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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162016
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】吊支具
(51)【国際特許分類】
   D06F 57/08 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
D06F57/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077146
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】511170515
【氏名又は名称】株式会社ARTS
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】重信 武宏
(57)【要約】      (修正有)
【課題】砂や土等の環境下でも容易に接続して組立てることができる吊支具を提供すること。
【解決手段】吊支具1は、上部に物品としての衣類2などを吊支することが可能であって、幅方向に屈曲する複数の板状部としてのアングル材4a~4cを有し、該複数のアングル材4a~4cを長手方向に差し込むことにより棒状に組立てられ、複数のアングル材4a~4cは、幅方向の略中央に長手方向に向けて延設される中差込部20と、中差込部20の幅方向の両側に形成される一対の係止部と、を長手方向の少なくとも一端部に有し、隣接するアングル材4a~4c同士を表裏逆にした状態で、一方のアングル材4bの中差込部20を他方のアングル材4bに重なるように差し込んで一対の係止部同士を係止することにより接続される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に物品を吊支することが可能な吊支具であって、
幅方向に屈曲または湾曲する複数の板状部を有し、該複数の板状部を長手方向に接続することにより棒状に組立てられ、
前記複数の板状部は、幅方向の略中央に長手方向に向けて延設される差込部と、前記差込部の幅方向の両側に形成される一対の係止部と、を長手方向の少なくとも一端部に有し、隣接する前記板状部同士を表裏逆にした状態で、一方の前記板状部の前記差込部を他方の前記板状部に重なるように差し込んで前記一対の係止部同士を係止することにより接続されることを特徴とする吊支具。
【請求項2】
前記板状部は、山形のアングル材にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吊支具。
【請求項3】
前記複数の板状部は、下端に向けて漸次先細りとなる下板状部を含むことを特徴とする請求項1に記載の吊支具。
【請求項4】
前記複数の板状部は、上部に吊支部が形成された上板状部を含むことを特徴とする請求項3に記載の吊支具。
【請求項5】
前記上板状部と前記下板状部とを紐部材により連結したことを特徴とする請求項4に記載の吊支具。
【請求項6】
前記一対の係止部は、前記差込部の幅方向の両側に隙間を隔てて設けられる係止片にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吊支具。
【請求項7】
前記係止片は、前記差込部よりも短寸であることを特徴とする請求項6に記載の吊支具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を吊支するための吊支具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類やランプ等の物品を吊支するための吊支具の一例として、例えば、物干しを掛けるフックが先端に設けられるとともに、下端に設けられた台により直立に支持されることで、洗濯物を屋内に干すことができるようにしたスタンド式のポール(吊支具)等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、長手方向に伸縮可能なポール(吊支具)の上端部にフック及びハンガーが設けられるとともに、下端部に三脚が設けられており、屋内においては、三脚を拡げてポールを直立に支持することにより洗濯物をハンガーに干すことができる一方で、屋外においては、三脚を閉じて吊支具を収縮させてフックを物干し竿等に掛けることにより洗濯物をハンガーに干すことができるようにしたもの等がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3179741号公報
【特許文献2】特開平11-19396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の吊支具は、台と吊支具とフックとを分解して収納することはできるが、ポールを分解したり収縮することはできないため、保管性や可搬性が悪いという問題がある。一方、上記特許文献2に記載の吊支具は、複数の管状のポールを差し込んで組立てるとともに、差し込み長さを調整することでポールを伸縮できるようになっているため、保管性や可搬性はよい。
【0006】
しかし、上記特許文献2に記載の吊支具は、複数の管状のポールを差し込んで組立てる構造であることで、例えば、吊支具を屋内だけでなく屋外で使用する場合、差し込みの際に砂や土等がポール内部に進入して目詰まりや噛み込み等が生じると、差し込みが困難となり組立てできなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、砂や土等の環境下でも容易に接続して組立てることができる吊支具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の吊支具は、
上部に物品を吊支することが可能な吊支具であって、
幅方向に屈曲または湾曲する複数の板状部を有し、該複数の板状部を長手方向に接続することにより棒状に組立てられ、
前記複数の板状部は、幅方向の略中央に長手方向に向けて延設される差込部と、前記差込部の幅方向の両側に形成される一対の係止部と、を長手方向の少なくとも一端部に有し、隣接する前記板状部同士を表裏逆にした状態で、一方の前記板状部の前記差込部を他方の前記板状部に重なるように差し込んで前記一対の係止部同士を係止することにより接続されることを特徴としている。
この特徴によれば、吊支具が複数の板状部にて構成されることで、板状部同士を接続したときに砂や土が互いの板状部間に進入しても目詰まりや噛み込みが生じにくいため、砂や土等の環境下でも容易に差し込んで組立てることができる。また、係止部同士が係止された状態において、一方の板状部の差込部は他方の板状部の屈曲または湾曲して強度が高められた背部に対向して略筒状を成すため、簡素な構造で高い接続強度を有する。
【0009】
前記板状部は、山形のアングル材にて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、各板状部の強度が向上する。
【0010】
前記複数の板状部は、下端に向けて前記両辺部が漸次先細りとなる下板状部を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、下板状部を砂や土に差し込むことで、吊支具を容易に直立に支持することができる。
【0011】
前記複数の板状部は、上部に吊支部が形成された上板状部を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、上板状部の係止部に、ハンガーやランプ等を容易に吊支することができる。
【0012】
前記上板状部と前記下板状部とを紐部材により連結したことを特徴としている。
この特徴によれば、板状部同士の差し込みが解除されてしまうことを防止できる。
【0013】
前記一対の係止部は、前記差込部の幅方向の両側に隙間を隔てて設けられる係止片にて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、係止部を簡単な構造で形成することができる。
【0014】
前記係止片は、前記差込部よりも短寸であることを特徴としている。
この特徴によれば、係止片が短寸となるので差し込みが容易になるとともに、山形の差込部により板状部の強度低下を抑制しつつ、係止片の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例としての吊支具の使用状態を示す図である。
図2】(a)~(e)は中間部のアングル材を示す正面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
図3】(a)~(e)は最下部のアングル材を示す正面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
図4】(a)~(e)は最上部のアングル材を示す正面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
図5】(a)はアングル材同士を差し込む前の状態を示す斜視図、(b)はアングル材同士を差し込んだ状態を示す斜視図である。
図6図5(b)の要部を示す拡大斜視図である。
図7】(a)は上下のアングル材が接続された状態を示す図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図である。
図8】(a)は図7(b)のC-C断面図、(b)は上方のアングル材が傾いたときの接続部の状態を示す図である。
図9】(a)は上下のアングル材と紐部材との関係を示す図、(b)は風により吊支具が傾いた状態を示す図である。
図10】全てのアングル材を重ねた状態を示す斜視図である。
図11】(a)~(e)は変形例としての中間部のアングル材を示す正面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る吊支具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
本発明に係る実施例としての吊支具につき、図1図10を参照して説明する。尚、以下の説明において、図1の上側を吊支具の上方、図1の下側を吊支具の下方として説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施例としての吊支具1は、板状部としての複数のアングル材4a~4cを長手方向に差し込んで接続することにより所定長さに構成され、下部が砂浜Gに差し込まれることにより略直立に支持されるとともに、衣類2が掛けられたハンガー3を上部に吊支可能とされている。尚、以下においては、図1に示すように吊支具1を海辺の砂浜Gにて使用する場合について説明するが、使用場所は海辺の砂浜Gに限定されるものではなく、河原、キャンプ場、家の庭などでもよいし、屋内で使用してもよい。
【0019】
アングル材4a~4cは、最下位置に配置されるアングル材4aと、最上位置に配置されるアングル材4cと、アングル材4a,4c間に配置される複数のアングル材4bと、を有し、これらは全てアルミニウム材にて構成されている。尚、本実施例では、アングル材4a~4cはアルミニウム材にて構成されていたが、材質はアルミニウム材に限定されるものではなく、鋼材など他の金属材や合成樹脂材等でもよい。
【0020】
図2図4に示すように、アングル材4a~4cは、山部5aで互いに直角に接する辺部6a,6bを有している。各辺部6a,6bは等辺で、幅方向の長さである幅寸法L1,L2は約25mm(L1=L2)、長手方向である上下寸法L3は約250mm、板厚寸法L4は約1mmとされている。
【0021】
アングル材4bの各辺部6a,6bの上下両端縁における幅方向の略中央位置と、アングル材4aの各辺部6a,6bの上端縁における幅方向の略中央位置と、アングル材4cの各辺部6a,6bの下端縁における幅方向の略中央位置とには、スリット7a,7bが長手方向の中央に向けて直線状に延設されている(図2図4参照)。スリット7a,7bの上下寸法L5は約50mm、幅寸法L5aは約2mmとされている。幅寸法L5aは、各辺部6a,6bの板厚寸法L4よりも長寸であることで(L5a>L4)、後述するように、各スリット7a,7bに他のアングル材4a~4cの辺部6a,6bを差し込むことができるようになっている。
【0022】
図3に示すように、アングル材4aの各辺部6a,6bは、上下方向の略中央位置から下方に向けて外側辺が谷部5bに向けて漸次傾斜していることにより、下方に向けて漸次先細り状に形成され、これにより砂や土等の地中に差し込みやすくなっている。また、各辺部6a,6bの傾斜する外側辺における上下方向の同位置には吊支部としての係止段部9a,9bが形成されており、下端側から挿入される係止リング11a(図9(a)参照)を係止できるようになっている。
【0023】
図4に示すように、アングル材4cの各辺部6a,6bの上端縁における幅方向の略中央位置には、短寸のスリット8a,8bが長手方向の中央に向けて直線状に延設されている。スリット8a,8bの上下寸法L6は約15mm、幅寸法L5aは約2mmとされている。この短寸のスリット8a,8bは、辺部6a,6bを差し込むものではなく、後述する紐部材12を係止するための係止リング11b(図9(b)参照)を係止可能な係止部を構成する。
【0024】
図2図4に示すように、各アングル材4a~4cにおけるスリット7a,7b間には、山形の中差込部20が形成されるとともに、幅方向における各スリット7a,7bより外側には、I形の一対の外差込部21が幅方向の両側に形成される。中差込部20は、山部5aで直角に接する短寸の辺部6a,6bにて山形に構成されていることで曲げ強度が高い一方で、外差込部21は板状に構成されていることで曲げ強度が中差込部20より弱くなっている。
【0025】
また、中差込部20の幅方向の両側にスリット7a,7bが形成されることで、差込部としての中差込部20の幅方向の両側に、所定の隙間(幅寸法L5a)を隔てて係止片としての外差込部21,21が設けられている。そしてこれらスリット7a,7b及び外差込部21,21により、各アングル材4a~4c同士を係止するための鉤状の係止部が構成される。
【0026】
このように構成される吊支具1は、各アングル材4a~4cにおけるスリット7a,7bが形成されている端縁同士を差し込んで長手方向に接続することで、所定長さの上下寸法を有する吊支具1を構成することができる。また、アングル材4bの接続数を変えることで、上下寸法を長くしたり短くしたり調整することができる。尚、各アングル材4a~4cの大きさやスリット7a,7bの長さは任意であり、上記以外の形状や寸法に種々に変更可能である。
【0027】
[アングル材同士の接続方法]
次に、アングル材4a~4c同士の接続方法について説明する。尚、アングル材4a,4b、アングル材4b,4b、アングル材4b,4c同士を接続する場合があるが、図5(a),(b)に示すようにアングル材4b,4b同士の接続方法を一例として説明し、アングル材4a,4b、アングル材4b,4c同士の接続については省略する。また、以下においては、説明の便宜上、山部5a側をアングル材4a~4cの表面側、谷部5b側をアングル材4a~4cの裏面側と称することもある。
【0028】
図5(a)に示すように、アングル材4b,4b同士を接続する場合、互いに接続する上下のアングル材4b,4b各々の表裏面を逆にする。詳しくは、上方のアングル材4bは山部5a(表面側)を手前側に向けるとともに、下方のアングル材4bは谷部5b(裏面側)を手前側に向けた状態で、上方のアングル材4bの下端縁と下方のアングル材4bの上端縁とを対向させる。
【0029】
次いで、上方のアングル材4bにおける下部のスリット7aと、下方のアングル材4bにおける上部のスリット7bとを突き合わせるとともに、上方のアングル材4bにおける下部のスリット7bと、下方のアングル材4bにおける上部のスリット7aとを突き合わせる。そして、双方のアングル材4bを近づけて、図5(b)に示すように、一方のアングル材4bのスリット7a,7b内に他方のアングル材4bの辺部6a,6bを差し込む。
【0030】
図6及び図7(a)~(c)に示すように、アングル材4b,4b同士を接続すると、上方のアングル材4bの下部と下方のアングル材4bの上部とが重なる。そして、図6及び図7(a)に示すように、下方のアングル材4bのスリット7a,7bの下端と、上方のアングル材4bのスリット7a,7bの上端と、が当接することにより差し込み方向への移動が規制され、スリット7a,7bが上下に配置される。つまり、スリット7a,7b及び外差込部21,21にて構成される鉤状の係止部同士が係止される。
【0031】
よって、互いに重なり合う接続部22の上下寸法は、スリット7a,7bの上下寸法L5の2倍の長さを有する。このように、各アングル材4bに形成するスリット7a,7bの上下寸法L5は接続部22の上下寸法の半分で済むため、各アングル材4bの強度低下を抑えつつ、接続部22の上下寸法を長くして接続強度を高めることができる。
【0032】
また、接続部22において、上方のアングル材4bの中差込部20は、下方のアングル材4bの谷部5bを覆うように対向配置されるとともに、下方のアングル材4bの中差込部20は、上方のアングル材4bの谷部5bを覆うように対向配置される。また、接続部22において、各アングル材4bの辺部6a,6bは互いに直交するように配置される(図7(b),(c)参照)。このように、山形の中差込部20と該中差込部20に対向する山形の辺部6a,6bとにより、四角筒状部が接続部22の上下方向にわたり形成されることで、この四角筒状部内に上下方向に貫通する貫通路23(図7(b),(c)参照)が形成される。
【0033】
次に、接続部22の作用について説明する。図8(a)に示すように、例えば、上方のアングル材4bの中差込部20の端面20a、つまり、スリット7bの内側面が、下方のアングル材4bの辺部6aの表面に当接するように配置されると、スリット7bと辺部6aとの間に隙間S1が生じる。また、下方のアングル材4bの中差込部20の端面20a、つまり、スリット7bの内側面が、上方のアングル材4bの辺部6aの表面に当接するため、スリット7bと辺部6aとの間に隙間S2が生じる。
【0034】
ここで、例えば、風などにより上方のアングル材4bに対し横向きの力が作用すると(図9(b)参照)、下方のアングル材4bにおけるスリット7aの下端と上方のアングル材4bにおけるスリット7bの上端との当接位置T1を中心として、上方のアングル材4bが図8(b)中白矢印で示す方向に回動するように傾く。詳しくは、上方のアングル材4bにおける中差込部20の端面20aの特に下端部24が下方の辺部6aに圧接される。また、上方のアングル材4bの辺部6aが、下方のアングル材4bにおける外差込部21の端面、つまり、スリット7bの内側面に当接する。
【0035】
このように、上方のアングル材4bが側方に傾くと、上方のアングル材4bにおける中差込部20の端面20aが下方のアングル材4bの辺部6aに当接することにより、当接位置T1を中心とする上方のアングル材4bの回動が規制される。
【0036】
尚、上方のアングル材4bの傾き方向によっては、中差込部20の幅方向の両側の端面20a,20aが、下方のアングル材4bの辺部6a,6bに当接することにより、幅方向の両側の当接位置T1,T1を中心とする上方のアングル材4bの回動が規制されることもある(図6参照)。
【0037】
つまり、アングル材4b,4bの端部には、スリット7a,7b及び外差込部21,21にて構成される鉤状の係止部が、中差込部20の幅方向の両側にて平面視略ハの字状に設けられており、アングル材4b,4b双方の係止部が係止されることで、下方のアングル材4bに対する上方のアングル材4bの傾倒が規制されてアングル材4b,4b同士が接続される。
【0038】
また、各アングル材4bは、端縁における幅方向の2箇所に一対のスリット7a,7bが形成されることで、幅方向の中央に形成される山形の中差込部20と、幅方向の両側に形成される一対の外差込部21,21と、からなる3個の差込部を端部に備える。このように、差し込み用の一対のスリット7a,7bにより辺部6a,6bが幅方向に分断されても、幅方向の中央に山形で強度が高い中差込部20が残存することで接続部22の強度低下が抑制されるため、接続部22に負荷がかかることによるアングル材4bの屈曲や破損を防止できる。
【0039】
尚、図8(b)中白矢印で示す方向とは逆方向に回動する場合は、特に図示しないが、下方のアングル材4bにおける中差込部20の端面20aが上方のアングル材4bの辺部6a,6bに圧接されることにより、上方のアングル材4bの回動が規制される。
【0040】
次に、吊支具1を組立てる場合、まず、図9(a)に示すように、下方のアングル材4aの下方から環状の係止リング11aを挿入して係止段部9aに係止させる。そして、この係止リング11aに紐部材12の一端を結び、アングル材4aの下端を小槌または手で砂浜Gに差し込んでおく。次いで、下方のアングル材4bの上部にアングル材4bを差し込んで接続し、さらに上方に複数のアングル材4bを差し込んで長手方向に向けて接続していく。このとき、各接続部22に形成された貫通路23に紐部材12を下方から上方に向けて挿通していけばよい。あるいは、下方のアングル材4bの谷部5bに紐部材12を沿わせた状態で上方にアングル材4bを差し込んでもよい。
【0041】
そして、最上位置にアングル材4cを接続し、この上端に形成された係止段部9bに環状の係止リング11bを係止させる。次いで、上方まで引き回してきた紐部材12を係止リング11bの下方から上方に挿通してから下方に折り返し、係止リング11cを先端に結ぶ。これにより、吊支具1は砂浜Gに略直立に支持される。
【0042】
次いで、図9(b)に示すように、衣類2を掛けたハンガー3を係止リング11cに係止することにより、吊支具1の上部に衣類2が吊支されるので、濡れた衣類2を乾かすことができる。また、屋外での使用のため、図9(b)において白矢印で示すように横風等が吹いた場合、衣類2に風が当たることで吊支具1の上部に横向きの力が作用する。このとき、下方のアングル材4a,4bに対し上方のアングル材4b,4cが僅かに傾くことで(図8(b)参照)、吊支具1が全体的に撓むように変形するが、各アングル材4a~4cの接続部22において谷部5b同士が対向して配置されることで、接続部22が屈曲したり破損することが防止される。
【0043】
また、上方のアングル材4b,4cは、自重により下方のアングル材4a,4bに差し込まれているが、下端が係止リング11aに結ばれた紐部材12の上端が、上方の係止リング11bにて下方に折り返されてハンガー3が係止されていることで、衣類2の荷重により紐部材12が張設され、上下のアングル材4a,4cの間にアングル材4bが強く挟持されるため、アングル材4a~4c同士の接続が容易に解除されることが防止される。
【0044】
また、吊支具1は、これら複数のアングル材4a~4c同士を長手方向に差し込んで組立てることにより構成され、持ち運びする際には、接続を解除して、図10に示すように、各アングル材4a,4bの裏面上にアングル材4b,4cを積み重ねることができるため、持ち運びが容易になるとともに、コンパクトにまとめた状態で収納できるため、可搬性及び保管性が向上する。
【0045】
[作用・効果]
以上説明したように、本発明の実施例としての吊支具1は、上部に物品としての衣類2などを吊支することが可能であって、幅方向に屈曲する複数の板状部としてのアングル材4a~4cを有し、該複数のアングル材4a~4cを長手方向に差し込むことにより棒状に組立てられ、複数のアングル材4a~4cは、幅方向の略中央に長手方向に向けて延設される中差込部20と、中差込部20の幅方向の両側に形成される一対の係止部(スリット7a,7b及び外差込部21)と、を長手方向の少なくとも一端部に有し、隣接するアングル材4a~4c同士を表裏逆にした状態で、一方のアングル材4bの中差込部20を他方のアングル材4bに重なるように差し込んで一対の係止部同士を係止することにより接続される。
【0046】
これによれば、吊支具1が複数のアングル材4a~4cにて構成されることで、アングル材4a~4c同士を接続したときに砂や土が互いのアングル材4a~4cやスリット7a,7bに進入しても目詰まりや噛み込みが生じにくいため、砂や土等の環境下でも容易に差し込んで組立てることができる。また、係止部同士が係止された状態において、一方のアングル材4a~4cの中差込部20は、他方のアングル材4a~4cの屈曲または湾曲して強度が高められた裏面部に対向して略筒状を成すため、簡素な構造で高い接続強度を有する。
【0047】
また、板状部は、略山形のアングル材4a~4cにて構成されていることで、各板状部の強度が向上する。
【0048】
また、複数のアングル材4a~4cは、下端に向けて辺部6a,6bが漸次先細りとなるアングル材4aを含むことで、アングル材4aを砂や土に差し込むことで、吊支具1を容易に直立に支持することができる。
【0049】
また、複数のアングル材4a~4cは、上端にフック部が形成されたアングル材4cを含むことで、アングル材4cのフック部に、ハンガー3等を容易に吊支することができる。
【0050】
また、アングル材4aとアングル材4cとを紐部材12により連結したことで、アングル材4a~4c同士の接続が解除されてしまうことを防止できる。
【0051】
また、スリット7a,7b及び外差込部21からなる一対の係止部は、中差込部20の幅方向の両側に隙間を隔てて設けられる係止片としての外差込部21にて構成されていることで、係止部を簡単な構造で形成することができる。
【0052】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0053】
例えば、前記実施例では、アングル材4a~4cにおける一対のスリット7a,7bより幅方向の両外側の外差込部21(係止片)と、一対のスリット7a,7b間の中差込部20(差込部)と、は上下寸法が同寸である形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図11に示す変形例としてのアングル材4Aのように、係止片としての外差込部21Aの上下寸法は、中差込部20の上下寸法よりも短寸でもよい。
【0054】
このようにすることで、一対のスリット7a,7bが短寸となるので差し込みが容易になるとともに、山形の中差込部20によりアングル材4Aの強度低下を抑制しつつ、外差込部21Aの破損を防止することができる。また、アングル材4Aに示すように、角部を湾曲状に面取りすることで、破損や怪我を防止できる。
【0055】
また、前記実施例では、一対のスリット7a,7bは、辺部6a,6bの幅方向の中央位置に形成されている形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、幅方向の中央位置よりも中央側または外側に形成されていてもよい。
【0056】
また、前記実施例では、一対のスリット7a,7bが形成されている形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、中差込部20の基部から幅方向の両外側に向けて、前向き鉤状(L字形)の係止部が突設されれば、必ずしもスリット7a,7bが形成されていなくてもよい。
【0057】
また、前記実施例では、板状部の一例として山形のアングル材4a~4cを適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、幅方向に屈曲または湾曲する板状部を部分的に有していればよい。例えば、角筒状の管材の一部に、一対のスリットが形成された山形の板状部が形成されていてもよいし、円筒状の管材の一部に、一対のスリットが形成された半円形の板状部が形成されていてもよい。つまり、管材の一部に板状部が形成されていてもよい。
【0058】
また、前記実施例では、板状部は山形のアングル材4a~4cとして適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、幅方向に屈曲または湾曲するものであれば、板状部は、V字形、L字形、U字形、円弧形などであってもよい。
【0059】
また、前記実施例では、3種類のアングル材4a~4cを使用する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、全て同種のアングル材(例えば、アングル材4bなど)にて構成してもよいし、2種類や4種類以上のアングル材を有していてもよい。
【0060】
また、前記実施例では、紐部材12がアングル材4a~4cの抜け止めを兼ねる形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも最上位のアングル材に物品を吊支可能な係止部が形成されていれば、紐部材12や係止リング11a~11c等を用いなくてもよい。
【0061】
また、前記実施例では、物品の一例として衣類2を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、物品はハンガー3でもよいし、ランタン等のキャンプ用品等であってもよい。また、吊支具1は、図1に示す砂等の地中に埋め込んで直立に支持するだけでなく、クーラーボックスや椅子等の所定重量を有する自立型のベース体により直立に支持されるようにしてもよい。この場合、例えば、山形またはダイヤ形などの差し込み用の凹部を備えた支持具をベース体に固定しておき、支持具の凹部に吊支具1の下端を差し込むことで略直立に支持できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 吊支具
2 衣類(物品)
3 ハンガー(物品)
4a アングル材(板状部、下板状部)
4b アングル材(板状部)
4c アングル材(板状部、上板状部)
4A アングル材(板状部)
5a 山部
5b 谷部
6a,6b 辺部
7a,7b スリット(係止部)
9a,9b 係止段部(吊支部)
11a~11c 係止リング
12 紐部材
20 中差込部(差込部)
20a 端面
21 外差込部(係止部、係止片)
22 接続部
23 貫通路
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11