(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162053
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】アカモク抽出物を含む毛髪改善剤及びその製造方法並びに毛髪改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9711 20170101AFI20241114BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K8/9711
A61Q5/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077225
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】593053335
【氏名又は名称】リファインホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】坪井 誠
(72)【発明者】
【氏名】大久保 正峻
(72)【発明者】
【氏名】濱本 祥吾
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC172
4C083AC312
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD132
4C083CC31
4C083CC38
4C083EE28
4C083EE29
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】主として海藻由来成分のみを用いて、非常に良好な毛髪の水分量、櫛通り、毛髪ツヤを与えることのできる毛髪改善剤及び毛髪改善用化粧料を提供する。
【解決手段】アカモク抽出物を有効成分として含む、毛髪の保湿性、ツヤ及び/又は櫛通りを改善するための毛髪改善剤。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカモク抽出物を有効成分として含む、毛髪改善剤。
【請求項2】
前記アカモク抽出物が、1価の陽イオンで塩化された硫酸化多糖類塩を含む請求項1に記載の毛髪改善剤。
【請求項3】
前記アカモク抽出物が、水と有機溶媒との混合溶液に溶解しうる、分子量50kDa以上の硫酸化多糖類塩を含む請求項1に記載の毛髪改善剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪改善剤を、アカモク抽出物の固形分換算で0.00001質量%~0.1質量%の量で含む毛髪改善用組成物。
【請求項5】
アカモクを、1価の陽イオンを含む熱水で抽出して抽出液を得る工程と、
前記抽出液を分画分子量50kDaの限外濾過膜で分画及び濃縮して濃縮液を得る工程と、
を含む、毛髪改善剤の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記濃縮液を乾燥し、水と有機溶媒との混合溶液に溶解する工程を含む、請求項5に記載の毛髪改善剤の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の方法で製造された毛髪改善剤と、薬理学的又は化粧学的に許容される担体と、を混合する工程を含む、毛髪改善用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アカモク抽出物を含む毛髪改善剤及びその製造方法並びに毛髪改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より、櫛ですくうときに美しく流れる黒髪は、美しさを表現するものの一つとされてきた。近年、ファッション意識の高まりから、毛髪の見た目を変化させる手法として、ヘアカラー、パーマ、ヘアアイロン、ホットカーラー等が普及している。これらの手法は毛髪を魅力的に見せるが、ヘアカラーやパーマの施術に伴う、酸やアルカリによる毛髪のpH変化や、ヘアアイロンやホットカーラーの使用に伴う高温処理は、毛髪のタンパク質変性を起こし、毛髪にダメージを与える原因となっている。髪には自己修復力はないため、日々受けたダメージが蓄積するとパサつきや枝毛、ツヤの低下、櫛通りが悪くなるなどの悩みの原因となる。
【0003】
従来、このようなダメージ感を補うため、シリコーン等を配合することが行われていたが、かなり配合量を多くしないとその効果は十分なものではなかった。またシリコーン類は、環境負荷の一部と考えられているものもあり、環状シリコーン化合物については、水系における生態環境への懸念からEUにおいては欧州化学品規則(REACH:Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)による規制対象となっており、使用が制限されるものであった。
【0004】
毛髪洗浄剤組成物中のコンディショニング成分であるシリコーンの髪への吸着量を向上させるために、毛髪洗浄剤組成物に、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、フコイダンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子を含有させることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの海藻成分、例えば、フコイダンをそのまま毛髪用に使用した場合は、毛髪を美しくする作用は極めて少ないものであった。
【0005】
ところで、原料となる海藻からのフコイダン等の多糖類を抽出する主な方法としては、熱水による抽出(例えば、特許文献2参照)、酸による抽出(例えば、特許文献3参照)、アルカリによる抽出(例えば、特許文献4参照)、有機溶剤による抽出(例えば、特許文献5参照)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-298916号公報
【特許文献2】特開2000-351801号公報
【特許文献3】特開2000-236889号公報
【特許文献4】特開2002-220402号公報
【特許文献5】特開2001-31585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術における問題を解決することを課題とするものであって、主として海藻由来成分のみを用いて、非常に良好な毛髪の水分量、櫛通り、毛髪ツヤを与えることのできる毛髪改善剤及び毛髪改善用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アカモクを、1価の陽イオンを含む熱水で抽出することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。
(1)アカモク抽出物を有効成分として含む、毛髪改善剤。
(2)アカモク抽出物が、1価の陽イオンで塩化された硫酸化多糖類塩を含む(1)に記載の毛髪改善剤。
(3)アカモク抽出物が、水と有機溶媒との混合溶液に溶解しうる、分子量50kDa以上の硫酸化多糖類塩を含む(1)に記載の毛髪改善剤。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の毛髪改善剤を、アカモク抽出物の固形分換算で0.00001質量%~0.1質量%の量で含む毛髪改善用組成物。
(5)アカモクを、1価の陽イオンを含む熱水で抽出して抽出液を得る工程と、この抽出液を分画分子量50kDaの限外濾過膜で分画及び濃縮して濃縮液を得る工程と、を含む毛髪改善剤の製造方法。
(6)さらに、前記濃縮液を乾燥し、水と有機溶媒との混合溶液に溶解する工程を含む(5)に記載の毛髪改善剤の製造方法。
(7)(5)又は(6)に記載の方法で製造された毛髪改善剤と、薬理学的又は化粧学的に許容される担体と、を混合する工程を含む、毛髪改善用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る毛髪改善剤によれば、極めて少量の使用によっても、非常に良好な毛髪の水分量、櫛通り、毛髪ツヤを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1で評価した毛髪ツヤの解析方法の概要を示す。
【
図2】
図2は、実施例1で評価した被験品適用前後の毛髪あたりの毛髪水分量の測定結果を示す。
【
図3】
図3は、実施例1で評価した被験品適用前後の毛髪摩擦力(N)の測定結果を示す。
【
図4】
図4は、実施例1で評価した毛髪輝度ピークの半値幅(a.u.)の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態における毛髪改善剤は、有効成分としてアカモク抽出物を含む。以下、この毛髪改善剤及びその製造方法並びにこれを含む毛髪改善用組成物について詳細に説明するが、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
(毛髪改善剤)
本実施形態の毛髪改善剤は、褐藻綱ヒバマタ目ホンダワラ科に属する海藻であるアカモク(Sargassum horneri)の抽出物、好ましくは、熱水による抽出物を有効成分として配合するものである。ここでアカモクとは、主に日本で古くから食用海藻として利用されてきた褐藻類の一種である。アカモクは1年生で、普通は秋から冬にかけて生長し、付着器から分枝しない茎が1本生じ、数mの長さになる。枝は茎につく葉の葉腋から生じ、茎と同様に葉をつける。葉は膜状で線形から披針形で、その縁は鋸歯縁ないし中肋に達する切れ込みで羽状になるものもある。葉は長さ6~8cm程度、幅1~2cm程度になる。本明細書において、「アカモク」とは、このようなアカモクの茎や枝葉のみならず付着器や生殖器などを含んでもよい。
【0014】
好ましい実施形態として、上記有効成分は1価の陽イオンで塩化された硫酸化多糖類塩を含む。アカモクの熱水抽出物の中にはフコイダン等の硫酸化多糖が含まれている。フコイダンは、主にL-フコースがα1-2及びα1-6結合で結合した硫酸化多糖である。フコイダンは褐藻類に多く含まれている多糖類であるが、本実施形態のアカモク抽出物にはアルギン酸などの他の多糖類を含んでいてもよい。このような有効成分の分子量は、特に限定されるものではないが、分子量50kDa以上であることが好ましい。さらに好ましくは、この有効成分は、水と有機溶媒との混合溶液に溶解しうるものである。一般に、藻類から抽出された多糖類は、極めて粘度が高く、極性の低い有機溶媒には溶けにくいことが知られている。しかしながら、本実施形態の有効成分は、1価の陽イオンで塩化された硫酸化多糖類塩を含むため、高分子であるにもかかわらず粘度が低下し、水と有機溶媒との混合溶液に溶解しうると考えられる。混合溶液としては、以下に詳述するが、例えば、水とアルコール類との混合溶液であり、特に水と多価アルコールを含む混合溶液、代表的には例えば、30%程度の1,3-ブチレングリコールを含む水溶液が挙げられる。本実施形態に係る毛髪改善剤は、上記のようなアカモク抽出物を含有してなるものであり、その含有量は、アカモク抽出物の固形分換算で0.01質量%から99質量%まで所望の濃度に調製して用いることができる。なお、以下に詳述するように、ごく低濃度ないしごく少量の配合によっても、非常に良好な毛髪改善効果を発揮することができる。毛髪改善剤は、そのまま毛髪用化粧料として使用してもよいが、毛髪の水分量、櫛通り、毛髪ツヤを与える毛髪改善用組成物を製造するための添加剤として使用することが好ましい。
【0015】
1価の陽イオンとしては、例えば、Na+、K+、NH4
+などが挙げられ、好ましくは、Na+及びK+、特に好ましくはNa+である。すなわち、フコイダンのような硫酸基を有する多糖類は、塩の状態でないと自己加水分解が進み所定の機能が発揮されず、かつ塩を形成するための対イオンが、例えば、Ca2+のような2価の陽イオンであると、硫酸化多糖類塩であっても、毛髪の水分量、櫛通り、毛髪ツヤを与えるといった毛髪改善機能が見られず、1価の陽イオンの塩である場合に初めてこのような毛髪改善機能が奏されることが明らかとなったものである。従って、本実施形態に係る硫酸化多糖類塩はカルシウム等の2価の陽イオンを実質的に含まないことが好ましい。ここで「実質的に含まない」とは、例えば、その存在量がモル単位で5%以下、1%以下、0.1%以下、0.01%以下、0.001%以下であることを意味し、さらに好ましくは限りなくゼロに近いそれ以下の量である。
【0016】
(毛髪改善用組成物)
本実施形態に係る毛髪改善用組成物は、上述した毛髪改善剤を含有してなるものであるが、これを有効成分とするシャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアミスト、ヘアスプレーといった組成物とする上で、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧料や医薬部外品、外用医薬品等の製剤に使用される他の成分を含む。これらの薬理学的又は化粧学的に許容される他の成分としては、水、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、アルコール類、水溶性高分子、樹脂、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、抗菌剤、香料、色素、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、細胞賦活剤、保湿剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類、その他、エンサイクロペディア・オブ・コンディショニング・リンス・イングレディエンツ(ENCYCLOPEDIA OF CONDITIONING RINSE INGRE DIENTS(MICELLE PRESS,1987年))及びエンサイクロペディア・オブ・シャンプー・イング レディエンツ(ENCYCLOPEDIA OF SHAMPOO INGREDIENTS(MICELLE PRESS,1985年))、最新化粧品科学(薬事日報社、1988年)などに収載されている成分等を配合することが可能である。これらの文献における関連部分の記載内容は、その関連により本明細書中に組み込まれる。
【0017】
なお本実施形態に係る毛髪改善用組成物中における、上記毛髪改善剤の含有量は、特に限定されるわけではないが、例えば、水溶液の形態の組成物において、組成物全体に対してアカモク抽出物の固形分換算で0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上といったごく少量の配合によっても、非常に良好な毛髪改善効果を発揮することができる。配合量の上限値としても特に限定されるわけではないが、経済的な見地から例えば、0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.001質量%以下であることが望ましい。特に好ましい範囲としては、0.0001質量%~0.01質量%である。
【0018】
特に、本実施形態に係る毛髪改善用組成物は、毛髪に適用する上で水系組成物として調製することが望ましい。さらに、また水系組成物とする上で、上記したような硫酸化多糖類塩を分子単位として安定に保持し、防腐目的の上から多価アルコール類を配合することが望ましい。
【0019】
水としては、特に限定されるわけではないが、精製水、脱イオン水、温泉水、深層水等が用いられる。
【0020】
多価アルコールとしては、通常、外用剤(例えば化粧品、医薬部外品又は外用医薬品)に使用されるものであれば、特に制限されない。多価アルコールの中でも2価アルコール又は3価アルコールが好ましい。具体的には、例えば、グリコール又はグリセリンが好ましい。より具体的には、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール(1,2-ペンタンジオール)、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソプレングリコール(イソペンチルジオール)等が好ましく例示される。中でも1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、又はイソプレングリコールが好ましく、1,3-ブチレングリコールが特に好ましい。より望ましくは、例えばサトウキビなどの植物性原料より調製される天然由来の1,3-ブチレングリコールであることが望ましい。多価アルコールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
多価アルコールの含有量の下限値は、特に制限されず、毛髪改善用組成物の総質量に対して、1質量%であってもよく、10質量%であってもよく、30質量%であってもよい。多価アルコールの含有量の上限値は、特に制限されず、毛髪改善用組成物の総質量に対して、99質量%であってもよく、95質量%であってもよく、90質量%であってもよく、85質量%であってもよい。上記したように特定構造の硫酸化多糖類塩を分子単位として安定に保持し、かつ防腐目的の上からは8質量%以上であることが好ましく、10~50質量%、特に20~40質量%、25~35質量%の範囲内とすることが望ましい。
【0022】
本実施形態に係る毛髪改善用組成物に配合され得るその他の材料についても、特に限定されるわけではないが、例示しておくと、油剤としては、通常の化粧料に使用されるものであれば、天然系油、合成油、或いは固体、半固体、液体等の性状は問わず、炭化水素類、ロウ類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル油、シリコーン油類、フッ素系油類等のいずれの油剤も使用することができる。例えば、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素類;ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ等のロウ類;牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、硬化油、タートル油、豚脂、馬脂、ミンク油、肝油、卵黄油等の動物油;ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のラノリン誘導体;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類が挙げられる。また、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、シトステロール、ラノステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)等の高級アルコール;アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、アジピン酸-ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸-N-アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸-2-エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸-2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸-2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油が挙げられる。更にアセトグリセライド、トリイソオクタン酸グリセライド、トリイソステアリン酸グリセライド、トリイソパルミチン酸グリセライド、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセライド、モノステアリン酸グリセライド、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリミリスチン酸グリセライド等のグリセライド油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン;高級脂肪酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコンゴム、シリコーン油等のシリコーン系油剤;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤が挙げられる。
【0023】
但し、本実施形態に係る毛髪改善剤である上記したような硫酸化多糖類塩によって十分な毛髪改善効果が得られるために、シリコーン系油剤を配合しないノンシリコン組成のものとすることが望ましい。
【0024】
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の活性剤が用いられ得る。アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸セッケン、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アミノ酸と脂肪酸の縮合物等のカルボン酸塩、アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩とそのホルマリン縮合物のスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩、N-アシルアミノ酸系活性剤等が挙げられる。
【0025】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアミノアルコール脂肪酸誘導体等のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩、ピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、アルカノールアミド、糖エーテル、糖アミド等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0026】
金属セッケンとしては、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0027】
ゲル化剤としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、α,γ-ジ-n-ブチルアミン等のアミノ酸誘導体、デキストリンパルミチン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステル、デキストリン2-エチルヘキサン酸パルミチン酸エステル等のデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー等の有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0028】
紫外線吸収剤としては、パラメトキシケイ皮酸-2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、ジパラメトキシケイ皮酸-モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、メトキシケイ皮酸オクチル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸ナトリウム、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸ブチル、パラジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラアミノ安息香酸アミル等の安息香酸系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0029】
紫外線防御剤としては、サリチル酸-2-エチルヘキシル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸アミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸イソプロピルベンジル、サリチル酸カリウム等のサリチル酸系紫外線吸収剤;4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、4-メトキシジベンゾイルメタン、4-t-ブチル-4’-ヒドロキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤;メンチル-O-アミノベンゾエート、2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-硫酸、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メンチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸系紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等が挙げられる。
【0030】
アルコール類としては、上記したような多価アルコールの他、エタノール、イソプロパ
ノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0031】
水溶性高分子としては、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、ラムダ以外のカラギーナン、ペクチン、寒天、アルゲコロイド、フコイダン、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン等の植物系高分子;キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、フコゲル、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;キトサン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子;ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機系水溶性高分子等がある。また、この中には、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の皮膜形成剤も含まれる。
【0032】
抗菌剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、フェノキシエタノール及びチアントール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。PH調整剤としては、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。清涼剤としては、L-メントール、カンフル等が挙げられる。
【0033】
細胞賦活剤としては、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、サイクリックAMP、サイクリックGMP、フラビンアデニンヌクレオチド、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、キサンチン及びそれらの誘導体であるカフェイン、テオフェリン並びにそれらの塩等の核酸関連物質、幼牛血液抽出液、血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、トリ等の卵成分、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ヘモグロビン又はその分解物、ラクトフェリン又はその分解物、イカスミ等の軟体動物抽出物、魚肉抽出物等、哺乳類、鳥類、貝類、昆虫類、魚類、軟体動物類、甲殻類等の動物由来の抽出物、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物等の発酵代謝産物から選ばれる微生物由来の抽出物が挙げられる。更にレチノール及びその誘導体(パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)、レチナール及びその誘導体、デヒドロレチナール、カロチン等のカロチノイド等のビタミンA類、チアミン類(チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩)、リボフラビン類(リボフラビン、酢酸リボフラビン等)、ピリドキシン類(塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等)、フラビンアデニンヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸類(ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等)、コリン類等のビタミンB類、アンズ抽出物、イチョウ抽出物、オタネニンジン抽出物、オオムギ抽出物、オレンジ抽出物、キュウリ抽出物、キウイ抽出物、シイタケ抽出物、スギナ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、トウガラシ抽出物、ニンニク抽出物、ニンジン抽出物、ブクリョウ抽出物、モモ抽出物、レタス抽出物、レモン抽出物、霊芝抽出物、ローズマリー抽出物、ヒノキチオール、セファランチン等の植物由来の抽出物、α-及びγ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸及びそれらの誘導体、エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩、グリコール酸、コハク酸、乳酸、サリチル酸等の有機酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩等が挙げられる。上記に挙げた細胞賦活剤は一種又は二種以上を適宜選択して配合することができる。
【0034】
保湿剤としては、アルカリ単純温泉水、深層水、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸などのムコ多糖類またはそれらの塩、コラーゲン、エラスチン、ケラチンなどのタンパク質またはそれらの誘導体並びにそれらの塩、大豆及び卵由来のリン脂質、糖脂質、セラミド、ムチン、ハチミツ、エリスリトール、マルトース、マルチトール、キシリトール、キシロース、ペンタエリスリトール、フルクトース、デキストリン及びその誘導体、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、トレハロース、ブドウ糖等の糖類、尿素、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、オルチニン、グルタミン、グリシン、グルタミン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、システイン、シスチン、シトルリン、スレオニン、セリン、チロシン、トリプトファン、テアニン、バリン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、ピロリドンカルボン酸及びその塩、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、リジンなどのアミノ酸及びそれらの誘導体又はそれらの塩などが挙げられる。更にD-パンテノール、アボカド抽出物、アーモンド油、イナゴマメ抽出物、イネ抽出物、イチゴ抽出物、ウイキョウ抽出物、ウスベニアオイ抽出物、オウレン抽出物、オリーブ油、オドリコソウ抽出物、カカオ脂、カラスムギ抽出物、キズタ抽出物、クマザサ抽出物、クチナシ抽出物、グレープフルーツ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ゲンチアナ抽出物、ゴボウ抽出物、コボタンヅル抽出物、ゴマ抽出物、サボテン抽出物、サボンソウ抽出物、ショウガ抽出物、ジオウ抽出物、シア脂、シモツケ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ツバキ抽出物、トウモロコシ抽出物、トウチュウカソウ抽出物、トルメンチラ抽出物、ドクダミ抽出物、バクモンドウ抽出物、ハウチマメ抽出物、ハマメリス抽出物、ハッカ抽出物、ミドリハッカ抽出物、セイヨウハッカ抽出物、パセリ抽出物、バラ抽出物、ヒマワリ抽出物、ヒノキ抽出物、ヘチマ抽出物、プルーン抽出物、ブッチャーズブルーム抽出物、ボラージ油、ボタン抽出物、ホホバ油、ボダイジュ抽出物、ホップ抽出物、マツ抽出物、マロニエ抽出物、マカデミアナッツ油、マルメロ抽出物、ムラサキ抽出物、メドウホーム油、メリッサ抽出物、ヤグルマソウ抽出物、ユリ抽出物、ユズ抽出物、ライム抽出物、ラベンダー抽出物、リンドウ抽出物、ワレモコウ抽出物及びリンゴ抽出物等が挙げられる。上記に挙げた保湿剤は、一種又は二種以上を適宜選択して配合することができる。
【0035】
ビタミンとしては、フィトナジオン、メナキノン、メナジオン、メナジオール等のビタミンK類、エリオシトリン、ヘスペリジン等のビタミンP類、ビオチン、カルチニン、フェルラ酸等が挙げられる。血行促進剤としては、ノニル酸ワレニルアミド、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、α-ボルネオール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、γ-オリザノール等が挙げられる。皮膚収斂剤としてはタンニン酸等、抗脂漏剤としてはチアントロール等、酵素としてはリパーゼ、パパイン等が挙げられる。これらの成分を適宜一種又は二種以上添加することができる。また、これらの成分の添加量は特に限定されないが、通常、0.0001~80質量%(対全量)の範囲で添加することができる。
【0036】
本実施形態の毛髪改善用組成物は、通常の方法に従って製造することができ、例えば、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアクリーム、スタイリングローション、スタイリングムース、コンディショニングムース、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアフォーム、ヘアジェル、ヘアブロー等として適用することができる。
【0037】
本実施形態に係る毛髪改善剤ないし毛髪改善用組成物は、ヒトのみならず、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギの家畜並びにイヌ、ネコ等の愛玩動物等を含む哺乳類に対しても効果を発揮する。
【0038】
(製造方法)
本実施形態に係る毛髪改善剤の製造方法は、アカモクを、1価の陽イオンを含む熱水で抽出して抽出液を得る抽出工程と、得られた抽出液を分画分子量50kDaの限外濾過膜で分画及び濃縮して濃縮液を得る濃縮工程と、さらに好ましくは、この濃縮液を乾燥し、水と有機溶媒との混合溶液に溶解する工程とを含む。抽出工程では、アカモクを粉末化し、水を加えて溶解した溶解液に、塩化ナトリウムなどの1価イオンとなる塩を加え、加熱してもよい。加熱後、分子量により分離することで、1価の陽イオンで塩化された硫酸化多糖類塩を取り出すことが出来る。
【0039】
原料となる「アカモク」は、褐藻綱ヒバマタ目ホンダワラ科に属する海藻である。アカモクは1年生で、普通は秋から冬にかけて生長し、4~7mの長さに達する。付着器は仮盤状で、この付着器から分枝しない茎が1本生じ、数mの長さになる。枝は茎につく葉の葉腋から生じ、茎と同様に葉をつける。葉は膜状で線形から披針形で、その縁は鋸歯縁ないし中肋に達する切れ込みで羽状になるものもある。葉は長さ6~8cm程度、幅1~2cm程度になる。生殖器床の付き方は枝の末端部に単独または総状につき、その形状は円柱状で先端が細くなっている。雌の生殖器床は太く、長さ2~3cm、直径3mm程度になるが、雄の生殖器床は細長く、長さ4~7cm、直径2mm程度である。なお、これらの説明における数値はあくまでも代表的な値の例示であって、本願発明を何ら限定するものではなく、使用するアカモクとしてこれらの数値と異なるような個体を用いることはもちろん可能であり、本発明の範囲内である。
【0040】
本実施形態に係る製造方法において、原料として用いられる「アカモク」とは、これらの付着器、茎、枝、葉及び生殖器床等を含み得るものである。
【0041】
熱水に含まれる1価イオンとなる塩としては、特に限定されるわけではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどを用いることができる。熱水中における、水に対するこれらの塩の添加量としては、特に限定されないが、例えば、0.0001~10モル/L、さらに、例えば、0.001~5モル/L、0.01~2モル/L、好ましくは0.1~1モル/Lの濃度である。
【0042】
抽出工程における熱水の温度としては、特に限定されないが、例えば、40℃以上であり、さらに、例えば、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、120℃以上の温度であってもよい。具体例を挙げれば、熱水として、水を溶媒として用いて常圧(1013hPa±50hPa)にて、100℃以下の温度、例えば、55~65℃の温度で行うものである。
【0043】
この抽出に必要な時間は、選択された温度によって変わりうるが、1時間~2ヶ月、例えば、1時間~1ヶ月、1時間~15日、1時間~10日、1時間~5日、1時間~3日、1時間~2日、1時間~1日、5時間~1ヶ月、5時間~15日、5時間~10日、5時間~5日、5時間~3日、5時間~2日、5時間~1日、10時間~1ヶ月、10時間~15日、10時間~10日、10時間~5日、10時間~3日、または10時間~2日である。
【0044】
前記抽出工程は、溶媒としての1価の陽イオンを含む水中に、原料となるアカモクを混合し、一定時間放置するものを含みうる。前記放置は、適当な撹拌を含みうる。
【0045】
前記抽出は、1回以上、例えば、1~5回反復される。例えば、40~50℃、50~60℃、60~70℃、70~80℃または50~70℃で、1回又は複数回行うことができるものである。さらに、複数回反復して抽出を行う場合には、各回毎の温度は、異なるものとしても同じものとしても良く、例えば、回数を経るごとに温度を漸次高めるといった態様を取ることも可能である。好ましくは、50~60℃以上であるとよく、さらに55℃以上であるとよい。
【0046】
前記熱水による抽出工程においては、必要に応じて、例えば、加圧された液体抽出(pressurized liquid extraction:PLE)、超音波支援抽出(microwave assisted extraction:MAE)、亜臨界抽出(subcritical extraction:SE)、またはこれらの組み合わせなどの技術を併用することも可能である。前記亜臨界抽出は、亜臨界水抽出(subcritical water extraction:SWE)である。亜臨界水抽出は、超加熱された水抽出(superheated water extraction)または加圧された熱水抽出(pressurized hot water extraction:PHWE)とも言う。
【0047】
前記抽出工程の後は、得られた抽出液を分画分子量50kDaの限外濾過膜で分画及び濃縮する。限外ろ過膜を用いて分子量分画を行う方法は工業的に実施されており、例えば旭化成株式会社製のMF膜(精密ろ過膜)又はUF膜(限外ろ過膜)であるマイクローザ(商品名)等を使用することによって所定範囲の分子量画分を調製することができる。分子量分画及び濃縮工程の後は、析出物などを濾過などの知られた方法によって分離する過程をさらに含み得る。さらに、その後、洗浄、再析出等の知られた方法によって精製する工程をさらに含み得る。
【0048】
続いて、濃縮液を乾燥する乾燥工程としては、加熱による方法、減圧乾燥等などの知られた方法のいずれも特に限定なく使用可能である。乾燥物を水と有機溶媒との混合溶液とに溶解する工程において用いられる、有機溶媒は、最終的に調製される毛髪改善剤中に配合され得るものであれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、上述した毛質改善剤ないし毛質改善用組成物に関して説明した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0049】
本実施形態の方法で製造された毛髪改善剤は、さらに薬理学的又は化粧学的に許容される担体と混合することにより毛髪改善用組成物を製造することができる。毛髪改善用組成物及び薬理学的又は化粧学的に許容される担体については、上述したとおりである。
【実施例0050】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【0051】
本発明に係る毛髪改善剤の毛髪への作用について、以下の方法により作成したダメージ毛を用い、以下の方法にて毛髪の水分量、櫛通りおよびツヤについて評価した。
【0052】
[実施例1]
(試料の調製)
塩水でアカモクを煮沸して得た抽出液40Lをメッシュのあるザルあるいはナイロンシートで濾過した後に、10μmのカートリッジフィルター(ADVANTEC社製)、1μmのカートリッジフィルター(ADVANTEC社製)、1μmのプリーツカートリッジフィルター(AS ONE社製)の順番で濾過した。濾過後の抽出液を50kDaのmicroza(Asahi Kasei社製)で分子量分画、脱塩および濃縮を行った。脱塩はmicrozaのモジュール本体からの留出液を電導率メーター(HORIBA社製)で分析し、20μs/cm以下になるまで蒸留水の加水を続けた。脱塩後の抽出液はアルミ製のバットに出し、-20℃以下の冷凍庫にて12時間以上予備凍結後に棚段式凍結乾燥機(EYELA社製)で凍結乾燥を行った。凍結乾燥は、抽出液に触れている温度センサーが乾燥機の庫内温度と等しくなったところで終了した。乾燥後に褐色の固体141.1gを得た。精製水と1,3-ブタンジオールの混液(30質量%の1,3-ブタンジオール)に、この褐色の固体を溶解し、0.1質量%アカモク抽出物とした。
【0053】
(ダメージ毛の作成)
500mLの3%過酸化水素および3%アンモニア含有水溶液(ブリーチ剤)を1Lのビーカーに入れ、同一人毛(BS-B3N、ビューラックス)を浸漬した。40℃に設定したウォーターバスにビーカーを入れ、20分間静置した。30℃の流水で毛束を2分間すすぎ、タオルドライした後、7分間ドライヤー処理した。上記操作を3回実施し、ダメージ毛を作成した。
【0054】
(毛髪の水分量)
上記により作成したダメージ毛を室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に24時間以上静置した。このダメージ毛の重量(mg)を測定し、試験前の毛髪重量(mg)とした。
【0055】
上記で調製した試料を1%となるように精製水で希釈して、0.001質量%のアカモク抽出物を含む被験品を調製した。この被験品500μLをダメージ毛に適用後、1分間もみこみ、30℃の水道水で1分間洗い流した。その後、30℃の水道水にダメージ毛を1分間浸漬させ、室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に18時間静置した。ダメージ毛の重量(mg)を測定し、試験後の毛髪重量(mg)とした。ダメージ毛の毛先2cmを切断除去した後、残った毛束の毛先側から約5mm幅に毛髪を細切し、約0.1g秤量した。赤外水分計(MOC-120H、島津製作所製)で105℃、3分間処理し、毛髪の乾燥残分(%)から、毛束の乾燥重量(mg)を算出した。次式に従い、被験品処理前後で変化した毛髪水分量(mg)と毛髪あたりの毛髪水分量(μg/mg)を算出した。
【0056】
毛髪水分量(mg)=[被験品処理前(後)の毛髪重量(mg)-毛束の乾燥重量(mg)]
毛髪あたりの毛髪水分量(μg/mg)=[毛髪水分量(mg)/毛束の乾燥重量(mg)]×1000
【0057】
(毛髪の櫛通り)
上記により作成したダメージ毛を室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に24時間以上静置した。ダメージ毛を、30℃の水道水に1分間浸漬した後、室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に18時間静置した。デジタルフォースゲージ(ZP-20N、IMADA)にコームを装着し、毛束を梳かした際にコームにかかる荷重(N)を、毛髪とコーム間に生じた摩擦力指標として測定した(試験前)。なお、毛髪摩擦力の小ささは、櫛通りの良さを示すと考えられる。500μLの被験品をダメージ毛に適用後、1分間もみこみ、30℃の水道水で1分間洗い流した。その後、30℃の水道水にダメージ毛を1分間浸漬させ、室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に18時間静置した。試験前と同じ装置を用いて、ダメージ毛の毛髪摩擦力(N)を測定した(試験後)。
【0058】
(毛髪のツヤ)
上記により作成したダメージ毛を室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に24時間以上静置した。続いて、ダメージ毛を30℃の水道水に1分間浸漬した後、室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に18時間静置した。デジタル一眼レフカメラ(D610、Nikon)および大口径ズームレンズ(SP24-70mm F2.8 Di VC USD、TAMRON)を用いて、ダメージ毛の画像を撮影した(試験前)。
【0059】
500μLの被験品をダメージ毛に適用後、1分間もみこみ、30℃の水道水で1分間洗い流した。その後、30℃の水道水にダメージ毛を1分間浸漬させ、室温21±0.3℃、湿度45.0±2.0%に維持された恒温恒湿室に18時間静置した。その後、試験前と同様の方法にて、ダメージ毛の画像を撮影した(試験後)。
【0060】
撮影した毛髪画像の輝度(a.u.)を、画像解析ソフト(Image J)により定量化(a.u.)した。
図1にその概要を示す。定量化した毛髪の輝度(a.u.)の(|最大値-最小値|/2+最小値)を示す測定距離(pixels)から半値幅を算出し、これを毛髪ツヤ指標とした(R.McMULLEN,J. JACHOWICZ,Optical properties of hair: Effect of treatments on luster as quantified by image analysis.J.Cosmet.Sci.,54,335-351(2003)参照)。半値幅が狭いほど、光の乱反射が少なく、毛髪にツヤがあることを示している。
【0061】
<結果>
(毛髪水分量)
被験品適用前後の毛髪重量及び毛髪水分量を表1及び表2に示した。被験品適用前後の毛髪あたりの毛髪水分量を
図2に示した。
【0062】
【0063】
【0064】
表1に示したように、被験品適用後の毛髪重量は、被験品適用前よりも増加しており、表2の結果より毛髪水分量の増加がその原因と考えられる。
図2は、毛髪あたりの毛髪水分量をプロットしたものであるが、被験品の適用によって、有意に水分量が増加していることが分かった。このことから、本発明に係る毛髪改善剤は、毛髪水分量を高め、髪の保湿力を高める作用が期待できる。
【0065】
(毛髪櫛通り)
被験品適用前後の毛髪摩擦力(N)を表3及び
図3に示した。
【表3】
【0066】
表3及び
図3に示した結果より、被験品の適用によって毛髪摩擦力が大きく低下しており、毛髪の櫛通りが改善されることが分かる。このことから、本発明に係る毛髪改善剤は、櫛通りを改善することが認められ、髪になめらかさを与える作用があると考えられる。
【0067】
(毛髪ツヤ)
被験品適用前後の毛束の画像解析により算出した毛髪輝度ピークの半値幅(a.u.)を表4及び
図4に示した。毛髪輝度の半値幅(a.u.)が狭い程、毛髪にツヤがあることを示唆している。
【0068】
【0069】
表4及び
図4に示したように、被験品の適用によって、毛髪画像の輝度の半値幅が有意に低下しており、光の乱反射が少なくなって毛髪のツヤが増加したことが分かる。このことから、本発明に係る毛髪改善剤は、髪のうねりを抑え、視覚的につやを与える作用があると考えられる。
【0070】
以下に、本発明の毛髪改善剤を配合したシャンプーの処方例を示す。
(処方例1)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na 7.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン液 2.5
塩化O-(2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)
プロピル)ヒドロキシエチルセルロース 0.3
フェノキシエタノール 0.9
安息香酸ナトリウム 0.45
0.1質量%アカモク抽出物 1.0
香料 0.6
精製水 残量
合計 100
本発明の毛髪改善剤は、毛髪を整え、毛髪の水分量、櫛通り、及びツヤを改善するために有効であることが確認できた。したがって、本発明の毛髪改善剤は、化粧品等の組成物に添加して、毛髪の保湿性、ツヤ及び/又は櫛通りの改善するために使用することができる。