(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162042
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】吸音構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20241114BHJP
G10K 11/172 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G10K11/16 130
G10K11/172
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077200
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀 誠斗
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA07
5D061BB02
5D061BB13
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】より広域での周波数の吸音性に優れた吸音構造体を提供する。
【解決手段】複数の中空部が並設された中空板材からなる吸音構造体20であって、一方の主面20aには中空部の内外を連通する連通孔30が形成され、中空部は、第1中空部と、第1中空部より容積の小さい第2中空部を備え、第2中空部では、中空板材の厚みが第1中空部より薄く形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空部が並設された中空板材からなる吸音構造体であって、
一方の主面には前記中空部の内外を連通する連通孔が形成され、
前記中空部は、第1中空部と、前記第1中空部より容積の小さい第2中空部を備え、
前記第2中空部では、前記中空板材の厚みが前記第1中空部より薄く形成されていることを特徴とする吸音構造体。
【請求項2】
複数の前記第1中空部が形成された第1領域と、複数の前記第2中空部が形成されて前記第1領域より厚みが薄い第2領域を備え、
前記第1領域及び前記第2領域には、複数の前記連通孔が形成され、
前記第1領域での前記連通孔の密度は、前記第2領域での前記連通孔の密度より低いことを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項3】
複数の前記第1中空部が形成された第1領域と、複数の前記第2中空部が形成されて前記第1領域より厚みが薄い第2領域とを備え、
前記第1領域及び前記第2領域には、複数の前記連通孔が形成され、
前記第2領域での前記連通孔の形成ピッチは、前記第1領域での前記連通孔の形成ピッチより小さいことを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項4】
複数の中空部が並設された吸音構造体の製造方法であって、
複数の第1中空部が並設された第1領域と、前記第1中空部より容積の小さい複数の第2中空部が並設された第2領域とを有する中空構造体を形成する中空構造体形成工程と、
前記中空構造体の一方の主面に、前記中空部の内外を連通する連通孔を形成する連通孔形成工程と、
を備えていることを特徴とする吸音構造体の製造方法。
【請求項5】
前記中空構造体形成工程では、厚みが異なる複数の領域を有する前記中空構造体を形成し、
前記連通孔形成工程では、前記中空構造体の厚みが薄い前記第2領域での前記連通孔の形成ピッチが、前記第2領域より前記中空構造体の厚みが厚い前記第1領域での前記連通孔の形成ピッチより小さくなるように形成することを特徴とする請求項4に記載の吸音構造体の製造方法。
【請求項6】
前記中空構造体形成工程は、真空成形された凹凸シート材を折り畳んで複数の中空部が並設された中空板材を形成する折り畳み工程と、
前記中空板材の少なくとも一方の主面における一部の領域を押圧して、厚みが異なる複数の領域を有する前記中空構造体を成形する成形工程と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の吸音構造体の製造方法。
【請求項7】
前記連通孔形成工程では、開口面積が同一の前記連通孔を形成することを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の吸音構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の中空部が並設された中空板状の吸音構造体が知られている。例えば、特許文献1に記載の吸音構造体を形成する中空板材は、中空部としての六角柱形状のセルを区画する側壁部と、側壁部の両端部においてセルを閉塞する一対の閉塞壁とを有している。一方の閉塞壁に形成された連通孔から各セルの内部に音圧が入ることによって音圧が低減されることで吸音性能が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一定の周波数領域で吸音率が高いといったことだけでなく、広い周波数領域での良好な吸音性能が要求される。特許文献1に記載の吸音構造体は、広い周波数領域での良好な吸音性能といった観点からは改善の余地があるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の吸音構造体は、複数の中空部が並設された中空板材からなる吸音構造体であって、一方の主面には前記中空部の内外を連通する連通孔が形成され、前記中空部は、第1中空部と、前記第1中空部より容積の小さい第2中空部を備え、前記第2中空部では、前記中空板材の厚みが前記第1中空部より薄く形成されている。
【0006】
上記の構成において、複数の前記第1中空部が形成された第1領域と、複数の前記第2中空部が形成されて前記第1領域より厚みが薄い第2領域を備え、前記第1領域及び前記第2領域には、複数の前記連通孔が形成され、前記第1領域での前記連通孔の密度は、前記第2領域での前記連通孔の密度より低いことが好ましい。
【0007】
上記の構成において、複数の前記第1中空部が形成された第1領域と、複数の前記第2中空部が形成されて前記第1領域より厚みが薄い第2領域とを備え、前記第1領域及び前記第2領域には、複数の前記連通孔が形成され、前記第2領域での前記連通孔の形成ピッチは、前記第1領域での前記連通孔の形成ピッチより小さいことが好ましい。
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の吸音構造体の製造方法は、複数の中空部が並設された吸音構造体の製造方法であって、複数の第1中空部が並設された第1領域と、前記第1中空部より容積の小さい複数の第2中空部が並設された第2領域とを有する中空構造体を形成する中空構造体形成工程と、前記中空構造体の一方の主面に、前記中空部の内外を連通する連通孔を形成する連通孔形成工程と、を備えている。
【0009】
上記の構成において、前記中空構造体形成工程では、厚みが異なる複数の領域を有する前記中空構造体を形成し、前記連通孔形成工程では、前記中空構造体の厚みが薄い前記第2領域での前記連通孔の形成ピッチが、前記第2領域より前記中空構造体の厚みが厚い前記第1領域での前記連通孔の形成ピッチより小さくなるように形成することが好ましい。
【0010】
上記の構成において、前記中空構造体形成工程は、真空成形された凹凸シート材を折り畳んで複数の中空部が並設された中空板材を形成する折り畳み工程と、前記中空板材の少なくとも一方の主面における一部の領域を押圧して、厚みが異なる複数の領域を有する前記中空構造体を成形する成形工程と、を備えていることが好ましい。
【0011】
上記の構成において、前記連通孔形成工程では、開口面積が同一の前記連通孔を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、広い周波数領域での吸音性能を向上させることができる吸音構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態の吸音構造体の斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、吸音構造体を形成する中空板材について説明する部分斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)におけるβ-β線断面図である。
図3(c)は
図3(a)におけるγ-γ線断面図である。
【
図4】
図4は、吸音構造体の製造方法について説明する図である。
図4(a)は凹凸シート材について説明する図である。
図4(b)、
図4(c)は凹凸シート材を折り畳んで中空板材を形成する折り畳み工程について説明する図である。
図4(d)は中空板材の一部の領域を押圧して中空構造体を形成する成形工程、中空構造体に連通孔を形成する連通孔形成工程について説明する図である。
【
図5】
図5(a)は、吸音構造体の領域A(第1領域)での断面図である。
図5(b)は、吸音構造体の領域B(第2領域)での断面図である。
【
図6】
図6は、吸音構造体の吸音率を示すグラフである。
【
図7】
図7は、吸音構造体を設置した状態の壁について説明する図である。
図7(a)は、本実施形態の吸音構造体を設置した状態の壁であり、
図7(b)、
図7(c)は、変更例の吸音構造体を設置した状態の壁である。
【
図8】
図8は、変更例の吸音構造体について説明する図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)は、変更例の吸音構造体について説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した吸音構造体の一実施形態について説明する。
<吸音構造体20について>
図1及び
図3に示すように、本実施形態の吸音構造体20は、内部に六角柱形状のセルSが複数並設された中空板材10からなる矩形板状の構造体である。
【0015】
図1及び
図5に示すように、吸音構造体20の一方の主面20aには、セルSの内外を連通する複数の連通孔30が形成されている。
吸音構造体20は、後に説明する吸音構造体20の製造方法において、
図3に示す中空板材10の一部の領域を押圧して中空構造体40を形成する成形工程(
図4(d)参照)、及び、中空構造体40の一方の主面40aに連通孔30を形成する連通孔形成工程(
図4(d)参照)を経て形成されるものである。中空構造体40は、中空板材10に、厚みが異なる複数の領域A~Cを形成してなる板状の構造体であり、吸音構造体20は、中空構造体40に、セルSの内外を連通する連通孔30を形成してなる板状の構造体である。
【0016】
図5(a)及び(b)に示すように、吸音構造体20には、容積の異なる複数のセルSが形成されている。本実施形態の吸音構造体20では、セルSが請求項で規定する「中空部」に対応する。以下では、吸音構造体20に並設されるセルSを中空部Rという場合がある。容積の相対的に大きい中空部R(セルS)が請求項で規定する「第1中空部」であり、第1中空部R1という場合がある。また、容積の相対的に小さい中空部Rが請求項で規定する「第2中空部」であり、第2中空部R2という場合がある。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の吸音構造体20では、厚みの異なる複数の領域A~Cが形成されている。本実施形態の吸音構造体20では、厚みが最も厚い領域A、最も厚みが薄い領域B、領域Aと領域Bの中間の厚みの領域Cの3つの領域が形成されている。各領域は、
図2における上方から順に領域A、領域B、領域C、領域B、及び領域Aの順に並んでいる。
【0018】
本実施形態の吸音構造体20は、正面視で約300mm×約300mmの正方形である。領域Aより厚みの薄い領域B、Cは、吸音構造体20の主面20b側で、領域Aに対して所定の深さ分凹んだ形状をなしている。領域Aでの厚みは約30mm、領域Bでの厚みは約15mm、領域Cでの厚みは約20mmである。領域Aでの厚みは領域A全体に亘って同程度である。領域B、Cでの厚みも領域B、C全体に亘って同程度である。領域A~Cは
図1での水平方向に、上下に同じ幅で延びている。領域A~Cの上下の各幅は同程度である。
【0019】
図3に示すように、吸音構造体20を構成する中空板材10の内部に並設された中空部R(セルS)は、正面視ほぼ同形状でほぼ同じ大きさである。そのため、領域A~Cの各領域に並設された中空部Rは、正面視ほぼ同形状でほぼ同じ大きさとなっている。上述のとおり、領域A~Cでは、吸音構造体20の厚みが異なることから、領域A~Cの各領域を構成する中空部Rの容積が異なっていることになる。つまり、領域Aを構成する中空部Rの容積が最も大きく、領域Bを構成する中空部Rの容積が最も小さい。
【0020】
図5に示すように、本実施形態の吸音構造体20では、厚みが最も厚い領域Aと、領域Aと領域Bの中間の厚みの領域Cが、請求項で規定する「第1領域」を構成し、最も厚みが薄い領域Bが、請求項で規定する「第2領域」を構成する。そして、領域A及び領域Cに並設された中空部Rが第1中空部R1であり、領域Bに並設されたセルSが第2中空部R2である。
【0021】
図1に示すように、吸音構造体20の主面20aに形成された連通孔30は、領域A~Cでその密度、形成ピッチが異なるように各領域A~Cで規則的に形成されている。本実施形態の吸音構造体20では、領域Aに形成された連通孔30の形成ピッチが、領域Cに形成された連通孔30の形成ピッチと等しくなっている。また、領域Bに形成された連通孔30の形成ピッチが、領域A、Cに形成された連通孔30の形成ピッチより小さくなっている。領域A、Cに形成された連通孔30を連通孔30aとし、領域Bに形成された連通孔30を連通孔30bとする。つまり、連通孔30aが、請求項で規定する「第1領域での連通孔」に対応し、連通孔30bが、請求項における「第2領域での連通孔」に対応する。
【0022】
本実施形態の吸音構造体20では、連通孔30aの形成ピッチは約8mmである。また、連通孔30bの形成ピッチは約4mmである。つまり、領域A及び領域Cからなる第1領域に並設された連通孔30aの形成ピッチは、領域Bからなる第2領域に並設された連通孔30bの形成ピッチより大きくなっている。また、領域A及び領域Cからなる第1領域に並設された連通孔30aの密度は、領域Bからなる第2領域に並設された連通孔30bの密度より低くなっている。
【0023】
吸音構造体20は、従来公知の熱可塑性樹脂材料で形成されている。その材料は特に限定されない。その材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、アクリルニトリル‐ブタジエン‐スチレン等を挙げることができる。
【0024】
<中空板材10について>
次に、吸音構造体20を構成する中空板材10について説明する。
図3(a)に示すように、中空板材10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層11と、コア層11の厚み方向両面に接合されたシート状のスキン層15、16とで構成されている。以下では、
図3において、中空板材10の上側に示される主面を上面10aとし、下側に示される主面を下面10bとする。スキン層15は、中空板材10の上面10a側に接合され、スキン層16は、中空板材10の下面10b側に接合されている。
【0025】
図3(b)及び(c)に示すように、コア層11は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。コア層11は、上壁部12と、下壁部13と、上壁部12及び下壁部13の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部14とで構成されている。
【0026】
図3(a)に示すように、コア層11の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。第1セルS1及び第2セルS2は、上壁部12、下壁部13の構成が異なっているが、正面視ほぼ同形状でほぼ同じ大きさである。また、容積もほぼ同じである。
【0027】
吸音構造体20の説明では、セルSを中空部Rと表現し、容積の異なる中空部Rとして容積の相対的に大きい第1中空部R1と、容積の相対的に小さい第2中空部R2と表現した。中空板材10では、すべてのセルSの容積はほぼ同じで、上壁部12、下壁部13の構成が異なっている。そのため、中空板材10の説明では、中空部RをセルSとして説明し、構成の異なるセルSをそれぞれ第1セルS1、第2セルS2として説明する。つまり、中空板材10のセルS(第1セルS1及び第2セルS2)であって、中空構造体40及び吸音構造体20における第1領域(領域A及び領域C)に並設されたセルS(中空部R)が第1中空部R1であり、第2領域(領域C)に並設されたセルS(中空部R)が第2中空部R2である。
【0028】
図3(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部14の上部に2層構造の上壁部12が設けられている。この2層構造の上壁部12の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部14の下部に1層構造の下壁部13が設けられている。一方、
図3(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部14の上部に1層構造の上壁部12が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部14の下部に2層構造の下壁部13が設けられている。この2層構造の下壁部13の各層は互いに接合されている。また、
図3(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部14によって区画されている。
【0029】
図3(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う二つの第1セルS1が六角形の1辺を共有している。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う二つの第2セルS2が六角形の1辺を共有している。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層11は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0030】
図3(a)~(c)に示すように、コア層11の上面にスキン層15が接合されていることにより、コア層11における側壁部14の上部は、コア層11の上壁部12及びスキン層15で閉塞されている。すなわち、上壁部12及びスキン層15が、セルSを上側から区画する上部閉塞壁17を構成している。同様に、コア層11の下面にスキン層16が接合されていることにより、コア層11における側壁部14の下部は、コア層11の下壁部13及びスキン層16で閉塞されている。すなわち、下壁部13及びスキン層16が、セルSを下側から区画する下部閉塞壁18を構成している。
【0031】
中空板材10は、コア層11、スキン層15、16により、内部に複数のセルSが並設された形状とされており、中空板材10の上部閉塞壁17側が中空板材10の上面10aを構成し、下部閉塞壁18側が中空板材10の下面10bを構成している。
【0032】
<吸音構造体20の製造方法>
次に、吸音構造体20の製造方法について説明する。
吸音構造体20の製造方法は、折り畳み工程、接合工程、成形工程、連通孔形成工程を備えている。折り畳み工程では、所定の凹凸形状を有する熱可塑性樹脂製の凹凸シート材100を折り畳んでコア層11を形成する。接合工程では、コア層11の両主面にスキン層15、16を接合して中空板材10を形成する。成形工程では、中空板材10の下面10bにおける一部の領域を押圧して、厚みが異なる複数の領域A~Cが形成された中空構造体40を形成する。連通孔形成工程では、中空構造体40の一方の主面に連通孔30を形成する。
【0033】
図4(a)~(c)に示すように、折り畳み工程では、1枚の熱可塑性樹脂製の凹凸シート材100を折り畳んでコア層11を形成する。
図4(a)に示すように、凹凸シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、凹凸シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0034】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0035】
なお、凹凸シート材100は、熱可塑性樹脂製の平坦シート材の塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、凹凸シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚の平坦シート材から成形することができる。
【0036】
図4(a)及び(b)に示すように、折り畳み工程では、凹凸シート材100を境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層11を形成する。具体的には、凹凸シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、
図4(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層11が形成される。なお、この実施形態では、凹凸シート材100を折り畳むために圧縮する方向が、セルSが並設される方向(X方向)である。
【0037】
上記のように凹凸シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層11の上壁部12が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層11の下壁部13が形成される。なお、
図4(c)に示すように、上壁部12における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部13における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0038】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部14を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部14を構成する。
【0039】
そして、膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が第1セルS1の2層構造をなす側壁部14となり、第2膨出部122の上面同士の当接部位が第2セルS2の2層構造をなす側壁部14となる。
【0040】
図4(c)に示すように、第1セルS1では、一対の重ね合わせ部131によってその上部が区画され、第2セルS2では、一対の重ね合わせ部131によってその下部が区画されている。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、凹凸シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0041】
接合工程では、折り畳み工程で得られたコア層11の上面及び下面に、それぞれ熱可塑性樹脂製のシート材を熱溶着により接合する。コア層11の上面に接合されたシート材はスキン層15となり、コア層11の上壁部12と共に側壁部14の上部を閉塞する上部閉塞壁17を構成する。コア層11の下面に接合されたシート材は、スキン層16となり、コア層11の下壁部13と共に側壁部14の下部を閉塞する下部閉塞壁18を構成する。
【0042】
なお、シート材(スキン層15、16)をコア層11に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上壁部12(重ね合わせ部131)が互いに熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下壁部13(重ね合わせ部131)が互いに熱溶着される。
【0043】
接合工程により、X方向に第1セルS1又は第2セルS2がそれぞれ列を成すように多数並設され、Y方向に第1セルS1及び第2セルS2が交互に多数並設された中空板材10が得られる。
【0044】
図4(d)に示すように、成形工程では、中空板材10の下面10bにおける一部の領域を押圧して、厚みが異なる複数の領域A~Cが形成された中空構造体40を形成する。中空板材10を、図示しない金型内で押圧して、領域A~Cが形成された正面視正方形状の中空構造体40を得る。
【0045】
まず、所定形状で、所定の大きさに中空板材10をカットする。本実施形態では、中空板材10を、約340mm×約340mmの正方形状にカットする。
続いて、吸音構造体20の形状の内部空間を有する金型内に、カットした中空板材10をセットする。例えば、金型として、上型には、吸音構造体20の正面視形状の内部空間が形成され、下型には、吸音構造体20の領域B、Cを成形するための凸部が形成されているものを使用する。金型の型締め時には、領域Aを成形する部分での金型の内部空間の上下寸法が約30mmであるのに対し、領域Bを成形する部分での上下寸法が約15mm、領域Cを成形する部分での上下寸法が約20mmに設定される。
【0046】
金型を所定温度に加熱した後、カットした中空板材10の下面10bが下型側に向くように中空板材10をセットする。続いて、加熱された金型内で中空板材10を加熱押圧する。これにより、領域A~Cが成形されるとともに、周囲に中空板材10のコア層11が上下方向に圧縮された圧縮部分が形成された中間体が得られる。圧縮部分は、領域A~Cからなる中空構造体40の周囲を囲むように約20mmの幅で形成されている。中間体から周囲の圧縮部分をカットすることで、中空構造体40が得られる。
【0047】
図4(d)に示すように、中空構造体40は、中空板材10の上面10aに対応する主面40aが平坦面として形成される。また、中空板材10の下面10bに対応する主面40bには、領域B、Cとしての凹部が形成される。凹部が形成されることで、領域Aの厚みが約30mmであるのに対し、領域Bの厚みが約15mm、領域Cの厚みが約20mmとなっている。領域B、Cでの厚みが領域Aでの厚みに対して薄くなることにより、領域BでのセルSは、領域AでのセルSに比べて容積の小さい中空部Rとなり、領域CでのセルSは、領域BでのセルSに比べて容積の小さい中空部Rとなる。本実施形態の中空構造体40では、領域A及び領域Cに形成されて、相対的に容積の大きいセルSが第1中空部R1である。領域Bに形成されて、相対的に容積の小さいセルSが第2中空部R2である。第1中空部R1は、中空板材10の第1セルS1及び第2セルS2を含んで構成されている。また、第2中空部R2も、中空板材10の第1セルS1及び第2セルS2を含んで構成されている。
【0048】
図4(d)に示すように、連通孔形成工程では、中空構造体40の主面40a(中空板材10の上部閉塞壁17)に複数の連通孔30を形成する。連通孔30は、ドリル、針、パンチ等からなる針状部材Tで中空構造体40の主面40aを貫通させることにより形成される。
【0049】
図4(d)に示すように、針状部材Tは、複数個が1列に配列された構成となっている。複数個の針状部材Tは、すべて同一の太さに形成されている。針状部材Tの間隔は、領域A、Cに配置されるものと、領域Bに配置されるものとで異なっている。本実施形態では、領域A、Cに配置される複数の針状部材Tの間隔が約8mmの同一ピッチに設定されている。また、領域Bに配置される複数の針状部材Tの間隔が約4mmの同一ピッチに設定されている。なお、
図4(d)では針状部材Tの位置を模式的に示しており、実際の間隔より広くなっている。
【0050】
中空構造体40の上方に配置した針状部材Tを下降移動させると、中空構造体40の主面40aに複数の連通孔30が列をなして貫通形成される。針状部材Tは、1回下降させるごとに、所定距離ずつ移動させる。領域A、Cに配置される針状部材Tは、約8mmずつ移動させる。また、領域Bに配置される針状部材Tは、約4mmずつ移動させる。
【0051】
これにより、
図5(a)に示すように、領域A、Cでは、形成ピッチが約8mmで複数の連通孔30が形成される。領域A及び領域Cに形成された連通孔30を連通孔30aというものとする。また、
図5(b)に示すように、領域Bでは、形成ピッチが約4mmで複数の連通孔30が形成される。領域Bに形成された連通孔30を連通孔30bというものとする。
【0052】
領域Bでの連通孔30bの形成ピッチは、領域A及び領域Cでの連通孔30aの形成ピッチより小さい。また、領域A及び領域Cでの連通孔30aの密度は、領域Bでの連通孔30bの密度より低い。連通孔30a、30bの開口径、開口面積は同一である。なお、
図5(a)及び(b)では連通孔30a、30bの形成ピッチを模式的に示しており、形成ピッチや密度は実際の間隔より広くなっている。このように、連通孔形成工程を経て、中空構造体40は、平坦面として形成された主面40aに複数の連通孔30が形成された吸音構造体20となる。
【0053】
吸音構造体20では、連通孔30a、30bにより、セルSの内部空間と吸音構造体20の外部空間とが連通される。具体的には、
図5(a)及び(b)に示すように、第1セルS1において連通孔30は、2層構造の上壁部12及びスキン層15を貫通している。また、図示は略すが、第2セルS2において連通孔30は、1層構造の上壁部12及びスキン層15を貫通している。これにより、吸音構造体20は、吸音材として機能する。
【0054】
図5(a)及び(b)に示すように、各連通孔30a、30bの開口縁の周辺部は、連通孔30a、30bが形成されていない部分における吸音構造体20の主面20aに対して窪むような形状をなしている。その結果として、連通孔30の開口縁は、コア層11の上壁部12の内面よりも下側の空間であるセルSの内部空間に位置している。
【0055】
図4(d)では、成形工程で加熱押圧して成形された第2中空部R2が、コア層11の側壁部14の形状を保持した状態で示している。しかし、実際には、加熱押圧によりコア層11の側壁部14が座屈して、座屈した側壁部14が中空構造体40の厚み方向に折り重なった状態となる場合がある。この場合、2層構造の側壁部14の両方が、同じ方向又は異なる方向にく字状に座屈している状態となっている。この状態では、折り重なった側壁部14は、上壁部12や下壁部13に当接していたり当接していなかったりしている。そして、側壁部14が座屈している場合には、連通孔形成工程では、針状部材Tにより、この座屈して折り重なった状態の側壁部14の部分に連通孔30bが形成される場合がある。こうした場合には、連通孔30bは、スキン層15、上壁部12、及び側壁部14が折り重なった状態の部分に設けられることになる。
【0056】
以上の工程を経て、厚みの異なる複数の領域A~Cを有するとともに、厚みの異なる領域A~Cでの連通孔30の形成ピッチ、密度の異なる吸音構造体20が製造される。
図7(a)に示すように、吸音構造体20は、壁面に対して複数枚を上下方向、水平方向に並べて組み付けて使用することができる。吸音構造体20は、壁面側に主面20bが位置するように組み付ける。これにより、室内等の騒音を効果的に吸音可能となる。
【0057】
次に、本実施形態の吸音構造体20の作用をその効果とともに説明する。
(1)吸音構造体20は、複数の中空部RとしてのセルSが並設された中空板材10からなる。中空部Rは、第1中空部R1と、第1中空部R1より容積の小さい第2中空部R2を備えている。吸音構造体20の一方の主面20aには、セルSの内外を連通する連通孔30が形成されている。そのため、容積が同じ中空部Rが並設された吸音構造体に比べて、広い周波数領域での吸音が可能となる。
【0058】
図6は、本実施形態の吸音構造体20と、厚さが全体に亘って同じで、容積が同じ中空部Rが並設された比較例の吸音構造体とで、吸音率を比較したグラフである。
図6に示されるように、本実施形態の吸音構造体20では、約400Hzから約1600Hzの範囲に亘って吸音率が0.6以上であった。比較例の吸音構造体に比べて、広い周波数領域での吸音が可能であることがわかる。
【0059】
(2)吸音構造体20は、相対的に厚みが厚い領域A及び領域Cと、相対的に厚みが薄い領域Bを備えている。第1中空部R1は、領域A及び領域Cに並設され、第2中空部R2は、領域Bに並設されている。中空部Rの容積の大小を、吸音構造体20の厚みの違いで実現している。そのため、容積の異なる中空部Rを容易に形成することができる。また、吸音構造体20の構成が簡単になる。
【0060】
(3)領域A及び領域Cでの連通孔30aの密度は、領域Bでの連通孔30bの密度より低い。つまり、中空部Rには、容積の違いに加えて、連通孔30の密度も異なるものが存在する。そのため、より広い周波数領域での吸音が可能になる。
【0061】
(4)領域A及び領域Cでの連通孔30aの形成ピッチは、領域Bでの連通孔30bの形成ピッチより大きい。つまり、中空部Rには、容積の違いに加えて、連通孔30の形成ピッチも異なるものが存在する。そのため、より広い周波数領域での吸音が可能になる。
【0062】
このように、吸音構造体20での中空部Rとして、容積の大きい第1中空部R1と容積の小さい第2中空部R2を設けるとともに、連通孔30の密度、形成ピッチを第1中空部R1と第2中空部R2とで変えている。このように、中空部R(セルS)の容積と連通孔30の配置を変えることで、領域A~Cでの連通孔30の開口率を変えることができる。中空部Rの容積、連通孔30の開口率を適宜調整すれば、吸音可能な周波数領域の調整が可能である。
【0063】
(5)吸音構造体20は、中空構造体40を形成する中空構造体形成工程と、中空構造体40の一方の主面40aに中空部Rの内外を連通する連通孔30を形成する連通孔形成工程とを経て製造する。中空構造体形成工程では、複数の第1中空部R1が並設された第1領域である領域A及び領域Cと、第1中空部R1より容積の小さい複数の第2中空部R2が並設された第2領域である領域Bとを有する中空構造体40を形成する。容積の異なる中空部Rを形成することで、広い周波数領域での吸音が可能な吸音構造体20を製造することができる。
【0064】
(6)中空構造体形成工程では、厚みが異なる複数の領域A~Cを有する中空構造体40を形成する。そして、連通孔形成工程では、中空構造体40の厚みが薄い領域Bでの連通孔30bの形成ピッチが、領域Bより中空構造体40の厚みが厚い領域A及び領域Cでの連通孔30aの形成ピッチより小さくなるように形成する。厚みが異なる複数の領域A~Cが形成されるように中空構造体40を成形することで、広い周波数領域での吸音が可能な吸音構造体20を容易に製造することができる。
【0065】
(7)中空構造体形成工程は、真空成形された凹凸シート材100を折り畳んで中空板材10を形成する折り畳み工程と、中空板材10の少なくとも下面10bにおける一部の領域を押圧して、厚みが異なる複数の領域A~Cが形成された中空構造体40を成形する成形工程とを備えている。中空板材10を形成した後、中空板材10を押圧することで領域A~Cを形成するため、厚みが異なる複数の領域A~Cの形成が容易である。
【0066】
(8)連通孔形成工程では、開口面積が同一の連通孔30を形成する。そのため、連通孔30の開口面積を調整する必要がなく、針状部材Tとして、同一規格のものを使用することができる。連通孔30の形成が容易に行える。
【0067】
(9)連通孔30の開口縁は、コア層11の上壁部12の内面よりも下側の空間であるセルSの内部空間に位置している。そのため、吸音性能の高い領域が低周波数領域にシフトし易くなる。低周波数領域での吸音性能が向上することで広い周波数領域での吸音が可能となる。
【0068】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・上記実施形態の吸音構造体20は、正面視で約300mm×約300mmの正方形であるが、その大きさ及び形状はこれに限定されない。より大きくても、小さくてもよい。また、長方形でもよい。
【0070】
さらに、
図7(b)に示す吸音構造体21のように正面視円形でもよい。この場合、複数枚を壁面に取り付ける際、隙間ができるだけ少なくなるように取り付けるとよい。
図7(c)に示す吸音構造体22のように正面視六角形状でもよく、多角形状でもよい。
【0071】
・上記実施形態の吸音構造体20は、厚みの異なる3つの領域A、B、Cを備えているが、厚みの異なる領域は、2つでもよく、4つ以上でもよい。
・領域A~Cは、それぞれ水平方向に延びているが、これに限定されない。
図8に示すように、中心部分から順に段階的に厚みが厚くなるように複数の領域B、領域C、領域Aが形成されていてもよい。
【0072】
・領域A~Cがそれぞれ水平方向に延びるようにして壁面に取り付けなくてもよい。例えば、領域A~Cがそれぞれ上下方向に延びるようにして壁面に取り付けてもよい。
・吸音構造体20では、領域A~Cの幅は同程度であるが、それぞれ異なっていてもよい。
【0073】
・領域Aが2箇所、領域Bが2箇所、領域Cが1箇所に形成されているが、領域A~Cの形成箇所数はこれに限定されない。
・領域Aでの厚みが約30mm、領域Bでの厚みが約15mm、領域Cでの厚みが約20mmであるがこれに限定されない。
【0074】
厚みの異なる複数の領域の数、幅、形状、厚み等は、適宜調整することが可能である。適宜調整することで吸音可能な周波数領域、吸音率を調整することができる。
・領域Aでの厚みは一定であり、領域B、Cのそれぞれでの厚みも一定であるが、各領域A~Cで徐々に厚みが変化するようにしてもよい。例えば、
図9(a)に示すように、吸音構造体20を一側面から見た場合の主面20bの断面形状が円弧状になっていてもよい。また、
図9(b)に示すように、吸音構造体20を一側面から見た場合の主面20bが傾斜面になっていてもよい。これらの場合、第1領域と第2領域との境界を明瞭に区別することはできないが、相対的に厚い部分を第1領域として連通孔30の形成ピッチ、密度を相対的に大きくし、相対的に薄い部分を第2領域として連通孔30の形成ピッチ、密度を相対的に小さくすればよい。
【0075】
・領域A及びCでの連通孔30aの形成ピッチと、領域Bでの連通孔30bの形成ピッチを同じにしてもよい。また、領域A及び領域Cでの連通孔30aの密度と、領域Bでの連通孔30bの密度を同じにしてもよい。
【0076】
・領域Aと領域Cでも連通孔30aの形成ピッチ及び密度を異ならせてもよい。
・領域B及び領域Cでの連通孔30の形成ピッチを同じにして、領域Aでの連通孔30の形成ピッチをそれより大きくしてもよい。この場合、領域Aのみが第1領域となり、領域B及び領域Cが第2領域となる。
【0077】
・領域A~Cの少なくともいずれかで、連通孔30を不規則に形成してもよい。
・領域A、Cでの連通孔30aの形成ピッチと、領域Bでの連通孔30aの形成ピッチを異ならせたが、連通孔30a、30bの形成位置が、領域A~Cと正確に一致していなくてもよい。領域Aにおいて領域Bに隣接する部分に、連通孔30bが数列形成されていてもよい。また、領域Bにおいて領域A、Cに隣接する部分に、連通孔30aが数列形成されていてもよい。
【0078】
・領域A~Cは、中空板材10の下面10bを押圧して形成したが、中空板材10の上面10aを押圧して形成してもよく、上面10a及び下面10bの両方を押圧して形成してもよい。つまり、吸音構造体20の主面20a側に厚みの薄い領域を形成するための凹部が形成されていてもよい。
【0079】
・領域A及び領域Cには、複数の第1中空部R1が並設されており、領域Bには、複数の第2中空部R2が並設されている。第1中空部R1及び第2中空部R2は、領域A~Cに並設されるものでなく、厚みの異なる第1中空部R1と第2中空部R2とが交互に並設されているものであってもよい。
【0080】
・すべての中空部R(セルS)に連通孔30が形成されているが、連通孔30が形成された中空部Rと連通孔30が形成されていない中空部Rとが混在していてもよい。
・上記実施形態の中空板材10は、コア層11として、凹凸シート材100を折り畳み成形して、コア層11の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体を形成したが、コア層11を形成する凹凸シート材の形状はこれに限定されない。例えば、国際公開第2016/031479号に示されるような凹凸シート材を折り畳み成形してなる中空板材であってもよい。
【0081】
・上記実施形態の中空板材10では、コア層11の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、セルSの形状は、特に限定されるものでない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、截頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。この場合、空間を介して隣接するセルとセルとの間に内部空間同士を連通する連通筒が形成される。このような構成のコア層としては、例えば特開平10-156985号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0082】
・中空板材10を構成するセルSの大きさが一定でなく、容積の異なるセルSが混在していてもよい。
・上記実施形態の中空板材10は、コア層11の両面にスキン層15、16が接合して形成したが、スキン層15、16の少なくともいずれか一方を省略してもよい。スキン層15を省略した場合、コア層11の上壁部12のみによって上部閉塞壁17が構成される。また、スキン層16を省略した場合、コア層11の下壁部13のみによって下部閉塞壁18が構成される。
【0083】
・中空板材10におけるスキン層16側の外面に、他のシート材を接合してもよい。このシート材は、合成樹脂製のものに限らず、例えば、金属シート(金属箔)、鋼板、紙、布、不織布等であってもよい。また、スキン層16そのものを、金属シート(金属箔)、紙、布などで構成してもよい。
【0084】
・中空板材10を構成する熱可塑性樹脂に、機能性を付与する樹脂や添加剤を添加してもよい。例えば、難燃性の樹脂や添加剤を添加したり、消臭剤や芳香剤を添加したりしてもよい。
【0085】
・吸音構造体20の製造方法では、成形工程で、厚みが異なる複数の領域A~Cが形成された中空構造体40を形成した後、連通孔形成工程で、中空構造体40の一方の主面に連通孔30を形成した。これに限定されず、成形工程と連通孔形成工程とを同時に行ってもよい。この場合、例えば、内面に複数の針状部材Tが配設された金型を使用することが考えられる。
【0086】
・連通孔形成工程では、平坦面として形成された中空構造体40の主面40aに複数の連通孔30が形成している。これに限定されず、凹部が形成された主面40bに複数の連通孔30を形成してもよい。
【0087】
・連通孔形成工程では、同一の太さの針状部材Tを使用して開口面積が同一の連通孔30を形成した。これに限定されず、領域A、Cと領域Bとで開口面積を変えてもよく、領域A~Cのそれぞれで開口面積を変えてもよい。また、領域A内で開口面積を変えてもよい。領域B、Cも同様である。
【0088】
・連通孔形成工程では、同一の太さの針状部材Tを使用することで開口径が同一の連通孔30が形成される。これに限定されず、領域A、Cと領域Bとで開口径を変えてもよく、領域A~Cのそれぞれで開口径を変えてもよい。また、領域A内で開口径を変えてもよい。領域B、Cも同様である。
【符号の説明】
【0089】
A…領域(第1領域)
B…領域(第2領域)
C…領域(第1領域)
R…中空部
R1…第1中空部
R2…第2中空部
10…中空板材
10a…上面(主面)
20、21、22…吸音構造体
30、30a、30b…連通孔
40…中空構造体
100…凹凸シート材