(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162047
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20241114BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241114BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/052
H01M10/04 W
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077211
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津島 達也
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB04
5H028BB05
5H028BB15
5H028CC12
5H028HH08
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029BJ14
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ28
5H029HJ14
(57)【要約】
【課題】電極体に対する電解液の含浸性を良好に保ちつつ、電極体内部におけるリチウムの析出を抑制する。
【解決手段】巻回体を扁平状にプレス加工して電極体20を作製する工程においては、第1弾性部7を含む第1プレス面F1を有する第1治具3と第2弾性部8を含む第2プレス面F2を有する第2治具4とにより巻回体を挟み、第1プレス面F1および第2プレス面F2の少なくとも一部を弾性変形させながら第1プレス面F1および第2プレス面F2により巻回体を押圧する。巻回体をプレス加工して電極体20を作製する工程において、平坦部22と、第1湾曲部24と、第2湾曲部25とが電極体20に形成される。巻回体をプレス加工して電極体20を作製する工程において、第1湾曲部24および第2湾曲部25の各々は、第1プレス面F1および第2プレス面F2のうちの少なくとも一方を介して室温より高い温度に加熱される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板との間にセパレータを挟み、第1の方向に沿う巻回軸を軸中心として前記正極板、前記負極板および前記セパレータが巻回された巻回体を準備する工程と、
前記第1の方向に直交する第2の方向において、第1弾性部を含む第1プレス面を有する第1治具と第2弾性部を含む第2プレス面を有する第2治具とにより前記巻回体を挟み、前記第1プレス面および前記第2プレス面の少なくとも一部を弾性変形させながら前記第1プレス面および前記第2プレス面により前記巻回体を押圧することによって、前記巻回体を扁平状にプレス加工して電極体を作製する工程と、
前記電極体および電解液をケースに収容する工程とを備え、
前記巻回体をプレス加工して前記電極体を作製する工程において、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向の中央側に位置し、かつ平坦な外表面を有する平坦部と、前記平坦部の前記第3の方向の一方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第1湾曲部と、前記平坦部の前記第3の方向の他方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第2湾曲部とが前記電極体に形成され、
前記巻回体をプレス加工して前記電極体を作製する工程において、前記第1湾曲部および前記第2湾曲部の各々は、前記第1プレス面および前記第2プレス面のうちの少なくとも一方を介して室温より高い温度に加熱される、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記室温より高い温度は、50℃以上110℃以下である、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記巻回体をプレス加工した後に前記第1湾曲部および前記第2湾曲部となる領域の50%以上の前記外表面に前記第1プレス面および前記第2プレス面が当接する、請求項1または請求項2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記第1弾性部および前記第2弾性部の各々は、多孔質部材によって構成されている、請求項1または請求項2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
正極板と負極板との間にセパレータを挟み、第1の方向に沿う巻回軸を軸中心として前記正極板、前記負極板および前記セパレータが巻回された電極体と、
前記電極体および電解液を収容するケースとを備え、
前記電極体は、前記第1の方向に直交する第2の方向に短手方向を有し、かつ前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に長手方向を有する扁平状であり、
前記電極体は、
前記第3の方向の中央側に位置し、かつ平坦な外表面を有する平坦部と、
前記平坦部の前記第3の方向の一方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第1湾曲部と、
前記平坦部の前記第3の方向の他方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第2湾曲部とを含み、
前記第1湾曲部において、積層された前記正極板のうちの最外周に位置する正極板から数えて3層目までの各々の前記正極板の表面とその外周側に隣接する各々の前記セパレータとの接着強度が1.0N/m以上1.9N/m以下であり、
前記第1湾曲部において、積層された前記正極板のうちの最内周に位置する正極板から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある前記正極板の表面とその外周側に隣接する前記セパレータとの接着強度が0.6N/m以上1.5N/m以下である、二次電池。
【請求項6】
前記平坦部において、積層された前記正極板のうちの最外周に位置する正極板から数えて3層目までの各々の前記正極板の表面とその外周側に隣接する各々の前記セパレータとの接着強度が1.5N/m以上1.9N/m以下である、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記平坦部において、積層された前記正極板のうちの最内周に位置する正極板から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある前記正極板の表面とその外周側に隣接する前記セパレータとの接着強度が1.5N/m以上1.9N/m以下である、請求項5または請求項6に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池の製造方法および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電極体成形装置の構成を開示した先行技術文献として、特開2013-084445号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された電極体成形装置は、第1プレスヘッドと、第2プレスヘッドとを備える。第1プレスヘッドおよび第2プレスヘッドは、中空円筒形状に巻回された電極体を直径方向に両側から挟み込んで押圧することによって、電極体の外周面に平面部と曲面部とを形成しつつ電極体を扁平形状に成形する。第1プレスヘッドおよび第2プレスヘッドには、圧迫面と、R押さえ面とが設けられている。圧迫面は、押圧時に電極体の外周面の平面部に対応する。R押さえ面は、圧迫面の両端に位置し、少なくとも押圧時には圧迫面より高さ方向に突出するとともに、電極体の外周面の曲面部を圧迫する。
【0003】
また、特許文献1に類似する先行技術文献として、特開2022-050088号公報(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-084445号公報
【特許文献2】特開2022-050088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電極体成形装置においては、当該装置の治具形状に巻回体を沿わすようにして電極体の湾曲部を形成するため、湾曲部における正極板と負極板との極板間距離が不均一になる可能性がある。これにより、負極板上においてリチウムが析出する可能性がある。また、正極板と負極板との極板間距離を適正にするために電極体の湾曲部を強く押圧した場合、積層された内側箇所における正極板、負極板およびセパレータが強く接着されることによって、電極体に対する電解液の含浸性が悪化する可能性がある。
【0006】
本技術は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電極体に対する電解液の含浸性を良好に保ちつつ、電極体内部におけるリチウムの析出を抑制することができる、二次電池の製造方法および二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術は、以下の二次電池の製造方法を提供する。
[1]
正極板と負極板との間にセパレータを挟み、第1の方向に沿う巻回軸を軸中心として前記正極板、前記負極板および前記セパレータが巻回された巻回体を準備する工程と、
前記第1の方向に直交する第2の方向において、第1弾性部を含む第1プレス面を有する第1治具と第2弾性部を含む第2プレス面を有する第2治具とにより前記巻回体を挟み、前記第1プレス面および前記第2プレス面の少なくとも一部を弾性変形させながら前記第1プレス面および前記第2プレス面により前記巻回体を押圧することによって、前記巻回体を扁平状にプレス加工して電極体を作製する工程と、
前記電極体および電解液をケースに収容する工程とを備え、
前記巻回体をプレス加工して前記電極体を作製する工程において、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向の中央側に位置し、かつ平坦な外表面を有する平坦部と、前記平坦部の前記第3の方向の一方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第1湾曲部と、前記平坦部の前記第3の方向の他方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第2湾曲部とが前記電極体に形成され、
前記巻回体をプレス加工して前記電極体を作製する工程において、前記第1湾曲部および前記第2湾曲部の各々は、前記第1プレス面および前記第2プレス面のうちの少なくとも一方を介して室温より高い温度に加熱される、二次電池の製造方法。
なお、室温とは、電極体にプレス加工を行う際の周囲の雰囲気温度をいう。
[2]
前記室温より高い温度は、50℃以上110℃以下である、[1]に記載の二次電池の製造方法。
[3]
前記巻回体をプレス加工した後に前記第1湾曲部および前記第2湾曲部となる領域の50%以上の前記外表面に前記第1プレス面および前記第2プレス面が当接する、[1]または[2]に記載の二次電池の製造方法。
[4]
前記第1弾性部および前記第2弾性部の各々は、多孔質部材によって構成されている、[1]から[3]のいずれか1つに記載の二次電池の製造方法。
【0008】
本技術は、以下の二次電池を提供する。
[5]
正極板と負極板との間にセパレータを挟み、第1の方向に沿う巻回軸を軸中心として前記正極板、前記負極板および前記セパレータが巻回された電極体と、
前記電極体および電解液を収容するケースとを備え、
前記電極体は、前記第1の方向に直交する第2の方向に短手方向を有し、かつ前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に長手方向を有する扁平状であり、
前記電極体は、
前記第3の方向の中央側に位置し、かつ平坦な外表面を有する平坦部と、
前記平坦部の前記第3の方向の一方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第1湾曲部と、
前記平坦部の前記第3の方向の他方端部側に位置し、かつ湾曲した外表面を有する第2湾曲部とを含み、
前記第1湾曲部において、積層された前記正極板のうちの最外周に位置する正極板から数えて3層目までの各々の前記正極板の表面とその外周側に隣接する各々の前記セパレータとの接着強度が1.0N/m以上1.9N/m以下であり、
前記第1湾曲部において、積層された前記正極板のうちの最内周に位置する正極板から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある前記正極板の表面とその外周側に隣接する前記セパレータとの接着強度が0.6N/m以上1.5N/m以下である、二次電池。
なお、「正極板のうちの最外周に位置する正極板から数えて3層目までの各々の正極板」とは、正極板のうちの最外周の1層目、1層目から1層分内側の2層目、および2層目から1層分内側の3層目に位置する各々の正極板である。
また、正極板の総積層数が偶数の場合、「総積層数のうちの50%の積層数」とは、総積層数を半分に割った枚数とする。
さらに、正極板の総積層数が奇数の場合、「総積層数のうちの50%の積層数」とは、総積層数を半分に割って、小数点以下を四捨五入した枚数とする。
[6]
前記平坦部において、積層された前記正極板のうちの最外周に位置する正極板から数えて3層目までの各々の前記正極板の表面とその外周側に隣接する各々の前記セパレータとの接着強度が1.5N/m以上1.9N/m以下である、[5]に記載の二次電池。
[7]
前記平坦部において、積層された前記正極板のうちの最内周に位置する正極板から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある前記正極板の表面とその外周側に隣接する前記セパレータとの接着強度が1.5N/m以上1.9N/m以下である、[5]または[6]に記載の二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、電極体に対する電解液の含浸性を良好に保ちつつ、電極体内部におけるリチウムの析出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本技術の一実施の形態に係る二次電池の構成を示す斜視図である。
【
図2】本技術の一実施の形態に係る二次電池の内部構成を示す斜視図である。
【
図3】本技術の一実施の形態に係る二次電池が備える電極体および集電体の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3の電極体をIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
【
図5】本技術の一実施の形態に係る二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】巻回体をプレス加工する前の状態を示す概略図である。
【
図7】巻回体をプレス加工して電極体を作製している状態を示す概略図である。
【
図8】電極体における正極板とセパレータとの接着強度の測定位置を示す模式図である。
【
図9】電極体における正極板とセパレータとの接着強度の測定方法を示す模式図である。
【
図10】比較例に係る巻回体をプレス加工して電極体を作製している状態を示す概略図である。
【
図11】比較例に係る二次電池が備える電極体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0012】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0013】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0014】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0015】
本明細書において、「二次電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の二次電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。
【0016】
また、二次電池を含む「電池モジュール」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池モジュール」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0017】
なお、図面においては、二次電池が備える電極体の巻回軸に沿う方向を第1の方向としてのX方向、第1の方向に直交し、かつ第1の方向から見て電極体の短手方向を第2の方向としてのY方向、第1の方向に直交し、かつ第1の方向から見て電極体の長手方向を第3の方向としてのZ方向とする。また、発明の理解を容易にするため、図面における各構成の寸法は実寸法から変更して示している箇所がある。
【0018】
図1は、本技術の一実施の形態に係る二次電池の構成を示す斜視図である。
図2は、本技術の一実施の形態に係る二次電池の内部構成を示す斜視図である。
図3は、本技術の一実施の形態に係る二次電池が備える電極体および集電体の構成を示す斜視図である。
【0019】
本実施の形態における二次電池1は、角形二次電池である。
図1~
図3に示すように、二次電池1は、ケース10と、電極体20と、正極集電体30と、負極集電体40と、正極端子50と、負極端子60と、正極外部導電部材70と、負極外部導電部材80と、図示しない絶縁シートとを備える。
【0020】
ケース10は、外装体100と、封口板110とを含む。
【0021】
外装体100は、開口部101を有する有底角筒状である。外装体100は、金属製である。具体的には、外装体100は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄または鉄合金などにより構成されている。
【0022】
外装体100は、底部102と、1対の第1側壁103a,103bと、1対の第2側壁104a,104bとを有する。
【0023】
底部102は、開口部101に対向している。1対の第1側壁103a,103bの各々は、底部102の縁から立設されつつ互いに平行に対向している。1対の第2側壁104a,104bの各々は、底部102の縁から立設されつつ互いに平行に対向している。1対の第2側壁104a,104bの各々は、第1側壁103a,103b同士を接続している。1対の第1側壁103a,103bの各々の面積は、1対の第2側壁104a,104bの各々の面積より大きい。
【0024】
封口板110は、外装体100の開口部101を封口する。封口板110は、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄または鉄合金などにより構成されている。
【0025】
封口板110には、電解液注液孔111が設けられている。電解液注液孔111は、封止部材112により封止されている。封口板110には、ガス排出弁113が設けられている。ガス排出弁113は、ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断し、ケース10内のガスを外部に排出する。
【0026】
本実施の形態における電極体20は、後述する正極板、負極板およびセパレータを有する扁平形状の電極体である。具体的には、電極体20は、帯状のセパレータを介して帯状の正極板および帯状の負極板がともに巻回された巻回型電極体である。
【0027】
電極体20の厚みTは、たとえば12mmである。電極体20の幅Wは、たとえば290mmである。電極体の高さHは、たとえば95mmである。電極体20における正極板の幅としては、140mm以上500mm以下が好ましく、280mm以上400mm以下がより好ましい。
【0028】
図1に示すように、ケース10は、電極体20を収容している。本実施の形態におけるケース10は、3つの電極体20を収容している。電極体20は、その巻回軸A1が底部102と平行となり、かつケース10の長手方向に沿う向きで、外装体100内に収容されている。なお、外装体100内に配置される電極体20の数量は、3つに限定されない。
【0029】
また、ケース10は、電解液を収容している。電解液は、非水溶媒にリチウム塩が溶解している液体である。
【0030】
電極体20には、タブ部21が正極板および負極板の少なくとも一方に設けられ、電極体20の側方に延出している。本実施の形態における電極体20においては、電極体20の巻回軸A1が延びる方向における一方の端部に、一方のタブ部21として複数枚の正極タブを含む正極タブ群201が設けられている。電極体20における電極体20の巻回軸A1が延びる方向における他方の端部には、他方のタブ部21として複数枚の負極タブを含む負極タブ群211が設けられている。
【0031】
電極体20は、一方の第2側壁104aと正極タブ群201とが対向し、かつ、他方の第2側壁104bと負極タブ群211とが対向する向きで、絶縁シートを間に挟んで外装体100内に配置されることが好ましい。
【0032】
正極集電体30は、板状の形状を有している。正極集電体30は、一方のタブ部21に接続されている。本実施の形態における正極集電体30は、正極タブ群201に接続されている。正極集電体30は、金属製であることが好ましく、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であることがより好ましい。
【0033】
負極集電体40は、板状の形状を有している。負極集電体40は、他方のタブ部21に接続されている。本実施の形態における負極集電体40は、負極タブ群211に接続されている。負極集電体40は、金属製であることが好ましく、銅製または銅合金製であることがより好ましい。
【0034】
封口板110には、正極端子50及び負極端子60が取り付けられている。正極端子50は、正極集電体30を介して、複数の電極体20の各々における正極タブ群201と電気的に接続されている。正極端子50には、正極外部導電部材70が接続されている。なお、二次電池1は、正極外部導電部材70を必ずしも含んでいる必要はない。
【0035】
正極端子50および正極外部導電部材70の各々は、金属製であることが好ましく、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であることがより好ましい。
【0036】
負極端子60は、負極集電体40を介して複数の電極体20の各々における負極タブ群211と電気的に接続されている。負極端子60には、負極外部導電部材80が接続されている。なお、二次電池1は、負極外部導電部材80を必ずしも含んでいる必要はない。
【0037】
負極端子60は、金属製であることが好ましく、銅製または銅合金製であることがより好ましい。負極外部導電部材80は、金属製であることが好ましく、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であることがより好ましい。なお、負極端子60は、負極集電体40と接続される領域が銅または銅合金により構成され、封口板110より外側に突出する領域がアルミニウムまたはアルミニウム合金により構成されていてもよい。
【0038】
図4は、
図3の電極体をIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
図4に示すように、本実施の形態における電極体20は、正極板200と、負極板210と、セパレータ220とを含む。
【0039】
正極板200は、正極原板を加工することにより製造される。正極原板は、正極芯体と、正極活物質層と、正極保護層とを含む。正極芯体は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔である。
【0040】
正極芯体には、両面の一方側の端部を除いて正極活物質層が形成されている。正極活物質層は、リチウム遷移金属複合酸化物層であることが好ましい。遷移金属には、少なくともニッケルが含まれていることが好ましい。正極活物質層は、正極活物質層スラリーをダイコータによって塗布することにより正極芯体上に形成される。
【0041】
正極活物質層スラリーは、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電材としての炭素材料、および、分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:PVdF:炭素材料の質量比が97.5:1:1.5となるように混練することによって作製される。
【0042】
正極保護層は、正極芯体に接しつつ正極活物質層の幅方向の一方側の端部に形成されている。正極保護層は、正極保護層スラリーをダイコータによって塗布することにより正極芯体上に形成される。
【0043】
正極保護層スラリーは、アルミナ粉末、導電材としての炭素材料、結着材としてのPVdF、および、分散媒としてのNMPを、アルミナ粉末:炭素材料:PVdFの質量比が83:3:14となるように混練することによって作製される。
【0044】
正極活物質層スラリーおよび正極保護層スラリーが塗布された正極芯体を乾燥させ、正極活物質層スラリーおよび正極保護層スラリーに含まれるNMPを除去する。これにより、正極活物質層および正極保護層が形成される。さらに、正極活物質層を圧縮することにより、正極芯体、正極活物質層および正極保護層を含む正極原板とする。正極原板を所定の形状に切断し、正極板とする。なお、正極原板は、エネルギー線の照射によるレーザー加工、金型加工、または、カッター加工などにより切断することができる。
【0045】
正極板200の厚みは、5μm以上30μm以下であることが好ましく、8μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0046】
正極板200の積層数は、10層以上であることが好ましく、20層以上であることがより好ましく、30層以上であることがさらに好ましい。また、正極板200の積層数は、150層以下が好ましく、100層以下がより好ましい。本実施の形態における正極板200の積層数は、たとえば33層である。
【0047】
負極板210は、負極原板を加工することにより製造される。負極原板は、負極芯体と、負極活物質層とを含む。負極芯体は、銅箔または銅合金箔である。
【0048】
負極芯体には、両面の一方側の端部を除いて負極活物質層が形成されている。負極活物質層は、負極活物質層スラリーをダイコータによって塗布することにより形成される。
【0049】
負極活物質層スラリーは、負極活物質としての黒鉛またはシリコン含有化合物、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、および、分散媒としての水を、黒鉛:SBR:CMCの質量比が98:1:1となるように混練することによって作製される。
【0050】
負極活物質層スラリーが塗布された負極芯体を乾燥させ、負極活物質層スラリーに含まれる水を除去する。これにより、負極活物質層が形成される。さらに、負極活物質層を圧縮することにより、負極芯体および負極活物質層を含む負極原板とする。負極原板を所定の形状に切断し、負極板とする。なお、負極原板は、エネルギー線の照射によるレーザー加工、金型加工、または、カッター加工などにより切断することができる。
【0051】
負極板210の厚みは、5μm以上30μm以下であることが好ましく、8μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0052】
負極板の積層数は、10層以上であることが好ましく、20層以上であることがより好ましく、30層以上であることがさらに好ましい。本実施の形態における負極板の積層数は、たとえば35層である。
【0053】
セパレータ220は、正極板200と負極板210とを絶縁するために設けられている。セパレータ220は、基材層と、機能層とを含むことが好ましい。基材層は、ポリエチレンまたはポリオレフィンにより構成されていることが好ましい。基材層は、微多孔膜であることが好ましい。なお、基材層は、ポリエチレンまたはポリオレフィンによる構成に限定されず、他の樹脂製であってもよい。
【0054】
機能層は、基材層の少なくとも一方の表面に形成されていることが好ましい。機能層は、たとえば耐熱層または接着層である。本実施の形態におけるセパレータ220は、基材層の両表面に接着層を有することが好ましい。
【0055】
接着層は、たとえばアクリル系接着層である。接着層は、ドット状またはストライプ状などにより基材層の表面の全面に配置される。接着層は、PVDFを含む層から構成されることが好ましい。PVDFは、網目状に接着層に配置されていてもよい。接着層は、アルミナなどのセラミック粒子を含んでいてもよい。
【0056】
なお、セパレータ220は、基材層の表面において、接着層のみが配置される構成、耐熱層および接着層が複数層として配置される構成、または耐熱および接着の機能を有する単層が配置される構成などをとり得る。
【0057】
セパレータ220の厚みは、たとえば16μmである。基材層の厚みは、たとえば12μmである。機能層としての接着層の厚みは、たとえば基材層の片側に位置する単層で2μmである。なお、正極板200および負極板210を絶縁することができれば、セパレータ220の厚みは限定されない。
【0058】
セパレータ220は、正極板200および負極板210の各々の間、最内周および最外周において配置される。本実施の形態におけるセパレータ220の積層数は、たとえば78層である。
【0059】
電極体20は、正極板200と負極板210との間にセパレータ220を挟んでいる。電極体20は、第1の方向(X方向)に沿う巻回軸A1を軸中心として正極板200、負極板210およびセパレータ220が巻回されている。
【0060】
電極体20は、第1の方向(X方向)に直交する第2の方向(Y方向)に短手方向を有している。また、電極体20は、第1の方向(X方向)および第2の方向(Y方向)に直交する第3の方向(Z方向)に長手方向を有している。すなわち、電極体20は、第1の方向(X方向)から見て、扁平状である。
【0061】
電極体20は、平坦部22と、湾曲部23とを含む。平坦部22は、第2の方向(Y方向)の両側に一方の平坦部22aおよび他方の平坦部22bとを有する。
【0062】
平坦部22は、第3の方向(Z方向)の中央側に位置している。平坦部22は、平坦な外表面を有している。なお、平坦部22における「平坦」は、同一平面であることのみを意味するものではない。「平坦」には、正極板200、負極板210およびセパレータ220の巻き終わり端部の段差、ならびに電極体20の巻止めテープなどの段差を含んだ面形状を含む。
【0063】
湾曲部23は、第1湾曲部24と、第2湾曲部25とを有する。第1湾曲部24は、平坦部22の第3の方向(Z方向)の一方端部側に位置している。第1湾曲部24は、湾曲した外表面を有している。第2湾曲部25は、平坦部22の第3の方向(Z方向)の他方端部側に位置している。第2湾曲部25は、湾曲した外表面を有している。
【0064】
平坦部22および湾曲部23の各々における正極板200とセパレータ220とは、圧着されている。また、平坦部22および湾曲部23の各々における負極板210とセパレータ220とについても、圧着されている。これにより、正極板200とセパレータ220との間、および負極板210とセパレータ220との間には隙間があくことなく密着している。
【0065】
以下、本技術の一実施の形態に係る二次電池の製造方法について説明する。
図5は、本技術の一実施の形態に係る二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
【0066】
図5に示すように、本実施の形態に係る二次電池1の製造方法としては、まず、正極板200と負極板210との間にセパレータ220を挟み、第1の方向(X方向)に沿う巻回軸A1を軸中心として正極板200、負極板210およびセパレータ220が巻回された巻回体20Aを準備する(S1工程)。
【0067】
次に、巻回体20Aを加熱しつつ押圧することによって、巻回体20Aを扁平状にプレス加工して電極体20を作製する(S2工程)。本工程の詳細については、後述する。
【0068】
次に、電極体20および電解液をケースに収容する(S3工程)。袋状または箱状とした絶縁シート内に、電極体20を配置する。絶縁シートで覆われた電極体20を外装体100内に挿入する。これにより、ケース10内に電極体20が収容される。
【0069】
次に、ケース10を封口する(S4工程)。外装体100の開口部101において、封口板110をレーザー溶接などにより接合する。
【0070】
次に、ケース10に電解液を注液する(S5工程)。封口板110に設けられた電解液注液孔111から非水電解液を注液し、電解液注液孔111を封止部材112により封止する。これにより、二次電池1が完成する。
【0071】
以下、本技術の一実施の形態に係る電極体20のプレス加工について詳述する。
図6は、巻回体をプレス加工する前の状態を示す概略図である。
図7は、巻回体をプレス加工して電極体を作製している状態を示す概略図である。
【0072】
図6および
図7に示すように、巻回体20Aは、プレス治具2によってプレス加工され、電極体20が形成される。
【0073】
巻回体20Aは、プレス加工される前の状態としては、第1の方向(X方向)から見た断面が略真円の円筒形状であってもよいし、断面楕円形状であってもよい。巻回体20Aが断面楕円形状である場合には、プレス加工がされる前に、事前に別のプレス加工を施すことによって巻回体20Aが楕円形状に成形される。
【0074】
プレス治具2は、図示しないプレス加工機に設けられている。プレス治具2には、図示しないヒータが設けられている。プレス治具2は、第1治具3と、第2治具4とを含む。第1治具3は、巻回体20Aにおける一方の平坦部22aが形成される部分に対向して設けられている。第2治具4は、巻回体20Aにおける他方の平坦部22bが形成される部分に対向して設けられている。
【0075】
第1治具3は、第1ヘッド部5を有している。第1ヘッド部5は、第1弾性部7を含む第1プレス面F1を有している。第2治具4は、第2ヘッド部6を有している。第2ヘッド部6は、第2弾性部8を含む第2プレス面F2を有している。
【0076】
第1弾性部7および第2弾性部8の各々は、多孔質部材によって構成されている。本実施の形態における第1弾性部7および第2弾性部8の各々は、発泡シリコンによって構成されている。なお、第1弾性部7および第2弾性部8の各々は、天然ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムまたはフッ素ゴムなどの熱硬化性エラストマーなどにより構成されていてもよい。第1弾性部7および第2弾性部8の各々は、プレス加工時に大きく弾性変形するものであることが好ましい。
【0077】
第1弾性部7および第2弾性部8の各々は、弾性変形しつつ巻回体20Aを押圧するために、電極体20を成形するための厚みを有していることが好ましい。第1弾性部7および第2弾性部8の各々の第2の方向(Y方向)の厚みは、たとえば電極体20の短手方向における厚みの1/2以上であることが好ましく、2/3以上であることがより好ましい。
【0078】
巻回体20Aにプレス加工を施す際、第1の方向(X方向)に直交する第2の方向(Y方向)において、第1治具3と第2治具4とにより巻回体20Aを挟む。第1プレス面F1および第2プレス面F2の少なくとも一部を弾性変形させながら第1プレス面F1および第2プレス面F2により巻回体20Aを押圧することによって、巻回体20Aを扁平状にプレス加工して電極体20を作製する。本実施の形態においては、第1プレス面F1および第2プレス面F2の両方を弾性変形させながら第1プレス面F1および第2プレス面F2により巻回体20Aを押圧する。
【0079】
電極体20において、巻回体20Aをプレス加工した後に第1湾曲部24および第2湾曲部25となる領域の50%以上の外表面に第1プレス面F1および第2プレス面F2が当接している。本実施の形態においては、第1湾曲部24および第2湾曲部25となる領域の外表面の全面に第1プレス面F1および第2プレス面F2が当接している。
【0080】
巻回体20Aを扁平状にプレス加工することによって、作製された電極体20には、平坦部22と、湾曲部23である第1湾曲部24および第2湾曲部25とが形成される。平坦部22および湾曲部23の各々における正極板200とセパレータ220とは、プレス治具2に押圧されることによって圧着されている。また、平坦部22および湾曲部23の各々における負極板210とセパレータ220とについても、プレス治具2に押圧されることによって圧着されている。
【0081】
巻回体20Aのプレス圧力は、たとえば50kN以上が好ましく、80kN以上がより好ましく、90kN以上がさらに好ましい。また、巻回体20Aのプレス圧力は、たとえば200kN以下が好ましく、150kN以下がより好ましい。本実施の形態における巻回体20Aのプレス圧力は、たとえば110kNである。
【0082】
巻回体20Aをプレス加工して電極体20を作製する際、第1湾曲部24および第2湾曲部25の各々は、室温より高い温度に加熱されている。具体的には、巻回体20Aをプレス加工して電極体20を作製する際、第1湾曲部24および第2湾曲部25の各々は、第1プレス面F1および第2プレス面F2のうちの少なくとも一方を介して室温より高い温度に加熱されている。本実施の形態においては、第1湾曲部24および第2湾曲部25の各々は、プレス治具2に内蔵されたヒータにより第1プレス面F1および第2プレス面F2の両方を介して室温より高い温度に加熱されている。
【0083】
室温とは、電極体20にプレス加工を行う際の周囲の雰囲気温度をいう。上述の室温より高い温度は、たとえば50℃以上110℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましく、70℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。本実施の形態における第1湾曲部24および第2湾曲部25の各々の加熱温度は、たとえば70℃である。
【0084】
第1湾曲部24および第2湾曲部25の各々の加熱時間は、たとえば1秒以上30秒以下であることが好ましく、3秒以上20秒以下であることがより好ましく、5秒以上10秒以下であることがさらに好ましい。本実施の形態における第1湾曲部24および第2湾曲部25の各々の加熱時間は、たとえば10秒である。
【0085】
図7に示すように、平坦部22は湾曲部23と同時に押圧されて形成される。本実施の形態においては、プレス加工時に平坦部22も加熱されているが、平坦部22はプレス加工時に必ずしも加熱されていなくてもよい。
【0086】
以下、電極体20の内部における正極板200とセパレータ220との接着強度について説明する。
図8は、電極体における正極板とセパレータとの接着強度の測定位置を示す模式図である。
図8においては、電極体のうちの正極板のみを図示している。
【0087】
電極体20に求められる特性として、正極板200または負極板210とセパレータ220との接着強度がある。正極板200または負極板210とセパレータ220とは、プレス加工による押圧により接着する。プレス加工時の押圧力が高くなるにつれて、当該接着強度は高くなる。また、当該接着強度は、加熱されることによって高くなる。
【0088】
上述のように湾曲部23において正極板200または負極板210とセパレータ220との間に隙間ができないように電極体20がプレス加工されても、当該接着強度が高すぎると、電極体20への内部における電解液の含浸性が低下する。このため、電極体20においては、正極板200または負極板210とセパレータ220との適切な範囲内の接着強度を有することが望ましい。
【0089】
必要とされる当該接着強度の測定位置としては、電極体20の外周側と内周側とに加わるプレス加工の押圧力がそれぞれ異なるため、電極体20の外周側および内周側において測定されることが望ましい。
【0090】
そこで、本実施の形態における電極体20においては、以下の4つの箇所における接着強度を規定する。4つの箇所は、第1外側箇所240、第1内側箇所241、第2外側箇所250および第2内側箇所251である。
【0091】
第1外側箇所240は、第1湾曲部24において、積層された正極板200のうちの最外周に位置する正極板200から数えて3層目までの各々の正極板200である。「最外周に位置する正極板から数えて3層目までの各々の正極板」とは、正極板のうちの最外周の1層目、1層目から1層分内側の2層目、および2層目から1層分内側の3層目に位置する各々の正極板である。
【0092】
第1外側箇所240は、第1湾曲部24の積層された電極体20の外側に位置している。第1湾曲部24の第1外側箇所240において、積層された正極板200のうちの最外周に位置する正極板200から数えて3層目までの各々の正極板200の表面とその外周側に隣接する各々のセパレータ220との接着強度は、1.0N/m以上1.9N/m以下である。当該接着強度は、1.5N/m以上1.9N/m以下であることがより好ましい。なお、当該接着強度は、1.0N/m未満でリチウムが析出する可能性がある。また、当該接着強度は、1.9N/m以上では電極体20に対する電解液の含浸性が悪化する可能性がある。
【0093】
第2湾曲部25における第1外側箇所に相当する部分においても、第1湾曲部24の第1外側箇所240における正極板200の表面とその外周側に隣接するセパレータ220との接着強度と同様であることが好ましい。
【0094】
第1内側箇所241は、第1湾曲部24の積層された電極体20の内側に位置している。第1湾曲部24の第1内側箇所241において、積層された正極板200のうちの最内周に位置する正極板200から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある正極板200の表面とその外周側に隣接するセパレータ220との接着強度は、0.6N/m以上1.5N/m以下である。なお、当該接着強度は、1.5N/m以上では電極体20に対する電解液の含浸性が悪化する可能性がある。なお、正極板の総積層数が偶数の場合、「総積層数のうちの50%の積層数」とは、総積層数を半分に割った枚数とする。また、正極板の総積層数が奇数の場合、「総積層数のうちの50%の積層数」とは、総積層数を半分に割って、小数点以下を四捨五入した枚数とする。
【0095】
第2湾曲部25における第1内側箇所に相当する部分においても、第1湾曲部24の第1内側箇所241における正極板200の表面とその外周側に隣接するセパレータ220との接着強度と同様であることが好ましい。
【0096】
第2外側箇所250は、平坦部22の積層された電極体20の外側に位置している。平坦部22の第2外側箇所250において、積層された正極板200のうちの最外周に位置する正極板200から数えて3層目までの各々の正極板200の表面とその外周側に隣接する各々のセパレータ220との接着強度は、1.5N/m以上1.9N/m以下である。
【0097】
第2内側箇所251は、平坦部22の積層された電極体20の内側に位置している。平坦部22の第2内側箇所251において、積層された正極板200のうちの最内周に位置する正極板200から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある正極板200の表面とその外周側に隣接するセパレータ220との接着強度は、1.5N/m以上1.9N/m以下である。
【0098】
図9は、電極体における正極板とセパレータとの接着強度の測定方法を示す模式図である。
【0099】
電極体20における正極板200とセパレータ220との接着強度を測定する場合、プレス加工後に室温になった電極体20を測定する。正極板200およびセパレータ220が互いに貼り付いている状態で電極体20を解体する。
【0100】
正極板200およびセパレータ220が互いに貼り付いて積層された部分から一部を切断して試験片を得る。湾曲部23の試験片は、巻回軸方向において70mm、巻回軸に直交する方向において8mmの寸法で切断する。平坦部22の試験片は、巻回軸方向において70mm、巻回軸に直交する方向において20mmの寸法で切断する。
【0101】
その後、正極板200が図示しないプレートに接するように、両面テープで試験片をプレートに固定する。正極板200が延在する方向から直交する方向にセパレータ220を引っ張る。試験中、セパレータ220が引き剥がされる方向が常に垂直となるようにプレートを移動させる。セパレータ220を50mm/minの速度で剥離させた際の接着強度を測定する。
【0102】
以下、比較例に係る二次電池の製造方法について説明する。本比較例に係る二次電池の製造方法は、プレス加工して電極体を作製する製造方法が本技術の一実施の形態に係る二次電池1と異なるため、本技術の一実施の形態に係る二次電池1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0103】
図10は、比較例に係る巻回体をプレス加工して電極体を作製している状態を示す概略図である。
【0104】
図10に示すように、比較例に係る電極体90は、プレス治具9により形成される。プレス治具9は、第1治具9aと、第2治具9bとを含む。
【0105】
第1治具9aは、第1ヘッド部9cを有している。第1ヘッド部9cは、第1プレス面F91を有している。第2治具9bは、第2ヘッド部9dを有している。第2ヘッド部9dは、第2プレス面F92を有している。第1ヘッド部9cおよび第2ヘッド部9dの各々は、たとえば鋼材により構成されている。このため、第1プレス面F91および第2プレス面F92の各々は、電極体90を形成するプレス加工時に略弾性変形しない。
【0106】
図11は、比較例に係る二次電池が備える電極体の構成を示す断面図である。
図11に示すように、比較例に係る電極体90は、正極板900と、負極板910と、セパレータ920とを備える。平坦部92においては、正極板900、負極板910およびセパレータ920の各々が圧着されている。
【0107】
湾曲部93においては、正極板900、負極板910およびセパレータ920の各々の間に隙間Gがあいている。これにより、正極板900と負極板910との間の極板間距離が大きくなるため、隙間Gにおいてリチウムの濃度が高まることによって負極板910上にリチウムが析出する場合がある。
【0108】
一方、本実施の形態に係る電極体20は、湾曲部23が第1プレス面F1および第2プレス面F2を弾性変形させながら第1プレス面F1および第2プレス面F2により巻回体20Aを押圧することによって、湾曲部23が形成される。湾曲部23は、第1プレス面F1および第2プレス面F2が弾性変形することによって、電極体20の形状に沿ってプレス加工の押圧力がかかるため、湾曲部23における正極板200、負極板210およびセパレータ220の各々の間に隙間が形成されることが抑制されている。これにより、正極板200と負極板210との間の極板間距離が適正に保たれるため、湾曲部23におけるリチウムの析出が抑制されている。
【0109】
以下、本実施の形態および比較例に係る電極体の作製条件および電池特性の試験結果について説明する。表1は、実施例と比較例とにおける各作製条件で電極体をプレス加工した場合の正極板とセパレータとの接着強度および電池特性を示す表である。
【0110】
【0111】
表1に示すように、巻回体をプレス加工して電極体を作製する際のプレス加工条件として、巻回体の加熱の有無、弾性部による巻回体のプレス加工の有無、およびプレス圧力をそれぞれ変更して電極体を作製した。
【0112】
実験例1~3および比較例1,2の各々の作製条件で作製した電極体の接着強度を測定し、電池特性を評価した。電池特性については、電極体に対する電解液の含浸性と、電極体におけるリチウム析出について評価した。
【0113】
電極体に対する電解液の含浸性の評価方法としては、まず、電解液を注液する前の状態まで二次電池を作製し、電解液を注液した。電解液を注液してから24時間後、48時間後および72時間後の二次電池をそれぞれ解体し、正極板およびセパレータ間における電解液の含浸を目視で確認した。
【0114】
電極体におけるリチウムの析出有無の評価方法としては、まず、電極体を収容した二次電池を準備した。そして、二次電池を拘束した状態で外部電源に繋ぎ、充放電サイクルを繰り返すリチウム析出耐久試験を実施した。
【0115】
リチウム析出耐久試験の試験条件は、たとえば-30℃の環境下において、37Aの電流を10秒間流して充電率が80%になるまで充電を行い、その後、放電させた。この充放電サイクルを500回繰り返した。
【0116】
上述のリチウム析出耐久試験後に二次電池を解体し、電極体の状態を目視で確認した。目視確認は積層されている電極体の全層において実施した。電極体の湾曲部においては、最外周から数えて1層目、2層目および3層目でリチウムが発生していないかを注視して目視確認した。
【0117】
試験結果として、実施例1~3においては、接着強度の各測定箇所において接着強度が低くなりすぎず、かつ高くなりすぎない強度を得ることができた。また、電解液の含浸性およびリチウム析出においても良好な結果が得られた。
【0118】
比較例1は、接着強度については実施例1~3と同程度の結果が得られた。しかし、比較例1は、プレス加工時の巻回体の加熱が無く、巻回体が高圧力で押圧された。これにより、電極体の積層された内周側において接着強度が高くなり、電解液の含浸性が不良だった。
【0119】
比較例2は、弾性部によるプレス加工でないため、湾曲部が十分に押圧されず、湾曲部における正極板200または負極板210とセパレータ220との接着強度が確保できなかった。また、比較例2は、電解液の含浸性は良いが、湾曲部に隙間ができるため、リチウムの析出が発生した。
【0120】
本技術の一実施の形態に係る二次電池1の製造方法においては、第1プレス面F1および第2プレス面F2が弾性変形しながら電極体20の湾曲部23を形成することによって、電極体20の湾曲部23において正極板200および負極板210の間の極板間距離が大きくなることを抑制して、リチウムの析出を抑制することができる。また、湾曲部23をプレス加工する際に加熱することによって、加熱の影響を受けやすい電極体20の外周側の接着強度を確保する。これにより、電極体20を加熱することなくプレス加工した場合と比較して、電極体20の内周側に過負荷をかけることなく、電極体20内側の正極板200または負極板210とセパレータ220との接着強度を高くしすぎないようにして、電解液の含浸性を良好に保つことができる。これにより、電極体20に対する電解液の含浸性を良好に保ちつつ、電極体20内部におけるリチウムの析出を抑制することができる。
【0121】
なお、比較的サイズが大きい電極体の場合に、電極体の外周側における正極板または負極板とセパレータとの接着強度が低くなりやすい。このため、電極体を弾性部によってプレス加工し、かつプレス加工時に電極体を加熱することによって、電解液の含浸性を確保しつつ、電極体内部におけるリチウムの析出を抑制する効果は、比較的サイズが大きい電極体を備える二次電池の場合により効果的である。
【0122】
本技術の一実施の形態に係る二次電池1の製造方法においては、湾曲部23をプレス加工する際に50℃以上110℃以下の温度で加熱する。これにより、湾曲部23の外周側において正極板200または負極板210とセパレータ220との接着強度を適正範囲にしやすく、かつ、電極体20内側の正極板200または負極板210とセパレータ220との接着強度を高くしすぎないようにして、電解液の含浸性を良好に保ちやすくすることができる。
【0123】
本技術の一実施の形態に係る二次電池1の製造方法においては、巻回体20Aをプレス加工した後に第1湾曲部24および第2湾曲部25となる領域の50%以上の外表面に第1プレス面F1および第2プレス面F2が当接する。これにより、局所的に湾曲部23を押圧する場合と比較して、湾曲部23の形状を均一に形成することができるため、必要とする正極板200または負極板210とセパレータ220との接着強度を得やすくすることができる。また、湾曲部23に第1プレス面F1および第2プレス面F2の接触面積を多くして、加熱による熱がプレス治具2から湾曲部23に伝わりやすくすることができる。
【0124】
本技術の一実施の形態に係る二次電池1の製造方法においては、第1弾性部7および第2弾性部8の各々を多孔質部材により構成することによって、湾曲部23を形成するために必要とされる第1プレス面F1および第2プレス面F2の弾性率を得やすい構成にすることができる。
【0125】
本技術の一実施の形態に係る二次電池1においては、第1湾曲部24において、積層された正極板200のうちの最外周に位置する正極板200から数えて3層目までの各々の正極板200の表面とその外周側に隣接する各々のセパレータ220との接着強度が1.0N/m以上1.9N/m以下である。また、第1湾曲部24において、積層された正極板200のうちの最内周に位置する正極板200から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある正極板200の表面とその外周側に隣接するセパレータ220との接着強度が0.6N/m以上1.5N/m以下である。これにより、第1湾曲部24の最外周近傍において、正極板200とセパレータ220との間の接着強度を適切な範囲にすることができるため、正極板200および負極板210との間の極板間距離を正常に保つことができる。その結果、湾曲部23における電解液の含浸性を良好に保ちつつ、湾曲部23におけるリチウムの析出を抑制することができる。
【0126】
本技術の一実施の形態に係る二次電池1においては、平坦部22において、積層された正極板200のうちの最外周に位置する正極板200から数えて3層目までの各々の正極板200の表面とその外周側に隣接する各々のセパレータ220との接着強度が1.5N/m以上1.9N/m以下である。これにより、平坦部22の外周部分において、必要な接着強度を確保して正極板200および負極板210の極板距離を広げないようにできるため、平坦部22における電解液の含浸性を良好に保ちつつ、リチウムの析出を抑制することができる。
【0127】
本技術の一実施の形態に係る二次電池1においては、平坦部22において、積層された正極板200のうちの最内周に位置する正極板200から数えて総積層数のうちの50%の積層数分外周側にある正極板200の表面とその外周側に隣接するセパレータ220との接着強度が1.5N/m以上1.9N/m以下である。これにより、平坦部22の内周部分において、必要な接着強度を確保して正極板200および負極板210の極板距離を広げないようにできるため、平坦部22における電解液の含浸性を良好に保ちつつ、リチウムの析出を抑制することができる。
【0128】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
1 二次電池、2,9 プレス治具、3,9a 第1治具、4,9b 第2治具、5,9c 第1ヘッド部、6,9d 第2ヘッド部、7 第1弾性部、8 第2弾性部、10 ケース、20,90 電極体、20A 巻回体、21 タブ部、22,22a,22b,92 平坦部、23,93 湾曲部、24 第1湾曲部、25 第2湾曲部、30 正極集電体、40 負極集電体、50 正極端子、60 負極端子、70 正極外部導電部材、80 負極外部導電部材、100 外装体、101 開口部、102 底部、103a,103b 第1側壁、104a,104b 第2側壁、110 封口板、111 注液孔、112 封止部材、113 ガス排出弁、200,900 正極板、201 正極タブ群、210,910 負極板、211 負極タブ群、220,920 セパレータ、240 第1外側箇所、241 第1内側箇所、250 第2外側箇所、251 第2内側箇所、A1 巻回軸、F1,F91 第1プレス面、F2,F92 第2プレス面。