(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162111
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】異常検知システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241114BHJP
F24F 11/32 20180101ALI20241114BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241114BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20241114BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20241114BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20241114BHJP
F24F 140/60 20180101ALN20241114BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20241114BHJP
【FI】
G06Q50/10
F24F11/32
F24F11/64
F24F11/46
F24F11/52
G06F1/20 B
G06F1/20 D
F24F140:60
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077333
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】河野 泰隆
【テーマコード(参考)】
3L260
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3L260AA11
3L260BA42
3L260BA51
3L260CA32
3L260CB70
3L260EA04
3L260EA07
3L260EA27
3L260FA09
3L260GA17
5L049CC12
5L050CC12
(57)【要約】
【課題】対象データの異常をより適切に検知する。
【解決手段】異常検知システムは、複数データソースそれぞれのデータ履歴と、複数データソースそれぞれのデータにおける異常を検知するための異常検知パラメータの履歴を示す異常検知パラメータ履歴とを格納する。異常検知システムは、第1データソースの現在データを取得し、現在データと第1データソースの現在異常検知パラメータとの関係が所定の更新条件を満たす場合に、予め設定された方法により現在データを含む期間に類似と判定された1以上の期間を、複数データソースの少なくとも一部のデータ履歴から抽出し、複数データソースの少なくとも一部それぞれの異常検知パラメータ履歴から、1以上の期間に対する異常検知パラメータを取得し、取得した1以上の期間に対する異常検知パラメータに基づいて現在異常検知パラメータを更新する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常検知システムであって、
1以上のプロセッサと、
1以上の記憶装置と、を含み、
前記1以上の記憶装置は、
複数データソースそれぞれのデータ履歴と、
前記複数データソースそれぞれのデータにおける異常を検知するための異常検知パラメータの履歴を示す、異常検知パラメータ履歴と、を格納し、
前記1以上のプロセッサは、
前記複数データソースにおける第1データソースの現在データを取得し、
前記現在データと前記第1データソースの現在異常検知パラメータとの関係が所定の更新条件を満たす場合に、予め設定された方法により前記現在データを含む期間に類似と判定された1以上の期間を、前記複数データソースの少なくとも一部のデータ履歴から抽出し、
前記複数データソースの少なくとも一部それぞれの異常検知パラメータ履歴から、前記1以上の期間に対する異常検知パラメータを取得し、
取得した前記1以上の期間に対する異常検知パラメータに基づいて、前記現在異常検知パラメータを更新する、異常検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知システムであって、
前記複数データソースのデータ履歴は、複数空調システムの消費電力履歴を示す、異常検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の異常検知システムであって、
前記1以上の記憶装置は、対象空調システムの過去の消費電力を入力に含み、前記対象空調システムの未来の消費電力を予測する、予測モデルを格納し、
前記異常検知パラメータは、空調システムの消費電力の予測値と実測値との間の差に関連付けられた閾値であり、
前記1以上のプロセッサは、
前記予測モデルに、前記第1データソースの過去の消費電力を含むデータを入力して、前記第1データソースの未来の消費電力の予測値を取得し、
前記予測値と前記第1データソースの消費電力の実測値との間の差と、現在閾値と、の比較結果に基づき、前記第1データソースの消費電力の異常を検知し、
前記現在閾値を、前記1以上の期間に対する閾値に基づいて更新する、異常検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載の異常検知システムであって、
前記予測モデルの入力は、前記対象空調システムの室外温度を含む、異常検知システム。
【請求項5】
請求項1に記載の異常検知システムであって、
前記1以上のプロセッサは、前記1以上の期間に対する異常検知パラメータの統計値を前記現在異常検知パラメータの更新後の異常検知パラメータに決定する、異常検知システム。
【請求項6】
請求項1に記載の異常検知システムであって、
前記1以上のプロセッサは、
前記第1データソースの1以上の現在異常検知パラメータを使用した多数決により前記更新条件の判定を行い、
前記1以上の期間に対する異常検知パラメータの全てを前記第1データソースの更新後の異常検知パラメータに決定する、異常検知システム。
【請求項7】
請求項2に記載の異常検知システムであって、
前記期間の類似判定は、前記空調システムの消費電力の波形の間の類似と、前記消費電力と前記消費電力に影響を与える外部メトリクスとの相関の類似とに基づく、異常検知システム。
【請求項8】
請求項1に記載の異常検知システムであって、
前記現在データを含む期間に類似する期間は、前記第1データソース及び前記第1データソースと異なる他のデータソースのデータ履歴において検索される、異常検知システム。
【請求項9】
請求項1に記載の異常検知システムであって、
前記1以上のプロセッサは、前記現在異常検知パラメータを更新する場合に、前記第1データソースの現在データ及び過去データと、更新後の異常検知パラメータの情報と、前記1以上の期間に対する異常検知パラメータの情報と、をユーザに提示する、異常検知システム。
【請求項10】
異常検知システムにより実行される方法であって、
前記異常検知システムは、
複数データソースそれぞれのデータ履歴と、
前記複数データソースそれぞれのデータにおける異常を検知するための異常検知パラメータの履歴を示す、異常検知パラメータ履歴と、を格納し、
前記方法は、
前記異常検知システムが、前記複数データソースにおける第1データソースの現在データを取得し、
前記異常検知システムが、前記現在データと前記第1データソースの現在異常検知パラメータとの関係が所定の更新条件を満たす場合に、予め設定された方法により前記現在データを含む期間に類似と判定された1以上の期間を、前記複数データソースの少なくとも一部のデータ履歴から抽出し、
前記異常検知システムが、前記複数データソースの少なくとも一部それぞれの異常検知パラメータ履歴から、前記1以上の期間に対する異常検知パラメータを取得し、
前記異常検知システムが、取得した前記1以上の期間に対する異常検知パラメータに基づいて、前記現在異常検知パラメータを更新する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SDGs(Sustainable Development Goals)に向けた取り組みのために省エネルギー化が求められている。一方で、現代において世界のエネルギーの多くを消費しているデータセンタの需要が継続的に高まっており、データセンタの電力効率改善が求められている。データセンタ事業者にとって削減可能な電力は主にチラーなどの冷却装置を含む空気調和機(空調機)である。
【0003】
この消費電力量削減が重要であるが、冷却装置の消費電力量は、IT機器の負荷や外気温の変動に影響を受けるほか、建屋やサーバルームそのものの特徴に影響され、データセンタのサーバルームごとに影響の受け方は異なる。また、その特徴はサーバルームに含まれるIT機器や、ワークロード、季節変動などにより時間変化する。そのため、冷却装置の消費電力量の非効率を精度良く検知することが必要であるものの、電力の変動が非効率であるか否かを適切に判定するには、サーバルームごとに判定パラメータの調整が必要である。
【0004】
サーバルームごとの特徴の時系列的な変化を捕捉し、各サーバルームの特性にあったパラメータの調整を行うためには、適切な特徴変化地点の検知、および適切な異常検知条件の更新方法が必要である。以降、異常検知条件をパラメータと呼ぶ。特許文献1には、過去のデータから消費電力の予測モデルを作成し、予実差に基づいて予測モデル更新要否の判定を行う方法を開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、データセンタの各サーバルームにおける冷却装置の消費電力量(冷却装置消費電力量)に関する非効率検知を考える。ここで非効率とは、例えば、冷却が過多であるために、サーバルーム全体的に、もしくはサーバルーム内で局所的に望ましい室温よりも実際の室温が低くなることを想定する。非効率検知は異常検知の一つである。サーバルームの特徴が変わる理由としては、サーバルーム内のIT機器の増減や変更、冷却装置の増減や変更、人手作業による冷却装置の設定変更、などがある。
【0007】
一方、人手作業による冷却装置の設定変更は必ずしも最適に行われるとは限らず、誤りを含んでいる可能性がある。また、冷却装置の機械的特性によっては、外気温や、湿度、室温、IT機器等の消費電力量(IT機器等消費電力量)、の変化によって冷却装置の消費電力量の変動の特徴が大きく変化することがある。このような事象は、他の種類のデータソースのデータにおいても起こりえる。したがって、対象データの特徴の変化に対応して異常を適切に検知することができる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の異常検知システムは、1以上のプロセッサと、1以上の記憶装置と、を含み、前記1以上の記憶装置は、複数データソースそれぞれのデータ履歴と、前記複数データソースそれぞれのデータにおける異常を検知するための異常検知パラメータの履歴を示す、異常検知パラメータ履歴と、を格納し、前記1以上のプロセッサは、前記複数データソースにおける第1データソースの現在データを取得し、前記現在データと前記第1データソースの現在異常検知パラメータとの関係が所定の更新条件を満たす場合に、予め設定された方法により前記現在データを含む期間に類似と判定された1以上の期間を、前記複数データソースの少なくとも一部のデータ履歴から抽出し、前記複数データソースの少なくとも一部それぞれの異常検知パラメータ履歴から、前記1以上の期間に対する異常検知パラメータを取得し、取得した前記1以上の期間に対する異常検知パラメータに基づいて、前記現在異常検知パラメータを更新する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、対象データの異常をより適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】冷却装置の消費電力量のログを保存するテーブルの一例を示す図
【
図6】IT機器等の消費電力量のログを保存するテーブルの一例を示す図
【
図7】センサ等のログを保存するテーブルの一例を示す図
【
図8】気象庁等から提供される気象データのログを保存するテーブルの一例を示す図
【
図9】更新対象のパラメータを保存するテーブルの一例を示す図
【
図11】冷却装置消費電力量ログの変動タイプを決定する方法を示すフローチャート
【
図13】他のサーバルームとの類似度算出方法を示すフロー
【
図14】パラメータ更新プログラムの計算結果を示す画面出力例
【
図15】パラメータ更新プログラムの計算結果を示す画面出力例
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
以下、
図1~
図15を参照してパラメータ更新方法および演算装置の実施例1を説明する。
図1は、異常検知システムの例である、演算システム100の全体構成図である。演算システム100は、第1データセンタ1000と、計算環境2000と、を含む。第1データセンタ1000は第1サーバルーム1000Aと、第2サーバルーム1000Bと、を含む。第1サーバルーム1000A及び第2サーバルーム1000Bは、それぞれ、1以上の計算機3000、1以上の冷却装置4000および1以上の温湿度センサ5000を含む。
【0012】
第1サーバルーム1000Aと、第2サーバルーム1000Bと、計算環境2000とは、広域ネットワーク9000により接続される。サーバルームは地理的に分散していてもよい。計算環境2000はオンプレミス環境であっても、パブリッククラウド環境であってもよい。また、バーチャルマシン上にあっても良い。
【0013】
サーバルーム1000A、1000Bにおいて、計算機3000、冷却装置4000および温湿度センサ5000は通信線8000により接続される。第1サーバルーム1000Aおよび第2サーバルーム1000Bに含まれる計算機3000、冷却装置4000および温湿度センサ5000は総称であり、本実施例では区別をしない。
【0014】
演算システム100に含まれるデータセンタの数は1に限定されず、2以上でもよい。第1データセンタ1000は拠点に相当し、データセンタの数が2以上の場合には各拠点は地理的に分散していてもよい。第1データセンタ1000に含まれるサーバルームの数は2に限定されず、1でもよいし3以上でもよい。計算機3000は、何らかの演算を行う装置であり、演算内容は限定されない。計算機3000には、コンピュータ、データストレージ装置、ネットワークスイッチ、およびハブなどを含む
【0015】
冷却装置4000は計算機3000から発せられる熱や外気から取り込まれる熱を冷却する空調装置である。具体的な構成は限定されないが、冷媒を用いる装置でもよいし、冷却水を用いるチラーでもよいし、ファンなどでもよい。サーバルーム内の1以上の空調装置によりサーバルームの空調システムが構成される。
【0016】
計算機3000は、単位時間当たりの演算量の増加により消費電力および発熱量が増加するので、室温を一定に保つためには冷却装置4000の消費電力も増加する傾向にある。すなわち、計算機3000の消費電力と冷却装置4000の消費電力は正の相関を有すると言える。また、外気の気温の上昇によりサーバルームの温度も上昇するので、室温を一定に保つためには冷却装置4000の消費電力も増加する傾向にある。すなわち、外気温と冷却装置4000の消費電力は正の相関を有すると言える。
【0017】
温湿度センサ5000は第1サーバルーム1000Aや第2サーバルーム1000Bに設置されている装置である。第1サーバルーム1000Aに設置された温湿度センサ5000は第1サーバルーム1000Aまたは第2サーバルーム1000B内の温度と湿度を観測し、観測されたデータは通信線8000Aまたは8000Bおよび広域ネットワーク9000を介してデータストア7000に保存される。
【0018】
温湿度センサ5000の設置場所は壁、床、床下、および天井のどこでもよいし、これに限らない。また温湿度センサ5000の形態は、1つのセンサで温度と湿度の両方が計測可能なセンサでもよいし、一方のみ計測可能なセンサでもよい。また温湿度センサ5000は1点の温度または湿度を計測するセンサでもよいし、空間の局所ないし全体を計測するセンサでもよい。
【0019】
管理計算機6000は、計算機3000、冷却装置4000、および温湿度センサ5000を管理する。管理計算機6000は計算機3000や冷却装置4000の消費電力に関するデータ、および温湿度センサ5000で計測された温度および湿度のデータを収集し、データストア7000に格納する。計算機3000、管理計算機6000、およびデータストア7000はベアメタル、すなわち物理的な装置でもよいし仮想マシンでもよい。また、計算機3000、管理計算機6000、およびデータストア7000は地理的に分散していてもよいし、していなくてもよい。
【0020】
図示はしないが、広域ネットワーク9000に接続せず、計算機3000、冷却装置4000、温湿度センサ5000、管理計算機6000、データストア7000が広域ネットワーク9000を介さずに接続していても良い。
【0021】
図2は管理計算機6000の構成図である。管理計算機6000は、プロセッサ6100と、主記憶装置であるメモリ6200と、補助記憶装置である記憶装置6300と、通信インタフェース6400と、I/Oデバイス6500と、を含む。例えば、プロセッサ6100は中央演算ユニットであり、記憶装置6300は不揮発性の記憶媒体を含み、メモリ6200は揮発性の記憶媒体を含む。
【0022】
通信インタフェース6400は、たとえばネットワークインターフェースカードである。I/Oデバイス6500は、たとえばマウス、キーボード、および液晶ディスプレイである。I/Oデバイス6500は、管理計算機6000を使用する人間(以下、「ユーザ」と呼ぶ)への情報の提供、およびユーザからの入力の受付を行う。
【0023】
記憶装置6300には、作業用データ6310と、消費電力推論結果データ6320と、冷却装置消費電力量異常検知用モデル6330と、が格納される。作業用データ6310は、データストア7000に格納されているデータの一部であり、冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220、消費電力予測プログラム6230、およびパラメータ更新プログラム6240、で使うものである。消費電力推論結果データ6320は、冷却装置消費電力量異常検知用モデル6330を用いて、消費電力予測プログラム6230を実行した推論の結果である。本実施例では冷却装置消費電力量異常検知用モデル6330は、冷却装置の消費電力の予測をするための予測モデルであって、例えば機械学習モデルであってよい。
【0024】
冷却装置消費電力量異常検知用モデル6330の出力データは、サーバルームにおける、未来の冷却装置の総消費電力量である。冷却装置消費電力量異常検知用モデル6330の予測のための入力データは、例えば、特定期間の、サーバルーム内の冷却装置4000の総消費電力履歴、計算機3000の総消費電力履歴、室内温度履歴、及び室外温度履歴である。これらの一部は省略されてもよい。冷却装置消費電力量異常検知用モデル6330は、上記入力データと出力データの組合せの学習データにより、既存の方法で訓練され得る。
【0025】
メモリ6200には、データ収集プログラム6210、冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220、消費電力予測プログラム6230、およびパラメータ更新プログラム6240、が格納される。
【0026】
データ収集プログラム6210は、計算機3000、冷却装置4000、温湿度センサ5000からデータを取得して、データストア7000が有する冷却装置消費電力量ログテーブル7320、IT機器等消費電力量ログテーブル7330、センサログテーブル7340に格納する。
【0027】
また、第1データセンタ1000の地理的に近接したエリアの気象データを、第1データセンタ1000に設置したセンサ、または気象情報提供機関からデータを取得して、気象情報ログテーブル7350に格納する。本実施例ではデータは少なくとも冷却装置の消費電力量データ、計算機の消費電力量データ、サーバルーム内に設置されたセンサで計測された温度と湿度、外気の温度と湿度を含むものとするが、これに限らず他のデータを含んでもよい。本実施例ではデータ収集プログラム6210は定期的に実行されるものとする。本プログラムの処理フローはデータ格納フロー10010に図示する。
【0028】
冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は、
図3及び5に示す冷却装置消費電力量ログテーブル7320から取得した消費電力量7324を用いる。ある特定のサーバルームの冷却装置の消費電力量が連続的に変化するようなログとなっているのか、あるいは矩形的に変化するようなログとなっているのかを判定し、
図3及び4に示すサーバルームテーブル7310に保存する。本実施例では冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は定期的に実行されるものとする。冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220の実施フローは冷却装置消費電力量変動タイプ決定フロー11000に含まれる。
【0029】
消費電力予測プログラム6230は冷却装置の消費電力量の予測を行い、
図2に示す推論結果データ6320を出力する。推論プログラム自体の処理フローは図示しないが、これを用いて実施するパラメータ更新フロー12000に組み込まれる
【0030】
パラメータ更新プログラム6240は、本実施例では各サーバルームについて冷却装置消費電力量を予測し、予測値と実測値との差(予実差)の大きさに基づいて、パラメータの更新の必要性を判定し、必要と判定された場合にパラメータを更新する。以下に説明する例において、パラメータ更新の要否は、当該パラメータを参照する。具体的には、パラメータは予実差の閾値であり、パラメータ更新は、予実差がそのパラメータを超える場合に更新される。パラメータ更新が必要であることは、システムの設定変更を必要とする異常が検知されたことに対応し、そのパラメータは異常検知のためのパラメータである。本実施例は、パラメータ更新プログラム6240を定期的に実行する。
【0031】
本実施例では、データストア7000に格納されたデータを用いて、サーバルーム間の類似度を算出し、類似のサーバルームを抽出する。具体的にはデータとしては、冷却装置消費電力量ログテーブル7320から冷却装置の消費電力量データと、IT機器等消費電力量ログテーブル7330から計算機などのIT機器の消費電力量データと、センサログテーブル7340からサーバルーム内に設置されたセンサ5000で計測された温度および湿度と、気象情報ログテーブル7350から外気の温度と湿度と、等を用いる。IT機器等消費電力量ログテーブル7330は
図3及び6に示され、センサログテーブル7340は
図3及び7に示され、気象情報ログテーブル7350は
図3及び8に示されている。
【0032】
消費電力予測プログラム6230は、サーバルームテーブル7310より同じ冷却装置消費電力量変動タイプ7312をもつと判定されたサーバルームID7311を抽出する。データストア7000に格納されたデータおよびサーバルームテーブル7310に含まれるパラメータ7363を用いて当該サーバルームの新しいパラメータを決定する。本プログラムの処理フローはパラメータ更新フロー12000に図示する。なお、本実施例ではサーバルームテーブル7310に当該サーバルームが登録され、かつ冷却装置消費電力量変動タイプ7312がNullの場合にはこのフローは実行されないが、この限りではない。
【0033】
図3は、データストア7000の構成図である。データストア7000は、プロセッサ7100と、主記憶装置でありデータ入出力プログラム7210を格納するメモリ7200と、補助記憶装置である記憶装置7300と、通信インタフェース7400と、I/Oデバイス7500と、を含む。例えば、プロセッサ7100は中央演算ユニットであり、記憶装置7300は不揮発性の記憶媒体を含み、メモリ7200は揮発性の記憶媒体を含む。
【0034】
通信インタフェース7400は、たとえばネットワークインターフェースカードである。I/Oデバイス7500は、たとえばマウス、キーボード、および液晶ディスプレイである。I/Oデバイス7500は、データストア7000を使用するユーザへの情報の提供、およびユーザからの入力の受付を行う。
【0035】
サーバルームテーブル7310、冷却装置消費電力量ログテーブル7320、IT機器等消費電力量ログテーブル7330、センサログテーブル7340、気象情報ログテーブル7350、およびパラメータ管理テーブル7360は、記憶装置7300に格納されている。これらは、メモリ7200上にロードされ、保持されてもよい。
【0036】
データ入出力プログラム7210は、ネットワークを介して、サーバルームテーブル7310、冷却装置消費電力量ログテーブル7320、IT機器等消費電力量ログテーブル7330、センサログテーブル7340、気象情報ログテーブル7350、およびパラメータ管理テーブル7360、へのデータの入出力を行うためのプログラムである。データ入出力を行うための方法(プロトコル)は公知のもので良く、例えばRESTやGraphQLなどのAPIを使う方法や、NFSやiSCSIやFTPなどのデータ送受信プロトコルを使う方法などがある。データ入出力プログラムのフローはデータ格納フローに図示する。
【0037】
管理計算機6000のプロセッサ6100及びデータストア7000のプロセッサ7100は、それぞれ、プログラムを実行して、そのプログラムに対応する機能部として動作する。したがって、プログラムを主語とする処理は、そのプログラムを実行するプロセッサ又はそのプロセッサを含むシステムによる処理である。
【0038】
図4は、サーバルームテーブル7310の一例を示す図である。サーバルームテーブル7310は複数のレコードから構成され、各レコードは、サーバルームID7311、冷却装置消費電力量変動タイプ7312、開始日7313、および終了日7314、のカラムを有する。サーバルームテーブル7310は、サーバルームそれぞれの、冷却装置消費電力量変動タイプの履歴を示す。
【0039】
サーバルームID7311は、サーバルームを識別するための識別子であり、重複はない。IDの付与方法は問わない。サーバルームID7311の付与方法は1つの部屋あたり1つのIDとすることを想定するが、物理的には複数の部屋であっても仮想的に1つのサーバルームとみなしてIDを付与してもよい。
【0040】
冷却装置消費電力量変動タイプ7312は、冷却装置消費電力量の変動が連続的に変化するようなログとなっているのか、あるいは矩形的(非連続的)に変化するようなログとなっているのか、を保存する。冷却装置消費電力量は、サーバルームの1以上の冷却装置の総消費電力量である。
【0041】
開始日7313は、冷却装置消費電力量変動タイプがそのタイプになった時を保存する。終了日7314は、冷却装置消費電力量変動タイプが別のタイプとなった時を保存する。別の冷却装置消費電力量変動タイプに変更する前の状態のときには、終了時を記載する終了日7314はNullである。
【0042】
図5は、冷却装置消費電力量ログテーブル7320の一例を示す図である。冷却装置消費電力量ログテーブル7320は複数のレコードから構成され、各レコードは、Timestamp7321、サーバルームID7322、冷却装置ID7323、および消費電力量7324、のカラムを有する。冷却装置消費電力量ログテーブル7320は、複数データソースそれぞれのデータ履歴の例である。サーバルームに設置された1又は複数の冷却装置は、サーバルームの空調システムの例である。
【0043】
保持するデータはこれに限られず、他のデータを保持してもよい。例えば、冷却装置の設定温度や湿度、入気温度、排気温度などが想定される。また、水冷タイプの装置であれば流入温度、排出温度などが想定される。また、本実施例では冷却装置1台ずつの消費電力を示しているが、動力盤などの単位でまとめてデータを持ってもよい。
【0044】
Timestamp7321は、ログの対象となる日時を示す識別子である。本実施例では、時間単位について1時間として示しているが、この限りではない。例えば1分や1秒ごとにログを残している場合にはそれが時間単位となる。
【0045】
サーバルームID7322は、サーバルームを識別するための識別子である。サーバルームテーブル7310に含まれるサーバルームID7311とは、同じサーバルームを識別する場合には同じ値が用いられる。
【0046】
冷却装置ID7323は、冷却装置を識別するための識別子である。1つのサーバルーム内においては重複はない。また、Timestamp7321にまたがって、同じ冷却装置に対しては同じ冷却装置ID7323を付与する。IDの付与方法は問わない。
【0047】
消費電力量7324は、各レコードの冷却装置、日時における消費電力量である。本実施例では消費電力量の単位はWhとしているが、この限りではない。
【0048】
図6は、IT機器等消費電力量ログテーブル7330の一例を示す図である。サーバルームテーブル7310は複数のレコードから構成され、各レコードは、Timestamp7331、サーバルームID7332、IT機器ID7333、および消費電力量7334、のカラムを有する。本実施例では計算機1台ずつの消費電力を示しているが、分電盤などの単位でまとめてデータをもってもよい。
【0049】
IT機器ID7333は、IT機器を識別するための識別子である。その他の点は冷却装置ID7323と同一である。Timestamp7331、サーバルームID7332、および消費電力量7334、は冷却装置消費電力量ログテーブル7320のTimestamp7321、サーバルームID7322、および消費電力量7324とそれぞれ同一の意味なので説明を省略する。
【0050】
図7は、センサログテーブル7340の一例を示す図である。センサログテーブル7340は複数のレコードから構成され、各レコードは、Timestamp7341、サーバルームID7342、センサID7343、およびメトリクス7344、のカラムを有する。
【0051】
センサID7343は、センサを識別するための識別子である。その他の点は冷却装置ID7323と同一である。本実施例ではセンサ1つあたりに1つのIDを付与している。さらに、その1ID単位、つまりセンサ単位でのデータを示しているが、この限りではない。
【0052】
メトリクス7344は、各レコードのセンサ、日時におけるメトリクスである。本実施例ではサーバルーム内に設置された温度(セルシウス温度)と湿度(相対湿度)を格納する。ただし、これらのデータに限られず、ファーレンハイト温度、絶対湿度、気圧、および風量など、他のデータを保持しても良い。
【0053】
Timestamp7341、およびサーバルームID7342、は冷却装置消費電力量ログテーブル7320のTimestamp7321、サーバルームID7322、と同一の意味なので説明を省略する。
【0054】
図8は、気象情報ログテーブル7350の一例を示す図である。気象情報ログテーブル7350は複数のレコードから構成され、各レコードは、Timestamp7351、およびメトリクス7352、のカラムを有する。Timestamp7351、およびメトリクス7352、はセンサログテーブル7340のTimestamp7341、およびメトリクス7344、と同一の意味なので説明を省略する。
【0055】
メトリクス7344に含まれるデータとしては、本実施例ではデータセンタ付近の外気の温度(セルシウス温度)と湿度(相対湿度)を想定しているが、この限りではない。例えば他のデータを保持しても良く、天気、雲量、風量、風向、気圧、露点温度、および日照時間などが想定される。また、本実施例ではある1か所のデータを示しているが、この限りではない。その場合には地域を識別するためのIDまたは名称を含むカラムを気象情報ログテーブル7350に追加し、それぞれのサーバルームがどの地域に存在するのかを示せばよい。
【0056】
図9は、パラメータ管理テーブル7360の一例を示す図である。パラメータ管理テーブル7360は複数のレコードから構成され、各レコードは、サーバルームID7361、サーバルーム内パラメータID7362、パラメータ:予実差の閾値7363、登録日時7364、適用終了日時7365、のカラムを有する。パラメータ管理テーブル7360は、異常検知パラメータ履歴であり、具体的には、サーバルームそれぞれのパラメータ(予実差の閾値)の履歴を示す。
【0057】
サーバルームID7361は冷却装置消費電力量ログテーブル7320のサーバルームID7322と同一の意味なので説明を省略する。サーバルーム内パラメータID7362は、各サーバルームに複数のパラメータが設定される場合に、それらパラメータを識別するための識別子である。1つのサーバルーム内においては重複はない。IDの付与方法は問わない。また、本実施例においては、単一のサーバルームに対して存在するパラメータ数は時間変化しうる。そのため、1つのサーバルームIDに対して紐づくサーバルーム内パラメータIDおよびレコードの数は時間変化し得る。
【0058】
パラメータ:予実差の閾値7363は、本実施例においては予実差の閾値をパラメータとして利用するため、その値を格納する。
【0059】
登録日時7364には、パラメータを登録し、利用を開始する日時を格納する。適用終了日時7365には、そのレコードのパラメータの利用を終了する日時を格納する。当該サーバルームIDに対して、別のフィールドが格納される前の時点においては、そのパラメータの適用を終了した日時を示すカラム適用終了日時7365はNullである。
【0060】
図10は、データ収集プログラム6210が実行するデータ収集、およびデータ格納処理を示すフローチャート10000である。本実施例では、データ収集プログラム6210は定期的に実行されるものとする。データ収集プログラム6210は、まずステップS10020においていずれかの管理対象からメトリクスデータを、メトリクスデータの対象日時と併せて取得する。なお、本実施例では管理対象は計算機3000、冷却装置4000、および温湿度センサ5000である。
【0061】
データ収集プログラム6210は、ステップS10030において取得したメトリクスデータを冷却装置消費電力量ログテーブル7320、IT機器等消費電力量ログテーブル7330、またはセンサログテーブル7340に格納する。具体的にはデータ収集プログラム6210は、ステップS10020において、冷却装置4000のメトリクスデータを取得した場合には冷却装置消費電力量ログテーブル7320に格納し、計算機3000のメトリクスデータを取得した場合にはIT機器等消費電力量ログテーブル7330に格納し、温湿度センサ5000のメトリクスデータを取得した場合にはセンサログテーブル7340に格納する。
【0062】
続くステップS10040ではデータ収集プログラム6210は、データ未取得の管理対象が存在するか否かを判定する。データ収集プログラム6210は、データ未取得の管理対象が存在すると判定する場合にはステップS10020に戻り、データ未取得の管理対象が存在しないと判定する場合には後続のステップS10040が実行される。
【0063】
続くステップS10050ではデータ収集プログラム6210は、第1データセンタ1000の地理的に近接したエリアの気象データを、第1データセンタ1000に設置したセンサ、または気象情報提供機関からデータを、メトリクスデータの対象日時と併せて取得する。続くステップS10060ではデータ収集プログラム6210は、ステップS10050において取得したメトリクスデータを気象情報ログテーブル7350に格納する。
【0064】
続くステップS10070ではデータ収集プログラム6210は、データ未取得の気象データが存在するか否かを判定する。データ収集プログラム6210は、データ未取得の気象データが存在すると判定する場合にはステップS10050に戻り、データ未取得の気象データが存在しないと判定する場合には
図10に示す処理を終了する。
【0065】
なお、データ収集プログラム6210で取得・保存するデータはこの限りではない。どのようなデータを取得するかは、どのようなデータを用いて異常検知、およびパラメータ更新するかによる。ここでは異常検知、パラメータ更新に必要なデータが取得できていればよい。
【0066】
図11は、冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220が実行する、冷却装置消費電力量変動タイプ決定処理を示すフローチャート11000である。本実施例では定期的に実行されるものとする。たとえば、1日又は1週間毎に実行されてもよい。冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は、まずステップS11020において現在時刻から一定範囲の冷却装置消費電力量を冷却装置消費電力量ログテーブル7320から取得する。一定範囲は、たとえば1週間又は1月であってもよい。冷却装置消費電力量は、サーバルームの1以上の冷却装置の総消費電力量である。
【0067】
続くステップS11030では、冷却装置消費電力量ログテーブル7320から取得した冷却装置消費電力量データを用いてあるサーバルームの冷却装置の消費電力量が連続的に変化するようなログとなっているのか、あるいは矩形的に変化するようなログとなっているのかを判定する。たとえば、冷却装置のインバータ制御は連続的に変化する消費電力量を示すことがあり、ON/OFF制御は矩形的に変化する消費電力量を示すことがある。
【0068】
本実施例では、冷却装置消費電力量の24時間ごとの移動平均について分布の尖度を求め、それがある値を下回った場合に「連続的な変化」、上回った場合に「矩形的な変化」とみなす。なお、冷却装置消費電力量変動タイプの決定方法やそのタイプの種類についてはこの限りではない。他の統計値、たとえば、分散が使用されてもよく、波形の分類は3以上であってもよい。このように、冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は、冷却装置消費電力量の波形自体の特徴からタイプを決定する。同一タイプの波形は類似していると見なされる。
【0069】
続くステップS11040では冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は、サーバルームテーブル7310から当該サーバルームのテーブルに格納されているうちの最新の冷却装置消費電力量変動タイプを取得する。
【0070】
続くステップS11050では冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は、ステップS11030で判定した現時点における冷却装置消費電力量変動タイプとステップS11040で取得したサーバルームテーブル7310に格納されている最新の冷却装置消費電力量変動タイプを比較する。
【0071】
ステップS11040で取得した冷却装置消費電力量変動タイプがNullの場合、または、ステップS11030で判断した冷却装置消費電力量変動タイプとステップS11040で取得した冷却装置消費電力量変動タイプとが異なる場合には続くステップS11060を実行する。そうでない場合には、
図11に示す処理を終了する。
【0072】
ステップS11060が実行される場合には、ステップS11030で判定した冷却装置消費電力量変動タイプと、その状態になった時(日時)をサーバルームテーブル7310の開始日7313に格納する。また、ステップS11040で取得した冷却装置消費電力量変動タイプに対応する終了タイミングが記録されていなければその状態が終了した時(日時)をサーバルームテーブル7310の終了日7314に保存する。
【0073】
終了する前の状態の場合には、終了タイミングを記載する項目である終了日7314はNullである。なお、サーバルームテーブルから取得する当該サーバルームの冷却装置消費電力量変動タイプ7312は、本フローが1度も実行されていなければNullであり、そうでなければ情報が格納されている。
【0074】
図12は、パラメータ更新プログラム6240が実行する、冷却装置小電力量におけるパラメータの更新要否を判定し、実際に更新を行い、ユーザに結果を通知する、パラメータ更新処理の全体を示すフローチャート12000である。その内部において、消費電力予測プログラム6230が実行される。
【0075】
パラメータ更新プログラム6240はステップS12010に示す通りサーバルームごとに実行され、定期的に実行されるプログラムである。パラメータ更新プログラム6240はまず、ステップS12020において、現在時刻から一定範囲の、冷却装置消費電力量ログテーブル7320から冷却装置消費電力量のデータと、IT機器等消費電力量ログテーブル7330から計算機などのIT機器の消費電力量データと、センサログテーブル7340からサーバルーム内に設置されたセンサ5000で計測された温度および湿度と、気象情報ログテーブル7350から外気の温度および湿度と、を取得する。一定範囲は、たとえば、冷却装置消費電力量変動タイプの決定における一定範囲と同一でもよい。
【0076】
続くステップS12030では、ステップS12020で取得したデータを用いて消費電力予測プログラム6230によって冷却装置の消費電力量を予測する。本実施例では、パラメータ更新プログラム6240を1時間ごとに実施し、ステップS12020で取得したデータを利用して、次の1時間の消費電力の予測を行うものとする。なお、本実施例ではセンサログには温度と湿度の2種類のデータが含まれるが、メトリクス種別ごとに扱うものとする。冷却装置消費電力予測方法は限定しない。
【0077】
続くステップS12040では、パラメータ管理テーブル7360から処理中のサーバルーム、および日時に対応する、パラメータを取得する。
【0078】
続くステップS12050では、ステップS12030で予測された冷却装置の消費電力量と、ステップS12020において取得した冷却装置消費電力量の実測値と、を比較し、その値をステップS12040で取得したパラメータと比較し、パラメータの更新要否を判定する。本実施例では、予実差は絶対値で表され、パラメータは予実差の閾値とする。ただし、これに限定しない。パラメータの他の例は、たとえば、実施例4で説明される。
【0079】
本実施例では、予実差とパラメータを比較して、パラメータの更新要否を判定する部分においては、本実施例では以下の方法が考えられる。パラメータ管理テーブル7360に存在する当該サーバルームの現在時刻におけるパラメータが1つの場合、つまりサーバルーム内パラメータID7362が1つのみだった場合には、その唯一のパラメータ値を予実差の閾値とする。
【0080】
次に、当該サーバルームのパラメータが複数ある場合、つまりサーバルーム内パラメータID7362が2つ以上の場合には、それぞれのパラメータを用いて予実差との比較を行い、更新要否を判定する。その際には、多数決による判定を実施する。例えばパラメータが5つあった場合、予実差がパラメータのうちの3つを上回った場合には更新が必要とみなすこととする。
【0081】
上記例において、実測値は冷却装置消費電力量の現在データであり、実測値と予測値との差が異常検知パラメータである閾値と上記いずれかの関係を満たす場合に、更新条件が満たされる。
【0082】
続くステップS12060では、ステップS12050の結果を用いて更新要否を決定する。更新が不要と判定する場合には、
図12に示す処理を終了する。更新が必要と判定する場合にはステップS12070に進む。ステップS12070では
図13の他の各サーバルームの現在及び過去データ並びに当該サーバルームの過去データとの類似度算出フロー13000を呼び出す。類似度は、冷却装置消費電力量に基づいて算出される。詳しい説明は他の各サーバルームとの類似度算出フロー13000の説明で示す。
【0083】
続くステップS12080では、ステップS12070の処理結果である当該サーバルームと他の各サーバルーム及び過去の当該サーバルームとの類似度を用いて、類似のサーバルームが存在するのかを判定する。本実施例では、特定の値を類似度に関する閾値として予め設定し、その値を超えたか否かで類似サーバルームが存在するかどうかを決定する。
【0084】
類似サーバルームが存在する場合にはそのサーバルームを類似のサーバルームとして抽出し、ステップS12090に進む。類似のサーバルームが存在する場合には、1つないし複数のサーバルームが抽出される。類似のサーバルームが存在しない場合には、ステップS12120に進む。
【0085】
ステップS12090では、類似のサーバルームが存在した場合にパラメータの更新を実施する。本実施例では、パラメータ更新方法は類似のサーバルームが1つ抽出された場合と複数抽出された場合とで大きく分けて2通りが考えられる。類似のサーバルームが1つのみ抽出された場合には、類似のサーバルームのパラメータ(閾値)に対して、同類似のサーバルームのIT機器等消費電力量で除し、当該サーバルームのIT機器等消費電力量を乗じた値を新しい当該サーバルームのパラメータとする。
【0086】
類似のサーバルームが複数抽出された場合には、各類似のサーバルームに対して、類似のサーバルームが1つのみ抽出された場合と同様の補正の計算を実施し、すべてのパラメータを新しい当該サーバルームのパラメータとする方法が考えられる。このとき、当該サーバルームの新しいパラメータは類似のサーバルーム数と同じ数となる。これを基にステップS12100に進む。
【0087】
ステップS12120では、ユーザインタフェース(UI)に表示された結果をもとに、手動修正するか否かをユーザが判断する。ユーザが手動修正しないと判断する場合には、
図12に示す処理を終了する。ここでのUIは
図14に示すものと同様のものを用いればよいがこれに限らない。
【0088】
ユーザが手動修正すると判断する場合には、ステップS12130に進む。ステップS12130においては、UI上でユーザが手動で新パラメータを入力する。これを基にステップS12100に進む。また、類似のサーバルームが存在しなかった場合の振る舞いについては、この限りではない。例えば、パラメータ修正を一切実施しないことが考えられる。
【0089】
ステップS12100では冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は、ステップS12090で出力された新しいパラメータをパラメータ管理テーブル7360に保存する。保存時には、適用終了日時7365はNullとなる。また、本フローの対象となった当該サーバルームについて既にパラメータ管理テーブル7360にレコードがあり、かつそれの適用終了日時7365がNullであった場合には追加したレコードの登録日時7364と同じ日時によって変更する。
【0090】
続くステップS12110では、パラメータ更新をUIを通じてユーザに通知する。その実施例は
図14を参照して後述する。これにより、
図12の処理を終了する。
【0091】
図13は、パラメータ更新フロー12000のうち、冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220が実行する、サーバルーム間の類似度算出処理S12070の内容を示すフローチャート13000である。
【0092】
冷却装置消費電力量変動タイプ決定プログラム6220は、まずステップS13020において、サーバルームテーブル7310から予め決定した当該サーバルームの現時刻における冷却装置消費電力量変動タイプを取得し、さらに当該サーバルームと同じ変動タイプのサーバルームの期間を、他のサーバルームの現在及び過去のデータ並びに当該サーバルームの過去の期間を含めて抽出する。これにより、類似する期間を得られる可能性を高めることができる。他の例として、他のサーバルームの現在の情報のみが参照されてもよい。
【0093】
このとき、変動タイプがNullの期間は無視する。また、当該サーバルームについて、サーバルームテーブル7310の冷却装置消費電力量変動タイプがNullである場合にはそもそもパラメータ更新プログラム6240が実行されないものとする。
【0094】
続くステップS12030では、ステップS12020で冷却装置消費電力量変動タイプが同じサーバルームの期間が存在したかどうかを判断する。存在した場合には、同じ冷却装置消費電力量変動タイプの期間との類似度を算出するステップS13040に進み、存在しなかった場合にはステップS13060に進む。
【0095】
ステップS12030で冷却装置消費電力量変動タイプが同じサーバルームの期間が存在した場合には、ステップS12040で現在時刻から所定範囲の、冷却装置消費電力量ログテーブル7320から冷却装置消費電力量のデータと、IT機器等消費電力量ログテーブル7330から計算機などのIT機器の消費電力量データと、気象情報ログテーブル7350から外気の温度と湿度等と、を取得する。
【0096】
続くステップS12050では、当該サーバルームと変動タイプが同じ期間の類似度を、ステップS12040で取得したデータを用いて算出する。類似度計算方法は限定されないが、一例は、冷却装置消費電力量に影響する外部メトリクスとの相関に基づき決定する。類似度の計算方式については、本実施例ではIT機器等消費電力量が冷却装置消費電力量に与える影響の大きさと、外気温が冷却装置消費電力量に与える影響の大きさとに基づいて類似度求める。
【0097】
具体的には、冷却装置消費電力量とIT機器等消費電力量および外気温との相関係数を求め、当該サーバルームと変動タイプが同じサーバルームの期間の相関係数について、二乗平均平方根誤差をそれぞれ求め、その和を類似度とする。つまり、冷却装置消費電力量とIT機器等消費電力量の相関係数および冷却装置消費電力量とIT外気温の相関係数のそれぞれの二乗平均平方根誤差の和を類似度とする。これにより、
図13の処理を終了する。なお、他のメトリクスとの相関が使用されてもよく、上記二つのメトリクスの一方のみが使用されてもよい。冷却装置消費電力量とメトリクスとの相関を使用することで特徴が類似するデータをより適切に抽出できる。
【0098】
ステップS13060では、ステップS13030で変動タイプが同じサーバルームの期間がなかったと判断された場合に、当該サーバルームとすべてのサーバルームとの間の類似度が最低値であるものとする。本実施例では0とする。これにより、
図13の処理を終了する。変動タイプと類似度の双方を参照することで、対象データに類似するデータをより適切に抽出できる。上述のように、サーバルームの冷却装置消費電力量の期間の間の類似は、予め設定された方法により決定される。なお、冷却装置消費電力量の変化の類似度の算出は、他の方法により決定されてよい。変動タイプは類似期間の探索のために参照されてなくてもよい。上記類似度の算出を省略して同一変動タイプの期間の類似度を類似の閾値を超える値と設定してもよい。
【0099】
図14は、パラメータ更新プログラム6240の計算結果を示す画面出力図である。この画面出力はパラメータ更新フロー12000のうち、ステップS12110で実施されるものである。この画面出力では、パラメータ更新が実施されたサーバルームおよびサーバルームの情報と、そのサーバルームと類似のサーバルームに関する情報と、類似のサーバルームと判定した理由と、新しいパラメータが計算された理由と、が表示される。
【0100】
出力画面6250Aの上部には、符号6250A1においてパラメータ更新が実施されたサーバルームおよびサーバルームの情報が記載されている。具体的には、パラメータ更新の対象となったサーバルームが「サーバルーム」欄に記載され、パラメータ更新状態が「状態」欄に記載され、
図12のステップS12080で抽出された類似のサーバルームが「類似のサーバルーム」欄に記載され、
図13のステップS13020で取得した現時刻の当該サーバルームの冷却装置消費電力量変動タイプが「冷却装置消費電力量変動タイプ」欄に記載され、
図12のステップS12020で取得した当該サーバルームのIT機器等消費電力量が「IT機器等消費電力量」欄に記載される。
【0101】
符号6250A2で示す時系列図では、
図12のステップS12030で得られる推定値を点線で示し、S12020で取得された実測値を実線で示している。途中で予測値と実測値が乖離しており、この時系列図では、ステップS12060でパラメータ更新が必要と判断されたケースを示している。
【0102】
符号6250A3では、
図13のステップS13050で算出された当該サーバルームと類似のサーバルームの類似度の結果が表示される。具体的には、
図13のステップS13020で変動タイプが同じと判断されたサーバルームの名称が「サーバルーム」欄に記載され、ステップS13050で算出されたサーバルーム間の類似度が「類似度」欄に記載され、その際、どの期間のデータが適用されたのかが「データ期間」欄に記載され、
図12のS12040で取得したそのデータ期間における各サーバルームのパラメータが「パラメータ」欄に記載され、その期間のIT機器等消費電力量が「IT機器等消費電力量」欄に記載される。
【0103】
符号6250A4ではパラメータ更新通知が生じた理由と処理内容をユーザが理解するための文章を通知する。
【0104】
図14の下部に示す、符号6250A5のボタンは
図15に示す2ページ目のパラメータ更新結果の表示画面例へ遷移するボタンである。また、6250A6のボタンは、通知の閲覧を終了するボタンである。
【0105】
図15は、
図14から遷移した2ページ目のパラメータ更新結果の表示画面例を示す図である。この画面出力は、
図13のステップS13040で取得されたデータを符号6250B1に示す時系列図に表示し、ステップS13050で算出された類似度およびその過程で計算した値を符号6250B6に表示する。
【0106】
符号6250B1で示す時系列図では、当該サーバルームおよび変動タイプが同じサーバルームのその期間のデータを表示する。本実施例では、ここでは冷却装置消費電力量を示しているが、符号6250B2、6250B3、6250B4、6250B5、で示すボタンにより表示するメトリクスを変えられる。表示すべきメトリクスはステップS13050の類似度算出に用いたメトリクスであり、実際に表示するメトリクスは本実施例であげたものに限らない。また、符号6250B6のボタンにより、
図12のステップS12080で類似のサーバルームでないと判定されたサーバルームのメトリクスを表示しても良い。
【0107】
符号6250B7の表では、変動タイプが同じサーバルームの、当該サーバルームとの類似度とその算出に用いた値が示されている。具体的には、当該サーバルームおよび変動タイプが同じと判定されたサーバルームの名称が「サーバルーム」欄に記載され、ステップS13050で算出された当該サーバルームとび変動タイプが同じと判定されたサーバルームの類似度が「類似度」欄に記載される。
【0108】
また、本実施例では、類似度を「空調消費電力量とIT機器等消費電力量の相関」と、「空調消費電力量と外気温の相関」と、のそれぞれについて二乗平均平方根誤差を計算し、和をとったものと定義した。その定義については符号6250B8が指示するフィールドに示した。そのため、それらの2つの計算結果をそれぞれ「空調消費電力量とIT機器等消費電力量の相関」と、「空調消費電力量と外気温の相関」と、の欄にそれぞれ記載される。符号6250B7の表に示す値の種類については、類似度の算出時に用いる指標を示せばよく、またこの限りでない。
【0109】
本実施例は、特徴が時間変化した場合でも、同様の形式を保持する他のパラメータを活用して、類似のデータから変化後の環境に適応したパラメータ更新を行うことで、精度よく消費電力量非効率検知が可能となる。この点は他の実施例に同様である。
第1の方法としては、各類似のサーバルームのパラメータを、実施例1における類似のサーバルームが1つ抽出された場合と同様にそのまますべてのパラメータを利用する。このとき、当該サーバルームの新しいパラメータは類似のサーバルーム数と同じ数となる。更新要否の判定は多数決を採用することができる。
第2の方法として、各類似のサーバルームに対して、同類似のサーバルームのIT機器等消費電力量で重み付けした各サーバルームのパラメータの平均、つまり加重平均を計算し、その結果をパラメータとする。このとき、当該サーバルームの新しいパラメータは1つとなる。
第3の方法としては、各類似のサーバルームのパラメータの平均値をパラメータとする。このとき、当該サーバルームの新しいパラメータは1つとなる。これを基にステップS12100に進む。このように、第2及び第3の方法はパラメータの統計値を使用するが、他の統計値が使用されてもよい。