IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-通信装置 図1
  • 特開-通信装置 図2
  • 特開-通信装置 図3
  • 特開-通信装置 図4
  • 特開-通信装置 図5
  • 特開-通信装置 図6
  • 特開-通信装置 図7
  • 特開-通信装置 図8
  • 特開-通信装置 図9
  • 特開-通信装置 図10
  • 特開-通信装置 図11
  • 特開-通信装置 図12
  • 特開-通信装置 図13
  • 特開-通信装置 図14
  • 特開-通信装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162081
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 49/552 20220101AFI20241114BHJP
   H04L 12/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H04L49/552
H04L12/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077266
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 早紀
【テーマコード(参考)】
5K030
5K031
【Fターム(参考)】
5K030GA11
5K030HC14
5K030LB05
5K030MB09
5K031AA02
5K031BA03
5K031CB12
5K031EA11
(57)【要約】
【課題】帯域負荷の過剰な増加を抑制しつつパケットの損失率の低減を図る。
【解決手段】ネットワーク1は、パケットの送信を行う第1プロトコル2と、第1プロトコル2から送信されたパケットを受信する第2プロトコル3と、第1プロトコル2と第2プロトコル3との間を仲介する複数の通信装置4~13と、を備え、複数の通信装置4~13がリング状に接続されている。ネットワーク1において用いられる複数の通信装置4~13のうち第1プロトコル2から送信されたパケットを最初に受信する通信装置4は、パケットを複製する複製部22と、パケットを後段の通信装置5、6に転送する転送部23と、を備える。複製部22は、ネットワーク1において管理されるリストに基づいて、第1プロトコル2から送信されたパケットのうち、特定のパケットの複製の可否を決定し、ネットワーク1の帯域負荷を表す負荷情報に基づいて特定のパケットの複製を行うか否かを判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットの送信を行う第1プロトコル(2、33)と、前記第1プロトコルから送信された前記パケットを受信する第2プロトコル(3)と、前記第1プロトコルと前記第2プロトコルとの間を仲介する複数の通信装置(4~13、34)と、を備え、前記複数の通信装置がリング状に接続されたネットワーク(1、31、41)において用いられる前記複数の通信装置のうち、前記第1プロトコルから送信された前記パケットを最初に受信する通信装置(4、34、42)であって、
前記パケットを複製する複製部(22、35、43)と、
前記パケットを後段の前記通信装置に転送する転送部(23、36)と、
を備え、
前記複製部は、
前記ネットワークにおいて管理されるリストに基づいて、前記第1プロトコルから送信された前記パケットのうち、特定のパケットの複製の可否を決定し、
前記ネットワークの帯域負荷を表す負荷情報に基づいて前記特定のパケットの複製を行うか否かを判断する通信装置。
【請求項2】
前記負荷情報は、前記ネットワーク(31)全体の帯域負荷を表す情報である請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記パケットには、優先度が付与されており、
前記複製部(43)は、前記特定のパケットの前記優先度を判断し、相対的に前記優先度が高い前記特定のパケットについては、前記負荷情報に基づく判断に関係なく複製を行うようになっている請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記複製部は、前記パケットに埋め込まれた前記優先度を表す情報または予め定められた前記パケット毎の優先度を表す情報に基づいて、前記特定のパケットの優先度を判断する請求項3に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信装置がリング状に接続されたネットワークにおいて用いられる通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転の発展が進む中で、自動車などの車両全体に搭載されるセンサの数が多くなるとともに、また、それらセンサから送り出されるデータ量も必然的に多くなってきている。そのため、近年では、車両に搭載される車両ネットワークにおいて、大量のデータをより速く届けることが可能なイーサネットが多く採用されるようになっている。なお、イーサネットは、登録商標である。現在、特許文献1に開示されるように、IEEE802.1CBでは、ネットワークの信頼性を向上させるため、送信されるパケットを0個以上に複製して2つ以上のバスに送信を行うとともに、エンドシステムにおいてフレームの排除を行う方法が定義されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-128404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した方法を採用したネットワークによれば、パケットを確実にエンドシステムまで届けることが可能となる。なお、以下では、上記した方法を採用したネットワークのことを従来技術と称することとする。従来技術によれば、伝送経路の1つが故障した場合においても、他の伝送経路を介してエンドシステムに対してパケットが送信されるようになり、その結果、パケットの損失率の低減および信頼性の向上を図ることができる。しかしながら、従来技術では、パケットを複製して送信することで帯域負荷が過剰に増加する可能性があり、その結果、スムーズな通信ができる通信環境の構築が妨げられるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯域負荷の過剰な増加を抑制しつつパケットの損失率の低減を図ることができる通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の通信装置は、パケットの送信を行う第1プロトコルと、前記第1プロトコルから送信された前記パケットを受信する第2プロトコルと、前記第1プロトコルと前記第2プロトコルとの間を仲介する複数の通信装置と、を備え、前記複数の通信装置がリング状に接続されたネットワークにおいて用いられる前記複数の通信装置のうち、前記第1プロトコルから送信された前記パケットを最初に受信する通信装置であり、前記パケットを複製する複製部と、前記パケットを後段の前記通信装置に転送する転送部と、を備える。
【0007】
前記複製部は、前記ネットワークにおいて管理されるリストに基づいて、前記第1プロトコルから送信された前記パケットのうち、特定のパケットの複製の可否を決定し、前記ネットワークの帯域負荷を表す負荷情報に基づいて前記特定のパケットの複製を行うか否かを判断する。つまり、前記複製部は、前記特定のパケットの複製を前記ネットワークの帯域負荷に応じて動的に制御する。
【0008】
このような構成の通信装置によれば、負荷情報に基づいて通信経路の問題状況を判断することが可能となる。複製して転送を行う予定であった通信経路に問題がある場合、パケットを複製して転送を行ってもスムーズな通信が保証されることはない。そこで、上記構成の通信装置では、複製して転送を行う予定であった通信経路に問題があると判断した場合、問題のない通信経路についてだけパケットの複製および転送を行うようにすることができる。
【0009】
上記構成によれば、問題のある通信経路についてはパケットの複製および転送が行われないため、無駄な帯域負荷の増加を抑えることが可能となり、例えば帯域負荷が増大して他の通信を妨げるといった事態の発生も防止される。また、上記構成によれば、問題のない通信経路についてはパケットの複製および転送が行われるため、パケットの損失を防ぐことができる。したがって、上記構成によれば、帯域負荷の過剰な増加を抑制しつつパケットの損失率の低減を図ることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るネットワークの構成を模式的に示す図
図2】第1実施形態に係る通信装置の構成を模式的に示す図
図3】第1実施形態に係る通信装置が実行する処理の内容の一例を示す図
図4】第1実施形態に係るネットワークにおいて複製対象のパケットが送信される際における各部の動作を説明するための図その1
図5】第1実施形態に係るネットワークにおいて複製対象のパケットが送信される際における各部の動作を説明するための図その2
図6】第2実施形態に係るネットワークの構成を模式的に示す図
図7】第2実施形態に係る通信装置の構成を模式的に示す図
図8】第2実施形態に係る第1プロトコルが実行する処理の内容の一例を示す図
図9】第2実施形態に係る通信装置が実行する処理の内容の一例を示す図
図10】第1実施形態に係るネットワークにおいて複製対象のパケットが送信される際における各部の動作を説明するための図その3
図11】第2実施形態に係るネットワークにおいて複製対象のパケットが送信される際における各部の動作を説明するための図
図12】第3実施形態に係るネットワークの構成を模式的に示す図
図13】第3実施形態に係る通信装置の構成を模式的に示す図
図14】第3実施形態に係るパケットに優先度を表す情報を埋め込む方法の一例を模式的に示す図
図15】第3実施形態に係るPCPの値と優先度との関係の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1図5を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のネットワーク1は、例えば自動車などの車両に搭載された車両ネットワークである。ネットワーク1は、パケットの送信を行う第1プロトコル2と、第1プロトコル2から送信されたパケットを受信する第2プロトコル3と、第1プロトコル2と第2プロトコル3との間を仲介する複数の通信装置4~13と、を備える。ネットワーク1は、複数の通信装置4~13がリング状に接続されたリングネットワークであり、イーサネットを採用したものである。なお、パケットは、イーサネットのフレームのことである。そのため、以下の説明では、パケットのことをフレームと称することがある。
【0013】
図2に示すように、通信装置4は、パケットを受信する受信部21、パケットを複製する複製部22およびパケットを後段の通信装置に転送する転送部23を備えている。通信装置4は、ネットワーク1において用いられる複数の通信装置4~13のうち、第1プロトコル2から送信されたパケットを最初に受信する通信装置である。複製部22は、ネットワーク1において管理されるリストに基づいて、第1プロトコル2から送信されたパケットのうち、特定のパケットの複製の可否を決定する。
【0014】
IEEE802.1CBの規格では、複製対象のパケットをシステムで1つ定義されているリストによって制御している。本実施形態では、複製部22は、このようなリストに基づいて特定のパケットの複製の可否を決定しているものとする。また、複製部22は、ネットワーク1の帯域負荷を表す負荷情報に基づいて特定のパケットの複製を行うか否かを判断する。
【0015】
本実施形態における負荷情報は、通信装置4から後段の通信装置5へと至る経路の帯域負荷と、通信装置4から後段の通信装置6へと至る経路の帯域負荷と、を表す情報となっている。なお、本明細書では、このような経路のことを通信経路または伝送経路と称することがある。帯域負荷の状況は、帯域の通信速度、送信されているパケットの数などにより判断することができる。そのため、本実施形態では、負荷情報は、通信装置4自身により生成することができる。なお、ネットワーク1の帯域を監視する監視システムを別途設け、その監視システムにより負荷情報を生成することもできる。
【0016】
複製部22は、具体的には、次のように特定のパケットの複製を行うか否かを判断することができる。すなわち、複製部22は、負荷情報に基づいて、2つの経路における通信速度および送信されているパケットの数をそれぞれ確認する。複製部22は、通信速度が予め定められた下限速度未満であるという条件および送信されているパケットの数が予め定められた上限数を超えるという条件のうち少なくとも一方を満たす場合、その経路の帯域負荷が高いと判断することができる。
【0017】
複製部22は、2つの経路のうち少なくとも一方について帯域負荷が高いと判断した場合、特定のパケットの複製を行わない。転送部23は、特定のパケットが複製部22により複製された場合、その複製されたパケットを、後段の通信装置5、6の両方に転送する。つまり、転送部23は、特定のパケットが複製部22により複製された場合、その複製されたパケットを、図4などに示す右回りの経路R1および左回りの経路R2の両方に転送する。
【0018】
転送部23は、受信部21が特定のパケット以外のパケットを受信した場合、そのパケットを、後段の通信装置5、6のうち送信先として指定された側の通信装置に転送する。転送部23は、特定のパケットが複製部22により複製されなかった場合、そのパケットを、後段の通信装置5、6のうちいずれか一方に転送する。具体的には、転送部23は、特定のパケットが複製部22により複製されなかった場合、そのパケットを、通信装置4からの経路の帯域負荷が高いと判断されなかったほうの通信装置に転送する。
【0019】
なお、転送部23は、特定のパケットが複製部22により複製されなかった場合であり且つ2つの経路の両方について帯域負荷が高いと判断された場合、そのパケットを、後段の通信装置5、6のうち、通信装置4からの経路の帯域負荷が相対的に低いほうの通信装置に転送する。このように、転送部23は、特定のパケットが複製部22により複製されなかった場合、そのパケットを、右回りの経路R1および左回りの経路R2のうちいずれか一方に転送する。
【0020】
図2に示すように、通信装置5~12は、パケットを受信する受信部24およびパケットを後段の通信装置に転送する転送部25を備えている。通信装置5~12は、前段の通信装置から送信されたパケットを受信するとともに、その受信したパケットを後段の通信装置に送信する。なお、通信装置5は、複数のアクチュエータ、センサなどの4つの機器D1、D2、D3、D4との間で、それらの制御に関する信号のやり取りを行うようになっている。
【0021】
図2に示すように、通信装置13は、パケットを受信する受信部26およびパケットを後段の第2プロトコル3に転送する転送部27を備えている。通信装置13は、ネットワーク1において用いられる複数の通信装置4~13のうち、第1プロトコル2から送信されたパケットを最後に受信して第2プロトコル3に送信する通信装置である。通信装置4において特定のパケットの複製が行われた場合、通信装置11、12の両方から同じパケットが通信装置13へと送信されることになる。このような場合、通信装置13は、最初に受信したパケットを受信し、次に受信したパケットは重複するものとして破棄するようになっている。
【0022】
上記構成において、通信装置4は、第1プロトコル2から送信されたパケットを受信する度に、図3に示すような内容の処理を実行する。まず、ステップS101では、リストに基づいて受信したフレームが複製対象であるか否かが判断される。ここで、受信したフレームが複製対象ではないと判断された場合、ステップS101で「NO」となり、ステップS102に進む。ステップS102では、受信したフレームが、指定された送信先が存在する経路にだけ送信される。ステップS102の実行後、本処理が終了となる。
【0023】
一方、受信したフレームが複製対象であると判断された場合、ステップS101で「YES」となり、ステップS103に進む。ステップS103では、フレームの複製処理が実施される。ステップS103の実行後はステップS104に進み、負荷情報が取得される。ステップS104の実行後はステップS105に進み、ステップS104にて取得された負荷情報に基づいて、2つの通信経路の帯域負荷が正常であるか否かが判断される。
【0024】
ここで、2つの通信経路の両方の帯域負荷が正常であると判断された場合、ステップS105で「YES」となり、ステップS106に進む。ステップS106では、受信されたパケットが複製されるとともに、それら複製されたパケットが後段の通信装置5、6のそれぞれへと至る2つの通信経路の両方に送信される。一方、2つの通信経路のうち少なくとも一方の帯域負荷が正常ではない、つまり帯域負荷が高いと判断された場合、ステップS105で「NO」となり、ステップS107に進む。ステップS107では、受信したパケットが、問題の無い経路、つまり2つの通信経路のうち帯域負荷が相対的に低い経路にだけ送信される。ステップS106またはS107の実行後、本処理が終了となる。
【0025】
次に、上記構成のネットワーク1において複製対象のパケットが送信される際における各部の動作について説明する。
[1]通信経路の帯域負荷に問題がない場合
通信装置4から通信装置5、6のそれぞれへと至る2つの通信経路の帯域負荷に問題がない場合、パケットの流れは図4に示すようなものとなる。
【0026】
すなわち、この場合、通信装置4は、第1プロトコル2から送信された複製対象であるパケットPを受信すると、そのパケットPを複製して通信装置5、6の両方に転送する。つまり、この場合、パケットPは、右回りの経路R1および左回りの経路R2の両方に転送される。この場合、通信装置13は、経路R1および経路R2の両方から転送されるパケットPを受信することになる。ただし、通信装置13は、最初に受信したパケットPを受信するとともに、次に受信したパケットPは重複するものとして破棄するようになっている。そして、通信装置13は、受信したパケットPを第2プロトコル3に送信する。
【0027】
[2]通信経路の帯域負荷に問題がある場合
通信装置4から通信装置5、6のそれぞれへと至る2つの通信経路のうち一方の帯域負荷に問題がある場合、パケットの流れは図5に示すようなものとなる。なお、この場合、通信装置4から通信装置5へと至る通信経路の帯域負荷が少し高いものとする。また、図5などでは、帯域負荷が少し高い経路を破線で示している。すなわち、この場合、通信装置4は、第1プロトコル2から送信された複製対象であるパケットPを受信すると、そのパケットPを通信装置6にだけ転送する。つまり、この場合、パケットPは、左回りの経路R2にだけ転送される。この場合、通信装置13は、経路R2から転送されるパケットPを受信する。そして、通信装置13は、受信したパケットPを第2プロトコル3に送信する。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態のネットワーク1において、第1プロトコル2から送信されたパケットを最初に受信する通信装置4は、パケットを複製する複製部22と、パケットを後段の通信装置5、6に転送する転送部23と、を備える。複製部22は、ネットワーク1において管理されるリストに基づいて、第1プロトコル2から送信されたパケットのうち、特定のパケットの複製の可否を決定し、ネットワーク1の帯域負荷を表す負荷情報に基づいて特定のパケットの複製を行うか否かを判断する。
【0029】
つまり、複製部22は、特定のパケットの複製をネットワーク1の帯域負荷に応じて動的に制御する。本実施形態の通信装置4によれば、このように複製部22が特定のパケットの複製を帯域負荷の状況に応じて動的に制御することで、帯域負荷を一定に抑えること、ひいては常の一定の通信状態を保つことができる。また、通信装置4では、ネットワーク1において管理されるリストに基づいて複製の可否を決定するようになっているが、それに加えて帯域負荷の情報も用いて複製の判断を行うようになっていることから、複製されるパケットを制限することができる。
【0030】
このような構成の通信装置4によれば、負荷情報に基づいて通信経路の問題状況を判断することが可能となる。複製して転送を行う予定であった通信経路に問題がある場合、パケットを複製して転送を行ってもスムーズな通信が保証されることはない。そこで、上記構成の通信装置4では、複製して転送を行う予定であった通信経路に問題があると判断した場合、問題のない通信経路についてだけパケットの複製および転送を行うようにすることができる。
【0031】
上記構成によれば、問題のある通信経路についてはパケットの複製および転送が行われないため、無駄な帯域負荷の増加を抑えることが可能となり、例えば帯域負荷が増大して他の通信を妨げるといった事態の発生も防止される。また、上記構成によれば、問題のない通信経路についてはパケットの複製および転送が行われるため、パケットの損失を防ぐことができる。したがって、本実施形態によれば、帯域負荷の過剰な増加を抑制しつつパケットの損失率の低減を図ることができるという優れた効果が得られる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図6図11を参照して説明する。
図6に示すように、本実施形態のネットワーク31は、図1に示した第1実施形態のネットワーク1に対し、監視システム32が追加されている点、第1プロトコル2に代えて第1プロトコル33を備えている点、通信装置4に代えて通信装置34を備えている点などが異なっている。
【0033】
監視システム32は、ネットワーク31の帯域状態、つまりネットワーク31全体の処理負荷を監視するシステムである。監視システム32は、帯域負荷を表す情報である負荷情報を生成する。本実施形態における負荷情報は、ネットワーク31全体の帯域負荷を表す情報である。具体的には、本実施形態における負荷情報は、ネットワーク31の全ての通信装置34、5~13のそれぞれ同士の間の経路、つまり全ての通信経路の帯域負荷を表す情報となっている。監視システム32により生成される負荷情報は、第1プロトコル33に与えられる。第1プロトコル33は、複製対象のパケットを通信装置34に送信する際、監視システム32から負荷情報を取得し、その取得した負荷情報を通信装置34に送信する。
【0034】
図7に示すように、通信装置34は、通信装置4に対し、複製部22および転送部23に代えて複製部35および転送部36を備えている点などが異なっている。複製部35は、負荷情報に基づいて、全ての通信経路における通信速度および送信されているパケットの数をそれぞれ確認する。複製部35は、通信速度が予め定められた下限速度未満であるという条件および送信されているパケットの数が予め定められた上限数を超えるという条件のうち少なくとも一方を満たす場合、その経路の帯域負荷が高いと判断することができる。
【0035】
複製部35は、所定の通信経路について帯域負荷が高いと判断した場合、特定のパケットの複製を行わない。転送部36は、特定のパケットが複製部35により複製された場合、その複製されたパケットを、後段の通信装置5、6の両方に転送する。つまり、転送部36は、特定のパケットが複製部35により複製された場合、その複製されたパケットを、右回りの経路R1および左回りの経路R2の両方に転送する。
【0036】
転送部36は、受信部21が特定のパケット以外のパケットを受信した場合、そのパケットを、後段の通信装置5、6のうち送信先として指定された側の通信装置に転送する。転送部36は、特定のパケットが複製部35により複製されなかった場合、そのパケットを、後段の通信装置5、6のうちいずれか一方に転送する。具体的には、転送部36は、特定のパケットが複製部35により複製されなかった場合、そのパケットを、通信装置5、6のうち、帯域負荷が高いと判断された通信経路を含まない経路に介在する通信装置に転送する。
【0037】
なお、転送部36は、特定のパケットが複製部35により複製されなかった場合であり且つ通信装置5、6が介在する2つの経路の両方ともに帯域負荷が高いと判断された通信経路が含まれる場合、そのパケットを、後段の通信装置5、6のうち、上記通信経路の帯域負荷が相対的に低いほうの通信装置に転送する。このように、転送部36は、特定のパケットが複製部35により複製されなかった場合、そのパケットを、右回りの経路R1および左回りの経路R2のうちいずれか一方に転送する。
【0038】
上記構成において、第1プロトコル33は、特定のパケットを送信する際に図8に示すような内容の処理を実行する。まず、ステップS201では、複製対象のフレームを通信装置34に送信する。ステップS201の実行後はステップS202に進み、監視システム32から負荷情報を取得する。ステップS202の実行後はステップS203に進み、ステップS202において取得した負荷情報、つまりネットワーク31全体の帯域負荷を表す負荷情報を、通信装置34に送信する。ステップS203の実行後、本処理が終了となる。
【0039】
上記構成において、通信装置34は、第1プロトコル33から送信されたパケットを受信する度に、図9に示すような内容の処理を実行する。図9に示す処理は、図3に示した処理に対し、ステップS104に代えてステップS114が設けられている点、ステップS105に代えてステップS115が設けられている点、ステップS107に代えてステップS117が設けられている点などが異なっている。
【0040】
ステップ114では、第1プロトコル33から送信された負荷情報が受信される。ステップS115では、ステップS114にて受信された負荷情報に基づいて、全ての通信経路の帯域負荷が正常であるか否かが判断される。ここで、全ての通信経路の帯域負荷が正常であると判断された場合、ステップS115で「YES」となり、ステップS106に進む。
【0041】
一方、少なくとも1つの通信経路の帯域負荷が正常ではない、つまり帯域負荷が高いと判断された場合、ステップS115で「NO」となり、ステップS117に進む。ステップS117では、受信したパケットが、問題の無い経路、つまり2つの経路R1、R2のうち帯域負荷が高いと判断された通信経路を含まないほうの経路にだけ送信される。ステップS106またはS117の実行後、本処理が終了となる。
【0042】
次に、上記構成のネットワーク31において複製対象のパケットが送信される際における各部の動作について説明する。なお、以下では、比較のため、最初に第1実施形態のネットワーク1において複製対象のパケットが送信される際における各部の動作を説明し、その後、それと同様の条件にて本実施形態のネットワーク31において複製対象のパケットが送信される際における各部の動作を説明する。
【0043】
[1]第1実施形態において一部の通信経路の帯域負荷に問題がある場合
この場合、通信装置4から通信装置5へと至る通信経路の帯域負荷が少し高く、通信装置10から通信装置12へと至る通信経路の帯域負荷が非常に高い状況を想定している。このような場合、第1実施形態の構成では、パケットの流れは図10に示すようなものとなる。なお、図10などでは、帯域負荷が非常高い経路を一点鎖線で示している。
【0044】
すなわち、この場合、通信装置4は、第1プロトコル2から送信された複製対象であるパケットPを受信すると、負荷情報に基づいて通信装置4から通信装置5へと至る通信経路の帯域負荷が高いと判断することから、そのパケットPを通信装置6にだけ転送する。つまり、この場合、パケットPは、左回りの経路R2にだけ転送される。ただし、この場合、経路R2において、通信装置10から通信装置12へと至る通信経路は、その帯域負荷が非常に高い状態であり、断線している可能性もある。したがって、この場合、パケットPが通信装置13、ひいては第2プロトコル3に届かない可能性がある。
【0045】
[2]本実施形態において一部の通信経路の帯域負荷に問題がある場合
この場合、通信装置34から通信装置5へと至る通信経路の帯域負荷が少し高く、通信経路10から通信装置12へと至る通信経路の帯域負荷が非常に高い状況を想定している。このような場合、本実施形態の構成では、パケットの流れは図11に示すようなものとなる。
【0046】
すなわち、この場合、通信装置34は、第1プロトコル2から送信された複製対象であるパケットPを受信すると、負荷情報に基づいて通信装置10から通信装置12へと至る通信経路の帯域負荷が最も高いと判断することから、そのパケットPを通信装置5にだけ転送する。つまり、この場合、パケットPは、右回りの経路R1にだけ転送される。この場合、経路R1において、通信装置34から通信装置5へと至る通信経路は、その帯域負荷が少しだけ高い状態であることから、パケットPは、その伝送に若干の遅延が生じる可能性はあるものの、通信装置13、ひいては第2プロトコル3に正常に届けられることになる。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
第1実施形態のネットワーク1では、通信装置4がネットワーク1全体の帯域負荷を考慮しておらず、自装置の直後の通信経路における帯域負荷だけを考慮していることから、図10に示したようなケースにおいて、パケットPを第2プロトコル3に届けることができない可能性があり、その結果、パケットの損失率を低減させることができなくなるおそれがある。
【0048】
これに対し、本実施形態のネットワーク1では、通信装置34がネットワーク31全体の帯域負荷を考慮したうえで、経路R1および経路R2のうちどちらの経路でパケットPを転送するべきであるのかを判断していることから、図11に示したようなケースにおいても、パケットPを第2プロトコル3に確実に届けることができる。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態に比べ、パケットの損失率を一層確実に低減することができるという効果が得られる。
【0049】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図12図16を参照して説明する。
図12に示すように、本実施形態のネットワーク41は、図1に示した第1実施形態のネットワーク1に対し、通信装置4に代えて通信装置42を備えている点などが異なっている。図13に示すように、通信装置42は、通信装置4に対し、複製部22に代えて複製部43を備えている点などが異なっている。この場合、第1プロトコル2から通信装置42へと送信されるパケットには、優先度が付与されている。
【0050】
複製部43は、特定のパケットの優先度を判断し、相対的に優先度が高い特定のパケットについては、負荷情報に基づく判断に関係なく複製を行うようになっている。優先度を表す情報は、第1プロトコル2がパケットとは別の情報として適宜送信することも可能であるが、本実施形態では、優先度を表す情報をパケットに埋め込む、または優先度を表す情報を静的に定めておく、などの方法が採用されている。そのため、複製部43は、パケットに埋め込まれた優先度を表す情報または予め定められたパケット毎の優先度を表す情報に基づいて、特定のパケットの優先度を判断することができる。
【0051】
図14に示すように、優先度を表す情報は、フレームそのもの、具体的にはPCPに埋め込む方法を採用することができる。なお、TPIDはTag Protocol Identifierの略称であり、PCPはPriority Code Pointの略称であり、CFIはCanonical Format Indicatorの略称であり、VIDはVLAN Identifierの略称であり、TOSはType of Serviceの略称である。
【0052】
この場合、図15に示すように、PCPの値に応じて、優先度が8段階で設定されている。また、優先度を表す情報は、ストリームの識別ID毎に静的に決めておく方法、VIDで判断する方法、TOSで判断する方法などを採用することもできる。VIDまたはTOSで判断する方法については、それらの各値と優先度とを紐付けておくことで、それらの値に基づいて優先度を判断できるようにしておけばよい。例えば、VIDの値が「1」のときは優先度が「低い」とするともに、VIDの値が「4」のときは優先度「高い」とすることができる。
【0053】
上記構成において、通信装置42は、第1プロトコル2から送信されたパケットを受信する度に、図16に示すような内容の処理を実行する。図16に示す処理は、図3に示した処理に対し、ステップS301が追加されている点などが異なっている。この場合、ステップS104の実行後はステップS301に進む。ステップS301では、受信したパケットの優先度が相対的に高いものであるか否かが判断される。ここで、受信したパケットの優先度が相対的に高いものであると判断された場合、ステップS301で「YES」となり、ステップS106に進む。一方、受信したパケットの優先度が相対的に低いものであると判断された場合、ステップS301で「NO」となり、ステップS105に進む。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
上記各実施形態では、通信経路の帯域負荷に応じてパケットの複製を制限するようにしていたが、パケットによっては通信の優先度が高く、重要なものもある。そのような重要なパケットの場合、通信経路の帯域負荷に関係なくパケットを複製して第2プロトコル3まで確実に届けることが好ましい。そこで、本実施形態では、上記各実施形態と同様の帯域負荷に応じた判断に加え、パケットの優先度による判断をも加えることにより、優先度、ひいては重要度の高いパケットは複製および転送を行い確実に第2プロトコル3へ送信しつつ、その他のパケットについては通信経路の帯域負荷に応じて複製および転送を動的に制限することを可能としている。
【0055】
複製部43は、パケットに埋め込まれた優先度を表す情報または予め定められたパケット毎の優先度を表す情報に基づいて特定のパケットの優先度を判断するようになっている。このようにすれば、通信装置42においてパケット毎に優先度を割り出したり、第1プロトコル2が優先度を表す情報を別途送信する必要がなくなり、その分だけ、ネットワーク41全体における処理負荷を軽減することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0057】
本発明は、上記各実施形態において説明したネットワーク1、31、41において用いられる通信装置4、34、42に限らず、複数の通信装置がリング状に接続されたネットワークにおいて用いられる複数の通信装置のうちパケットを最初に受信する通信装置全般に適用することができる。
【0058】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0059】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ネットワーク、2…第1プロトコル、3…第2プロトコル、4~13…通信装置、22…複製部、23…転送部、31…ネットワーク、32…監視システム、33…第1プロトコル、34…通信装置、35…複製部、36…転送部、41…ネットワーク、42…通信装置、43…複製部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15