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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162103
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】難燃床シート
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20241114BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241114BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20241114BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241114BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E04F15/16 A
C08K3/22
C08L27/06
B32B27/30 101
B32B27/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077320
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】宋 学方
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴央
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2E220AA02
2E220AA51
2E220AB04
2E220AB30
2E220BA19
2E220CA07
2E220DA02
2E220EA02
2E220EA04
2E220FA01
2E220FA11
2E220FA13
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA27X
2E220GA30X
2E220GB12X
2E220GB28X
2E220GB32X
2E220GB34X
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AA08
4F100AA17
4F100AA17A
4F100AH02
4F100AH02A
4F100AH02B
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA04
4F100CA04A
4F100CA04B
4F100CA08
4F100CA08A
4F100CA23
4F100CA23A
4F100CA23B
4F100GB08
4F100JJ07A
4F100JJ07B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BD041
4J002DE126
4J002DE238
4J002EH147
4J002FD018
4J002FD027
4J002FD136
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】 難燃性とともに、床シートを床下地に敷設する際の施工性に係る床シートの柔軟性の両立。
【解決手段】 塩化ビニル樹脂を樹脂主成分とする難燃床シートであって、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、可塑剤40質量部~75質量部、及び三酸化アンチモン1質量部~8質量部を含有すること、を特徴とする難燃床シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂を樹脂主成分とする難燃床シートであって、
塩化ビニル樹脂100質量部に対して、可塑剤40質量部~75質量部、及び三酸化アンチモン1質量部~8質量部を含有すること、
を特徴とする難燃床シート。
【請求項2】
塩化ビニル樹脂100質量部に対して、無機充填材10質量部~160質量部を更に含有すること、
を特徴とする請求項1に記載の難燃床シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の難燃床シートの下面側に、
塩化ビニル樹脂100質量部に対して、無機充填材250質量部以下、及び可塑剤50質量部~70質量部を含有する裏打ち層を積層したこと、
を特徴とする難燃床シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や車両などの床下地面に敷設する難燃性の床シートに関する。かかる床シートは、例えば、建物では主に集合住宅の開放廊下やベランダの床に、車両では鉄道やバスの客室床面に、好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1(特開2013-067163号公報)は、長尺シート状に形成された難燃性ゴム製の床シート本体と、上記床シート本体の裏面側に厚さ50μm以上500μm未満で積層されたアクリル系粘着剤製の粘着層と、備える車両用床シートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-067163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床シートの敷設にあたっては、接着剤を床下地に塗布し、その上に床シートを載置し、床シートを床下地に押し付ける。このとき、柔軟性の低い床シートは、例えば床下地の不陸などによって部分的に十分に接着せず、経時的にあるいは人の歩行による応力で剥離するという問題が生じる。また床下地に段差がある場合には、床シートが初期接着力に抗して浮き上がり、接着不良が生じる結果、やはり床シートが部分的に剥離するという問題もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、難燃性を保持しつつ、適切な柔軟性を備え、床シートを床下地に敷設する際の施工性に優れた床シート、すなわち難燃性と柔軟性の両立できる床シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく、本発明の難燃床シートは、
塩化ビニル樹脂を樹脂主成分とする難燃床シートであって、
塩化ビニル樹脂100質量部に対して、可塑剤40質量部~75質量部、及び三酸化アンチモン1質量部~8質量部を含有すること、
を特徴とする。
【0007】
このような構成を有する本発明の難燃床シートでは、床シートの難燃性と柔軟性を向上できる。したがって、床シートを床下地に敷設する際の下地追従性を改善して施工性をも向上できる。
【0008】
本発明の難燃床シートにおいては、
塩化ビニル樹脂100質量部に対して、無機充填材10質量部~160質量部を更に含有すること、
が好ましい。
【0009】
このような構成を有する本発明の難燃床シートによれば、床シートが隠蔽性を有するため、床シートを床下地に敷設したときに、床下地の色相や模様など、あるいは床下地に床シートを貼着するための接着剤層の色相や模様などを隠蔽して美観よく仕上げられる。また、床シートに裏打ち層を積層して積層体にした場合にも、裏打ち層の色相や模様などを隠蔽できる。
【0010】
本発明の難燃床シートにおいては、
請求項1又は2に記載の難燃床シートの下面側に、
塩化ビニル樹脂100質量部に対して、無機充填材250質量部以下、及び可塑剤50質量部~70質量部を含有する裏打ち層を積層したこと、
が好ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明の難燃床シートによれば、床シートの難燃性と柔軟性に加え、床シート積層体の強度を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、床シートの難燃性と柔軟性を向上できるので、床シートを床下地に敷設する際の下地追従性を改善して施工性をも向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る難燃床シート1の概略を示す断面図である。
図2】難燃床シート1の難燃試験の概略図である。
図3】難燃床シート1の垂下試験の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る難燃床シートの代表的な実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて大小や長短の比率や数量を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0015】
難燃床シート1は、長尺状に形成された床シート本体3を含む(図1参照)。
床シート本体3は、塩化ビニル樹脂を樹脂主成分とする。塩化ビニル樹脂は、難燃性・耐久性などに優れ、安価で重量も重くないので、床シート本体3を構成する樹脂の主成分として好適に用いることができる。なお、図1では、後述する繊維シート7が一定の厚みを有して描画されているが、繊維シート7と、裏打ち層5とを含めた積層構造のイメージを模式的に表現したものである。薄くかつ多数の空隙を有する繊維シート7に熱圧成形で樹脂などの組成成分が浸透して、実際には繊維シート7はほとんど識別できない状態になる。
【0016】
塩化ビニル樹脂として、平均重合度300~10000のポリ塩化ビニル樹脂を用いることができる。この理由は、塩化ビニル樹脂の平均重合度が300未満の値になると、所定形状を保持することが困難となったり、表面タックが過度に高い値になったりする場合があるためである。一方、塩化ビニル樹脂の平均重合度が10000を超えた値になると、均一に配合成分を混合分散したり、あるいは、所定の均一厚さの難燃性シートを作成したりすることが困難となる場合があるためである。したがって、塩化ビニル樹脂の平均重合度を500~5000の範囲内の値とすることがより好ましく、800~2000の範囲内の値とすることが更に好ましい。なお、塩化ビニル樹脂の平均重合度は、GPC装置やGC-MS装置を用い、モノマーの分子量及び標準スチレン粒子の換算値としての平均分子量から、算出することができる。
【0017】
床シート本体3は更に可塑剤及び三酸化アンチモンを含有する。
可塑剤は、床シート本体3に柔軟性やクッション性を付与するために用いられる。可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤が好適であり、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジノニル(DNP)、フタル酸ビスイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)及びフタル酸ビスノルマルオクチル(DNOP)等を挙げることができるが、これらに限られない。
【0018】
床シート本体3は、適切な柔軟性の観点から、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤40質量部以上を含有することが好ましく、中でも、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤45質量部以上を含有することが更に好ましい。
他方、可塑剤の増量は難燃性の低下を招く。それゆえ、床シート本体3では、適切な難燃性の確保の観点から、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤を75質量部以下とすることが好ましい。
【0019】
三酸化アンチモンSbは、難燃剤として用いられる。つまり、塩化ビニル樹脂は燃えにくいが、可塑剤が燃えやすいため、難燃剤として三酸化アンチモンを添加するのである。
三酸化アンチモンは、塩化ビニル樹脂と熱圧混合したペレットの形態で好適に使用できる。というのは、粉体である三酸化アンチモンを樹脂で固形化することにより、無粉じん化・作業効率の改善を図ることができ、作業環境改善に役立つからである。また、特定化学物質の規制対象から除外されるほか、劇物指定からも除外されるので、保管・運搬・ハンドリングが容易になる。
なお、後述する試験例では、難燃剤としてのペレットの配合量と、それに対応する三酸化アンチモンの配合量とをそれぞれ記載している。
【0020】
適切な難燃性の確保の観点から、床シート本体3は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して三酸化アンチモン1質量部~8質量部を含有することが好ましく、中でも、塩化ビニル樹脂100質量部に対して三酸化アンチモン1.2質量部~7.2質量部を含有することが更に好ましい。
【0021】
床シート本体3は、無機充填材を更に含有することが好ましい。無機充填材は、床シート本体3の強度の向上や熱伸縮の緩和のために又は増量材として用いられる。
無機充填材は、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、シリカ等を挙げることができるが、これらに限られない。
【0022】
床シート本体3は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填材0質量部超~160質量部を含有していればよいが、適切な隠蔽性及び難燃性の確保の観点からは、塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填材20質量部~150質量部を含有することが好ましい。
【0023】
無機充填材の好適な粒子径の範囲は、0.8~10μmが好ましい。無機充填材の平均粒子径が0.8μm以上であれば、無機充填材の二次凝集等を抑制して、樹脂への分散性が良好となり、10μm以下であれば、押出し時のドローダウンによる穴空き等が無く、成型性に優れる。なお、ここでいう「平均粒子径」は、粒度分布計により測定した粒度分布における質量50%の粒子径のことをいう。
【0024】
床シート本体3は安定剤を更に含有してもよい。安定剤としては、例えば、バリウム-亜鉛系(Ba-Zn系)複合安定剤、鉛系、ビスフェノールAグリシジルエーテル等のエポキシ系安定剤及びカルシウム-亜鉛系複合安定剤等の、液状または粉末状の安定剤を用いることができるが、これらに限られない。安定剤は、塩化ビニル樹脂との相溶性、成形加工性、低毒性の点から、エポキシ系安定剤とバリウム-亜鉛系複合安定剤とを含むことが好ましい。
【0025】
その他、床シート本体3は、本発明の要旨に反しない限り、例えば顔料や着色剤、紫外線吸収剤、赤外線反射剤などの各種の添加剤を含有してもよい。
【0026】
難燃床シート1は更に、その下面側に裏打ち層5を有してもよい。すなわち、裏打ち層5は、床シート本体3に付加されるもので、バッキング層又はバッカー層と言ってもよい。
【0027】
裏打ち層5は、無機充填材及び可塑剤を含有する。無機充填材及び可塑剤としては、床シート本体3に含有される無機充填材及び可塑剤と同じものを用いることができるが、これに限られない。
【0028】
裏打ち層5は、好ましくは、塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填材0質量部超~250質量部以下を含有し、とりわけ、適度な柔軟性の確保の観点からは、塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填材50質量部~250質量部を含有することが更に好ましい。
また、裏打ち層5は、好ましくは、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤50質量部~70質量部を含有し、とりわけ、難燃性と柔軟性の両立の観点から、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤52質量部~67質量部を含有することが更に好ましい。
【0029】
なお、難燃床シート1では、床シート本体3と裏打ち層5の間に中間層として繊維シート7が介在してもよい。繊維シート7としてはガラス繊維や樹脂繊維の不織布または織布を採用できる。繊維シート7を用いることで、難燃床シート1の引き裂き強度が向上し、また、環境温度や直射日光に起因するシートの伸縮を抑制できる。
【0030】
次いで、難燃床シート1の製造方法を説明する。
難燃床シート1は、上述した各材料を押出成形又はカレンダー成形で熱圧混錬してシートとすることができるが、本実施形態では次のような方法が好適に用いられる。
【0031】
すなわち、各材料の混合された樹脂混合物を押出成形で押出した棒状体、あるいはカレンダー成形や押出成形で作成したシート状体を、カッターなどで切断して、小塊もしくはペレット状または鱗片状にする。これら小塊をベルトコンベア上に散布して層状態としたのち、これを加熱炉内に導入して加熱溶融させ、さらにロールでプレスして成形することで、床シート本体3からなる難燃床シート1を得る。
【0032】
床シート本体3に裏打ち層5を積層した難燃床シート1を製造するためには、まずベルトコンベア上に裏打ち層5用の樹脂小塊を散布し、その上に中間層用の繊維シート7を載置する。そして、繊維シート7の上に、床シート本体3用の樹脂小塊を散布する。これを上述した工程と同じ工程を経て床シート本体3に裏打ち層5を積層した難燃床シート1を成形する。
【0033】
次いで、難燃床シート1の床下地への敷設方法を説明する。
櫛目ごてを用いて床下地に接着剤を櫛目状に塗布する。接着剤としては例えば一液硬化型ウレタン系接着剤などを好適に用いることができる。
接着剤を塗布した床下地の上に難燃床シート1を敷き、その後、ローラーなどを用いて難燃床シート1を床下地に向かって押し付けることで、難燃床シート1を貼着敷設する。
【0034】
試験例
「1.床シート本体3」、「2.裏打ち層5」、及び、「3.床シート本体3、繊維シート7及び裏打ち層5から構成されるシート」について各種試験を実施した。試験の方法と結果を以下に示す。
【0035】
1.床シート本体3の試験
難燃剤(三酸化アンチモン)、可塑剤及び無機充填材の各材料の配合量の異なる床シート本体3を準備し、(1)難燃性、(2)柔軟性、及び(3)下地隠蔽性について試験を実施し、その結果を以下の表1~表3に示す。
表1~表3において、試験No.1~6では難燃剤(三酸化アンチモン)の配合量において相違する試験体Tを、試験No.7~10では可塑剤の配合量において相違する試験体Tを、試験No.11~14では無機充填材の配合量において相違する試験体Tを、それぞれ用いた。
床シート本体3の樹脂主成分として、ポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度1000)を用いた。また、難燃剤として、日本精鉱株式会社製の三酸化アンチモンのマスターバッチMK80-Dを用いた(なお、本マスターバッチは三酸化アンチモンを80質量%含有するほか、塩化ビニル樹脂を20質量%、フタル酸エステル系可塑剤を12質量%含むが、表1~3の組成配合では塩化ビニル樹脂、可塑剤欄に算入して表わしている)。無機充填材には、平均粒子径2.7μmの炭酸カルシウムを用いた。
【0036】
(1)難燃性試験
難燃性の試験は、台湾車両安全検測基準19-1,車両内装材料難燃性要求-第6.5節、及び、垂直燃焼速率試験に準ずる。
【0037】
具体的には以下の手順、条件で評価する。
すなわち、図2に示すように、120×10mmのサイズを有するシート状の試験体Tを、試験装置71のアーム72から吊り下げ、試験体Tの下端にアルコールランプ76を配置する。
アルコールランプ76から高さL1=約40mmの火炎77を出し、その火炎77の中に試験体Tの下端をL2=約20mm差し入れる。試験体Tを12秒間保持する。12秒経過後、ランプ76を試験体Tから離した。そして、試験体Tからの火炎77が消えるまでの時間(残炎時間)を測定する。
これを3つの試験体T(N=3)で試験して、残炎時間がそれぞれ5秒内であれば、当該試験体Tが規格を満たすと判定し、それ以外は規格外であると判定した。
かかる難燃性試験の結果を以下の表1~表3に示す(同表には、3つの試験体のうちで、最も残炎時間の長いものを表示した)。
【0038】
(2)柔軟性試験
床シート本体3の柔軟性の試験は次のように実施した。
すなわち、縦横の寸法が120×10mmであり、厚みtが0.9~1.1mmである試験体Tを23℃の室内に24時間を放置して調整したのち、図3に示すように、試験体Tを直方体形状の試験台81上に置く。このとき、試験体Tの先端が試験台81からL3=100mm分を突出するようにし、試験台81に載っている部分を重り82で固定する。そして、60秒後における試験体Tの垂下幅量L4を測定する。ここで、垂下幅量L4は、測定台81の外周面と試験体Tの先端との間の距離であり、試験体Tの垂れにくさの指標として用いられる。
垂下幅量L4を試験体Tの厚みt(mm)で除することで得られる単位厚みあたりの垂下幅量X(=L4/t)を柔軟性の指標とし、単位厚みあたりの垂下幅量Xが50以下である場合に、当該試験体Tが規格を満たすと判定した。
かかる柔軟性試験の結果を以下の表1~表3に付記した。
【0039】
(3)隠蔽性試験
隠蔽性の試験は次のように実施した。
すなわち、基準として試験No.17の裏打ち層5のみの色相(L*、a*、b*)を測定した。また、この裏打ち層(試験No.17)上に載置した床シート本体3の試験体Tの色相を測定した。これらの色相を対比することで試験体Tの隠蔽性を評価した。
【0040】
色相の測定条件は次のとおりである。
分光光度計: コニカミノルタジャパン株式会社製分光測色計CM-3600A
光学系: d/8(拡散照明・8゜方向受光)
光源: D65光源
視野: 10度視野
測定面積: LAV φ25.4mm
【0041】
そして、試験体の色相と基準との色差(△E=[(ΔE*)+(Δa*)+(Δb*)1/2をL*a*b*色空間で表した。なお、ΔEが52以下であると、下地側の色相や模様が透けずに隠蔽できる。
【0042】
【表1】
【0043】
表1より、三酸化アンチモンの配合が塩化ビニル樹脂100質量部に対して1.2質量部以上である試験体が難燃性、柔軟性及び下地隠蔽性のいずれも満足することが分かる。また、三酸化アンチモンの配合が7.2質量部である試験体には残炎が生じないことから、これ以上の高価な三酸化アンチモンを加える必要はない。したがって、より好ましい三酸化アンチモンの添加量上限は7.2質量部であるといえる。
【0044】
【表2】
【0045】
表2より、可塑剤の配合が塩化ビニル樹脂100質量部に対して45質量部~75質量部である試験体は、難燃性、柔軟性及び下地隠蔽性のいずれも満足することが分かる。
これに対して、可塑剤の配合が塩化ビニル樹脂100質量部に対して40質量部である試験体は柔軟性を満足しない。また、可塑剤の配合が塩化ビニル樹脂100質量部に対して80質量部である試験体は難燃性を満足しない。
【0046】
【表3】
【0047】
表3より、無機充填材の配合が塩化ビニル樹脂100質量部に対して20質量部以上150質量部である試験体が難燃性、柔軟性及び下地隠蔽性のいずれも満足することが分かる。また、無機充填材が無配合である試験体は隠蔽性を満足しない。無機充填材の配合が180質量部である試験体は難燃性を満足しないことが分かる。なお、無機充填材の配合量を増やすと、残炎時間が長くなるのは、無機充填材の増量が組成全体に占める三酸化アンチモンの存在率を減少させた結果、燃焼抑制の効果が減少したためであると考えられる。
【0048】
2.裏打ち層5の準備
可塑剤及び無機充填材の各材料の配合量の異なる裏打ち層5を準備した。なお、裏打ち層5の試験体の構成材料として、上述したポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度1000)、炭酸カルシウム(平均粒子径2.7μm)を用いた。また、フタル酸エステル系可塑剤には、DOPを用いた。
【0049】
3.床シート本体3、繊維シート7及び裏打ち層5から構成される三層シートの試験
床シート本体3と、繊維シート7と、材料配合の異なる裏打ち層5と、から構成される三層シートを準備し、柔軟性及び難燃性の試験を実施した。その結果を以下の表4及び表5に示す。
【0050】
表4は試験No.15~19の結果を示す。これらの試験では、床シート本体3として試験No.4と同じ材料配合のものを、繊維シート7としてガラス不織布(厚み0.25mm)を共通に採用しつつ、裏打ち層5として、無機充填材の配合の異なる裏打ち層No.B1~B5を採用した。なお、これら裏打ち層には三酸化アンチモンなどの難燃剤は含んでいない。
【0051】
【表4】
【0052】
表4より、裏打ち層5における無機充填材の配合量は、増容積の観点から塩化ビニル樹脂100質量部に対して50質量部以上であることが好適であることが分かる。
【0053】
また、試験No.19の三層シートは適切な柔軟性に欠ける。これは、裏打ち層5における無機充填材の過多によるものと考えられる。すなわち、裏打ち層5における無機充填材の配合量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して250質量部以下であることが好適であることが分かる。
【0054】
表5は試験No.20~23の結果を示す。これらの試験では、床シート本体3として試験No.4と同じ材料配合のものを、繊維シート7としてガラス不織布(厚み0.25mm)を共通に採用しつつ、裏打ち層5として、可塑剤の配合の異なる裏打ち層No.B6~B9を採用した。なお、これら裏打ち層にも三酸化アンチモンなどの難燃剤は含んでいない。
【0055】
【表5】
【0056】
表5より、試験No.20の三層シートは適切な柔軟性に欠ける。これは、裏打ち層5における可塑剤の不足によるものと考えられる。すなわち、裏打ち層5における可塑剤の配合量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して52質量部以上であることが好適であることが分かる。
【0057】
試験No.23の三層シートは充分な難燃性を有しない。これは、裏打ち層5における可塑剤の過多によるものと考えられる。すなわち、裏打ち層5における可塑剤の配合量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して67質量部以下であることが好適であることが分かる。
【0058】
また、床シート本体3と裏打ち層5について、好適な厚み比[裏打ち層厚み(mm)]/[床シート本体厚み(mm)]は、難燃性と柔軟性を両立させるという観点から、概ね0.6以上1.0未満であり、さらに好ましくは0.7~0.9である。
【0059】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更後の態様(変形例)も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1 難燃床シート
3 床シート本体
5 裏打ち層5
7 繊維シート
図1
図2
図3