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特開2024-16204抗TRKBモノクローナル抗体および使用の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016204
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】抗TRKBモノクローナル抗体および使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240130BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/40 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023191236
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2020517858の分割
【原出願日】2018-11-28
(31)【優先権主張番号】62/592,657
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・ディー・クロール
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】イン・フー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】TrkBに特異的に結合する抗体およびそれを使用する方法を提供する。
【解決手段】インビトロにおいて網膜神経節細胞の生存を増強する効果により示される神経保護性のアゴニスト抗体が開示され、これらのアゴニスト抗体は、緑内障を含む眼の障害などの処置において用いることができる。加えて、他の神経細胞疾患または障害が、部分的に神経細胞の損傷により特徴付けられるものを含め、これらのアゴニスト抗体での処置により利益を得る。ある種の実施形態において、本発明は、TrkBに結合し、細胞シグナル伝達を仲介する抗体を含む。本発明の抗体は、注射用に賦形剤を用いて製剤化された完全ヒト非天然抗体であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)に含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3);ならびに
配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む、前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対のCDRを含む、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項1または2に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
(a)配列番号4、20、36、50、60、および69からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)配列番号6、22、38、51、61、および70からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、40、52、62、および71からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、44、54、64、および73からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、46、55、65、および74からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、48、56、66、および75からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
(a)配列番号4-6-8-12-14-16;(b)配列番号20-22-24-28-30-32;(c)配列番号36-38-40-44-46-48;(d)配列番号50-51-52-54-55-56;(e)配列番号60-61-62-64-65-66;および(f)配列番号69-70-71-73-74-75からなる群より選択される6つのCDRのセット(HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約300nM未満のKでヒトTrkBに結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される、約150nM未満、約50pM未満、約100pM未満からなる群より選択されるKで、ヒトTrkBに結合する、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約10分より長い、約40分より長い、約120分より長いからなる群より選択される解離半減期(t1/2)で、ヒトTrkBに結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
約100pM未満のEC50で、BDNFの非存在下で、TrkBを発現するように操作された細胞において、ヒトTrkBシグナル伝達を活性化する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
約100pM未満のEC50で、BDNFの存在下で、TrkBを発現するように操作された細胞において、ヒトTrkBシグナル伝達の活性化を増強する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
ヒト化TrkBマウスの海馬に注射した場合に、TrkBリン酸化の増加により示されるTrkB活性化を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
初代マウス皮質ニューロンをアゴニスト抗TrkB抗体と共にインキュベートした後に示される、MAPK/ERKおよびPI3K/Aktシグナル伝達経路の活性化を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
TrkBヒト化ラットにおける視神経横断切断モデルにおいて示される、網膜神経節細胞の生存を増強する、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
ヒト化TrkBマウスにおいて体重減少を促進する、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
ヒト化TrkBマウスにおいて体脂肪量の減少を促進する、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
ヒト化TrkBマウスにおいて食物および水の摂取量の減少を促進する、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
ヒト化TrkBマウスにおいて自発運動活動を増大させる、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
(a)アゴニスト抗体である特性;
(b)25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約200nM未満のKでヒトTrkBに結合する特性;
(c)25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約10分よりも長い解離半減期(t1/2)でヒトTrkBに結合する特性;
(d)約100pM未満のEC50で、脳由来神経栄養因子(BDNF)の非存在下で、ヒトTrkBを発現するように操作された細胞において、ヒトTrkBシグナル伝達を活性化する特性;
(e)ヒトTrkB受容体についてホモ接合性である(TrkBhu/hu)マウスの海馬に注射した場合に、TrkBリン酸化を増強する特性;
(f)ヒトTrkB受容体についてホモ接合性である(TrkBhu/hu)マウスに注射した場合に、体重減少を促進する特性;
(g)ヒト化TrkBラットにおける視神経横断切断モデルにおいて評価される、網膜神経節細胞(RGC)の生存を増大させる特性;
(h)MAPK/ERKおよびPI3K/Aktシグナル伝達経路を活性化する特性;
(i)インビトロにおいて神経細胞の生存を増強/増大する特性;ならびに
(j)5nM未満のIC50でBDNFおよび/またはNT-4へのTrkBの結合を遮断する特性
からなる群より選択される1つまたはそれ以上の特性を示す、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、および薬学的に許容し得る担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗TrkB抗体またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項21】
請求項20に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のベクターを発現する細胞。
【請求項23】
TrkBにより仲介される生物学的活性を増強するための組成物の使用であって、
TrkBを、生物学的有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載のアゴニスト抗TrkB抗体と接触させること、またはTrkBを、生物学的有効量の請求項1~5のいずれか1項に記載のアゴニスト抗TrkB抗体を含有する医薬組成物と接触させることを含む前記使用。
【請求項24】
生物学的活性は、神経細胞の保護または神経細胞の生存であり、神経細胞の保護または神経細胞の生存は、TrkBがアゴニスト抗TrkB抗体と接触すると増強される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
TrkBをアゴニスト抗TrkB抗体と接触させることは、網膜神経節細胞(RGC)の神経保護および生存をもたらす、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
TrkB活性もしくは発現に関連する疾患もしくは障害を処置もしくは予防するため、またはTrkB活性もしくは発現に関連する該疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するための組成物の使用であって、かかる処置を必要とする対象に、治療上有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載のアゴニスト抗TrkB抗体を投与すること、または治療上有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載のアゴニスト抗TrkB抗体を含有する医薬組成物を投与することを含む前記使用。
【請求項27】
疾患または障害は、緑内障、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、虚血性視神経症、視神経炎、網膜虚血、光受容体変性、網膜色素変性、および網膜動脈もしくは静脈閉塞からなる群より選択される眼の疾患または障害である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
疾患または障害は、緑内障である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
対象において体重の低減を達成するための組成物の使用であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のTrkBに特異的な抗体もしくはその抗原結合フラグメントであるTrkBアゴニスト、または該抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を、該対象に投与することを含む前記使用。
【請求項30】
対象において体脂肪量の低減を達成するための組成物の使用であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のTrkBに特異的な抗体もしくはその抗原結合フラグメントであるTrkBアゴニスト、または該抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を、該対象に投与することを含む前記使用。
【請求項31】
対象において神経細胞の生存を促進するための組成物の使用であって、方法は、治療上有効量の請求項1~5のいずれか1項に記載のTrkBに特異的な抗体もしくはその抗原結合フラグメントであるTrkBアゴニスト、または治療上有効量の該抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を、該対象に投与することを含む前記使用。
【請求項32】
TrkBを接触させることは、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む注射用製剤を患者に注射することにより実行される、請求項23~31のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)モノクローナル抗体に関する。より具体的には、本発明は、抗TrkBモノクローナル抗体を含む組成物およびこれらの抗体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)は、TrkAおよびTrkCを含む単一膜貫通型受容体チロシンキナーゼのファミリーに属する。これらの受容体キナーゼは、神経細胞の生存および発生に必要とされるニューロトロフィンの活性を仲介する。ニューロトロフィンには、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、およびニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)が含まれるが、これらに限定されない。(非特許文献1)。
【0003】
TrkBは、BDNFの高親和性受容体であるが(非特許文献2)、NT4/5に結合することも知られている。trkBへのBDNFの結合は、受容体の二量体化を引き起こし、受容体上の特定のチロシン残基の自己リン酸化、ならびにマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)、およびホスホリパーゼC-γ(PLC-γ)を含むシグナル伝達経路の活性化をもたらす。(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。BDNFに結合した後、TrkBは、神経細胞の分化および生存を含む、ニューロトロフィンの複数の作用を仲介する。
【0004】
TrkBは、神経細胞の生存、分化、および機能において主要な役割を果たすため、TrkBアゴニストは、多数の神経変性障害および代謝障害の処置に関して治療的見込みを有し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lo, K Yら、J. Biol. Chem., 280:41744~52頁(2005年)
【非特許文献2】Minichielloら、Neuron 21:335~45頁(1998年)
【非特許文献3】Jingら、Neuron 9:1067~1079頁(1992年)
【非特許文献4】Barbacid、J. Neurobiol. 25:1386~1403頁(1994年)
【非特許文献5】Bothwell、Ann. Rev. Neurosci. 18:223~253頁(1995年)
【非特許文献6】SegalおよびGreenberg、Ann. Rev. Neurosci. 19:463~489頁(1996年)
【非特許文献7】KaplanおよびMiller、Curr. Opinion Neurobiol. 10:381~391頁(2000年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ある種のTrkBアゴニストが、米国特許出願公開第2010/0150914号、米国特許出願公開第2003/0157099号、米国特許出願公開第2010/0196
390号、および米国特許出願公開第2017/0157099号に記載されている。しかしながら、本明細書に記載されるものなど、神経細胞の生存および神経保護特性を示すことに加えて、特異性の好転を提供する、さらなるTrkBアゴニストの同定および開発に対する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。本発明の単離された抗体およびその抗原結合フラグメントは、TrkB活性または発現に関連する疾患および障害を処置するのに有用である。
【0008】
広範な態様において、本発明は、TrkBを活性化し、神経細胞の生存を促進する抗TrkBアゴニスト抗体を提供する。これらの抗体は、神経機能を好転させるため、ならびに神経系損傷および/または慢性神経変性疾患に関連する神経細胞の損傷を含む細胞変性により部分的に特徴付けられる任意の疾患または障害を処置するために、用いることができる。
【0009】
ある種の実施形態において、抗TrkB抗体は、眼の種々の疾患または障害を処置するために有用であり得、緑内障などであるがこれに限定されない眼の疾患を処置するために、眼内または硝子体内へのデリバリー用に製剤化することができる。
【0010】
本発明の抗体は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)であるか、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)、もしくはscFvフラグメント)のみを含み、機能性に影響するように、例えば、残りのエフェクター機能を除去するように修飾される(Reddyら、2000年、J.Immunol.164:1925~1933頁)。
【0011】
本発明の典型的な抗TrkB抗体を、本明細書における表1および2に挙げる。表1に、典型的な抗TrkB抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のアミノ酸配列識別名を記載する。表2に、典型的な抗TrkB抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の核酸配列識別名を記載する。
【0012】
本発明は、表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0013】
本発明はまた、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0014】
本発明はまた、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれかと対形成される表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれかを含む、HCVRとLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態によると、本発明は、表1に挙げられる典型的な抗TrkB抗体のいずれかに含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗
体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0015】
従って、第1の態様において、本発明は、トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、表1に記載のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する3つの重鎖可変領域(HCVR)に含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3);ならびに表1に記載のアミノ酸配列またはそれ対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0016】
1つの実施形態において、抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントは、
(a)アゴニスト抗体である特性;
(b)25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約200nM未満のKでヒトTrkBに結合する特性;
(c)25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約10分よりも長い解離半減期(t1/2)でヒトTrkBに結合する特性;
(d)約35~82pMの範囲にあるEC50で、ヒトTrkBを発現するように操作された細胞において、脳由来神経栄養因子(BDNF)の非存在下で、ヒトTrkBシグナル伝達を活性化する特性;
(e)ヒトTrkB受容体についてホモ接合性である(TrkBhu/hu)マウスの海馬に注射した場合に、TrkBリン酸化を増強する特性;
(f)ヒトTrkB受容体についてホモ接合性である(TrkBhu/hu)マウスに注射した場合に、体重減少を促進する特性;
(g)ヒト化TrkBラットにおける視神経横断切断モデルにおいて評価される網膜神経節細胞(RGC)の生存を増大させる特性;
(h)MAPK/ERKおよびPI3K/Aktシグナル伝達経路を活性化する特性;
(i)インビトロにおいて神経細胞の生存を増大する特性;ならびに
(j)5nM未満のIC50で、TrkBのBDNFおよび/またはNT-4への結合を遮断する特性
からなる群より選択される1つまたはそれ以上の特性を示す。
【0017】
1つの実施形態において、本発明は、トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって:(a)表1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR);および(b)表1に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0018】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より選択されるHCVR配列のいずれか1つ、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるLCVR配列のいずれか1つ、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0019】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より
選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0020】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0021】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、ならびに配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0022】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対のCDRを含む。
【0023】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、および34/42からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対のCDRを含む。
【0024】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0025】
1つの実施形態において、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、および34/42からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0026】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR1アミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0027】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR2アミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0028】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR3アミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0029】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR1アミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖
CDR1(LCDR1)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0030】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR2アミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0031】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR3アミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0032】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR3アミノ酸配列のいずれかと対形成される表1に挙げられるHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含む、HCDR3とLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態によると、本発明は、表1に挙げられる典型的な抗TrkB抗体のいずれかに含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、8/16、24/32、40/48、52/56、62/66、および71/75からなる群より選択される。
【0033】
本発明はまた、表1に挙げられる典型的な抗TrkB抗体のいずれかに含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態において、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列セットは:(a)配列番号4、6、8、12、14、16;(b)配列番号20、22、24、28、30、32;(c)配列番号36、38、40、44、46、48;(d)配列番号50、51、52、54、55、56;(e)配列番号60、61、62、64、65、66;および(f)配列番号69、70、71、73、74、75からなる群より選択される。
【0034】
関連する実施形態において、本発明は、表1に挙げられる典型的な抗TrkB抗体のいずれかにより定義される、HCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。例えば、本発明は、2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列セットを含む、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定する方法および技術は、当該技術分野において周知であり、これを用いて、本明細書において開示される特定されたHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定することができる。CDRの境界を同定するために用いられる典型的な慣例は、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義を含む。一般的な用語において、Kabat定義は配列可変性に基づき、Chothia定義は、構造上のループ領域の位置に基づき、AbM定義は、KabatとChothiaのアプローチの間で妥協したものである。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immu
nological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年);Al-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948頁(1997年);およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:9268~9272(1989年)を参照。公的データベースも、抗体内のCDR配列を同定するために利用可能である。
【0035】
1つの実施形態において、本発明は、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって:
(a)配列番号4、20、36、50、60、および69からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)配列番号6、22、38、51、61、および70からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、40、52、62、および71からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、44、54、64、および73からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、46、55、65、および74からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、48、56、66、および75からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0036】
1つの実施形態において、本発明は、TrkBに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって:
(a)配列番号4、20、および36からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)配列番号6、22、および38からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、および40からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、および44からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、および46からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、および48からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0037】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは:
(a)配列番号4-6-8-12-14-16;(b)配列番号20-22-24-28-30-32;(c)配列番号36-38-40-44-46-48;(d)配列番号50-51-52-54-55-56;(e)配列番号60-61-62-64-65-66;および(f)配列番号69-70-71-73-74-75からなる群より選択される6つのCDRのセット(HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む。
【0038】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、TrkBへの結合について参照抗体と競合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、ここで、参照抗体は、配列番号2/10、18/26、34/42、4
9/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0039】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、参照抗体と同一のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、ここで、参照抗体は、配列番号2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0040】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約300nM未満のKでヒトTrkBに結合する。
【0041】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約200nM未満のKでヒトTrkBに結合する。
【0042】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約150nM未満のKでヒトTrkBに結合する。
【0043】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約50nM未満のKでヒトTrkBに結合する。
【0044】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約100pM未満のKでヒトTrkBに結合する。
【0045】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約10分よりも長い解離半減期(t1/2)でヒトTrkBに結合する。
【0046】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約40分よりも長いt1/2でヒトTrkBに結合する。
【0047】
1つの実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約120分よりも長いt1/2でヒトTrkBに結合する。
【0048】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、約100pM未満のEC50で、TrkBを発現するように操作された細胞において、BDNFの非存在下で、ヒトTrkBシグナル伝達を活性化する。
【0049】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、約35pM~約82pMの範囲にあるEC50で、TrkBを発現するように操作された細胞において、BDNFの非存在下で、ヒトTrkBシグナル伝達を活性化する。
【0050】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、約100pM未満のEC50で、TrkBを発現するように操作された細胞において、BDNFの存在下で、ヒトTrkBシグナル伝達の活性化を増強する。
【0051】
1つの実施形態において、ヒト化TrkBマウスの海馬に注射した場合に、TrkBリン酸化の増加により示されるTrkB活性化を示す、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0052】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、初代マウス皮質ニューロンをアゴニスト抗TrkB抗体と共にインキュベートした後に示される、MAPK/ERKおよびPI3K/Aktシグナル伝達経路の活性化を示す。
【0053】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、TrkBヒト化ラットにおける視神経横断切断モデルにおいて示される、網膜神経節細胞の生存を増強/増大させる。
【0054】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、インビトロにおいて神経細胞の生存を増強/増大させる。
【0055】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化TrkBマウスにおいて体重減少を促進する。
【0056】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化TrkBマウスにおいて体脂肪量の減少を促進する。
【0057】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化TrkBマウスにおいて食物および水の摂取量の減少を促進する。
【0058】
1つの実施形態において、TrkBに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化TrkBマウスにおける自発運動活動の増大を促進する。
【0059】
1つの実施形態において、本発明は、TrkBに特異的に結合し、約5nM未満のIC50でTrkBのBDNFへの結合を遮断する抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0060】
1つの実施形態において、本発明は、TrkBに特異的に結合し、約500pM未満のIC50でTrkBのBDNFへの結合を遮断する抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0061】
1つの実施形態において、本発明は、TrkBに特異的に結合し、約200pM未満のIC50でTrkBのBDNFへの結合を遮断する抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0062】
第2の態様において、本発明は、抗TrkB抗体またはその部分をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0063】
本発明はまた、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0064】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCDR1核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0065】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCDR2核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0066】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCDR3核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0067】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCDR1核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0068】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCDR2核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0069】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCDR3核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0070】
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子も提供し、ここで、HCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含み、ここで、HCDR1、HCDR2、HCDR3アミノ酸配列セットは、表1に挙げられる典型的な抗TrkB抗体のいずれかにより定義される通りである。
【0071】
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子も提供し、ここで、LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含み、ここで、L
CDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列セットは、表1に挙げられる典型的な抗TrkB抗体のいずれかにより定義される通りである。
【0072】
本発明はまた、HCVRおよびLCVR両方をコードする核酸分子も提供し、ここで、HCVRは、表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、ここで、LCVRは、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列、および表2に挙げられるLCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。本発明のこの態様によるある種の実施形態において、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、ここで、HCVRおよびLCVRはいずれも、表1に挙げられる同一の抗TrkB抗体に由来する。
【0073】
第3の態様において、本発明は、抗TrkB抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現する能力を有する組み換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち、表1に記載のHCVR、LCVR、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組み換え発現ベクターを含む。かかるベクターが導入される宿主細胞、ならびに抗体もしくは抗体フラグメントの産生が可能となる条件下で宿主細胞を培養すること、ならびにそのようにして産生される抗体および抗体フラグメントを回収することにより、抗体またはその部分を産生する方法もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0074】
本発明は、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗TrkB抗体を含む。ある実施形態において、不所望なグリコシル化部位を取り除くための修飾が有用であり得るか、または例えば、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)機能を増大させるために、オリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠く抗体が有用であり得る(Shieldら(2002年)JBC277:26733頁を参照)。他の適用において、ガラクトシル化という修飾は、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために成される。
【0075】
第4の態様において、本発明は、TrkBに特異的に結合する少なくとも1つの本発明の抗体またはその抗原結合フラグメント、および薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0076】
関連する態様において、本発明は、抗TrkB抗体および第2の治療剤の組み合わせである組成物を特徴付ける。1つの実施形態において、第2の治療剤は、抗TrkB抗体と有利に併用される任意の薬剤である。第2の治療剤は、神経変性疾患または障害の少なくとも1つの症状を改善するのに有用であり得る。
【0077】
第5の態様において、本発明は、TrkBにより仲介される生物学的活性を増強するための方法であって、TrkBを生物学的有効量の表1のアゴニスト抗TrkB抗体と接触させること、またはTrkBを生物学的有効量の表1のアゴニスト抗TrkB抗体を含有する医薬組成物と接触させることを含む方法を提供する。
【0078】
ある種の実施形態において、生物学的活性は、神経細胞の保護または神経細胞の生存であり、神経細胞の保護または神経細胞の生存は、TrkBがアゴニスト抗TrkB抗体と接触すると増強される。
【0079】
ある種の実施形態において、生物学的活性は、神経保護および網膜神経節細胞(RGC)の生存である。
【0080】
第6の態様において、本発明は、本発明の抗TrkB抗体または抗体の抗原結合部分を用いて、TrkB活性もしくは発現に関連する疾患もしくは障害、またはその疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を処置するための治療方法を提供する。本発明のこの態様による治療方法は、治療上有効量の、本発明の抗体または抗体の抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。処置される障害は、TrkBを標的化することおよび/またはTrkBにより仲介される細胞シグナル伝達を活性化することにより、好転されるか、改善されるか、阻害されるか、または予防される、任意の疾患または状態である。
【0081】
1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、網膜ニューロンの損傷または死を予防する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、網膜の変性が生じる病理疾患を処置する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、眼の手術、光への曝露、または他の環境的外傷の前または後に、生体の眼を処置し、それによって網膜細胞の変性を予防する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、光受容体損傷および生体の眼の変性を予防する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、可能性としてp75受容体などの他の受容体との交差反応性に起因する、副作用を誘導することなく、網膜ニューロンを保護する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、損傷した光受容体が回復または再生することを可能にする方法を提供し得る。
【0082】
ある種の実施形態において、本発明の抗体で処置しようとする疾患または障害は、緑内障、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、虚血性視神経症、視神経炎、網膜虚血、光受容体変性、網膜色素変性、レーバー先天黒内障、レーバー依存性視神経萎縮症、アッシャー症候群、シュタルガルト病、および網膜動脈もしくは静脈閉塞からなる群より選択される、眼の疾患または障害である。
【0083】
本発明の1つまたはそれ以上の抗TrkB抗体で処置することができる他の病的状態は、網膜剥離、光性網膜症(photic retinopathy)、手術により誘導される網膜症(機械的もしくは光に誘導されるかのいずれか)、毒素性網膜症、未熟児の網膜症、CMVもしくはAIDSに関連するHIV網膜症などのウイルス性網膜症、ブドウ膜炎、静脈もしくは動脈閉塞または他の血管障害に起因する虚血性網膜症、外傷もしくは眼の浸透病変に起因する網膜症、末梢硝子体網膜症、または遺伝性網膜変性を含む。
【0084】
1つの実施形態において、本発明のアゴニスト抗TrkB抗体で処置しようとする眼の疾患または障害は、緑内障である。
【0085】
本発明の第7の態様は、対象において体重の低減を達成するための方法であって、表1のTrkBアゴニスト抗体、または抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0086】
関連する態様において、本発明は、対象において体脂肪量の低減を達成するための方法であって、表1のTrkBアゴニスト抗体、または抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0087】
本発明の第8の態様は、対象において神経細胞の生存を促進する方法であって、治療上有効量の表1のTrkBアゴニスト抗体、または治療上有効量の抗体もしくはその抗原結
合フラグメントを含む医薬組成物を、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0088】
1つの実施形態において、上で記載された方法は、アゴニスト抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントを、それを必要とする対象に投与することによって達成することができ、ここで、アゴニスト抗TrkB抗体は、表1に記載のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)に含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに表1に記載のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0089】
1つの実施形態において、本発明の方法は、本発明のアゴニストTrkB抗体を投与することによって達成することができ、ここで、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より選択されるHCVR配列のいずれか1つ、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるLCVR配列のいずれか1つ、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0090】
1つの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0091】
1つの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0092】
1つの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、ならびに配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0093】
1つの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対のCDRを含む。
【0094】
1つの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、18/26、34/42、49/53、59/63、および68/72からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0095】
1つの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは:
(a)配列番号4、20、36、50、60、および69からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)配列番号6、22、38、51、61、および70からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、40、52、62、および71からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、44、54、64、および73からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、46、55、65、および74からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、48、56、66、および75からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む。
【0096】
1つの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは:(a)配列番号4-6-8-12-14-16;(b)配列番号20-22-24-28-30-32;(c)配列番号36-38-40-44-46-48;(d)配列番号50-51-52-54-55-56;(e)配列番号60-61-62-64-65-66;および(f)配列番号69-70-71-73-74-75からなる群より選択される6つのCDRのセット(HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む。
【0097】
1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体で処置しようとする疾患または障害は、肥満、および肥満から生じる任意の併発症である。
【0098】
TrkB活性または発現に関連する任意の疾患または障害は、本発明の抗体での処置に適していることが想定される。これらの疾患は、神経変性状態におけるものまたは神経損傷の後など、細胞の変性が明らかである任意の疾患を含み得る。
【0099】
他の実施形態は、次の詳細な説明の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】TRKBアゴニスト抗体H4H9816P2またはアイソタイプ対照抗体の海馬への直接的な注射の1時間後、4時間後、および18時間後における、ホモ接合性ヒト化TRKBマウスにおける総TRKBレベルおよびホスホ-TRKBレベルを評価するウエスタンブロットを示す図である。
図2】TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2が、MAPK/ERKおよびPI3K/Aktの下流経路を活性化したことを示す図である。この図は、出生後1日目のホモ接合性ヒト化TRKB仔マウスから単離した初代皮質ニューロンを種々のTrkBアゴニスト抗体またはBDNFで処置した15分後および2時間後における、ホスホ-TrkB、総TrkB、ホスホ-Akt、総AKT、ホスホ-ERK、および総ERKのウエスタンブロットを示す。
図3】3つのTrkBアゴニスト抗体が、インビトロにおいてSH-SY5Y細胞の生存を用量依存的に増加させたことを示す図である。アイソタイプ対照抗体は、細胞生存に影響を有さなかった。
図4】TrkBhu/huマウスおよび野生型マウスにおける抗TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2の薬物動態プロファイルを示す図である。マウスには、0日目に、10mg/kgの単回皮下用量を投与した。血清中の総H4H9816P2の濃度を、Gyrosイムノアッセイを用いて測定した。投薬の6時間後、1日後、2日後、3日後、6日後、9日後、16日後、21日後、および30日後におけるデータ点は、抗体の平均濃度を示す。H4H9816P2の総抗体濃度は、TrkBhu/huマウスについては黒色の実線円として表し、野生型マウスについては黒色の実線四角形として表す。データは、平均±標準偏差としてプロットした。
図5】抗マウスTrkBモノクローナル抗体がマウスまたはラットのTrkBとそのリガンドであるBDNF(脳由来神経栄養因子)との間の相互作用を遮断する能力を示す、図5Aおよび5Bからなる図である。ELISAに基づく方法を用いて、ある濃度範囲の抗マウスTrkBモノクローナル抗体およびアイソタイプ対照モノクローナル抗体の存在下において、マウスTrkB.hFc(2つのグラフのある図5A)およびラットTrkB.mmh(2つのグラフのある図5B)の、BDNFでコートしたプレートへの結合を評価した。挿入図(2つのグラフのある図5A)は、マウスTrkB.hFc(REGN2277)のBDNFへの結合の用量応答曲線を780pMのEC50値と共に示す。挿入図(2つのグラフのある図5B)は、ラットTrkB.mmh(REGN1808)のBDNFへの結合の用量応答曲線を2.2nMのEC50値と共に示す。モル濃度(M)は、モノクローナル抗体の抗体濃度を示す。エラーバーは、標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0101】
本発明が記載される前に、本発明は、記載される特定の方法および実験条件に制限されず、方法および条件自体が変動することは理解されるべきである。本明細書において用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのみであることも理解されるべきであり、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ制限されるので、制限であることは意図されない。
【0102】
別段定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書において用いられる用語「約」は、特定の引用される数値を参照して用いられる場合、その値が、1%を上回ることなしに、引用された値から変動し得ることを意味する。例えば、本明細書において用いられる表現「約100」は、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0103】
本明細書において記載されるものと類似または同等な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において用いられるが、好ましい方法および材料がここで記載される。本明細書において言及される全ての特許、出願、および非特許刊行物は、参照によってその全体として本明細書に組み入れられる。
【0104】
定義
「トロポミオシン受容体キナーゼB」としても知られている「TrkB」などの表現は、受託番号NP_001018074.1のアミノ酸残基32から430に記載のアミノ酸配列を含むヒト受容体(別の種に由来すると指定されていない限り)を指す。myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含有するヒトTrkBは、配列番号76として示される(アミノ酸残基1~399がヒトTrkBであり、アミノ酸残基400~427がmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグである)。ヒトTrkBタンパク質を含有する他のフォーマットは、マウスFc領域(残基400~632)を有するヒトTrkB(残基1~399)である配列番号77、およびヒトFc領域(残基400~626)を有するヒトTrkB(残基1~399)である配列番号78を含め、本明細書に記載されている。マウスTrkBは、受託番号NP_001020245のアミノ酸残基32から429に記載されているアミノ酸配列を含む。myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含有するマウスTrkBは、配列番号79として示される(アミノ酸残基1~398がマウスTrkBであり、アミノ酸残基399~426がmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグである)。マウスTrkBタンパク質を含有する他のフォーマットは、マウスFc領域(残基399~631)を有するマウスTrkB(残基1~398)である配列番号80、およびヒトFc領域(残基399~625)を有するマウスTrkB(残基1~398)である配列番号81を含め、本明細書に記載されている。ウサギTrkBは、受託番号XP_002721319.1のアミノ酸残基32から430に記載のアミノ酸配列を含む。myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含有するウサギTrkBは、配列番号82として示される(アミノ酸残基1~399がウサギTrkBであり、アミノ酸残基400~427がmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグである)。ウサギTrkBタンパク質を含有する他のフォーマットは、マウスFc領域(残基400~632)を有するウサギTrkB(
残基1~399)である配列番号83を含め、本明細書に記載されている。ラットTrkBは、受託番号NP_036863.1のアミノ酸残基32から429に記載のアミノ酸配列を含む。myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含有するラットTrkBは、配列番号84として示される(アミノ酸残基1~398がラットTrkBであり、アミノ酸残基399~426がmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグである)。ラットTrkBタンパク質を含有する他のフォーマットは、マウスFc領域(残基399~631)を有するラットTrkB(残基1~398)である配列番号85を含め、本明細書に記載されている。アカゲザル(マカク・マラッタ(Macaca mulatta))TrkBは、配列番号95として示され(受託番号NP_001248226.1のアミノ酸32から838)、カニクイザル(マカク・ファシクラリス(Macaca fascicularis))TrkBは、配列番号9
6として示される(受託番号XP_005582102.1のアミノ酸32から838)。
【0105】
ヒト「TrkA」タンパク質は、配列番号86として示され、アミノ酸1~375がTrkAであり(V263L、C300Sを有する受託番号NP_001012331.1のアミノ酸34~414)、アミノ酸376~378がGPGリンカーであり、アミノ酸379~605がヒトFcである。
【0106】
ヒト「TrkC」タンパク質は、配列番号87として示され、アミノ酸1~398がTrkCであり(受託番号NP_001012338.1のアミノ酸32~429)、アミノ酸399~426がmyc-myc-hisタグである。
【0107】
マウス「TrkC」タンパク質は、配列番号88として示され、アミノ酸1~398がTrkCであり(受託番号NP_032772.3のアミノ酸32~429)、アミノ酸399~426がmyc-myc-hisタグである。
【0108】
カニクイザル「TrkC」タンパク質は、配列番号89として示され、アミノ酸1~398がTrkCであり(受託番号XP_015308837.1のアミノ酸32~429)、アミノ酸399~426がmyc-myc-hisタグである。
【0109】
ある種の例において、TrkBタンパク質の外部ドメインならびに膜貫通型および細胞質ドメインを含む、TrkBタンパク質を発現する細胞株を調製した。例えば、配列番号91は、受託番号NP_001018074.1のアミノ酸32~822)またはUniprot Q16620-1に含有される3つ全てのドメインを含有するヒトTrkBタンパク質であり、アミノ酸1~398が外部ドメインであり、膜貫通型/細胞質領域は、アミノ酸残基約399~790により定義される。1つの例において、マウスTrkB(受託番号NP_032771.1のアミノ酸32~476、配列番号92も参照)を発現するTrkB細胞株を調製した。別の例において、受託番号NP_001020245.1のアミノ酸32~429(配列番号93も参照)またはUniprot番号P15209-1に由来するマウスTrkBの外部ドメイン、ならびにヒトTrkB膜貫通型および細胞質ドメイン(受託番号NP_001018074.1のアミノ酸431~822(配列番号91も参照))を有するキメラTrkBタンパク質を発現する細胞株を調製した。アフリカミドリザル(クロロセブス・サベウス(Chlorocebus sabaeus))TrkB(受
託番号XP_007967815.1のアミノ酸32~822(配列番号94も参照))を発現する細胞株もまた、調製した。
【0110】
用語「脳由来神経栄養因子」または「BDNF」は、TrkBのリガンドを指し、BDNFのアミノ酸配列は、配列番号90に示される(アイソフォームA 1~120、受託番号NP_733928.1のアミノ酸129~247、MetがN末端に付加されている)。本明細書に記載されるある種の実験において、BDNFの供給源は、R & D
Systems、248-BD/CFである。
【0111】
本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、およびタンパク質フラグメントへの参照は全て、非ヒト種に由来することが明示的に示されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質フラグメントのヒトバージョンを指すことを意図している。従って、表現「TrkB」は、非ヒト種に由来すること、例えば、「サルTrkB」、「マウスTrkB」、「ラットTrkB」などであることが示されない限り、ヒトTrkBを意味する。
【0112】
本明細書において用いられる表現「抗TrkB抗体」は、単一の特異性を有する1価の抗体、ならびにTrkBに結合する第1のアームおよび第2の(標的)抗原に結合する第2のアームを含み、抗TrkBアームが、本明細書において表1に記載のHCVR/LCVRまたはCDR配列のいずれかを含む、二重特異性抗体の両方を含む。表現「抗TrkB抗体」はまた、薬物または毒素(すなわち、細胞毒性剤)に結合した抗TrkB抗体またはその抗原結合部分を含む抗体-薬物複合体(ADC)も含む。表現「抗TrkB抗体」はまた、放射性核種に結合した抗TrkB抗体またはその抗原結合部分を含む抗体-放射性核種複合体(ARC)も含む。
【0113】
本明細書において用いられる用語「抗TrkB抗体」は、TrkBまたはTrkBの一部分に特異的に結合するかまたはそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」は、ジスルフィド結合により相互結合された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖である4つのポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、C1、C2、およびC3の3つのドメインを含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存される領域が散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、高頻度可変性の領域にさらに細分される。それぞれのVならびにVは、次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置された、3つのCDRおよび4つのFRを含む。本発明の異なる実施形態において、抗TrkB抗体(もしくはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であるか、または天然または人工的に修飾される。アミノ酸連続配列は、2つまたはそれ以上のCDRの隣り合った解析に基づき定義される。
【0114】
本明細書において用いられる用語「抗体」は、全長抗体分子の抗原結合フラグメントも含む。本明細書において用いられる用語、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などは、任意の酵素的に得られる、合成された、または遺伝子操作された、抗原に特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、タンパク質分解消化、または抗体可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴う組み換え遺伝子操作技術のような任意の適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から得ることができる。かかるDNAは公知であり、および/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、もしくは合成することができる。DNAは、配列決定され、化学的に、または分子生物学技術を用いることにより操作されて、例えば、1つもしくはそれ以上の可変および/もしくは定常ドメインが適切な配置に配置されるか、またはコドンが導入されるか、システイン残基が作製されるか、アミノ酸が修飾されるか、付加されるか、もしくは欠損される。
【0115】
抗原結合フラグメントの非限定的な例は、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補決定領域(CDR))、または限定されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメインが欠損した抗体、キメラ抗体、CDRが移植された抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニボディ、ナノボディ(例えば、1価のナノボディ、2価のナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような他の操作された分子もまた、本明細書において用いられる、表現「抗原結合フラグメント」に包含される。
【0116】
抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの可変ドメインを典型的に含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であり、少なくとも1つのCDRを一般的に含み、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接されるか、もしくはインフレームである。Vドメインと繋がったVドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VおよびVドメインは、任意の適切な配置で相対的に位置する。例えば、可変領域は、二量体であり、V-V、V-V、またはV-Vの二量体を含有する。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VまたはVドメインを含有する。
【0117】
ある種の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有する。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見出される可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な典型的配置は、(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-Cを含む。上で挙げられる典型的な配置のいずれかを含む、可変および定常ドメインの任意の配置において、可変ならびに定常ドメインは、互いに直接的に結合されるか、または完全もしくは部分的ヒンジもしくはリンカー領域により結合されるか、のいずれかである。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5個、10個、15個、20個、40個、60個、またはそれ以上)のアミノ酸からなり、単一のポリペプチド分子における隣接する可変および/または定常ドメイン間の可動性または半可動性の結合をもたらす。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、(例えば、ジスルフィド結合による)互いにおよび/または1つもしくはそれ以上の単量体VもしくはVドメインと非共有結合的に会合した、上で挙げられた可変ならびに定常ドメインの配置のいずれかのホモ-二量体またはヘテロ-二量体(または他の多量体)を含む。
【0118】
全長抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは、単特異性または多特異性(例えば、二重特異性)である。抗体の多特異性抗原結合フラグメントは、少なくとも2つの異なる可変ドメインを典型的には含み、ここで、それぞれの可変ドメインは、別々の抗原、または同一抗原上の異なるエピトープに特異的に結合する能力がある。本明細書において開示される典型的な二重特異性抗体フォーマットを含む、任意の多特異性抗体フォーマットは、当該技術分野において利用可能な慣例的技術を用いて、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの文脈において使用するために適合される。
【0119】
ある種の例において、例えば、例として神経腫瘍細胞の成長または増殖を阻害するために、TrkBと拮抗することが望ましい場合がある。しかしながら、本発明の抗体は、アゴニスト抗体として作用し、これは、神経細胞の生存のエンハンサーおよび神経保護剤と
しての機能を果たす。本発明の抗体は、TrkBとそのリガンドであるBDNFとの間の相互作用を増強することによって機能し得る。あるいは、本発明の抗体は、TrkBのそのリガンドとの相互作用を増強することを含まないメカニズムを通じて、TrkBシグナル伝達を仲介することができる。
【0120】
本明細書において用いられる用語「ヒト抗体」は、天然に存在しないヒト抗体を含むことが意図される。この用語は、非ヒト哺乳類において、または非ヒト哺乳類の細胞において、組み換え的に産生される抗体を含む。用語は、ヒト対象から単離された、またはヒト対象において生じた抗体を含むことは意図されない。
【0121】
本発明の抗体は、ある実施形態において、組み換えおよび/または天然に存在しない、ヒト抗体であり得る。本明細書において用いられる用語「組み換えヒト抗体」は、宿主細胞にトランスフェクトした組み換え発現ベクターを用いて発現された抗体(以下にさらに記載される)、組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下にさらに記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992年) Nucl. Acids Res. 20:6287~6295頁を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製、もしくは単離された抗体など、組み換え手段によって調製、発現、作製、または単離された全てのヒト抗体を含むことが意図される。ある種の実施形態において、かかる組み換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(またはヒトIg配列に関してトランスジェニックな動物が用いられる場合には、インビボでの体細胞変異誘発)に供され、これによって、組み換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内には天然に存在し得ない配列となる。
【0122】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連付けられた2つの形態で存在し得る。1つの形態において、免疫グロブリン分子は、二量体が重鎖の鎖間ジスルフィド結合によって一緒に保持されている、およそ150~160kDaの安定な四本鎖構築物を含む。第2の形態において、二量体は、鎖間ジスルフィド結合によって結合されず、共有結合した軽鎖および重鎖で構成される約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態は、親和性精製後であっても、分離することが極めて困難であった。
【0123】
種々のインタクトなIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域のアイソタイプに関連する構造的違いに起因するが、これに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第2の形態の出現を、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観察されるレベルまで、有意に低減することができる(Angalら(1993年) Molecular Immunology 30:105頁)。本発明は、ヒンジ領域、C2領域、またはC3領域に1つまたはそれ以上の変異を有する抗体を包含し、これは、例えば、産生時に、所望される抗体形態の収率を好転させるために望ましい可能性がある。
【0124】
用語「特異的に結合する」または「に特異的に結合する」などは、抗体もしくはその抗原結合フラグメントが、生理的条件下で比較的安定である抗原との複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6Mまたはそれよりも低い平衡解離定数によって特徴付けることができる(例えば、Kが小さいほど、より強固な結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。本明細書において記載される通り、TrkBに特異的に結合する抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)により同定されている。さらに、TrkBタンパク質および1つもしく
はそれ以上のさらなる抗原に結合する多特異性抗体、またはTrkBの2つの異なる領域に結合する二重特異性抗体は、それにもかかわらず、本明細書において用いられる「特異的に結合する」抗体とみなされる。
【0125】
本発明の抗体は、単離された抗体であり得る。本明細書において用いられる「単離された抗体」は、同定されており、その天然の環境の少なくとも1つの成分から分離および/または回収されている抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から、分離されているかまたは取り出されている抗体は、本発明の目的で、「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組み換え細胞内のインサイチュの抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程に供されている抗体である。ある種の実施形態によると、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0126】
本明細書において開示される抗TrkB抗体は、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠損を含む。かかる変異は、本明細書において開示されるアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手可能な配列と比較することにより、容易に確認することができる。一旦得られると、1つまたはそれ以上の変異を含有する抗体および抗原結合フラグメントは、結合特異性の好転、結合親和性の増大、アンタゴニストもしくはアゴニスト生物学的特性の好転または増強(場合によっては)、免疫原性の低減などのような1つまたはそれ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法において得られる抗体および抗原結合フラグメントは、本発明に包含される。
【0127】
本発明はまた、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有する、本明細書において開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗TrkB抗体も含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書において表1に記載されるHCVR、LCVR、および/もしくはCDRアミノ酸配列のいずれかに関連する10もしくはそれ以下、8つもしくはそれ以下、6つもしくはそれ以下、4つもしくはそれ以下などの保存的アミノ酸置換を有する、HCVR、LCVR、ならびに/またはCDRアミノ酸配列を有する抗TrkB抗体を含む。
【0128】
用語「エピトープ」は、パラトープとしても公知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する、抗原決定因子を指す。単一の抗原は、1つより多くのエピトープを有する。従って、異なる抗体は、抗原上の異なる範囲に結合し、異なる生物学的作用を有する。エピトープは、立体構造であってもよく、または直線状であってもよい。立体構造エピトープは、直線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントのアミノ酸が空間的に並置されることによって産生される。直線状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。ある種の状況において、エピトープは、抗原上の糖の部分、リン酸基、またはスルホニル基を含み得る。
【0129】
核酸もしくはそのフラグメントに言及している場合、用語「実質的な同一性」または「実質的に同一の」は、適切なヌクレオチド挿入または欠損を伴うかたちで別の核酸(もしくはその相補鎖)と最適に整列されると、以下で考察される通り、FASTA、BLAST、またはGapのような、配列同一性の任意の周知のアルゴリズムにより測定される、少なくとも約95%、より好ましくは、少なくとも約96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド塩基のヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。参照核酸分子に対する実質的な同一性を有する核酸分子は、ある種の例において、参照核酸分子によりコードされるポリペプチドと同一または実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0130】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な類似性」または「実質的に類似の」は、2つのペプチド配列が、例えば、デフォルトギャップウェイトを用いたプログラムGAPまたはBESTFITにより、最適に整列されると、少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは、少なくとも98%、または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、残基位置は、同一でなく、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が、保存的置換により互いに異なる場合において、パーセント配列同一性または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するよう上方調節される。この調節を成す手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994年)Methods Mol.Biol.24:307~331頁を参照(参照によって本明細書に組み入れられる)。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例は、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン、およびスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン、およびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸塩、およびグルタミン酸塩、ならびに(7)硫黄含有側鎖はシステイン、およびメチオニンである、を含む。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸塩-アスパラギン酸塩、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換は、Gonnetら(1992年)Science256:1443~1445頁(参照によって本明細書に組み入れられる)において開示されるPAM250対数尤度行列において正の値を有する任意の変化である。「中程度の保存的」置換は、PAM250対数尤度行列において負でない値を有する任意の変化である。
【0131】
配列同一性とも称される、ポリペプチドの配列類似性は、配列解析ソフトウェアを用いて典型的に測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠損、および他の修飾に割り当てられる類似性の測定を用いて、類似の配列を一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、生物の異なる種由来の相同な諸ポリペプチドの間、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間のような、密接に関連するポリペプチド間の配列相同性または配列同一性を決定するためのデフォルトパラメーターで用いられるGapおよびBestfitのようなプログラムを含む。例えば、GCG Version 6.1を参照。ポリペプチド配列はまた、デフォルトまたは推奨パラメーターを用いたFASTA;GCG Version 6.1におけるプログラムを用いても比較される。FASTA(例えば、FASTA2、およびFASTA3)は、クエリーと検索配列の間の最適オーバーラップの領域の整列化およびパーセント配列同一性をもたらす(上記、Pearson(2000年))。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する上での別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを用いた、コンピュータープログラムBLAST、特に、BLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschulら(1990年)J.Mol.Biol.215:403~410頁、およびAltschulら(1997年)Nucleic Acids Res.25:3389~402頁を参照(それぞれが、参照によって本明細書に組み入れられる)。
【0132】
抗体の生物学的特徴
本発明は、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約200nM未満のKでヒトTrkBに結合する抗TrkB抗体を含む。ある種の実施形態によると、本発明は、約600pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約150p
M未満、約100pM未満、約80pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約5pM未満、約3pM未満、または約1pM未満のKでヒトTrkBに結合する抗TrkB抗体を含む。
【0133】
本発明は、25℃または37℃において表面プラズモン共鳴により測定される約10分を上回る解離半減期(t1/2)でヒトTrkBに結合する抗TrkB抗体を含む。ある種の実施形態によると、本発明は、約20分よりも長い、約50分よりも長い、約100分よりも長い、約120分よりも長い、約150分よりも長い、約300分よりも長い、約350分よりも長い、約400分よりも長い、約450分よりも長い、約500分よりも長い、約550分よりも長い、約600分よりも長い、約700分よりも長い、約800分よりも長い、約900分よりも長い、約1000分よりも長い、約1100分、または約1200分よりも長いt1/2でヒトTrkBに結合する抗TrkB抗体を含む。
【0134】
本発明は、サルTrkB、またはマウスもしくはラットTrkBに結合する場合もしない場合もある抗TrkB抗体を含む。本明細書において用いられる場合、抗体が、表面プラズモン共鳴などの抗原結合アッセイにおいて試験した場合に、約1000nMより大きいKを示すか、またはかかるアッセイにおいていずれの抗原結合も示さない場合、抗体は、特定の抗原(例えば、サル、マウス、またはラットTrkB)に「結合しない」。本明細書のこの態様により、抗体が特定の抗原に結合するかしないかを決定するために用いることができる別のアッセイフォーマットは、ELISAである。
【0135】
本発明は、約100pM未満のEC50で、TrkB受容体を発現するように操作された細胞においてヒトTrkBシグナル伝達を活性化する抗TrkB抗体を含む。実施例5に記載されるアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイフォーマットを用いて、EC50値は、TrkBにより仲介されるシグナル伝達を観察されるシグナルの半最大値まで活性化するのに必要とされる抗体の濃度として計算することができる。それ故、ある種の実施形態によると、本発明は、本明細書において実施例5に記載されるアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイを用いて測定される、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、または約5pM未満のEC50で、BDNFの存在下または非存在下で、TrkB受容体を発現するように操作された細胞においてヒトTrkBシグナル伝達を仲介する抗TrkB抗体を含む。
【0136】
本発明は、実施例6において示されるように、ヒトTrkB受容体を発現するようにヒト化されたマウスにおいて海馬への直接的な注射の後に、TrkBリン酸化によって示されるように、TrkB受容体を活性化する抗TrkB抗体を含む。
【0137】
本発明は、ヒトTrkB受容体を発現するようにヒト化されたマウスにおいて体重減少を促進する抗TrkB抗体を含む。本発明の抗体はまた、これらのマウスにおいて体脂肪量の減少を促進し、自発運動活動を増大させ、同時に食物および水の摂取量を減少させるように機能する(実施例7を参照)。
【0138】
本発明の抗体は、ヒトTrkB受容体を発現するようにヒト化されたラットにおいて、視神経横断切断モデルにおいて試験した場合、網膜神経節細胞(RGC)の生存を促進する。実施例8を参照。
【0139】
本発明の抗体は、ヒト化TrkBマウスから得られた初代マウス皮質ニューロンの本発明の抗体への曝露によって示されるように、下流経路MAPK/ERKおよびPI3K/Aktを活性化する。(実施例9を参照)。
【0140】
本発明のアゴニスト抗TrkB抗体はまた、実施例10において示されるように、用量依存性様式でSH-SY5Y細胞の生存を促進する。
【0141】
本発明は、約5nMのIC50でTrkBのBDNFへの結合を遮断する抗TrkB抗体を含む。例えば、実施例12において示されるように、試験した3つ全ての抗体は、マウスまたはラットTrkBのBDNFへの結合を、50%を上回って遮断した。実施例12に記載されるアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイフォーマットを用いて、IC50値は、抗体の非存在下において観察される最大シグナルと比較した場合に、TrkBのBDNFへの結合を遮断するのに必要とされる抗体の濃度として計算することができる。それ故、ある種の実施形態によると、本発明は、本明細書において実施例12に記載されるアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイを用いて測定される、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、または約20pM未満のIC50で、TrkBのBDNFへの結合を遮断する抗TrkB抗体を含む。1つの実施形態において、本発明のTrkB抗体は、約180pM~約4nMの範囲にあるIC50で、TrkBのBDNFへの結合を遮断する。
【0142】
本発明の抗体の結合特徴(例えば、本明細書において上で言及されている結合特徴のいずれか)は、「表面プラズモン共鳴により測定される」に関して開示される場合、抗体と抗原との間の相互作用に関する関連する結合特徴が、表面プラズモン共鳴機器(例えば、Biacore(登録商標)機器、GE Healthcare)を用いて、本明細書において実施例3および4に説明されている標準的なBiacoreアッセイ条件または実質的に類似のアッセイフォーマットを用いて測定されることを意味する。ある種の実施形態において、結合パラメーターは、25℃で測定されるが、他の実施形態においては、結合パラメーターは、37℃で測定される。
【0143】
本発明は、TrkBに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、表1に挙げられるHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVRおよび/またはLCVRを含む抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0144】
本発明の抗体は、前述の生物学的特徴のうちの1つもしくはそれ以上、または任意のその組み合わせを有する。本発明の抗体の生物学的特徴の前述の一覧は、排他的であることを意図するものではない。本発明の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書における実施例を含む本開示の説明から当業者に明白であろう。
【0145】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明の抗体が結合するエピトープは、TrkBタンパク質の3個またはそれ以上(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、もしくはそれ以上)のアミノ酸の単一の連続配列からなる。あるいは、エピトープは、TrkBの複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなる。ある実施形態において、エピトープは、TrkBの表面上またはその付近に、例えば、そのリガンドであるBDNFと相互作用するドメインに位置する。他の実施形態において、エピトープは、TrkBリガンドと相互作用しないTrkBの表面上またはその付近に、例えば、抗体が、かかるエピトープに結合したときに、TrkBとそのリガンドとの間の相互作用を妨害しない、TrkBの表面上の位置
に、位置する。
【0146】
当業者に公知の種々の技術を用いて、抗体が、ポリペプチドもしくはタンパク質内の「1個またはそれ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定することができる。典型的な技術は、例えば、Antibodies、Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harb.、NY)において記載されるもののような、慣例的交差-遮断アッセイ、アラニンスキャンニング変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke、2004年、Methods
Mol Biol 248:443~463頁)、およびペプチド切断解析を含む。加えて、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出、および化学修飾のような方法が利用される(Tomer、2000年、Protein Science 9:487~496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために用いられる別の方法は、質量分析により検出される水素/ジュウテリウム交換である。一般的な用語において、水素/ジュウテリウム交換方法は、目的のタンパク質をジュウテリウム標識すること、続いて、抗体をジュウテリウムで標識されたタンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を、水に移し、抗体により保護される残基(これはジュウテリウム標識されたままとなる)以外の全ての残基で水素-ジュウテリウム交換が起こるようにする。抗体の解離後、標的タンパク質は、タンパク質分解酵素切断および質量分析に供され、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応するジュウテリウムで標識された残基が明らかにされる。例えば、Ehring (1999年) Analytical Biochemistry 267(2):252~259頁、EngenおよびSmith(2001年) Anal. Chem. 73:256A~265A頁を参照。
【0147】
本発明は、本明細書に記載される特定の典型的な抗体(例えば、本明細書において表1に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと同一のエピトープに結合する抗TrkB抗体を含む。同様に、本発明は、TrkBへの結合について、本明細書に記載される特定の典型的な抗体(例えば、本明細書において表1に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと競合する抗TrkB抗体も含む。
【0148】
当該技術分野において公知であり本明細書において例示される慣例的方法を用いることにより、抗体が、参照抗TrkB抗体と同一のエピトープに結合するか、または結合について参照抗TrkB抗体と競合するかどうかを容易に決定することができる。例えば、試験抗体が、本発明の参照抗TrkB抗体と同一のエピトープに結合するかを決定するために、参照抗体をTrkBタンパク質に結合させることを可能にする。次に、試験抗体がTrkB分子に結合する能力が評価される。試験抗体は、参照抗TrkB抗体との飽和結合後にTrkBに結合することができるなら、試験抗体は、参照抗TrkB抗体より異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方、試験抗体は、参照抗TrkB抗体との飽和結合後にTrk分子に結合することができないなら、次に、試験抗体は、本発明の参照抗TrkB抗体により結合されるエピトープと同一のエピトープに結合する。次に、さらなる慣例的実験(例えば、ペプチド変異および結合解析)を行い、試験抗体の結合の観察された欠如が、事実上、参照抗体と同一のエピトープへの結合に起因するかどうか、または立体的遮断(もしくは別の現象)が、観察された結合の欠如の原因であるかどうかを確認される。この選別の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または当該技術分野において利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを用いて行われる。本発明のある種の実施形態によると、例えば、1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰の一方の抗体が、競合的結合アッセイにおいて測定した場合に、他方の結合を、少なくとも50%阻害するが、好ましくは、75%、90%、またはさらには99%阻害する場合、2つの抗体は、同一の(または重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghansら、Cancer Res.199
0年50:1495~1502頁を参照)。あるいは、一方の抗体の結合を低減または除去する抗原における本質的に全てのアミノ酸変異が、他方の結合を低減または除去する場合、2つの抗体は同一のエピトープに結合するとみられる。一方の抗体の結合を低減または除去するアミノ酸変異のサブセットのみが、他方の結合を低減または除去する場合、2つの抗体は「重複するエピトープ」を有する。
【0149】
抗体が、結合について参照抗TrkB抗体と競合するかを決定するために、上で記載された結合方法論は、2つの方針で行われる。第1の方針において、参照抗体を、飽和条件下でTrkBタンパク質に結合させることを可能にし、続いて、試験抗体のTrkB分子への結合が評価される。第2の方針において、試験抗体を、飽和条件下でTrkB分子に結合させることを可能にし、続いて、参照抗体のTrkB分子への結合が評価される。両方の方針において、第1の(飽和)抗体のみが、TrkB分子に結合する能力があるなら、次に、試験抗体と参照抗体は、TrkBへの結合について競合すると結論付けられる(例えば、本明細書において実施例4に記載されるアッセイフォーマットを参照されたく、ここでは、TrkBタンパク質をセンサーチップに捕捉し、TrkBでコートしたセンサーチップを、参照抗体[mAb-1]および試験抗TrkB抗体[mAb-2]で逐次的および両方の結合順序で処置する)。当業者により理解される通り、結合について参照抗体と競合する抗体は、参照抗体と一致するエピトープに必ずしも結合しないが、重複または隣接するエピトープに結合することにより、参照抗体の結合を立体的に遮断する。
【0150】
ヒト抗体の調製
本発明の抗TrkB抗体は、完全ヒトであるが非天然である抗体であり得る。完全ヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を作製するための方法は、当該技術分野において公知である。任意のかかる公知の方法を、本発明の文脈において用いて、ヒトTrkBに特異的に結合するヒト抗体が作られる。
【0151】
VELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標))、またはモノクローナル抗体を作製する任意の他の公知の方法を用いて、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、アレルゲンに対する高親和性キメラ抗体が、まず単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが、抗原刺激に応答して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域部位に作動可能に結合したヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有する遺伝子導入マウスの作製に関与する。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に結合される。次に、DNAは、完全ヒト抗体を発現する能力がある細胞において発現される。
【0152】
一般的に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスを、目的の抗原でチャレンジし、リンパ系細胞(例えば、B細胞)を、抗体を発現するマウスから回収する。リンパ系細胞を、ミエローマ細胞株と融合させて、不死化ハイブリドーマ細胞株を調製し、かかるハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、所望されるアイソタイプの重鎖および軽鎖の定常領域に連結させることができる。かかる抗体タンパク質を、CHO細胞などの細胞において産生させることができる。あるいは、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異的リンパ球から直接的に単離してもよい。
【0153】
以下の実験の節に記載される通り、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する単離された高親和性キメラ抗体を、親和性、選択性、エピトープなどを含む、望ましい特徴について特徴付けおよび選択する。マウス定常領域を、次に、所望されるヒト定常領域と置き
換えて、本発明の完全ヒト抗体、例えば、野生型または修飾されたIgG1またはIgG4を生成する。選択される定常領域は、具体的な使用に応じて変動し得るが、高親和性の抗原結合および標的特異性の特徴は、可変領域に存在する。
【0154】
ある種の実施形態において、ヒトTrkB受容体を発現するように操作されたマウスまたはラットにおいて抗ヒトTrkB抗体を試験することが望ましい場合がある。これらのマウスまたはラットは、抗TrkB抗体が、ヒトTrkBにのみ結合し、マウスまたはラットTrkBとは交差反応しない状況において、有益であり得る。本発明におけるある種の実施例は、ヒトtrkBを発現するように遺伝子修飾されたマウスおよびラットを用いて実行した。当業者に公知の任意の方法を、かかるTrkBヒト化マウスおよびラットを生成するために用いることができる。
【0155】
一般的に、本発明の抗体は、非常に高い親和性を有し、典型的には、固相または液相のいずれかに固定された抗原への結合により測定した場合、約10-12~約10-9MのKを有する。
【0156】
生物学的等価物
本発明の抗TrkB抗体および抗体フラグメントは、記載される抗体のものと異なるが、ヒトTrkBに結合する能力を保持する、アミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。かかる変異体抗体および抗体フラグメントは、親配列と比較された場合、アミノ酸の1つまたはそれ以上の付加、欠失、または置換を含むが、記載される抗体のものと実質的に等価物である生物学的活性を示す。同様に、本発明のDNA配列をコードする抗TrkB抗体は、開示される配列と比較された場合、ヌクレオチドの1つまたはそれ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗TrkB抗体または抗体フラグメントに実質的な生物学的等価物である抗TrkB抗体または抗体フラグメントをコードする配列を含む。かかるバリアントアミノ酸およびDNA配列の例は、上で考察されている。
【0157】
2つの抗原結合タンパク質、または抗体は、例えば、吸収の速度および程度が、類似の実験条件下で同一のモル用量、単回用量もしくは複数回用量いずれかで投与される場合、有意な相違を示さない医薬等価物もしくは医薬代替物であるなら、生物学的等価物とみなされる。ある抗体は、その吸収の程度において等価物であるが、その吸収の速度において等価物でないなら、等価物または医薬代替物とみなされ、かかる吸収の速度における相違が意図的であり、標識において反映され、例えば、慢性的使用の際の有効な身体薬物濃度の到達に必須ではなく、研究される特定の薬物製品にとって医薬的に有意でないとみなされるので、生物学的等価物であると依然みなされる。
【0158】
1つの実施形態において、2つの抗原結合タンパク質の安全性、純度、および有効性において臨床上有意義な相違はないなら、2つの抗原結合タンパク質は生物学的等価物である。
【0159】
1つの実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、患者が、切り替えることなく継続される療法と比較して、免疫原性における臨床上有意な変化、もしくは損なわれた効能を含む副作用のリスクの増大を予期せずに、参照産物と生物学的産物の間で1回またはそれ以上切り替えられるなら、生物学的等価物である。
【0160】
1つの実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、それら両方が、使用の条件もしくは複数の条件についての作用の通常のメカニズムまたは複数のメカニズムにより、かかるメカニズムが公知である限り、作用するなら、生物学的等価物である。
【0161】
生物学的等価物は、インビボおよびインビトロの方法により実証される。生物学的等価
物の測定は、例えば、(a)抗体もしくはその代謝産物の濃度が、血液、血漿、血清、もしくは他の生物学的体液において時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験;(b)ヒトインビボバイオアベイラビリティデータと相関し、それを十分に予測するインビトロ試験;(c)抗体(もしくはその標的)の適切な急性薬理作用が、時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験;および(d)抗体の安全性、効能(efficacy)、もしくはバイオアベイラビリティもしくは生物学的均等性を確立する、十分に制御された臨床試験、を含む。
【0162】
本発明の抗TrkB抗体の生物学的等価物は、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を成すこと、または生物学的活性のため必要とされない末端もしくは内部残基もしくは配列を欠損させることにより、構築される。例えば、生物学的活性に必須でないシステイン残基は、欠損されるか、または他のアミノ酸で置換されて、再生の際に不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成が防止される。他の文脈において、生物学的等価物抗体は、アミノ酸変更を含む抗TrkB抗体変異体を含み、抗体のグリコシル化特徴、例えば、グリコシル化を除去するか、または取り除く変異を修飾する。
【0163】
種選択性および種交差反応性
本発明は、ある種の実施形態によると、ヒトTrkBに結合するが、他の種に由来するTrkBには結合しない抗TrkB抗体を提供する。本発明はまた、ヒトTrkBに、および1つまたはそれ以上の非ヒト種に由来するTrkBに結合する抗TrkB抗体を含む。例えば、本発明の抗TrkB抗体は、ヒトTrkBに結合し得るが、場合に応じて、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、またはチンパンジーのTrkBのうちの1つまたはそれ以上に結合する場合も結合しない場合もある。本発明のある種の典型的な実施形態によると、ヒトTrkBに特異的に結合するが、マウスまたはラットTrkBには結合しないか、またはわずかにのみ結合する抗TrkB抗体が、提供される。
【0164】
多特異性抗体
本発明の抗体は、単特異性または多特異性(例えば、二重特異性)である。多特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、または1つより多くの標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有する。例えば、Tuttら、1991年、J.Immunol.147:60~69頁、Kuferら、2004年、Trends Biotechnol.22:238~244頁を参照。本発明の抗TrkB抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に結合するか、またはそれと共発現される。例えば、抗体またはそのフラグメントは、第2の結合特異性を有する二重特異性もしくは多特異性抗体を作り出すための別の抗体もしくはそのフラグメントのような、1つまたはそれ以上の他の分子実体に、(例えば、化学的架橋結合、遺伝子融合、非共有結合的会合、またはその他により)機能的に結合される。
【0165】
本発明は、二重特異性抗体であって、免疫グロブリンの一方のアームが、ヒトTrkBに結合し、免疫グロブリンの他方のアームが、第2の抗原に特異的である、二重特異性抗体を含む。TrkBに結合するアームは、本明細書において表1に記載のHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0166】
本発明の文脈において用いられる典型的な二重特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)C3ドメイン、および第2のIg C3ドメインの使用を含み、ここで、第1および第2のIg C3ドメインは、少なくとも1個のアミノ酸により互いに異なり、ここで、少なくとも1個のアミノ酸相違が、アミノ酸相違を欠く二重特異性抗体と比較して、タンパク質Aへの二重特異性抗体の結合を低減する。1つの実施形態に
おいて、第1のIg C3ドメインは、タンパク質Aに結合し、第2のIg C3ドメインは、H95R修飾(IMGTエキソンナンバリングによる;EUナンバリングによりH435R)のようなタンパク質A結合を低減するか、または消失させる、変異を含有する。第2のC3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUによりY436F)をさらに含む。第2のC3内で見出されるさらなる修飾は:IgG1抗体の場合において、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、ならびにV82I(IMGTによる;EUにより、D356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I);IgG2抗体の場合において、N44S、K52N、ならびにV82I(IMGT;EUにより、N384S、K392N、およびV422I);ならびにIgG4抗体の場合において、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、ならびにV82I(IMGTによる;EUにより、Q355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)を含む。上で記載された二重特異性抗体フォーマットにおけるバリエーションは、本発明の範囲内であると考えられる。
【0167】
本発明の文脈において用いられる他の典型的な二重特異性フォーマットは、限定されることなく、例えば、scFv-ベースもしくは二重特異性抗体二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、knobs-into-holes、共通軽鎖(例えば、knobs-into-holesを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、ならびにMab二重特異性フォーマットを含む(例えば、前述のフォーマットの説明のため、Kleinら、2012年、mAbs4:6、1~11頁、およびそこで引用される参考文献を参照)。二重特異性抗体はまた、ペプチド/核酸結合を用いても構築され、例えば、ここで、直交性化学反応性(orthogonal chemical reactivity)を有する非天然のアミノ酸を用いて、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド結合を生じ、次に、規定された組成、原子価、および幾何学を有する多量体複合体に自己アセンブルする(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照)。
【0168】
治療製剤および投与
本発明は、本発明の抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、または輸送、デリバリー、寛容の好転などをもたらす他の薬剤と共に製剤化される。多数の適切な製剤は、全ての医薬化学者に公知の処方書:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAにおいて見出される。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ジェル、ワックス、油、脂質、脂質(陽イオンまたは陰イオン)含有ベシクル(例えば、LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CA)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ジェル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998年)J Pharm Sci Technol52:238~311頁も参照。
【0169】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに依存して変動する。好ましい用量は、典型的に、体重または体表面積に応じて計算される。成人患者の場合には、本発明の抗体を、通常、体重1kg当たり約0.01~約20mg、より好ましくは体重1kg当たり約0.02~約7、約0.03~約5、また
は約0.05~約3mgの単回用量で静脈内投与することが有利であり得る。状態の重症度に依存して、処置の頻度および持続時間は調節される。抗TrkB抗体を投与するのに有効な投薬量およびスケジュールは、経験的に決定され、例えば、患者の進行を、周期的な評価によりモニターし、必要に応じて用量を調節することができる。さらに、当該技術分野において周知の方法を用いて投薬量の種間増減を行ってもよい(例えば、Mordentiら、1991年、Pharmaceut. Res. 8:1351頁)。
【0170】
種々のデリバリーシステムが公知であり、これを用いて、本発明の医薬組成物、例えば、リポソームにおけるカプセル封入、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現する能力がある組み換え細胞、受容体により仲介されるエンドサイトーシスが投与される(例えば、Wuら、1987年、J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照)。導入の方法は、硝子体内、眼内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路を含むが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路により、例えば、注入もしくはボーラス注射により、上皮もしくは皮膚粘膜裏層(例えば、経口粘膜、直腸、および腸粘膜など)を通じた吸収により、投与され、他の生物学的に活性な剤と一緒に投与される。投与は全身または局所である。
【0171】
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジで皮下または静脈内にデリバリーされる。加えて、皮下デリバリーに関して、ペンデリバリー装置は、本発明の医薬組成物のデリバリーにおいて容易に適用される。かかるペンデリバリー装置は、再利用可能であるか、または使い捨てである。再利用可能なペンデリバリー装置は、医薬組成物を含有する置換可能なカートリッジを一般に利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与されると、カートリッジは空になり、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含有する新しいカートリッジで置き換えられる。次に、ペンデリバリー装置は再利用される。使い捨てのペンデリバリー装置には、置換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てのペンデリバリー装置は、装置内のリザーバーにおいて保持される医薬組成物が予め充填される。リザーバーは、医薬組成物が空になると、全体の装置は廃棄される。
【0172】
多数の再利用可能なペン、および自動注射デリバリー装置は、本発明の医薬組成物の皮下デリバリーにおいて適用される。例は、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、Frankfurt、Germany)(2、3例のみを挙げる)を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下デリバリーにおいて適用される、使い捨てのペンデリバリー装置の例は、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)、ならびにHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park、IL)(2、3例のみを挙げる)を含むが、これらに限定されない。
【0173】
ある種の状況において、医薬組成物は、制御放出システムにおいてデリバリーされる。1つの実施形態において、ポンプが用いられる(Langer(上記)、Sefton、1987年、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201頁を参照)。別の実施形態において、ポリマー材料が用いられ、Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise (eds.)、1974年、CRC Pres., Boca Raton, Floridaを参照。なお別の実施形態において、制御放出システムは、組成物の標的の近くに置かれ、従って、少量の全身性用量ののみが必要とされる(例えば、Goodson、1984年、in Medical Applications of Controlled Release、上記、2巻、115~138頁を参照)。他の制御放出システムは、Langer、1990年、Science 249:1527-1533頁による説明において考察されている。
【0174】
注射可能な調製物は、静脈内、硝子体内、眼内、皮下、皮内、および筋内注射用形態、点滴注入用形態などを含む。これらの注射可能な調製物は、公的に公知の方法により調製される。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射のため通常用いられる無菌の水性媒体もしくは油性媒体において、上で記載された抗体またはその塩を溶解、懸濁、または乳化することにより、調製される。注射用水性媒体として、例えば、生理的食塩水、グルコースを含有する等調溶液、および他の補助剤などが存在し、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などのような適切な溶解剤と併用で用いられる。油性媒体として、例えば、ゴマ油、大豆油などが利用され、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような溶解剤と併用して用いられる。従って、調製される注射は、適切なアンプルに好ましく充填される。
【0175】
有利には、上で記載された経口または非経口使用用医薬組成物は、有効成分の用量に適合するよう適した単位用量における投薬形態に調製される。単位用量におけるかかる投薬形態は、例えば、錠剤、ピル、カプセル剤、注射(アンプル剤)、坐剤などを含む。含有される前述の抗体の量は、一般に、単位用量において;特に、注射の形態において1つの投薬形態当たり約5~約500mg、他の投薬形態のため約5~約100mg、および約10~約250mgの前述の抗体が含有されることが好ましい。
【0176】
抗体の治療上の使用
本発明は、それを必要とする対象に、抗TrkB抗体(例えば、本明細書において表1に記載のHCVR/LCVRまたはCDR配列のいずれかを含む抗TrkB抗体)を含む治療組成物を投与することを含む方法を含む。治療組成物は、本明細書において開示される抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントのいずれか1つまたはそれ以上、ならびに薬学的に許容し得る担体または希釈剤を含み得る。
【0177】
本発明の抗体は、とりわけ、TrkB発現または活性に関連するかまたはそれにより仲介される任意の疾患または障害の処置、予防、および/または改善に有用である。本発明のTrkBアゴニスト抗体は、神経機能を好転させるために用いることができ、細胞変性により、特に、神経細胞の損傷または神経細胞の変性により部分的に特徴付けられる、任意の疾患または状態、例えば、急性神経系損傷または慢性神経変性疾患を処置または予防するために用いることができる。
【0178】
本発明は、眼の疾患または障害の処置または予防を、かかる処置を必要とする患者に、本明細書の他の箇所に開示される抗TrkB抗体またはその抗原結合フラグメントを投与
することにより行う、方法を含む。
【0179】
1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、網膜ニューロンの損傷または死を予防する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、網膜の変性が生じる病理疾患を処置する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、眼の手術、光への曝露、または他の環境的外傷の前または後に、眼を処置し、それによって網膜細胞の変性を予防する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、光受容体損傷および眼の変性を予防する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、副作用を誘導することなく、網膜ニューロンを保護する方法を提供し得る。1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、損傷した光受容体が回復または再生することを可能にする方法を提供し得る。
【0180】
ある種の実施形態において、本発明の抗TrkB抗体のうちの1つまたはそれ以上を用いることで処置することができる眼疾患は、緑内障、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性もしくは他の黄斑症、虚血性視神経症、視神経炎、網膜虚血、光受容体変性、網膜色素変性、レーバー先天黒内障、レーバー依存性視神経萎縮症、アッシャー症候群、シュタルガルト病、および網膜動脈もしくは静脈閉塞からなる群より選択される。
【0181】
本発明の1つまたはそれ以上の抗TrkB抗体で処置することができる他の病的状態は、網膜剥離、光性網膜症、手術により誘導される網膜症(機械的もしくは光に誘導されるかのいずれか)、毒素性網膜症、未熟児の網膜症、CMVもしくはAIDSに関連するHIV網膜症などのウイルス性網膜症、ブドウ膜炎、静脈もしくは動脈閉塞または他の血管障害に起因する虚血性網膜症、外傷もしくは眼の浸透病変に起因する網膜症、末梢硝子体網膜症、または遺伝性網膜変性を含む。
【0182】
1つの実施形態において、本発明の抗TrkB抗体は、眼内または硝子体内へのデリバリーのために製剤化することができる。
【0183】
本発明はまた、卒中または外傷性脳損傷など、他の中枢または末梢神経系疾患または障害を処置するための方法も提供する。さらに、本発明の抗体は、神経細胞の生存を促進するように作用し、神経保護物質として作用するため、これらのアゴニスト抗体のいずれか1つまたはそれ以上は、神経系への損傷により引き起こされるか、または神経変性疾患を含め、神経系に対して大きな影響を有する疾患により引き起こされる細胞損傷の回復または修復における最重要事項が神経細胞の生存である、中枢神経系疾患または障害を患う患者を処置するのに有益であることを実証し得る。
【0184】
本明細書において記載される処置の方法の文脈において、抗TrkB抗体は、単独療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、または1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤との併用で投与される。
【0185】
併用療法および製剤
本発明は、本明細書に記載される抗TrkB抗体のいずれかを、1つまたはそれ以上のさらなる治療上活性な成分との組み合わせで含む組成物および治療製剤、ならびにかかる組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む、処置の方法を含む。
【0186】
本発明の抗TrkB抗体は、眼内圧を低下させるのを助ける薬物(IOP低下薬)、ニューロトロフィン、およびVEGFトラップ、例えば、アフリベルセプト(EYLEA(登録商標))などの血管内皮成長因子(VEGF)のアンタゴニストからなる群より選択される1つまたはそれ以上のさらなる治療上活性な成分と共に共製剤化される、および/
またはそれとの併用で投与される。本発明のTrkB抗体と併用することができる他の医薬は、プロスタグランジン類似体(例えば、ZIOPTAN(商標)、XALATAN(登録商標))、ベータ遮断薬(例えば、TIMOPTIC XE(登録商標)、ISTALOL(登録商標)、BETOPTIC(登録商標)S)、アルファ-2アドレナリンアゴニスト(例えば、アプラクロニジン)、炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、TRUSOPT(登録商標)、AZOPT(登録商標))、コリン作動剤(例えば、ISOPTO(登録商標)CARPINE、PILOPINE HS(登録商標)ゲル)、または併用治療薬(ベータ遮断剤に炭酸脱水酵素阻害剤を加えたもの、例えば、COMBIGAN(商標)、COSOPT(登録商標))を含むが、これらに限定されない。
【0187】
本発明の抗TrkB抗体は、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、抗酸化剤、COX阻害剤、および/またはNSAIDとの併用で投与してもよく、および/または共製剤化してもよい。抗TrkB抗体は、幹細胞療法、緑内障濾過手術、レーザー手術、または遺伝子療法を含む、他の種類の治療法との併用で用いることができる。
【0188】
さらなる治療上活性な成分、例えば、上で挙げられた薬剤のいずれかまたはその誘導体は、本発明の抗TrkB抗体の投与の直前に、それと同時に、またはその直後に、投与される(本開示の目的のため、かかる投与治療計画は、さらなる治療上活性な成分と「併用した」抗TrkB抗体の投与とみなされる)。本発明は、本発明の抗TrkB抗体が、本明細書において他の箇所で記載される通り、さらなる治療上活性な成分のうちの1つまたはそれ以上と共製剤化された、医薬組成物を含む。
【0189】
投与治療計画
本発明のある種の実施形態によると、複数回用量の抗TrkB抗体(または抗TrkB抗体、および本明細書において言及される、さらなる治療上活性な剤のいずれかの併用を含む医薬組成物)は、定義される時間経過にわたり、対象に投与される。本発明のこの態様による方法は、対象に、複数回用量の本発明の抗TrkB抗体を連続して投与することを含む。本明細書において用いられる「連続して投与すること」は、それぞれの用量の抗TrkB抗体が、対象に、時間における異なる点において、例えば、予め決定された間隔(例えば、時間、日、週、または月)により隔てられた異なる日において投与されることを意味する。本発明は、患者に、単回開始用量の抗TrkB抗体、続いて、1つまたはそれ以上の2次用量の抗TrkB抗体、場合により、続いて、1つまたはそれ以上の3次用量の抗TrkB抗体を連続して投与することを含む方法を含む。
【0190】
用語「開始用量」、「2次用量」、および「3次用量」は、本発明の抗TrkB抗体の投与の時間的な並びを指す。従って、「開始用量」は、処置計画の開始時に投与される用量であり(「ベースライン用量」としても言及される);「2次用量」は、開始用量の後に投与される用量であり;「3次用量」は、2次用量後に投与される用量である。開始、2次、および3次用量は、全て、同一量の抗TrkB抗体を含有するが、一般に、投与の頻度の点で互いに異なる。しかしながら、ある種の実施形態において、開始、2次、および/または3次用量において含有される抗TrkB抗体の量は、処置の経過中、互いに異なる(例えば、必要に応じて、上方もしくは下方調節される)。ある種の実施形態において、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、もしくは5回)の用量は、処置治療計画の開始時に、「添加用量」として投与され、続いて、あまり頻繁でない基盤で投与される続く用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0191】
本発明のある種の典型的な実施形態において、それぞれの2次および/または3次用量は、直前の先行する用量の後、1~26(例えば、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5、6、6、7、7、8、8、9、9、10、10、11、11、12、12、13、13
、14、14、15、15、16、16、17、17、18、18、19、19、20、20、21、21、22、22、23、23、24、24、25、25、26、26、またはそれ以上)週で投与される。本明細書において用いられる語句「直前の先行する用量」は、複数回投与の並びにおいて、中断のない用量の並びで、まさに次の用量の投与に先立ち患者に投与される、抗TrkB抗体の用量を意味する。
【0192】
本発明のこの態様による方法は、患者に、任意の数の2次および/または3次用量の抗TrkB抗体を投与することを含む。例えば、ある種の実施形態において、単回2次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、もしくはそれ以上)の2次用量が患者に投与される。同様に、ある種の実施形態において、単回の3次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、もしくはそれ以上)の3次用量が患者に投与される。投与治療計画は、特定の対象の生涯にわたって無期限に、またはかかる処置が治療上必要となくなるかもしくは有利でなくなるまで、行われる。
【0193】
複数回の2次用量を含む実施形態において、それぞれの2次用量は、他の2次用量と同一の頻度で投与される。例えば、それぞれの2次用量は、直前の先行する用量の1~2週間または1~2カ月後に投与される。同様に、複数回の3次用量を含む実施形態において、それぞれの3次用量は、他の3次用量と同一の頻度で投与される。例えば、それぞれの3次用量は、直前の先行する用量の2~12週間後に投与される。本発明のある種の実施形態において、2次および/または3次用量が患者に投与される頻度は、処置治療計画の経過にわたり変動する。投与の頻度もまた、医師による処置の経過中、臨床検査に従い個々の患者のニーズに依存して調節される。
【0194】
本発明は、投与治療計画を含み、ここで、2~6回の添加用量は、患者に、第1の頻度(例えば、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1カ月に1回、2カ月に1回など)で投与され、続いて、2回またはそれ以上の維持用量が、あまり頻繁でない基盤で患者に投与される。例えば、本発明のこの態様によると、添加用量が、1カ月に1回の頻度で投与されるなら、次に、維持用量が、6週間毎に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回などで患者に投与される。
【0195】
抗体の診断上の使用
本発明の抗TrkB抗体はまた、例えば、診断の目的のため、試料中のTrkBまたはTrkBを発現する細胞を検出および/または測定するためにも用いることができる。例えば、抗TrkB抗体またはそのフラグメントは、TrkBの異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、発現の欠如など)により特徴付けられる状態または疾患を診断するために用いることができる。TrkBについての典型的な診断アッセイは、例えば、患者から得た試料を、本発明の抗TrkB抗体と接触させることを含み、ここで、抗TrkB抗体は、検出可能な標識もしくはレポーター分子で標識される。あるいは、未標識の抗TrkB抗体は、検出可能に標識されたそれ自体である2次抗体と組み合わせた診断適用において用いられる。検出可能な標識またはレポーター分子は、H、14C、32P、35S、もしくは125Iのようなラジオアイソトープ;フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミンのような蛍光もしくは化学発光部分;またはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼのような酵素である。試料中のTrkBを検出または測定するために用いられる特異的な典型的アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞分取(FACS)を含む。
【0196】
本発明によるTrkB診断アッセイにおいて用いられる試料は、患者から得ることができる任意の組織または体液試料を含み、正常もしくは病理条件下で、TrkBタンパク質、またはそのフラグメントいずれかの検出可能な量を含有する。一般に、健常患者(例えば、異常なTrkBレベルまたは活性に関連する疾患または状態を罹患していない患者)から得られた特定の試料中のTrkBのレベルを測定して、ベースラインまたは標準的なTrkBのレベルをまず確立する。このベースラインTrkBレベルを、次に、TrkB関連疾患または状態を有することが疑われる個体から得られた試料において測定されたTrkBのレベルに対して比較する。
【実施例0197】
以下の実施例は、当業者に本発明の方法および組成物の作り方、ならびに用い方の完全な開示または記載を提供するために記述するものであり、本発明者らが彼らの発明とみなすものの範囲を制限することは意図されない。用いた数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを保証するよう試みられたが、実験上の誤差および自差がある程度あることは考慮されるべきである。別段示されなければ、部分は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏におけるものであり、室温は約25℃であり、圧力は雰囲気においてであるか、または雰囲気に近い。
【実施例0198】
TrkBに対するヒト抗体の生成
ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含むマウスにおいて、TrkBに対するヒト抗体を作製した。1つの実施形態において、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスにおいて、ヒト抗体を作製した。1つの実施形態において、VelocImmune(登録商標)(VI)マウスを、ヒトTrkB(ecto)mFc(配列番号77)で免疫した。1つの実施形態において、VelocImmune(登録商標)(VI)マウスを、マウスTrkB(ecto)mFc(配列番号80)で免疫した。TrkB特異的イムノアッセイにより、抗体免疫応答をモニターした。例えば、精製された全長TrkBに対する特定の抗体力価に関して、血清をアッセイした。抗体を産生するクローンを、B細胞ソーティング技術(BST)およびハイブリドーマ方法の両方を用いて単離した。例えば、所望の免疫応答を達成したら、脾細胞を回収し、マウスミエローマ細胞と融合させて生存能を保持し、ハイブリドーマ細胞株を形成させた。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、TrkB特異的抗体を産生する細胞株を同定した。ある種の抗マウスTrkB抗体を、この方式で生成し、M2aM14173N、M2aM14178N、およびM2aM14179Nと命名した。
【0199】
米国特許7582298号(参照によって、全体として本明細書に具体的に組み入れる)において記載される通り、ミエローマ細胞に融合させることなく、抗原陽性マウスB細胞から抗TrkB抗体も直接的に単離した。この方法を用いて、いくつかの完全ヒト抗TrkB抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびヒト定常ドメインを有する抗体)を得て;この方法で作製した典型的な抗体を、次の:H4H9780P、H4H9814P、およびH4H9816P2と命名した。
【0200】
この実施例の方法に従い作製した典型的な抗体の生物学的特性を、以下で説明する実施例において詳細に記載する。
【実施例0201】
重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸およびヌクレオチド配列
表1aには、選択した本発明の抗TrkB抗体の重鎖および軽鎖可変領域、ならびにCDRのアミノ酸配列識別名を記載する。表1bには、選択した本発明の抗TrkB抗体の全長重鎖および軽鎖のアミノ酸配列識別名を記載する。選択した本発明の抗TrkB抗体
の対応する核酸配列識別名は、表2に記載する。
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
抗体は、本明細書において典型的には次の命名法によって言及する:Fc接頭辞(例えば、「H4H」、「H2M」など)、続いて、数字で表した識別名(例えば、表1または2において示す「9780」、「9816」など)、続いて「P」、「P2」、または「N」接尾辞。抗体名称上のH4H接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。従って、この命名法により、抗体は、本明細書において、例えば、「H4H9780P」として言及され、これは、ヒトIgG4 Fc領域を示し、M2aM14179Nは、例えば、マウスIgG2a Fc領域を示す。可変領域は、抗体名称において最初の「H」により示される場合、完全ヒトである。接頭辞「M」は、マウス可変領域を表す。当業者が理解する通り、特定のFcアイソタイプを有する抗体を、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体を、ヒトIgG4を有する抗体などに変換することができる)が、いずれの場合も、表1または2において示した数字で表した識別名により示した可変ドメイン(CDRを含む)は同一のままであり、抗原の結合特性はFcドメインの性質に関わらず、一致または実質的に類似であると予測した。
【実施例0206】
25℃および37℃で測定した、抗TrkBモノクローナル抗体の異なるTrkB試薬へ
のBiacore結合動態
精製された抗TrkBモノクローナル抗体へのTrkB結合について、平衡解離定数(K値)を、Biacore 4000機器を用いてリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを用いて、決定した。全ての結合研究は、10mM Hepes pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05% v/v 界面活性剤Tween-20(HBS-ETランニングバッファー)において、25℃および37℃で行った。Biacoreセンサー表面を、まず、F(ab’)フラグメントヤギ抗ヒトFcγ特異的ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、番号109-006-098)またはウサギ抗マウスFcポリクローナル抗体(GE Healthcare、番号BR-1008-38)とのアミンカップリングにより誘導体化して、抗TrkBモノクローナル抗体を捕捉した。結合研究は、以下のTrkB試薬;C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させたヒトTrkB細胞外ドメイン(hTRKB.mmH、配列番号76、受託番号NP_001018074.1)、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させたマウスTrkB細胞外ドメイン(mTRKB.mmH、配列番号79、受託番号NP_001020245)、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させたラットTrkB細胞外ドメイン(rTRKB.mmH、配列番号84、受託番号NP_036863.1)、およびC末端のマウスIgG2a Fcタグと共に発現させたヒトTrkB細胞外ドメイン(hTrkB-mFc、配列番号77、受託番号NP_001018074.1)において行った。異なる濃度のTrkB試薬を、まず、HBS-ETランニングバッファー(100nM~1.23nM、3倍連続希釈)中に調製し、抗ヒトFcを捕捉した抗TrkBモノクローナル抗体表面上に、流速30μL/分において4分間注入し、TrkB試薬に結合したモノクローナル抗体の解離を、HBS-ETランニングバッファーにおいて10分間モニターした。Scrubber 2.0c曲線近似ソフトウェアを用いて質量移動限界を有するリアルタイム結合センサグラムを1:1結合モデルに近似させることにより、動力学的結合(k)および解離(k)速度定数を決定した。結合解離平衡定数(K)および解離半減期(t1/2)を、動力学的速度定数から
【数1】
として計算した。
【0207】
25℃および37℃におけるhTrkB.mmH、mTrkB.mmH、rTrkB.mmH、またはhTrkB-mFcの、本発明の異なる抗TrkBモノクローナル抗体への結合の結合動力学的パラメーターを、表3から10に示す。
【0208】
結果の概要:
25℃において、抗TrkBモノクローナル抗体は、表3に示されるように、545pM~41.3nMの範囲にあるKD値で、hTrkB.mmHに結合した。37℃において、モノクローナル抗体は、表4に示されるように、2.28nM~135nMの範囲にあるKD値で、hTrkB.mmHに結合した。
【0209】
25℃において、抗TrkBモノクローナル抗体は、表5に示されるように、31.1pM~4.48nMの範囲にあるKD値で、hTrkB-mFcに結合した。37℃において、抗TrkBモノクローナル抗体は、表6に示されるように、73.3pM~3.46nMの範囲にあるKD値で、hTrkB-mFcに結合した。
【0210】
25℃において、本明細書においてH1M8037Cと称される比較物抗TrkBモノクローナル抗体(米国出願公開第2010/0196390号、C2と命名された抗体を参照;比較物の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列については、それぞれ配列番号97および98も参照)は、表7に示されるように、40.8nMのKD値でmTrkB.mmHに結合した。本発明の抗TrkB抗体は、表7に示されるように、25℃においてmTrkB.mmHに結合しなかった。37℃において、比較物抗TrkBモノクローナル抗体は、表8に示されるように、94.1nMのKD値で、mTrkB.mmHに結合した。本発明の抗TrkB抗体は、表8に示されるように、37℃においてmTrkB.mmHに結合しなかった。
【0211】
25℃において、比較物抗TrkBモノクローナル抗体は、表9に示されるように、31.8nMのKD値でrTrkB.mmHに結合した。本発明の抗TrkB抗体は、表9に示されるように、25℃においてrTrkB.mmHに結合しなかった。37℃において、比較物抗TrkBモノクローナル抗体は、表10に示されるように、87.5nMのKD値でrTrkB.mmHに結合した。本発明の抗TrkB抗体は、表10に示されるように、37℃においてrTrkB.mmHに結合しなかった。
【0212】
【表4】
【0213】
【表5】
【0214】
【表6】
【0215】
【表7】
【0216】
【表8】
【0217】
【表9】
【0218】
【表10】
【0219】
【表11】
【実施例0220】
25℃で測定した、サロゲート抗TrkBモノクローナル抗体の異なるTrkB試薬へのBiacore結合動態
精製された抗TrkBモノクローナル抗体へのTrkB結合について、平衡解離定数(K値)を、Biacore T200機器を用いてリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを用いて、決定した。全ての結合研究は、10mM Hepes pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05% v/v 界面活性剤Tween-20(HBS-ETランニングバッファー)において、25℃で行った。Biacoreセンサー表面を、まず、ウサギ抗マウスFcポリクローナル抗体(GE Healthcare、番号BR-1008-38)とのアミンカップリングによって誘導体化し、抗TrkBモノクローナル抗体を捕捉した。結合研究は、以下のTrkB試薬;C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させたヒトTrkB細胞外ドメイン(hTrkB.mmH、配列番号76、NP_001018074.1)、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させたマウスTrkB細胞外ドメイン(mTRKB.mmH、配列番号79、NP_001020245)、およびC末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させたラットTrkB細胞外ドメイン(rTRKB.mmH、配列番号84、XP_002721319.1)において行った。異なる濃度のTrkB試薬を、まず、HBS-ETランニングバッファー(90nM-3.33nM、3倍連続希釈)中に調製し、抗マウスFcを捕捉した抗TrkBモノクローナル抗体表面上に、流速50μL/分において4分間注射し、TrkB試薬に結合したモノクローナル抗体の解離を、HBS-ETランニングバッファーにおいて10分間モニターした。Scrubber 2.0c曲線近似ソフトウェアを用いて質量移動限界を有するリアルタイム結合センサグラムを1:1結合モデルに近似させることにより、動力学的結合(k)および解離(k)速度定数を決定した。結合解離平衡定数(K)および解離半減期(t1/2)を、動力学的速度定数から
【数2】
として計算した。
【0221】
25℃におけるhTrkB.mmH、mTrkB.mmH、またはrTrkB.mmHの、本発明の異なる抗TrkBモノクローナル抗体への結合の結合動力学的パラメーターを、表11から13に示す。
【0222】
結果:
25℃において、本発明のサロゲート抗TrkBモノクローナル抗体は、表11に示されるように、hTrkB.mmHへの結合を示さなかった。
【0223】
25℃において、本発明のサロゲート抗TrkBモノクローナル抗体は、表12に示されるように、2.39nM~32.4nMの範囲にあるKD値でmTrkB.mmHに結合した。
【0224】
25℃において、本発明のサロゲート抗TrkBモノクローナル抗体は、表13に示されるように、2.56nM~26.9nMの範囲にあるKD値でrTrkB.mmHに結合した。
【0225】
【表12】
【0226】
【表13】
【0227】
【表14】
【実施例0228】
HEK293/SRE-luc/hTrkBおよびHEK293/SRE-luc/mTrkB(Ecto)-hTrkB(TM-Cyto)細胞を用いたバイオアッセイ
バイオアッセイを発展させて、血清応答エレメント(SRE)およびリガンドである脳由来神経栄養因子(BDNF、R & D Systems)の制御下で、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いてTrkBの活性化を検出した。ヒトTrkB(hTrkB、NP_001018074.1のアミノ酸32~429もしくはUniprot番号Q16620-1)またはヒトTrkBの膜貫通型および細胞質ドメインに融合したマウスTrkB細胞外ドメイン(mTrkB、NP_001020245.1のアミノ酸32~429もしくはUniprot番号P15209-1がヒトTrkBアミノ酸431~822に融合したもの)のいずれかと共にルシフェラーゼレポーター(SRE応答エレメント-ルシフェラーゼ、SRE-luc、SA Bioscience、番号CLS-010L)を安定に発現するHEK293細胞株を、生成した。安定な細胞株HEK293/SRE-Luc/hTrkBおよびHEK293/SRE-Luc/mTrkBを、10%
FBS、非必須アミノ酸、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン、1μg/mL ピューロマイシン、および500μg/mL G418を補充したDMEM中に維持した。
【0229】
バイオアッセイのために、細胞を、0.1% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびL-グルタミンを補充したOpti-MEM(商標)において、96ウェルのアッセイプレートに1ウェル当たり20,000個の細胞で播種し、次いで、5% COにおいて37℃で一晩インキュベートした。翌朝、ヒトBDNFまたは抗体を、100nMから0.002nMで連続希釈し(加えて、リガンドなしでバッファーのみを含有する試料)、細胞に添加して、TrkBシグナル伝達の活性化を決定した。連続希釈した抗体はまた、100pMのBDNFで試験した(R & D Systems、248-BD/CF)。細胞を、次いで、5% COの存在下において、37℃で5.5時間インキュベートした。OneGlo試薬(Promega)の添加後に、Victor X機器(Perkin Elmer)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果を、Prism 5ソフトウェア(GraphPad)により非線形回帰(4つのパラメーターのロジスティックス)を用いて解析して、EC50およびIC50値を得た。抗体の最大の活性化を、以下を用いて計算した。
【数3】
【0230】
結果の概要および結論:
表14に示されるように、本発明の3つの抗TrkB抗体、H4H9816P2、H4H9814P、H4H9780Pは、35~82pMのEC50sで、BDNFの非存在下において、HEK293/SRE-luc/hTrkB細胞においてヒトTrkBシグナル伝達の活性化を示し、最大活性化は88~92%の範囲にあった。本発明の3つの抗体はまた、100pM BDNFの存在下においても試験した。100pM BDNFは、無関係の対照mAbである対照mAb2の存在下において、56%の活性化を示した一方で、本発明の抗体は、45~76pMのEC50sでさらなる活性化を示し、最大活性化は77~80%の範囲にあった。本発明の3つの抗TrkB抗体は、BDNFの非存在下または100pM BDNFの存在下において、HEK293/SRE-luc/mTrkB細胞においてマウスTrkBシグナル伝達の活性化は示さなかった。対照mAb 1である抗TrkB比較物抗体H1M8037Cは、76pMのEC50でヒトTrkBシグナル伝達の活性化を示し、最大活性化は78%であり、BDNFなしでは、43pMのEC50で、マウスTrkBの活性化を示し、最大活性化は85%であった。100pM BDNFの存在下において、対照mAb 1は、110pMのEC50でヒトTrkBシグナル伝達を活性化し、最大活性化79%であり、42pMのEC50でマウスTrkBを活性化し、最大活性化は69%であり、これは、100pM BDNFでの対照mAb 2による活性化よりも高かった。対照mAb 2である無関係のヒトIgG4抗体は、100pM BDNFの非存在下または存在下において、いずれの活性化も示さなかった。
【0231】
表15に示されるように、本発明の3つの抗TrkB抗体、M2aM14173N、M2aM14178N、M2aM14179Nは34~190pMのEC50sで、BDNFの非存在下において、HEK293/SRE-luc/mTrkB細胞においてマウスTrkBシグナル伝達の活性化を示し、最大活性化は76~94%の範囲にあった。本発明の3つの抗体はまた、100pM BDNFの存在下においても試験した。100pM
BDNFは、無関係のアイソタイプ対照mAbである対照mAb4の存在下において、60%の活性化を示した一方で、本発明の抗体は、17~100pMのEC50s でさらなる活性化を示し、最大活性化は67~75%の範囲にあった。本発明の3つの抗TrkB抗体は、BDNFの非存在下または100pM BDNFの存在下において、HEK293/SRE-luc/hTrkB細胞においてヒト、TrkBシグナル伝達の活性化は示さなかった。対照mAb 1は、57pMのEC50で、ヒトTrkBシグナル伝達の活性化を示し、最大活性化は80%であり、BDNFなしでは、43pMのEC50で、マウスTrkBの活性化を示し、最大活性化は85%であった。100pM BDNFの存在下において、対照mAb 1は、110pMのEC50でヒトTrkBシグナル伝達を活性化し、最大活性化は79%であり、42pMのEC50でマウスTrkBを活性化し、最大活性化は69%であり、これは、100pM BDNFでの対照mAb 4による活性化よりも高かった。対照mAb 3および対照mAb 4の無関係のマウスIgG2aアイソタイプ対照抗体は、100pM BDNFの非存在下または存在下において、いずれの活性化も示さなかった。
【0232】
表でのデータの概要:
【0233】
【表15】
【0234】
【表16】
【実施例0235】
TrkBhu/huマウスにおける定位的注射後の脳におけるTrkBリン酸化に対するインビボでのTrkBアゴニスト抗体H4H9816P2およびIgG4アイソタイプ対照REGN1945の効果の比較
本発明のTrkBアゴニスト抗体H4H9816P2の、TrkB活性化動態に対する効果を決定するために、海馬への直接注射後のTrkBリン酸化の時間経過研究を、マウスTrkB受容体の代わりにヒトTrkB受容体についてホモ接合性のマウス(TrkBhu/huマウスと称される)において行った。TrkBhu/huマウス(N=48匹)に、ビヒクル(PBS)、本明細書においてIgG4アイソタイプ対照抗体と表記されるREGN1945(27.5mg/mLの最終濃度)、またはTrkBアゴニスト抗体H4H9816P2(27.5mg/mLの最終濃度)のいずれか2μLの、ブレグマから-2mm後方および+1.5mm側方の海馬への両側定位的注射を受けさせた。組織損傷を最小限に抑えるために、注射および針の除去は、5分間の間隔にわたって徐々に行った。TrkBhu/huマウスを、次いで、注射のおよそ30分後、1時間後、4時間後、または18時間後に、CO安楽死により殺処分した。末端出血を、心臓穿刺により行って採血し、マウスに、次いで、低温のヘパリン化生理食塩水の経心腔的灌流を行った。脳を、頭蓋から慎重に取り出し、注射部位の周囲の組織の2mmの切片を切り出し、エッペンドルフチューブに採取し、氷上で保管した。次に、脳切片を、2倍プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(ThermoFisher Scientific、カタログ番号78444)を含有するRIPA溶解バッファー(ThermoFisher Scientific、カタログ番号89901)300uL中に溶解させ、氷上で保管した。溶解した組織を、次いで、さらなる処理のためにホモジナイズし、アリコートにし、-80℃で保管した。
【0236】
脳組織におけるTrkBリン酸化を評価するために、免疫沈降およびウエスタンブロッティングを行った。結合についてH4H9816P2と競合しない抗ヒトTrkB抗体H4H10108Nを、NHS活性化セファロースビーズ(製造元のプロトコールを用いて調製、GE Healthcare、カタログ番号17-0906)に結合させ、DPBSで3回洗浄して、あらゆる残留保存溶液を除去した。ホモジナイズした脳ライセートを、氷上で解凍し、TBST中の1% NP-40、0.1% Tween-20、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤から構成されるバッファーにおいて、1mg/mL(バッファーの体積に対する脳の重量)の濃度まで希釈した。ホモジナイズした脳ライセートのタンパク質濃度を、製造元の指示に従って(Thermo Scientific Pierce、カタログ番号23225)、標準的なBCAアッセイを行うことにより定量化した。タンパク質100ug毎に、抗ヒトTrkB抗体(H4H10108N)NHS-活性化セファロースビーズ15uLを、脳ライセート溶液に添加し、混合物を、20rpm(Thermoローテータ)で緩徐に振盪させながら、4℃で一晩インキュベートした。翌日に、試料を、1000×gで1分間遠心分離し、次いで、上清を慎重に除去した。ビーズを、続いて、1% Tween-20(Sigma Aldrich、カタログ番号P9416)を有するTrisバッファー生理食塩水(Bio-Rad、カタログ番号1706435)(TBST)400uLで2回洗浄した。洗浄バッファーを慎重に吸引した後、水中の0.1% トリフルオロ酢酸(TFA、Sigma-Aldrich、T62200)pH3.0、60uLを、それぞれの試料に添加した。溶液を混合し、2分間静置させた後、採取し、別個のチューブに移した。この手順を、別の0.1% TFA、pH3.0 60uLを用いて繰り返した。それぞれの試料の2つの0.1% TFA溶液を混合し、1M Tris-HCl(ThermoFisher Scientific、カタログ番号15567-027)pH8.5、2uLを添加した。
【0237】
溶液を、高速真空装置を用いて乾燥させ、次いで、再懸濁させ、1×Laemmliバッファー(Bio-Rad、カタログ番号1610737)20uLと355nM 2-
メルカプトエタノール(BME、Gibco、カタログ番号21985-023)との混合物で還元した。試料を、95℃で10分間沸騰させ、10ウェルのMini-Protean 4-15% Tris-グリシンゲル(Bio-Rad、カタログ番号4561086)にロードした。電気泳動の後に、タンパク質試料を、30分間の過程にわたって、1.3Aおよび25Vの一定速度で、Trans-Blot Turbo Transfer System(Bio-Rad、カタログ番号1704156)を介して、Tris-グリシンゲルからPVDF膜(Bio-Rad、カタログ番号170-4156)へと移した。移した後、膜を、室温において1時間、TBST中の2.5% ミルク(Bio-Rad、カタログ番号170-6406)で遮断し、続いて、2.5% BSAの溶液中に1:1000希釈した抗ホスホ-TrkB抗体(Novus、カタログ番号NB100-92656)または2.5% ミルクTBST中に1:1000希釈した抗TrkB一次抗体(Cell Signaling、カタログ番号4603)のいずれかで、4℃において一晩、30rpmのシェーカーにおいてプローブした。翌日に、ブロットをTBSTで洗浄し、TBST中1% ミルク中に1:1000で、室温において1時間、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Jackson、カタログ番号111-035-144)に結合させた抗ウサギIgG抗体と共にインキュベートした。次に、ブロットを再び洗浄し、ECL溶液(PerkinElmer, Inc.、カタログ番号RPN2106)で発展し、その後の画像露光は、30秒毎に取得した。
【0238】
結果の概要および結論:
TrkBhu/huマウスの脳ライセートに由来するタンパク質の免疫沈降およびその後のウエスタンブロッティングにより、海馬TrkBリン酸化は、図1に示されるように、TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2を注射したマウスにおいては検出可能であったが、ビヒクルまたはアイソタイプ対照抗体で処置したマウスにおいては検出可能でなかったことが示された。評価した時点の中で、TrkBリン酸化は、H4H9816P2を投薬したマウスにおいて定位的注射の4時間後にピークに達した。TrkBリン酸化はまた、全てではないが一部のマウスにおいて、投薬の18時間後に、ウエスタンブロットにより検出された。対照的に、ビヒクルおよびIgG4アイソタイプ対照抗体の注射は、いずれの時点においてもTrkBリン酸化を誘導しなかった。ウエスタンブロッティングは、総TrkB受容体レベルが、H4H9816P2を投薬したTrkBhu/huマウスの全てではないが一部において、ビヒクルおよびアイソタイプ対照処置マウスと比べて、下方制御されたことも示した。総TrkBレベルは、投薬18時間後に、H4H9816P2で処置した対象において、わずかに下方制御されるとみられた。従って、これらの結果は、TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2の直接的な注射が、TrkBhu/huマウスにおいて海馬のTrkB受容体のリン酸化を誘導することを示す。
【実施例0239】
TrkBhu/huマウスにおける体重および代謝に対するインビボでのH4H9816およびアイソタイプ対照REGN1945抗体の効果の比較
本発明のTrkBアゴニスト抗体の体重および組成に対する効果を決定するために、マウスTrkB受容体の代わりにヒトTrkB受容体の発現についてホモ接合性のマウス(TrkBhu/huマウス)の代謝研究を、以下の抗体単回皮下注射の後に行った。TrkBhu/huマウス(雄性、20週齢)を、まず、2週間の順化のために、群のケージから単独のケージでの収容に移した。この期間の後に、マウスを、代謝ケージ(CLAMS、Columbus Instruments)に移して、抗体投与後の食物および水の摂取量、自発運動、エネルギー消費、ならびに呼吸における変化を評価した。通常の粉末飼料を、スプリングロードスケール(Mettler Toledo, PL602E)上のフロアチャンバに入れ、飼料総重量の変化により食物摂取量を測定した。水は、ケージ上部の飲み口からアクセス可能であり、摂取量を、ポンプライン体積の変化を追跡することにより測定した(Oxymax(登録商標)CLAMS Liquid Unit
)。CLAMS代謝ケージは、研究の期間中連続的に16~18分間隔でこれらのパラメーターのそれぞれを測定した。代謝データを、単一の尺度で解析し、OXYMA(登録商標)/CLAMSソフトウェア(Columbus instruments、v5.35)を用いて完全な明暗サイクルを含む24時間間隔でまとめた。2週間ケージに順化させた後、TrkBhu/huマウスに、PBS、pH7.2中のTrkBアゴニスト抗体H4H9816P2、またはIgG4アイソタイプ対照のいずれかの単回50mg/kg皮下用量を受容させた。ナイーブ対照TrkBhu/huマウスの群には、注射を受容させなかった。マウスは、投薬の直前、ならびに投薬の24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、および120時間後に、体重を計測した。それぞれのマウスの体組成を測定するために、定量的磁気共鳴とも称される核磁気共鳴緩和時間測定を、EchoMRI(商標)-500解析装置(EchoMRI LLC)を用いて行った。投薬の前に、マウスを、透明のプラスチックホルダに入れ、NMR-MRI装置に挿入して、それぞれの対象の除脂肪量、体脂肪量、および水分状態を測定した。測定は、マウス1匹当たり0.5~3.2分間の過程にわたって行い、投薬のおよそ120時間後に再度行った。
【0240】
結果の概要および結論:
毎日の体重モニターを行って、H4H9816P2の単回皮下注射が、TrkBhu/huマウスにおいて体重減少を誘導するかどうかを判定した。投薬前には、3つの処置群は、それぞれが28.39~29.85gの投薬前平均体重を有したため、平均体重に有意差はなかった(表16)。投薬48時間後の時点では、しかしながら、H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、平均で1.70g、または投薬前体重の5.96%の減少があった。同じ時点で、ナイーブおよびアイソタイプ対照抗体で処置したTrkBhu/huマウスは、投薬前体重の1.79~2.37%の増量があった。H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、研究の全時間過程を通じて体重の減少が継続され、投薬の72時間後および96時間後までに、これらのマウスは、平均で、それぞれ、投薬前体重の8.42%および11.80%の減少があった。投薬120時間後の時点では、H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、平均で、投薬前体重の12.67%の減少があった。対照的に、ナイーブおよびアイソタイプ対照抗体で処置したTrkBhu/huマウスは、研究の間、投薬前体重にいずれの減少も示さなかった。H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスの体重は、投薬の48時間後、72時間後、96時間後、および120時間後に、ナイーブおよびアイソタイプ対照の両方と比べて有意に低減されたため、TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2は、TrkBhu/huマウスにおいて有意な体重減少を誘導したと決定された。
【0241】
【表17】
【0242】
TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2注射の体組成に対する効果もまた、投薬前および後に、それぞれの対象にNMR-MRIを行うことにより測定した。投薬前には、3つの処置群のTrkBhu/huマウスは、それぞれの群が、平均で4.19~4.75gの体脂肪量および21.32~21.70gの除脂肪量を有したため、体脂肪量または除脂肪量にいずれの有意差も示さなかった(表17)。抗体の投与後に、しかしながら、H4H9816P2を投薬したTrkBhu/huマウスは、研究の過程にわたって、平均で、合計体脂肪量が48.90%減少した(表17)。ナイーブおよびアイソタイプ対照抗体で処置したTrkBhu/huマウスは、それぞれ、平均で、投薬前の体脂肪量が8.49%および9.48%減少し、これは、H4H9816P2で処置した対象よりも有意に低かった(表17)。さらに、H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、研究の間、平均で、除脂肪量が7.84%減少し、これは、ナイーブおよびアイソタイプ対照で処置した群による平均の投薬前除脂肪量の、それぞれ、2.41%および1.75%の減少よりも多かった(表17)。このように、記載される体重減少は、TrkBhu/huマウスにおけるTrkBアゴニスト抗体H4H9816P2の注射後の体脂肪量の有意な減少および除脂肪量の中等度の減少により説明することができる。
【0243】
【表18】
【0244】
TrkBhu/huマウスにおけるTrkBアゴニスト抗体H4H9816P2注射の体重および組成に対する効果を評価することに加えて、給餌、飲水、および自発運動活動を、代謝ケージにより継続的に測定した。投薬の前、TrkBhu/huマウスは、平均で、1日当たり3.49~3.73gの飼料を摂取した。投薬の24時間以内に、しかしながら、H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、食物摂取量が、1日当たり2.20gの飼料へと有意に低減された。H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスにおける食物摂取量の平均レベルは、研究の残りの期間の間、1日当たり2.49gの飼料を上回ることがなかったが、ナイーブおよびアイソタイプ抗体で処置したTrkBhu/huマウスは、1日当たり平均で3.62~4.07gの飼料を一貫して摂取した(表18)。
【0245】
同様に、投薬前には、処置群の間で、毎日の水の摂取量に有意差はなかった。TrkBhu/huマウスは、それぞれの処置群において、平均で1日当たり4.67~5.55mLの水を摂取した(表19)。投与後には、H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、水の摂取量が1日当たり2.05~3.24mLに低減された。これは、研究の間、1日当たり4.50~5.77mLの水を一貫して摂取したナイーブおよびアイソタイプ対照抗体で処置したTrkBhu/huマウスよりも有意に低かった(表19)。従って、TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2の注射は、TrkBhu/huマウスにおいて、ナイーブおよびアイソタイプ対照の両方と比べて、食物および水の両方の摂取量の有意な低減をもたらすとみられた。
【0246】
【表19】
【0247】
【表20】
【0248】
抗体処置の活動に対する効果を決定するために、自発運動を、それぞれのマウスのx-面歩行運動の総数を継続的に測定するOXYMAX(登録商標)/CLAMSソフトウェア(Columbus instruments、v5.35)により解析した。1匹のマウスは、投薬の前に反応亢進を示したため、これは、投薬後の統計学的解析から除外した。ナイーブおよびアイソタイプ抗体で処置した対象は、研究の間、一貫して、平均で1日当たり11,000~15,000の歩行運動が記録されたが、H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、投薬の24~48時間後の間に、28,260の歩行運動が記録され、投薬の48~72時間後の間および72~96時間後の間には、それぞれ、21,193および27,028の歩行運動が記録された(表20)。H4H9816P2で処置したTrkBhu/huマウスは、抗体投与後のそれぞれの時点において、より多くの歩行運動数が記録され、反応亢進が、H4H9816P2注射のさらなる効果であろうことが示唆された。合わせると、これらの効果は、TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2の単回皮下注射が、TrkBhu/huマウスにおいて、体重、体組成、代謝、および自発運動に有意な変化を誘導したことを示唆する。
【0249】
【表21】
【実施例0250】
抗TrkB抗体の網膜神経節細胞(RGC)の生存に対する効果を決定するための視神経横断切断モデル
全ての手順は、ARVO Statement for Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchおよびthe Regeneron Pharmaceutical Inc. IACUCに従って行った。8~10週齢でそれぞれ200~250gの体重の成体の雌性TrkBヒト化ラット(Velocigene、Regeneron Pharmaceutical Inc.)を用いた。ラットに対する全ての手術手順は、ケタミン(63mg/kg)およびキシラジン(6.0mg/kg)の腹腔内注射を用いた全身麻酔下において行った。エリスロマイシン(0.5%、Bausch & Lomb)を含有する眼軟膏を、角膜を保護するために塗布した。
【0251】
眼窩内視神経の軸索切断および硝子体内注射
左の視神経(ON)を、眼窩内で露出させ、硬膜を開いた。ONを、眼球の後部約1.5mmで横断切断した。網膜への血液供給の損傷を回避するように注意した。50μlのHamiltonシリンジに繋げた、ガラスを引き伸ばしたピペットを用いて、硝子体内
注射を毛様体扁平部のすぐ後部に行った。水晶体を損傷しないように注意した。何らかの重大な術後合併症(例えば、網膜虚血、白内障)を有するラットは、さらなる解析から除外した。動物を、異なる実験群に割り当てた。ON軸索切断の3日後および10日後に、一方の対照群には、アイソタイプ対照REGN1945(46.6μg/μl)3μlの硝子体内注射を受容させ、他方の群には、抗ヒトTrkB抗体H4H9816P2(45.7μg/μl)3μlの注射を受容させた。
【0252】
別の実験において、抗ヒトTrkB抗体H4H9816P2の用量応答を試験した。1~9カ月齢のホモ接合性TrkBヒト化ラットに、3ulの抗ヒトTrkB抗体H4H9816P2(0.01、0.1、1、もしくは10ug/ul)またはアイソタイプ対照REGN1945(10μg/μl)の硝子体内注射を、ON軸索切断の3日後および10日後に受容させた。
【0253】
生存RGCの免疫組織化学的染色および計数
ON損傷後の網膜全組織標本における生存RGCの選択的標識のための効率的で信頼できる方法であることが示されているため、Brn3a(脳特異的ホメオボックス/POUドメインタンパク質3A)を、生存している網膜神経節細胞(RGC)のマーカーとして使用した(Nadal--Nicolas FM、Jimenez-Lopez M、Sobrado-Calvo P、Nieto-Lopez L、Canovas-Martinez I、Salinas-Navarro M、Vidal-Sanz M、Agudo M.、Invest Ophthalmol Vis Sci. 2009年8月;50(8):3860~8頁)。Brn3aの免疫染色のために、網膜を、10%正常ロバ血清および0.5% Triton X-100で1時間遮断し、次に、同じ培地において、Brn3a抗体(1:400、カタログ番号sc-31984、Santa
Cruz)と共に、室温で2時間インキュベートした。さらなる洗浄の後、網膜を、Alexa594に結合させたロバ抗ヤギ二次抗体(1:400、カタログ番号A-11058、Invitrogen)と共に、4℃で一晩インキュベートした。
【0254】
結果の概要および結論:
TrkBアゴニスト抗体の、インビボでのRGCの生存に対する効果を評価するために、完全視神経横断切断モデルを用いた。TrkBアゴニスト抗体(H4H9816P2)またはアイソタイプ(陰性対照)抗体を、手術の3日後および10日後に適用した。動物を、軸索切断の14日後に安楽死させた。損傷していない反対側の眼におけるRGCの密度は、3つのTrkB遺伝子型で同様であり、表21に示されるように、平均で1mm当たりおよそ1600であった。生存しているRGCの密度を、Brn3a染色を用いて、網膜全組織標本において評価した。ホモ接合性TrkBヒト化ラットにおいて、TrkBアゴニスト抗体(H4H9816P2)は、対照と比較してRGCの生存を有意に(p<0.01、マンホイットニー検定)増大させた(1mm当たり、685±106対255±66のRGC)。ヘテロ接合性TrkBヒト化ラットにおいても、TrkBアゴニスト抗体の有意な(p<0.05、マンホイットニー検定)生存効果があった(1mm当たり、444±90対208±50のRGC)。野生型TrkBラットにおいては、アイソタイプ対照と比較して、TrkBアゴニスト抗体では、わずかではあるが有意なRGC数の増大があった(表22)。用量応答実験において、RGC密度を、軸索切断の14日後に、Brn3a染色を用いて、網膜全組織標本において定量した。TrkBアゴニスト抗体の明らかな用量応答があった。抗体対照群(1mm当たり168±43のRGC)と比較して、TrkBアゴニスト抗体(H4H9816P2)は、注射群毎に、3ug(1mm当たり、564±124のRGC)または30ug(1mm当たり、543±242のRGC)において、RGCの生存を有意に(p<0.01、1元ANOVA、テューキーの事後検定)増大させた。3および30ugの群間に差はなかった。注射群毎に、0.03ugを受容させた群(1mm当たり、202±96のRGC)または0.
3ugを受容させた群(1mm当たり337±210のRGC)において、RGC生存の増大の傾向があるだけで、有意な増大はなかった(表23)。結論として、TrkBアゴニスト抗体H4H9816P2は、TrkBhu/huおよびTrkBhu/+ラットにおいて、RGCの生存の有意な増加を示した。
【0255】
結論:
TrkBアゴニスト抗体(H4H9816P2)は、ヒト化TrkBラットにおいてRGCの生存を用量依存的に有意に増大させた。
【0256】
【表22】
【0257】
【表23】
【0258】
【表24】
【実施例0259】
AktおよびErkシグナル伝達経路に対する抗TrkB抗体の効果
全ての手順は、ARVO Statement for Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchおよびthe Regeneron Pharmaceutical Inc. IACUCに従って行った。初代マウス皮質ニューロンを、ヒト化TrkBマウス(MAID 7139)から単離し、培養した(Nat Protoc. 2012年9月;7(9):1741~54頁. doi: 10.1038/nprot.2012.099)。ウエスタンブロット(WB)を行って、AktおよびErkの下流経路(p-Akt、p-Erk1/2)に対するTrkBアゴニスト抗体の効果を決定した。出生後1日目(P1)のヒト化TrkB仔マウスに由来する初代皮質ニューロンを、GS21 Neural Supplement(Global Stem、カタログ番号GSM-3100)、Glutamax(Invitrogen、カタログ番号35050-061)、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したNeuralQ基礎培地(Global Stem、カタログ番号GSM-9420)において、4日間培養した(DIV-4)。細胞を、TrkBアゴニスト抗体:H4H9816P-L1(10ug/ml)、H4H9780P-L1(10ug/ml)、H4H9814P-L1(10ug/ml)、IgG4アイソタイプ対照REGN1945(10ug/ml)、対照抗体H1M8037C-L1(10ug/ml)、BDNF(1ug/ml)で、15分間または2時間処置した。ウエスタンブロットを行って、アゴニストが、下流シグナル伝達の維持および強度に差を有するかどうかを決定した。処置した細胞をすすぎ、1%プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Sigma)を含有する低温PBS中にこそぎ入れた。タンパク質濃度を、Bradfordタンパク質アッセイ(Pierce)により決定した。試料(50μg)を、3~8% Tris-酢酸還元ゲル(Novex)におけるSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad)に移した。
【0260】
膜を、5% ミルクおよび0.1% Tween-20、pH7.6を含有する遮断溶液において1時間インキュベートした。これに続いて、5% BSA、0.1% Tween-20、およびウサギ抗ホスホTrk抗体(Cell Signaling、カタログ番号9141、1:500)、ウサギ抗ホスホ-Akt抗体(Cell Signaling、カタログ番号9271、1:1000)、またはウサギ抗ホスホ-ERK1/2抗体(Sigma、カタログ番号E7028、1:5000)を含有する遮断バッファーにおいて、4℃で一晩インキュベートした。続いて、標識されたタンパク質を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した抗ヤギ、抗マウス、または抗ウサギIgGと共
にインキュベートし、HRPの化学発光基質(Pierce)での発展により、可視化した。それぞれのレーンに存在する総TrkB、MAPK、またはAktの量を決定するために、ニトロセルロース膜を、ストリッピングバッファー(Pierce)中で20分間抗体をストリッピングし、ウサギ抗TrkB抗体(Cell Signaling、カタログ番号4603、1:1000)、ウサギ抗Erk1/2抗体(Cell Signaling、カタログ番号06-182、1:1000)、またはウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling、カタログ番号9272、1:1000)と共にインキュベートし、次いで、上で記載されるように可視化した。ベータ-アクチン(Sigma、カタログ番号A5316、1:20000およびGAPDH(Sigma、カタログ番号G9295)を、試料ローディング対照としてプローブした。
【0261】
結果の概要および結論:
図2に示されるように、インキュベーションの15分後に、全てのTrkBアゴニスト抗体が、MAPK/ERKおよびPI3K/Akt経路の活性化を示したが、BDNFおよびH4H9814Pのみが、TrkBリン酸化を示した。インキュベーションの2時間後、TrkBアゴニスト抗体は、TrkBの活性化を示した。
【実施例0262】
SH-SY5Y細胞の生存に対するアゴニスト抗TrkB抗体の効果
ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞株のインビトロ培養:
神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Y(Sigma ATCC 番号94030304、カタログ番号11C016)細胞を、DMEM:F12(Invitrogen、カタログ番号11330)、Pen/Strep(Invitrogen、カタログ番号15140)、FBS 10%(Invitrogen、カタログ番号10082-147)を含有する成長培地に、37℃で5% COにおいて、播種した。23~27継代で、細胞を、全トランス10uM レチノイン酸(Alfa Aesar、カタログ番号44540)、DMEM:F12(Invitrogen、カタログ番号11330)、Pen/Strep(Invitrogen、カタログ番号15140)、FBS 10%(Invitrogen、カタログ番号10082-147)を含有する分化培地において、96ウェルプレートに播種した。細胞(3万個/ウェル)を、4日間分化させた。培養物を、異なる用量の抗体(100~0.01ug/ml)を含有する無血清分化培地(100ul/ウェル)に交換する生存バイオアッセイにおいて、抗体をスクリーニングした。2日後に、CCK8(Dojindo、カタログ番号CK04)試薬を添加し(10ul/ウェル)、プレートを、3~4時間インキュベートし、ODを、450nmで測定して(VictorまたはFlexStation III)、生存細胞のパーセンテージを決定した。データを、処置なしの無血清培地に対して正規化した。抗体なしの無血清処置=100%の生存
【0263】
結果の概要および結論:
図3および表23に示されるように、本発明のアゴニストTrkB抗体は、陰性アイソタイプ対照抗体と比較して、SH-SY5Y細胞の生存における有意な用量依存性増大を示した(p<0.0001、2元ANOVAによる)。
【0264】
【表25】
【実施例0265】
ヒト化TrkBおよび野生型マウスにおける抗TrkB抗体の薬物動態評価
抗TrkB抗体H4H9816P2の薬物動態の評価を、ヒト化TrkBマウス(ヒトTrkB発現についてホモ接合性のマウス、TrkBhu/hu)および野生型(WT)マウスにおいて行った。コホートは、マウス株1つ当たり5匹のマウスを含んでいた。全てのマウスに、10mg/kgの単回皮下(SC)用量を受容させた。血液試料を、投薬の6時間後、ならびに1日後、2日後、3日後、6日後、9日後、16日後、21日後、および30日後に採取した。血液を、血清に処理し、解析されるまで-80℃で凍結させた。
【0266】
循環抗体濃度を、GyroLab xPlore(商標)(Gyros、Uppsala、Sweden)を用いて総ヒトIgG4/hIgG1抗体解析により決定した。簡単に述べると、抗体希釈バッファー(0.05% Tween-20+PBS)中で100μg/mLに希釈したビオチン化マウス抗ヒトIgG4/IgG1特異的モノクローナル抗体(REGN2567)を、ストレプトアビジンコートビーズ(Dynospheres(商標))を事前ローディングした親和性カラムを含むGyrolab Bioaffy 200 CDで捕捉した。このアッセイにおいてキャリブレーションに用いた標準物は、0.1% 正常マウス血清(NMS)を含有する希釈バッファー(0.5% BSA+PBS)中0.488~2000ng/mLの範囲の濃度のH4H9816Pであった。血清試料を、抗体希釈バッファー中に1:100で希釈した。室温で実行したCDにおいて抗REGN2567でコートした親和性カラムに捕捉したヒトIgGを、検出バッファー(Rexxip Fバッファー)中に希釈した0.5μg/mL Alexa-647に結合させたマウス抗ヒトカッパモノクローナル抗体(REGN654)の添加により検出し、結果として生じた蛍光シグナルを、GyroLab xPlore機器により応答単位(RU)で記録した。試料濃度を、Gyrolab Evaluatorソフトウェアを用いた5つのパラメーターのロジスティック曲線近似を用いて近似させた標準曲線からの補間により決定した。2回の複製実験により得られた平均濃度を、後続のPK解析に用いた。
【0267】
PKパラメーターを、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)ソフトウェアバージョン6.3(Certara、L.P.、Princeton、NJ)および血管外投薬モデルを用いて、非コンパートメント解析(NCA)により決定した。各抗体に対するそれぞれの平均の濃度値を用いて、観察された血清中の最大濃度(Cmax)、観察された推定半減期(t1/2)、および最後の測定可能濃度までの時間に対する濃度曲線下面積(AUClast)を含む、全てのPKパラメーターを、線形補間およ
び均一の加重による線形台形法則を用いて決定した。
【0268】
結果の概要および結論:
抗TrkB抗体H4H9816P2の10mg/kg皮下投与の後に、類似の抗体最大濃度(Cmax)が、TrkBhu/huマウスおよび野生型マウスの両方において、1日目または2日目までに観察された(それぞれ、135および131μg/mL、表26を参照)。9日目までに、H4H9816P2は、TrkBhu/huマウスにおいては、野生型マウスよりも急な薬物排出を示し、標的により仲介される効果を示した。30日目の抗体濃度は、TrkBhu/huマウスにおいては、約35倍低かった。野生型マウスにおけるH4H9816P2の抗体曝露(AUClast)は、TrkBhu/huマウスにおいてみられたものよりも約1.7倍高かった(それぞれ、1730および1020 d*μg/mL)。野生型マウスはまた、TrkBhu/huマウスと比べて半減期(T1/2)に約3倍の増大を示した(それぞれ、8.4日間および2.9日間)。
【0269】
総抗TrkB抗体濃度のデータの概要は、表25に要約されており、平均PKパラメーターは、表26に記載されており、時間に対する平均総抗体濃度は、図4に示されている。
【0270】
【表26】
【0271】
【表27】
【実施例0272】
抗マウスTrkBモノクローナル抗体がマウスまたはラットのTrkBとそのリガンドであるBDNF(脳由来神経栄養因子)との間の相互作用を遮断する能力
TrkBヒト化マウスをマウスTrkBタンパク質で免疫することにより、抗マウスTrkBモノクローナル抗体(mAb)を生成した。この免疫により同定された3つのリードmAbは、M2aM14173N、M2aM14178N、およびM2aM14179Nであった。本発明のリードmAbを、遮断ELISAにおいて、プレートに結合したBDNFに対するマウスまたはラットTrkBの相互作用を遮断する能力について、特徴付けた。
【0273】
実験は、以下の手順を用いて行った。ヒトBDNFを、PBS中、0.5μg/mL(マウスTrkB.hFc相互作用を遮断するため)または0.3μg/mL(ラットTrkB.mmh相互作用を遮断するため)の濃度で、96ウェルのマイクロタイタープレートにコートし、4℃で一晩インキュベートした。非特異的結合部位を、続いて、PBS中5%(w/v) BSA溶液(アッセイバッファー)を用いて遮断した。96ウェルの希釈プレートにおいて、850pM マウスTrkB.hFcまたはラットTrkB.mmhを、3倍連続希釈した抗マウスTrkB抗体および対照抗体と混合した。最終抗体濃度は、1.69pM~100nMの範囲にあった。タンパク質-抗体ミックスを、室温(RT)で1時間インキュベートした。結合前ミックスを、次いで、二連に、BDNFでコートしたマイクロタイタープレートに移した。アッセイのベースラインを計算するために、アッセイバッファーのみを含有する対照を含めた。ELISAプレートを、室温で1時間インキュベートし、次いで、プレート洗浄溶液で洗浄した。プレートに結合したマウスTrkB.hFcを、HRPに結合させたヤギ抗ヒトFcγフラグメント特異的抗体(Jackson Immunoresearch)で検出し、ラットTrkB.mmhを、HRPに結合させた抗ヒスチジン抗体(Qiagen)で検出した。プレートを、検出抗体と共に室温で1時間インキュベートした後、プレート洗浄溶液で洗浄した。アッセイプレートを、製造元が推奨する手順に従って、TMB比色基質発展した。
【0274】
それぞれのウェルの450nmでの吸光を、記録し、抗体の濃度の関数としてプロットした。データを、11カ所の用量応答曲線にわたる4つのパラメーターのロジスティック
方程式を用いて、GraphPad Prismソフトウェアで解析し、IC50値を計算した。BDNFへのTrkBの結合の50%を低減するのに必要とされる抗体の濃度として定義される、計算したIC50値を、遮断有効性の指標として用いた。試験した抗体の最大濃度での遮断パーセントを、アッセイのベースラインと比べた、プレート上のBDNFへのTrkBの結合を遮断する抗体の能力の指標として、計算した。抗体の非存在下における850pM マウスまたはラットTrkBの結合シグナルを、100%の結合または0%の遮断として定義した。アッセイバッファー単独でのベースラインシグナルは、0%の結合または100%の遮断として定義した。
【0275】
結果の概要および結論
抗マウスTrkB抗体がマウスまたはラットTrkBのBDNFへの結合を遮断する能力を、遮断ELISAを用いて評価した。
【0276】
遮断の結果を、表27ならびに図5AおよびBに要約する。遮断%を全ての抗体について報告し、試験した最も高い抗体濃度(100nM)で計算した。IC50値は、BDNFへのマウスまたはラットTrkBの結合を、50%を上回って遮断する抗体についてのみ示した。本発明の3つの抗体のうち、抗マウスTrkB mAbであるM2aM14178Nは、BDNFへのマウスおよびラットの両方のTrkBタンパク質の結合を、50%を上回って遮断した。M2aM14178Nは、850pM マウスTrkB.hFcの結合を、426pMのIC50および84.4%の遮断%で遮断した。M2aM14178Nは、BDNFへの850pM ラットTrkB.mmhの結合を、184pMのIC50値および89.5%の遮断%で遮断した。M2aM14173Nは、BDNFへの850pM マウスTrkB.hFcの結合の29.7%の遮断を示した。M2aM14173Nは、3.81nMのIC50値で、BDNFへの850pM ラットTrkB.mmhの結合の80.7%の遮断を示した。M2aM14179Nは、BDNFへのマウスTrkB.hFcの結合を11.6%遮断した。M2aM14179Nは、1nMを上回る濃度で、BDNFへのラットTrkB.mmhの結合の増大を示した。
【0277】
比較物抗マウスTrkB mAbであるH1M8037Cは、BDNFへの850pM
マウスTrkB.hFcの結合を、180pMのIC50値および91.5%の遮断%で遮断した。H1M8037Cは、850pM ラットTrkB.mmhの結合を、1.42nMのIC50値および83.3%の遮断%で遮断した。mIgG2aアイソタイプ対照mAbであるREGN1097は、同一のアッセイ条件下において、マウスおよびラットTrkBのいずれの遮断も示さなかった。10nMを上回る濃度において、REGN1027は、ラットTrkB結合の増大を示した。
【0278】
【表28】
【実施例0279】
抗ヒトTrkBモノクローナル抗体がヒトTrkBとその天然のリガンドであるヒトBDNFおよびNT4との相互作用を遮断する能力
H4H9814P、H4H9816P2、およびH4H9780Pと命名した抗ヒトTrkB抗体が、プレートに捕捉されたBDNFまたはNT-4へのTrkBタンパク質の結合を遮断する能力を、2つの競合サンドイッチELISAを用いて測定した。アッセイにおいて、種々の濃度の抗TrkB抗体を、一定濃度の二量体TrkBタンパク質と事前に混合し、抗体の存在に起因する、プレートに固定化したBDNFまたはNT-4へのTrkBの結合の低減を計算した。
【0280】
実験に用いた組み換え二量体TrkBタンパク質は、C末端におけるヒトIgG1のFc部分と共に発現されるヒトTrkB細胞外ドメインの部分(アミノ酸Cys32~His430)から構成されていた(hTrkB-hFc、受託番号NP_006171.2、分子量69,700ダルトン)。BDNFおよびNT-4タンパク質は、それぞれ、ヒトBDNFの細胞外ドメイン(アミノ酸His129~Arg247、受託番号P23560、R&D Systems)またはNT-4(アミノ酸Gly81~Ala210、受託番号P34130、R&D Systems)から構成されていた。2つのアイソタイプ抗体対照、抗Fel d 1ヒトIgG4抗体、およびマウスIgG1を有するa-Fel d 1抗体に特異的な抗体を、IgGバックグラウンド検出のための対照として含めた。
【0281】
実験は、以下の手順を用いて行った。ヒトBDNFまたはNT-4を、それぞれ、PBS中0.5μg/mLまたは2μg/mLの濃度で、別個に、96ウェルのマイクロタイ
タープレートに、4℃で一晩コートした。非特異的結合部位を、続いて、PBS中のBSA溶液を用いて遮断した。遮断溶液および希釈バッファーは、BDNFコートでのアッセイについては、PBS中5%(w/v) BSA溶液、またはNT-4コートでのアッセイについては、PBS中0.5%(w/v) BSA溶液を含有していた。別個のマイクロタイタープレートにおいて、500pM hTrkB-hFcタンパク質を一定量で、最終濃度が1.7pM~100nMの範囲にある抗体の連続希釈物、および抗体が存在しない溶液に添加した。(抗体阻害アッセイのためのhTrkB-hFcの一定濃度は、プレートにコートしたhBDNFまたはhNT-4へのhTrkB-hFcの個別の結合曲線の線形部分内のおよそ中間点から選択した)。室温で1時間インキュベートした後、500pMの一定濃度のhTrkB-hFcタンパク質を有する抗体-タンパク質複合体を、hBDNFまたはhNT-4でコートしたマイクロタイタープレートに移した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄し、プレートに結合したhTrkB-hFcを、西洋ワサビペルオキシダーゼ(JacksonImmunoResearch)に結合させた抗ヒトFcγフラグメント特異的ヤギポリクローナル抗体で検出した。プレートを、次いで、製造元の推奨に従ってTMB基質溶液(BD Biosciences)で発展させ、450nmでの吸光を、Victorプレートリーダー(PerkinElmer(商標))で測定した。
【0282】
Prism(商標)ソフトウェア(GraphPad)のS状用量応答モデルを用いて、データ解析を行った。hBDNFまたはhNT-4へのhTrkB-hFcの結合の50%を低減するのに必要とされる抗体の濃度として定義される、計算したIC50値を、遮断有効性の指標として用いた。試験した抗体の最大濃度での遮断パーセントを、アッセイのベースラインと比べた、プレート上のhBDNFまたはhNT-4への500pM hTrkB-hFcの結合を遮断する抗体の能力の指標として、計算した。計算において、抗体の存在なしでの500pM hTrkB-hFcの試料の結合シグナルは、100%の結合または0%の遮断として参照し、hTrkB-hFcまたは抗体なしでのバッファーの試料のベースラインシグナルは、0%の結合または100%の遮断として参照した。
【0283】
結果の概要および結論:
抗TrkB抗体がBDNFまたはNT-4へのTrkBの結合を遮断する能力を、2つの競合サンドイッチELISAを用いて評価した。連続希釈した抗体または抗体なし対照の存在下における、96ウェルのマイクロタイタープレートにコートしたhBDNFまたはhNT-4へのヒトTrkB-hFcの結合を、HRPに結合させた抗ヒトFcγフラグメント特異的ヤギポリクローナル抗体で検出した。IC50値を計算し、hBDNFまたはhNT-4へのhTrkB-hFcの結合を遮断する抗体の有効性の指標として用いた。加えて、試験した最も高い濃度におけるそれぞれの抗体による500pM hTrkB-hFcの最大遮断を、計算し、比較した。
【0284】
遮断結果を、表28に要約する。遮断%を全ての抗体について報告し、試験した最も高い抗体濃度100nMで計算した。負の遮断%は、抗体の存在下において検出されたTrkB結合の増大を示す。IC50値は、BDNFまたはNT-4へのTrkBの結合を、50%を上回って遮断する抗体について示す。IC50値は、50%を下回って遮断する抗体については定量的でなく、(-)として報告した。
【0285】
試験した最も高い抗体濃度において、3つの抗TrkB抗体のうちの1つ(H4H9780P)が、BDNFまたはNT-4リガンドへのhTrkBの結合を、それぞれ、150pMおよび180pMのIC50値で、50%を上回って遮断し、100nM 抗体での遮断パーセントはBDNFについては93%であり、NT-4については80%であった。3.7nMにおいて、この抗体は、NT-4への500pM hTrkB-hFcの
結合を、99%遮断した。試験した最も高い濃度での遮断%の減少は、マイクロタイタープレートへのH4H9780Pの非特異的結合、およびHRPに結合させた抗ヒトFcγフラグメント特異的ポリクローナル抗体でのこの結合の検出に帰属し得る。
【0286】
3つの抗TrkB抗体のうちの2つ(H4H9814PおよびH4H9816P2)ならびに無関係の遮断対照抗体は、BDNFまたはNT-4へのhTrkBの結合を、50%を下回って遮断した。比較物は、BDNFおよびNT-4の両方への500pM hTrkB-hFcの結合を、50%を上回って遮断した。
【0287】
【表29】
【実施例0288】
異なる抗hTrkBモノクローナル抗体間でのOctet交差競合
2つの抗体が、hTrkB-mmh上のそれらのエピトープへの結合について、互いに競合するかどうかを評価するために、抗hTrkBモノクローナル抗体間での結合競合を、Octet RED384バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.)におけるリアルタイムの、標識を含まない生体層インターフェロメトリーアッセイを用いて決定した。交差競合実験を、25℃において、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3.4mM EDTA、0.05% v/v 界面活性剤Tween-20、0.1mg/mL BSA(HBS-EPバッファー)中、1000rpmの速度でプレートを振盪しながら行った。試験した全ての抗hTrkB抗体およびhTrkB-mmh溶液は、Octet HBS-EPバッファーにおいて調製した。2つの抗体が、hTrkB-mmh上のそれぞれのエピトープへの結合について、互いに競合し得るかどうかを評価するために、およそ約0.14~0.24nmのhTrkB-mmhを、まず、50μg/mLのhTrkB-mmhを含有するウェルから、5分間、抗HisでコートしたOctetバイオセンサーチップに捕捉した。hTrkB-mmhを捕捉したOctetバイオセンサーチップを、5分間、50ug/mlの第1の抗hTrkB
モノクローナル抗体(これよりmAb-1と称する)を含有するウェルに沈め、続いて、さらに5分間、第2の抗HTrkBモノクローナル抗体(これより、mAb-2と称する)を含有するウェルに沈めることにより、飽和させた。工程の間に、Octetバイオセンサーチップは、HBS-EPバッファーで30秒間洗浄した。
【0289】
実験の経過中、リアルタイムの結合応答をモニターし、工程毎の終わりの結合応答を記録した。mAb-1と事前に複合体を形成させたhTrkB.mmhに対するmAb-2の結合の応答を比較し、異なる抗hTrkBモノクローナル抗体の競合的/非競合的行為を、60%阻害閾値を用いて決定した。
【0290】
表29は、結合の順序とは独立して、両方の方向で競合する抗体の関係性を明示的に定める。
【0291】
結果:
【0292】
【表30】
【実施例0293】
25℃で測定した、サロゲート抗マウスTrkBモノクローナル抗体の異なるTrkB試薬へのBiacore結合動態
2つの抗体が、mTrkB-mmh上のそれらのエピトープへの結合について、互いに競合するかどうかを評価するために、抗mTrkBモノクローナル抗体間での結合競合を、Octet HTXバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.)におけるリアルタイムの、標識を含まない生体層インターフェロメトリーアッセイを用いて決定した。交差競合実験を、25℃において、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3.4mM EDTA、0.05% v/v 界面活性剤Tween-20、0.1mg/mL BSA(HBS-EPバッファー)中、1000rpmの速度でプレートを振盪しながら行った。試験した全ての抗mTrkB抗体およびmTrkB-mmh溶液は、Octet HBS-EPバッファーにおいて調製した。2つの抗体が、mTrkB-mmh上のそれぞれのエピトープへの結合について、互いに競合し得るかどうかを評価するために、およそ約0.20~0.27nmのmTrkB-mmhを、まず、20μg/mLのmTrkB-mmhを含有するウェルから、5分間、抗HisでコートしたOctetバイオセンサーチップに捕捉した。mTrkB-mmhを捕捉したOctetバイオセンサーチップを、5分間、50ug/mlの第1の抗mTrkBモノクローナル抗体(これよりmAb-1と称する)を含有するウェルに沈め、続いて、さらに
3分間、第2の抗mTrkBモノクローナル抗体(これより、mAb-2と称する)を含有するウェルに沈めることにより、飽和させた。工程の間に、Octetバイオセンサーチップは、HBS-EPバッファーで30秒間洗浄した。
【0294】
実験の経過中、リアルタイムの結合応答をモニターし、工程毎の終わりの結合応答を記録した。mAb-1と事前に複合体を形成させたmTrkB.mmhに対するmAb-2の結合の応答を比較し、異なる抗mTrkBモノクローナル抗体の競合的/非競合的行為を、50%阻害閾値を用いて決定した。
【0295】
表30は、結合の順序とは独立して、両方の方向で競合する抗体の関係性を明示的に定める。
【0296】
結果:
【0297】
【表31】
【実施例0298】
Octet遮断:BDNFまたはNT-4による抗ヒトTrkBまたは抗マウスTrkB抗体のTrkBへの結合の遮断
実験1.
BDNFまたはNT-4による抗ヒトTrkB抗体または抗マウスTrkB抗体のTrkBへの結合の遮断を、リアルタイム生体層インターフェロメトリー(BLI)に基づくOctet HTX機器を用いて評価した。全ての研究は、25℃において、10mM HEPES pH7.4、300mM NaCl、3mM EDTA、1mg/mL BSA、0.02% NaN、および0.05% v/v 界面活性剤Tween-20(HBS-EBTランニングバッファー)中で行った。全ての試料を、タイトル付き384ウェルプレートに分注し、プレートを、1000rpmの振盪速度のオービタルシェーカーに置いた。2分間、10μg/mLのTrkB試薬を含有するウェルに浸すことにより、hTrkB.mFcを、抗mFc(AMC)Octetセンサーに捕捉し、一方でhTrkB.hFcまたはmTrkB.hFcは、抗hFc(AHC)Octetセンサーに捕捉した。hTrkB.mFcまたはhTrkB.hFcを捕捉したOctetバイオセンサーを、2分間、20nMのBDNF、hNT-4、またはmNT-4を含有するウェルに浸し、続いて、Octetバイオセンサーを、4分間、300nMの異なるTrk
B mAbを含有するウェルに浸すことにより、飽和させた。TrkBおよびBDNF、hNT-4、またはmNT-4の複合体へのTrkB mAbの結合を、Scrubber 2.0c解析ソフトウェアを用いて決定した。
【0299】
本発明の抗ヒトTrkB抗体または抗マウスTrkB抗体の結合は、表31および表32に報告されるように、BDNFおよびNT-4の両方により遮断されなかった。
【0300】
【表32】
【0301】
【表33】
【0302】
実験2.
抗ヒトTrkB抗体または抗マウスTrkB抗体によるTrkBへのBDNFまたはNT-4の結合の遮断を、リアルタイム生体層インターフェロメトリー(BLI)に基づくOctet HTX機器を用いて評価した。全ての研究は、25℃において、10mM HEPES pH7.4、300mM NaCl、3mM EDTA、1mg/mL BSA、0.02% NaN3、および0.05% v/v 界面活性剤Tween-20(HBS-EBTランニングバッファー)中で行った。全ての試料を、タイトル付き384ウェルプレートに分注し、プレートを、1000rpmの振盪速度のオービタルシェーカーに置いた。2分間、10μg/mLのTrkB試薬を含有するウェルに浸すことにより、hTrkB.mFcを、抗mFc(AMC)Octetセンサーに捕捉し、一方でhTrkB.hFcまたはmTrkB.hFcは、抗hFc(AHC)Octetセンサーに捕捉した。hTrkB.mFcまたはhTrkB.hFcを捕捉したOctetバイオセンサーを、4分間、300nMの異なるTrkB mAbを含有するウェルに浸し、続いて、Octetバイオセンサーを、2分間、20nMのBDNF、hNT-4、またはmNT-4を含有するウェルに浸すことにより、飽和させた。TrkBと異なるTrkB
mAbとの複合体へのBDNF、hNT-4、またはmNT-4の結合を、Scrubber 2.0c解析ソフトウェアを用いて決定した。
【0303】
本発明の3つの抗ヒトTrkB抗体のうちの1つの結合は、表33に報告されるように、BDNFおよびhNT-4の結合を遮断した。本発明の3つの抗マウスTrkB抗体のうちの1つの結合は、表34に報告されるように、BDNFおよびmNT-4の結合を遮断した。
【0304】
【表34】
【0305】
【表35】
【0306】
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態により、範囲において制限されるべきではない。実際、本明細書に記載されるものに加え本発明の種々の修飾は、前述の記載および添付の図面から当業者に明らかとなるだろう。かかる修飾は、添付の請求の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024016204000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号2、18、34、49、59、および68からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)に含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3);ならびに
配列番号10、26、42、53、63、および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む、前記単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【外国語明細書】