IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2024-162090ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法
<>
  • -ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法 図1
  • -ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法 図2
  • -ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法 図3
  • -ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法 図4
  • -ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法 図5
  • -ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法 図6
  • -ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162090
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/23 20060101AFI20241114BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E04B5/23
E04B1/98 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077282
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 宣行
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DG01
2E001FA02
2E001FA11
2E001GA51
(57)【要約】
【課題】下側がハーフプレキャストコンクリート部材で構成された鉄筋コンクリート梁に制振装置を取り付ける際の施工性を向上させる。
【解決手段】ハーフプレキャストコンクリート部材200は、鉄筋コンクリート梁100における制振間柱50を取り付ける部位の下側を構成する梁部材210と、梁部材210から上方に突出し施工時に制振間柱50を載せる突起部220と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート梁における制振装置を取り付ける部位の下側を構成する梁部材と、
前記梁部材から上方に突出し、施工時に前記制振装置を載せる突起部と、
を備えたハーフプレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
前記突起部の梁方向の外側の側面は、下側に向けて前記突起部の梁方向の幅が大きくなるように傾斜している、
請求項1に記載のハーフプレキャストコンクリート部材。
【請求項3】
上方の梁と下方の鉄筋コンクリート梁とに取り付けられた制振装置と、
下方の前記鉄筋コンクリート梁における前記制振装置を取り付ける部位の下側を構成し、突起部の上に前記制振装置が載せられた請求項1又は請求項2に記載のハーフプレキャストコンクリート部材と、
を備えた架構構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のハーフプレキャストコンクリート部材を支持部材で支持して設置する工程と、
前記ハーフプレキャストコンクリート部材の突起部の上に制振装置を載せる工程と、
前記ハーフプレキャストコンクリート部材の周囲にコンクリートを打設して鉄筋コンクリート梁を構築する工程と、
を備えた鉄筋コンクリート梁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフプレキャストコンクリート部材、架構構造及び鉄筋コンクリート梁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレキャストプレストレストコンクリートU字梁に関する技術が開示されている。この先行技術では、プレキャストプレストレストコンクリートU字梁は、横断面がU字トラフ状をなし、少なくとも1個のダイヤフラムを備え、該ダイヤフラムにPCケーブル挿通孔を備えたことを特徴としている。
【0003】
特許文献2には、鉄筋コンクリート造躯体の構築に使用されるプレキャストコンクリート製梁に関する技術が開示されている。この先行技術では、プレキャストコンクリート製梁は、鉄筋コンクリート造躯体の柱間に架設され大梁の一部を構成する。また、プレキャストコンクリート製梁は、スターラップと下端筋が埋設されてプレキャスト化された梁であり、本体は底板と側板とからU型断面形状をし、側板の上端からスターラップの上部が、両端から下端筋の端部がそれぞれ突出している。そして、側板間の中空部には本体の長さ方向に所要間隔をおいて軸に直交する方向にリブが突設され、両側板が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-82836号公報
【特許文献2】実開平2-144915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下側がハーフプレキャストコンクリート部材で構成された鉄筋コンクリート梁に制振装置を取り付ける場合、支保工等の支持部材で支持されたハーフプレキャスト部材の上に仮設材を設けて、この仮設材の上に制振装置を載せた状態で、ハーフプレキャスト部材の上にコンクリートを現場打ちすることが一般的である。しかし、この場合、ハーフプレキャスト部材の上に仮設材を設ける手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記事実を鑑み、下側がハーフプレキャストコンクリート部材で構成された鉄筋コンクリート梁に制振装置を取り付ける際の施工性を向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様は、鉄筋コンクリート梁における制振装置を取り付ける部位の下側を構成する梁部材と、前記梁部材から上方に突出し、施工時に前記制振装置を載せる突起部と、を備えたハーフプレキャストコンクリート部材である。
【0008】
第一態様のハーフプレキャストコンクリート部材では、施工時に制振装置を突起部に載せて鉄筋コンクリート梁を構築するので、ハーフプレキャストコンクリート部材の上に制振装置を載せるための仮設材が不要になる。よって、突起部がないハーフプレキャストコンクリート部材を用いる場合と比較し、施工性が向上する。
【0009】
第二態様は、前記突起部の梁方向の外側の側面は、下側に向けて前記突起部の梁方向の幅が大きくなるように傾斜している、第一態様に記載のハーフプレキャストコンクリート部材である。
【0010】
第二態様のハーフプレキャストコンクリート部材では、側面が傾斜していない場合と比較し、突起部がコッターとして機能した際の突起部の根元部分の破損が防止又は抑制される。
【0011】
第三態様は、上方の梁と下方の鉄筋コンクリート梁とに取り付けられた制振装置と、下方の前記鉄筋コンクリート梁における前記制振装置を取り付ける部位の下側を構成し、突起部の上に前記制振装置が載せられた請求項1又は請求項2に記載のハーフプレキャストコンクリート部材と、を備えた架構構造である。
【0012】
第三態様の架構構造では、施工時にハーフプレキャストコンクリート部材の上に制振装置を載せるための仮設材が不要になるので、施工性が向上する。
【0013】
第四態様は、第一態様又は第二態様に記載のハーフプレキャストコンクリート部材を支持部材で支持して設置する工程と、前記ハーフプレキャストコンクリート部材の突起部の上に制振装置を載せる工程と、前記ハーフプレキャストコンクリート部材の周囲にコンクリートを打設して鉄筋コンクリート梁を構築する工程と、を備えた鉄筋コンクリート梁の施工方法である。
【0014】
第四態様の鉄筋コンクリート梁の施工方法では、施工時にハーフプレキャストコンクリート部材の上に制振装置を載せて設置するための仮設材が不要になるので、施工性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施工時にハーフプレキャストコンクリート部材の上に制振装置を載せて設置するための仮設材が不要になるので、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ハーフプレキャストコンクリート部材及び制振間柱が設けられた架構の正面図である。
図2図1のプレキャスト部材の単体の正面図である。
図3】(A)は図1の3-3線に沿った断面図であり、(B)は同部位の変形例の断面図である。
図4】(A)は図1の4-4線に沿った断面図であり、(B)は同部位の変形例の断面図である。
図5】変形例のハーフプレキャストコンクリート部材及び制振間柱が設けられた架構の正面図である。
図6図5の変形例のプレキャスト部材の単体の正面図である。
図7】鉄筋コンクリート梁に制振間柱を取り付ける工程を(A)から(C)への順番に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本実施形態の架構構造について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向として、矢印Zで示す。また、X方向を左右方向とする。また、後述する鉄筋コンクリート梁のX方向外側から中心側に向かう方向側を内側とし、逆方向側を外側とする。
【0018】
なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、各要素の寸法及び比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない場合がある。複数の図面の相互間において各要素の寸法及び比率等は必ずしも一致していない場合がある。明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0019】
[架構構造]
まず、制振装置の一例としての制振間柱50が設置された架構10の架構構造11について説明する。
【0020】
図1に示すように、架構10は、左右の鉄筋コンクリート柱20と上下の鉄筋コンクリート梁30、100とで構成されている。上側の鉄筋コンクリート梁30と下側の鉄筋コンクリート梁100とには、制振間柱50が取り付けられている。なお、図1では、スラブ90(図3(A)及び図4(A)参照)は図示されていない。また、後述する図3及び図4では制振間柱50の図示を省略している。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の制振間柱50は、上側間柱60、下側間柱70及び制振部材52を有して構成されている。本実施形態の上側間柱60及び下側間柱70は、鋼製の鉄骨材等で構成されているが、これに限定されるものではない。
【0022】
制振部材52は、上側間柱60の下端部64と下側間柱70の上端部72との間に設けられ、これらに接合されている。制振部材52は、板厚方向がY方向の板状の高減衰ゴムと鋼板とがY方向に積層されて構成され、鉄筋コンクリート梁30、100の軸方向であるX方向にせん断変形して制振効果を発揮する粘弾性ダンパーである。なお、制振部材52は、鉄筋コンクリート梁30、100の材軸方向であるX方向にせん断変形して制振効果を発揮する構造であれば、どのようなものであってもよい。
【0023】
本実施形態では、上側間柱60の上端部62のベースプレート63と鉄筋コンクリート梁30の上面に設けたベースプレート65とを鉄筋コンクリート梁30を貫通するPC鋼棒80及びナット82で締結することで、上側間柱60と上側の鉄筋コンクリート梁30とを接合している。同様に本実施形態では、下側間柱70の下端部74のベースプレート73と鉄筋コンクリート梁100の下面に設けたベースプレート75とを鉄筋コンクリート梁100を貫通するPC鋼棒80及びナット82で締結することで、下側間柱70と下側の鉄筋コンクリート梁100とを接合している。
【0024】
なお、本実施形態では、判り易くするため、PC鋼棒80の貫通部分も実線で図示しているが、実際には、貫通部分は、鉄筋コンクリート梁30、100に埋設されているので、外からは見えない。また、PC鋼棒80は、鉄筋コンクリート梁30、100に埋設された図示が省略されているシース管内を挿通している。
【0025】
図3(A)及び図4(B)に示すように、下側の鉄筋コンクリート梁100には、鉄筋コンクリート造のスラブ90が接合され支持されている。スラブ90は、上端及び下端にそれぞれスラブ主筋92と配力筋94とが格子状に配筋されている。なお、図示されていないが、上側の鉄筋コンクリート梁30(図1参照)にも同様に鉄筋コンクリート造のスラブが接合され支持されていると共にスラブの上端及び下端にそれぞれスラブ主筋と配力筋とが格子状に配筋されている。
【0026】
下側の鉄筋コンクリート梁100の上端には、上端梁主筋110を構成する上端梁主筋110A、110B(図2参照)が材軸方向であるX方向に沿って配筋されている。同様に鉄筋コンクリート梁100の下端には、下端梁主筋112を構成する下端梁主筋112A、112B(図2参照)が材軸方向であるX方向に沿って配筋されている。そして、鉄筋コンクリート梁100の上端梁主筋110A、110B及び下端梁主筋112A、112B(図2参照)の周囲には、矩形枠状のせん断補強筋120が材軸方向であるY方向に間隔をあけて配筋されている(図2も参照)。なお、図2では、後述するハーフプレキャストコンクリート部材200以外の部材は想像線で図示している。
【0027】
上端梁主筋110A及び上端梁主筋110Bは後述するように端部同士が接続されており、同様に下端梁主筋112A及び下端梁主筋112Bは後述するように端部同士が接続されている。
【0028】
なお、図示されていないが、上側の鉄筋コンクリート梁30(図1参照)にも同様に上端梁主筋、下端梁主筋及びせん断補強筋が配筋されている。
【0029】
[鉄筋コンクリート梁]
次に下側の鉄筋コンクリート梁100について詳しく説明する。
【0030】
図1に示すように、鉄筋コンクリート梁100は、予め工場等で製作されるハーフプレキャストコンクリート部材200と、現場打ちで構築される梁本体部150と、を有して構成されている。ハーフプレキャストコンクリート部材200は、鉄筋コンクリート梁100における前述した制振間柱50の直下に設けられている。
【0031】
図2に示すように、ハーフプレキャストコンクリート部材200は、梁部材210と突起部220とを有して構成されている。梁部材210は、鉄筋コンクリート梁100における制振間柱50を取り付ける部位の下側を構成する。突起部220は梁部材210の上面部212のX方向の中央部分から上方に突出している。
【0032】
突起部220の上端面224は水平面又は略水平面となっている。突起部220のX方向の両外側の側面222は、下側に向けて突起部220の梁方向の幅が大きくなるように傾斜している。つまり、突起部220は、Y方向から見ると台形状となっており、根元部分がX方向に幅広になっている。本実施形態では、側面222の上端面224に対する角度は45°又は略45°であるが、これに限定されるものではない。
【0033】
突起部220の上端面224の上に制振間柱50が載せられている(図1参照)。よって、突起部220の上端面224のX方向の幅は、制振間柱50を安定して設置することが可能は長さ、例えば、0.5m~1.0m程度であることが望ましい。
【0034】
前述したように、鉄筋コンクリート梁100には、上端梁主筋110、下端梁主筋112及びせん断補強筋120が配筋されている(図2図3(A)及び図4(A)参照)。
【0035】
ハーフプレキャストコンクリート部材200には、上端梁主筋110A、下端梁主筋112B及びせん断補強筋120が埋設されている。
【0036】
上端梁主筋110Aは突起部220に埋設され側面222から突出している。また、下端梁主筋112Aは梁部材210に埋設され材軸方向の端面部211から突出している。そして、上端梁主筋110Aは上端梁主筋110Bと重ね継手等で接続され、下端梁主筋112Bは下端梁主筋112Bと重ね継手等で接続されている
【0037】
ハーフプレキャストコンクリート部材200における突起部220以外の部位のせん断補強筋120は、上部側122が梁部材210の上面部212から露出している。ハーフプレキャストコンクリート部材200における突起部220の部位のせん断補強筋120は、露出することなく、突起部220内に埋設されている。
【0038】
図3(A)及び図4(A)に示すように、スラブ90の上端及び下端には、それぞれスラブ主筋92及び配力筋94が配筋されている。図3(A)に示すように、スラブ主筋92におけるハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220以外の部位では、ハーフプレキャストコンクリート部材200に干渉することなく梁部材210の上方に配筋されている。
【0039】
図4(A)に示すように、スラブ主筋92におけるハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220に干渉する部分は、継手の一例としてのリレージョイント230と連結鉄筋232とで連結されている。具体的には、突起部220における梁方向と直交する側面部223にリレージョイント230が埋め込まれ、リレージョイント230同士が突起部220に埋設された連結鉄筋232で連結されている。そして、スラブ主筋92の端部92Aは、リレージョイント230に接続されている。なお、スラブ90の配力筋94は、ハーフプレキャストコンクリート部材200の上側には配筋されていない。よって、配力筋94は突起部220に干渉しない。
【0040】
なお、本実施形態のハーフプレキャストコンクリート部材200には、前述したPC鋼棒80が挿通するシース管が予め埋設されている。
【0041】
[施工工程]
次に、制振間柱50を下側の鉄筋コンクリート梁100に取り付ける施工工程の一例について説明する。
【0042】
図7(A)に示すように、ハーフプレキャストコンクリート部材200を吊り上げて、支持部材の一例としての支保工500で支持し、所定位置に設置する。支保工500は下階の梁又はスラブ等の上に設置され固定されている。
【0043】
図7(B)に示すように、ハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220の上に制振間柱50を設置する。そして、制振間柱50の下側間柱70のベースプレート73とハーフプレキャストコンクリート部材200の下面に設けたベースプレート75とをPC鋼棒80とナット82とで仮固定する。
【0044】
図3(A)及び図4(A)に示すハーフプレキャストコンクリート部材200の周囲に上端梁主筋110B、下端梁主筋112B及びせん断補強筋120を配筋する。また、スラブ主筋92及び配力筋94を配筋する。なお、図4(A)に示すように、スラブ主筋92におけるハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220に干渉する部分の端部92Aは、リレージョイント230に接続する。
【0045】
図7(C)に示すように、ハーフプレキャストコンクリート部材200の周囲にコンクリートを打設して鉄筋コンクリート梁100を構築する。また、コンクリートを打設してスラブ90(図3(A)及び図4(A)参照)を構築する。現場打ちのコンクリートが硬化して鉄筋コンクリート梁100の強度が所定以上となると、ナット82を締め込み、鉄筋コンクリート梁100に制振間柱50を固定する。また、支保工500を撤去する。
【0046】
そして、図1に示すように、上側の鉄筋コンクリート梁30を構築してコンクリートが硬化した後にナット82を締め込み、鉄筋コンクリート梁30に制振間柱50を固定する。
【0047】
[作用]
次に本実施形態の作用について説明する。
【0048】
施工時に制振間柱50をハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220に載せて鉄筋コンクリート梁100を構築するので、ハーフプレキャストコンクリート部材の上に制振間柱50を載せるための仮設材が不要になる。よって、突起部220がないハーフプレキャストコンクリート部材を用いる場合と比較し、施工性が向上する。
【0049】
なお、フルプレキャストコンクリート部材を用いる場合は、フルプレキャストコンクリート部材の上に制振間柱50を載せることが可能であるので仮設材は不要である。しかし、フルプレキャストコンクリート部材は、ハーフプレキャストコンクリート部材200よりも部品コストが高くなる。また、フルプレキャストコンクリート部材は、ハーフプレキャストコンクリート部材200よりも重量が重いので、輸送費用が高くなるとと共に揚重費用が高くなる。また、スラブ主筋92との干渉部分が多くなるので、リレージョイント230での接続部位が多くなり、施工の手間が増える。
【0050】
また、地震時に鉄筋コンクリート梁100が水平変位した際に、ハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220がコッターとしての機能をはたし、せん断ずれを防止又は抑制する。
【0051】
なお、突起部220がコッターとして機能した場合、突起部220における側面222と梁部材210の上面部214との境界部分に応力が集中し、当該部位が欠け易い。しかし、本実施形態の突起部220は、外側の側面222が傾斜し上面部214との角度が45°になっている。よって、突起部220における側面222と梁部材210の上面部214との境界部分の欠け等の破損が防止又は抑制される。
【0052】
<変形例>
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0053】
[スラブの変形例]
まず、スラブの変形例について説明する。
【0054】
図3(B)に示す変形例のスラブ91は、下側がハーフプレキャストコンクリート版93で構成されている。下端のスラブ主筋92は、ハーフプレキャストコンクリート部材200の梁部材210の上に配筋されてない。
【0055】
図4(B)に示す変形例のスラブ95は、ハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220の部分には配筋されていない。つまり、スラブ95における当該部位は、スラブ開口と同じ扱いとなっている。よって、施工が容易である。なお、この場合、ハーフプレキャストコンクリート部材200の突起部220には、リレージョイント230及び連結鉄筋232(図4(A))は埋設されていない。
【0056】
[ハーフプレキャストコンクリート部材の変形例]
次に、ハーフプレキャストコンクリート部材の変形例について説明する。
【0057】
図5及び図6に示す変形例のハーフプレキャストコンクリート部材300は、梁部材210と突起部310、320とを有して構成されている。突起部310、320は、梁部材210の上面部212のX方向の中央部分の両側から上方に突出し制振間柱50(図5参照)が載せられている。なお、図6では、図2と同様にハーフプレキャストコンクリート部材300以外の部材は想像線で図示している。
【0058】
図6に示すように、突起部310のX方向の外側の側面312は、下側に向けて突起部310の梁方向の幅が大きくなるように傾斜している。内側の側面313は、鉛直又は略鉛直である。つまり、突起部310は、Y方向から見ると台形状となっており、根元部分がX方向に幅広になっている。
【0059】
同様に、突起部320のX方向の外側の側面322は、下側に向けて突起部320の梁方向の幅が大きくなるように傾斜している。内側の側面323は、鉛直又は略鉛直である。つまり、突起部320は、Y方向から見ると台形状となっており、根元部分がX方向に幅広になっている。
【0060】
なお、本実施形態では、突起部310、320の上端面314、324は、水平面又は略水平面となっている。また、側面312、322の上面部212に対する角度は45°又は略45°であるが、これに限定されるものではない。
【0061】
突起部310、320以外の構成は、ハーフプレキャストコンクリート部材と同様であるので説明を省略する。また、本変形例のハーフプレキャストコンクリート部材300にも前述したPC鋼棒80が挿通するシース管が予め埋設されている。
【0062】
本変形例のハーフプレキャストコンクリート部材300では、X方向に間隔をあけた突起部310の上端面314と突起部320の上端面324の上に制振間柱50が載せられている。よって、制振間柱50をより安定して設置することが可能である。
【0063】
また、地震時に鉄筋コンクリート梁100が水平変位した際に、ハーフプレキャストコンクリート部材300の突起部310、320がコッターとしての機能をはたし、せん断ずれを防止又は抑制する。
【0064】
突起部310、320がコッターとして機能した場合、突起部310、320における側面312、322の上面部214と境界部分に応力が集中し欠け易い。しかし、突起部310、320の側面312、322は傾斜し上面部214との角度が45°になっている。よって、突起部310、320における側面312、322と梁部材210の上面部214との境界部分の欠け等の破損が防止又は抑制される。
【0065】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0066】
例えば、上記実施形態では、突起部は一つ又は二つであったが、これに限定されるものではない。三以上の突起部を有するハーフプレキャストコンクリート部材であってもよい。
【0067】
また、例えば、上記実施形態では、制振間柱50は、PC鋼棒80及びナット82で鉄筋コンクリート梁30、100に取り付けたが、これに限定されるものではない。例えば、制振間柱50は、アンカーボルト等を用いて鉄筋コンクリート梁30、100に取り付けてもよい。
【0068】
また、例えば、上記実施形態では、制振装置として制振間柱50を用いたが、これに限定されるものではない。制振装置としては、例えば、摩擦壁及び粘性壁等を用いることができる。
【0069】
また、例えば、上記実施形態では、上側の梁は鉄筋コンクリート梁30であったが、これに限定されるものではなく、上側の梁は例えば鉄骨梁であってもよい。
【0070】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の変形例は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0071】
50 制振間柱(制振装置の一例)
100 鉄筋コンクリート梁
200 ハーフプレキャストコンクリート部材
210 梁部材
220 突起部
222 側面
300 ハーフプレキャストコンクリート部材
310 突起部
312 側面
320 突起部
322 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7