向Xに延びる垂直係止突起37と、垂直係止突起37の前側X2の端部に連続し下側Z2に延びる水平係止突起38と、が形成されている。垂直係止突起37は、上述した垂直係止部23とともに、ハウジング10にスペーサ30が装着された状態でハウジング10及びスペーサ30が上下方向Zに相対変位することを規制する第一規制部Aを構成している。
【0020】
垂直係止突起37は、図6に示すように、下側Z2の面を、上述した仮係止部23aの上側Z1の平坦面に当接させて、仮係止部23aに係止されるようになっている。また、図示はしないが、垂直係止突起37は、下側Z2の面を、上述した本係止部23bの傾斜面に当接させて、本係止部23bに係止されるようになっている。すなわち、垂直係止突起37は、垂直係止部23に係止される。水平係止突起38は、上述した水平係止部24とともに、ハウジング10にスペーサ30が装着された状態でハウジング10及びスペーサ30が前後方向Xに相対変位することを規制する第二規制部Bを構成している。水平係止突起38は、図9に示すように、後側X1の面を、上述した水平係止部24の前側X2の平坦面に当接させて、水平係止部24に係止されるようになっている。
【0021】
図4に示すように、端子付き電線40は、電線41と、端子42と、を備えている。端子42は、電線41の前側X2の端部に接続される被覆加締め部43と、被覆加締め部43に連続し前側X2に延びる芯線加締め部44と、芯線加締め部44に連続し相手端子と接続される電気接続部45と、を備えている。被覆加締め部43は、電線41を被覆の外周から締め付ける加締め片を折り曲げて形成されている。芯線加締め部44は、導電性の圧着片で形成され、芯線に導通状態で接続されている。
【0022】
電気接続部45は、導電性の金属板を折り曲げて前後方向Xに延びる箱状に形成されている。電気接続部45の上側Z1の板面には、上下方向Zに貫通する係合孔46が形成されている。係合孔46は、上述したハウジング10の孔部12aに連通し、ランス19に向かって開口する孔であり、端子42が端子収容室11に挿入された際に、孔内にランス19が位置するようになっている。係合孔46の前側X2の開口端縁には、図7に示すように、ランス19の前側X2の端部に当接してランス19に係止される被係止部47が形成されている。電気接続部45の後側X1の端部には、上側Z1に向かって突出する後端突起48が形成されている。後端突起48は、端子42の後側X1の端部の一部を構成する部分であり、後側X1を向く面が、上述したスペーサ30の第三端子押圧部35に当接するようになっている。なお、このように構成された端子42は、図4に示す姿勢とは、上下を反対にした姿勢で、端子収容室11の端子挿入口17から前側X2に向かって挿入されるようになっている。
【0023】
次に、コネクタ1の組み立てについて説明する。コネクタ1を組み立てる際には、図6に示すように、先ず、ハウジング10にスペーサ30を取り付け、スペーサ30を仮係止部23aに位置させる。この際、スペーサ30を、ハウジング10のスペーサ取付部20の下側Z2に配置し、上側Z1に移動させながらスペーサ取付部20に取り付けていく。この際、図6に示すように、スペーサ30の垂直係止突起37の上側Z1の面が、ハウジング10の仮係止部23aの下側Z2の面である傾斜面に摺接することで左右方向Yの外方に案内される。この摺接により、スペーサ30のアーム32が、端子保持部31との接続部を支点として左右方向Yの外方に弾性変形し、この弾性変形によって垂直係止突起37が仮係止部23aを上側Z1に向かって乗り越える。そして、アーム32が弾性変形前の状態に復帰することで、垂直係止突起37の下側Z2の面が仮係止部23aの上側Z1の面である平坦面に当接し、スペーサ30がハウジング10に係止される。
【0024】
次に、図7に示すように、端子42を端子挿入口17から前側X2に向かって挿入する。この際、端子42の電気接続部45がランス19に当接し、ランス19を下側Z2に向かって弾性変形させる。そして、電気接続部45の前側X2の端部が端子収容室11の前壁15に当接すると、それ以上端子42が前側X2に変位することが規制され、端子42の挿入が完了する。端子42の挿入が完了すると、図7に示すように、ランス19は、係合孔46内に位置するようになる。この状態では、ランス19は、弾性変形した状態から復帰し、前側X2の端面を端子42の被係止部47に当接させて、端子42を係止し、端子42が後側X1に変位することを規制することとなる。
【0025】
次に、図8に示すように、スペーサ30を上側Z1に移動させ、本係止位置に位置させる。この際、図6に示すように、垂直係止突起37が、ハウジング10の本係止部23bの下側Z2の面である傾斜面に摺接することで左右方向Yの外方に案内される。この摺接により、スペーサ30のアーム32が、端子保持部31との接続部を支点として左右方向Yの外方に弾性変形し、この弾性変形によって垂直係止突起37が本係止部23bを上側Z1に向かって乗り越える。そして、アーム32が弾性変形前の状態に復帰することで、垂直係止突起37の下側Z2の面が本係止部23bの上側Z1の面である傾斜面に当接し、スペーサ30がハウジング10に係止される。また、この際、スペーサ30が上側Z1に移動することで、端子保持部31の第二端子押圧部34が、電気接続部45の左右方向Yを向く壁面に当接し、この壁面を左右方向Yの外方に押圧する。この押圧により、端子42が左右方向Yの外方に変位し端子収容室11の壁面に押し付けられる。すなわち、端子収容室11の壁面と電気接続部45との間で左右方向Yのクリアランスがなくなる。
【0026】
また、この際、図7に示すように、スペーサ30の被ガイド斜面36が、スペーサ取付部20のスペーサガイド21に摺接することで、スペーサ30は、上側Z1かつ前側X2に変位しながら徐々に移動していく。そして、スペーサ30が前側X2にも変位することで、図9に示すように、スペーサ30の水平係止突起38が、ハウジング10の水平係止部24の後側X1の面である傾斜面に摺接する。すなわち、スペーサガイド21に摺接して端子収容室11側に向かうスペーサ30の水平係止突起38は、水平係止部24に向かって案内され、水平係止部24に摺接する。この摺接により、水平係止突起38が左右方向Yの外方に案内される。この案内により、スペーサ30のアーム32が、端子保持部31との接続部を支点として左右方向Yの外方に弾性変形し、この弾性変形によって水平係止突起38が水平係止部24を前側X2に向かって乗り越える。そして、アーム32が弾性変形前の状態に復帰することで、水平係止突起38の後側X1の面が水平係止部24の前側X2の面である平坦面に当接し、スペーサ30がハウジング10に係止される。
【0027】
また、スペーサ30が前側X2にも変位することで、図10に示すように、スペーサ30の第一端子押圧部33が電気接続部45の後側X1の端部に当接する。そして、この当接の際、第一端子押圧部33は、スペーサガイド21よりも大きな傾斜角度で傾斜していることから、第一端子押圧部33に当接する電気接続部45の後側X1の端部には、前側X2及び下側Z2に向かって斜めに荷重が加わることとなる。この荷重により、端子42が前側X2及び下側Z2に変位して、端子収容室11の壁面に押し付けられる。すなわち、端子収容室11の壁面と電気接続部45との間で前後方向X及び上下方向Zのクリアランスがなくなる。
【0028】
さらに、図示はしないが、スペーサ30が前側X2にも変位することで、上述した第二端子押圧部34に電気接続部45の後端突起48が嵌まり込み、第二端子押圧部34によって後端突起48が前側X2に押圧される。この押圧により、端子42は、端子収容室11の前壁15と、スペーサ30の第二端子押圧部34と、によって前後方向Xに挟まれ、前後方向Xへの変位を規制される。
【0029】
以上、上述した実施形態によれば、ハウジング10と、ハウジング10に装着されたスペーサ30とが、上下方向Z(交差方向)に相対変位することを、第一規制部Aによって規制することができる。さらに、ハウジング10と、ハウジング10に装着されたスペーサ30とが、前後方向X(端子42の挿入方向)に相対変位することを、第二規制部Bによって規制することができる。このハウジング10、スペーサ30間の二方向の相対変位の規制により、スペーサ30がハウジング10に装着された状態を安定して維持することができる。したがって、スペーサ30のがたつきを抑制し、スペーサ30、ハウジング10間で異音が発生することを抑制することができる。また、スペーサ30がハウジング10に対して変位し難くなることで、スペーサ30が端子42の変位を規制した状態を安定して維持することができる。また、端子42の変位を規制した状態が、例えば、端子42、ハウジング10間のクリアランスをなくした状態であれば、そのクリアランスをなくした状態を安定して維持することができる。この構成により、端子42のがたつきを抑制し、端子42、ハウジング10間で異音が発生することを抑制することができる。したがって、異音の発生を好適に抑制することができるコネクタを提供することすることができる。
【0030】
また、上述した実施形態によれば、スペーサ30をハウジング10に取り付ける際に、スペーサ30に形成された垂直係止突起37をハウジング10の垂直係止部23に係止させることができる。この係止により、ハウジング10とスペーサ30との上下方向Z(垂直方向)の相対変位を規制することができる。また、スペーサ30をハウジング10に取り付ける際に、スペーサ30に形成された水平係止突起38をハウジング10の水平係止部24に係止させることができる。この係止により、ハウジング10とスペーサ30との前後方向X(水平方向)の相対変位を規制することができる。そして、これら相対変位の規制により、スペーサ30のがたつきを抑制し、ハウジング10、スペーサ30間で異音が発生することを抑制することができる。
【0031】
また、上述した実施形態によれば、スペーサ取付部20に取り付けられるスペーサ30は、取り付け方向である上下方向Z(直交方向)に変位するに従って、スペーサガイド21(ガイド斜面)に案内されながら、前側X2(挿入方向の他方側)に変位する。そして、この変位によって、スペーサガイド21に摺接して端子収容室11側に向かうスペーサ30の水平係止突起38を、水平係止部24に向かって案内することができる。このため、水平係止部24と水平係止突起38の係止を確実に行うことができる。
【0032】
また、スペーサ30がスペーサガイド21に案内されながら、前側X2に変位する際、第一端子押圧部33は、電気接続部45(端子42)の後側X1の端部(挿入方向の一方側の端部)に当接する。第一端子押圧部33は、ガイド斜面よりも大きな傾斜角度でガイド斜面と同じ方向に傾斜していることから、電気接続部45への当接の際、第一端子押圧部33は、電気接続部45の後側X1の端部を、前側X2及び下側Z2に向かって押圧する。この押圧により、電気接続部45を端子収容室11の壁面に押し当て、端子42の変位を規制することができる。また、端子42と端子収容室11との間に前後方向X及び上下方向Zのクリアランスがあったとしても、上記押圧により端子42を前側X2及び下側Z2に変位させることができるので、当該クリアランスをなくすことができる。したがって、端子42、端子収容室11の間で前後方向X及び上下方向Zにクリアランスが生じることで端子42ががたつき、異音が発生することを抑制することができる。
【0033】
また、上述した実施形態によれば、スペーサ取付部20に取り付けられたスペーサ30の第二端子押圧部34によって、電気接続部45を左右方向Y(幅方向)の外方に押圧することができる。この押圧により電気接続部45を端子収容室11の壁面に押し当て、端子42の変位を規制することができる。また、端子42と端子収容室11の間に左右方向Yのクリアランスがあったとしても、上記押圧により端子42を左右方向Yの外方に変位させることができるので、当該クリアランスをなくすことができる。したがって、端子42、端子収容室11の間で左右方向Yにクリアランスが生じることで端子42ががたつき、異音が発生することを抑制することができる。
【0034】
また、上述した実施形態によれば、第三端子押圧部35により後端突起48を前側X2に押圧し、端子収容室11の前壁15(ストッパ)と、第三端子押圧部35と、によって、端子42を前後方向Xに挟み込むことができる。この挟み込みにより、端子42の前後方向Xの変位を規制することができる。また、端子42と端子収容室11の間に前後方向Xのクリアランスがあったとしても、上記押圧により端子42を前側X2に変位させることができるので、当該クリアランスをなくすことができる。したがって、端子42、端子収容室11の間で前後方向Xにクリアランスが生じることで端子42ががたつき、異音が発生することを抑制することができる。
【0035】
また、上述したようにハウジング10との間で二方向の相対変位を規制したスペーサ30と、ランス19と、によって、端子収容室11に挿入された端子42を確実に二重係止することができる。
【0036】
以上、コネクタ1の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本実施形態では、ハウジング10に端子収容室11を2個設けたが、端子収容室11の個数は1個でもよいし、2個以上でもよい。また、本実施形態では、コネクタ1は、ワイヤハーネスを構成するメスコネクタとして説明したが、コネクタ1は、雄端子を備えるオスコネクタであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
A 第一規制部
B 第二規制部
X 前後方向(挿入方向)
Y 左右方向(幅方向)
Z 上下方向(交差方向)
1 コネクタ
10 ハウジング
30 スペーサ
40 端子付き電線
42 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10