(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162021
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20241114BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241114BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/097 365
G03G9/08 384
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077159
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 優咲子
(72)【発明者】
【氏名】磯部 和也
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】津田 栞里
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 元樹
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500BA11
2H500BA22
2H500CA03
2H500CA30
2H500EA41B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低温定着性を十分に高めることができ、かつ耐熱保管性の極端な低下を抑制できる静電荷像現像用トナー、上記静電荷像現像用トナーの製造方法および上記静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法を提供すること。
【解決手段】結着樹脂と、離型剤とをトナー母体粒子に含む静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂は、一般式(1)で表される第1構造単位を有する第1重合体を含む、静電荷像現像用トナー。
(一般式(1)において、R
1は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルキル基であり、R
2は炭素原子数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基である。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と、離型剤とをトナー母体粒子に含む静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂は、一般式(1)で表される第1構造単位を有する第1重合体を含む、
静電荷像現像用トナー。
【化1】
(一般式(1)において、R
1は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルキル基であり、R
2は炭素原子数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、R2はイソブチル基である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R1はメチル基である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記離型剤は、炭化水素ワックスまたは脂肪酸エステルワックスである、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記第1重合体は、一般式(2)で表される第2構造単位をさらに有する共重合体である、または、
前記結着樹脂は、一般式(2)で表される第2構造単位を有し、かつ前記第1構造単位を有さない第2重合体をさらに含む、
請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【化2】
(一般式(2)において、R
3は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルコキシ基である。)
【請求項6】
前記一般式(2)において、R3は水素原子またはメトキシ基である、請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記結着樹脂において、前記第1構造単位の含有量は、前記第1構造単位の含有量および前記第2構造単位の含有量の合計質量に対して、10質量%以上90質量%以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記結着樹脂において、前記第1構造単位の含有量は、前記第1構造単位の含有量および前記第2構造単位の含有量の合計質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記第1重合体は、一般式(2)で表される第2構造単位をさらに有する共重合体である、請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記第1重合体は、前記第1構造単位および前記第2構造単位とは異なる、第3構造単位をさらに有する共重合体である、請求項9に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
前記第3構造単位は、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位である、請求項10に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
前記第3構造単位は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸n-ブチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される化合物に由来する少なくとも一つの構造単位である、請求項10に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
結着樹脂と、離型剤とをトナー母体粒子に含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
一般式(1a)で表される単量体を用意する工程と、
前記用意した単量体を水系媒体中で重合させて、第1構造単位を有する第1重合体を含む前記結着樹脂の粒子分散液を作製する工程と、を含む、
静電荷像現像用トナーの製造方法。
【化3】
(一般式(1a)において、R
1は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルキル基であり、R
2は炭素原子数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基である。)
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、
前記付着させた静電荷像現像用トナーを前記記録媒体に定着させる工程と、
を有する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの定着方式の一つとして、幅広く用いられている熱定着方式では、近年、プリントスピードの高速化や省エネルギー化等の目的から、トナー画像定着時の熱エネルギーの低減が求められている。トナー画像定着時の熱エネルギーの低減のために、トナーの低温定着性を向上させることが求められており、これを実現させる方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着色剤および離型剤を含むトナーであって、65℃~90℃の温度で離型剤が溶融してトナー内部から外部へ析出し、着色粒子トナーと離型剤とが海島構造をとるトナーが開示されている。特許文献1では、上記トナーにより、低温定着性等が高まったとされている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂とのハイブリッド樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(a)にSP値が10.0~12.6(cal/cm3)1/2のビニル樹脂(b)がグラフトした構造を有する樹脂(B)とを含有し、粉砕率が60%以上であるトナーバインダーが開示されている。特許文献2では、上記トナーバインダーを含むトナーにより低温定着性が高まったとされている。
【0005】
また、特許文献3には、特定のモノマーを特定量含み、且つ分子量が2万以上の非晶性樹脂(X)と、特定のモノマーを特定量含み、且つ分子量が1万以上の非晶性樹脂(Y)と、結晶性樹脂(Z)とを溶融混練させてなるトナーバインダー樹脂が開示されている。特許文献3では、上記トナーバインダー樹脂を含むトナーにより、低温定着性および耐オフセット性を両立させたとされている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-279714号公報
【特許文献2】特開2008-287229号公報
【特許文献3】特開2010-015159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3のように、低温定着性が高められたトナーが知られているが、トナーの低温定着性を十分に高めたいという要望が存在する。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、低温定着性を十分に高めることができる静電荷像現像用トナー、上記静電荷像現像用トナーの製造方法、および上記静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、下記[1]~[12]の静電荷像現像用トナーに関する。
[1]結着樹脂と、離型剤とをトナー母体粒子に含む静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂は、一般式(1)で表される第1構造単位を有する第1重合体を含む、
静電荷像現像用トナー。
(一般式(1)において、R
1は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルキル基であり、R
2は炭素原子数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基である。)
【化1】
[2]前記一般式(1)において、R
2はイソブチル基である、[1]に記載の静電荷像現像用トナー。
[3]前記一般式(1)において、R
1はメチル基である、[1]または[2]に記載の静電荷像現像用トナー。
[4]前記離型剤は、炭化水素ワックスまたは脂肪酸エステルワックスである、[1]~[3]のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
[5]前記第1重合体は、一般式(2)で表される第2構造単位をさらに有する、または、
前記結着樹脂は、一般式(2)で表される第2構造単位を有し、かつ前記第1構造単位を有さない第2重合体をさらに含む、
[1]~[4]のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【化2】
(一般式(2)において、R
3は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルコキシ基である。)
[6]前記一般式(2)において、R
3は水素原子またはメトキシ基である、[5]に記載の静電荷像現像用トナー。
[7]前記結着樹脂において、前記第1構造単位の含有量は、前記第1構造単位の含有量および前記第2構造単位の含有量の合計質量に対して、10質量%以上90質量%以下である、[5]または[6]に記載の静電荷像現像用トナー。
[8]前記結着樹脂において、前記第1構造単位の含有量は、前記第1構造単位の含有量および前記第2構造単位の含有量の合計質量に対して、25質量%以上80質量%以下である、[5]~[7]のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
[9]前記第1重合体は、一般式(2)で表される第2構造単位をさらに有する共重合体である、[5]~[8]のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
[10]前記第1重合体は、前記第1構造単位および前記第2構造単位とは異なる、第3構造単位をさらに有する、[9]に記載の静電荷像現像用トナー。
[11]前記第3構造単位は、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位である、[10]に記載の静電荷像現像用トナー。
[12]前記第3構造単位は、(メタ)アクリル酸、(メタ)メタクリル酸、(メタ)アクリル酸n-ブチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される化合物に由来する少なくとも一つの構造単位である、[10]または[11]に記載の静電荷像現像用トナー。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の別の態様は、下記[13]の静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
[13]結着樹脂と、離型剤とをトナー母体粒子に含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
一般式(1a)で表される単量体を用意する工程と、
前記用意した単量体を水系媒体中で重合させて第1構造単位を有する第1重合体を含む前記結着樹脂の粒子分散液を作製する工程と、を含む、
静電荷像現像用トナーの製造方法。
【化3】
(一般式(1a)において、R
1は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルキル基であり、R
2は炭素原子数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基である。)
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明の別の態様は、下記[14]の画像形成方法に関する。
[14][1]~[12]のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、
前記付着させた静電荷像現像用トナーを前記記録媒体に定着させる工程と、
を有する、画像形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温定着性を十分に高めることができる静電荷像現像用トナー、上記静電荷像現像用トナーの製造方法、および上記静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.静電荷像現像用トナー
本発明の一実施形態は、感光体などの像担持体に形成された静電荷像(静電潜像)を現像するためのトナーに関する。上記トナーは、一成分系の現像剤であってもよいし、トナー母体粒子とキャリア粒子とを有する二成分系の現像剤であってもよい。
【0015】
本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と、離型剤とをトナー母体粒子に含むトナーであって、上記結着樹脂は、一般式(1)で表される第1構造単位を有する第1重合体を含む。
【0016】
【0017】
一般式(1)において、R1は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルキル基であり、R2は炭素原子数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基である。
【0018】
本発明者らは、トナー母体粒子に、上記第1重合体を含む結着樹脂と離型剤とを含ませることで、低温定着性を十分に高めつつ、耐熱保管性の極端な低下を抑制できることを見出した。
【0019】
上記第1構造単位は、第1重合体の主鎖から分岐する側鎖が、炭素原子数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基(一般式(1)におけるR2)を有する。そのため、第1重合体は、分子全体として嵩高い構造を有する。この嵩高い構造により、第1重合体を含む結着樹脂中に微少な空隙が形成されるため、離型剤が結着樹脂内で分散しやすくなると考えられる。そして、結着樹脂内に分散した離型剤は、離型剤が凝集しているときよりも微細な状態で存在しているため、トナーの加熱定着時に、トナー母体粒子を十分に可塑化させることができるため、低い熱エネルギーでトナーを記録媒体に定着させることができると考えられる。
【0020】
また、第1構造単位は、上述のように、分岐鎖を有するアルキル基を有し、嵩高い構造であるため、第1重合体の主鎖から分岐する側鎖が直鎖状であるときよりも、結着樹脂のガラス転移温度の過度な低下を抑制できる。そのため、トナーの耐熱保管性の極端な低下を抑制できる。
【0021】
以下、上記知見に基づく本発明のトナーについて、より詳細に説明する。
【0022】
1-1.トナー母体粒子
上述のように、トナー母体粒子は、結着樹脂と、離型剤とを有する。
【0023】
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、4.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上9.0μm以下であることがより好ましい。上記体積のメジアン径が4.0μm以上であることでトナーの転写効率を高め、ハーフトーンの画質を高めることができる。また、上記体積平均粒径が10.0μm以下であることで、細線やドットを含む画像の画質を高めることができる。
【0024】
トナー母体粒子体積平均粒径は、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、コールターマルチサイザー3)に、データ処理用ソフトSoftware V3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定することができる。具体的には、0.02gの試料(トナー母体粒子)を、20mLの界面活性剤溶液(トナー母体粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、1分間の超音波分散処理を行い、トナー母体粒子の分散液を調製する。この分散液を、サンプルスタンド内の電解液(ベックマン・コールター社製、ISOTONII)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、これをもとに体積基準の平均粒子径を算出する。
【0025】
1-1-1.結着樹脂
本実施形態では、結着樹脂は、上述の第1構造単位を有する第1重合体を含む。
【0026】
一般式(1)において、R1は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルキル基である。第1構造単位をより剛直な構造にして、第1重合体のガラス転移温度Tgを高める観点から、R1は炭素原子数が1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。これにより、第1重合体を含むトナーの耐熱保管性をより高めることができる。なお、R1が炭素原子数1以上3以下のアルキル基であるとき、上記アルキル基は分岐鎖を有してもよい。
【0027】
一般式(1)において、R2は炭素数が3以上5以下の、分岐鎖を有するアルキル基である。第1重合体およびこれを含む結着樹脂のガラス転移温度を高める観点から、R2の炭素数は4以上5以下であることが好ましく、4であること(R2がイソブチル基であること)がより好ましい。
【0028】
また、一般式(1)において、R1はメチル基であり、かつR2がイソブチル基であることが特に好ましい。
【0029】
第1重合体は、一般式(1a)で表される単量体を用いて重合反応を行うことで合成することができる。なお、一般式(1a)におけるR1およびR2については一般式(1)と同様である。
【0030】
【0031】
結着樹脂は、一般式(2)で表される第2構造単位を有することが好ましい。具体的には、第1重合体が、一般式(2)で表される第2構造単位をさらに有する共重合体であるか、または結着樹脂が、一般式(2)で表される第2構造単位を有し、かつ第1構造単位を有さない第2重合体をさらに含むことが好ましく、第1重合体が、一般式(2)で表される第2構造単位をさらに有する共重合体であることがより好ましい。第2構造体は剛直な環状構造を有するため、第2構造単位を有する重合体の分子鎖の運動性を低下させる。そのため、第2構造単位を有する結着樹脂のガラス転移温度Tgを高めることができる。これにより、トナーの耐熱保管性をより高めることができる。
【0032】
【0033】
一般式(2)において、R3は水素原子または炭素原子数が1以上3以下のアルコキシ基である。第2構造単位を有する重合体の分子鎖の運動性をより低下させて、結着樹脂のガラス転移温度Tgの低下をより抑制する観点から、R3は、水素原子またはメトキシ基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0034】
第2構造単位を有する重合体は、一般式(2a)で表される単量体を用いて重合反応を行うことで合成することができる。なお、一般式(2a)におけるR3については、一般式(2)と同様である。
【0035】
【0036】
結着樹脂において、第1構造単位の含有量は、上記第1構造単位の含有量および上記第2構造単位の含有量の合計質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、25質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上75質量%以下であることがさらに好ましい。上記第1構造単位の含有量が10質量%以上であることで、結着樹脂内に、第1構造単位に由来する微少な空隙がより多く形成されるため、離型剤が結着樹脂内でより分散しやすくなると考えられる。これにより、トナー母体粒子をより十分に可塑化させることができるため、トナーの低温定着性をより十分に高めることができる。また、上記第1構造単位の含有量が90質量%以下であることで、第2構造単位の含有量をより多くして、結着樹脂のガラス転移温度をより高めて、トナーの耐熱保管性の低下をより抑制できる。
【0037】
第1構造単位の含有量および第2構造単位の含有量の合計質量に対する、第1構造単位の含有量は、結着樹脂の作製の際に用いた、一般式(1a)で表される単量体および一般式(2a)で表される単量体の仕込み量比から算出するか、NMR法によって測定することができる。
【0038】
以下、第1重合体が第1構造単位および第2構造単位を含む共重合体であるときと、結着樹脂が第1重合体および第2重合体を含むときとで場合を分けて説明する。
【0039】
(第1重合体が第1構造単位および第2構造単位を含む共重合体である場合)
第1重合体が第1構造単位および第2構造単位を有するとき、第1重合体は、第1構造単位および第2構造単位とは異なる、第3構造単位をさらに有してもよい。第3構造単位を有する第1重合体は、一般式(1a)で表される単量体および一般式(2a)で表される単量体とは異なる、他の単量体を用いて重合反応を行うことで合成することができる。
【0040】
上記他の単量体の例には、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、o-アセトキシスチレン、m-アセトキシスチレン、p-アセトキシスチレンなどを含むスチレン系単量体、
(メタ)アクリル酸(アクリル酸およびメタクリル酸)、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などを含む、イオン性解離基(好ましくはカルボキシル基)を有する単量体、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニルなどを含む(メタ)アクリル酸エステル、などが含まれる。
【0041】
これらのうち、イオン性解離基を有する単量体および(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸n-ブチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。
【0042】
すなわち、第3構造単位は、(メタ)アクリル酸、または(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位であることが好ましく、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸n-ブチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される化合物に由来する少なくとも一つの構造単位であることが特に好ましい。
【0043】
結着樹脂のガラス転移温度Tgを低下しにくくして、トナーの耐熱保管性の低下をより抑制する観点から、第3構造単位のうち、アクリル酸2-エチルヘキシルに由来する構造単位の含有量は、結着樹脂の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0044】
第3構造単位がイオン性解離基を有する単量体に由来する構造単位を含むとき、イオン性解離基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、第1構造単位の含有量、第2構造単位の含有量、および第3構造単位の含有量の合計質量に対して、3質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
【0045】
第3構造単位が、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含むとき、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、第1構造単位の含有量、第2構造単位の含有量、および第3構造単位の含有量の合計質量に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。これらの構造単位の含有量は、上述の他の単量体の仕込み量比から算出するか、NMR法により測定することができる。
【0046】
第1重合体の重量平均分子量Mwは、3500以上35000以下であることが好ましく、10000以上30000以下であることがより好ましい。3500以上であると、第1重合体およびこれを含む結着樹脂のガラス転移温度Tgをより高くして耐熱保管性の低下をより抑制できる。また、35000以下であると、トナーの溶融粘度を適度に低くして定着性を良好にすることができる。
【0047】
上記重量平均分子量Mwの測定方法は、以下のとおりである。装置「HLC-8220」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理する。処理した試料溶液10μlを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて測定試料の有する分子量分布を検出する。検出した分子量分布から、ピーク分子量を測定する。
【0048】
第1重合体の含有量は、結着樹脂の全質量に対して、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
(結着樹脂が第1重合体および第2重合体を含む場合)
第1重合体の含有量は、結着樹脂の全質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、25質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。10質量%以上であることで、結着樹脂内に、第1構造単位に由来する空隙をより多く形成し、離型剤を結着樹脂中により分散させて、定着時にトナーをより可塑化させることができる。これにより、低温定着性をより高めることができる。90質量%以下であると、第2重合体の含有量をより多くでき、結着樹脂のガラス転移温度をより高めて、耐熱保管性をより高められる。
【0050】
第2重合体の含有量は、結着樹脂の全質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上75質量%以下であることがより好ましい。10質量%以上であることで、第2構造単位を結着樹脂中により多く含ませて、結着樹脂のガラス転移温度をより高められる。これにより、トナーの耐熱保管性をより高められる。90質量%以下であることで、第1重合体の含有量をより多くして、低温定着性を寄り高められる。
【0051】
(その他)
結着樹脂のガラス転移温度Tgは、25℃以上65℃以下であることが好ましく、35℃以上55℃以下であることがより好ましい。25℃以上であると、トナーの耐熱保管性の低下をより抑制できる。また、65℃以下であると、トナーの低温定着性をより高めることができる。
【0052】
上記ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて、温度の昇降速度を10℃/min、昇温範囲を0℃から150℃までとする昇温・冷却条件によって測定することができる。
【0053】
結着樹脂は、第1重合体(および第2重合体)以外に、公知の他の樹脂を含んでもよい。
【0054】
上記他の樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし熱硬化性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0055】
上記熱可塑性樹脂の例には、第1重合体および第2重合体以外のビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびエポキシ樹脂などが含まれる。
【0056】
上記他の樹脂は、非晶性樹脂であってもよいし、結晶性樹脂であってもよい。あるいは、結晶性樹脂と非晶性樹脂とがハイブリッド化された複合樹脂であってもよい。これらのうち、低温定着性をより高める観点からは、結晶性樹脂が好ましい。
【0057】
なお、本明細書において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)による測定において、融点が観測される樹脂を意味する。また、非晶性樹脂とは、DSCによる測定において、融点が観測されない樹脂を意味する。また、本明細書において、樹脂に融点が観測されるとは、DSCにおいて、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークが観測されることを意味する。
【0058】
結晶性樹脂としては、公知の結晶性樹脂を使用できる。結晶性樹脂の例には、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂などが含まれる。これらのうち、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0059】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と、多価アルコールとの脱水縮合反応によって得られる。
【0060】
上記多価カルボン酸は、2価以上のカルボン酸であればよく、トリメリット酸やピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸であってもよい。これらのうち、結晶性ポリエステルの結晶性を高める観点からは、ジカルボン酸が好ましい。ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、および1,18-オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、ならびに、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、および4,4’-ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが含まれる。
【0061】
上記多価アルコールは、2価以上のアルコールであればよく、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、およびソルビトールなどの3価以上のアルコールであってもよい。これらのうち、結晶性ポリエステルの結晶性を高める観点からは、2価のアルコールが好ましい。2価のアルコールの例には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオールおよび1,20-エイコサンジオールなどの脂肪族ジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオールおよび4-オクテン-1,8-ジオールなどの不飽和二重結合を有するジオール、ならびに、スルホン酸基を有するジオールなどが含まれる。
【0062】
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は5000以上50000以下であることが好ましい。結晶性ポリエステルの数平均分子量(Mn)は2000以上10000以下であることが好ましい。結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)や数平均分子量(Mn)が当該範囲であると、低温定着性が良好になる。
【0063】
上記他の樹脂の含有量は、結着樹脂の全質量に対して0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
1-1-2.離型剤
離型剤は、定着部材などからのトナーの離型性を高めることができる。また、上述のように、本実施形態では、離型剤は、結着樹脂内で分散して、トナーの加熱定着時にトナーを十分に可塑化させることができる。離型剤は、ワックスであることが好ましい。
【0065】
ワックスである離型剤の例には、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、およびフィッシャートロプシュワックスなどを含む炭化水素ワックス、
ジステアリルケトンなどを含むジアルキルケトンワックス、
カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、およびジステアリルマレエートなどを含む脂肪酸エステルワックス、
エチレンジアミンジベヘニルアミド、およびトリメリット酸トリステアリルアミドなどを含むアミドワックス、などが含まれる。
【0066】
これらのうち、低温定着性をより高める観点から、離型剤は、炭化水素ワックスまたは脂肪酸エステルワックスであることが好ましく、脂肪酸エステルワックスであることがより好ましい。これにより、離型剤が、結着樹脂内により微分散することができるため、トナー母体粒子をより十分に可塑化させて、低温定着性をより高めることができる。
【0067】
離型剤の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。上記離型剤の含有量が1質量%以上であると、トナーの加熱定着時にトナーをより可塑化させることができるため、低温定着性をより十分に高めることができる。上記離型剤の含有量が25質量%以下であると、トナー母体粒子に十分な量の結着樹脂を含ませることができるので、画像の定着性が十分に高まる。
【0068】
1-1-3.その他の成分
トナー母体粒子は、着色剤および荷電制御剤などを含有してもよい。
【0069】
上記着色剤は、染料でもよいし顔料でもよい。トナーが画像に所定の色調を付与する有色トナーであるとき、トナー母体粒子は、当該有色トナーによって呈されるべき色調に応じた、イエロー、マゼンタ、シアンまたはブラックなどの着色剤を含有すればよい。着色剤は、トナー母体粒子に、一種のみが含まれても、複数種が組み合わせて含まれていてもよい。
【0070】
イエローの着色剤の例には、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、および162などを含むイエロー染料、ならびに、C.I.ピグメントイエロー14、17、74、93、94、138、155、180および185などを含むイエロー顔料が含まれる。
【0071】
マゼンタの着色剤の例には、C.I.ソルベントレッド1、49、52、58、63、111および122などを含むマゼンタ染料、ならびに、C.I.ピグメントレッド5、48:1、53:1、57:1、122、139、144、149、166、177、178および222などのマゼンタ顔料が含まれる。
【0072】
シアンの着色剤の例には、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93および95などのシアン染料、ならびに、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:3、60、62、66および76などのシアン顔料が含まれる。
【0073】
ブラックの着色剤の例には、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックなどを含むカーボンブラック、フェライトおよびマグネタイトなどを含む磁性体、ならびに、鉄・チタン複合酸化物などが含まれる。
【0074】
着色剤の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。なお、トナーがクリアトナーであるときには、トナー母体粒子は、着色剤を実質的に含有しないことが好ましく、トナー母体粒子の全質量に対する着色剤の含有量が0.1質量%以下であることが好ましい。
【0075】
上記荷電制御剤は、トナー母体粒子の帯電性を調整することができる。
【0076】
上記荷電制御剤の例には、ニグロシン染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第四級アンモニウム塩化合物、アゾ金属錯体、サリチル酸金属塩またはその金属錯体などが含まれる。
【0077】
上記荷電制御剤の含有量は、結着樹脂の全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。なお、荷電制御剤を過剰に添加するなどの方法でトナーの帯電性を制御しようとすると、トナー母体粒子の他の特性が大きく変化することがある。これに対し、本実施形態では、チタン酸ストロンチウムによりトナーの帯電性を調整することで、他の要求される特性を満たしつつ、トナーの帯電性も所望の程度に調整することができる。
【0078】
1-2.外添剤
トナー母体粒子は、トナーの流動性、帯電性およびクリーニング性を高めるためにトナー母体粒子の表面に後処理剤として添加される外添剤を含んでいてもよい。
【0079】
外添剤は、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化チタン粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子および酸化ホウ素粒子、などの無機粒子を含むことが好ましい。これらの無機粒子は、必要に応じて、シランカップリング剤やシリコーンオイルなどの表面処理剤によって疎水化処理されていてもよい。
【0080】
上記無機粒子の粒子径は、個数平均一次粒子径が20nm以上200nmであることが好ましく、30nm以上150nm以下であることがより好ましい。外添剤の個数平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像したチタン酸ストロンチウムの画像データを、画像処理解析装置(株式会社ニレコ製、LUZEX AP)を用いて2値化処理し、100個の粒子について測定した水平方向フェレ径の平均値とすることができる。
【0081】
また、外添剤は、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体などを含む有機粒子を含んでいてもよい。有機粒子の粒子径は、チタン酸ストロンチウムと同様の方法で測定されるピークトップの粒子径が10nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0082】
また、外添剤は、高級脂肪酸の金属塩などの滑剤を含んでいてもよい。上記高級脂肪酸典枝には、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸およびリシノール酸などが含まれる。上記金属塩を構成する金属の例には、亜鉛、マンガン、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウムおよびカルシウムなどが含まれる。
【0083】
外添剤の含有量は、トナーの全質量に対して0.05質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
1-3.トナーの製造方法
上記トナーは、粉砕法、乳化重合凝集法、乳化凝集法、懸濁重合法および溶解懸濁法などの方法により製造することができる。これらのうち、粉砕法、乳化重合凝集法および懸濁重合法が好ましく、粒子径の均一性、形状の制御性の観点からは、乳化重合凝集法がより好ましい。
【0085】
乳化重合凝集法は、結着樹脂粒子分散液を調製する工程と、必要に応じて離型剤粒子分散液を調製する工程と、着色剤粒子分散液を調製する工程とを行い、得られた各分散液を混合し、所定の粒子径となるまで凝集させて、トナーを製造する方法である。以下、乳化重合凝集法によるトナーの製造方法を説明する。
【0086】
(結着樹脂粒子分散液を調製する工程)
本工程では、上述の第1重合体を含む結着樹脂粒子の分散液を調製する。具体的には、一般式(1a)で表される単量体を用意し、重合開始剤を含む水系媒体中に、用意した当該単量体、必要に応じて一般式(2a)で表される単量体および他の単量体を投入し、加熱撹拌のもとで重合反応を行い、結着樹脂粒子の分散液を調製する。なお、本明細書において、「水系媒体」とは、少なくとも水を50質量%以上含む溶媒のことをいう。水系媒体における、水以外の成分の例には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが含まれる。
【0087】
上記重合開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などが含まれる。
【0088】
油滴の分散性を高める観点から、水系媒体中に予め界面活性剤を含ませてもよい。上記界面活性剤の例には、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤、などが含まれる。
【0089】
また、水系媒体中に単量体を投入するとき、必要に応じて連鎖移動剤を水系媒体中に投入してもよい。上記連鎖移動剤の例には、n-オクチルメルカプタン、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートなどが含まれる。
【0090】
重合温度は、50℃以上100℃以下の範囲内であることが好ましく、55℃以上90℃以下であることがより好ましい。また、重合時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましい。
【0091】
本工程で得られた結着樹脂粒子分散液中の、結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、30nm以上300nm以下であることが好ましく、50nm以上250nm以下であることがより好ましく、100nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。上記メジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0092】
なお、本工程では、水系媒体中に、単量体と共に離型剤を投入してもよい。
【0093】
(離型剤粒子分散液を調製する工程)
本工程では、離型剤を水系媒体中に投入し、粒子状に分散させて、離型剤粒子分散液を調製する。
【0094】
離型剤を粒子状に分散させる方法は特に限定されないが、例えば、ホモジナイザーを用いて離型剤を分散させることができる。
【0095】
本工程で得られた離型剤粒子分散液中の、離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、100nm以上1000nm以下であることが好ましく、200nm以上700nm以下であることがより好ましい。離型剤粒子のメジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定器(LA-750、株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0096】
(着色剤粒子分散液を調製する工程)
本工程では、着色剤を水系媒体中に投入し、粒子状に分散させて、着色剤粒子分散液を調製する。
【0097】
着色剤を粒子状に分散させる方法は特に限定されないが、例えば、ホモジナイザーを用いて着色剤を分散させることができる。
【0098】
本工程で得られた着色剤粒子分散液中の、離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、100nm以上300nm以下であることが好ましく、50nm以上200nm以下であることがより好ましい。着色剤粒子のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0099】
(樹脂粒子を凝集させる工程)
本工程では、結着樹脂粒子分散液(必要に応じて離型剤粒子分散液と、着色剤粒子分散液とをさらに添加した混合液)に凝集剤を添加して、加熱撹拌しながら、粒子を凝集させ、粒子同士を融着させる。
【0100】
上記凝集剤の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、ポリ塩化アルミニウム、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸アルミニウムなどが含まれる。これら凝集剤は単独でも、または2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0101】
上記凝集剤の使用量は、特に制限されないが、トナー粒子を構成する結着樹脂の固形分に対して、トナーの粒径制御性の観点から、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0102】
本工程においては、凝集剤を添加した後、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は0.05℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集用分散液が所望の温度に到達した後、凝集用分散液の温度を一定時間、好ましくは体積基準のメジアン径が4.5μm以上7.0μm以下になるまで保持して、融着を継続させることが好ましい。
【0103】
本工程の後に、本工程で得られた会合粒子を必要に応じて熟成させ、洗浄・濾過工程、乾燥工程、および必要に応じて外添剤添加工程を行うことで、トナーを得ることができる。
【0104】
(熟成工程)
本工程では、会合粒子が分散された分散液を加熱攪拌し、会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、攪拌速度、加熱時間などを調整することにより、熟成処理を行う。熟成処理は必要に応じて行われる。
【0105】
(洗浄・濾過工程)
本工程では、トナー粒子の分散液から、トナー粒子を固液分離し、固液分離によって得られた、トナーケーキ(ウェット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去して洗浄する。
【0106】
固液分離する方法は、特に限定されないが、例として、遠視分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などが挙げられる。
【0107】
(乾燥工程)
本工程では、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する。乾燥方法は特に限定されないが、例として、フラッシュジェットドライヤー、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などが挙げられる
【0108】
(g)外添剤の添加
本工程は、トナー粒子に対して外添剤を添加する場合に、必要に応じて行う。
【0109】
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、サンプルミルなどの機械式の混合装置を使用することができる。
【0110】
1-4.キャリア
キャリアは、上述したトナー母体粒子と混合して2成分磁性トナーを構成する。上記キャリアは、トナーに含有され得る公知の磁性粒子であればよい。
【0111】
上記磁性粒子の例には、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、およびマグネタイト、ならびに、これらとアルミニウムおよび鉛などとの合金などの磁性体を含む粒子が含まれる。上記キャリアは、上記磁性体からなる粒子の表面を樹脂などで被覆したコートキャリアであってもよいし、バインダー樹脂中に上記磁性体を分散させた樹脂分散型キャリアであってもよい。上記被覆用の樹脂の例には、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、およびフッ素樹脂などが含まれる。上記バインダー樹脂の例には、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、およびフェノール樹脂などが含まれる。
【0112】
キャリアの平均粒子径は、体積基準の平均粒子径が20μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。上記キャリアの平均粒子径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置であるシンパテック(SYMPATEC)社製へロス(HELOS)などにより測定することができる。
【0113】
キャリアの含有量は、トナー母体粒子およびキャリアの合計質量に対して、2質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0114】
2.画像形成方法および画像形成装置
本発明の他の実施形態は、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成部と、記録媒体への上記トナー像の転写により、上記トナー像を上記記録媒体に定着させる定着装置と、を有する画像形成装置、ならびに当該画像形成層を用いた画像形成方法に関する。本実施形態において、上記定着装置は、上述したトナーを上記記録媒体に定着させる。
【0115】
上記画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの4種類のカラー現像装置と、1つの電子写真感光体と、により構成される4サイクル方式の画像形成装置であってもよいし、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの4種類のカラー現像装置と、それぞれの色ごとに設けられた4つの電子写真感光体と、により構成されるタンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0116】
図1は、本実施形態に関する画像形成装置1の一例を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置1は、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着装置60および画像読取部70を有する。
【0117】
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
【0118】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、電子写真感光体(像担持体)413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を電子写真感光体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を電子写真感光体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。電子写真感光体413は、光導電性を有する負帯電型の有機感光体である。電子写真感光体413は、帯電装置414により帯電される。
【0119】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。現像容器には、例えば、二成分現像剤が収容されている。
【0120】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト(中間転写体)421、中間転写ベルト421を電子写真感光体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0121】
ベルトクリーニング装置426は、弾性部材426aを有する。弾性部材426aは、二次転写した後の中間転写ベルト421に当接して、中間転写ベルト421の表面上の付着物を除去する。弾性部材426aは、弾性体で構成されており、クリーニングブレード、ブラシなどが含まれる。
【0122】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0123】
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の加熱ベルト10と、用紙Sを定着ローラー62および加熱ベルト10に向けて押圧する加圧ローラー63と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
【0124】
画像形成装置1は、さらに、画像読取部70、画像処理部30および用紙搬送部50を有する。画像読取部70は、給紙装置71およびスキャナー72を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0125】
画像形成装置1による画像の形成を説明する。
スキャナー72は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー72aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
【0126】
電子写真感光体413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、電子写真感光体413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、電子写真感光体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って電子写真感光体413の外周面に照射される。こうして電子写真感光体413の表面には、静電潜像が形成される。
【0127】
現像装置412では、現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー母体粒子が帯電し、二成分現像剤は現像ローラーに搬送され、現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー母体粒子は、磁性ブラシから電子写真感光体413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、電子写真感光体413の表面の静電潜像が可視化され、電子写真感光体413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
【0128】
電子写真感光体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に電子写真感光体413の表面に残存する転写残トナーは、電子写真感光体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
【0129】
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が電子写真感光体413に圧接することにより、電子写真感光体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが電子写真感光体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
【0130】
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
【0131】
二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される(静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程)。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
【0132】
二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーなどの付着物は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。このとき、中間転写ベルトとして前述の中間転写体を使用するため、経時的に動摩擦力を低減させることができる。
【0133】
定着装置60は、回転する定着ローラー62と加圧ローラー63とによって加熱ベルト10を挟み込んで、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを定着ニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する(静電荷像現像用トナーを記録媒体に定着させる工程)。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【実施例0134】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0135】
1.樹脂粒子の分散液の調製
(結着樹脂粒子分散液1)
イソブチルメタクリレート(iBuMA) 42g
スチレン(St) 530g
アクリル酸n-ブチル(nBA) 217g
メタクリル酸(MAA) 46g
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 5.5g
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器(SUS釜)に、8gのドデシル硫酸ナトリウムを3Lのイオン交換水に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、液温を80℃まで昇温させた。
【0136】
昇温後、10gの過硫酸カリウムを200gのイオン交換水に溶解させた溶液を添加し、再度液温80℃として、上記単量体の混合液を100分かけて滴下した。滴下後、液温を80℃にして、2時間撹拌することにより重合を行い、結着樹脂粒子分散液を調製した。得られた結着樹脂粒子分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、115nmであった。また、結着樹脂に含まれる重合体の分子量は、22300であった。
【0137】
上記メジアン径は、粒子径測定装置(マイクロトラックUPA-150、日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定された値である。
【0138】
また、上記分子量は、以下の手順により測定された値である。
(1)ゲル浸透クロマトグラフ分析装置(HLC-8220、東ソー株式会社製)およびカラム(TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連、東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。
(2)次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得て、この試料溶液10μlを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布からピークの値を求めた。
【0139】
(着色剤粒子の分散液)
カーボンブラック(Mogul(登録商標)L キャボット社製) 10質量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度20質量%) 1.5質量部
イオン交換水 90質量部
上記成分を混合しSCミル(SC100/32-XZ、日本コークス工業株式会社)にて分散させ、着色剤粒子分散液を得た。分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径(粒子径測定装置(マイクロトラックUPA-150、日機装株式会社製)を用いて測定)は155nmであった。
【0140】
(離型剤粒子分散液)
ベヘン酸ベヘニル 100質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 5質量部
イオン交換水 240質量部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックス(登録商標)T50、IKA社製)を用いて10分間分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液を得た。分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径(レーザー回折式粒度分布測定器(LA-750、株式会社堀場製作所製)によって測定)は530nmであった。
【0141】
2.トナー母体粒子の作製
(トナー母体粒子1)
結着樹脂粒子分散液 237質量部
着色剤粒子分散液 42質量部
離型剤粒子分散液 18質量部
ポリ塩化アルミニウム 1.8質量部
イオン交換水 600質量部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックス(登録商標)T50、IKA社製)を用いて混合し、分散させた後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら液温を55℃まで昇温させた。液温55℃で30分間保持した後、溶液中に体積基準におけるメジアン径(粒子径測定装置(マイクロトラックUPA-150、日機装株式会社製)を用いて測定)が4.8μmの凝集粒子が生成していることを確認した。さらに加熱用オイルバスの温度を上げて、液温を56℃にして2時間保持したところ、上記凝集粒子の体積基準におけるメジアン径が5.9μmとなったことを確認した。
【0142】
その後、上記フラスコ内に1mol/Lの水酸化ナトリウムを追加して液温56℃における溶液のpHを5.0に調整した。その後、丸型ステンレス製フラスコを、磁気シールを用いて密閉し、撹拌を継続しながら液温を98℃まで昇温させた。6時間撹拌を継続することにより結着樹脂粒子間の融着(融合)を完了させ、トナー母体粒子分散液1を調製した。トナー母体粒子分散液1中のトナー母体粒子の体積基準におけるメジアン径(粒子径測定装置(マイクロトラックUPA-150、日機装株式会社製)を用いて測定)は6.1μmであった。
【0143】
トナー母体粒子分散液1をバスケット型遠心分離機(MARKIII 型式番号60×40、株式会社松本機械製作所製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。当該ウェットケーキを、上記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後、乾燥機(フラッシュジェットドライヤー、株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥し、トナー母体粒子1を得た。
【0144】
(トナー母体粒子2~12)
結着樹脂中の単量体の組成および組成比を表1に示した値になるように、別途、結着樹脂粒子分散液を調製し、調製したそれぞれの結着樹脂粒子分散液を用いたこと以外は、トナー母体粒子1と同様にして、トナー母体粒子2~12を得た(トナー母体粒子11では離型剤分散液において、ベヘン酸ベへニルの代わりに炭化水素ワックス(HNP-0910、パラフィンワックス、日本精蝋株式会社製)を用いた)。なお、表1において、iBuAはイソブチルアクリレート、MeOStはメトキシスチレン、2EHAはアクリル酸2-エチルヘキシルをそれぞれ表す。
【0145】
(トナー母体粒子13)
離型剤粒子分散液を用いなかったこと以外は、トナー母体粒子4と同様にしてトナー母体粒子12を得た。
【0146】
3.トナーの作製
(トナー1)
100質量部のトナー母体粒子に対して、1質量部の疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)、および0.3質量部の疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)を添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)により混合して外添剤処理を行い、トナー1を作製した。
【0147】
(トナー2~13)
用いるトナー母体粒子を、トナー母体粒子2~13に変更した以外は、トナー1と同様にしてトナー2~13を得た。
【0148】
なお、表1に、各トナーにおける、第1構造単位および第2構造単位の合計含有量に体する、第1構造単位の含有量の割合Xを示した。上記割合Xは、イソブチルメタクリレート(またはイソブチルアクリレート)、およびスチレン(またはメトキシスチレン)の仕込み比から算出した。
【0149】
3.評価
3-1.折り定着性
複合機(bizhub PRO(登録商標) C6500、コニカミノルタ株式会社製)に、トナー1~13を順次装填した。熱ロール定着方式の定着加熱部材の表面温度を150℃とし、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下において、記録媒体として秤量350g/m2の厚紙を用いて画像形成を行い、6g/m3のトナーが定着したベタ画像を可視画像として得た。
【0150】
その後、得られたベタ画像を、折り機を用いて折り、これに圧力0.35MPaの空気を吹きつけ、折り目の状態を観察し、以下の基準に沿って折り定着性を評価した。本評価においては、ランク3以上であれば合格とした。
ランク5:折り目付近に剥離が確認されなかった
ランク4:折り目に沿った軽微な剥離がわずかに確認できた
ランク3:折り目に沿った部分的な剥離が確認できた
ランク2:折り目に沿った細い線状の剥離が確認できた
ランク1:折り目に沿った太い線状の剥離が確認できた
【0151】
3-2.耐熱保管性
0.5gのトナー1を内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、「タップデンサーKYT-2000」(株式会社セイシン企業製)で室温にて600回振盪した後、蓋を取った状態で55℃、35%RHの環境下に2時間放置した。
【0152】
次いで、放置後のトナー1を48メッシュ(目開き径350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせた。その後、トナーをパウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた。そして、篩上の残存したトナー量を測定し、測定したトナー量を、トナーの初期重量(0.5g)で除してトナー凝集率を算出した。トナー凝集率について、下記評価基準により耐熱保管性を評価した。トナー2~13についても同様にして耐熱保管性を評価した。
◎:トナー凝集率が15質量%未満(現像剤の耐熱保管性が極めて良好)
○:トナー凝集率が15質量%以上20質量%未満(現像剤の耐熱保管性が良好)
△:トナー凝集率が20質量%以上25質量%未満(現像剤の耐熱保管性がやや悪い)
×:トナー凝集率が25質量%以上(現像剤の耐熱保管性が悪く、使用不可)
【0153】
表1に、各トナーについての、評価結果を示した。
【0154】
【0155】
結着樹脂が一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体を有し、かつトナーが離型剤を含む実施例1~11では、低温定着性を高めつつ、耐熱保管性の極端な低下を抑制できた。
【0156】
また、第1構造単位の含有量が多いほど、低温定着性が高まることがわかった。一方で、第1構造単位の含有量を適度に少なくすることで、耐熱保管性の低下をより抑制できた。
本発明の静電荷像現像用トナーによれば、低温定着性を十分に高めることができ、かつ耐熱保管性の極端な低下を抑制できる。そのため、本発明は画像形成分野において有用である。