(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162044
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】スイッチ回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241114BHJP
H03K 17/0812 20060101ALI20241114BHJP
H03K 17/08 20060101ALN20241114BHJP
H03K 17/687 20060101ALN20241114BHJP
H03K 17/695 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H03K17/0812
H03K17/08 C
H03K17/687 E
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077202
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮地 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】花田 直也
【テーマコード(参考)】
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770DA01
5H770DA41
5H770HA02W
5H770JA17W
5H770LA02W
5H770LB07
5J055AX34
5J055BX16
5J055CX20
5J055CX28
5J055DX22
5J055DX60
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY13
5J055EY17
5J055EY21
5J055EZ39
5J055GX01
5J055GX03
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】 2つのFETそれぞれが第1スイッチ及び第2スイッチの開閉状態に応じてマイコン制御される場合において、2つのFETが共にオン状態となるときに発生する貫通電流を抑制する。
【解決手段】 スイッチ回路1では、第1スイッチ11A又は第2スイッチ11Bが閉状態から開状態に変化したか否かの判定が割り込み処理に実行される。これにより、当該判定がポーリング処理により実行される場合に比べて、極めて短時間で当該判定が実行される。したがって、「検知タイミングの遅れ」に起因して2つのFET21A、22Aが共にオン状態とることが抑制される。延いては、貫通電流の発生が抑制されるので、第1FET21A及び第2FET22Aが損傷してしまうことが抑制され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートに搭載された負荷に供給する電力を制御するスイッチ回路において、
機械的に開閉作動する第1スイッチ及び第2スイッチと、
電源から負荷に供給される電力の第1供給ラインをオン・オフする第1スイッチング素子と、
電源から負荷に供給される電力の第2供給ラインであって、前記第1供給ラインと並列に設けられた第2供給ラインをオン・オフする第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチの開閉状態を示す第1信号及び前記第2スイッチの開閉状態を示す第2信号が入力され、それら信号を利用して前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子をオン又はオフするマイクロコンピュータ式の制御部であって、同一の割り込みポートに前記第1信号及び前記第2信号が入力された制御部とを備え、
前記制御部は、
ポーリング処理にて前記第1スイッチが閉状態であるか、及び前記第2スイッチが閉状態であるかを判定する第1判定処理、
前記割り込みポートに入力された信号が閉状態から開状態に変化したか否かを判定する第2判定処理、並びに
前記第2判定処理にて閉状態から開状態に変化した判定されたと時に、オン状態のスイッチング素子をオフ状態とする遮断処理
を実行可能であるスイッチ回路。
【請求項2】
前記第2判定処理では、最初に閉状態から変化した時に、閉状態から開状態に変化したと判定される請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項3】
前記制御部は、待機電源モードであるスリープモードが実行可能であり、
前記制御部は、スリープモード時には、前記第2判定処理に加えて、前記割り込みポートに入力された信号が開状態から閉状態に変化したか否かを判定する第3判定処理も実行可能とし、
さらに、前記制御部は、前記第2判定処理又は前記第3判定処理により信号が変化したと判定された時にスリープモードを解除するとともに、前記第3判定処理の実行を禁止する請求項1又は2に記載のスイッチ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートに搭載された負荷に供給する電力を制御するスイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のスイッチ回路では、電動モータに駆動電力を供給しているときに、電源が遮断されたことを検知した場合、制御部は、当該電動モータへ通電を直接的に制御しているスイッチング素子(例えば、電界効果型トランジスタ)をオフ状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、機械的に開閉作動する2つのスイッチそれぞれの開閉状態を検知して、各スイッチに対応させて2つのスイッチング素子をオン又はオフとするスイッチ回路においては、2つのスイッチの開閉切替時に貫通電流が発生するおそれがある。
【0005】
すなわち、2つのスイッチング素子それぞれは、マイクロコンピュータ式の制御部により作動が制御される。具体的には、制御部は、スイッチの開閉状態を示す信号を検知して、当該スイッチに対応するスイッチング素子をオン状態又はオフ状態とする。
【0006】
そして、スイッチが閉状態(ON)であるときには、制御部は、対応するスイッチング素子をオン状態とする。スイッチが開状態(OFF)であるときには、制御部は、対応するスイッチング素子をオフ状態とする。
【0007】
なお、スイッチング素子がオン状態なると、電力の供給ラインが閉じた状態となり、当該供給ラインに電流が流れる。スイッチング素子がオフ状態なると、電力の供給ラインが開いた状態となり、当該供給ラインに電流が流れない。
【0008】
例えば、第1のスイッチが閉状態(ON)であるとき、第1のスイッチング素子はオン状態であり、かつ、第2のスイッチが開状態(OFF)であるため、第2のスイッチング素子はオフ状態となっている。
【0009】
そして、第1のスイッチが閉状態(ON)から開状態(OFF)となり、第2のスイッチが開状態(OFF)から閉状態(ON)に切り替わったとき、制御部は、これらスイッチの開閉状態の変化を検知して、第1のスイッチング素子をオン状態からオフ状態に切り替え、第2のスイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替える。
【0010】
このとき、第1のスイッチが閉状態(ON)から開状態(OFF)に切り替わったこと制御部が検知したタイミングが、第2のスイッチが開状態(OFF)から閉状態(ON)に切り替わったこと制御部が検知したタイミングより遅れた場合、2つのスイッチング素子が共にオン状態となるときが発生する。
【0011】
そして、2つのスイッチング素子が共にオン状態となるときに貫通電流が発生するため、スイッチング素子が損傷してしまう。本開示は、当該点に鑑み、貫通電流の発生を抑制可能なスイッチ回路の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
乗物用シートに搭載された負荷(3)に供給する電力を制御するスイッチ回路は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、機械的に開閉作動する第1スイッチ(11A)及び第2スイッチ(11B)と、電源(5)から負荷(3)に供給される電力の第1供給ライン(L1)をオン・オフする第1スイッチング素子(21A)と、電源(5)から負荷(3)に供給される電力の第2供給ライン(L2)であって、第1供給ライン(L1)と並列に設けられた第2供給ライン(L2)をオン・オフする第2スイッチング素子(22A)と、第1スイッチ(11A)の開閉状態を示す第1信号及び第2スイッチ(11B)の開閉状態を示す第2信号が入力され、それら信号を利用して第1スイッチング素子(21A)及び第2スイッチング素子(22A)をオン又はオフするマイクロコンピュータ式の制御部(30)であって、同一の割り込みポートに第1信号及び第2信号が入力された制御部(30)とである。
【0013】
そして、制御部(30)は、少なくとも、第1判定処理、第2判定処理及び遮断処理を実行可能である。
第1判定処理は、ポーリング処理にて第1スイッチ(11A)が閉状態であるか、及び第2スイッチ(11B)が閉状態であるかを判定(以下、オン判定という。)する処理である。ポーリング処理とは、例えば、予め決められた周期で1つ又は複数の処理を順次実行する処理である。
【0014】
第2判定処理は、割り込みポートに入力された信号、つまり第1スイッチ(11A)又は第2スイッチ(11B)が閉状態から開状態に変化したか否かを判定(以下、オフ判定という。)する処理である。
【0015】
割り込みポートとは、割り込み処理の実行に利用される信号が入力されるポートである。割り込み処理とは、例えば、割り込みポートに入力される信号が、予め決められた状態となった時に、即座に実行される処理である。
【0016】
遮断処理は、第2判定処理にて閉状態から開状態に変化した判定されたと時、つまり第1スイッチ(11A)又は第2スイッチ(11B)が閉状態から開状態に変化した時に、オン状態のスイッチング素子をオフ状態とする処理である。
【0017】
これにより、第1スイッチ(11A)又は第2スイッチ(11B)が閉状態から開状態に変化したか否かの判定が割り込み処理に実行されるので、当該判定がポーリング処理により実行される場合に比べて、極めて短時間で当該判定が実行される。
【0018】
したがって、上記した「検知タイミングの遅れ」に起因した貫通電流の発生を抑制することができる。延いては、第1スイッチング素子(21A)及び第2スイッチング素子(22A)が損傷してしまうことが抑制され得る。
【0019】
ところで、制御部(30)の仕様や乗物用シートの仕様によっては、オフ判定に使用可能割り込みポートの数がスイッチの数に満たない場合が生じる。これに対して、当該スイッチ回路では、同一の割り込みポートに第1信号及び第2信号が入力されるので、割り込みポートが少なくとも1つあれば十分である。
【0020】
したがって、当該スイッチ回路であれば、オフ判定に使用可能割り込みポートの数がスイッチの数に満たない場合であっても割り込み処理を利用して遮断処理を実行させることができる。
【0021】
以上により、当該スイッチ回路では、ポーリング処理のみで貫通電流の発生を防止可能な処理速度の制御部や割り込みポートの数に余裕がある高価な制御部等を用いることなく、貫通電流の発生を抑制できる。
【0022】
そして、当該スイッチ回路では、割り込みポートの数が少ない制御部にて貫通電流の発生を抑制できるので、制御部(30)の大型化が抑制され、制御部(30)の乗物用シートへの搭載性が悪化しない。
【0023】
さらに、制御部(30)は、オフ判定がされた時に、現在、オン状態にあるスイッチング素子をオフ状態とするので、いずれのスイッチング素子に対応するスイッチが開かれたかを判断することなく、直ちにスイッチング素子をオフ状態とすることが可能である。
【0024】
そして、いずれのスイッチング素子に対応するスイッチが開かれたかを判断することなく、直ちにスイッチング素子をオフ状態とすれば、極めて短時間でスイッチング素子がオフ状態となるので、貫通電流の発生を確実に抑制でき得る。
【0025】
なお、当該スイッチ回路は、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、第2判定処理では、最初に閉状態から変化した時に、閉状態から開状態に変化したと判定される、つまり第2判定処理では、信号のエッジ部分で判定されることが望ましい。
【0026】
これにより、第1スイッチ(11A)及び第2スイッチ(11B)でチャタリングが発生した場合であっても、オフ判定は、当該チャタリングの影響を受けない。したがって、極めて短時間でオフ判定がされ得るので、貫通電流の発生が確実に抑制され得る。
【0027】
さらに、制御部(30)は、待機電源モードであるスリープモードが実行可能であり、制御部(30)は、スリープモード時には、第2判定処理に加えて、割り込みポートに入力された信号が開状態から閉状態に変化したか否かを判定する第3判定処理も実行可能とし、さらに、制御部(30)は、第2判定処理又は第3判定処理により信号が変化したと判定された時にスリープモードを解除するとともに、第3判定処理の実行を禁止することが望ましい。
【0028】
これにより、第1スイッチ(11A)及び第2スイッチ(11B)のいずれかに対して何らかの操作がされた時にスリープモードが解除される。したがって、利用者の操作に対して迅速に制御部(30)が反応作動することができ得る。
【0029】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係るスイッチ回路の回路図である。
【
図2】第1実施形態に係るスイッチ回路のタイミングチャートである。
【
図3】第1実施形態に係るスイッチ回路の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0032】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るスイッチ回路が適用された例である。少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
【0033】
(第1実施形態)
<1.スイッチ回路の概要(
図1参照)>
本実施形態に係るスイッチ回路1は、乗物用シート(図示せず。)に搭載された負荷3に供給する電力を制御するスイッチ回路である。なお、本実施形態に係る負荷3は、電動モータである。
【0034】
当該負荷3(以下、電動モータ3という。)は、スライド装置やリクライニング装置等の駆動装置(図示せず。)の電動駆動源である。つまり、当該スイッチ回路1は、車両に搭載された電源5から電動モータ3を駆動するモータブリッジ回路7に供給する電力を制御する。
【0035】
<2.スイッチ回路の構成(
図1参照)>
スイッチ回路1は、操作スイッチ11、第1スイッチ回路21、第2スイッチ回路22、及び制御部30等を少なくとも備える。なお、本実施形態に係るスイッチ回路1は、第3スイッチ回路23も備える。
【0036】
<操作スイッチ>
操作スイッチ11は、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11B等を少なくとも有する。第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bは、利用者により開閉操作される機械的なスイッチである。
【0037】
具体的には、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bそれぞれは、固定接点及び可動接点を有する。そして、利用者が操作スイッチ11の操作部(図示せず。)を操作すると、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bそれぞれの可動接点が対応する固定接点に対して接触又は離間する。
【0038】
なお、本実施形態では、2つの可動接点は、1つの操作部により操作される。このため、本実施形態に係る操作スイッチは、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bが共に閉状態(ON)となることはない。
【0039】
具体的には、当該操作スイッチ11は、3つの状態が存在する。第1状態では、第1スイッチ11Aが閉状態(ON)となり、第2スイッチ11Bが開状態(OFF)となる。第2状態では、第2スイッチ11Bが閉状態(ON)となり、第1スイッチ11Aが開状態(OFF)となる。
【0040】
第3状態では、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bが共に開状態(OFF)となる。そして、第1状態から第2状態に変化するとき、及び第2状態から第1状態に変化するときには、必ず、第3状態を経て変化する。つまり、操作スイッチ11は、「第1状態→第3状態→第2状態」又は「第2状態→第3状態→第1状態」のパターンで状態が変化する。
【0041】
<第1スイッチ回路>
第1スイッチ回路21は、第1スイッチング素子21Aを少なくとも有する。第1スイッチング素子21Aは、第1供給ラインL1をオン・オフする。
【0042】
具体的には、第1スイッチング素子21Aがオン状態なると、第1供給ラインL1が閉じた状態となり、当該第1供給ラインL1に電流が流れる。
第1スイッチング素子21Aがオフ状態なると、第1供給ラインL1が開いた状態となり、当該第1供給ラインL1に電流が流れない。
【0043】
本実施形態に係る第1スイッチング素子21Aは、電界効果型トランジスタである。以下、第1スイッチング素子21Aを第1FET21Aと記す。第1供給ラインL1は、電源5から電動モータ3(本実施形態では、モータブリッジ回路7)に供給される電力の供給線である。
【0044】
<第2スイッチ回路>
第2スイッチ回路22は、第2スイッチング素子22Aを少なくとも有する。第2スイッチング素子22Aは、第2供給ラインL2をオン・オフする。
【0045】
具体的には、第2スイッチング素子22Aがオン状態なると、第2供給ラインL2が閉じた状態となり、当該第2供給ラインL2に電流が流れる。第2スイッチング素子22Aがオフ状態なると、第2供給ラインL2が開いた状態となり、当該第2供給ラインL2に電流が流れない。
【0046】
本実施形態に係る第2スイッチング素子22Aは、電界効果型トランジスタである。以下、第2スイッチング素子22Aを第2FET22Aと記す。第2供給ラインL2は、電源5からモータブリッジ回路7に供給される電力の供給線であって、第1供給ラインL1と並列に設けられた供給線である。
【0047】
<第3スイッチ回路>
第3スイッチ回路23は、2つの第3スイッチング素子23A、23Bを有し、第3供給ラインL3をオン・オフする。なお、本実施形態に係る第3スイッチング素子23A、23Bは、電界効果型トランジスタである。
【0048】
第3供給ラインL3は、電源5からモータブリッジ回路7に供給される電力の供給線であって、第1供給ラインL1及び第2供給ラインL3と並列に設けられた供給線である。
<制御部>
制御部30は、CPU、ROM及びRAM等を少なくとも有するマイクロコンピュータにて構成されたコントローラである。当該制御装置10は、第1FET21A及び第2FET22Aのオン又はオフを制御することが可能である。
【0049】
すなわち、制御部30には、第1信号S1及び第2信号S2が入力されている。第1信号S1は、第1スイッチ11Aの開閉状態を示す信号である。第2信号S2は、第2スイッチ11Bの開閉状態を示す信号である。そして、制御部30は、それら信号S1、S2を利用して第1FET21A及び第2FET22Aをオン又はオフする。
【0050】
具体的には、制御部30は、(a)第1スイッチ11Aが閉じられたときに第1FET21Aをオン状態とし、(b)第1スイッチ11Aが開かれたときに第1FET21Aをオフ状態とし、(c)第2スイッチ11Bが閉じられたときに第2FET22Aをオン状態とし、(d)第2スイッチ11Bが開かれたときに第2FET22Aをオフ状態とする。
【0051】
なお、本実施形態では、第1スイッチ11Aが開(OFF)状態であるときには、第1信号S1が高電位(Hiレベル)となり、第1スイッチ11Aが閉(ON)状態であるときには、第1信号S1が低電位(Loレベル)となる(
図2参照)。第2スイッチ11Bと第2信号S2との関係も第1スイッチ11Aと第1信号S1との関係と同じである。
【0052】
当該制御部30は、割り込みポートP3を少なくとも1つ有する。そして、第1信号S1及び第2信号S2は、同一の割り込みポートP3に入力されている。なお、第1信号S1は、第1スイッチ11A用の入力ポートP1への信号線から分岐して割り込みポートP3に入力される。
【0053】
第2信号S2は、第2スイッチ11B用の入力ポートP2への信号線から分岐して割り込みポートP3に入力される。このため、割り込みポートP3に至る信号線には、逆流防止用のダイオードD1、D2が設けられている。
【0054】
ダイオードD1は、第1信号S1が入力ポートP2に入力されることを防止する。ダイオードD2は、第2信号S2が入力ポートP1に入力されることを防止する。そして、割り込みポートP3は、高電位(Hi)にプルアップされている。
【0055】
このため、入力ポートP1及び入力ポートP2が共に高電位(Hiレベル)のときには、割り込みポートP3が高電位(Hiレベル)に維持される。入力ポートP1及び入力ポートP2のうちいずれか一方のポートが高電位(Hiレベル)であり、他方のポートが低電位(Loレベル)ときには、割り込みポートP3が低電位(Loレベル)となる。
【0056】
換言すれば、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bが開(OFF)状態のときには、割り込みポートP3が高電位(Hiレベル)となる。第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bのうちいずれか一方のスイッチが開(OFF)状態、他方のスイッチが閉(ON)状態のときには、割り込みポートP3が低電位(Loレベル)となる。
【0057】
したがって、第1スイッチ11Aが閉(ON)状態であり、第2スイッチ11Bが開(OFF)状態であるときに、第1スイッチ11Aが開(OFF)状態に変化すると、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bが開(OFF)状態となるので、割り込みポートP3が低電位(Loレベル)から高電位(Hiレベル)に変化する。
【0058】
その後、第2スイッチ11Aが開(OFF)状態から閉(ON)状態に変化すると、割り込みポートP3が高電位(Hiレベル)から低電位(Loレベル)となる。つまり、第1スイッチ11A又は第2スイッチ11Bの開閉状態が変化すると、割り込みポートP3の電位が変化する。
【0059】
制御部30は、第3スイッチ回路23、つまり第3スイッチング素子23A、23Bのオン・オフも制御する。制御部30は、利用者により「自動(オート)制御」が選択された場合には、予め記憶された作動プログラムに従って第3スイッチ回路23を制御する。
【0060】
なお、利用者により「手動(マニュアル)制御」が選択された場合には、制御部30は、第1スイッチ及び第2スイッチの開閉状態に応じて第1スイッチ回路21及び第2スイッチ回路22をオン・オフする。
【0061】
<3.手動制御時のスイッチ回路の作動>
制御部30は、第1判定処理、第2判定処理、第3判定処理及び遮断処理、並びにスリープモード及びウェクアップ処理が実行可能である。なお、少なくとも第1判定処理、第2判定処理、第3判定処理及び遮断処理は、CPUにてソフトウェアが実行されることにより実現される。当該ソフトウェアは、制御部30に設けられた不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0062】
<スリープモード>
スリープモードとは、例えば、待機電源モードである。当該スリープモードでは、割り込み処理以外の処理(例えば、ポーリング処理)の処理速度を低下させ、制御部30の消費電力を小さくするモードである。
【0063】
具体的には、スリープモードでは、例えば、処理周期(クロック周波数ともいう。)が非スリープモード(以下、通常モードという。)時に比べて小さくなる。このため、制御部30が通常モードからスリープモードに移行すると、処理速度が低下する。
【0064】
なお、ポーリング処理とは、予め決められた周期で1つ又は複数の処理を順次実行する処理である。割り込み処理とは、割り込みポートP3に入力される信号が、予め決められた状態となった時に、即座に実行される処理である。
【0065】
<第1判定処理>
第1判定処理は、通常モード時にポーリング処理にて実行される処理である。当該第1判定処理では、第1スイッチ11Aが閉状態であるか、及び第2スイッチ11Bが閉状態であるかが判定される。
【0066】
具体的には、第1判定処理では、制御部30は、第1信号S1が低電位(Loレベル)であるか否か、及び第2信号S2が低電位(Loレベル)であるか否かを予め決められた周期で判断する。そして、制御部30は、閉状態が検出されたスイッチに対応するFETをオン状態とする。
【0067】
<第2判定処理>
第2判定処理は、割り込み処理にて実行される処理であって、割り込みポートP3に入力された信号、つまり第1信号S1及び第2信号S2のうちいずれか一方の信号が閉状態から開状態に変化したか否かを判定する処理である。
【0068】
具体的には、第1信号S1及び第2信号S2のうちいずれか一方の信号が低電位(Loレベル)から高電位(Hiレベル)に変化したか否かを判定する。このとき、本実施形態に係る第2判定処理では、割り込みポートP3が低電位(Loレベル)から高電位(Hiレベル)側に最初に変化した時に、閉状態から開状態に変化したと判定される。
【0069】
つまり、本実施形態に係る第2判定処理では、信号の立ち上がりエッジ部分(
図2のA部)が検知されたときに、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bのいずれか一方のスイッチが閉状態から開状態に変化したと判定される。
【0070】
<第3判定処理>
第3判定処理は、スリープモード時に割り込み処理にて実行される処理であって、割り込みポートP3に入力された信号が開状態から閉状態に変化したか否かを判定する処理である。
【0071】
具体的には、第1信号S1及び第2信号S2のうちいずれか一方の信号が高電位(Hiレベル)から低電位(Loレベル)に変化したか否かを判定する。このとき、本実施形態に係る第3判定処理では、割り込みポートP3が高電位(Hiレベル)から低電位(Loレベル)側に最初に変化した時に、開状態から閉状態に変化したと判定される。
【0072】
つまり、本実施形態に係る第3判定処理では、信号の立ち下がりエッジ部分(
図2のB部)が検知されたときに、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bのいずれか一方のスイッチが開状態から閉状態に変化したと判定される。
【0073】
<遮断処理>
遮断処理は、第2判定処理にて閉状態から開状態に変化した判定されたと時に、オン状態のFETをオフ状態とする処理である。具体的には、制御部30は、第2判定処理にて閉状態から開状態に変化した判定されたと時に、第1FET21A及び第2FET22Aのいずれに対してもオフ状態とするすべき指令を発信する。
【0074】
つまり、本実施形態では、上述したように、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bの開閉状態が変化する際には、必ず、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bが共に開状態(OFF)となる状態に発生する。
【0075】
このため、例えば、第1スイッチ11Aが閉状態(ON)から開状態(OFF)に変化し、第2スイッチ11Bが開状態(OFF)から閉状態(ON)に変化するときには、
図2に示されるように、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bが共に開状態(OFF)となる状態に発生する。
【0076】
このとき、本実施形態では、割り込みポートP3に入力された信号が閉状態(ON)から開状態(OFF)に変化したか否かを判定するので、制御部30は、第2スイッチ11Bが閉状態(ON)になったことを検知する前に第1スイッチ11Aが開状態(OFF)になったことを検知する。
【0077】
このため、第1スイッチ11Aが開状態(OFF)になったことを制御部30が検知したタイミングでは、制御部30は、第2FET22Aに対してオン状態とすべき指令を発信していない。
【0078】
つまり、第1スイッチ11Aが開状態(OFF)になったことを制御部30が検知したタイミングでは、第2FET22Aはオフ状態であり、第1FET21Aはオン状態である。
【0079】
したがって、制御部30が当該タイミングで第1FET21A及び第2FET22Aのいずれに対してもオフ状態とするすべき指令を発信すれば、第1FET21Aは、オン状態からオフ状態に変化し、第2FET22Aはオフ状態が維持される。
【0080】
そして、その後、第2スイッチ11Bが閉状態(ON)になったことを制御部30が検知すると、制御部30は、第2FET22Aに対してオン状態とすべき指令を発信する。つまり、第1FET21A及び第2FET22Aが共にオン状態となることが回避される。
【0081】
<ウェクアップ処理>
ウェクアップ処理は、スリープモード時に実行される処理であって、スリープモードを解除して通常モードに移行させるとともに、第3判定処理の実行を禁止する処理である。
【0082】
すなわち、制御部30は、少なくとも第2判定処理及び第3判定処理を実行可能な状態とした後、スリープモードを実行する。そして、制御部30は、スリープモード時に第2判定処理又は第3判定処理により信号が変化した、つまり第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bのうち少なくと一方のスイッチが操作されたと判定した時に、ウェクアップ処理を実行する。
【0083】
<手動制御時のスイッチ回路の作動フロー>
図3は、手動制御時のスイッチ回路1の作動フローを示すフローチャートである。当該作動フローは、利用者により「手動(マニュアル)制御」が選択された場合に起動される。当該作動フローが起動されると、制御部30は、スリープモードに移行する要件を満たしたか否かを判断する(S1)。
【0084】
なお、スリープモードに移行する要件とは、例えば、操作スイッチ11が操作されていない状態が、予め決められた時間以上、継続した場合等である。
そして、スリープモードに移行する要件を満たしたと判断された場合には(S1:YES)、制御部30は、第2判定処理及び第3判定処理を実行可能な状態とした後(S5)、スリープモードに移行する(S10)。
【0085】
スリープモードに移行すると、制御部30は、割り込みポートP3の入力信号に変化があったか否かを判断する(S15)。そして、割り込みポートP3の入力信号に変化があったと判断された場合には(S15:YES)、制御部30は、第3判定処理の実行を禁止した後(S20)、スリープモード解除を解除して通常モードに移行する(S25)。
【0086】
<4.本実施形態に係るスイッチ回路の特徴>
本実施形態に係るスイッチ回路1では、第1スイッチ11A又は第2スイッチ11Bが閉状態から開状態に変化したか否かの判定が割り込み処理に実行されるので、当該判定がポーリング処理により実行される場合に比べて、極めて短時間で当該判定が実行される。
【0087】
したがって、「検知タイミングの遅れ」に起因した貫通電流の発生を抑制することができる。延いては、第1FET21A及び第2FET22Aが損傷してしまうことが抑制され得る。
【0088】
ところで、制御部30の仕様や乗物用シートの仕様によっては、オフ判定に使用可能割り込みポートP3の数がスイッチの数に満たない場合が生じる。これに対して、当該スイッチ回路では、同一の割り込みポートP3に第1信号及び第2信号が入力されるので、割り込みポートが少なくとも1つあれば十分である。
【0089】
したがって、当該スイッチ回路1であれば、オフ判定に使用可能割り込みポートの数がスイッチの数に満たない場合であっても割り込み処理を利用して遮断処理を実行させることができる。
【0090】
以上により、当該スイッチ回路1では、ポーリング処理のみで貫通電流の発生を防止可能な処理速度の制御部や割り込みポートP3の数に余裕がある高価な制御部等を用いることなく、貫通電流の発生を抑制できる。
【0091】
当該スイッチ回路1では、割り込みポートP3の数が少ない制御部にて貫通電流の発生を抑制できるので、制御部30の大型化が抑制され、制御部30の乗物用シートへの搭載性が悪化しない。
【0092】
制御部30は、オフ判定がされた時に、いずれのFETに対応するスイッチが開かれたかを判断することなく、直ちにFETをオフ状態とする。これにより、極めて短時間でFETがオフ状態となるので、貫通電流の発生を確実に抑制でき得る。
【0093】
第2判定処理では、最初に閉状態から変化した時に、閉状態から開状態に変化したと判定される、つまり第2判定処理では、信号のエッジ部分で判定される(
図2参照)。
これにより、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bでチャタリングが発生した場合であっても、オフ判定は、当該チャタリングの影響を受けない。したがって、極めて短時間でオフ判定がされ得るので、貫通電流の発生が確実に抑制され得る。
【0094】
制御部30は、スリープモード時には、第2判定処理に加えて、第3判定処理も実行可能とするとともに、第2判定処理又は第3判定処理により信号が変化したと判定された時にスリープモードを解除するとともに、第3判定処理の実行を禁止する。
【0095】
これにより、第1スイッチ11A及び第2スイッチ11Bのいずれかに対して何らかの操作がされた時にスリープモードが解除される。したがって、利用者の操作に対して迅速に制御部30が反応作動することができ得る。
【0096】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る制御部30は、第2判定処理にて閉状態から開状態に変化した判定されたと時に、第1FET21A及び第2FET22Aのいずれに対してもオフ状態とするすべき指令を発信した。
【0097】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、いずれのFETに対応するスイッチが開かれたかを判断した後、対応するFETのみに対してオフ状態とするすべき指令を発信してもよい。
【0098】
上述の実施形態では、スイッチ素子として、FETが用いられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、スイッチング素子として電磁リレーが用いられた構成であってもよい。
【0099】
上述の実施形態に係る第2判定処理及び第3判定処理では、最初に信号が変化した時、つまり信号のエッジ部により判定した。しかし、割り込み処理はポーリング処理に比べて十分に高速であるので、本開示はこれに限定されない。
【0100】
上述の実施形態に係る制御部30は、少なくとも第2判定処理及び第3判定処理を実行可能な状態とした後、スリープモードを実行した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2判定処理又は第3判定処理を実行可能な状態とした後、スリープモードを実行してもよい。
【0101】
上述の実施形態では、電動モータ3を負荷とした例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ヒータ等の発熱体を負荷とし、当該発熱体への通電を制御するたスイッチ回路にも適用可能である。
【0102】
上述の実施形態では、割り込みポートP3が高電位(Hi)にプルアップされていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、割り込みポートP3が低電位(Lo)にプルダウンされた構成であってもよい。なお、この構成では、ダイオードD1、D2の向きを
図1と逆にする必要がある。
【0103】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0104】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1… スイッチ回路 11A…第1スイッチ 11B…第2スイッチ
22A…第2FET 22A…第2FET 30…制御部(マイクロコンピュータ)