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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162041
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】冷菓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/38 20060101AFI20241114BHJP
   A23G 9/40 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A23G9/38
A23G9/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077193
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG12
4B014GG14
4B014GK03
4B014GK05
4B014GK07
4B014GK10
4B014GP02
4B014GP12
4B014GP13
4B014GP14
4B014GP25
4B014GP26
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】タンパク質を多く含みながら、保存中のシュリンクを抑制できる冷菓を提供する。
【解決手段】タンパク質及び脂肪を含み、タンパク質含有量が10質量%以上、脂肪含有量が5質量%以上の冷菓であって、変性ホエイタンパク質を含み、前記冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、前記変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合が10質量%以上であり、かつ5℃における粘度が800mPa・s以下である、冷菓。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及び脂肪を含み、タンパク質含有量が10質量%以上、脂肪含有量が5質量%以上の冷菓であって、
変性ホエイタンパク質を含み、前記冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、前記変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合が10質量%以上であり、かつ
5℃における粘度が800mPa・s以下である、冷菓。
【請求項2】
前記冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、乳由来のタンパク質の割合が70質量%以上である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
前記乳由来のタンパク質以外のタンパク質を実質的に含まない、請求項2に記載の冷菓。
【請求項4】
前記冷菓に含まれる脂肪が、乳由来の脂肪を含む、請求項1に記載の冷菓。
【請求項5】
前記乳由来の脂肪以外の脂肪を実質的に含まない、請求項4に記載の冷菓。
【請求項6】
前記脂肪含有量が8%以上である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項7】
前記冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、前記変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合が30質量%以上である、請求項1に記載の冷菓。
【請求項8】
タンパク質及び脂肪を含み、タンパク質含有量が10質量%以上、脂肪含有量が5質量%以上の原料液を調製し、前記原料液を加熱殺菌し、フリージングし、硬化して冷菓を製造する方法であって、
前記原料液が変性ホエイタンパク質を含み、前記原料液に含まれるタンパク質の総質量に対する前記変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合を、10質量%以上、かつ前記加熱殺菌後の前記原料液の5℃における粘度が800mPa・s以下となる量とする、冷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリージング工程で空気を含ませた冷菓にあっては、保存中に空気が抜けて収縮する現象(シュリンク)が生じる場合があり、収縮が大きいと商品価値が損なわれてしまう。
特許文献1には、シャーベット等のような、固形分含量が少なくタンパク質を殆ど含まない冷菓において、特定の乳化剤を含有させることによってシュリンクを抑制する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-4077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、タンパク質を多く含む冷菓の製造を試みるなかで、タンパク質含有量が高いとシュリンクがより生じやすいことを知見した。
本発明は、タンパク質を多く含みながら、保存中のシュリンクを抑制できる冷菓の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1] タンパク質及び脂肪を含み、タンパク質含有量が10質量%以上、脂肪含有量が5質量%以上の冷菓であって、変性ホエイタンパク質を含み、前記冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、前記変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合が10質量%以上であり、かつ5℃における粘度が800mPa・s以下である、冷菓。
[2] 前記冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、乳由来のタンパク質の割合が70質量%以上である、[1]の冷菓。
[3] 前記乳由来のタンパク質以外のタンパク質を実質的に含まない、[2]の冷菓。
[4] 前記冷菓に含まれる脂肪が、乳由来の脂肪を含む、[1]~[3]のいずれかの冷菓。
[5] 前記乳由来の脂肪以外の脂肪を実質的に含まない、[4]の冷菓。
[6] 前記脂肪含有量が8%以上である、[1]~[5]のいずれかの冷菓。
[7] 前記冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、前記変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合が30質量%以上である、[1]~[6]のいずれかの冷菓。
[8] タンパク質及び脂肪を含み、タンパク質含有量が10質量%以上、脂肪含有量が5質量%以上の原料液を調製し、前記原料液を加熱殺菌し、フリージングし、硬化して冷菓を製造する方法であって、前記原料液が変性ホエイタンパク質を含み、前記原料液に含まれるタンパク質の総質量に対する前記変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合を、10質量%以上、かつ前記加熱殺菌後の前記原料液の5℃における粘度が800mPa・s以下となる量とする、冷菓の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タンパク質を多く含みながら、保存中のシュリンクを抑制できる冷菓が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において以下の定義が適用される。
本発明における冷菓は、一般的な「冷菓」に分類されるもの、及びフローズンヨーグルトを含む。「冷菓」は、具体的には、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、氷菓を挙げることができる。
アイスクリーム類とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3.0%以上を含むもの(はっ酵乳を除く)をいう。アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。
一方、乳固形分3.0%未満のものは、前記アイスクリーム類ではなく、食品衛生法に基づく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により、氷菓として規定されている。
また、フローズンヨーグルトは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令により、種類別「発酵乳」に分類される。発酵乳は「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう」と定められ、成分規格は、「無脂乳固形分8.0%以上、乳酸菌数又は酵母数1000万/mL以上」と規定されている。フローズンヨーグルトは、凍結した発酵乳に該当する。
本発明における冷菓は、氷菓、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、フローズンヨーグルトのいずれであってもよい。アイスクリーム、アイスミルクが好ましい。
【0008】
凍結点は、特に断りのない限り、液状にした試料を雰囲気温度-25℃で冷却しながら品温を経時的に測定し、液体が固体になる際の発熱反応により温度が下降しないポイント(凝固点)における温度である。
冷菓又は原料液の粘度は、5℃に温度調整した測定対象物について、B型粘度計にて、ローターNo.3を使用し、回転数60rpmで測定した、30秒後の値である。
オーバーランは、空気を含有させる前の容量に対する、含有空気容量の百分率の値である。例えばオーバーランが100%の場合、空気を含有させる前と同容量の空気を含むことを意味する。
「~」で表される数値範囲は、特に断りのない限り、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0009】
成分等の含有量の測定方法は以下の方法を用いる。
(1)水分
常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)により測定する。
(2)固形分
固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出する。
【0010】
(3)脂肪含有量
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の、アイスクリーム類の乳脂肪分の定量法に準拠する方法で測定する。
具体的には、試料4gを小型ビーカーに採り、水3mLを加えてよく混ぜ合わせ、レーリッヒ管に移す。前記ビーカーは、水3mLでよく洗い、その洗液を前記レーリッヒ管に加え、振り混ぜる。次に、アンモニア水(アンモニアの25~30%水溶液、無色透明なもの)2mLを加え、静かに混合する。次に、前記レーリッヒ管を60℃の水浴中につけ、時々振り混ぜながら20分間加温する。さらにエタノール(95~96%水溶液)10mLを加えてよく混ぜ合わせる。
次いで、前記レーリッヒ管にエーテル25mLを加え静かに回転し、均一の色調となったときエーテルガスを抜き、管を水平にして30秒間激しく振り混ぜる。次に石油エーテル(沸点60℃以下)25mLを加え、同様に30秒間振り混ぜて栓を緩め、上澄液が透明になるまで直立して2時間以上静置する。上澄液を、予め恒量を求めたビーカーに入れる。
前記レーリッヒ管に、上記と同様の手順で、エーテル25mL及び石油エーテル25mLを加えて混ぜ、上澄液を前記ビーカーに入れる。側管の先端を、エーテルと石油エーテルの等量混合液で洗浄して前記ビーカーに加える。
前記ビーカーを、約75℃に加熱して溶剤を揮発させ、雰囲気温度100~105℃の乾燥器中で1時間乾燥した後、秤量する。ビーカーの恒量からの増加分を脂肪分とする。
【0011】
(4)タンパク質含有量
試料に含まれる窒素含有量に、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に基づくタンパク質成分ごとの窒素タンパク質換算係数を乗じてタンパク質含有量を算出する。前記窒素含有量は、例えば「食品表示基準について(平成27年3月30日消食第139号)」の「別添 栄養成分等の分析方法等」(以下、食品表示基準における分析方法)に基づいて、すなわちケルダール法を用いて定量する。
【0012】
<冷菓>
本実施形態の冷菓は、タンパク質及び脂肪を含む。
本発明で用いるタンパク質の具体例としては、野菜由来、果実由来、卵由来、大豆由来、乳由来のタンパク質が挙げられる。また、乳由来のタンパク質(以下、「乳タンパク質」ともいう。)としてはカゼイン、ホエイが挙げられる。卵由来のタンパク質としては卵黄由来のタンパク質、卵白由来タンパク質が挙げられる。
冷菓に含まれるタンパク質は、少なくとも乳タンパク質を含む。乳タンパク質以外のタンパク質を含んでもよい。冷菓に含まれる乳タンパク質は、少なくとも、後述の変性ホエイタンパク質由来のタンパク質を含む。
【0013】
本発明で用いる脂肪の具体例としては、乳由来、植物由来、動物由来の脂肪が挙げられる。
冷菓に含まれる脂肪は、少なくとも乳由来の脂肪(以下、「乳脂肪」ともいう。)を含むことが好ましい。乳脂肪以外の脂肪を含んでもよい。
【0014】
本実施形態において、タンパク質を含む原料として、少なくとも変性ホエイタンパク質を用いる。変性ホエイタンパク質は、冷菓保存中のシュリンク抑制に寄与する。
本発明で用いる変性ホエイタンパク質は、ホエイタンパク質を熱変性させ、さらに微粒子化したものである。ホエイタンパク質の熱変性とは、ホエイタンパク質を加熱して凝集させることを意味する。凝集したホエイタンパク質にせん断力をかけることによって、微粒子化した変性ホエイタンパク質が得られる。微粒子化した変性ホエイタンパク質の平均粒子径は、10~200μmが好ましく、15~150μmがより好ましく、20~100μmがさらに好ましく、40~80μmが特に好ましい。
本明細書において、変性ホエイタンパク質の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置で測定される粒度分布における、体積基準のメジアン径である。
変性ホエイタンパク質に含まれるタンパク質は、変性ホエイタンパク質の総質量に対して30~95質量%が好ましく、75~90質量%がより好ましい。
変性ホエイタンパク質に含まれる脂肪は、変性ホエイタンパク質の総質量に対して0~10質量%が好ましく、3~7質量%がより好ましい。
変性ホエイタンパク質は市販品からも入手可能である。市販品の例としては、ミライ社製品名「MILEI 80MP」等が挙げられる。
【0015】
本実施形態において、変性ホエイタンパク質以外の乳原料を用いてもよい。
変性ホエイタンパク質以外の乳原料としては、例えば、生乳、牛乳、クリーム、バター、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、練乳、チーズ、カゼイン、ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物等が挙げられる。
変性ホエイタンパク質以外の乳原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
変性ホエイタンパク質以外の乳原料の少なくとも一部は、乳脂肪を含む乳原料であることが好ましい。
【0016】
本実施形態の冷菓は、必要に応じて、糖類の1種以上を含むことが好ましい。
糖類の例としては、ブドウ糖、果糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖)などの単糖類;麦芽糖、乳糖、ショ糖、トレハロースなどの二糖類;マルトトリオースなどの三糖類;四糖類(マルトシルトレハロースなど)、ゲンチオオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ミルクオリゴ糖などのオリゴ糖類;DE値14以上のデンプン分解物(水あめ、粉あめなど);前記単糖類、二糖類、三糖類、四糖類に代表されるオリゴ糖類、又はDE値14以上のデンプン分解物から誘導される糖アルコール;等が挙げられる。
前記ショ糖として砂糖(上白糖、三温糖、グラニュー糖、白双糖、粉砂糖、顆粒状糖、糖液など)を使用してもよい。
【0017】
本実施形態の冷菓は、必要に応じて、上記変性ホエイタンパク質、乳原料及び糖類以外のその他の成分を1種以上含んでもよい。
その他の成分の例としては、卵成分、植物油脂、食物繊維、乳化剤、安定剤、酸味料、甘味料、香料、着色料、呈味材料、その他の食品添加剤等が挙げられる。
甘味料の例としては、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料が挙げられる。
呈味材料は、原料液に均一に溶解又は分散可能な食材であり、例えば食塩、果汁、抹茶、コーヒー、紅茶、酒等が例示できる。
また、本実施形態の冷菓の製造に支障を生じない範囲で、果実、種実類など、冷菓中に不均一に分散される固体材料を含んでもよい。
本実施形態の冷菓は、少なくとも、糖類及び甘味料の一方又は両方である甘味成分を含むことが好ましい。
【0018】
本実施形態の冷菓は水分を含む。冷菓の総質量に対して、固形分は30~45質量%が好ましく、33~40質量%がより好ましく、33~37質量%がより好ましく、34~36%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると冷菓に適度なボディ感と保形性を付与し、上限値以下であると製造に適した粘度以下となり製品としても柔らかさを保ち好ましい。
【0019】
冷菓の総質量に対して、タンパク質含有量は10質量%以上であり、12質量%以上が好ましい。前記タンパク質含有量が10質量%以上であると、タンパク質を含む旨の強調表示が可能となる。前記下限値以上であると高栄養化の効果が高い。またタンパク質含有量が高いほど冷菓保存中にシュリンクが生じやすい傾向があり、本発明を適用することによる効果が大きい点で好ましい。
前記タンパク質含有量の上限は特に限定されないが、粘度や風味の点からは20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましい。前記上限値以下であるとタンパク質特有の粉っぽさや収斂味が抑えられ風味として好ましい。
冷菓の総質量に対するタンパク質含有量は、10~20%が好ましく、10~18質量%がより好ましく、12~16質量%がさらに好ましい。
【0020】
タンパク質を含む原料の少なくとも一部として変性ホエイタンパク質を用いることにより、冷菓保存中のシュリンク抑制効果が得られる。
冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、変性ホエイタンパク質中のタンパク質が占める割合は10質量%以上であり、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
前記割合が上記範囲の下限値以上であると冷菓保存中のシュリンク抑制効果に優れる。
前記割合の上限は特に限定されず100質量%でもよい。製造適性の点からは95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0021】
冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、乳タンパク質以外のタンパク質の占める割合は30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
すなわち、冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、乳タンパク質の占める割合は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以上が特に好ましい。
【0022】
冷菓は、乳タンパク質以外のタンパク質を実質的に含まないことが好ましい。「冷菓が、乳タンパク質以外のタンパク質を実質的に含まない」とは、冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、乳タンパク質以外のタンパク質の含有量が2質量%以下であることを意味し、乳タンパク質以外のタンパク質の含有量がゼロの場合も含まれる。
特に、冷菓に含まれるタンパク質は乳タンパク質であることが好ましい。「冷菓に含まれるタンパク質が乳タンパク質である」とは、冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して、乳タンパク質の含有量が100質量%であることを意味する。
【0023】
冷菓の総質量に対して、脂肪含有量は5質量%以上であり、5~15質量%が好ましく、5~12質量%がより好ましく、8~10質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると適度な保形性があり食感もなめらかになり、上限値以下であると過度な脂肪感を抑制し風味上も好ましい。
【0024】
冷菓に含まれる脂肪の総質量に対して、乳脂肪以外の脂肪が占める割合は70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより好ましく、6質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、4質量%以下が特に好ましい。
すなわち、冷菓に含まれる脂肪の総質量に対して、乳脂肪の占める割合は30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、94質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、96質量%以上が特に好ましい。
【0025】
冷菓は、乳脂肪以外の脂肪を実質的に含まないことが好ましい。「冷菓が、乳脂肪以外の脂肪を実質的に含まない」とは、冷菓に含まれる脂肪の総質量に対して、乳脂肪以外の脂肪の含有量が2質量%以下であることを意味し、乳脂肪以外の脂肪の含有量がゼロの場合も含まれる。
特に、冷菓に含まれる脂肪は乳脂肪であることが好ましい。「冷菓に含まれる脂肪が乳脂肪である」とは、冷菓に含まれる脂肪の総質量に対して、乳脂肪の含有量が100質量%であることを意味する。
【0026】
冷菓の5℃における粘度は800mPa・s以下であり、700mPa・s以下が好ましく、600mPa・s以下がより好ましく、500mPa・s以下がより好ましく、300mPa・s以下がより好ましく、200mPa・s以下がさらに好ましい。
前記粘度が上記範囲の上限値以下であると、冷菓保存中のシュリンク抑制効果に優れる。加えて製造適性に優れる。前記粘度は、冷菓の組成によっても異なるが、変性ホエイタンパク質の添加量によって調整できる。具体的には、変性ホエイタンパク質の添加量が増大すると、冷菓の粘度が低下する傾向がある。
前記粘度の下限値は特に限定されないが、ボディ感の点からは50mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。
【0027】
冷菓の凍結点は、例えば-1~-5℃が好ましく、-2~-4℃がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると製品としてなめらかな物性を有し、上限値以下であると喫食時に溶けにくく適度な保形性を有する。
冷菓のオーバーランは、例えば10~150%が好ましく、30~100%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると適度な保形性となめらかさを有し、上限値以下であると適度な濃厚感を有する。
【0028】
本実施形態の冷菓の好ましい組成として、例えば以下の態様(i)~(ii)が挙げられる。
態様(i):タンパク質含有量が10~12.5質量%、脂肪含有量が8~10質量%、糖類が6~15質量%、冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して乳タンパク質の占める割合が98質量%以上、冷菓に含まれる脂肪の総質量に対して乳脂肪の占める割合が30質量%以上、固形分が33~37質量%であり、前記タンパク質の総質量に対して、変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合が10質量%以上であり、かつ5℃における粘度が800mPa・s以下である、冷菓。
態様(ii):タンパク質含有量が12.5~17.5質量%、脂肪含有量が5~9質量%、糖類が6~15質量%、冷菓に含まれるタンパク質の総質量に対して乳タンパク質の占める割合が98質量%以上、冷菓に含まれる脂肪の総質量に対して乳脂肪の占める割合が30質量%以上、固形分が33~37質量%であり、前記タンパク質の総質量に対して、変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合が50質量%以上であり、かつ5℃における粘度が800mPa・s以下である、冷菓。
【0029】
本実施形態の冷菓の製品形態は特に限定されない。例えば、容器と、容器内で硬化した冷菓とを有する容器入り冷菓が挙げられる。容器の形状や材質は特に限定されず、公知のものを使用できる。
容器入り冷菓は、保存中に冷菓がシュリンクすると冷菓と容器との隙間ができてしまうため、本発明を適用してシュリンクを抑制することの効果が大きい点で好ましい。
例えば、本実施形態によれば、タンパク質を多く含みながら、後述のシュリンク耐性試験に記載の方法で求められる体積変化率が3%以下である、容器入り冷菓を実現できる。
【0030】
<冷菓の製造方法>
本実施形態の冷菓は、全原料を含む原料液を調製し、前記原料液を加熱殺菌し、フリージングし、硬化して冷菓を得る方法で製造できる。
本明細書において「硬化」とは、水分が凍結し流動性を失った状態になることを意味する。「フリージング」とは、低温で撹拌しながら氷結晶を増加させる操作を意味する。「部分凍結物」は、氷結晶を含み、流動性を有するものを意味する。
【0031】
本実施形態の製造方法において、加熱殺菌は常法で行うことができる。加熱殺菌前に原料液の均質化処理してもよい。
フリージング工程では、原料液を流動させながら凍結点よりも低い温度で凍結させて、部分凍結物を得る。フリージング時に含有させる空気の量によってオーバーランを調整できる。
部分凍結物を冷却して硬化させて冷菓(硬化物)が得られる。部分凍結物を容器に充填して硬化させることにより、容器入り冷菓が得られる。
原料液、部分凍結物、及び部分凍結物の硬化物(冷菓)において、質量基準の組成は同じである。部分凍結物、及び部分凍結物の硬化物(冷菓)において、オーバーランの値は同じである。
原料液を加熱殺菌し、フリージングし、冷却して硬化させた冷菓の5℃における粘度は、加熱殺菌後の原料液の5℃における粘度と同じである。
【実施例0032】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
[原料]
変性ホエイタンパク質(1):チーズホエイから乳糖を分離したホエイタンパク質を、加熱してタンパク質を凝集させた後に、せん断力をかけて微粒子化した粉末、タンパク質含有量83質量%、脂肪含有量5質量%、平均粒子径62μm。
乳原料(1):脱脂乳から乳糖を分離して濃縮した粉末状の乳タンパク質濃縮物、タンパク質含有量76質量%、脂肪含有量2質量%。
乳原料(2):クリーム、タンパク質含有量2質量%、脂肪含有量45質量%、無脂乳固形分5質量%。
糖類(1):果糖、固形分100質量%。
糖類(2):粉あめ、固形分96質量%。
【0034】
[容器]
開口部及び底面が円形であり、開口部の直径(内寸)が64mm、深さ(内寸)が31mm、容量が80mLのカップ。
【0035】
[実施例1]
表1に示す配合で全原料を混合し、液温70℃で撹拌して溶解した後、全圧15MPaで均質化処理した。次いで、85℃、30秒間の条件で加熱殺菌し、5℃に冷却して原料液を得た。
原料液の凍結点は-3.1℃であり、加熱殺菌後の原料液の5℃における粘度は556mPa・sであった。原料液は、乳由来のタンパク質以外のタンパク質を実質的に含まず、乳脂肪以外の脂肪を実質的に含まない。
得られた原料液を連続式フリーザーに供給し、連続式フリーザーから排出される部分凍結物を容器に、硬化後に満杯となるように充填し、-35℃に冷却して硬化して容器入り冷菓を得た。容器内の冷菓のオーバーランは40%であった。
冷菓の総質量に対して、固形分は35.0質量%、乳タンパク質含有量は10.0質量%、乳脂肪含有量は8.0質量%、乳タンパク質の総質量に対して変性ホエイタンパク質中のタンパク質の割合は33.0質量%であった。
冷菓のシュリンク耐性を下記の方法で評価した。その結果を表1に示す(以下、同様)。
【0036】
[実施例2~7、比較例1~5]
原料の配合を表1に示すとおりに変更したほかは、実施例1と同様にして容器入り冷菓を製造し、評価した。
【0037】
<シュリンク耐性試験>
各例で得られた容器入り冷菓を、所定の温度サイクルに設定された恒温槽(ナガノサイエンス社製 エコナスCH43-15P)に4週間入れて、サイクル試験を行った。恒温槽の温度サイクルは、8時間かけて-8℃から-18℃まで一定の降温速度で降温し、その後、8時間かけて-18℃から-8℃まで一定の昇温速度で昇温するように設定した。
サイクル試験前の冷菓の体積をV0=80mLとした。サイクル試験終了後の容器入り冷菓において、シュリンクした隙間に4℃の水を満杯まで注入し、水の注入量V1を測定した。下記式により冷菓の体積変化率(単位:体積%)を求めた。下記の基準でシュリンク耐性を評価した。
体積変化率=(V1)/(V0)×100
(評価基準)
◎:体積変化率が0%。
○:体積変化率が0%超、3%以下。
×:体積変化率が3%超。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果に示されるように、変性ホエイタンパク質を配合し、加熱殺菌後の原料液の5℃における粘度を800mPa・s以下とした実施例1~7は、シュリンク耐性に優れていた。加えて製造適性も良好であった。
一方、変性ホエイタンパク質を配合しなかった比較例1は、前記原料液の粘度が800mPa・sを超え、シュリンク耐性に劣った。
また、比較例1よりも乳タンパク含有量が高く、変性ホエイタンパク質を配合しなかった比較例2は、前記原料液の粘度が比較例1よりさらに高くなり、均質化・殺菌できないという問題が生じたため、製造不可と判定した。
比較例1と比較例2を比べると、冷菓中の乳タンパク含有量が高いほど原料液の粘度が増大することがわかる。
また、変性ホエイタンパク質を配合したが、前記原料液の粘度が800mPa・sを超える比較例3~5はシュリンク耐性が劣った。
【0040】
比較例1と実施例1、2、比較例2、3と実施例3、比較例4と実施例4、5、及び比較例5と実施例6をそれぞれ比べると、変性ホエイタンパク質中のタンパク質/乳タンパク質の割合が高くなるにしたがって、原料液の粘度が低下し、シュリンク耐性が向上することがわかる。加えて原料液の粘度が低いと製造適性に優れる。
実施例4と実施例7は、変性ホエイタンパク質中のタンパク質/乳タンパク質の割合は同じであるが、脂肪含有量が異なる例である。それぞれ8質量%と5質量%である。脂肪含有量が5質量%である実施例7は、脂肪含有量が8質量%である実施例4と比べると、原料液の粘度はやや低いが、シュリンク耐性試験における体積変化率はやや大きかった。