(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162088
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】緊張材定着具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 5/12 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
E04C5/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077278
(22)【出願日】2023-05-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】591211917
【氏名又は名称】川田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000252056
【氏名又は名称】日鉄SGワイヤ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512189277
【氏名又は名称】株式会社コイワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛文
(72)【発明者】
【氏名】森石 慶久
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 修二
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164DA01
2E164DA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既存の緊張材に断面欠損が生じている場合にも適用できる、緊張材定着具を提供する。
【解決手段】PC工法における既設の緊張材2に装着する、緊張材定着具1であって、緊張材2に外装するシェル3と、緊張材2とシェル3に外装するウェッジ4と、を有し、シェル3の内周面は、緊張材2の外周面の欠損部分21に嵌合することを特徴とする、緊張材定着具とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC工法における既設の緊張材に装着する、緊張材定着具であって、
前記緊張材に外装するシェルと、
前記緊張材と前記シェルに外装するウェッジと、を有し、
前記シェルの内周面は、前記緊張材の外周面の欠損部分に嵌合することを特徴とする、
緊張材定着具。
【請求項2】
前記シェルの内周面に、長さ方向に略均等な歯を有することを特徴とする、
請求項1に記載の緊張材定着具。
【請求項3】
前記シェルは略円筒状であり、前記緊張材のほぼ全周を覆うことを特徴とする、
請求項2に記載の緊張材定着具。
【請求項4】
前記シェルと前記ウェッジが一体に形成されていることを特徴とする、
請求項3に記載の緊張材定着具。
【請求項5】
前記シェルは略円弧状であることを特徴とする、
請求項2に記載の緊張材定着具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の緊張材定着具の製造方法であって、
前記緊張材の外周面形状をレーザースキャナーで計測し、
前記外周面形状に合わせた内周面を有する前記シェルを3Dプリンタにて作製することを特徴とする、
緊張材定着具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC工法における緊張材に装着する定着具に関し、特に腐食等により断面欠損が生じた緊張材に装着する、緊張材定着具及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路をはじめとするPC橋の多くが開通から長期間経過して老朽化が進んでおり、その対策として更新・修繕工事が行われている。
既設床版の更新や拡幅を行う場合には、既存部分の横締め緊張材の緊張力を維持するために、既設床版のコンクリートをはつって緊張材を露出し、露出した緊張材に中間定着具を装着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中間定着具は、略円錐台状のウェッジにより緊張材を挟み込んで固定する。
既存の緊張材は、コンクリート内部で腐食等により断面欠損が生じている可能性がある。断面欠損の程度が表面錆のようにごくわずかなものであれば、錆を除去して定着できるが、ウェッジの内径を下回るほど断面欠損が進行していた場合、そのような緊張材に従来のウェッジを適用すると、ウェッジの内周面と緊張材の接触面が少なくなり、緊張材がスリップしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、既存の緊張材に断面欠損が生じている場合にも適用できる、緊張材定着具及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はPC工法における既設の緊張材に装着する緊張材定着具であって、緊張材に外装するシェルと、前記緊張材と前記シェルに外装するウェッジと、を有し、前記シェルの内周面が、前記緊張材の外周面の欠損部分に嵌合することを特徴とする。なお、緊張材の表面の欠損次第では以下の対応が可能である。
前記シェルの内周面に、長さ方向に略均等な歯を有してもよい。
前記シェルは略円筒状であり、前記緊張材のほぼ全周を覆ってもよい。
前記シェルと前記ウェッジが一体に形成されていてもよい。
前記シェルは略円弧状であってもよい。
【0007】
また、本発明の緊張材定着具の製造方法は、前記緊張材の外周面形状をレーザースキャナーで計測し、前記外周面形状に合わせた内周面を有する前記シェルを3Dプリンタにて作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)現場にて緊張材の外周面形状を計測したデータに基づいてシェルを作製するため、あらゆる現場に適用できる。
(2)緊張材の欠損部分を確実に補填して、緊張材の外周面と密着させて接触面積を大きくすることができ、緊張材のスリップが生じない。
(3)ウェッジと比べて体積が小さなシェルのみを3Dプリンタにて作製するため、製造コストが安く、短工期である。
(4)シェルを断面略円弧(三日月)状とすることで、3Dプリンタでの製造コストがさらに安く、短工期となる。
(5)シェルとウェッジを一体とすることで、作製する体積が大きくなるため製造コストが高く、工期も長くなるが、部品点数が少なくなるため施工が容易となり、管理の手間も低減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例0011】
[1]緊張材定着具の概要
<1>緊張材定着具の構成
本発明の緊張材定着具1は、既設の緊張材2の外周をシェル3及びウェッジ4で挟み込み、中心に挿通孔51を有するジャケット5にウェッジ4を押し込んで緊張材2を把持するものである(
図1、2)。
【0012】
<2>緊張材
緊張材2は、高強度鋼からなるPC鋼棒や、素線をより合わせたPC鋼より線等である。
緊張材2は、既設床版のコンクリート内部に埋設されていたものであり、本願においては腐食等による断面欠損により、外周面に欠損部分21が生じている緊張材2に本発明の緊張材定着具1を適用する。
なお、本実施例では緊張材2の断面欠損の程度が大きく、ウェッジ4の内周面との接触がほとんど期待できない場合を想定する。
【0013】
<3>シェル
シェル3は緊張材2に外装する略円筒状の部材であり、本実施例においては二つ割り形状であり、緊張材2のほぼ全周を覆う形状である。
シェル3の内周面は、欠損部分21も含めて緊張材2に密着させるため、緊張材2の外周面の欠損部分21に嵌合する。また、シェル3の内周面には長さ方向に略均等に歯31を設ける。
シェル3の外周は欠損する前の緊張材2の外径と略同径とすることで、従来用いられているウェッジ4を利用することができる。
【0014】
<4>シェルの作製
シェル3は以下の手順により、金属積層3Dプリンタで作製することができる。
(i)現場にて、既設床版のコンクリートをはつって緊張材2を露出し、緊張材2の外周面形状を3Dレーザースキャナーで計測する。
(ii)計測で得られた外周面形状の点群データに基づいてポリゴンメッシュを生成する。
(iii)ポリゴンメッシュをサーフェスデータに変換する。
(iv)サーフェスデータに歯を合成する。
(v)金属積層3Dプリンタにてシェル3を作製する。シェル3の内周面は、歯を合成したサーフェスデータに合わせて形成する。作製したシェル3は、適宜熱処理を行う。
現場にて緊張材2の外周面形状を計測したデータに基づいてシェル3を作製するため、あらゆる現場に適用できる。また、緊張材2の欠損部分21を確実に補填して、緊張材2の外周面と密着させて接触面積を大きくすることができ、緊張材2のスリップが生じない。
そして、シェル3が緊張材2のほぼ全周に密着し、確実に緊張材2を定着することができる。
ウェッジ4と比べて体積が小さなシェル3のみを3Dプリンタにて作製するため、製造コストが安く、短工期である。
【0015】
<5>ウェッジ
ウェッジ4は、シェル3に外装する略円錐台状の部材であり、本実施例においては二つ割り形状である。
ウェッジ4の内周面には長さ方向に略均等に歯41を設ける。
【0016】
<6>ジャケット
ジャケット5は、例えば従来知られたアイ・フィクス(登録商標)の一部材であり、二つ割りの矩形の部材である。
ジャケット5は中央の挿通孔51により、緊張材2とシェル3に外装したウェッジ4を押し込むことで緊張材2を把持する。なお、ウェッジ4を把持することができれば、ジャケット5に限らず、適宜本発明のシェル3及びウェッジ4を適用することができる。