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  • -汚染コンクリートの減容方法 図1
  • -汚染コンクリートの減容方法 図2
  • -汚染コンクリートの減容方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162022
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】汚染コンクリートの減容方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G21F9/30 531M
G21F9/30 535
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077164
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 哲一
(57)【要約】
【課題】多くの労力及び時間を要することなく汚染コンクリートの減容化が可能な汚染コンクリートの減容方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る汚染コンクリートの減容方法は、骨材とモルタルを含み、放射性二酸化炭素によって汚染された汚染コンクリートの減容方法であって、骨材の最大寸法の1~2倍の大きさに汚染コンクリートを破砕する破砕工程と、破砕された汚染コンクリートを300~400℃の温度に加熱する加熱工程と、加熱された汚染コンクリートからすりもみ処理によって骨材を分離するすりもみ工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材とモルタルを含み、放射性二酸化炭素によって汚染された汚染コンクリートの減容方法であって、
前記骨材の最大寸法の1~2倍の大きさに汚染コンクリートを破砕する破砕工程と、
破砕された汚染コンクリートを300~400℃の温度に加熱する加熱工程と、
加熱された汚染コンクリートからすりもみ処理によって前記骨材を分離するすりもみ工程と、
を含む、汚染コンクリートの減容方法。
【請求項2】
前記加熱工程は、加熱中に発生したガスをアルカリ溶液に供給する工程を含む、請求項1に記載の汚染コンクリートの減容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材とモルタルを含み、放射性二酸化炭素によって汚染された汚染コンクリートの減容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、稼働中の原子炉では放射性炭素(14C)が生成され、生成された放射性炭素は放射性二酸化炭素(14CO)として存在している。放射性二酸化炭素はコンクリートに吸収されるが、ガス状物質は自由に動けるため汚染範囲は広くなる。実際、原子力発電所の原子炉建屋のコンクリートには放射性二酸化炭素による広範囲の汚染が見つかっており、放射性廃棄物となる物量は大きい。このような背景から、放射性廃棄物を減容化する方法が提案されている。具体的には、放射性のガスや液体はコンクリート中のモルタル部分に浸透するため、モルタル部分に汚染が見られ、粗骨材は汚染しない。従って、コンクリートを粗骨材とモルタルに分離すれば、粗骨材は非放射性廃棄物、モルタルは放射性廃棄物として処分できる。このため、特許文献1には、汚染コンクリートから骨材をすりもみ処理によって分離することにより放射性廃棄物を減容化する方法が提案されている。また、特許文献2には、すりもみ処理前に汚染コンクリートを300~500℃の温度に加熱することによって骨材とモルタルの分離性が良くなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-227493号公報
【特許文献2】特開平11-292602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、すりもみ処理前に汚染コンクリートを300~500℃の温度に加熱すると、汚染コンクリートに吸収されていた放射性二酸化炭素が飛散し、またその飛散量は温度の上昇と共に増加する。ここで、汚染コンクリートをさらに高い温度で加熱すると、吸収されていた放射性二酸化炭素の全量が揮発することによって汚染コンクリートを非放射性廃棄物として処分できる。ところが、高い温度での加熱には大きなエネルギーが必要になると共に、高濃度の放射性二酸化炭素の処理が必要になるため、現実的でない。また、大きなサイズの汚染コンクリートを加熱する場合には、汚染コンクリートの内部に熱が届くまでに多くの時間を要する。また、この場合、汚染コンクリートを細かく破砕すれば汚染コンクリートの内部に熱が容易に届くようになるが、破砕処理に時間を要する。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、多くの労力及び時間を要することなく汚染コンクリートの減容化が可能な汚染コンクリートの減容方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る汚染コンクリートの減容方法は、骨材とモルタルを含み、放射性二酸化炭素によって汚染された汚染コンクリートの減容方法であって、前記骨材の最大寸法の1~2倍の大きさに汚染コンクリートを破砕する破砕工程と、破砕された汚染コンクリートを300~400℃の温度に加熱する加熱工程と、加熱された汚染コンクリートからすりもみ処理によって前記骨材を分離するすりもみ工程と、を含む。
【0007】
前記加熱工程は、加熱中に発生したガスをアルカリ溶液に供給する工程を含むとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る汚染コンクリートの減容方法によれば、多くの労力及び時間を要することなく汚染コンクリートの減容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態である汚染コンクリートの減容過程の流れを示すフローチャートである。
図2図2は、加熱温度の変化に伴う放射性二酸化炭素の除去率の変化を示す図である。
図3図3は、電気炉の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である汚染コンクリートの減容方法について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である汚染コンクリートの減容過程の流れを示すフローチャートである。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態である汚染コンクリートの減容過程は、破砕工程S1、加熱工程S2、及びすりもみ工程S3を含む。
【0013】
まず、破砕工程S1では、汚染コンクリートを所定サイズに破砕する。具体的には、コンクリートに使用される粗骨材の最大寸法は25mmが一般的である。骨材の寸法よりも汚染コンクリートを細かく破砕すると、骨材も破砕されることになるため、不適切なサイズである。骨材の最大寸法の1~2倍のサイズに汚染コンクリートを破砕すると、骨材1個にモルタルが吸着した塊の状態になるため、すりもみ処理に適切なサイズとなる。骨材の最大寸法の1~2倍より大きなサイズに破砕すると、破砕したガラに骨材数個が含まれる状態になり、すりもみ工程S3の初期段階における骨材とモルタルの分離効率が低下する。これにより、汚染コンクリートの破砕サイズは、骨材の最大寸法の1~2倍の範囲内とする。
【0014】
次に、加熱工程S2では、破砕工程S1によって破砕された汚染コンクリートを電気炉内で所定時間加熱する。具体的には、原子炉建屋から採取した汚染コンクリートを250~600℃で2時間加熱したときの放射性二酸化炭素の除去率は図2に示す通りである(ICONE16-48602, Proceedings of the 16th International Conference on Nuclear Engineeringより抜粋)。図2に示すように、汚染コンクリートを300~400℃の温度に加熱すれば、放射性二酸化炭素の除去率(揮発率)が数%に抑えられることがわかる。これにより、汚染コンクリートの加熱温度は300~400℃の範囲内とする。
【0015】
また、図3に示すような電気炉1を用いて汚染コンクリートAを加熱し、加熱中に発生したガスをアルカリ溶液2に供給すれば、加熱中に発生した放射性二酸化炭素(14CO)ガスはアルカリ溶液2にトラップされるので、放射性二酸化炭素ガスが飛散することを抑制できる。この場合、アルカリ溶液2のトラップを2,3個直列に連結させるのが好ましい。また、アルカリ溶液2としては、水酸化ナトリウム溶液を用いることが好ましい。そして、pH計3を用いてアルカリ溶液2のpHを監視し、pHが12よりも酸性になったらアルカリ溶液2を交換し、使用したアルカリ溶液2は放射性廃棄物として廃棄する。pHが中性よりも酸性側になると放射性二酸化炭素ガスは吸収されないので、安全尤度としてアルカリ溶液2を交換するpHを12とした。
【0016】
そして最後に、すりもみ工程S3では、例えば特許文献1に記載の方法を用いて、すりもみ処理によって汚染コンクリートから骨材を分離することにより汚染コンクリートを減容化する。これにより、一連の汚染コンクリートの減容過程は終了する。
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である汚染コンクリートの減容過程は、骨材の最大寸法の1~2倍の大きさに汚染コンクリートを破砕する破砕工程S1と、破砕された汚染コンクリートを300~400℃の温度に加熱する加熱工程S2と、加熱された汚染コンクリートからすりもみ処理によって骨材を分離するすりもみ工程S3と、を含む。これにより、多くの労力及び時間を要することなく汚染コンクリートを減容化することができる。
【0018】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0019】
1 電気炉
2 アルカリ溶液
3 pH計
図1
図2
図3