(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162051
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】軌跡情報収集装置、軌跡情報収集方法及び軌跡情報収集用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241114BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/09 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077222
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181BB20
5H181EE11
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】異常な軌跡となる車両の走行軌跡に関する情報を収集することが可能な軌跡情報収集装置を提供する。
【解決手段】軌跡情報収集装置は、車両2が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定する判定部43と、走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成し、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標、及び所定の区間におけるドライバによる車両2の操作量を表す操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する軌跡情報生成部44と、生成した軌跡情報を、車両2に搭載された通信装置23を介してサーバ4へ送信する通信処理部45とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定する判定部と、
前記走行軌跡が前記標準走行範囲に含まれる場合、前記走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで前記軌跡情報を生成し、前記走行軌跡が前記標準走行範囲から外れる場合、前記走行軌跡上の個々の位置の座標、及び前記所定の区間における前記車両のドライバによる前記車両の操作量を表す操作量情報を前記軌跡情報に含めることで前記軌跡情報を生成する軌跡情報生成部と、
前記軌跡情報を、前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する通信処理部と、
を有する軌跡情報収集装置。
【請求項2】
前記所定の区間における基準走行軌跡を表す情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記判定部は、前記走行軌跡上の何れかの位置において前記走行軌跡と前記基準走行軌跡間の乖離量が前記標準走行範囲に相当する所定の許容距離よりも大きくなる場合、前記走行軌跡が前記標準走行範囲から外れると判定する、請求項1に記載の軌跡情報収集装置。
【請求項3】
前記車両に搭載されたカメラにより得られた画像から、前記所定の区間において前記車両が走行した車線を区画する車線区画線を検出する検出部をさらに有し、
前記判定部は、前記車線区画線に基づいて前記標準走行範囲を設定する、請求項1に記載の軌跡情報収集装置。
【請求項4】
前記車両に搭載されたセンサにより得られた、前記車両の周囲の状況を表すセンサ信号から、前記所定の区間を前記車両が走行しているときに前記車両の周囲を走行する他の車両を検出し、前記車両に対する検出された前記他の車両の相対的な位置関係を推定する車両検出部をさらに有し、
前記軌跡情報生成部は、前記走行軌跡が前記標準走行範囲から外れる場合、前記走行軌跡上の何れかの位置における、前記車両に対する検出された前記他の車両の相対的な位置関係を表す相対位置情報を前記軌跡情報に含める、請求項1~3の何れか一項に記載の軌跡情報収集装置。
【請求項5】
車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定し、
前記走行軌跡が前記標準走行範囲に含まれる場合、前記走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで前記軌跡情報を生成し、
前記走行軌跡が前記標準走行範囲から外れる場合、前記走行軌跡上の個々の位置の座標、及び前記所定の区間における前記車両のドライバによる前記車両の操作量を表す操作量情報を前記軌跡情報に含めることで前記軌跡情報を生成し、
前記軌跡情報を、前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、
ことを含む軌跡情報収集方法。
【請求項6】
車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定し、
前記走行軌跡が前記標準走行範囲に含まれる場合、前記走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで前記軌跡情報を生成し、
前記走行軌跡が前記標準走行範囲から外れる場合、前記走行軌跡上の個々の位置の座標、及び前記所定の区間における前記車両のドライバによる前記車両の操作量を表す操作量情報を前記軌跡情報に含めることで前記軌跡情報を生成し、
前記軌跡情報を、前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、
ことをコンピュータに実行させるための軌跡情報収集用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行した軌跡を表す情報を収集する軌跡情報収集装置、軌跡情報収集方法及び軌跡情報収集用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図に含める情報の一つとして、個々の道路区間において車両が走行可能な範囲を示すデータを生成する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された地図データ生成装置は、第1車線の開始区間から第2車線の終了区間までの跨り走行軌跡データを統計処理する。そしてこの地図データ生成装置は、所定範囲から外れる跨り走行軌跡データを除外した上で実際に車両が自動運転機能や運転支援機能を用いて走行する際の走行可能範囲を示す走行可能範囲データを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が実際に走行したときの走行軌跡は、その車両の周囲の状況に影響される。そのため、場合によっては、車両の走行軌跡は、車両が走行中の車線から逸脱するような異常な軌跡となることがある。このような異常な走行軌跡に関しては、通常の走行軌跡と区別して収集できることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、異常な軌跡となる車両の走行軌跡に関する情報を収集することが可能な軌跡情報収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、基準情報収集装置が提供される。この軌跡情報収集装置は、車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定する判定部と、走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成し、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標、及び所定の区間におけるドライバによる車両の操作量を表す操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する軌跡情報生成部と、生成した軌跡情報を、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する通信処理部とを有する。
【0008】
この軌跡情報収集装置は、所定の区間における基準走行軌跡を表す情報を記憶する記憶部をさらに有することが好ましい。そして判定部は、走行軌跡上の何れかの位置において走行軌跡と基準走行軌跡間の乖離量が標準走行範囲に相当する所定の許容距離よりも大きくなる場合、走行軌跡が標準走行範囲から外れると判定することが好ましい。
【0009】
あるいは、この軌跡情報収集装置は、車両に搭載されたカメラにより得られた画像から、所定の区間において車両が走行した車線を区画する車線区画線を検出する検出部をさらに有することが好ましい。そして判定部は、検出された車線区画線に基づいて標準走行範囲を設定することが好ましい。
【0010】
あるいはまた、この軌跡情報収集装置は、車両に搭載されたセンサにより得られた車両の周囲の状況を表すセンサ信号から、所定の区間を車両が走行しているときに車両の周囲を走行する他の車両を検出し、車両に対する検出された他の車両の相対的な位置関係を推定する車両検出部をさらに有することが好ましい。そして軌跡情報生成部は、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、走行軌跡上の何れかの位置における、車両に対する検出された他の車両の相対的な位置関係を表す相対位置情報を軌跡情報に含めることが好ましい。
【0011】
他の実施形態によれば、軌跡情報収集方法が提供される。この軌跡情報収集方法は、車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定し、走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成し、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標、及び所定の区間におけるドライバによる車両の操作量を表す操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成し、生成した軌跡情報を、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、ことを含む。
【0012】
さらに他の実施形態によれば、軌跡情報収集用コンピュータプログラムが提供される。この軌跡情報収集用コンピュータプログラムは、車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定し、走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成し、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標、及び所定の区間におけるドライバによる車両の操作量を表す操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成し、生成した軌跡情報を、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、ことをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る軌跡情報収集装置は、異常な軌跡となる車両の走行軌跡に関する情報を収集することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】軌跡情報収集装置が実装される軌跡情報収集システムの概略構成図である。
【
図3】一つの実施形態による軌跡情報収集装置のハードウェア構成図である。
【
図4】軌跡情報収集装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図5】(a)及び(b)は、それぞれ、収集される走行軌跡の一例を示す図である。
【
図6】軌跡情報収集処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、軌跡情報収集装置、及び、軌跡情報収集装置にて実行される軌跡情報収集方法ならびに軌跡情報収集用コンピュータプログラムについて説明する。この軌跡情報収集装置は、車両に搭載され、車両が所定の区間を走行したときの車両の走行軌跡を表す軌跡情報を生成し、その軌跡情報をサーバへアップロードする。特に、この軌跡情報収集装置は、車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定する。そしてこの軌跡情報収集装置は、走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する。一方、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、この軌跡情報収集装置は、走行軌跡上の個々の位置の座標、及び所定の区間におけるドライバによる車両の操作量を表す操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する。
【0016】
図1は、軌跡情報収集装置が実装される軌跡情報収集システムの概略構成図である。本実施形態では、軌跡情報収集システム1は、少なくとも一つの車両2に搭載された軌跡情報収集装置3と、サーバ4とを有する。軌跡情報収集装置3は、例えば、サーバ4が接続される通信ネットワーク5とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局6にアクセスすることで、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ4と接続される。なお、
図1では、一つの車両2のみが図示されているが、軌跡情報収集システム1は、軌跡情報収集装置3が搭載された車両2を複数有してもよい。同様に、複数の無線基地局6が通信ネットワーク5に接続されていてもよい。
【0017】
以下、車両2及び軌跡情報収集装置3について説明する。上記のように、軌跡情報収集システム1には、軌跡情報収集装置3が搭載された車両2が複数含まれてもよいが、軌跡情報収集処理に関して各車両2及び各軌跡情報収集装置3は同じ構成を有し、かつ同じ処理を実行すればよい。そこで、以下では、一つの車両2及び一つの軌跡情報収集装置3について説明する。
【0018】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、車両2の周囲を撮影するためのカメラ21と、GPS受信機22と、無線通信端末23と、車両制御装置(ECU)24と、軌跡情報収集装置3とを有する。カメラ21、GPS受信機22、無線通信端末23、ECU24及び軌跡情報収集装置3は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。また、車両2は、LiDARセンサといった、車両2の周囲の物体までの距離を測定するための測距センサ(図示せず)をさらに有してもよい。
【0019】
カメラ21は、車両2の周囲の状況を検知するセンサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ21は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ21は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ21により得られた画像は、車両2の周囲の状況を表すセンサ信号の一例であり、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ21が設けられてもよい。
【0020】
カメラ21は、画像を生成する度に、生成した画像を、その生成時刻とともに車内ネットワークを介して軌跡情報収集装置3へ出力する。
【0021】
GPS受信機22は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機22は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、その生成時刻とともに車内ネットワークを介して軌跡情報収集装置3へ出力する。なお、車両2は、GPS受信機22以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0022】
無線通信端末23は、通信装置の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局6にアクセスすることで、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ4と接続される。すなわち、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介して、無線通信端末23とサーバ4間に通信回線が確立される。そして無線通信端末23は、サーバ4から受信した、軌跡情報の収集対象となる区間を含む収集対象領域を表す情報を含むダウンリンクの無線信号を受信し、受信した情報を軌跡情報収集装置3へ出力する。また、無線通信端末23は、軌跡情報収集装置3から受け取った軌跡情報を含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末23は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局6へ送信することで、軌跡情報をサーバ4へ送信する。
【0023】
ECU24は、ドライバによる操作に従って車両2の各部を制御する。さらに、ECU24は、所定の周期ごとに、ドライバによる車両2の操作量を表す操作量情報を、軌跡情報収集装置3へ出力する。操作量情報には、ステアリングの操舵角、アクセル開度及びブレーキ操作量の少なくとも一つと、その操作量情報に表されるドライバの操作量が検出された時刻が含まれる。
【0024】
図3は、軌跡情報収集装置3のハードウェア構成図である。軌跡情報収集装置3は、車両2が所定の区間を走行したときの走行軌跡を表す軌跡情報を生成し、生成した軌跡情報を、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。そのために、軌跡情報収集装置3は、通信インターフェース31と、メモリ32と、プロセッサ33とを有する。
【0025】
通信インターフェース31は、車内通信部の一例であり、軌跡情報収集装置3を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース31は、車内ネットワークを介して、カメラ21、GPS受信機22、無線通信端末23及びECU24と接続される。そして通信インターフェース31は、カメラ21から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ33へわたす。また、通信インターフェース31は、GPS受信機22から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ33へわたす。さらに、通信インターフェース31は、無線通信端末23から、収集対象領域を表す情報といったサーバ4からの情報を受信する度に、その情報をプロセッサ33へわたす。さらにまた、通信インターフェース31は、ECU24から操作量情報を受け取る度に、その操作量情報をプロセッサ33へわたす。さらにまた、通信インターフェース31は、プロセッサ33から受け取った、軌跡情報などを、車内ネットワークを介して無線通信端末23へ出力する。
【0026】
メモリ32は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ32は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ32は、軌跡情報収集装置3のプロセッサ33により実行される軌跡情報収集に関連する処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ32は、車両2の識別情報、カメラ21の焦点距離、撮影方向、設置位置といったカメラ21のパラメータ、及び、カメラ21から受信した画像から、車線区画線及び他の車両といった検出対象物を検出するための識別器を特定するための各種パラメータなどを記憶する。また、メモリ32は、カメラ21から受信した画像、GPS受信機22から受信した測位情報、ECU24から受信した操作量情報、及び、それらの生成時刻などを一時的に記憶する。さらに、メモリ32は、収集対象領域を表す情報を記憶する。なお、収集対象領域を表す情報には、所定の区間の位置及び範囲を示す情報(例えば、所定の区間の各端点の座標)が含まれる。さらに、メモリ32は、車線区画線など、車両2の位置の検出に利用される地物を表す高精度地図を記憶してもよい。さらに、メモリ32は、基準走行軌跡を表す情報及び標準走行範囲を表す情報を記憶してもよい。さらにまた、メモリ32は、プロセッサ33で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。
【0027】
プロセッサ33は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ33は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ33は、車両2が走行している間、軌跡情報収集処理を実行する。また、プロセッサ33は、カメラ21から画像を受け取る度に、その画像をその生成時刻とともにメモリ32に保存する。さらに、プロセッサ33は、GPS受信機22から測位情報を受け取る度に、その測位情報をその生成時刻とともにメモリ32に保存する。さらにまた、プロセッサ33は、ECU24から操作量情報を受け取る度に、その操作量情報をメモリ32に保存する。
【0028】
図4は、軌跡情報収集装置3のプロセッサ33の機能ブロック図である。プロセッサ33は、検出部41と、車両検出部42と、判定部43と、軌跡情報生成部44と、通信処理部45とを有する。プロセッサ33が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ33上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ33が有するこれらの各部は、プロセッサ33に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0029】
プロセッサ33は、車両2が所定の区間に進入したか否か判定する。そして車両2が所定の区間に進入すると、軌跡情報収集処理を実行する。所定の区間は、収集対象領域に含まれる道路区間とすることができる。所定の区間は、例えば、カーブ区間、交差点、合流地点または分岐地点を含む区間とすることができる。ただし、所定の区間はこれらの区間に限られず、単なる直線の区間であってもよい。
【0030】
プロセッサ33は、最新の測位情報で示される車両2の現在位置が、収集対象領域を表す情報で示される、所定の区間に含まれるか否か判定する。そして、収集対象領域を表す情報に含まれる、所定の区間の範囲に車両2の現在位置が含まれていれば、プロセッサ33は車両2が所定の区間に進入したと判定して、軌跡情報収集処理を実行すればよい。
【0031】
検出部41は、所定の区間において車両2が走行した車線(以下、自車線と呼ぶことがある)を区画する車線区画線を検出する。そのために、検出部41は、車両2が所定の区間に進入すると、所定の周期ごとに、カメラ21により得られた最新の画像を、車線区画線を検出するように予め学習された識別器に入力することで車線区画線を検出する。そして検出部41は、画像上の車両2の左右それぞれに相当する領域内で車両2に最も近い位置で検出された車線区画線を、自車線を区画する車線区画線とする。
【0032】
さらに、検出部41は、画像を上記の識別器に入力することで、車線区画線以外の所定の地物を画像から検出してもよい。検出された所定の地物は、車両2の位置を正確に検出するために用いられる。所定の地物には、例えば、縁石、ガードレール、道路標識、及び、一時停止線といった車線区画線以外の道路標示の少なくとも何れかが含まれる。
【0033】
検出部41は、識別器として、Single Shot MultiBox Detector、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、検出部41は、識別器として、Fully Convolutional NetworkあるいはU-Netといった、セマンティックセグメンテーション用のDNNを用いてもよい。あるいは、検出部41は、識別器として、Vision Transformerといった、self attention network(SAN)型のアーキテクチャを有するDNNを用いてもよい。あるいはまた、検出部41は、識別器として、AdaBoost識別器といった、他の機械学習手法に基づく識別器を用いてもよい。このような識別器は、画像から検出対象となる車線区画線などの地物を検出するように、その地物が表された多数の教師画像を用いて誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予め学習される。そして識別器は、入力された画像上で検出対象となる地物が含まれる物体領域を表す情報、及び、物体領域に表された地物の種類を表す情報を出力する。
【0034】
検出部41は、検出された地物の画像上での位置及び種類を判定部43へ通知する。
【0035】
車両検出部42は、車両2の周囲を走行する他の車両(以下では、説明の便宜上、周辺車両と呼ぶことがある)を検出する。そのために、車両検出部42は、車両2が所定の区間に進入すると、所定の周期ごとに、カメラ21により得られた最新の画像を、周辺車両を検出するように予め学習された識別器に入力することで周辺車両を検出する。
【0036】
車両検出部42は、そのような識別器として、検出部41が車線区画線などを検出するために用いる識別器と同様の識別器を利用することができる。なお、検出部41が利用する識別器が周辺車両も検出するように予め学習されてもよい。この場合には、検出部41と車両検出部42とは一体的に構成される。
【0037】
また、車両2が測距センサを有する場合、車両検出部42は、測距センサにより得られた測距信号を識別器に入力することで周辺車両を検出してもよい。なお、測距センサは、車両2の周囲の状況を検知するセンサの他の一例であり、測距信号は、車両2の周囲の状況を表すセンサ信号の他の一例である。この場合も、車両検出部42は、識別器として、CNN型あるいはSAN型のアーキテクチャを有するDNN、あるいは、サポートベクトルマシンといった他の機械学習手法に基づく識別器を用いることができる。
【0038】
車両検出部42は、周辺車両が検出されると、車両2と周辺車両間の相対的な位置関係を表す相対位置情報をもとめる。本実施形態では、相対位置情報には、車両2と周辺車両間の距離及び車両2から周辺車両への方位が含まれる。ここで、画像上で周辺車両が表された物体領域の下端の位置は、カメラ21から見た、周辺車両が路面に接している位置への方位を表していると想定される。そこで、車両検出部42は、画像上での周辺車両が表された物体領域の下端の位置と、カメラ21の撮影方向、焦点距離及び設置高さといったパラメータとに基づいて、車両2と周辺車両間の距離を推定することができる。さらに、車両検出部42は、画像上での周辺車両が表された物体領域の重心位置に対応するカメラ21からの方位を、車両2から周辺車両への方位とすればよい。また、車両2に測距センサが搭載されている場合には、車両検出部42は、画像生成時において測距センサにより得られた測距信号に示される、画像上での周辺車両が表された物体領域の重心位置に対応する方位について測定された距離を、車両2と周辺車両間の距離として推定してもよい。あるいは、測距信号に基づいて周辺車両が検出されている場合には、車両検出部42は、その測距信号に表される、周辺車両が表された方位について測定された距離を、車両2と周辺車両間の距離として推定してもよい。
【0039】
なお、複数の周辺車両が検出されている場合、車両検出部42は、周辺車両ごとに上記の処理を行って、周辺車両ごとに相対位置情報をもとめればよい。
【0040】
車両検出部42は、個々の周辺車両についてもとめた相対位置情報を軌跡情報生成部44へ通知する。
【0041】
判定部43は、車両2が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定する。そのために、判定部43は、車両2が所定の区間から退出すると、車両2が所定の区間を走行している間の走行軌跡を特定する。なお、判定部43は、最新の測位情報で示される車両2の位置と、所定の区間とを比較することで、車両2が所定の区間から退出したか否かを判定すればよい。以下では、所定の区間における車両2の走行軌跡を、単に走行軌跡と呼ぶことがある。
【0042】
判定部43は、車両2のオドメトリ情報を、ECU24から取得して、各画像の生成間隔ごとの車両2の移動量及び向きの変位量を求める。そして判定部43は、各画像から検出された地物及び各画像の生成間隔ごとの車両2の移動量及び向きの変位量に基づいて、いわゆるStructure from Motion(SfM)の手法に従って、各画像生成時の車両2の位置を推定する。そして判定部43は、各画像生成時の車両2の推定位置の座標を時間順に並べることで、車両2の走行軌跡をもとめる。
【0043】
また、メモリ32に高精度地図が記憶されている場合には、判定部43は、各画像から検出された地物に基づいて各画像と高精度地図とを照合することで、各画像生成時における車両2の位置を検出してもよい。この場合、判定部43は、車両2の位置及び向きを仮定して、画像から検出された地物を高精度地図上に投影するか、あるいは、高精度地図に表された車両2の周囲の地物を画像上に投影する。そして判定部43は、画像から検出された地物と高精度地図上に表された地物とが最も一致するときの車両2の位置及び向きを、車両2の実際の位置及び向きとして検出する。
【0044】
この場合、判定部43は、仮定される車両2の位置及び向きと、焦点距離、設置高さ、及び、撮影方向といった、カメラ21のパラメータとを用いて、高精度地図上または画像上で地物が投影される位置を決定すればよい。なお、車両2の位置及び向きの初期値として、最新の測位情報で表される車両2の位置、あるいは、前回の車両2の位置の検出時に推定された車両2の位置及び向きを、オドメトリ情報を用いて補正した位置が利用される。そして判定部43は、画像から検出された地物と高精度地図上に表された対応する地物との一致度合(例えば、対応する地物同士の距離の2乗和の逆数)を算出する。判定部43は、仮定される車両2の位置及び向きを変更しながら上記の処理を繰り返す。そして判定部43は、一致度合が最大となるときの仮定された位置及び向きを、車両2の実際の位置及び向きとして検出すればよい。
【0045】
なお、測位情報で示される車両2の位置の精度が十分であれば、判定部43は、測位情報で示される車両2の位置の座標を時間順に並べることで車両2の走行軌跡をもとめてもよい。
【0046】
判定部43は、求めた走行軌跡と、標準走行範囲とを比較する。標準走行範囲は、道路法規に違反せず、かつ、車両2自体及び周辺車両に対して危険を生じさせないように車両2が走行した場合に車両2が通ると想定される範囲とすることができる。例えば、標準走行範囲は、自車線を区画する2本の車線区画線の間に含まれるように設定される。また、所定の区間が交差点を含む区間である場合には、標準走行範囲は、その交差点の前後で車線を跨がないように設定されることが好ましい。
【0047】
判定部43は、検出部41により検出された、自車線を区画する2本の車線区画線に基づいて標準走行範囲を設定する。この場合、判定部43は、カメラ21の設置高さ、焦点距離及び撮影方向などのカメラ21のパラメータと、それら車線区画線が検出された画像が生成されたときの車両2の位置及び向きとに基づいて、実空間におけるそれら車線区画線の位置をもとめる。なお、判定部43は、車両2が所定の区間を走行している間に生成された各画像について上記処理を実行して、各画像から検出され、かつ実空間に投影されたそれら車線区画線をつなげることで、所定の区間全体にわたって実空間におけるそれら車線区画線の位置をもとめればよい。そして判定部43は、自車線を区画する2本の車線区画線の間に含まれ、かつ、それら車線区画線よりも所定の安全距離(例えば、数10cm~2m)だけ自車線の内側の位置を標準走行範囲の境界とするように標準走行範囲を設定する。
【0048】
なお、メモリ32に高精度地図が記憶されている場合、判定部43は、検出部41により検出された車線区画線の代わりに、高精度地図に表される、所定の区間における車線区画線を用いることで標準走行範囲を設定してもよい。この場合、判定部43は、高精度地図に表される、所定の区間における個々の車線のうち、車両2が所定の区間に進入したときの車両2の位置を含む車線を自車線とすればよい。
【0049】
判定部43は、設定した標準走行範囲と、車両2の走行軌跡とを比較することで、車両2の走行軌跡が標準走行範囲に含まれるか否か判定する。そして判定部43は、所定の区間全体にわたって走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、走行軌跡は標準走行範囲に含まれると判定する。一方、所定の区間中の何れかの位置にて走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、判定部43は、走行軌跡が標準走行範囲から外れると判定する。
【0050】
また、高精度地図には、所定の区間における個々の車線についての基準走行軌跡を表す情報が含まれてもよい。個々の車線についての基準走行軌跡は、何らかの特別な事情が無い限り、車両がその車線を走行する際に通る標準的な軌跡である。例えば、基準走行軌跡は、その車線を実際に走行した車両の複数の走行軌跡を平均化したものとして設定される。あるいは、基準走行軌跡は、その車線の中心を通るように設定されてもよい。
【0051】
この場合、個々の車線の標準走行範囲は、その車線の基準走行軌跡を中心とし、かつ、基準走行軌跡から所定の許容距離以内の範囲とすることができる。個々の車線における許容距離は、その車線の基準走行軌跡からその車線を区画する車線区画線までの幅よりも所定の安全距離だけ短い距離に設定される。したがって、判定部43は、走行軌跡上の個々の位置において、その位置から基準走行軌跡までの距離をその位置における走行軌跡と基準走行軌跡間の乖離量として算出する。そして判定部43は、走行軌跡上の何れの位置においても乖離量が許容距離以下であれば、走行軌跡は標準走行範囲に含まれると判定する。一方、走行軌跡上の何れかの位置において、乖離量が許容距離よりも大きくなれば、判定部43は、走行軌跡は標準走行範囲から外れると判定する。
【0052】
判定部43は、車両2の走行軌跡に含まれる個々の位置の座標、及び、車両2がその個々の位置にいるときの時刻(すなわち、個々の位置が検出されたときに対応する画像生成時刻または測位情報の生成時刻)を軌跡情報生成部44へ通知する。さらに、判定部43は、走行軌跡が標準走行範囲に含まれるか否かの判定結果を軌跡情報生成部44へ通知する。
【0053】
軌跡情報生成部44は、車両2が所定の区間を走行したときの走行軌跡を表す軌跡情報を生成する。本実施形態では、走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、軌跡情報生成部44は、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する。一方、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、軌跡情報生成部44は、走行軌跡上の個々の位置の座標とともに、その個々の位置における操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する。この場合、軌跡情報生成部44は、走行軌跡上の個々の位置について、その位置に車両2が存在するときの時刻に最も近い時刻の操作量情報を、その位置における操作量情報とする。これにより、車両2の走行軌跡が標準走行範囲から外れるような異常な軌跡となった要因を特定することが可能となる。なお、軌跡情報生成部44は、走行軌跡上の個々の位置と関連付けずに、車両2が所定の区間に進入した時から所定の区間を退出するまでの期間に得られた操作量情報を軌跡情報に含めてもよい。
【0054】
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ、収集される走行軌跡の一例を示す図である。
図5(a)に示される例では、走行軌跡501は、標準走行範囲510内に含まれている。そのため、走行軌跡501上の個々の位置の座標が軌跡情報に含められる。
【0055】
これに対して、
図5(b)に示される例では、走行軌跡502は、標準走行範囲510から外れているところがある。そのため、走行軌跡502上の個々の位置の座標だけでなく、それら個々の位置における操作量情報も軌跡情報に含められる。
【0056】
さらに、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、軌跡情報生成部44は、軌跡情報に、走行軌跡が標準走行範囲から外れたことを示すフラグ、標準走行範囲を表す情報、及び、走行軌跡が標準走行範囲から外れた位置の座標の少なくとも何れかを含めてもよい。
【0057】
さらにまた、プロセッサ33は、車両2が所定の区間に進入した時から所定の区間を退出するまでの期間において、ECU24から、車両2の速度及び加減速度を表す情報を受け取ってもよい。そして軌跡情報生成部44は、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、その期間における車両2の速度及び加減速度の少なくとも一方を軌跡情報に含めてもよい。これにより、車両2の走行軌跡が標準走行範囲から外れるような異常な軌跡となったときの車両2の挙動を解析することが可能となる。
【0058】
さらに、軌跡情報生成部44は、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、車両2が所定の区間を走行している期間における、車両検出部42により検出された周辺車両と車両2間の相対位置情報を軌跡情報に含めてもよい。これにより、車両2の走行軌跡が異常な軌跡となった要因が周辺車両と車両2間の相対的な位置関係に起因するものか否かを判定することが可能となる。
【0059】
軌跡情報生成部44は、生成した軌跡情報を通信処理部45へわたす。
【0060】
通信処理部45は、軌跡情報を受け取ると、その軌跡情報を、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。なお、通信処理部45は、車両2が所定の区間から退出した直後に軌跡情報を送信してもよいが、そのタイミングに限られず、他のタイミングで軌跡情報を送信してもよい。例えば、通信処理部45は、車両2のイグニッションスイッチがオフにされたタイミングに軌跡情報を送信してもよい。
【0061】
さらに、通信処理部45は、所定の区間を車両2が走行している間に生成された一連の画像、あるいはそれら一連の画像のそれぞれから切り出された部分画像を、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信してもよい。さらにまた、通信処理部45は、所定の区間を車両2が走行している間に生成された一連の画像のそれぞれから検出された、車線区画線などの所定の地物を表すデータを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信してもよい。
【0062】
図6は、軌跡情報収集処理の動作フローチャートである。プロセッサ33は、車両2が所定の区間に進入すると、以下の動作フローチャートに従って軌跡情報収集処理を実行する。
【0063】
プロセッサ33の検出部41は、自車線を区画する車線区画線を検出する(ステップS101)。また、プロセッサ33の車両検出部42は、周辺車両を検出する(ステップS102)。
【0064】
プロセッサ33の判定部43は、車両2が所定の区間から退出したか否か判定する(ステップS103)。車両2が所定の区間から退出していなければ(ステップS103-No)、プロセッサ33は、ステップS101以降の処理を繰り返す。
【0065】
一方、車両2が所定の区間から退出すると(ステップS103-Yes)、判定部43は、車両2が所定の区間を走行している間の走行軌跡を特定する(ステップS104)。さらに、判定部43は、自車線を区画する車線区画線に基づいて標準走行範囲を設定する(ステップS105)。なお、判定部43が高精度地図を利用可能な場合には、判定部43は、高精度地図に基づいて標準走行範囲を設定してもよい。そして判定部43は、車両2の走行軌跡が標準走行範囲に含まれるか否か判定する(ステップS106)。
【0066】
車両2の走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合(ステップS106-Yes)、プロセッサ33の軌跡情報生成部44は、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する(ステップS107)。一方、車両2の走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合(ステップS106-No)、軌跡情報生成部44は、走行軌跡上の個々の位置の座標とともに、その個々の位置における操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する(ステップS108)。なお、ステップS108において、上述したように、軌跡情報生成部44は、軌跡情報に、車両2の速度または加減速度といった車両2の挙動を表す情報、または、車両2と周辺車両間の相対位置情報を含めてもよい。
【0067】
ステップS107またはステップS108の後、プロセッサ33の通信処理部45は、軌跡情報を、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する(ステップS109)。そしてプロセッサ33は、軌跡情報収集処理を終了する。
【0068】
サーバ4は、各車両2の軌跡情報収集装置3から受信した軌跡情報に基づいて、高精度地図を生成または更新する。例えば、サーバ4のプロセッサは、所定の区間について、車線ごとに、標準走行範囲に含まれる複数の走行軌跡を平均化することで、所定の区間のその車線についての基準走行軌跡をもとめる。そしてサーバ4のプロセッサは、車線ごとにもとめた基準走行軌跡を表す情報を高精度地図に含める。さらに、サーバ4のプロセッサは、所定の区間の車線ごとに、標準走行範囲から外れた走行軌跡を表す情報を高精度地図に含めてもよい。さらにまた、サーバ4のプロセッサは、標準走行範囲から外れた走行軌跡について、軌跡情報に含まれる操作量情報を解析してもよい。
【0069】
以上に説明してきたように、この軌跡情報収集装置は、車両が所定の区間を走行したときの走行軌跡が所定の標準走行範囲に含まれるか否か判定する。そしてこの軌跡情報収集装置は、走行軌跡が標準走行範囲に含まれる場合、走行軌跡上の個々の位置の座標を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する。一方、走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合、この軌跡情報収集装置は、走行軌跡上の個々の位置の座標だけでなくドライバによる車両の操作量を表す操作量情報を軌跡情報に含めることで軌跡情報を生成する。そのため、この軌跡情報収集装置は、異常な軌跡となる車両の走行軌跡に関する情報を収集することができる。さらに、この軌跡情報収集装置は、標準走行範囲に含まれる正常な走行軌跡については余分な情報を軌跡情報に含めないことで、サーバへ送信されるデータ量が無用に増大することを抑制できる。
【0070】
変形例によれば、軌跡情報生成部44が、車両2の走行軌跡が標準走行範囲から外れる場合でも、軌跡情報に車両2と周辺車両間の相対位置情報を含めない場合、車両検出部42の処理は省略されてもよい。さらに、標準走行範囲が高精度地図に基づいて設定され、かつ、車線区画線が車両2の位置の検出に利用されない場合、検出部41の処理も省略されてもよい。
【0071】
上記の各実施形態または変形例による軌跡情報収集装置のプロセッサが有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。なお、コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリとすることができる。
【0072】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
1 軌跡情報収集システム
2 車両
21 カメラ
22 GPS受信機
23 無線通信端末
24 ECU
3 軌跡情報収集装置
31 通信インターフェース
32 メモリ
33 プロセッサ
41 検出部
42 車両検出部
43 判定部
44 軌跡情報生成部
45 通信処理部
4 サーバ
5 通信ネットワーク
6 無線基地局