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2024-162034表面実装機のヘッド間距離測定方法及び表面実装機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162034
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】表面実装機のヘッド間距離測定方法及び表面実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077184
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒太
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353DD11
5E353EE51
5E353GG01
5E353JJ11
5E353JJ22
5E353JJ26
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353LL03
5E353QQ02
(57)【要約】
【課題】ヘッド同士の衝突を回避しつつタクトタイムを低減する。
【解決手段】部品をピックアップして基板の表面に実装する移動可能な複数のヘッド11A,11Bを備えた表面実装機における当該ヘッド間の距離を測定する方法を提供する。この方法は、固定側ヘッド11Aを所定の基準位置に固定しつつ、移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに接触する位置まで移動させる移動ステップと、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したか否かを判定する判定ステップと、判定ステップで移動側ヘッド11Bと固定側ヘッド11Aとの接触が確認された場合に、当該接触時の各ヘッド11A,11Bの座標に基づいて、固定側ヘッド11Aと移動側ヘッド11Bとの距離であるヘッド間距離を算出する測定ステップとを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された部品をピックアップして基板の表面に実装する移動可能な複数のヘッドを備えた表面実装機における当該ヘッド間の距離を測定する方法であって、
前記ヘッドの1つである固定側ヘッドを所定の基準位置に固定しつつ、前記ヘッドの他の1つである移動側ヘッドを前記固定側ヘッドに接触する位置まで移動させる移動ステップと、
前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記移動側ヘッドと前記固定側ヘッドとの接触が確認された場合に、当該接触時の各ヘッドの座標に基づいて、前記固定側ヘッドと前記移動側ヘッドとの距離であるヘッド間距離を算出する測定ステップとを含む、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面実装機のヘッド間距離測定方法において、
前記移動ステップでは、前記固定側ヘッドへの接近方向が異なる複数の接触パターンで前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触するように前記移動側ヘッドを移動させ、
前記測定ステップでは、前記接触パターンごとに前記ヘッド間距離を算出する、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表面実装機のヘッド間距離測定方法において、
前記判定ステップでは、前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触したときに値が上昇する所定のパラメータを検出し、検出した当該パラメータに基づいて前記接触の有無を判定する、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の表面実装機のヘッド間距離測定方法において、
接触によるエラーを検出するために前記パラメータについて設定されるエラー閾値を通常よりも大きい値に変更する閾値変更ステップをさらに含み、
前記判定ステップでは、変更後の前記エラー閾値よりも小さい値に設定された判定閾値を超えるまで前記パラメータが上昇した場合に、前記接触が起きたと判定する、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項5】
請求項3に記載の表面実装機のヘッド間距離測定方法において、
前記表面実装機は、前記固定側ヘッドの駆動源である第1モータと、前記移動側ヘッドの駆動源である第2モータとを備え、
前記パラメータは、前記第1モータ及び前記第2モータの少なくとも一方の電流値である、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の表面実装機のヘッド間距離測定方法において、
前記表面実装機は、その基台に付された基準マークを前記ヘッド側から認識するカメラ、又は前記ヘッドに付された基準マークを前記基台側から認識するカメラを備え、
前記移動ステップでは、前記カメラが前記基準マークを認識する位置を前記基準位置として、当該基準位置に前記固定側ヘッドを配置するとともに、前記カメラによる前記基準マークの認識状態に基づいて前記固定側ヘッドが前記基準位置に固定されていることを確認しながら前記移動側ヘッドを前記固定側ヘッドに接触させる、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の表面実装機のヘッド間距離測定方法において、
前記移動ステップの後、前記固定側ヘッドを所定位置に配置したときの当該固定側ヘッドの座標と、前記移動側ヘッドを前記所定位置に配置したときの当該移動側ヘッドの座標とに基づいて、前記接触による異常が生じていないことを確認する確認ステップをさらに含む、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の表面実装機のヘッド間距離測定方法において、
前記測定ステップで求めた前記ヘッド間距離が想定範囲から外れた異常値である場合に、異常が起きたことをオペレータに報知する報知ステップと、
前記測定ステップで求めた前記ヘッド間距離が前記異常値でない場合に、前記ヘッド間距離の更新の要否をオペレータに問い合わせる問合せステップとをさらに含む、表面実装機のヘッド間距離測定方法。
【請求項9】
供給された部品をピックアップして基板の表面に実装する移動可能な複数のヘッドと、
前記各ヘッドを移動させる移動機構と、
前記ヘッドの1つである固定側ヘッドを所定の基準位置に固定しつつ、前記ヘッドの他の1つである移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触する位置まで移動するように前記移動機構を制御する移動制御部と、
前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触したか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記移動側ヘッドと前記固定側ヘッドとの接触を確認したときの各ヘッドの座標に基づいて、前記固定側ヘッドと前記移動側ヘッドとの距離であるヘッド間距離を算出する演算部とを備えた、表面実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に部品を実装する表面実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装機は、部品を供給する部品供給装置と、当該部品供給装置から供給された部品をピックアップして基板上に実装する移動可能なヘッドとを備える。また、表面実装機の一種として、複数のヘッドを備えたマルチヘッド型の表面実装機が知られている。例えば、下記特許文献1には、2つのヘッド(装着ヘッド)を備えるとともに、両ヘッドの衝突を防止するための対策を施した表面実装機(電子部品装着装置)が開示されている。
【0003】
具体的に、下記特許文献1の表面実装機では、一方のヘッドに他方のヘッドが近づく場合に、近づく方の(他方の)ヘッドの動作をモーションコントローラから指令される位置情報に基づき制御するとともに、近づかれる方の(一方の)ヘッドの動作をエンコーダから取得される位置情報に基づき制御することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-14592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の表面実装機によれば、一方のヘッドに他方のヘッドが近づく場合に、近づく方のヘッドにいち早く制動をかけることができ、ヘッド同士の衝突をより安全に防止できるとされている。
【0006】
しかしながら、上記のように早めの制動によってヘッド同士の衝突を回避した場合には、ヘッドの平均速度が低下するか、もしくはヘッドの移動経路が最短経路に対し長くなるおそれがある。このことは、1つの基板に対し必要数の部品を実装するのに要する時間であるタクトタイムの長期化につながる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ヘッド同士の衝突を回避しつつタクトタイムを低減することが可能な表面実装機のヘッド間距離測定方法及び表面実装機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の一局面に係るヘッド間距離測定方法は、供給された部品をピックアップして基板の表面に実装する移動可能な複数のヘッドを備えた表面実装機における当該ヘッド間の距離を測定する方法であって、前記ヘッドの1つである固定側ヘッドを所定の基準位置に固定しつつ、前記ヘッドの他の1つである移動側ヘッドを前記固定側ヘッドに接触する位置まで移動させる移動ステップと、前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで前記移動側ヘッドと前記固定側ヘッドとの接触が確認された場合に、当該接触時の各ヘッドの座標に基づいて、前記固定側ヘッドと前記移動側ヘッドとの距離であるヘッド間距離を算出する測定ステップとを含むものである。
【0009】
本発明では、2つのヘッドが実際に接触したときの座標に基づいてヘッド間距離が算出されるので、各ヘッドの実際の寸法誤差又は組付け誤差を反映した正確なヘッド間距離を測定することができる。正確なヘッド間距離が分かれば、部品を実装する際の各ヘッドの移動ルートとして、両者の衝突を避け得るできるだけ短い移動ルートを設定することができる。これにより、各ヘッドの移動に要する時間を短縮することができ、部品実装のタクトタイムを低減することができる。
【0010】
例えば、2つのヘッドを用いて部品を実装する際に、各ヘッドを直線的に最短距離で移動させると両者が衝突(接触)してしまう場合がある。このような場合、衝突が起きないように移動ルートを変更する必要があるが、正確なヘッド間距離が分かっていないと、例えばヘッド間距離の設計値に基づいて移動ルートを変更しなければならず、変更後の移動ルートが長尺化する可能性がある。すなわち、ヘッド間距離の設計値しか分からない状況では、考えられる最大の寸法誤差や組付け誤差が存在してもヘッド同士が衝突しないように、ヘッド同士の距離が比較的大きく保たれる安全な移動ルートに変更する必要がある。しかしながら、このような移動ルートは、ヘッド同士が互いに大きく迂回するような距離の長いルートとなり易い。
【0011】
これに対し、実際に接触したときの座標に基づく正確なヘッド間距離が測定される本実施形態では、この測定されたヘッド間距離に基づいて、ヘッド同士を衝突が起きない範囲でできるだけ近づけることができる。したがって、各ヘッドを最短距離で移動させると衝突が起きるような場合において、当該衝突を避けるためのルート変更を最小限に留めることができる。これにより、各ヘッドの移動距離が短く済むので、ヘッド同士の衝突を回避しながらタクトタイムを可及的に低減することができる。
【0012】
しかも、本発明では、ヘッド同士の衝突の際に一方のヘッド(固定側ヘッド)が定位置に固定されるので、2つのヘッドを移動させながら接触させるよりも接触時の座標を特定し易く、当該座標に基づき高い精度でヘッド間距離を算出することができる。
【0013】
好ましくは、前記移動ステップでは、前記固定側ヘッドへの接近方向が異なる複数の接触パターンで前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触するように前記移動側ヘッドを移動させ、前記測定ステップでは、前記接触パターンごとに前記ヘッド間距離を算出する。
【0014】
この態様では、想定される接触パターンが複数存在する場合でも、それぞれの接触時のヘッド間距離を適切に算出することができる。
【0015】
好ましくは、前記判定ステップでは、前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触したときに値が上昇する所定のパラメータを検出し、検出した当該パラメータに基づいて前記接触の有無を判定する。
【0016】
このように、接触に伴い値が上昇するパラメータに基づき接触を判定するようにした場合には、当該パラメータが所定の閾値を超えたときに接触が起きたと判定することができ、容易かつ適切に判定を行うことができる。
【0017】
好ましくは、前記方法は、接触によるエラーを検出するために前記パラメータについて設定されるエラー閾値を通常よりも大きい値に変更する閾値変更ステップをさらに含み、前記判定ステップでは、変更後の前記エラー閾値よりも小さい値に設定された判定閾値を超えるまで前記パラメータが上昇した場合に、前記接触が起きたと判定する。
【0018】
この態様では、ヘッド間距離の測定のためにあえてヘッド同士を接触させる行為がエラーとして認識されるのを防止できるとともに、変更(増大)後のエラー閾値よりも小さい判定閾値を用いてヘッド同士の接触を適切に判定することができる。
【0019】
好ましくは、前記表面実装機は、前記固定側ヘッドの駆動源である第1モータと、前記移動側ヘッドの駆動源である第2モータとを備え、前記パラメータは、前記第1モータ及び前記第2モータの少なくとも一方の電流値である。
【0020】
この態様では、ヘッドを駆動するモータの電流値に基づいてヘッド同士の接触を適切に判定することができる。
【0021】
好ましくは、前記表面実装機は、その基台に付された基準マークを前記ヘッド側から認識するカメラ、又は前記ヘッドに付された基準マークを前記基台側から認識するカメラを備え、前記移動ステップでは、前記カメラが前記基準マークを認識する位置を前記基準位置として、当該基準位置に前記固定側ヘッドを配置するとともに、前記カメラによる前記基準マークの認識状態に基づいて前記固定側ヘッドが前記基準位置に固定されていることを確認しながら前記移動側ヘッドを前記固定側ヘッドに接触させる。
【0022】
この態様では、固定側ヘッドが基準位置から動いていないことを確認しながら移動側ヘッドを固定側ヘッドに接触させることができ、接触時のヘッド間距離を精度よく算出することができる。
【0023】
好ましくは、前記方法は、前記移動ステップの後、前記固定側ヘッドを所定位置に配置したときの当該固定側ヘッドの座標と、前記移動側ヘッドを前記所定位置に配置したときの当該移動側ヘッドの座標とに基づいて、前記接触による異常が生じていないことを確認する確認ステップをさらに含む。
【0024】
この態様では、接触時の座標に基づきヘッド間距離を算出しても問題ない状況であることを確認できるとともに、その後に行われる基板の実装に支障がないことを保障することができる。
【0025】
好ましくは、前記方法は、前記測定ステップで求めた前記ヘッド間距離が想定範囲から外れた異常値である場合に、異常が起きたことをオペレータに報知する報知ステップと、前記測定ステップで求めた前記ヘッド間距離が前記異常値でない場合に、前記ヘッド間距離の更新の要否をオペレータに問い合わせる問合せステップとをさらに含む。
【0026】
この態様では、例えば本来と異なるタイプのヘッドが誤って取り付けられた場合などに、これをオペレータに気付かせることができる。また、ヘッド間距離の測定結果が異常でない場合でも、実際に測定結果を反映するか否かの判断をオペレータに委ねることができる。
【0027】
また、本発明の他の局面に係る表面実装機は、供給された部品をピックアップして基板の表面に実装する移動可能な複数のヘッドと、前記各ヘッドを移動させる移動機構と、前記ヘッドの1つである固定側ヘッドを所定の基準位置に固定しつつ、前記ヘッドの他の1つである移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触する位置まで移動するように前記移動機構を制御する移動制御部と、前記移動側ヘッドが前記固定側ヘッドに接触したか否かを判定する判定部と、前記判定部が前記移動側ヘッドと前記固定側ヘッドとの接触を確認したときの各ヘッドの座標に基づいて、前記固定側ヘッドと前記移動側ヘッドとの距離であるヘッド間距離を算出する演算部とを備えたものである。
【0028】
この表面実装機の発明によれば、上述したヘッド間距離測定方法の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、ヘッド同士の衝突を回避しつつタクトタイムを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る表面実装機の全体構成を示す平面図である。
図2】前記表面実装機の制御系統を示す機能ブロック図である。
図3】前記表面実装機のヘッド間距離を測定するヘッド間距離測定制御の前段部の内容を示すフローチャートである。
図4】前記ヘッド間距離測定制御の中段部の内容を示すフローチャートである。
図5】前記ヘッド間距離測定制御の後段部の内容を示すフローチャートである。
図6】接触時の前記ヘッドの位置とモータ電流値との関係を示すグラフである。
図7】移動側ヘッドが-X側から固定側ヘッドに接触する第1パターンによる接触の様子を示す概略平面図である。
図8】前記第1パターンによる接触時に算出されるヘッド間距離を説明するための概略平面図である。
図9】移動側ヘッドが+X側から固定側ヘッドに接触する第2パターンによる接触の様子を示す概略平面図である。
図10】前記第2パターンによる接触時に算出されるヘッド間距離を説明するための概略平面図である。
図11】移動側ヘッドが-Y側から固定側ヘッドに接触する第3パターンによる接触の様子を示す概略平面図である。
図12】前記第3パターンによる接触時に算出されるヘッド間距離を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[表面実装機の構造]
図1は、本発明の一実施形態に係る表面実装機1の全体構成を示す平面図である。本図に示される表面実装機1は、基板Pの上面に電子部品(以下、単に部品という)を実装するマシンである。表面実装機1は、基台2と、コンベア3と、第1及び第2実装ユニット4A,4Bと、部品供給装置5とを備える。以下の説明では、コンベア3による基板Pの搬送方向と平行な方向をX方向、当該X方向と水平面内で直交する方向をY方向とする。また、X方向及びY方向の双方と直交する方向つまり上下方向をZ方向とする。
【0032】
コンベア3は、基台2上でX方向に延びるように配設され、表面実装機1の上流側(-X側)から搬入された基板Pを受け取って所定の作業位置(図1に示す基板Pの位置)まで搬送する。コンベア3は、当該作業位置に到達した基板Pを保持する保持機構(図示略)を含む。部品の実装は、このように作業位置に保持された基板Pに対し行われる。実装作業が完了すると、コンベア3は、基板Pを作業位置から下流側(+X側)に搬送し、表面実装機1の外部に搬出する。
【0033】
部品供給装置5は、第1供給機5A及び第2供給機5Bを含む。第1供給機5A及び第2供給機5Bは、いずれも基板Pに実装される部品を供給する装置であり、コンベア3を挟んでY方向に対向配置されている。具体的に、本実施形態では、基台2における+Y側の端部に第1供給機5Aが配置され、基台2における-Y側の端部に第2供給機5Bが配置されている。
【0034】
第1供給機5A及び第2供給機5Bは、それぞれ、X方向に並ぶように配列された複数のテープフィーダ6を含む。各テープフィーダ6は、部品が封入されたテープ(部品収納テープ)を担体とするフィーダであり、当該テープの送り出しによって部品を所定の部品取り出し位置まで供給する。各テープフィーダ6には、例えば集積回路(IC)、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の小型の電子部品が収納される。
【0035】
第1実装ユニット4Aは、第1ヘッド11Aと、X軸サーボモータ21及びY軸サーボモータ22(図2)を含む第1移動機構とを備える。第1移動機構(X軸及びY軸サーボモータ21,22)は、第1ヘッド11AをX方向及びY方向に移動させる機構である。第1ヘッド11Aは、部品供給装置5と作業位置の基板Pとの間を移動可能なヘッドであり、部品供給装置5から供給された部品をピックアップして基板Pの表面に実装(搭載)する。本実施形態において、第1ヘッド11Aは、部品供給装置5の第1供給機5A及び第2供給機5Bのいずれからも部品をピックアップして基板Pに実装できるように、第1供給機5A、第2供給機5B、及び作業位置の基板Pの間を移動可能である。このことは、後述する第2ヘッド11Bでも同様である。なお、X軸サーボモータ21及びY軸サーボモータ22は、共に本発明における「第1モータ」に相当する。
【0036】
第1移動機構は、第1ヘッド11AをY方向に移動させる機構として、基台2のX方向の両縁に沿ってY方向に延びる一対の固定レール15と、両固定レール15の間に亘ってX方向に延びるとともに両固定レール15に沿ってY方向に移動可能に支持された支持部材16と、Y軸サーボモータ22(図2)を駆動源として支持部材16をY方向に移動させるねじ送り機構(ボールねじ機構)とを含む。また、第1移動機構は、第1ヘッド11AをX方向に移動させる機構として、支持部材16に固定されるとともに第1ヘッド11Aを移動可能に支持するX方向に延びる固定レール(図示略)と、X軸サーボモータ21(図2)を駆動源として第1ヘッド11AをX方向に移動させるねじ送り機構(ボールねじ機構)とを含む。このように、第1移動機構は、X軸サーボモータ21の駆動に応じて第1ヘッド11AをX方向に移動させ、かつY軸サーボモータ22の駆動に応じて第1ヘッド11AをY方向に移動させることが可能である。
【0037】
第1ヘッド11Aは、昇降可能に支持された複数本の吸着ノズル25と、Z軸サーボモータ23(図2)を駆動源として各吸着ノズル25を個別にZ方向(上下方向)に移動させる昇降機構と、R軸サーボモータ24(図2)を駆動源として各吸着ノズル25をその中心軸回りに回転させる回転機構とを含む。各吸着ノズル25は、負圧発生源に繋がっており、当該負圧発生源から供給される負圧によって部品を吸着する。部品の実装時、吸着ノズル25は、部品供給装置5の部品取り出し位置において部品を吸着保持し、当該部品取り出し位置から基板Pの上方へと移動した後、保持している部品を基板Pの所定の搭載位置に実装する。なお、図1には吸着ノズル25の本数が3本である場合が例示されているが、吸着ノズル25の本数は適宜増減可能である。
【0038】
第1ヘッド11Aには、マーク認識カメラ27が取り付けられている。マーク認識カメラ27は、基板Pに付されたフィデューシャルマーク(図示略)を撮像するとともに、基台2に付された基準マークM1を撮像する。マーク認識カメラ27は、例えば、CCD等のエリアセンサ及び光学系を有しかつ下向きに配置されたカメラ本体と、照明装置とを含む。部品の実装時は、マーク認識カメラ27によるフィデューシャルマークの撮像画像に基づいて基板Pの位置が認識される。また、座標系のキャリブレーションが必要な場合等には、マーク認識カメラ27による基準マークM1の撮像画像に基づいて第1ヘッド11Aの移動誤差が検出され、当該誤差を補正する適宜の処理が行われる。
【0039】
第2実装ユニット4Bの構造も、上述した第1実装ユニット4Aと同様である。すなわち、第2実装ユニット4Bは、部品供給装置5から供給された部品をピックアップして基板Pの表面に実装(搭載)する第2ヘッド11Bと、第2ヘッド11BをX方向及びY方向に移動させるX軸サーボモータ31及びY軸サーボモータ32(図2)を含む第2移動機構とを備える。第2ヘッド11Bは、上述した第1ヘッド11AとY方向に対向するように配置されている。本実施形態では、第1ヘッド11Aが+Y側に配置され、かつ第2ヘッド11Bが-Y側に配置されている。なお、X軸サーボモータ31及びY軸サーボモータ32は、共に本発明における「第2モータ」に相当する。
【0040】
第2移動機構は、第2ヘッド11BをY方向に移動させる機構として、上述した第1移動機構と共用の一対の固定レール15と、両固定レール15の間に亘ってX方向に延びるとともに両固定レール15に沿ってY方向に移動可能に支持された支持部材17と、Y軸サーボモータ32(図2)を駆動源として支持部材17をY方向に移動させるねじ送り機構(ボールねじ機構)とを含む。また、第2移動機構は、第2ヘッド11BをX方向に移動させる機構として、支持部材17に固定されるとともに第2ヘッド11Bを移動可能に支持するX方向に延びる固定レール(図示略)と、X軸サーボモータ31(図2)を駆動源として第2ヘッド11BをX方向に移動させるねじ送り機構(ボールねじ機構)とを含む。
【0041】
第2ヘッド11Bは、部品を吸着可能な複数本(ここでは3本)の吸着ノズル35と、Z軸サーボモータ33(図2)を駆動源として各吸着ノズル35を個別にZ方向(上下方向)に移動させる昇降機構と、R軸サーボモータ34(図2)を駆動源として各吸着ノズル35をその中心軸回りに回転させる回転機構とを含む。
【0042】
第2ヘッド11Bには、マーク認識カメラ37が取り付けられている。マーク認識カメラ37は、第1ヘッド11Aのマーク認識カメラ27と同様のカメラであり、基板P上のフィデューシャルマーク(図示略)や基台2上の基準マークM1を撮像可能である。
【0043】
[表面実装機の制御系統]
次に、表面実装機1の制御系統について説明する。図2に示すように、表面実装機1は、第1実装ユニット4A及び第2実装ユニット4Bの動作を統括的に制御する制御ユニット40を備える。制御ユニット40は、演算処理を行うプロセッサ(CPU)と、ROM及びRAM等のメモリーと、各種の入出力バスと、を含むマイクロコンピュータを要部とする制御器である。
【0044】
制御ユニット40は、第1実装ユニット4AのX軸、Y軸、Z軸、R軸の各サーボモータ21~24並びにマーク認識カメラ27と電気的に接続されている。同様に、制御ユニット40は、第2実装ユニット4BのX軸、Y軸、Z軸、R軸の各サーボモータ31~34並びにマーク認識カメラ37と電気的に接続されている。
【0045】
また、制御ユニット40は、表示装置50と電気的に接続されている。表示装置50は、表面実装機1を操作するオペレータに各種情報を提供する液晶パネル等からなるディスプレイである。
【0046】
制御ユニット40は、演算部41と、ヘッド制御部42と、表示制御部43と、記憶部44とを機能的に有している。ヘッド制御部42は、第1実装ユニット4A及び第2実装ユニット4Bの各ヘッド11A,11Bの動作を制御するモジュールである。例えば、ヘッド制御部42は、サーボモータ21~24の駆動を通じて第1ヘッド11Aの動作を制御するとともに、サーボモータ31~34の駆動を通じて第2ヘッド11Bの動作を制御する。表示制御部43は、表示装置50を制御するモジュールである。演算部41は、ヘッド制御部42及び表示制御部43による制御を実行するのに必要な種々のデータ等を演算により求めるモジュールである。記憶部44は、各種プログラムやデータを記憶するモジュールである。例えば、記憶部44は、基板Pに部品を実装するための実装プログラムや、後述するヘッド間距離の測定を行うための測定プログラムなど、複数のプログラムが記憶されている。なお、ヘッド制御部42は、本発明における「移動制御部」及び「判定部」に相当する。
【0047】
第1実装ユニット4Aの各サーボモータ21~24には、モータ電流を検出する電流センサがそれぞれ取り付けられている。このうち、図2には、X軸サーボモータ21用の電流センサを第1電流センサSN1として、Y軸サーボモータ22用の電流センサを第2電流センサSN2として、それぞれ図示している。各電流センサSN1,SN2の検出信号、つまりX軸サーボモータ21及びY軸サーボモータ22の各電流値を表す信号は、制御ユニット40に逐次入力される。
【0048】
同様に、第2実装ユニット4Bの各サーボモータ31~34には、モータ電流を検出する電流センサが取りそれぞれ付けられている。このうち、図2には、X軸サーボモータ31用の電流センサを第3電流センサSN3として、Y軸サーボモータ32用の電流センサを第4電流センサSN4として、それぞれ図示している。各電流センサSN3,SN4の検出信号、つまりX軸サーボモータ31及びY軸サーボモータ32の各電流値を表す信号は、制御ユニット40に逐次入力される。
【0049】
[ヘッド間距離の測定]
次に、第1ヘッド11Aと第2ヘッド11Bとの距離であるヘッド間距離の測定について説明する。このヘッド間距離の測定は、表面実装機1の初動時や、ヘッドの交換が行われた直後など、ヘッド間距離の正確な値が不明である状況で行われ得る。このような状況では、部品を実装する通常モードとは異なる測定モードが選択され、この測定モードの選択に伴ってヘッド間距離の測定が開始される。測定モードの選択は、自動又は手動のどちらでも行われ得る。
【0050】
図3図5は、上記測定モードの選択に伴い開始されるヘッド間距離測定制御の詳細を示すフローチャートである。図3に示す制御がスタートすると、制御ユニット40のヘッド制御部42は、第1ヘッド11A及び第2ヘッド11Bの位置合わせを行う(ステップS1)。この位置合わせは、基台2上の基準マークM1の位置、つまり第1及び第2ヘッド11A,11Bの各マーク認識カメラ27,37が基準マークM1を認識する位置で行われる。以下では、このようにカメラが基準マークM1を認識する位置のことを、基準位置と称する。
【0051】
具体的に、上記ステップS1において、ヘッド制御部42は、X軸及びY軸サーボモータ21,22を駆動して第1ヘッド11Aを上記基準位置まで移動させるとともに、移動後の第1ヘッド11AのX軸及びY軸の各座標を、各モータ21,22のエンコーダ情報に基づき特定する。同様に、ヘッド制御部42は、X軸及びY軸サーボモータ31,32を駆動して第2ヘッド11Bを上記基準位置まで移動させるとともに、移動後の第2ヘッド11BのX軸及びY軸の各座標を、各モータ31,32のエンコーダ情報に基づき特定する。そして、特定した両座標にずれがあるか否か、つまり上記基準位置における第1及び第2ヘッド11A,11BのX,Y座標にずれがあるか否かを判定し、ずれがある場合には当該ずれが解消されるように座標を補正する。言い換えると、上記ステップS1において、ヘッド制御部42は、第1及び第2ヘッド11A,11Bの基準位置での座標が一致するように座標系のキャリブレーションを行う。
【0052】
次いで、ヘッド制御部42は、第1及び第2ヘッド11A,11Bのいずれかからなる固定側ヘッドを上記基準位置まで移動させる(ステップS2)。固定側ヘッドは、ヘッド11A,11B同士を接触させる後述する制御の際に定位置に固定されるヘッドである。ヘッド同士を接触させる際には、定位置にある固定側ヘッドに対しもう一方のヘッドつまり移動側ヘッドを接近させることにより、両ヘッドを接触させる。なお、本実施形態では、第1ヘッド11Aを固定側ヘッドとして扱い、第2ヘッド11Bを移動側ヘッドとして扱う。このため、以下では、第1ヘッド11Aのことを固定側ヘッド11Aと称し、かつ第2ヘッド11Bのことを移動側ヘッド11Bと称することがある。
【0053】
次いで、ヘッド制御部42は、固定側ヘッド11Aを上記基準位置に保持する制御を開始する(ステップS3)。すなわち、ヘッド制御部42は、マーク認識カメラ27による基準マークM1の認識状態に基づいて固定側ヘッド11Aの位置を随時確認しつつ、固定側ヘッド11Aが上記基準位置から動かないようにX軸及びY軸サーボモータ21,22を制御する。例えば、固定側ヘッド11Aが上記基準位置にある場合は、マーク認識カメラ27の視野の中心に基準マークM1が認識される。この場合、ヘッド制御部42は、X軸及びY軸サーボモータ21,22の停止を継続する。一方、固定側ヘッド11Aが上記基準位置からわずかでも動いた場合は、マーク認識カメラ27の視野の中心からずれた位置に基準マークM1が認識される。この場合、ヘッド制御部42は、上記基準位置からの固定側ヘッド11Aの動きをキャンセルする方向にX軸及びY軸サーボモータ21,22を駆動して、固定側ヘッド11Aを上記基準位置に復帰させる。このような制御が上記ステップS3以降継続して行われることにより、固定側ヘッド11Aが基準位置に保持される。
【0054】
次いで、ヘッド制御部42は、接触によるエラーを検出するために設定されるモータ電流値の閾値つまりエラー閾値を通常よりも大きい値に変更する(ステップS4)。すなわち、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したにもかかわらずその後も継続して移動側ヘッド11Bを駆動してしまうと、部品の変形や破断等の異常が生じるおそれがある。そこで、このような異常が生じる前に移動側ヘッド11Bを停止させるべく、移動側ヘッド11B用の駆動モータ(X軸及びY軸サーボモータ31,32)の電流値にはエラー閾値が設定される。上記ステップS4において、ヘッド制御部42は、このエラー閾値を通常モードのときよりも増大させる。
【0055】
図6は、上述したエラー閾値の変更(増大)を表す図である。図中の波形Wは、X軸サーボモータ31又はY軸サーボモータ32の電流値を表している。詳しくは、波形Wは、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに対しX方向に接触した場合のX軸サーボモータ31の電流値、もしくは、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに対しY方向に接触した場合のY軸サーボモータ32の電流値を表している。第1エラー閾値は、上記ステップS4による変更前のエラー閾値であり、第2エラー閾値は、変更後のエラー閾値である。言い換えると、第1エラー閾値は、部品を実装する通常モードのときに設定される通常のエラー閾値であり、第2エラー閾値は、ヘッド間距離を測定する測定モードのときに設定される非常のエラー閾値である。第2エラー閾値は、後述するステップS7,S11,S15の各ステップでヘッド同士の接触を判定する際に用いられる判定閾値よりも高い値に設定される。
【0056】
通常モードでは、モータ電流値が第1エラー閾値を超えると、そのことが接触によるエラーとして認識され、モータが緊急停止される。一方、測定モードでは、上記ステップS4によりエラー閾値が第1エラー閾値から第2エラー閾値へと変更(増大)される。そして、変更後の第2エラー閾値を超えるまでモータ電流値が上昇した時点で、エラーの認識がなされてモータが緊急停止される。いずれの場合も、ヘッド制御部42は、X軸サーボモータ31又はY軸サーボモータ32の電流値を電流センサSN3又はSN4から取得し、取得した電流値がエラー閾値を超えるとモータを停止させる。
【0057】
ここで、第1エラー閾値及び第2エラー閾値は、波形Wのうち区間C1に含まれる値に設定される。区間C1は、ヘッドの接触に伴って電流値が急上昇している区間である。ただし、この区間C1では部品の変形や破損等はまだ起きておらず、電流値がほぼ垂直に立ち上がる。一方、当該区間C1の上の区間C2では、電流値が傾きをもって上昇しており、ここでは部品の変形や破損が起きている可能性が高い。上記のように第1エラー閾値及び第2エラー閾値をいずれも前者の区間C1に含ませたのは、後者の区間C2まで電流値が上昇する前にモータを停止させるため、換言すれば部品の変形や破損が起きる前にモータを停止させるためである。
【0058】
以上のようにしてエラー閾値の変更(増大)が終了すると、ヘッド制御部42は、移動側ヘッド11Bを第1初期位置に移動させる(ステップS5)。第1初期位置は、図7に実線で示すように、固定側ヘッド11Aから-X側に少し離れた位置である。また、移動側ヘッド11Bが第1初期位置に移動したとき、移動側ヘッド11Bと固定側ヘッド11Aとは、X方向視で部分的に重複するような位置関係になる。言い換えると、第1初期位置は、そこから+X側に移動した移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触するような位置に設定されている。
【0059】
次いで、ヘッド制御部42は、図7に白抜き矢印で示すように、移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに向けて低速で単軸移動させる(ステップS6)。すなわち、ヘッド制御部42は、X軸サーボモータ31の駆動により、移動側ヘッド11Bを上述した第1初期位置から+X側に、X軸に沿って直線的に移動させる。このとき、X軸サーボモータ31は、移動側ヘッド11Bの移動速度が、部品を実装する通常モードのときの移動速度よりも遅くなるように制御される。
【0060】
次いで、ヘッド制御部42は、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したか否かを判定する(ステップS7)。すなわち、ヘッド制御部42は、X軸サーボモータ31の電流値を電流センサSN3から取得し、取得した当該電流値が図6に示す判定閾値を超えた場合に、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したと判定する。ここで用いられる判定閾値は、上述した第1エラー閾値と第2エラー閾値との間の値になるように予め定められたものである。
【0061】
上記ステップS7でNOと判定されて移動側ヘッド11Bが未だ固定側ヘッド11Aに接触していないことが確認された場合、ヘッド制御部42は、上記ステップS6の制御(移動側ヘッド11Bの+X方向移動)を継続する。
【0062】
一方、上記ステップS7でYESと判定されて移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したことが確認された場合、ヘッド制御部42は、X軸サーボモータ31の駆動を停止して移動側ヘッド11Bを停止させるとともに、その時点(接触時点)の移動側ヘッド11Bの座標を記憶部44に記憶させる(ステップS8)。
【0063】
具体的に、上記ステップS8では、移動側ヘッド11Bの座標として、図8に示す基準点P2のX,Y座標が記憶される。基準点P2は、移動側ヘッド11Bについて予め定められており、例えば移動側ヘッド11Bの中心とすることができる。一方、固定側ヘッド11Aにも同様の基準点P1が設定されている。上述したとおり、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触するとき、固定側ヘッド11Aは上記基準位置(マーク認識カメラ27が基準マークM1を認識する位置)に固定されるから(上記ステップS3)、この固定側ヘッド11Aの基準点P1の座標は一定となる。
【0064】
次いで、ヘッド制御部42は、移動側ヘッド11Bを第2初期位置に移動させる(ステップS9)。第2初期位置は、図9に実線で示すように、固定側ヘッド11Aから+X側に少し離れた位置である。また、移動側ヘッド11Bが第2初期位置に移動したとき、移動側ヘッド11Bと固定側ヘッド11Aとは、X方向視で部分的に重複するような位置関係になる。言い換えると、第2初期位置は、そこから-X側に移動した移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触するような位置に設定されている。
【0065】
次いで、ヘッド制御部42は、図9に白抜き矢印で示すように、移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに向けて低速で単軸移動させる(ステップS10)。すなわち、ヘッド制御部42は、X軸サーボモータ31の駆動により、移動側ヘッド11Bを上述した第2初期位置から-X側に、X軸に沿って直線的に移動させる。このときの移動側ヘッド11Bの移動速度は、通常モードのときの移動速度よりも遅くされる。
【0066】
次いで、ヘッド制御部42は、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、ヘッド制御部42は、X軸サーボモータ31の電流値を電流センサSN3から取得し、取得した当該電流値が図6に示す判定閾値を超えた場合に、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したと判定する。
【0067】
上記ステップS11でNOと判定されて移動側ヘッド11Bが未だ固定側ヘッド11Aに接触していないことが確認された場合、ヘッド制御部42は、上記ステップS10の制御(移動側ヘッド11Bの-X方向移動)を継続する。
【0068】
一方、上記ステップS11でYESと判定されて移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したことが確認された場合、ヘッド制御部42は、X軸サーボモータ31の駆動を停止して移動側ヘッド11Bを停止させるとともに、その時点(接触時点)の移動側ヘッド11Bの座標を記憶部44に記憶させる(ステップS12)。ここで記憶される座標は、移動側ヘッド11Bの基準点P2(図10)のX,Y座標である。
【0069】
次いで、ヘッド制御部42は、移動側ヘッド11Bを第3初期位置に移動させる(ステップS13)。第3初期位置は、図11に実線で示すように、固定側ヘッド11Aから-Y側に少し離れた位置である。また、移動側ヘッド11Bが第3初期位置に移動したとき、移動側ヘッド11Bと固定側ヘッド11Aとは、Y方向視で少なくとも部分的に重複するような位置関係になる。言い換えると、第3初期位置は、そこから+Y側に移動した移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触するような位置に設定されている。
【0070】
次いで、ヘッド制御部42は、図11に白抜き矢印で示すように、移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに向けて低速で単軸移動させる(ステップS14)。すなわち、ヘッド制御部42は、Y軸サーボモータ32の駆動により、移動側ヘッド11Bを上述した第3初期位置から+Y側に、Y軸に沿って直線的に移動させる。このときの移動側ヘッド11Bの移動速度は、通常モードのときの移動速度よりも遅くされる。
【0071】
次いで、ヘッド制御部42は、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したか否かを判定する(ステップS15)。すなわち、ヘッド制御部42は、Y軸サーボモータ32の電流値を電流センサSN4から取得し、取得した当該電流値が図6に示す判定閾値を超えた場合に、移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したと判定する。
【0072】
上記ステップS15でNOと判定されて移動側ヘッド11Bが未だ固定側ヘッド11Aに接触していないことが確認された場合、ヘッド制御部42は、上記ステップS14の制御(移動側ヘッド11Bの+Y方向移動)を継続する。
【0073】
一方、上記ステップS15でYESと判定されて移動側ヘッド11Bが固定側ヘッド11Aに接触したことが確認された場合、ヘッド制御部42は、Y軸サーボモータ32の駆動を停止して移動側ヘッド11Bを停止させるとともに、その時点(接触時点)の移動側ヘッド11Bの座標を記憶部44に記憶させる(ステップS16)。ここで記憶される座標は、移動側ヘッド11Bの基準点P2(図12)のX,Y座標である。
【0074】
次いで、ヘッド制御部42は、接触による異常が発生したか否かを判定する(ステップS17)。すなわち、ヘッド制御部42は、上述したステップS1のときと同様、固定側ヘッド11A及び移動側ヘッド11Bをそれぞれ上記基準位置(カメラが基準マークM1を認識する位置)まで移動させ、移動後の各ヘッド11A,11Bの座標をモータのエンコーダ情報に基づき特定する。そして、特定した各ヘッド11A,11Bの座標を比較して、当該座標が一致しているか否かを判定する。座標が一致している場合、移動側ヘッド11Bと固定側ヘッド11Aとの接触前と接触後で特に状態変化は起きていないことになる。この場合は、接触による異常、例えば部品の変形や破損等の異常は発生していないと判定される。逆に、座標にずれが存在する場合は、接触による異常が発生したと判定される。
【0075】
上記ステップS17でYESと判定されて接触による異常が発生したことが確認された場合、制御ユニット40の表示制御部43は、当該異常の発生を示す情報を表示装置50に表示させる(ステップS18)。すなわち、表示制御部43は、表示装置50を通じて、接触による異常が発生したことをオペレータに報知する。
【0076】
一方、上記ステップS17でNOと判定されて接触による異常が発生しなかったことが確認された場合、制御ユニット40の演算部41は、先のステップで記憶された接触時の各ヘッド11,11Bの座標に基づいて、接触パターンごとにヘッド間距離を算出する(ステップS19)。
【0077】
具体的に、演算部41は、上記ステップS8で記憶された各ヘッドの座標、つまり移動側ヘッド11Bが-X側から固定側ヘッド11Aに接触したときの基準点P1,P2の座標に基づいて、両基準点P1,P2同士のX方向の距離を求め、これを第1ヘッド間距離L1(図8)として算出する。同様に、演算部41は、上記ステップS12で記憶された各ヘッドの座標、つまり移動側ヘッド11Bが+X側から固定側ヘッド11Aに接触したときの基準点P1,P2の座標に基づいて、両基準点P1,P2同士のX方向の距離を求め、これを第2ヘッド間距離L2(図10)の測定値として算出する。さらに、演算部41は、上記ステップS16で記憶された各ヘッドの座標、つまり移動側ヘッド11Bが-Y側から固定側ヘッド11Aに接触したときの基準点P1,P2の座標に基づいて、両基準点P1,P2同士のY方向の距離を求め、これを第3ヘッド間距離L3(図12)として算出する。
【0078】
言い換えると、本実施形態において、第1ヘッド間距離L1は、移動側ヘッド11Bが-X側から固定側ヘッド11Aに接触する第1パターンの接触が起きたときのX方向のヘッド間距離であり、第2ヘッド間距離L2は、移動側ヘッド11Bが+X側から固定側ヘッド11Aに接触する第2パターンの接触が起きたときのX方向のヘッド間距離であり、第3ヘッド間距離L3は、移動側ヘッド11Bが-Y側から固定側ヘッド11Aに接触する第3パターンの接触が起きたときのY方向のヘッド間距離である。上記ステップS19の演算を通じて得られた当該各ヘッド間距離L1~L3は、移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに実際に接触させることで得られた測定値として位置づけられる。
【0079】
次いで、ヘッド制御部42は、上記ステップS19で得られた各ヘッド間距離L1~L3の測定値が異常であるか否かを判定する(ステップS20)。すなわち、ヘッド制御部42は、各ヘッド間距離L1~L3の測定値を、予め記憶部44に記憶された設計値と比較することにより、上記測定値が異常であるか否かを判定する。例えば、記憶部44には、固定側ヘッド11A及び移動側ヘッド11Bの設計寸法がそれぞれ記憶されている。ヘッド制御部42は、これら各ヘッド11A,11Bの設計寸法から定まる各ヘッド間距離を設計値として、この設計値と上記測定値(L1~L3)との差異を算出する。そして、算出した当該差異が、製造上想定される誤差を有意に上回る場合に、上記測定値は異常であると判定する。なお、算出した差異が誤差を有意に上回る状況は、例えば固定側ヘッド11A又は移動側ヘッド11Bとして本来と異なるタイプのヘッドが誤って取り付けられた場合に生じ得る。
【0080】
上記ステップS20でYESと判定されて各ヘッド間距離L1~L3の測定値が異常であることが確認された場合、表示制御部43は、当該異常を示す情報を表示装置50に表示させる(ステップS18)。すなわち、表示制御部43は、表示装置50を通じて、各ヘッド間距離L1~L3の測定値が異常であることをオペレータに報知する。
【0081】
一方、上記ステップS20でNOと判定されて各ヘッド間距離L1~L3の測定値が異常でないことが確認された場合、表示制御部43は、当該ヘッド間距離L1~L3の測定値をそれぞれ表示装置50に表示させるとともに、当該測定値を反映するか否かをオペレータに問い合わせる内容を表示装置50に表示させる(ステップS21)。
【0082】
次いで、ヘッド制御部42は、上記測定値を反映することにオペレータが同意したか否かを判定する(ステップS22)。例えば、上記の表示を見たオペレータは、図外の入力端末を用いて、上記測定値を反映する選択肢か、又は上記測定値の反映を見合わせる選択肢のいずれかを選択する操作を行う。ヘッド制御部42は、この選択操作の状況に基づいて、上記測定値の反映にオペレータが同意したか否か、つまり測定値を反映してOKか否かを判定する。
【0083】
上記ステップS22でYESと判定されて上記測定値の反映がOKであることが確認された場合、ヘッド制御部42は、上記測定値を記憶部44に記憶させることにより、上記測定値を反映する(ステップS23)。すなわち、ヘッド制御部42は、記憶部44に記憶される各ヘッド間距離L1~L3の値を更新し、上記ステップS19で得られた測定値へと変更する。更新後の値、つまり各ヘッド間距離L1~L3の測定値は、以後の制御において各ヘッド11A,11Bの移動ルートを決定する際のパラメータ等として利用される。
【0084】
一方、上記ステップS22でNOと判定されて上記測定値の反映がNGであることが確認された場合、ヘッド制御部42は、上記測定値の反映を行わない。この場合、以降の制御では、各ヘッド11A,11Bの設計寸法から定まるヘッド間距離L1~L3の設計値が用いられることになる。
【0085】
なお、上述した図3図5の処理において、ステップS6,S10,S14は本発明における「移動ステップ」に対応し、ステップS7,S11,S15は本発明における「判定ステップ」に対応し、ステップS19は本発明における「測定ステップ」に対応し、ステップS4は本発明における「閾値変更ステップ」に対応し、ステップS17は本発明における「確認ステップ」に対応し、ステップS18は本発明における「報知ステップ」に対応し、ステップS21は本発明における「問合せステップ」に対応している。
【0086】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態では、第1ヘッド11Aと第2ヘッド11Bとの距離であるヘッド間距離L1~L3を測定するために、基準位置に固定された第1ヘッド11A(固定側ヘッド)に第2ヘッド11B(移動側ヘッド)を接触させる動作が行われ、当該接触が確認されたときの両ヘッド11A,11Bの座標に基づいて、上記ヘッド間距離L1~L3が算出される。このような構成によれば、ヘッド11A,11B同士の衝突を回避しつつタクトタイムを低減できるという利点がある。
【0087】
すなわち、本実施形態では、2つのヘッド11A,11Bが実際に接触したときの座標に基づいてヘッド間距離L1~L3が算出されるので、各ヘッド11A,11Bの実際の寸法誤差又は組付け誤差を反映した正確なヘッド間距離L1~L3を測定することができる。正確なヘッド間距離L1~L3が分かれば、部品を実装する際の各ヘッド11A,11Bの移動ルートとして、両者の衝突を避け得るできるだけ短い移動ルートを設定することができる。これにより、各ヘッド11A,11Bの移動に要する時間を短縮することができ、部品実装のタクトタイムを低減することができる。
【0088】
例えば、2つのヘッド11A,11Bの双方を用いて部品を実装する際に、各ヘッド11A,11Bを直線的に最短距離で移動させると両者が衝突(接触)してしまう場合がある。このような場合、衝突が起きないように移動ルートを変更する必要があるが、正確なヘッド間距離L1~L3が分かっていないと、例えばヘッド間距離L1~L3の設計値に基づいて移動ルートを変更しなければならず、変更後の移動ルートが長尺化する可能性がある。すなわち、ヘッド間距離L1~L3の設計値しか分からない状況では、考えられる最大の寸法誤差や組付け誤差が存在してもヘッド11A,11B同士が衝突しないように、ヘッド11A,11B同士の距離が比較的大きく保たれる安全な移動ルートに変更する必要がある。しかしながら、このような移動ルートは、ヘッド11A,11B同士が互いに大きく迂回するような距離の長いルートとなり易い。
【0089】
これに対し、実際に接触したときの座標に基づく正確なヘッド間距離L1~L3が測定される本実施形態では、この測定されたヘッド間距離L1~L3に基づいて、ヘッド11A,11B同士を衝突が起きない範囲でできるだけ近づけることができる。したがって、各ヘッド11A,11Bを最短距離で移動させると衝突が起きるような場合において、当該衝突を避けるためのルート変更を最小限に留めることができる。これにより、各ヘッド11A,11Bの移動距離が短く済むので、ヘッド11A,11B同士の衝突を回避しながらタクトタイムを可及的に低減することができる。
【0090】
しかも、本実施形態では、ヘッド11A,11B同士の衝突の際に一方のヘッド(第2ヘッド11B)が定位置に固定されるので、2つのヘッド11A,11Bを移動させながら接触させるよりも接触時の座標を特定し易く、当該座標に基づき精度よくヘッド間距離L1~L3を算出することができる。
【0091】
また、本実施形態では、固定側ヘッド11A(第1ヘッド)への接近方向が異なる複数の接触パターンで移動側ヘッド11B(第2ヘッド)が固定側ヘッド11Aに接触させられるとともに、当該接触パターンごとにヘッド間距離が算出される。このような構成によれば、想定される接触パターンが複数存在する場合でも、それぞれの接触時のヘッド間距離を適切に算出することができる。例えば、本実施形態のように、-X側から接触する第1パターン(図8)と、+X側から接触する第2パターン(図10)と、-Y側から接触する第3パターン(図12)と、の3つの接触パターンが存在する場合に、各パターンによる接触時のヘッド間距離を、それぞれ第1ヘッド間距離L1、第2ヘッド間距離L2、第3ヘッド間距離L3として適切に算出することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記ヘッド間距離L1~L3を算出する測定モードのときに、移動側ヘッド11Bを駆動するX軸サーボモータ31又はY軸サーボモータ32の電流値が検出され、検出された当該電流値に基づいてヘッド11A,11B同士の接触が判定される。このように、接触に伴い値が上昇するパラメータであるモータ電流値に基づき接触を判定した場合には、当該電流値が所定の閾値(判定閾値)を超えたときに接触が起きたと判定することができ、容易かつ適切に判定を行うことができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記接触判定を行う前に、接触によるエラーを検出するためのモータ電流値の閾値であるエラー閾値が、第1エラー閾値からこれよりも大きい第2エラー閾値に変更(増大)されるとともに、変更後の当該第2エラー閾値よりも小さい値に設定された判定閾値を用いて上記接触判定が行われる。このような構成によれば、ヘッド間距離L1~L3の測定のためにあえてヘッド11A,11B同士を接触させる行為がエラーとして認識されるのを防止できるとともに、変更(増大)後のエラー閾値(第2エラー閾値)よりも小さい判定閾値を用いてヘッド11A,11B同士の接触を適切に判定することができる。
【0094】
また、本実施形態では、ヘッド11A,11B同士を接触させる際に、固定側ヘッド11Aが基準マークM1の位置つまり基準位置に配置されるとともに、当該固定側ヘッド11Aに備わるマーク認識カメラ27の認識状態に基づいて、固定側ヘッド11Aが上記基準位置に固定されていることが確認される。このような構成によれば、固定側ヘッド11Aが基準位置から動いていないことを確認しながら移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに接触させることができ、接触時のヘッド間距離L1~L3を精度よく算出することができる。
【0095】
また、本実施形態では、移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに接触させた後、移動側ヘッド11B及び固定側ヘッド11Aを上記基準位置に配置したときの両ヘッド11A,11Bの座標に基づいて、上記接触による異常が生じていないことが確認される。このような構成によれば、接触時の座標に基づきヘッド間距離L1~L3を算出しても問題ない状況であることを確認できるとともに、その後に行われる基板Pの実装に支障がないことを保障することができる。
【0096】
また、本実施形態では、算出されたヘッド間距離L1~L3が想定範囲から外れた異常値である場合に、その旨が表示装置50を通じてオペレータに報知される。このような構成によれば、例えば本来と異なるタイプのヘッドが誤って取り付けられた場合などに、これをオペレータに気付かせることができる。
【0097】
一方、算出されたヘッド間距離L1~L3が異常値でない場合には、ヘッド間距離の更新の要否が表示装置50を通じてオペレータに問い合わせられる。このような構成によれば、ヘッド間距離L1~L3の測定結果を実際に反映するか否かの判断をオペレータに委ねることができる。
【0098】
[変形例]
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、上記実施形態では、移動側ヘッド11Bとの接触時に固定側ヘッド11Aが基準位置から動いていないことを確認する等の目的で、固定側ヘッド11Aに取り付けたマーク認識カメラ27で基台2上の基準マークM1を認識したが、カメラとマークとの位置関係を逆にしてもよい。すなわち、固定側ヘッド11Aの適宜の位置に基準マークを付すとともに、マーク認識カメラ27と同様のカメラを基台2に取り付け、当該カメラで固定側ヘッド11Aの基準マークを認識してもよい。言い換えると、ヘッドが基準位置にあることを確認するためのカメラは、基台に付された基準マークをヘッド側から認識するカメラでもよいし、ヘッドに付された基準マークを基台側から認識するカメラでもよい。
【0100】
上記実施形態では、固定側ヘッド11A(第1ヘッド)に移動側ヘッド11B(第2ヘッド)が接触したか否かを、移動側ヘッド11Bを駆動するモータ(X軸サーボモータ31又はY軸サーボモータ32)の電流値に基づき判定したが、これに代えて、固定側ヘッド11Aを駆動するモータ(X軸サーボモータ21又はY軸サーボモータ22)の電流値に基づき接触を判定してもよい。あるいは、固定側ヘッド11Aを駆動するモータの電流値と移動側ヘッド11Bを駆動するモータの電流値との双方の値に基づいて接触を判定してもよい。言い換えると、移動側ヘッドと固定側ヘッドとの接触は、移動側ヘッドを駆動するモータと固定側ヘッドを駆動するモータとの少なくとも一方の電流値に基づき判定すればよく、どの電流値を用いるかは適宜変更可能である。
【0101】
上記実施形態では、電流センサ(SN1~SN3)により検出されるモータ電流値に基づいてヘッド11A,11B同士の接触を判定したが、接触判定用に検出されるパラメータは、接触に伴い値が上昇するパラメータであればよく、電流値以外のパラメータであってもよい。例えば、ヘッド11A,11Bに作用する荷重を検出する荷重センサを用いて接触を判定してもよい。
【0102】
上記実施形態では、移動側ヘッド11Bを固定側ヘッド11Aに接触させた後、移動側ヘッド11B及び固定側ヘッド11Aを基準位置(カメラが基準マークM1を認識する位置)に配置したときの両ヘッド11A,11Bの座標に基づいて、上記接触による異常が生じていないことを確認したが、この確認のために両ヘッド11A,11Bが配置される位置は、予め定められた一定の位置(所定位置)であればよく、上記基準位置に限られない。
【0103】
上記実施形態では、X軸サーボモータ21及びY軸サーボモータ22を含む第1移動機構を用いて第1ヘッド11AをX方向及びY方向に移動させるとともに、X軸サーボモータ31及びY軸サーボモータ32を含む第2移動機構を用いて第2ヘッド11BをX方向及びY方向に移動させたが、上記第1移動機構及び第2移動機構は、サーボモータを用いたものに限られない。例えば、リニアモータを含む移動機構を用いて各ヘッド11A,11Bを移動させてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 表面実装機
2 基台
11A 第1ヘッド(固定側ヘッド)
11B 第2ヘッド(移動側ヘッド)
21 X軸サーボモータ(第1モータ)
22 Y軸サーボモータ(第1モータ)
27 マーク認識カメラ(カメラ)
31 X軸サーボモータ(第2モータ)
32 Y軸サーボモータ(第2モータ)
37 マーク認識カメラ(カメラ)
41 演算部
42 ヘッド制御部(移動制御部、判定部)
L1~L3 ヘッド間距離
M1 基準マーク
P 基板
図1
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