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特開2024-162110センサ状態推定装置及びセンサ状態推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162110
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】センサ状態推定装置及びセンサ状態推定システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/04 20060101AFI20241114BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20241114BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60W50/04
B60W40/04
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077330
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】于 歌
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】上杉 浩
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BA12
3D241BA29
3D241BA49
3D241BA60
3D241BA66
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD03
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DD12Z
5H181AA01
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL09
5H181MB07
(57)【要約】
【課題】自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費を低減して行うことを可能にする。
【解決手段】周辺監視センサでのセンシング結果から認識される自車の周辺環境の情報である認識情報を記憶する認識情報記憶部102と、認識情報記憶部102に記憶された認識情報から、センサ状態を推定するための基準とする基準物標の認識情報を抽出する基準抽出部103と、基準抽出部103から過去に抽出しておいた基準物標の認識情報と、周辺監視センサでの新たなセンシング結果から認識される自車の周辺環境に含まれるその基準物標の新たな認識情報とを照合することで、センサ状態を推定するセンサ状態推定部106とを備え、自動運転ECUが用いるのとは異なるプロセッサを用いるとともに、自動運転ECUが電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転を行う移動体の自動運転に用いられる、前記移動体の周辺を監視する周辺監視センサの状態であるセンサ状態を推定するセンサ状態推定装置であって、
前記周辺監視センサでのセンシング結果から認識される前記移動体の周辺環境の情報である認識情報を記憶する認識情報記憶部(102)と、
前記認識情報記憶部に記憶された認識情報から、前記センサ状態を推定するための基準とする基準物標の認識情報を抽出する基準抽出部(103,103a)と、
前記基準抽出部から過去に抽出しておいた基準物標の認識情報と、前記周辺監視センサでの新たなセンシング結果から認識される前記移動体の周辺環境に含まれるその基準物標の新たな認識情報とを照合することで、前記センサ状態を推定するセンサ状態推定部(106,106a,106b)とを備え、
前記自動運転の制御を行う自動運転制御部(17)が用いるのとは異なる演算処理装置を用いるとともに、前記自動運転制御部が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受けるセンサ状態推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記移動体の外部の記憶装置である外部記憶装置(3)との間で情報の送受信を行う送受信部(11a)を備え、
前記送受信部は、前記基準抽出部で抽出した基準物標の認識情報を前記外部記憶装置に送信するとともに、前記外部記憶装置に送信した前記基準物標の認識情報を、前記記憶装置から受信し、
前記センサ状態推定部は、前記基準抽出部から過去に抽出しておいた基準物標の認識情報と、前記周辺監視センサでの新たなセンシング結果から認識される前記移動体の周辺環境に含まれるその基準物標の新たな認識情報とを照合することで、前記センサ状態を推定するセンサ状態推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記基準抽出部は、前記認識情報記憶部に逐次記憶された認識情報から、同一地点に定常的に認識される物標を前記基準物標とし、前記基準物標の認識情報を抽出するセンサ状態推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記基準抽出部は、前記認識情報記憶部に記憶された認識情報から、前記移動体の周辺環境に含まれる車両についての型式である車両型式を特定する型式特定部(1031)を有し、
前記基準抽出部は、前記型式特定部で特定する車両型式ごとに特有のサイズ情報を、前記基準物標の認識情報として抽出するセンサ状態推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記基準抽出部は、前記認識情報記憶部に記憶された認識情報から、前記移動体の周辺環境に含まれる、標準規格が定まった路上設置物を特定する設置物特定部(1032)を有し、
前記基準抽出部は、前記設置物特定部で特定する前記路上設置物ごとに特有のサイズ情報を、前記基準物標の認識情報として抽出するセンサ状態推定装置。
【請求項6】
請求項1に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記センサ状態推定部は、前記基準抽出部から抽出された、少なくとも1日前よりも古い過去についての基準物標の認識情報に対する、前記周辺監視センサでの新たなセンシング結果から認識される前記移動体の周辺環境に含まれるその基準物標の新たな認識情報の変動に基づき、センサ状態を推定するセンサ状態推定装置。
【請求項7】
請求項1に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記基準抽出部で基準物標の認識情報を抽出した場合に、その基準物標が前記周辺監視センサでセンシングされた際の環境についての情報である環境情報を記録する環境情報記録部(104)を備え、
前記センサ状態推定部は、前記基準抽出部から過去に抽出しておいた基準物標の認識情報を、前記新たなセンシング結果が前記周辺監視センサで得られた際の環境と、前記環境情報記録部に記憶されている前記環境情報が示す環境との違いから、前記新たなセンシング結果が前記周辺監視センサで得られた際の環境において予測される認識情報に補正して、前記センサ状態を推定するセンサ状態推定装置。
【請求項8】
請求項2に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記移動体に設けられるセンサ状態推定装置。
【請求項9】
請求項1に記載のセンサ状態推定装置であって、
前記移動体の外部に設けられ、
前記認識情報記憶部は、前記認識情報を、通信を介して前記移動体から取得して記憶するセンサ状態推定装置。
【請求項10】
自動運転を行う移動体の自動運転に用いられる、前記移動体の周辺を監視する周辺監視センサでのセンシング結果から前記移動体の周辺環境を認識する周辺環境認識部(14,15)と、
前記周辺環境認識部で認識した周辺環境の情報である認識情報をもとに、前記移動体の自動運転の制御を行う自動運転制御部(17)と、
請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ状態推定装置(10,10a,10b)と、を含むセンサ状態推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ状態推定装置及びセンサ状態推定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転に関する制御を行う自動運転制御部内に設けられた劣化診断部において、自動運転に用いられる各センサの劣化の評価を行う技術が開示されている。特許文献1に開示の技術では、各センサからのデータ又は信号に基づいて実行した物体認識処理の認識結果を用いて、センサ毎の劣化の評価を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/065559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転の制御は複雑であるため、自動運転中の自動運転制御部では、処理負荷が大きくなる。よって、自動運転中の自動運転制御部において、劣化の評価に関する処理を行っうと、自動運転制御部の処理負荷が過多になるおそれがある。劣化の評価に関する処理としては、劣化の評価に用いる情報をセンサから取得する処理,劣化の評価を行う処理等が挙げられる。これに対して、駐車中に劣化の評価に関する処理を行うことも考えられる。しかしながら、自動運転の制御は複雑であるため、自動運転制御部の処理に必要となる電力も大きくなる。よって、駐車中に劣化の評価に関する処理を行った場合でも、バッテリの電力消費が増大化してしまうおそれがある。
【0005】
この開示の1つの目的は、自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費を低減して行うことを可能にするセンサ状態推定装置及びセンサ状態推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、1つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示のセンサ状態推定装置は、自動運転を行う移動体の自動運転に用いられる、移動体の周辺を監視する周辺監視センサの状態であるセンサ状態を推定するセンサ状態推定装置であって、周辺監視センサでのセンシング結果から認識される移動体の周辺環境の情報である認識情報を記憶する認識情報記憶部(102)と、認識情報記憶部に記憶された認識情報から、センサ状態を推定するための基準とする基準物標の認識情報を抽出する基準抽出部(103,103a)と、基準抽出部から過去に抽出しておいた基準物標の認識情報と、周辺監視センサでの新たなセンシング結果から認識される移動体の周辺環境に含まれるその基準物標の新たな認識情報とを照合することで、センサ状態を推定するセンサ状態推定部(106,106a,106b)とを備え、自動運転の制御を行う自動運転制御部(17)が用いるのとは異なる演算処理装置を用いるとともに、自動運転制御部が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受ける。
【0008】
これによれば、認識情報記憶部、基準抽出部、及びセンサ状態推定部を備えるセンサ状態推定装置が、自動運転の制御を行う自動運転制御部が用いるのとは異なる演算処理装置を用いることになる。よって、移動体の自動運転中に周辺監視センサのセンサ状態を推定しても、センサ状態の推定によって、自動運転制御部の処理負荷が過多にならずに済む。また、認識情報記憶部、基準抽出部、及びセンサ状態推定部を備えるセンサ状態推定装置が、自動運転制御部が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受けることになる。よって、移動体の運転終了時に、自動運転制御部を動作させなくても、センサ状態を推定することが可能になる。従って、移動体における電力消費の増大化を抑えることが可能になる。その結果、自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費を低減して行うことが可能になる。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本開示のセンサ状態推定システムは、自動運転を行う移動体の自動運転に用いられる、移動体の周辺を監視する周辺監視センサでのセンシング結果から移動体の周辺環境を認識する周辺環境認識部(14,15)と、周辺環境認識部で認識した周辺環境の情報である認識情報をもとに、移動体の自動運転の制御を行う自動運転制御部(17)と、前述のセンサ状態推定装置(10,10a,10b)と、を含む。
【0010】
これによれば、前述のセンサ状態推定装置を含むので、自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費を低減して行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】移動体用システム1の概略的な構成の一例を示す図である。
図2】センサ状態推定装置10の概略的な構成の一例を示す図である。
図3】基準物標の一例を説明するための図である。
図4】移動体用システム2の概略的な構成の一例を示す図である。
図5】車両側ユニット1aの概略的な構成の一例を示す図である。
図6】センサ状態推定装置10aの概略的な構成の一例を示す図である。
図7】移動体用システム2bの概略的な構成の一例を示す図である。
図8】車両側ユニット1bの概略的な構成の一例を示す図である。
図9】センサ状態推定装置10bの概略的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。
【0013】
<移動体用システム1の概略構成>
移動体用システム1は、自動運転を行う移動体に利用することが可能なものである。移動体用システム1は、図1に示すように、センサ状態推定装置10、通信モジュール11、ロケータ12、地図データベース(以下、地図DB)13、外界カメラ14、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)装置15、車両制御ECU16、自動運転ECU17、HCU(Human Machine Interface Control Unit)18、及び提示装置19を含んでいる。例えば、センサ状態推定装置10、通信モジュール11、ロケータ12、地図DB13、外界カメラ14、LiDAR装置15、車両制御ECU16、自動運転ECU17、及びHCU18は車内LAN(図1のLAN参照)と接続される構成とすればよい。移動体用システム1を用いる移動体は、例えば車両であるものとすればよい。移動体用システム1を用いる移動体は、移動体であれば車両に限るものではないが、以下では自動運転を行う自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。自動運転を行う自動車を、以下では自動運転車両と呼ぶ。
【0014】
自動運転車両の自動運転の度合い(以下、自動化レベル)としては、例えばSAEが定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えば以下のようにLV0~5に区分される。
【0015】
LV0は、車両側のシステムが介入せずに運転者が全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクは動的運転タスクと言い換えてもよい。運転タスクは、例えば操舵、加減速、及び周辺監視とする。LV0は、いわゆる手動運転に相当する。LV1は、システムが操舵と加減速とのいずれかを支援するレベルである。LV1は、いわゆる運転支援に相当する。LV2は、システムが操舵と加減速とのいずれをも支援するレベルである。LV2は、いわゆる部分運転自動化に相当する。LV1~2も自動運転の一部であるものとする。LV3の自動運転は、特定の条件下ではシステムが全ての運転タスクを実施可能であり、緊急時に運転者が運転操作を行うレベルである。LV3の自動運転では、システムから運転交代の要求があった場合に、運転手が迅速に対応可能であることが求められる。LV3は、いわゆる条件付運転自動化に相当する。LV4の自動運転は、対応不可能な道路,極限環境等の一部状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。LV4は、いわゆる高度運転自動化に相当する。LV5の自動運転は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。LV5は、いわゆる完全運転自動化に相当する。
【0016】
本施形態の自動運転車両は、少なくともLV1以上の自動運転を行うものとする。本施形態の自動運転車両は、自動化レベルが切り替え可能であってもよい。自動化レベルは、LV0~5のうちの一部のレベル間でのみ切り替え可能な構成であってもよい。
【0017】
通信モジュール11は、自車の外部のサーバ装置との間で、無線通信を介して情報の送受信を行う。つまり、広域通信を行う。このサーバ装置は、センタのサーバ装置であってもよいし、クラウドのサーバ装置であってもよい。通信モジュール11は、他車との間で、無線通信を介して情報の送受信を行ってもよい。つまり、車車間通信を行ってもよい。通信モジュール11は、路側に設置された路側機との間で、無線通信を介して情報の送受信を行ってもよい。つまり、路車間通信を行ってもよい。路車間通信を行う場合、通信モジュール11は、路側機を介して、自車の周辺車両から送信されるその周辺車両の情報を受信してもよい。
【0018】
ロケータ12は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサを備えている。GNSS受信機は、複数の測位衛星からの測位信号を受信する。慣性センサは、例えばジャイロセンサ及び加速度センサを備える。ロケータ12は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、ロケータ12を搭載した自車の車両位置(以下、自車位置)を逐次測位する。自車位置は、例えば緯度経度の座標で表されるものとする。なお、自車位置の測位には、車両に搭載された車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離も用いる構成としてもよい。
【0019】
図DB13は、不揮発性メモリであって、地図データを格納している。地図データは、ナビゲーション機能での経路案内に用いられる地図データであってもよいし、高精度地図データであってもよい。高精度地図データは、ナビゲーション機能での経路案内に用いられる地図データよりも高精度な地図データである。高精度地図データには、例えば道路の三次元形状情報,車線数情報,各車線に許容された進行方向を示す情報等の自動運転に利用可能な情報が含まれている。他にも、高精度地図データには、例えば区画線等の路面標示について、両端の位置を示すノード点の情報が含まれていてもよい。なお、ロケータ12は、道路の三次元形状情報を用いることで、GNSS受信機を用いない構成としてもよい。例えば、ロケータ12は、道路の三次元形状情報と、周辺監視センサでの検出結果とを用いて、自車位置を特定する構成としてもよい。周辺監視センサとしては、後述する外界カメラ14,LiDAR装置15等が挙げられる。
【0020】
なお、通信モジュール11は、外部のサーバ装置から配信される地図データを例えば広域通信で受信し、地図DB13に格納してもよい。この場合、地図DB13を揮発性メモリとし、通信モジュール11が自車位置に応じた領域の地図データを逐次取得する構成としてもよい。
【0021】
外界カメラ14は、自車の外界の所定範囲を撮像する。外界カメラ14は、周辺監視センサに相当する。図1では、便宜上、移動体用システム1に1つの外界カメラ14が含まれる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。移動体用システム1に含まれる外界カメラ14は、複数であってもよい。例えば、外界カメラ14としては、自車の前方、左側方、右側方、及び後方をそれぞれ撮像範囲とするように4つの外界カメラ14が移動体用システム1に含まれる構成としてもよい。
【0022】
外界カメラ14は、センシング結果として、逐次撮像する撮像画像の情報を得る。外界カメラ14は、撮像した画像(以下、撮像画像)に対して画像認識処理を行う。外界カメラ14は、画像認識処理によって、例えば自車位置に対する物体の位置、物体のサイズ、及び物体の種別を認識すればよい。よって、外界カメラ14が周辺環境認識部に相当する。この認識結果が、自車の周辺環境の情報である認識情報に相当する。外界カメラ14は、この認識情報を、逐次車内LANに出力すればよい。物体のサイズについては、自車から物体までの距離をもとに、撮像画像中でのサイズを実際のサイズに換算すればよい。物体のサイズは、物体の幅,高さ等とすればよい。他にも、画像認識処理によって物体の一部の構成要素まで検出できる場合には、この構成要素間の距離をサイズとして認識してもよい。一例としては、車両のテールランプ間の距離が挙げられる。他の例では、看板,道路標識内の文字のサイズ,色分けのサイズ比率が挙げられる。物体の種別は、例えばパターン認識によって認識すればよい。
【0023】
また、外界カメラ14は、記憶装置141を有する。移動体用システム1に含まれる外界カメラ14が複数の場合には、外界カメラ14ごとに記憶装置141を有する構成とすればよい。外界カメラ14は、認識情報を逐次車内LANに出力する他、認識情報を記憶装置141に記憶する。なお、外界カメラ14は、記憶装置141のメモリ容量を圧迫し過ぎないように、予め定めた特定物体についての認識情報に絞って記憶する構成としてもよい。特定物体の例としては、自動車,案内標識,警戒標識等とすればよい。記憶装置141は、外界カメラ14のスペックについてのスペック情報,撮像画像のログデータ等も認識情報に紐付けて記憶すればよい。撮像画像のログの一例としては、検出日時,検出位置,検出距離,反射強度,作動電圧,検出時天候等が挙げられる。
【0024】
LiDAR装置15は、自車周辺の所定の範囲に光を照射し、その光が物標によって反射された反射光を検出する光学センサである。LiDAR装置15も、周辺監視センサに相当する。図1では、便宜上、移動体用システム1に1つのLiDAR装置15が含まれる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。移動体用システム1に含まれるLiDAR装置15は、複数であってもよい。例えば、LiDAR装置15としては、自車の前方、左後側方、及び右後側方をそれぞれ走査範囲とするように3つのLiDAR装置15が移動体用システム1に含まれる構成としてもよい。
【0025】
LiDAR装置15は、センシング結果として、物体によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果を逐次得る。LiDAR装置15は、得られた走査結果としてのポイントクラウドに対して物体認識処理を行う。LiDAR装置15は、物体認識処理によって、例えば自車位置に対する物体の位置,物体のサイズ,及び物体の種別を認識すればよい。よって、LiDAR装置15が周辺環境認識部に相当する。この認識結果も、自車の周辺環境の情報である認識情報に相当する。LiDAR装置15は、この認識情報を、逐次車内LANに出力すればよい。物体のサイズについては、自車から物体までの距離をもとに、ポイントクラウドの座標系でのサイズを実際のサイズに換算すればよい。物体のサイズは、物体の幅,高さ等とすればよい。物体の種別は、例えばパターン認識によって認識すればよい。
【0026】
また、LiDAR装置15は、記憶装置151を有する。移動体用システム1に含まれるLiDAR装置15が複数の場合には、LiDAR装置15ごとに記憶装置151を有する構成とすればよい。LiDAR装置15は、認識情報を逐次車内LANに出力する他、認識情報を記憶装置151に記憶する。なお、LiDAR装置15は、記憶装置151のメモリ容量を圧迫し過ぎないように、予め定めた特定物体についての認識情報に絞って記憶する構成としてもよい。特定物体の例としては、自動車,案内標識,警戒標識等とすればよい。記憶装置151は、LiDAR装置15のスペックについてのスペック情報,走査結果のログデータ等も認識情報に紐付けて記憶すればよい。走査結果のログの一例としては、検出日時,検出位置,検出距離,反射強度,作動電圧,検出時天候等が挙げられる。
【0027】
本実施形態では、移動体用システム1に含まれる周辺監視センサが外界カメラ14及びLiDAR装置15である場合を例に挙げて説明するが、必ずしもこれに限らない。移動体用システム1に含まれる周辺監視センサは、外界カメラ14及びLiDAR装置15のうちのいずれか一方のみであってもよい。また、移動体用システム1に含まれる周辺監視センサは、外界カメラ14及びLiDAR装置15以外であってもよい。外界カメラ14及びLiDAR装置15以外の周辺監視センサとしては、ミリ波レーダ,ソナー等が挙げられる。
【0028】
本実施形態では、外界カメラ14及びLiDAR装置15で物体の位置,物体のサイズ,及び物体の種別を認識する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、周辺監視センサでのセンシング結果をもとに、周辺監視センサ以外の電子制御装置で物体の位置,物体のサイズ,及び物体の種別を認識してもよい。この場合、この電子制御装置の記憶装置で認識情報を記憶する構成とすればよい。つまり、周辺環境認識部にあたる機能ブロック及び認識情報を記憶する機能ブロックが、周辺監視センサ以外の電子制御装置に備えられる構成としてもよい。周辺環境認識部にあたる機能ブロックの電源系統が自動運転ECU17と異なるのであれば、以下のようにしてもよい。周辺環境認識部にあたる機能ブロック及び認識情報を記憶する機能ブロックに相当する部材が、自動運転ECU17の筐体内に設けられていてもよい。この周辺環境認識部、自動運転ECU17、及びセンサ状態推定装置10を含む構成が、センサ状態推定システムに相当する。本実施形態では、移動体用システム1がセンサ状態推定システムに相当する。
【0029】
車両制御ECU16は、自車の走行制御を行う電子制御装置である。走行制御としては、加減速制御及び/又は操舵制御が挙げられる。車両制御ECU16としては、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU及びブレーキECU等がある。車両制御ECU16は、自車に搭載された電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力することで走行制御を行う。
【0030】
自動運転ECU17は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるコンピュータを主体として構成される。このプロセッサが演算処理装置に相当する。自動運転ECU17が、自動運転制御部に相当する。自動運転ECU17は、車両電源から電力供給を受けて動作する。車両電源とは、車両が走行する際にオンとなる電源である。自車がエンジン車である場合、イグニッション電源が車両電源に相当する。また自車が電気自動車若しくはハイブリッド車といった電動車である場合、システムメインリレーが車両電源に相当する。
【0031】
自動運転ECU17は、メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。自動運転ECU17は、機能ブロックとして、状況認識部、行動判断部、及び制御実行部を備える。
【0032】
状況認識部は、自車に関する状況を認識する。状況認識部は、周辺監視センサで逐次得られる認識情報に基づき、自車の周囲の走行環境を認識する。状況認識部は、周辺監視センサの認識情報の他に、ロケータ12から取得する自車位置及び地図DB13から取得する地図データ等に基づき、自車の周囲の走行環境を認識してもよい。一例として、状況認識部は、これらの情報を用いて、実際の走行環境を再現した仮想空間を生成する。
【0033】
行動判断部は、運転者と自車のシステムとの間で運転操作の制御主体を切り替える。行動判断部は、運転操作の制御権がシステム側にある場合、状況認識部での認識結果に基づき、自車を走行させる走行プランを決定する。走行プランとしては、目的地までの経路,目的地に到着するために自車が取るべき振る舞いを決定すればよい。振る舞いの一例としては、直進、右折、左折、車線変更等がある。
【0034】
制御実行部は、運転操作の制御権が自車のシステム側にある場合、車両制御ECU16との連携により、行動判断部にて決定された走行計画に従って、自車の加減速制御及び操舵制御等を実行する。制御実行部は、例えばACC(Adaptive Cruise Control)制御、LTA(Lane Tracing Assist)制御、PCS(Pre-Collision Safety)制御、AEB(Automatic Emergency Braking)制御、及びLCA制御(Lane Change Assist)等を実行する。
【0035】
HCU18は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるコンピュータを主体として構成される。HCU18は、メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、乗員と自車のシステムとのやり取りに関する各種の処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。
【0036】
提示装置19は、自車に設けられて、自車の室内に向けて情報提示を行う。提示装置19は、HCU18の指示に従って情報提示を行う。提示装置19は、少なくとも運転者に向けて情報提示を行えばよい。提示装置19は、運転者以外の同乗者にも情報提示を行っても構わない。提示装置19としては、表示器,音声出力装置等が挙げられる。表示器は、情報を表示することで情報提示を行う。表示器としては、例えばメータMID(Multi Information Display),CID(Center Information Display),HUD(Head-Up Display),インジケータ等を用いることができる。メータMIDは、車室内のうちの運転席の正面に設けられる表示装置である。一例として、メータMIDは、メータパネルに設けられる構成とすればよい。CIDは、自車のインスツルメントパネルの中央に配置される表示装置である。HUDは、車室内のうちの例えばインスツルメントパネルに設けられる。HUDは、プロジェクタによって形成される表示像を、投影部材としてのフロントウインドシールドに既定された投影領域に投影する。HUDは、フロントウインドシールドの代わりに、運転席の正面に設けられるコンバイナに表示像を投影する構成としてもよい。音声出力装置は、音声を出力することで情報提示を行う。音声出力装置としては、スピーカ等が挙げられる。
【0037】
センサ状態推定装置10は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるコンピュータを主体として構成される。このプロセッサが演算処理装置に相当する。センサ状態推定装置10が用いるプロセッサは、自動運転ECU17が用いるプロセッサとは、物理的に異なるプロセッサである。つまり、センサ状態推定装置10は、自動運転ECU17が用いるのとは異なる演算処理装置を用いる。センサ状態推定装置10は、メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、周辺監視センサのセンサ状態の推定に関する各種の処理を実行する。センサ状態は、周辺監視センサの異常の有無に関する状態としてもよい。センサ状態は、一時的な異常ではない、周辺監視センサの性能劣化に関する状態とすればよい。センサ状態推定装置10は、車両電源とは異なる電源から電力供給を受けて動作する。つまり、自動運転ECU17が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受ける。一例としては、自車の駐車時にも電力供給が可能なバックアップ電源から電力供給を受けて動作する構成とすればよい。センサ状態推定装置10は、移動体に設けられる構成とすればよい。本実施形態の例では、センサ状態推定装置10は、自動車に設けられる。センサ状態推定装置10での処理の詳細については後述する。
【0038】
<センサ状態推定装置10の概略構成>
続いて、図2を用いて、センサ状態推定装置10の概略構成を説明する。図2に示すように、センサ状態推定装置10は、記憶用取得部101、認識情報記憶部102、基準抽出部103、環境情報記録部104、照合用取得部105、及びセンサ状態推定部106を機能ブロックとして備える。なお、センサ状態推定装置10が実行する機能の一部又は全部を、1つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、センサ状態推定装置10が備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。
【0039】
記憶用取得部101は、外界カメラ14の記憶装置141に記憶されている認識情報を取得する。記憶用取得部101は、LiDAR装置15の記憶装置151に記憶されている認識情報を取得する。記憶用取得部101は、取得した認識情報を認識情報記憶部102に記憶する。記憶用取得部101は、自車の走行中に、認識情報を取得する構成としてもよい。記憶用取得部101は、自車の駐車中に、認識情報を取得する構成としてもよい。
【0040】
基準抽出部103は、周辺監視センサのセンサ状態を推定するための基準とする基準物標の認識情報を抽出する。本実施形態では、外界カメラ14及びLiDAR装置15のセンサ状態を推定するための基準物標の認識情報を抽出する。基準抽出部103は、認識情報記憶部102に記憶された認識情報から、基準物標の認識情報を抽出する。基準抽出部103は、認識情報記憶部102に逐次記憶された認識情報から、同一地点に定常的に認識される物標を基準物標とし、基準物標の認識情報を抽出する。同一地点に定常的に認識されることは、認識された物体の位置の統計情報から特定すればよい。例えば、位置の分散が閾値以下である物標を基準物標とし、認識情報を抽出すればよい。この場合の認識情報としては、物体位置,反射強度,認識距離等が挙げられる。認識情報としては、周辺監視センサの作動電圧を用いてもよい。同一地点に定常的に認識される物標の例としては、特定の看板,道路標識等が挙げられる。基準物標としては、自車に対して特定の範囲に限らず、左右方向、上方向、近傍、遠方のあらゆる範囲を対象として抽出することが好ましい。これによれば、センサ状態の推定精度が向上する。図3の例では、自車であるHVに対して、左方向の警戒標識LWS、右方向の警戒標識RWS、及び上方向の案内標識RGSが基準物標として抽出される場合を示す。基準物標の認識情報の抽出は、例えば数日~数年のスパンでログを取って行えばよい。
【0041】
また、基準抽出部103は、型式特定部1031及び設置物特定部1032をサブ機能ブロックとして備えてもよい。型式特定部1031は、認識情報記憶部102に記憶された認識情報から、車両型式を特定する。つまり、自車の周辺環境に含まれる車両についての型式を特定する。そして、基準抽出部103は、型式特定部1031で特定する車両型式ごとに特有のサイズ情報を、基準物標の認識情報として抽出すればよい。車両型式ごとに特有のサイズ情報は、例えば車両型式とサイズ情報との対応関係を予め記憶したデータベースを参照して抽出すればよい。この場合のサイズ情報としては、例えば車両のテールランプ間の距離が挙げられる。他にも、車高,車幅等であってもよい。以上の構成によれば、走行中の車両であっても基準物標として利用することが可能になる。
【0042】
設置物特定部1032は、認識情報記憶部102に記憶された認識情報から、標準規格が定まった路上設置物を特定する。つまり、自車の周辺環境に含まれる、標準規格が定まった路上設置物を特定する。標準規格が定まった路上設置物としては、道路標識等が挙げられる。そして、基準抽出部103は、設置物特定部1032で特定する路上設置物ごとに特有のサイズ情報を、基準物標の認識情報として抽出すればよい。路上設置物ごとに特有のサイズ情報は、例えば路上設置物の種別とサイズ情報との対応関係を予め記憶したデータベースを参照して抽出すればよい。この場合のサイズ情報としては、例えば道路標識内の文字のサイズ,色分けのサイズ比率が挙げられる。以上の構成によれば、同一地点に同じ物標を複数回認識される前であっても、標準規格が定まった路上設置物を基準物標として利用することが可能になる。
【0043】
基準抽出部103は、基準物標の認識情報を抽出した場合に、その基準物標が周辺監視センサでセンシングされた際の環境情報を環境情報記録部104に記録すればよい。環境情報は、環境についての情報である。環境情報としては、時間帯,季節,天候等の情報が挙げられる。基準抽出部103は、抽出した基準物標の認識情報と、環境情報とを紐付けて環境情報記録部104に記録すればよい。
【0044】
照合用取得部105は、外界カメラ14及びLiDAR装置15で得られた認識情報を取得する。つまり、周辺監視センサでのセンシング結果から認識される自車の周辺環境に含まれる基準物標の認識情報を取得する。照合用取得部105は、例えばセンサ状態推定部106でセンサ状態の推定を行う場合に、認識情報を取得する構成とすればよい。照合用取得部105は、外界カメラ14及びLiDAR装置15が認識情報を逐次出力している場合には、逐次出力されるこの認識情報を取得すればよい。照合用取得部105は、外界カメラ14及びLiDAR装置15が認識情報を逐次出力していない場合には、以下のようにしてもよい。照合用取得部105は、例えば記憶装置141,151に記憶されている直近の認識情報を取得してもよい。これにより、自車の駐車時に、外界カメラ14及びLiDAR装置15がセンシングを行わない場合であっても、センサ状態の推定を行うことが可能になる。
【0045】
センサ状態推定部106は、基準抽出部103から過去に抽出しておいた基準物標の認識情報と、照合用取得部105で取得したその基準物標の新たな認識情報とを照合する。センサ状態推定部106は、この照合を行うことで、センサ状態を推定する。基準抽出部103から過去に抽出しておいた基準物標の認識情報を、以下では照合基準認識情報と呼ぶ。また、照合用取得部105で取得するその基準物標の新たな認識情報を、以下では新規認識情報と呼ぶ。新規認識情報は、周辺監視センサで照合基準認識情報が得られたよりも後のセンシングによって得られた認識情報である。以上の構成によれば、周辺監視センサの劣化による検知距離の低下,検知範囲の狭小化にともなう認識情報の変化をもとに、センサ状態をより精度良く推定することが可能になる。一例としては、新規認識情報としての検知距離から照合基準認識情報としての検知距離を差し引いた値の絶対値が設定値以上の場合に、センサの劣化を推定すればよい。
【0046】
センサ状態推定部106は、少なくとも1日前よりも古い過去についての照合基準認識情報に対する、新規認識情報の変動に基づき、センサ状態を推定することが好ましい。少なくとも1日前よりも古い過去についての照合基準認識情報とは、基準抽出部103から抽出された、少なくとも1日前よりも古い過去についての基準物標の認識情報である。例えば1日前よりも古い過去は、1年前であってもよいし、1か月前であってもよい。以上の構成によれば、一時的な異常でない経年劣化といった長期的な異常といったセンサ状態をより精度良く推定することが可能になる。
【0047】
センサ状態推定部106は、照合基準認識情報を、現在の環境に対しての照合基準認識情報に補正してセンサ状態を推定することが好ましい。センサ状態推定部106は、現在の環境と、環境情報記録部104に記憶されている環境情報が示す環境との違いから、現在の環境に対しての照合基準認識情報を推定し、補正すればよい。現在の環境とは、新たなセンシング結果が周辺監視センサで得られた際の環境と言い換えることができる。具体例としては、天候,季節,時間帯ごとの反射強度の傾向といった認識情報の変化の傾向を予め記憶したマップ等を用いて、上述の予測を行えばよい。そして、天候,季節,時間帯による環境情報の変化分だけ照合基準認識情報を補正すればよい。これによれば、現在の環境と同じ環境についての照合基準認識情報が得られていない場合であっても、得られている照合基準認識情報から推定して補正することが可能になる。その結果、現在の環境と同じ環境についての照合基準認識情報が得られていない場合であっても、センサ状態をより精度良く推定することが可能になる。なお、現在の環境と同じ環境についての照合基準認識情報が得られている場合には、その照合基準認識情報を用いてセンサ状態を推定すればよい。
【0048】
センサ状態推定部106は、センサ状態の推定結果を通知させる指示を、HCU18に送ることで、HCU18にセンサ状態の推定結果を通知させればよい。センサ状態の推定結果を、以下では診断結果と呼ぶ。診断結果の通知は、提示装置19から自車の乗員に向けて行わせればよい。提示装置19からの通知には、ナビゲーション画面での通知を含んでもよい。診断結果の通知は、車両の管理者の端末で行わせてもよい。管理者としては、車両の所有者,メンテナンス担当者等が挙げられる。端末は、PCであってもよいし、多機能携帯電話機であってもよい。車両の管理者の端末で診断通知を行わせる場合は、以下のようにすればよい。HCU18は、車両の管理者の端末として登録されたアドレスに、ネットワークを介して診断結果を送信し、端末の表示器で診断結果を通知させればよい。診断結果は、車両の販売店に向けて通知させてもよい。この場合、HCU18は、車両の販売店のコールセンターとして登録されたアドレスに、ネットワークを介して診断結果を送信すればよい。そして、コールセンターから、販売店の端末の表示器で診断結果を通知させればよい。
【0049】
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、前述したように、センサ状態推定装置10により、周辺監視センサのセンサ状態をより精度良く推定することが可能になる。また、センサ状態推定装置10は、自動運転ECU17が用いるのとは異なる演算処理装置を用いる。よって、自車の自動運転中に周辺監視センサのセンサ状態を推定しても、センサ状態の推定によって、自動運転ECU17の処理負荷が過多にならずに済む。つまり、自動運転処理を妨害することを抑えることが可能になる。また、センサ状態推定装置10は、自動運転ECU17が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受ける。よって、自車の駐車時に、自動運転ECU17を動作させなくても、センサ状態を推定することが可能になる。従って、自車のバッテリにおける電力消費の増大化を抑えることが可能になる。その結果、自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費を低減して行うことが可能になる。
【0050】
(実施形態2)
前述の実施形態の構成に限らず、以下の実施形態2の構成としてもよい。以下では、実施形態2の構成の一例について図を用いて説明する。
【0051】
<移動体用システム2の概略構成>
図4に示す移動体用システム2は、車両側ユニット1a及びサーバ装置3を含む。車両側ユニット1aとサーバ装置3とは、ネットワークを介して通信を行う。車両側ユニット1aは、車両HVに設けられる。車両側ユニット1aの詳細については後述する。サーバ装置3は、センタのサーバ装置であってもよいし、クラウドのサーバ装置であってもよい。サーバ装置3は、移動体の外部の記憶装置に相当する。サーバ装置3の詳細については後述する。本実施形態では、移動体用システム2がセンサ状態推定システムに相当する。
【0052】
<車両側ユニット1aの概略構成>
車両側ユニット1aは、図5に示すように、センサ状態推定装置10a,通信モジュール11a、ロケータ12、地図DB13、外界カメラ14、LiDAR装置15、車両制御ECU16、自動運転ECU17、HCU18、及び提示装置19を含んでいる。車両側ユニット1aは、一部の点を除けば、移動体用システム1と同様である。この点とは、センサ状態推定装置10及び通信モジュール11の代わりにセンサ状態推定装置10a及び通信モジュール11aを含む点である。
【0053】
通信モジュール11aは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の通信モジュール11と同様である。以下では、この異なる点について説明する。通信モジュール11aは、ネットワークを介してサーバ装置3と通信を行う。つまり、通信モジュール11aは、サーバ装置3は、外部記憶装置との間で情報の送受信を行う。この通信モジュール11aが送受信部に相当する。通信モジュール11aは、例えばセルラー通信によってサーバ装置3と通信を行えばよい。セルラー通信としては、例えば5Gに準拠した無線通信を用いればよい。
【0054】
通信モジュール11aは、センサ状態推定装置10aで抽出される基準物標の認識情報を、サーバ装置3に送信する。通信モジュール11aは、その基準物標が周辺監視センサでセンシングされた際の環境情報も、サーバ装置3に送信する。この環境情報は、実施形態1で述べたものと同様とすればよい。サーバ装置3では、送信されてくる、その基準物標の認識情報を記録する。サーバ装置3では、送信されてくる、その基準物標の認識情報と、その環境情報とを紐付けて記録すればよい。また、通信モジュール11aは、サーバ装置3に記録された基準物標の認識情報を、必要に応じてサーバ装置3から受信する。通信モジュール11aは、基準物標の認識情報に紐付けられた環境情報も、サーバ装置3から受信する構成としてもよい。
【0055】
<センサ状態推定装置10aの概略構成>
続いて、図6を用いて、センサ状態推定装置10aの概略構成を説明する。図6に示すように、センサ状態推定装置10aは、記憶用取得部101、認識情報記憶部102、基準抽出部103a、照合用取得部105、センサ状態推定部106aを機能ブロックとして備える。センサ状態推定装置10aは、基準抽出部103の代わりに基準抽出部103aを備える。センサ状態推定装置10aは、センサ状態推定部106の代わりにセンサ状態推定部106aを備える。センサ状態推定装置10aは、環境情報記録部104を備えない。センサ状態推定装置10aは、これらの点を除けば、実施形態1のセンサ状態推定装置10と同様である。
【0056】
基準抽出部103aは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の基準抽出部103と同様である。以下では、この異なる点について説明する。基準抽出部103aは、抽出した基準物標の認識情報を、通信モジュール11aを介して、サーバ装置3に送信する。基準抽出部103aは、その基準物標が周辺監視センサでセンシングされた際の環境情報も、通信モジュール11aを介して、サーバ装置3に送信してもよい。
【0057】
センサ状態推定部106aは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1のセンサ状態推定部106と同様である。以下では、この異なる点について説明する。センサ状態推定部106aは、通信モジュール11aを介して、サーバ装置3に記録された基準物標の認識情報を、サーバ装置3から取得する。この基準物標の認識情報は、基準抽出部103aから過去に抽出しておいた基準物標の認識情報である。センサ状態推定部106aは、取得したこの基準物標の認識情報と、照合用取得部105で取得したその基準物標の新たな認識情報とを照合する。センサ状態推定部106aは、この照合を行うことで、実施形態1で述べたのと同様にして、センサ状態を推定する。
【0058】
センサ状態推定部106aは、サーバ装置3から基準物標の認識情報を取得する場合に、紐付けられている環境情報も取得してもよい。センサ状態推定部106aは、現在の環境と、取得したこの環境情報が示す環境との違いから、現在の環境に対しての照合基準認識情報を推定し、補正してもよい。センサ状態推定部106aは、実施形態1で述べたのと同様にして、現在の環境に対しての照合基準認識情報を推定し、補正すればよい。
【0059】
<実施形態2のまとめ>
実施形態2の構成であっても、センサ状態推定装置10と同様に、センサ状態推定装置10aにより、周辺監視センサのセンサ状態をより精度良く推定することが可能になる。また、センサ状態推定装置10aは、自動運転ECU17が用いるのとは異なる演算処理装置を用いる。また、センサ状態推定装置10aは、自動運転ECU17が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受ける。よって、自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費を低減して行うことが可能になる。実施形態2では、基準抽出部103aから抽出した基準物標の認識情報を、サーバ装置3に送信して記憶し、必要に応じて取得する。よって、自車側のメモリの消費量を抑えることが可能になる。
(実施形態3)
前述の実施形態の構成に限らず、以下の実施形態3の構成としてもよい。以下では、実施形態3の構成の一例について図を用いて説明する。
【0060】
<移動体用システム2bの概略構成>
図7に示す移動体用システム2bは、車両側ユニット1b及びサーバ装置3bを含む。車両側ユニット1bとサーバ装置3bとは、ネットワークを介して通信を行う。車両側ユニット1aは、車両HVに設けられる。車両側ユニット1bの詳細については後述する。サーバ装置3bは、センサ状態推定装置10bを備える。サーバ装置3bは、センタのサーバ装置であってもよいし、クラウドのサーバ装置であってもよい。サーバ装置3bは、車両HVの外部に設けられる。サーバ装置3bの詳細については後述する。本実施形態では、移動体用システム2bがセンサ状態推定システムに相当する。
【0061】
<車両側ユニット1bの概略構成>
車両側ユニット1bは、図8に示すように、通信モジュール11b、ロケータ12、地図DB13、外界カメラ14、LiDAR装置15、車両制御ECU16、自動運転ECU17、HCU18、及び提示装置19を含んでいる。車両側ユニット1bは、通信モジュール11の代わりに通信モジュール11bを含む点と、センサ状態推定装置10を含まない点とを除けば、移動体用システム1と同様である。
【0062】
通信モジュール11bは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の通信モジュール11と同様である。以下では、この異なる点について説明する。通信モジュール11bは、ネットワークを介してサーバ装置3bと通信を行う。通信モジュール11bは、例えばセルラー通信によってサーバ装置3bと通信を行えばよい。セルラー通信としては、例えば5Gに準拠した無線通信を用いればよい。通信モジュール11bは、外界カメラ14の記憶装置141に記憶されている認識情報を、サーバ装置3bに送信する。通信モジュール11bは、LiDAR装置15の記憶装置151に記憶されている認識情報を、サーバ装置3bに送信する。通信モジュール11bは、車両HVの走行中に、認識情報を逐次送信する構成とすればよい。通信モジュール11bは、車両HVの駐車中に、走行中に得られた認識情報を送信する構成としてもよい。
【0063】
通信モジュール11bは、サーバ装置3bのセンサ状態推定装置10bから送信されてくる、センサ状態の推定結果(つまり、診断結果)を通知させる指示を受信する。診断結果を通知させる指示を、以下では通知指示と呼ぶ。通信モジュール11bで受信する通知指示は、HCU18に送られる。そして、HCU18が診断結果を通知させればよい。診断結果の通知については、実施形態1で述べたのと同様にして行えばよい。なお、車両の管理者の端末及び車両の販売店で診断通知を行わせる場合には、車両側ユニット1bを介さない構成としてもよい。例えば、センサ状態推定装置10bが、車両の管理者の端末として登録されたアドレスに診断結果を送信し、端末の表示器で診断結果を通知させればよい。例えば、センサ状態推定装置10bが、車両の販売店のコールセンターとして登録されたアドレスに診断結果を送信してもよい。そして、コールセンターから、販売店の端末の表示器で診断結果を通知させてもよい。
【0064】
<センサ状態推定装置10bの概略構成>
続いて、図9を用いて、センサ状態推定装置10bの概略構成を説明する。図9に示すように、センサ状態推定装置10bは、記憶用取得部101b、認識情報記憶部102、基準抽出部103、環境情報記録部104、照合用取得部105b、センサ状態推定部106b、及び送受信部107を機能ブロックとして備える。センサ状態推定装置10bは、記憶用取得部101の代わりに記憶用取得部101bを備える。センサ状態推定装置10bは、照合用取得部105の代わりに照合用取得部105bを備える。センサ状態推定装置10bは、センサ状態推定部106の代わりにセンサ状態推定部106bを備える。センサ状態推定装置10bは、送受信部107を備える。センサ状態推定装置10bは、これらの点を除けば、実施形態1のセンサ状態推定装置10と同様である。
【0065】
センサ状態推定装置10bが用いるプロセッサは、サーバ装置3bに備えられるプロセッサである。つまり、センサ状態推定装置10bは、自動運転ECU17が用いるのとは異なる演算処理装置を用いる。センサ状態推定装置10bは、車両電源とは異なる電源から電力供給を受けて動作する。センサ状態推定装置10bは、サーバ装置3bの電源から電力供給を受けて動作する。つまり、センサ状態推定装置10bは、自動運転ECU17が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受ける。
【0066】
送受信部107は、ネットワークを介して通信モジュール11bと通信を行う。つまり、送受信部107は、通信モジュール11bとの間で情報の送受信を行う。記憶用取得部101bは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の記憶用取得部101と同様である。以下では、この異なる点について説明する。記憶用取得部101bは、外界カメラ14の記憶装置141に記憶されている認識情報を、送受信部107を介して取得する。記憶用取得部101は、LiDAR装置15の記憶装置151に記憶されている認識情報を、送受信部107を介して取得する。つまり、実施形態3の認識情報記憶部102は、認識情報を、通信を介して車両HVから取得して記憶することになる。
【0067】
照合用取得部105bは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の照合用取得部105と同様である。以下では、この異なる点について説明する。照合用取得部105は、外界カメラ14及びLiDAR装置15で得られた認識情報を、送受信部107を介して取得する。つまり、周辺監視センサでのセンシング結果から認識される車両HVの周辺環境に含まれる基準物標の認識情報を取得する。照合用取得部105は、例えばセンサ状態推定部106bでセンサ状態の推定を行う場合に、認識情報を取得する構成とすればよい。照合用取得部105bは、例えば記憶装置141,151に記憶されている直近の認識情報を、送受信部107を介して取得すればよい。照合用取得部105bは、外界カメラ14及びLiDAR装置15から逐次出力される認識情報を、送受信部107を介して取得してもよい。
【0068】
センサ状態推定部106bは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1のセンサ状態推定部106と同様である。以下では、この異なる点について説明する。センサ状態推定部106bは、センサ状態の推定結果を通知させる指示(つまり、通知指示)を、送受信部107を介して通信モジュール11bへ送信させる。
【0069】
<実施形態3のまとめ>
実施形態3の構成であっても、センサ状態推定装置10と同様に、センサ状態推定装置10bにより、周辺監視センサのセンサ状態をより精度良く推定することが可能になる。また、センサ状態推定装置10bは、自動運転ECU17が用いるのとは異なる演算処理装置を用いる。また、センサ状態推定装置10bは、自動運転ECU17が電力の供給を受けるのとは異なる電源系統で電力の供給を受ける。よって、自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費を低減して行うことが可能になる。実施形態3では、センサ状態推定装置10bが車両HVの外部にあるため、自動運転に用いられる周辺監視センサの状態の推定を、自動運転を行う移動体における処理負荷及び電力消費をさらに低減して行うことが可能になる。
【0070】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 移動体用システム(センサ状態推定システム)、2,2b 移動体用システム(センサ状態推定システム)、3 サーバ装置(外部記憶装置)、10,10a,10b センサ状態推定装置、11a 通信モジュール(送受信部)、14 外界カメラ(周辺監視センサ,周辺環境認識部)、15 LiDAR装置(周辺監視センサ,周辺環境認識部)、17 自動運転ECU(自動運転制御部)、102 認識情報記憶部、103,103a 基準抽出部、104 環境情報記録部、106,106a,106b センサ状態推定部、1031 型式特定部、1032 設置物特定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9