(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162048
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20241114BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20241114BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20241114BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241114BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241114BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241114BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241114BHJP
H01M 10/6552 20140101ALI20241114BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M50/209
H01M50/291
H01M50/293
H01M10/647
H01M10/613
H01M10/625
H01M4/525
H01M4/131
H01M50/103
H01M50/119
H01M50/204 401H
H01M10/6552
H01M10/6567
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077215
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島村 治成
【テーマコード(参考)】
5H011
5H031
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011AA13
5H011CC06
5H031AA09
5H031EE01
5H031HH06
5H031KK02
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040LL01
5H050AA15
5H050BA14
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050EA02
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】電池セル同士の伝熱を抑制する。
【解決手段】組電池は、複数の電池セル100と、セパレータ200とを備える。複数の電池セル100は、一方向に並んでいる。セパレータ200は、複数の電池セル100の間にある。複数の電池セル100の各々は、電極体と、アルミニウム製の筐体120とを含む。筐体120は、電極体を収容する。セパレータ200は、内部空間260が形成された金属製のケース体210を含む。ケース体210の融点は、筐体120の融点より高い。内部空間260は、ケース体210の金属に囲まれて密閉され、かつ大気圧未満である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に並んだ複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの間にあるセパレータとを備え、
前記複数の電池セルの各々は、電極体と、前記電極体を収容するアルミニウム製の筐体とを含み、
前記セパレータは、内部空間が形成された金属製のケース体を含み、
前記ケース体の融点は、前記筐体の融点より高く、
前記内部空間は、前記ケース体の金属に囲まれて密閉され、かつ大気圧未満である、組電池。
【請求項2】
前記電極体は、正極活物質層が表面に配置された正極板を有し、
前記正極活物質層は、ニッケルを含有するリチウム遷移金属複合酸化物を有し、
前記リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有比率は、70mol%以上である、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
一方向に並んだ複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの間にあるセパレータとを備え、
前記セパレータは、内部空間が形成された金属製のケース体を含み、
前記ケース体の融点は、1000℃以上であり、
前記内部空間は、前記ケース体の金属に囲まれて密閉され、かつ大気圧未満である、組電池。
【請求項4】
前記複数の電池セルの各々は、正極活物質層が表面に配置された正極板を有する電極体をさらに含み、
前記正極活物質層は、ニッケルを含有するリチウム遷移金属複合酸化物を有し、
前記リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有比率は、70mol%以上である、請求項3に記載の組電池。
【請求項5】
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、チタンを含有している、請求項2または請求項4に記載の組電池。
【請求項6】
前記リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのチタンの含有比率は、0.1mol%以上5mol%以下である、請求項5に記載の組電池。
【請求項7】
前記内部空間の圧力は、前記ケース体に外力がかかっていない状態で、1.0×10-1Pa以上1.0×104Pa以下である、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項8】
前記ケース体の材質は、銅、銅合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金およびそれらの組合せからなる群から選ばれた材質からなる、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項9】
前記セパレータは、熱伝導率が50W/m・K以下である固形物をさらに含み、
前記固形物は、前記内部空間に配置されている、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックの構成を開示した先行技術文献として、国際公開第2019/151036号(特許文献1)がある。特許文献1に記載された電池パックは、電池積層体を備える。電池積層体は、複数の角型電池と、セル間セパレータとを含む。複数の角型電池は、積層されている。セル間セパレータは、積層方向に隣り合う2つの角型電池の間に配置されている。セル間セパレータは、角型電池間の断熱材として作用する。セル間セパレータは、樹脂材、または繊維シートなどの空隙を有する構造材により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池セルの高容量化に伴って電池セルの発熱量が増加する。この場合、特許文献1に記載の電池パックが備えるセル間セパレータの構成では、電池セル同士の伝熱を抑制することが難しい可能性がある。このため、電池セル同士の伝熱を抑制することができる余地がある。
【0005】
本技術は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電池セル同士の伝熱を抑制することができる、組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、以下の組電池を提供する。
[1]
一方向に並んだ複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの間にあるセパレータとを備え、
前記複数の電池セルの各々は、電極体と、前記電極体を収容するアルミニウム製の筐体とを含み、
前記セパレータは、内部空間が形成された金属製のケース体を含み、
前記ケース体の融点は、前記筐体の融点より高く、
前記内部空間は、前記ケース体の金属に囲まれて密閉され、かつ大気圧未満である、組電池。
[2]
前記電極体は、正極活物質層が表面に配置された正極板を有し、
前記正極活物質層は、ニッケルを含有するリチウム遷移金属複合酸化物を有し、
前記リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有比率は、70mol%以上である、[1]に記載の組電池。
[3]
一方向に並んだ複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの間にあるセパレータとを備え、
前記セパレータは、内部空間が形成された金属製のケース体を含み、
前記ケース体の融点は、1000℃以上であり、
前記内部空間は、前記ケース体の金属に囲まれて密閉され、かつ大気圧未満である、組電池。
[4]
前記複数の電池セルの各々は、正極活物質層が表面に配置された正極板を有する電極体をさらに含み、
前記正極活物質層は、ニッケルを含有するリチウム遷移金属複合酸化物を有し、
前記リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有比率は、70mol%以上である、[3]に記載の組電池。
[5]
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、チタンを含有している、[2]または[4]に記載の組電池。
[6]
前記リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのチタンの含有比率は、0.1mol%以上5mol%以下である、[5]に記載の組電池。
[7]
前記内部空間の圧力は、前記ケース体に外力がかかっていない状態で、1.0×10-1Pa以上1.0×104Pa以下である、[1]から[6]のいずれか1つに記載の組電池。
[8]
前記ケース体の材質は、銅、銅合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金およびそれらの組合せからなる群から選ばれた材質からなる、[1]から[7]のいずれか1つに記載の組電池。
[9]
前記セパレータは、熱伝導率が50W/m・K以下である固形物をさらに含み、
前記固形物は、前記内部空間に配置されている、[1]から[8]のいずれか1つに記載の組電池。
【発明の効果】
【0007】
本技術によれば、電池セル同士の伝熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本技術の一実施の形態に係る電池モジュールの構成を示す斜視図である。
【
図2】本技術の一実施の形態に係る電池モジュールが備える組電池の構成を示す斜視図である。
【
図3】本技術の一実施の形態に係る組電池が備える電池セルの構成を示す斜視図である。
【
図4】本技術の一実施の形態に係る電極体の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図2の組電池をV-V線矢印方向から見た断面図である。
【
図6】本技術の一実施の形態に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す斜視図である。
【
図7】本技術の一実施の形態に係るケース体の孔部を真空雰囲気下において接合する状態を示す斜視図である。
【
図8】本技術の一実施の形態の第1変形例に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す断面図である。
【
図9】本技術の一実施の形態の第1変形例に係るケース体の孔部を真空雰囲気下において接合する状態を示す断面図である。
【
図10】本技術の一実施の形態の第1変形例に係るケース体の構成を示す断面図である。
【
図11】本技術の一実施の形態の第2変形例に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す断面図である。
【
図12】本技術の一実施の形態の第2変形例に係るケース体の孔部を真空雰囲気下において接合する状態を示す断面図である。
【
図13】本技術の一実施の形態の第2変形例に係るケース体の構成を示す断面図である。
【
図14】本技術の一実施の形態の第3変形例に係る組電池が備えるセパレータの構成を示す断面図である。
【
図15】本技術の一実施の形態の第4変形例に係るセパレータが備えるケース体の構成を示す斜視図である。
【
図16】一実施の形態の第4変形例に係るセパレータが備えるケース体の構成を示す断面図である。
【
図17】一実施の形態の第4変形例に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す断面図である。
【
図18】一実施の形態の第4変形例に係るケース体の隙間を真空雰囲気下において接合する状態を示す断面図である。
【
図19】一実施の形態の第4変形例に係るケース体が備える金属箔同士が接合される状態を示す断面図である。
【
図20】一実施の形態の第5変形例に係るセパレータのケース体が備える金属箔同士が接合される状態を示す断面図である。
【
図21】一実施の形態の第6変形例に係るセパレータが備える金属箔同士が接合される状態を示す断面図である。
【
図22】比較例に係るセパレータのケース体における金属箔の表面に位置する樹脂部同士が接合される状態を示す断面図である。
【
図23】本技術の一実施の形態に係る組電池の温度測定試験の構成を示す断面図である。
【
図24】本技術の一実施の形態に係る組電池の温度測定試験の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0010】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0011】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0012】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0013】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。
【0014】
また、「電池モジュール」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池モジュール」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0015】
なお、図面においては、電池セルの正極端子および負極端子が並ぶ方向をX方向、複数の電池セルが並ぶ方向をY方向、電池モジュールの高さ方向をZ方向とする。また、発明の理解を容易にするため、図面における各構成の寸法は実寸法から変更して示している箇所がある。
【0016】
本技術の一実施の形態に係る電池モジュールの構成について説明する。
図1は、本技術の一実施の形態に係る電池モジュールの構成を示す斜視図である。
図2は、本技術の一実施の形態に係る電池モジュールが備える組電池の構成を示す斜視図である。
【0017】
図1および
図2に示すように、本技術の一実施の形態に係る電池モジュール1は、組電池10と、エンドプレート20と、拘束部材30と、クーリングプレート40とを備える。組電池10は、電池セル100と、セパレータ200とを含む。
【0018】
複数の電池セル100は、一方向(Y方向)に並んでいる。2つのエンドプレート20に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート20によって押圧され、2つのエンドプレート20の間で拘束されている。
【0019】
セパレータ200は、複数の電池セル100の間に配置されている。セパレータ200は、複数の電池セル100の長側面に当接している。セパレータ200の詳細については、後述する。
【0020】
エンドプレート20は、複数の電池セル100のY方向の両端に設けられている。エンドプレート20は、電池モジュール1を収納する外装体などの基台に固定される。エンドプレート20は、たとえば、アルミニウムまたは鉄により構成されている。
【0021】
図1に示すように、拘束部材30は、組電池10およびエンドプレート20のX方向の両端に設けられている。積層された複数の電池セル100およびエンドプレート20に対してY方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材30をエンドプレート20に係合させ、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート20を接続する拘束部材30に引張力が働く。その反作用として、拘束部材30は、2つのエンドプレート20を互いに近づける方向に押圧する。その結果、拘束部材30は、複数の電池セル100およびセパレータ200をY方向に拘束する。
【0022】
クーリングプレート40は、電池モジュール1のうちの底部に配置されている。クーリングプレート40は、組電池10に接するように配置され、主に電池セル100を冷却する。クーリングプレート40は、冷媒が収容される内部領域を有する。クーリングプレート40の材質は、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、銅、銅合金またはステンレスにより構成されていることが好ましい。
【0023】
クーリングプレート40の内部に配置される冷媒は、電池モジュール1が所定の温度以上になった場合に、電池モジュール1を冷却する効果が大きくなるように、水を含有したものが好ましい。なお、冷媒は、水と不燃性絶縁溶媒とを混合してもよい。
【0024】
不燃性絶縁溶媒としては、ジイソプロピルナフタレン、1-フェニル-1-(3,4-ジメチルフェニル)エタン、液体セルロース、エチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコール、または四塩化炭素などが挙げられる。また、冷媒には、防錆剤を混合してもよい。防錆剤としては、リン酸カリウム塩、無機カリウム塩などのリン酸塩系物質が挙げられる。
【0025】
冷媒における水、不燃性絶縁溶媒および防錆剤の混合割合は、水が5%以上95%以下であり、防錆剤が0.5%以上3%以下であり、残りが不燃性絶縁溶媒となるように混合されることが好ましい。
【0026】
図3は、本技術の一実施の形態に係る組電池が備える電池セルの構成を示す斜視図である。
【0027】
図3に示すように、複数の電池セル100の各々は、電極端子110と、筐体120と、ガス排出弁130と、電極体140とを含む。
【0028】
電極端子110は、正極端子111と、負極端子112とを有する。電極端子110は、筐体120上に形成されている。
【0029】
筐体120は、電極体140および電解液を収容する容器である。筐体120は、略直方体形状を有している。筐体120は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄またはステンレスなどの鉄合金により構成されている。筐体120の材質は、融点が500℃以上であり、薬品などへの耐食性に優れた材料であることが好ましい。
【0030】
筐体120は、封口板121と、底面122と、一対の長側壁123と、一対の短側壁124とを有する。
【0031】
封口板121は、筐体120の上面を構成している。封口板121には、電極端子110が配置されている。底面122は、Z方向において封口板121に対向している。
【0032】
一対の長側壁123および一対の短側壁124は、筐体120の側面を構成している。一対の長側壁123および一対の短側壁124は、封口板121および底面122の各々に交差している。一対の長側壁123の各々は、第1の方向(Y方向)において電極体140を間に挟んで互いに対向している。一対の短側壁124の各々は、第2の方向(X方向)において電極体140を間に挟んで互いに対向している。一対の長側壁123の各々は、一対の短側壁124の各々より大きな面積を有している。
【0033】
底面122、一対の長側壁123および一対の短側壁124の各々の厚みは、たとえば0.5mm以上3mm以下である。底面122、一対の長側壁123および一対の短側壁124の各々の厚みは、互いに異なる厚みであってもよいし、底面122、一対の長側壁123および一対の短側壁124のうちの2つ以上が同じ厚みであってもよい。
【0034】
ガス排出弁130は、筐体120内の圧力が所定値以上となった際に破断する。これにより、筐体120内のガスが筐体120外に排出される。
【0035】
電極体140は、発電要素として機能する。電極体140は、たとえば、後述する正極板および負極板が巻き回された巻回型電極体、または正極板および負極板が交互に積層された積層型電極体である。巻回型電極体である場合、巻回軸の方向がZ方向に沿う縦巻回型電極体であってもよいし、巻回軸がX方向に沿う横巻回型電極体であってもよい。
【0036】
1つの電池セル100に収容される電極体140の数量は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0037】
なお、
図3に例示するように、正極端子111および負極端子112は同一面上(封口板121上)に配置されているが、この構成に限定されない。正極端子111および負極端子112は、異なる面上に位置してもよく、一対の短側壁124のそれぞれに対向するように位置してもよい。また、正極端子111および負極端子112が一対の短側壁124のそれぞれに対向するように位置する場合、正極端子111および負極端子112がX方向に沿う仮想軸上に位置していてもよいし、X方向に沿う仮想軸上からずれて位置していてもよい。
【0038】
図4は、本技術の一実施の形態に係る電極体の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、電極体140は、正極板150と、負極板160と、極板間セパレータ170とを有する。
【0039】
正極板150は、正極芯体151と、正極活物質層152とを有する。正極芯体151は、導電性シートである。正極芯体151は、たとえばアルミニウム合金箔である。正極活物質層152は、正極芯体151の表面に配置されている。
【0040】
正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物などが挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物は、たとえばコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物またはオリビン化合物LiMPO4(M=Mn,Fe,Co,Ni)などが挙げられる。
【0041】
本実施の形態における電池セル100は高容量化を図っている。このため、本実施の形態における正極活物質層152は、ニッケルを含有するリチウム遷移金属複合酸化物を有する。リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有比率は、70mol%以上である。
【0042】
正極活物質は、LiNixCoyAlzO2の一般式で表され、x=70%~98%、y=1%~15%、z=1%~15%の範囲で、x+y+z=100になるように構成される。また、正極活物質は、LiNixCoyMnzO2の一般式で表され、x=70%~98%、y=1%~15%、z=1%~15%の範囲で、x+y+z=100になるように構成される。
【0043】
正極活物質には、Ni、Co、Mnの一部をAl、Ti、P、B、Si、Nb、Zr、C等で置換したものや、正極活物質粒子表面をAl、Ti、P、B、Si、Nb、Zr、C等が含まれた化合物で覆われる場合も含まれる。置換量及び添加量としては、合わせて、0.1%以上7%以下程度である。正極活物質層の密度は、3g/cm3以上であり、好ましくは、3.5g/cm3以上である。本実施の形態におけるリチウム遷移金属複合酸化物は、チタンを含有している。リチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのチタンの含有比率は、0.1mol%以上5mol%以下である。
【0044】
正極活物質層152は、結着材としてのバインダー、および導電材を含んでいてもよい。バインダーは、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、またはポリオレフィンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
導電材は、たとえばカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックまたは黒鉛などの炭素材料が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。正極活物質中の導電材の含有量は、たとえば0.4質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
正極保護層(不図示)は、正極活物質層152よりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。正極保護層は、正極集電体の長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極保護層を備えることにより、極板間セパレータ170が破損した際に正極板150が後述する負極活物質層162と直接接触して二次電池が内部短絡することを防止できる。正極保護層は、絶縁性の無機フィラーを含み得る。絶縁性の無機フィラーは、たとえば、アルミナなどのセラミック粒子である。
【0047】
負極板160は、負極芯体161と、負極活物質層162とを有する。負極芯体161は、導電性シートである。負極芯体161は、たとえば銅合金箔である。負極活物質層162は、負極芯体161の表面に配置されている。
【0048】
負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば限定されない。負極活物質は、たとえば人造黒鉛、天然黒鉛、アモルファスコートグラファイト、非晶質炭素などの炭素材料、Si、SiOなどの非炭素材料、炭素材料と非炭素材料との混合物などが挙げられる。炭素材料としては、たとえば低結晶性炭素、アモルファス炭素、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはグラフェンなどが挙げられる。負極活物質が、炭素材料と、粒子構造が結晶質もしくは非晶質(低結晶質やアモルファス)状のSi、SiOまたはSiCなどの非炭素材料、および1粒子内にそれらの非炭素材料とケイ化物とが混在している非炭素材料との混合物の場合、Si、SiOまたはSiCなどの非炭素材料、および1粒子内にそれらの非炭素材料とケイ化物とが混在している非炭素材料の量は、たとえば混合物の総量に対して、1%~70%の範囲であることが好ましい。また、Si、SiOまたはSiCなどの非炭素材料、および1粒子内にそれらの非炭素材料とケイ化物とが混在している非炭素材料は、予めLiを含有させたものでもよく、Li-Si、Li-Si-OまたはLi-Si-Cなどの化合物におけるSiの占める割合は、10%~80%が好ましい。また、Si、SiOまたはSiCなどの非炭素材料、および1粒子内にそれらの非炭素材料とケイ化物とが混在している非炭素材料は、その粒子表面を低結晶性炭素またはアモルファス炭素などの非晶質炭素で覆われていることが好ましい。ケイ化物は、MSix(Mが第1族元素、第2族元素または遷移金属元素など、0<x))であって、たとえば、Mg2Si、TiSi、TiSi2、NiSi、NiSi2、CoSi、CoSi2、Fe3Si、FeSi2、Mn3Si、WSi2またはMoSi2などが挙げられ、それら単体のみの場合、それらが複合している場合、またはたMとMSi2とからなる場合のように一部不完全な場合を含む。
【0049】
負極活物質層162は、結着材としてのバインダーを含んでいてもよい。バインダーは、正極で用いられるバインダーを用いることができる。その他には、たとえばCMCもしくはその塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)もしくはその塩、またはポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。
【0050】
極板間セパレータ170は、正極板150および負極板160を絶縁するために設けられている。極板間セパレータ170は、基材としての多孔性シートのみ、または基材と耐熱層とを含む構造である。
【0051】
基材は、イオン透過性および絶縁性を有し、たとえば微多孔薄膜、織布または不織布などが挙げられる。基材の材質は、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂、またはセルロースなどが好適である。基材の材質は、たとえばPE層のみ、2層のPP層によりPE層を挟んだ積層体であってもよい。基材の厚みは、たとえば5μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。また、2層のPP層によりPE層を挟んだ積層体の場合においては、PP層の厚みが1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、PE層の厚みは2μm以上10μm以下の範囲が好ましい。極板間セパレータ170は、基材上(片面または両面)、正極上(片面または両面)、負極上(片面または両面)のうち少なくとも1つ以上の場所に、耐熱層を配置することが好ましく、これらの場所のうち少なくとも基材の片面または両面に形成される方がより好ましい。
【0052】
耐熱層は、フィラーとバインダーとからなる。フィラーは、たとえばベーマイト、アルミナ、ルチル型もしくはアナターゼ型のチタニア、ジルコニア、マグネシア、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などが挙げられる。耐熱層がアナターゼ型のチタニアの場合には、耐熱層が負極に接触しないように配置される。バインダーは、たとえばPVDF、アクリル樹脂、アラミド、SBRまたはPTFEなどが挙げられる。バインダーの含有量は、耐熱層の総量に対して2質量%以上40質量%以下の範囲であることが好ましい。耐熱層の厚みは、たとえば2μm以上12μm以下の範囲が好ましい。また、耐熱層上に、電極との接着性を上げるために、接着剤をドット状またはライン状など様々な形状で塗布してもよい。なお、極板間セパレータ170が接着剤を含まない場合は、耐熱層中のPVDFなどのバインダーを接着剤の代用として極板との密着性を向上させることもできる。
【0053】
上述の電極体140は、筐体120に収容された後、電解液が含浸される。電解液は、非水電解質により構成されている。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマーなどを用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、たとえばエステル類、エーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、またはこれらの2種以上の混合溶媒などを用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素などのハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0054】
エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)などの環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル、またはγ-ブチロラクトンなどの鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0055】
エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、またはテトラエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0056】
ハロゲン置換体としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などのフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、またはフルオロプロピオン酸メチル(FMP)などのフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどを用いることが好ましい。
【0057】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(P(C2O4)F4)、LiPF6-x(CnF2n+1)x(1<x<6、nは1または2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、もしくはLi2B4O7、Li(B(C2O4)F2)などのホウ酸塩類、LiN(SO2CF3)2、LiN(CmF2m+1SO2)(CnF2n+1SO2)(m,nは0以上の整数)などのイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性などの観点から、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、LiFSIと呼ばれるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(化学式:LiF2NO4S2)、LiTFSIと呼ばれるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化学式:LiC2NO4F6S2)、またはそれらを混合したものを用いることが好ましい。リチウム塩の濃度は、非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を、合計比率が100%になるように、それぞれを1%~99%範囲内で混ぜ合わせることにより、1L当りに0.6mol以上0.8mol以下とすることが好ましい。LiPF6単体であれば、1.1mol/L、LiPF6とLiFSIとを混合させた場合は、LiPF6:0.19mol/L、LiFSI:1.01mol/Lであることが好ましい。
【0058】
図5は、
図2の組電池をV-V線矢印方向から見た断面図である。
【0059】
図5に示すように、本実施の形態におけるセパレータ200は、金属製のケース体210と、弾性部材270とを有する。
【0060】
ケース体210の材質は、銅、銅合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金およびそれらの組合せからなる群から選ばれた材質からなる。ケース体210の融点は、筐体120の融点より高い。ケース体210の融点は、800℃以上であることが好ましく、1000℃以上であることがより好ましい。
【0061】
ケース体210が金属製であることによって、仮に電池セル100が高温に発熱した場合にセパレータ200が溶融することを抑制することができる。また、後述するように、ケース体210に設けた内部空間260を大気圧未満にする。ケース体が樹脂製である場合、ケース体の内部空間を大気圧未満にすると、内部空間の真空による引力でケース体の外形が変形する可能性がある。このため、ケース体210は金属製であることにより、ケース体210の外形が変形することを抑制することができる。
【0062】
Y方向におけるケース体210の幅W1は、0.5mm以上20mm以下であることが好ましく、0.8mm以上15mm以下であることがより好ましく、1mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
ケース体210は、一対の第1側面部220と、一対の第2側面部と、上部240と、下部250とを有する。
【0064】
一対の第1側面部220は、互いにY方向に並び、電池セル100の筐体120に接する部分である。一対の第1側面部220の厚みTは、0.1mm以上3mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上1mm以下であることがさらに好ましい。
【0065】
一対の第2側面部は、互いにX方向に並び、拘束部材30に面する部分である。上部240は、Z方向の電極端子110側に位置している。上部240には、後述する内部空間260を形成するための接合部241が設けられている。下部250は、クーリングプレート40側に位置している。
【0066】
ケース体210には、内部空間260が形成されている。内部空間260は、ケース体210の金属に囲まれて密閉されている。
【0067】
内部空間260は、大気圧未満である。具体的には、内部空間260の圧力は、ケース体210に外力がかかっていない状態で、1.0×10-1Pa以上1.0×104Pa以下である。
【0068】
Y方向における内部空間260の幅W2は、ケース体210の幅W1に対して20%以上90%以上であることが好ましく、40%以上70%以下であることがより好ましい。
【0069】
内部空間260の圧力を測定する方法としては、たとえば以下の方法が挙げられる。なお、圧力測定方法はこれらの方法に限定されない。
【0070】
1つ目の方法としては、ケース体210の内部圧力を直接測定する方法が挙げられる。ケース体210の内部圧力を直接測定する方法としては、真空ゲージと外気遮断用のクッションゴムとその中に真空ゲージに接続された細い中空針とからなる検査機を、セパレータ200に直接突き刺し、ケース体210の内部圧力を測定することができる。当該検査機は、たとえば横山計器株式会社製の真空検缶機が挙げられる。なお、真空検缶機は、スタンドに固定したスタンド型でもよい。真空ゲージは測定できる圧力範囲があるため、真空度に合わせて適切に真空ゲージを変更して測定することが好ましい。内部空間260が高真空の場合であれば、中空針をピラニ真空計に接続して測定することも好ましい。
【0071】
2つ目の測定方法としては、検量線を用いてセパレータ200の内部圧力を測定する方法が挙げられる。まず、取り出したセパレータ200の第1側面部220に歪ゲージを取り付ける、または一対の第1側面部220の両方の中央部の距離を実測する。この測定により第1測定値を得る。その後、内部空間260を開放し大気圧状態にした後、その歪、または一対の第1側面部220の両方の中央部の距離を測定する。再度内部空間260を減圧し封口した後、その歪と一対の第1側面部220の両方の中央部の距離とを測定し、このサイクルを減圧の程度を変えて数回行い、歪または一対の第1側面部220の両方の中央部の距離に対する内部圧力の検量線を作成する。その検量線を用いて、先に測定した第1測定値からセパレータ200の内部空間260の圧力を算出することができる。なお、減圧の程度を変えてその歪と一対の第1側面部220の両方の中央部の距離とを測定する回数は、より精度を上げるためにより多く行なうことが好ましい。
【0072】
弾性部材270は、電池セル100とケース体210との間に位置する。弾性部材270は、Y方向におけるケース体210の両側に設けられている。弾性部材270は、電池セル100が膨張してケース体210に押圧力が印加された場合に、ケース体210に均一に押圧力を印加させるために設けられている。なお、弾性部材270は、セパレータ200に必ずしも設けられていなくてもよい。
【0073】
以下、ケース体210に内部空間260を形成する製造方法について説明する。
図6は、本技術の一実施の形態に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す斜視図である。
【0074】
図6に示すように、まず、金属加工により一対の第1側面部220、一対の第2側面部230、上部240および下部250を接合してケース体210を作成する。具体的には、1枚の金属板を深絞りしてケース体の一部を形成した後に残部をレーザ溶接などにより接合する、または複数の金属板同士をレーザ溶接などによって接合することにより、ケース体210を作成する。
【0075】
上部240には、孔部242が設けられている。孔部242は、ケース体210を形成する前に上部240に設けられてもよいし、ケース体210の作成後に上部240に設けられていてもよい。
【0076】
図7は、本技術の一実施の形態に係るケース体の孔部を真空雰囲気下において接合する状態を示す斜視図である。
【0077】
図7に示すように、ケース体210を真空容器3の中に入れる。その後、真空容器3の内部圧力を1.0×10
-1Pa以上1.0×10
4Pa以下まで真空引きを行なう。これにより孔部242を通じて、ケース体210の内部が真空引きされる。その後、孔部242をレーザ2によって接合する。これにより、ケース体210の内部空間260が1.0×10
-1Pa以上1.0×10
4Pa以下の圧力で形成される。
【0078】
ここで、ケース体における内部空間の製造方法の変形例について説明する。
図8は、本技術の一実施の形態の第1変形例に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す断面図である。
【0079】
図8に示すように、本変形例に係るセパレータが備えるケース体210Aには、上部240Aに孔部242Aがあいている。孔部242Aは、上部240Aと下部250とが並ぶ方向に対して斜めに形成されている。
【0080】
図9は、本技術の一実施の形態の第1変形例に係るケース体の孔部を真空雰囲気下において接合する状態を示す断面図である。
図9に示すように、ケース体210Aを真空容器3に入れる。ケース体210Aの内部が真空雰囲気の状態で、孔部242Aをレーザ2によって接合する。孔部242Aが斜め孔であるため、上部240Aの溶融した部分同士が接しやすい。
【0081】
図10は、本技術の一実施の形態の第1変形例に係るケース体の構成を示す断面図である。
図10に示すように、接合部241Aは、上部240Aと下部250とが並ぶ方向に対して斜めに形成される。大気圧未満の圧力状態にした内部空間260Aからの引力の方向に対して接合部241Aが斜めに形成されるため、接合部241Aに内部空間260Aの引力の負荷がかかることが抑制される。
【0082】
図11は、本技術の一実施の形態の第2変形例に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す断面図である。
【0083】
図11に示すように、本変形例に係るセパレータが備えるケース体210Bは、封止部材280を含む。封止部材280は、上部240Bに形成された孔部242Bに嵌め込むことが可能である。
【0084】
図12は、本技術の一実施の形態の第2変形例に係るケース体の孔部を真空雰囲気下において接合する状態を示す断面図である。
図12に示すように、ケース体210Bを真空容器3に入れる。ケース体210Bの内部が真空雰囲気の状態で、孔部242Bに嵌め込まれた封止部材280をレーザ2によって接合する。
【0085】
図13は、本技術の一実施の形態の第2変形例に係るケース体の構成を示す断面図である。
図13に示すように、接合部241Bが形成されることによって、ケース体210Bに内部空間260Bが形成される。封止部材280により、接合部241Bを形成するため、孔部242Bが比較的大きな内径であっても、接合部241Bを形成することができる。
【0086】
以下、本技術の一実施の形態の変形例に係る組電池について説明する。変形例に係る組電池は、セパレータの構成が本技術の一実施の形態に係る組電池10と異なるため、本技術の一実施の形態に係る組電池10と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0087】
図14は、本技術の一実施の形態の第3変形例に係る組電池が備えるセパレータの構成を示す断面図である。
【0088】
図14に示すように、本変形例に係るセパレータ200Cは、ケース体210Cと、固形物261Cと、弾性部材270とを含む。
【0089】
固形物261Cは、ケース体210Cに形成された内部空間260Cに配置されている。本変形例における固形物261Cは、内部空間260Cをすべて埋めるように配置されている。固形物261Cは、ケース体210Cが大気圧未満の圧力状態にした内部空間260Cの引力を受けて変形することを抑制するために設けられている。
【0090】
固形物261Cは、熱伝導率が50W/m・K以下である。固形物261Cは、たとえば樹脂材料または炭素繊維材料などから構成されている。
【0091】
Y方向におけるケース体210Cの幅W1は、0.5mm以上20mm以下であることが好ましく、1.0mm以上15mm以下であることがより好ましく、2mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0092】
一対の第1側面部220の厚みTは、0.05mm以上3mm以下であることが好ましく、0.1mm以上2mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上1mm以下であることがさらに好ましい。
【0093】
Y方向における内部空間260Cの幅W2は、ケース体210Cの厚みに対して30%以上90%以上であることが好ましく、40%以上90%以下であることがより好ましく、50%以上90%以下であることがさらに好ましい。
【0094】
ケース体210Cの内部に固形物261Cを設ける場合、ケース体210Cの内部空間260Cを形成する前に固形物261Cをケース体210の内部に配置した状態でケース体210Cの上部240Cを接合する。
【0095】
本技術の一実施の形態の第3変形例に係る組電池においては、セパレータ200Cの内部空間260Cに固形物261Cを配置することによって、セパレータ200Cの内部空間260Cにおける断熱性を確保しつつ、大気圧未満にした内部空間260Cの引力に抗うケース体210を固形物261Cによって支持することができる。
【0096】
また、本変形例におけるセパレータ200Cは、固形物261Cを内部空間260Cに設けることによって、ケース体210Cが変形することを抑制することができるため、固形物261Cを設けない場合と比較して、ケース体210Cの厚みを薄くする、またはケース体210Cの幅W1に対する内部空間260Cの幅W2の割合を多くすることができる。これにより、ケース体210Cの熱伝導をより少なくすることができる。
【0097】
図15は、本技術の一実施の形態の第4変形例に係るセパレータが備えるケース体の構成を示す斜視図である。
図16は、一実施の形態の第4変形例に係るセパレータが備えるケース体の構成を示す断面図である。
【0098】
図15および
図16に示すように、本変形例におけるケース体210Dは、その外形が2枚の金属箔290により構成されている。金属箔290は、一方側に第1金属箔291が位置し、他方側に第2金属箔292が位置している。金属箔290によりケース体210Dを構成することによって、固形物261Dをケース体210Dの内部に配置して接合しやすい。
【0099】
ケース体210Dの幅W1は、0.5mm以上20mm以下であることが好ましく、0.8mm以上15mm以下であることがより好ましく、1mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0100】
金属箔290の厚みTは、0.05mm以上3mm以下であることが好ましく、0.1mm以上2mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上1mm以下であることがさらに好ましい。
【0101】
金属箔290同士が並ぶ方向における内部空間260Dの幅W2は、ケース体210Dの厚みに対して30%以上90%以上であることが好ましく、40%以上90%以下であることがより好ましく、50%以上90%以下であることがさらに好ましい。
【0102】
図17は、一実施の形態の第4変形例に係るケース体の内部空間が形成される前の状態を示す断面図である。
【0103】
図17に示すように、金属箔290は、所定形状の筒状に形成する、または正方形または長方形の2枚の金属箔の場合においては、周囲の4辺のうちの対向する2辺を、予めレーザ溶接などで接合し、筒状の状態を形成する。その後、固形物261Dを2枚の金属箔290同士の間に配置する。なお、ケース体210Dの1辺のみを開放させた袋状にしてから固形物261Dを内部に配置してもよい。
【0104】
図18は、一実施の形態の第4変形例に係るケース体の隙間を真空雰囲気下において接合する状態を示す断面図である。
図19は、一実施の形態の第4変形例に係るケース体が備える金属箔同士が接合される状態を示す断面図である。
【0105】
図18および
図19に示すように、ケース体210Dを真空容器3に入れて真空引きする。その後、金属箔290同士の隙間Gをレーザ2により接合し、内部空間260Dを形成する。筒状に形成していた場合は周囲の未接合の2辺を接合する。袋状の場合は未接合の1辺を接合する。その後、金属箔290の不要な端部を切断して形状を整える。これにより、ケース体210Dが形成される。
【0106】
図20は、一実施の形態の第5変形例に係るセパレータのケース体が備える金属箔同士が接合される状態を示す断面図である。
【0107】
図20に示すように、本変形例に係るケース体210Eの外形は、金属箔290により構成される。金属箔290には、表面の一部に樹脂部293が設けられている。樹脂部293は、電池セル同士の絶縁性を高めるために設けられている。樹脂部293は、第1金属箔291および第2金属箔292が互いに対向する側とは反対側の表面に設けられている。ケース体210Fは、金属箔290の樹脂部293が配置される以外の金属部分においてレーザ2により接合される。
【0108】
図21は、一実施の形態の第6変形例に係るセパレータが備える金属箔同士が接合される状態を示す断面図である。
【0109】
図21に示すように、本変形例に係るケース体210Fの外形は、金属箔290により構成される。本変形例に係る金属箔290には、その表面の一部に樹脂部293が設けられている。本変形例に係る樹脂部293は、第1金属箔291および第2金属箔292のうちの両面に設けられている。ケース体210Fは、第5変形例と同様に、金属箔290の樹脂部293が配置される以外の金属部分においてレーザ2により接合される。
【0110】
図22は、比較例に係るセパレータが備える金属箔の表面に位置する樹脂部同士が接合される状態を示す断面図である。
【0111】
図22に示すように、比較例に係るケース体910が備える金属箔290には、その両面の全面に樹脂部293が設けられている。樹脂部293は、ヒーター4の熱によって樹脂部293同士を接合する。
【0112】
仮に、樹脂部293同士で接合した場合、ケース体910の温度が上昇すると、金属と比較して融点の低い樹脂部293が溶融して内部空間が曝露されるため、内部空間の真空状態が維持し難い。一方、上述の第4変形例、第5変形例および第6変形例においては、金属箔290の金属部分同士を接合しているため、ケース体の温度が上昇しても接合部分が樹脂部293同士の接合と比較して溶融しにくい。これにより、ケース体の内部空間の真空状態が維持しやすい。
【0113】
以下、本技術の一実施の形態に係る組電池の温度測定の試験結果について説明する。
図23は、本技術の一実施の形態に係る組電池の温度測定試験の構成を示す断面図である。
【0114】
図23に示すように、セパレータ200を間に挟んで3つの電池セル100の長壁面同士を対向させて一方向に並べ、拘束治具5により拘束する。拘束治具5は、複数の電池セル100の各々の上側および下側付近を拘束する。
【0115】
各電池セル100の底面は、厚さ5mm以上の金属板と密着させて設置した。金属板は、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、または鉄合金である。
【0116】
3つの電池セル100のうち、端に配置された1つの電池セル100(トリガーセル)に対して、電池セル100同士が対向していない長側壁中央部から釘6を刺し、電池セル100内部で短絡を発生させることにより、電池セル100の温度を上昇させる。
【0117】
釘6は、0.01mm/sの速度で電池セル100に刺し、その電池セル100の温度が急激に上昇した熱暴走状態になったときに移動を停止させる。その時の、トリガーセルに対して隣接した電池セル100(
図23中においては中央の電池セル)において、釘6を刺した電池セル100に対向していない側の長側壁の中央部を測定点Pとして最高温度を測定した。
【0118】
なお、この試験における環境温度は、約25℃程度の室温で行なった。また、試験前の各電池セル100の状態としては、釘6を刺す電池セル100(トリガーセル)とこれに隣接する電池セル100とは100%に充電した状態であり、他の電池セルは、0%の充電状態とした。
【0119】
また、釘6を刺す時に電池セル100が動かないように組電池を部分的に固定してもよい。電池セル100の間に配置するセパレータ200は、ケース体210のみでもよいし、ケース体210とその片面またはその両面に弾性部材270を配置した状態でもよい。
【0120】
釘6としては、たとえば株式会社ダイドーハント製の丸釘である。釘6の外径寸法はφ3mmのものを使用した。釘6の型番は、たとえば、N65を使用した。
【0121】
図24は、本技術の一実施の形態に係る組電池の温度測定試験の変形例の構成を示す断面図である。
図24に示すように、本変形例に係る電池セル100の温度測定としては、一実施の形態に係る温度測定と比較して、電池セル100の金属板に接する面以外の5面を拘束治具5Aで覆ってもよい。これにより、電池セル100の断熱性をあげて、熱をトリガーセルに与えて熱暴走状態を起こしやすくすることができる。
【0122】
なお、釘6を刺す以外の方法として、ヒーター加熱によって、電池セル100を熱暴走状態にさせる方法も挙げられる。この場合においても上記釘刺し方法のように、断熱性の高い拘束治具で覆ってもよいし、覆わなくてもよい。ただし、ヒーターの周りは、より熱をトリガーセルに与えて熱暴走状態を起こしやすくするために、断熱性の高い拘束治具で覆うのが好ましい。
【0123】
上述した電池セル100の温度測定結果を表1~表3に示す。表1~表3における比較例および実施例は、表1~表3の各々において対応している。表1~表3に示すセパレータおよび電極体の種々の特性下で電池セル100の温度測定を行ない、セパレータ200の断熱性について評価した。評価結果としては、隣接セルの測定点Pの最高温度の測定、および隣接セルの筐体の溶け具合、筐体の穴あきなどの形態変化の観察を行った。その結果は、以下のランク0からランク6に分類して評価した。
ランク0:測定点Pにおける温度上昇が50℃以下であり、時間経過に伴い温度が低下し、かつ筐体の外観形状に変化が無かったもの。
ランク1:測定点Pにおける温度上昇が50℃以上100℃以下であり、時間経過に伴い温度が低下し、かつ筐体の外観形状に変化が無かったもの。
ランク2:測定点Pにおける温度上昇が100℃以上150℃以下であり、時間経過に伴い温度が低下し、かつ筐体の外観形状に変化が無かったもの。
ランク3:測定点Pにおける温度上昇が150℃以上180℃以下であり、時間経過に伴い温度が低下し、かつ筐体の外観形状に変化が無かったもの。
ランク4:測定点Pにおける温度が200℃程度であり、時間経過に伴い温度が低下し、かつ筐体の外観形状に変化が無かったもの。
ランク5:測定点Pにおける温度が200℃以上となって、時間経過に伴い徐々に温度上昇したが、かつ筐体の外観形状に変化が無かったもの。
ランク6:測定点Pにおける温度が200℃以上となって、時間経過に伴い急激に温度上昇し、かつ筐体の外観形状に穴あきなどの変化があったもの。
【0124】
【表1】
※1 ケース:金属板製のケース体、パック:金属箔製のケース体
※2 ステンレスの型式 SUS304
真鍮の組成 Cu:Zn=60:40 (質量%)
チタン合金の組成 Ti:Al:V=90:6:4 (質量%)
※3 ケース体の幅W2に対する内部空間の幅W1の割合
【0125】
【表2】
※4 タイプ1:金属材料同士を溶融させて接着する接合方法
タイプ2:金属材料表面の樹脂部同士を溶融させて接着する接合方法
※5 配合割合 アルミナ:ポリプロピレン=86.5:13.5
【0126】
【表3】
※6:正極活物質のリチウム遷移金属複合化合物において、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有量
※7:正極活物質のリチウム遷移金属複合化合物において、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのチタンの含有量
【0127】
表1~表3に示すように、比較例1は、セパレータが、内部空間が形成された金属製のケース体を含み、ケース体の融点が電池セルの筐体の材質と同じアルミニウムの場合であって、ケース内部の空間が大気圧状態の場合である。この場合、釘刺し試験において発生した熱が隣接セルに十分伝わり、隣接セルの測定点Pの温度は、200℃を超えて急激に温度上昇し熱暴走に至り、電池セルの筐体に穴あきなどの溶融が見られた。このため、比較例1の評価は、ランク6であった。
【0128】
比較例2は、セパレータが、内部空間が形成された金属製のケース体を含み、ケース体の融点が電池セルの筐体の材質と同じアルミニウムであって、ケース体の内部空間が大気圧より減圧状態で、内部空間に固形物として粉末状のアルミナを含有した場合である。この場合、釘刺し試験において発生した熱の隣接セルへの伝熱は比較例1より遅いと考えられたが、隣接セルの測定点Pの温度は、200℃を超えて急激に温度上昇し熱暴走に至り、電池セルの筐体に穴あきなどの溶融が見られた。このため、比較例2の評価は、ランク6であった。
【0129】
比較例3は、セパレータが、内部空間が形成された金属箔製のケース体を含み、ケース体を構成する金属材料の融点が、電池セルの筐体の材質より高い銅の場合であって、ケース体の内部空間が大気圧より減圧状態で、内部空間に固形物として粉末状のアルミナを含有した場合である。この場合、隣接セルの耐熱性は向上すると考えられたが、金属材料どうしの接着方法が、金属材表面樹脂どうしで接着したものであったため、隣接セルの測定点Pの温度は、200℃を超えて急激に温度上昇し熱暴走に至り、電池セルの筐体に穴あきなどの溶融が見られた。このため、比較例3の評価は、ランク6であった。これは、セパレータの大気暴露がより早く発生したためと考えられる。
【0130】
比較例1~3に比較して、実施例1では、セパレータが、内部空間が形成された金属製のケース体の融点が895℃の真鍮の場合であって、ケース体の内部空間の圧力が大気圧未満の0.5×105Paである。この場合、隣接セルの測定点Pの温度は200℃を超えてさらに徐々に上昇を続け熱暴走に至ったが、電池セルの筐体に穴あきなどの変化はなかった。このため、実施例1の評価は、ランク5であった。
【0131】
実施例1に示すように、電池セルの間にあるセパレータが、内部空間が形成された金属製のケース体であって、ケース体の融点が、筐体の融点より高く、内部空間が大気圧未満であって、内部空間が大気暴露し難い構造の組電池は、電池セル同士の伝熱を抑制することがわかった。
【0132】
実施例2~5では、セパレータが、内部空間が形成された金属製のケース体の融点が1000℃以上の銅、ステンレス(SUS304)、チタン合金またはチタンの場合であって、ケース体の内部空間の圧力が大気圧未満の0.5×105Paである。この場合、隣接セルの測定点Pの温度は200℃程度に上昇したが、時間経過に伴い低下し、電池セルの筐体に変化がなかった。実施例2~5の評価は、ランク4であった。このように、ケース体の融点が、1000℃以上であり、内部空間が大気圧未満である場合の組電池は、電池セル同士の伝熱をより抑制することがわかった。
【0133】
実施例6~11では、セパレータが、内部空間が形成された金属製のケース体の融点が1000℃以上のチタンの場合であって、ケースの内部空間が大気圧未満の1.0×10-1Pa以上1.0×104Pa以下である。
【0134】
実施例6,7においては、隣接セルの測定点Pの温度が、50℃以下で、時間経過に伴い室温に低下し、ケース体の外観に変化はなかった。このため、実施例6,7の評価は、ランク0であった。
【0135】
実施例8,9においては、隣接セルの測定点Pの温度が、50℃以上100℃以下で、時間経過に伴い室温に低下し、ケース体の外観に変化はなかった。このため、実施例8,9の評価は、ランク1であった。
【0136】
実施例10においては、隣接セルの測定点Pの温度が、100℃以上150℃以下程度に上昇したが、時間経過に伴い室温に低下し、ケース体の外観に変化はなかった。このため、実施例10の評価は、ランク2であった。
【0137】
実施例11においては、隣接セルの測定点Pの温度が、150℃以上180℃以下程度まで上昇したが、時間経過に伴い室温に低下し、ケース体の外観に変化はなかった。このため、実施例11の評価は、ランク3であった。
【0138】
実施例6~11に示すように、ケース体の融点が、1000℃以上であって、ケース体の内部空間の圧力が1.0×10-1Pa以上1.0×104Pa以下である場合、組電池は、電池セル同士の伝熱をより抑制することがわかった。
【0139】
実施例12~18では、ケース体の内部空間を大気圧未満にした状態で、熱伝導率が50W/m・K以下の固形物の充填率を変化させて、内部空間に固形物を含有させた。固形物が粒子状である場合、その粒子径は、0.1μm以上2mm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。固形物が繊維状である場合、その繊維径は、0.1μm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.5μm以上500μm以下であることがより好ましく、0.7μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
【0140】
実施例12では、固形物の熱伝導率が36W/m・Kで、内部空間に対する固形物の充填率が70%であった。隣接セルの測定点Pの温度が200℃程度に上昇したが、時間経過に伴い低下し、電池セルの筐体の外観に変化はなかった。このため、実施例12の評価は、ランク4であった。
【0141】
実施例13,14では熱伝導率が5W/m・Kと低く、内部空間に対する固形物の充填率が70%以上75%以下であった。隣接セルの測定点Pの温度が150℃以上180℃以下程度に上昇したが、時間経過に伴い室温に低下し、電池セルの筐体の外観に変化はなかった。このため、実施例13,14の評価は、ランク3であった。
【0142】
実施例15,16では熱伝導率が5W/m・Kと低く、内部空間に対する固形物の充填率が30%以上50%以下であった。隣接セルの測定点Pの温度が100℃以上150℃以下程度に上昇したが、時間経過に伴い室温に低下し、電池セルの筐体の外観に変化はなかった。このため、実施例15,16の評価は、ランク2であった。
【0143】
実施例17,18では熱伝導率が2W/m・K以下と低く、内部空間に対する固形物の充填率が70%程度であった。隣接セルの測定点Pの温度が100℃以上150℃以下程度に上昇したが、時間経過に伴い室温に低下し、電池セルの筐体の外観に変化はなかった。このため、実施例17,18の評価は、ランク2であった。
【0144】
実施例10~21、および実施例22~24では、正極活物質のリチウム遷移金属複合酸化物において、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有量が88mol%、および82mol%の場合である。
【0145】
当該ニッケル含有量を70mol%より多くした場合、実施例10,19および実施例17,22において評価ランクの低下がみられた。しかし、正極活物質のチタンの添加量を増やすと、実施例20,21および実施例23,24においてランクの良化が見られた。またチタンは、正極活物質の結晶構造内の元素との置換や、活物質表面上を被覆したりして存在していると考えられる。
【0146】
本技術の一実施の形態に係る組電池10においては、セパレータ200が備える金属製のケース体210を電池セル100の筐体120より高い融点で構成し、大気圧未満の状態にした内部空間260をケース体210に設けることによって、セパレータ200の断熱性を向上させることができる。これにより、一実施の形態に係る組電池10においては、セパレータ200を樹脂製で構成する場合と比較して、電池セル100同士の伝熱を抑制することができる。なお、この組電池10の構成は、仮に1つの電池セルが高温になった場合における他の電池セルへの伝熱を抑制するときに特に効果がある。また、この組電池10の構成は、高容量の電池セルの場合に電池セルの発熱量が大きくなるため、特に効果がある。
【0147】
本技術の一実施の形態に係る組電池10においては、セパレータ200が備える金属製のケース体210を1000℃以上の融点で構成し、大気圧未満の状態にした内部空間260をケース体210に設けることによって、セパレータ200の断熱性を向上させることができる。これにより、一実施の形態に係る組電池10においては、セパレータ200を樹脂製で構成する場合と比較して、電池セル100同士の伝熱を抑制することができる。
【0148】
本技術の一実施の形態に係る組電池10においては、電極体における正極活物質層のリチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのニッケルの含有比率が70mol%以上である。この場合、電池セル100は高容量であるためその発熱量が多いが、上述のセパレータ200を適用することによって、電池セル100同士の熱伝導を抑制することができる。
【0149】
本技術の一実施の形態に係る組電池10においては、電極体における正極活物質層のリチウム遷移金属複合酸化物にチタンを含有している。この場合、電池セル100は高容量であるためその発熱量が多いが、上述のセパレータ200を適用することによって、電池セル100同士の熱伝導を抑制することができる。
【0150】
本技術の一実施の形態に係る組電池10においては、電極体における正極活物質層のリチウム遷移金属複合酸化物における、リチウム以外の金属元素の合計を100mol%としたときのチタンの含有比率は、0.1mol%以上5mol%以下である。この場合、電池セル100は高容量であるためその発熱量が多いが、上述のセパレータ200を適用することによって、電池セル100同士の熱伝導を抑制することができる。
【0151】
本技術の一実施の形態に係る組電池10においては、内部空間260の圧力をケース体210に外力がかかっていない状態で、1.0×10-1Pa以上1.0×104Pa以下にする。これにより、内部空間260の圧力を断熱するための適切な範囲にすることによって、セパレータ200の断熱性を確保しやすくすることができる。
【0152】
本技術の一実施の形態に係る組電池10においては、ケース体210の材質は、銅、銅合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金およびそれらの組合せからなる群から選ばれた材質からなることによって、電池セル100の筐体120より高い融点を構成しやすくすることができる。また、ケース体210の強度を確保して、内部空間260を大気圧未満にすることよる引力に抗いやすくすることができる。
【0153】
なお、上述したように、本実施の形態における電池は、複数の電池セル100を含む電池モジュール1を外装体の内部に収容する構造(Cell-Module-Pack構造)を示したが、この構成に限定されない。電池は、外装体の側壁部により複数の電池セル100を直接支持する構造(Cell-to-Pack構造)であってもよい。
【0154】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0155】
1 電池モジュール、2 レーザ、3 真空容器、4 ヒーター、5,5A 拘束治具、6 釘、10 組電池、20 エンドプレート、30 拘束部材、40 クーリングプレート、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、121 封口板、122 底面、123 一対の長側壁、124 一対の短側壁、130 ガス排出弁、140 電極体、150 正極板、151 正極芯体、152 正極活物質層、160 負極板、161 負極芯体、162 負極活物質層、170 極板間セパレータ、200,200C セパレータ、210,210A,210B,210C,210D,210E,210F,910 ケース体、220 第1側面部、230 第2側面部、240,240A,240B,240C 上部、241,241A,241B 接合部、242,242A,242B 孔部、250 下部、260,260A,260B,260C,260D 内部空間、261C,261D 固形物、270 弾性部材、280 封止部材、290 金属箔、291 第1金属箔、292 第2金属箔、293 樹脂部、G 隙間、P 測定点。