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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162116
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/20 20060101AFI20241114BHJP
   G01N 21/896 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C03B35/20
G01N21/896
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077343
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】進藤 宏佳
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉野 敬一
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩一
【テーマコード(参考)】
2G051
4G015
【Fターム(参考)】
2G051AA42
2G051AB02
2G051CA04
2G051CB02
2G051DA06
4G015GA01
4G015GB01
(57)【要約】
【課題】ガラス板の検査を効率良く行う。
【解決手段】ガラス板の製造方法は、ガラス板Gを受け取り位置P3から検査ゾーン13を通過して受け渡し位置P4まで搬送装置17によって搬送する搬送工程と、搬送工程を実行中に検査ゾーン13内でガラス板Gを検査装置21aにより検査する検査工程S5と、を備える。搬送装置17は、第一上辺把持部20a及び第二上辺把持部20bを備える。搬送工程では、第一上辺把持部20aがガラス板Gを次工程に受け渡してから、第二上辺把持部20bがガラス板Gを次工程に受け渡すまでの間に、第一上辺把持部20aが受け渡し位置P4から受け取り位置P3に向かう方向に移動を開始する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦姿勢のガラス板を受け取り位置から検査ゾーンを通過して受け渡し位置まで搬送装置によって搬送する搬送工程と、前記搬送工程を実行中に前記検査ゾーン内で前記ガラス板を検査装置により検査する検査工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、
前記搬送装置は、前記ガラス板の上辺を把持する第一上辺把持部及び第二上辺把持部を含み、
前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記受け取り位置と前記受け渡し位置との間を往復移動するように構成され、
前記搬送工程では、前記第一上辺把持部が前記ガラス板を次工程に受け渡してから、前記第二上辺把持部が前記ガラス板を次工程に受け渡すまでの間に、前記第一上辺把持部が前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記搬送装置は、前記検査ゾーンにおいて前記第一上辺把持部又は前記第二上辺把持部で前記上辺を把持された前記ガラス板の下辺を把持する下辺把持部を備えることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記第二上辺把持部が把持する前記ガラス板に対する前記検査工程の終了後から前記第二上辺把持部が前記ガラス板を次工程に受け渡すまでの間に、前記下辺把持部は、前記第二上辺把持部が把持している前記ガラス板の前記下辺の把持を解除し、前記受け渡し位置から前記受け取り位置へ向かう方向に移動を開始することを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記ガラス板の搬送方向に対して交差する方向に移動可能であり、
前記ガラス板の搬送方向において、前記第一上辺把持部の位置と前記第二上辺把持部の位置とが重なるとき、前記ガラス板の前記搬送方向に対して垂直な方向において、前記第一上辺把持部の位置と前記第二上辺把持部の位置が異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記ガラス板の板厚方向に移動可能であることを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記第一上辺把持部は、前記第二上辺把持部が把持する前記ガラス板に対する前記検査工程の終了後に、前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記検査装置は、前記ガラス板を撮像する撮像装置を備え、
前記検査工程では、前記撮像装置は、前記下辺把持部の移動速度に同期して前記ガラス板を撮像することを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
縦姿勢のガラス板を受け取り位置から検査ゾーンを通過して受け渡し位置まで搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される前記ガラス板を前記検査ゾーン内で検査する検査装置と、を備えるガラス板の製造装置であって、
前記搬送装置は、前記ガラス板の上辺を把持する第一上辺把持部及び第二上辺把持部を含み、
前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記受け取り位置と前記受け渡し位置との間を往復移動するように構成されることを特徴とするガラス板の製造装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記検査ゾーンで前記第一上辺把持部又は前記第二上辺把持部で前記上辺を把持された前記ガラス板の下辺を把持する下辺把持部を備えることを特徴とする請求項8に記載のガラス板の製造装置。
【請求項10】
前記第一上辺把持部、前記第二上辺把持部、前記下辺把持部、及び前記検査装置を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第二上辺把持部が前記受け取り位置から前記受け渡し位置まで前記ガラス板を搬送する間に、前記第一上辺把持部が前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始するように、前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部を制御し、
前記制御装置は、前記第二上辺把持部が把持する前記ガラス板に対する前記検査装置の検査終了後から前記第二上辺把持部が前記ガラス板を前記受け渡し位置まで搬送するまでの間に、前記第二上辺把持部が把持している前記ガラス板の下辺に対する前記下辺把持部による把持を解除させ、前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始するように前記下辺把持部を制御することを特徴とする請求項9に記載のガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に代表されるディスプレイには、ガラス板が使用されている。
【0003】
このガラス板を製造する方法として、まず、ダウンドロー法(例えばオーバーフローダウンドロー法)やフロート法により、溶融ガラスから連続的にガラスリボンを成形する。その後、ガラスリボンを所定の長さ毎に幅方向に沿って切断する。ガラスリボンから矩形状のガラス板が切り出される(例えば特許文献1参照)。その後、ガラス板は各種の加工工程を経て所定の形状に加工される。
【0004】
上記の工程を経て製造されたガラス板は、微小な傷や異物等の欠陥の有無について検査される。例えば特許文献2は、ガラス板を検査するための装置を開示する。検査装置は、ガラス板を縦姿勢で搬送する搬送装置と、搬送装置によって搬送されるガラス板を検査する欠陥検査手段と、を備える(同文献の段落0031参照)。
【0005】
この検査装置における搬送装置は、縦姿勢のガラス板の上下方向で対向した一対の辺部である上辺部と下辺部とを、それぞれ支持する二組のチャック群を備える(同文献の段落0032参照)。欠陥検査手段は、ガラス板の搬送経路に配置されると共に、上下方向に沿って並べられた複数のカメラを備えるラインセンサにより構成される(同文献の0037参照)。
【0006】
上記の検査装置によってガラス板を検査する工程では、欠陥検査手段の前を通過する搬送中のガラス板の面に対し、当該ガラス板を挟んで反対側に設置された光源から照射され、ガラス板を透過した光をラインセンサのカメラで受光する。カメラが受光する光量の変化に基づいて、ガラス板に含まれる欠陥の有無が検査される(同文献の段落0037参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-197185号公報
【特許文献2】特開2014-211415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなガラス板の製造方法では、検査工程におけるガラス板の検査時間が他の工程に係る時間と比較して長くなっており、ガラス板の生産性を向上させるために、検査工程の効率化が求められている。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ガラス板の検査を効率良く行うことを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、縦姿勢のガラス板を受け取り位置から検査ゾーンを通過して受け渡し位置まで搬送装置によって搬送する搬送工程と、前記搬送工程を実行中に前記検査ゾーン内で前記ガラス板を検査装置により検査する検査工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、前記搬送装置は、前記ガラス板の上辺を把持する第一上辺把持部及び第二上辺把持部を含み、前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記受け取り位置と前記受け渡し位置との間を往復移動するように構成され、前記搬送工程では、前記第一上辺把持部が前記ガラス板を次工程に受け渡してから、前記第二上辺把持部が前記ガラス板を次工程に受け渡すまでの間に、前記第一上辺把持部が前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、検査工程において、第一上辺把持部及び第二上辺把持部を含む上辺把持部を有する搬送装置によってガラス板を効率良く搬送することができる。これにより、ガラス板の検査を効率良く行うことが可能となる。
【0012】
(2) 上記(1)に記載のガラス板の製造方法において、前記搬送装置は、前記検査ゾーンにおいて前記第一上辺把持部又は前記第二上辺把持部で前記上辺を把持された前記ガラス板の下辺を把持する下辺把持部を備えてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、上辺把持部によってガラス板の上辺を把持し、下辺把持部によってガラス板の下辺を把持することで、検査工程におけるガラス板の反りや揺れの発生を防止することができる。これにより、ガラス板の検査を精度良く行うことが可能となる。
【0014】
(3) 上記(2)に記載のガラス板の製造方法において、前記第二上辺把持部が把持する前記ガラス板に対する前記検査工程の終了後から前記第二上辺把持部が前記ガラス板を次工程に受け渡すまでの間に、前記下辺把持部は、前記第二上辺把持部が把持している前記ガラス板の前記下辺の把持を解除し、前記受け渡し位置から前記受け取り位置へ向かう方向に移動を開始してもよい。
【0015】
下辺把持部は、検査装置による検査の実行中にガラス板の下辺を把持していればよい。上辺把持部が検査終了後のガラス板を次工程に受け渡すまでの間に、下辺把持部の次の検査のための動作を開始することで、検査工程を効率良く行うことが可能となる。
【0016】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかに記載のガラス板の製造方法において、前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記ガラス板の搬送方向に対して交差する方向に移動可能であり、前記ガラス板の搬送方向において、前記第一上辺把持部の位置と前記第二上辺把持部の位置とが重なるとき、前記ガラス板の前記搬送方向に対して垂直な方向において、前記第一上辺把持部の位置と前記第二上辺把持部の位置が異なっていてもよい。
【0017】
かかる構成によれば、第一上辺把持部と第二上辺把持部とがすれ違う際に、相互の接触を防止することが可能となる。
【0018】
(5) 上記(4)に記載のガラス板の製造方法において、前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記ガラス板の板厚方向に移動可能であってもよい。
【0019】
かかる構成によれば、第一上辺把持部と第二上辺把持部との接触を防止するとともに、搬送装置の設置スペースを削減することが可能となる。
【0020】
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載のガラス板の製造方法において、前記第一上辺把持部は、前記第二上辺把持部が把持する前記ガラス板に対する前記検査工程の終了後に、前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始してもよい。
【0021】
ガラス板を次工程に受け渡した第一上辺把持部は、受け渡し位置から受け取り位置に移動する途中で検査装置を通過することになる。上記のように、第二上辺把持部が把持するガラス板に対する検査工程の終了後に第一上辺把持部の移動を開始させることで、ガラス板の検査中に第一上辺把持部が検査装置に検出されることを防止することができる。
【0022】
(7) 上記の(2)から(6)のいずれかに記載のガラス板の製造方法において、前記検査装置は、前記ガラス板を撮像する撮像装置を備え、前記検査工程では、前記撮像装置は、前記下辺把持部の移動速度に同期して前記ガラス板を撮像してもよい。かかる構成によれば、簡単な制御でタイリングを行うことが可能となる。
【0023】
(8) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、縦姿勢のガラス板を受け取り位置から検査ゾーンを通過して受け渡し位置まで搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される前記ガラス板を前記検査ゾーン内で検査する検査装置と、を備えるガラス板の製造装置であって、前記搬送装置は、前記ガラス板の上辺を把持する第一上辺把持部及び第二上辺把持部を含み、前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部は、前記受け取り位置と前記受け渡し位置との間を往復移動するように構成されることを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、第一上辺把持部及び第二上辺把持部を含む上辺把持部を有する搬送装置によってガラス板を搬送することで、検査装置によるガラス板の検査を効率良く行うことが可能となる。
【0025】
(9) 上記(8)に記載のガラス板の製造装置において、前記搬送装置は、前記検査ゾーンで前記第一上辺把持部又は前記第二上辺把持部で前記上辺を把持された前記ガラス板の下辺を把持する下辺把持部を備えてもよい。
【0026】
かかる構成によれば、上辺把持部によってガラス板の上辺を把持し、下辺把持部によってガラス板の下辺を把持することで、検査装置によって検査を行う際に、ガラス板の反りや揺れの発生を防止することができる。これにより、ガラス板の検査を精度良く行うことが可能となる。
【0027】
(10) 上記(9)に記載のガラス板の製造装置において、前記第一上辺把持部、前記第二上辺把持部、前記下辺把持部、及び前記検査装置を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記第二上辺把持部が前記受け取り位置から前記受け渡し位置まで前記ガラス板を搬送する間に、前記第一上辺把持部が前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始するように、前記第一上辺把持部及び前記第二上辺把持部を制御してもよく、前記制御装置は、前記第二上辺把持部が把持する前記ガラス板に対する前記検査装置の検査終了後から前記第二上辺把持部が前記ガラス板を前記受け渡し位置まで搬送するまでの間に、前記第二上辺把持部が把持している前記ガラス板の下辺に対する前記下辺把持部による把持を解除させ、前記受け渡し位置から前記受け取り位置に向かう方向に移動を開始するように前記下辺把持部を制御してもよい。
【0028】
第一上辺把持部は、受け渡し位置から受け取り位置に移動する途中で検査装置を通過することになる。上記のように、第二上辺把持部が把持するガラス板に対する検査工程の終了後に第一上辺把持部の移動を開始させることで、ガラス板の検査中に第一上辺把持部が検査装置に検出されることを防止できる。
【0029】
また、下辺把持部は、検査装置による検査の実行中にガラス板の下辺を把持していればよい。上辺把持部が検査終了後のガラス板を受け渡し位置まで搬送する間に、下辺把持部が次の検査のための動作を開始することで、ガラス板の検査を効率良く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ガラス板の検査を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ガラス板の製造装置における成形装置及び切断装置を示す側面図である。
図2】ガラス板の製造装置における搬送経路を示す平面図である。
図3】ガラス板の製造装置における搬送経路を示す側面図である。
図4】検査ゾーンの平面図である。
図5】検査ゾーンの側面図である。
図6】第三搬送装置の正面図である。
図7】ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
図8】検査工程を示す平面図である。
図9】検査工程を示す側面図である。
図10】検査工程を示す平面図である。
図11】検査工程を示す側面図である。
図12】検査工程を示す平面図である。
図13】検査工程を示す側面図である。
図14】検査工程を示す平面図である。
図15】ガラス板の製造装置の他の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図14は、本発明に係るガラス板の製造装置及び製造方法の一実施形態を示す。
【0033】
図1乃至図3に示すように、ガラス板の製造装置は、溶融ガラスからガラスリボンGRを連続成形する成形装置1と、ガラスリボンGRからガラス板Gを切り出す第一切断装置2と、ガラス板Gを搬送する搬送経路3と、を備える。
【0034】
図1に示すように、成形装置1は、ガラスリボンGRを成形する成形炉4と、ガラスリボンGRの歪を低減するためにガラスリボンGRを徐冷(アニール処理)する徐冷炉5と、ガラスリボンGRを室温付近まで冷却する冷却ゾーン6と、成形炉4、徐冷炉5及び冷却ゾーン6のそれぞれに上下複数段に設けられるローラ対7と、を備えている。ローラ対7は、ガラスリボンGRの幅方向の両端部を挟持し、ガラスリボンGRに適度な張力を付与しながら、ガラスリボンGRを搬送して降下させる。以下、ガラスリボンGRの長手方向を板引き方向Dという。
【0035】
成形炉4の内部空間には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスからガラスリボンGRを成形する成形体8が配置されている。成形体8は、その上部に、溶融ガラスを溢れ出させるためのオーバーフロー溝を有している。成形装置1によって成形されたガラスリボンGRの幅方向の両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向の中央部に比べて厚みが大きい耳部(不要部)を含む。
【0036】
図1に示すように、第一切断装置2は、成形装置1の下方で縦姿勢のガラスリボンGRを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより、ガラスリボンGRからガラス板Gを順次切り出す。ここで、幅方向は、ガラスリボンGRの長手方向(板引き方向D)と直交する方向であり、本実施形態では実質的に水平方向と一致する。
【0037】
第一切断装置2は、ガラスリボンGRの一方の表面上に幅方向に沿ってスクライブ線SL1を形成するスクライブ装置(図示せず)と、スクライブ線SL1に対応する位置で、ガラスリボンGRの他方の表面を支持する接触部9と、切り出し対象のガラス板Gに対応する部分(スクライブ線SL1より下の部分)のガラスリボンGRを保持し、スクライブ線SL1に曲げ応力を作用させる応力付与部10と、を備える。
【0038】
スクライブ装置は、例えばホイールカッタを備えている。スクライブ装置は、ホイールカッタに限らず、例えばレーザ照射などの他の方法でスクライブ線SL1を形成するものであってもよい。
【0039】
接触部9は、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、ガラスリボンGRの幅方向に沿って、ガラスリボンGRの表面に接触する平面状の接触面を有する板状体(定盤)から構成されている。応力付与部10は、ガラスリボンGRの幅方向の両端部を把持する把持部(例えばチャック)を備える。
【0040】
搬送経路3は、例えば外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成するクリーンルームにより構成される。搬送経路3は、複数のゾーンに区切られている。
【0041】
図1乃至図3に示すように、搬送経路3は、ガラスリボンGRから切り出されたガラス板Gを受け渡す受渡ゾーン11と、ガラス板Gの一部を切断する切断ゾーン12と、ガラス板Gの検査を行う検査ゾーン13と、ガラス板Gを梱包する梱包ゾーン14と、を備える。
【0042】
上記の構成の他、搬送経路3は、ガラス板Gを縦姿勢で搬送する搬送装置15~18と、搬送経路3において行われる各工程を制御する制御装置19と、を備える。搬送装置15~18は、第一搬送装置15と、第二搬送装置16と、第三搬送装置17と、第四搬送装置18と、を含む。各搬送装置15~18は、ガラス板Gの一部を把持する把持部20(例えばチャック)を備える。
【0043】
受渡ゾーン11は、ガラス板Gを第一搬送装置15から第二搬送装置16へと受け渡すためのものである。受渡ゾーン11には、第一切断装置2から第一搬送装置15へとガラス板Gを受け渡す第一受け渡し位置P1と、第一搬送装置15から第二搬送装置16へとガラス板Gを受け渡す第二受け渡し位置P2とが設定されている。第一搬送装置15は、ガラスリボンGRから切り出されたガラス板Gを、第一受け渡し位置P1において第一切断装置2から受け取り、受渡ゾーン11の第二受け渡し位置P2で待機する第二搬送装置16に向かって搬送する。なお、ガラス板Gは、板引き方向Dが上下方向と一致するように支持されている。
【0044】
切断ゾーン12は、ガラス板Gの幅方向Wの端部に形成されている不要部(耳部)Gxを除去するためのものである。切断ゾーン12は、第二切断装置(図示せず)としてのスクライブ装置及び折割装置を備える。
【0045】
第二搬送装置16は、切断ゾーン12においてガラス板Gを搬送するためのものである。図2及び図3に示すように、第二搬送装置16は、ガラス板Gを縦姿勢で吊り下げ支持するとともに、その幅方向Wに沿って搬送する。すなわち、第二搬送装置16は、ガラス板Gの表面が搬送方向に面しない状態でガラス板Gを搬送する。これにより、搬送時におけるガラス板Gの揺れを抑制することができる。
【0046】
第二搬送装置16は、第一搬送装置15からガラス板Gを受け取ると、このガラス板Gを切断ゾーン12の第二切断装置に向かって搬送する。第二搬送装置16は、第二切断装置によるガラス板Gの切断が行われた後に、ガラス板Gを検査ゾーン13に向かって搬送する。
【0047】
検査ゾーン13は、ガラス板Gを検査するための検査設備21を備える。検査設備21は、検査装置21aと、照明装置21bとを備える。図2に示すように、検査装置21aと照明装置21bとは、所定の間隔をおいて相互に対向するように配置される。この構成により、検査装置21aと照明装置21bとの間には、ガラス板Gが通過する空間が形成されている。
【0048】
検査装置21aは、ガラス板Gを撮像する撮像装置21a1と、検出された欠陥の種類を判別する解析装置(図示せず)と、を備える。撮像装置21a1は、例えば複数のCCDカメラを上下方向に配列することによりラインセンサとして構成される。照明装置21bは、例えばLED照明装置により構成される。
【0049】
第三搬送装置17は、検査ゾーン13においてガラス板Gを搬送するためのものである。図4乃至図6に示すように、第三搬送装置17は、ガラス板Gの上辺Gaを把持して搬送する二系統の上搬送装置17a1,17a2と、ガラス板Gの下辺Gbを把持して搬送する一系統の下搬送装置17bと、を含む。
【0050】
二系統の上搬送装置17a1,17a2は、第一上搬送装置17a1と、第二上搬送装置17a2とを含む。各上搬送装置17a1,17a2は、図6に示す上搬送レール22に支持されている。これにより、上搬送装置17a1,17a2は、検査ゾーン13を搬送方向Wに沿って直線的に往復移動するように構成される。具体的には、各上搬送装置17a1,17a2は、第二搬送装置16からガラス板Gを受け取る受け取り位置P3と、第四搬送装置18にガラス板Gを受け渡す受け渡し位置P4との間を移動することができる。
【0051】
第一上搬送装置17a1と第二上搬送装置17a2とは、同じ構造を有する。図6に示すように、第一上搬送装置17a1とガラス板Gの搬送方向Wに対して垂直な水平方向、すなわち、搬送されるガラス板Gの板厚方向Tにおいて所定の間隔をおいて配置されている。また、上搬送レール22に支持される第一上搬送装置17a1と第二上搬送装置17a2とは、同じ高さに位置している。
【0052】
図6に示すように、第一上搬送装置17a1の把持部(以下「第一上辺把持部」という)20aと、第二上搬送装置17a2の把持部(以下「第二上辺把持部」という)20bとは、ガラス板の板厚方向Tにおいて対向するように配置されている。また、第一上辺把持部20aと第二上辺把持部20bとは、ガラス板Gの板厚方向Tに沿って移動可能に構成される。
【0053】
各上搬送装置17a1,17a2は、各上辺把持部20a,20bの他、各上辺把持部20a,20bを支持する支持アーム23と、支持アーム23を案内する案内機構24と、案内機構24を介して支持アーム23を移動させる駆動部25と、を備える。
【0054】
支持アーム23は、上辺把持部20a,20bを支持する第一アーム部23aと、第一アーム部23aと一体に構成される第二アーム部23bとを有する。第一アーム部23aは、水平状に構成される長尺状の部分である。第一アーム部23aは、上辺把持部20a,20bに把持されるガラス板Gの板厚方向Tに沿って延びている。第一アーム部23aは、その一端部において上辺把持部20a,20bを支持している。第一アーム部23aの他端部には、第二アーム部23bが一体に固定されている。
【0055】
第二アーム部23bは、上下方向に沿って延びる長尺状の部分である、第二アーム部23bの下端部は、第一アーム部23aに固定されている。第二アーム部23bの上端部は、案内機構24の一部に固定されている。
【0056】
案内機構24は、例えば直動ガイドを用いて構成されている。案内機構24は、ベース24aと、ベース24aを案内するレール24bと、ベース24aの上面に固定されるとともに、レール24bに係合してガラス板Gの板厚方向Tに移動可能に構成されるブロック24cと、を備える。
【0057】
ベース24aは、板状又はブロック状に構成される。ベース24aの下面には、支持アーム23における第二アーム部23bの上端部が固定されている。レール24bは、ガラス板Gの板厚方向Tに沿って延びている。ブロック24cは、各レール24bの長手方向に間隔をおいて複数箇所(本実施形態では二箇所)に配置されている。
【0058】
駆動部25は、本実施形態では、例えばエアシリンダ機構により構成されるが、これに限らず、サーボモータ及びボールねじ機構、ベルト機構、又はラックピニオン機構などの移動機構を組み合わせてなるアクチュエータを用いてもよい。駆動部25のピストンは、案内機構24のベース24aに固定されている。駆動部25は、ピストンを動作させることで、ベース24aに固定された支持アーム23をガラス板Gの板厚方向Tに沿って移動させる。
【0059】
第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20a及び第二上搬送装置17a2の第二上辺把持部20bは、上記の案内機構24及び駆動部25によって、ガラス板Gの上辺Gaを把持する把持位置と、把持位置から離れた退避位置とに位置変更可能に構成される。
【0060】
図6では、第一上辺把持部20aが把持位置にあってガラス板Gを把持しており、第二上辺把持部20bが退避位置にある状態を示している。図6において、第二上辺把持部20bが把持位置に移動すると、第一上辺把持部20aの把持位置と同じ位置に配置されることになる。このように、第三搬送装置17は、第一上辺把持部20a及び第二上辺把持部20bのうち、一方が把持位置にある場合に、他方が退避位置にあることで、第一上辺把持部20aと第二上辺把持部20bとの接触を防止する構造になっている。
【0061】
下搬送装置17bは、ガラス板Gの下辺Gbを把持する下辺把持部20cを有する。図4乃至図6に示すように、下搬送装置17bの下辺把持部20cは、ガラス板Gの搬送方向Wに沿って延びる下搬送レール26に支持されている。これにより、下辺把持部20cは、検査ゾーン13を搬送方向Wに沿って直線的に往復移動するように構成される。
【0062】
具体的には、下辺把持部20cは、受け取り位置P3と検査設備21との間に設けられる把持待機位置P5と、検査設備21と受け渡し位置P4との間に設けられる把持解除位置P6との間を往復移動することができる。把持待機位置P5から把持解除位置P6までの距離は、受け取り位置P3から受け渡し位置P4までの距離よりも短い。
【0063】
下搬送装置17bは、この下搬送装置17bの移動時の位置及び速度を検出することが可能なエンコーダを備える。エンコーダは、検出した下搬送装置17bのデータを制御装置19に送信することができる。
【0064】
梱包ゾーン14は、ガラス板GをパレットCに梱包することによってガラス板梱包体を製造するためのものである。梱包ゾーン14内には、パレットCと、第四搬送装置18とが配されている。第四搬送装置18は、検査ゾーン13の受け渡し位置P4と、パレットCとの間を往復移動するように構成される。第四搬送装置18は、ガラス板Gを縦姿勢で保持した状態でパレットCに載置することが可能な積載装置として機能する。
【0065】
梱包ゾーン14には、シート供給装置(図示せず)によって、ガラス板Gを保護するための保護シート(図示せず)が供給される。シート供給装置は、梱包ゾーン14に隣接するシート供給室(図示せず)に配置されている。第四搬送装置18によって搬送されるガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態で、パレットCに載置される。
【0066】
制御装置19は、搬送経路3に配置される各搬送装置16~18、第二切断装置、検査設備21における各種動作を制御することができる。
【0067】
以下、上記の製造装置によってガラス板Gを製造する方法について説明する。
【0068】
図7に示すように、ガラス板Gの製造方法は、成形工程S1と、徐冷工程S2と、冷却工程S3と、切断工程S4と、検査工程S5と、梱包工程S6と、を備える。この他、本方法は、各搬送装置15~18によってガラス板Gを搬送する搬送工程を備える。
【0069】
図1に示すように、成形工程S1では、成形装置1によって溶融ガラスからガラスリボンGRを連続成形する。成形体8は、溶融ガラスをオーバーフロー溝から溢れ出させて、当該成形体8の両側の側壁面に沿って流下させる。さらに成形体8は、流下させた溶融ガラスを各側壁面の下端部で融合させる。これにより、所定の幅を有するガラスリボンGRが成形される。なお、成形体8は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0070】
徐冷工程S2では、徐冷炉5内に配されたローラ対7によって、ガラスリボンGRを下方に搬送する。徐冷炉5内では所定の温度勾配が設定されており、ガラスリボンGRは徐冷炉5内を通過することで徐冷される。徐冷工程S2後の冷却工程S3では、ガラスリボンGRは、徐冷炉5の下方に配された冷却ゾーン6を通過しつつ、室温付近まで冷却される。
【0071】
切断工程S4は、第一切断工程及び第二切断工程を含む。第一切断工程では、第一切断装置2によってガラスリボンGRの中途部を幅方向に沿って切断することで、所定サイズのガラス板Gを切り出す。すなわち、第一切断工程では、下方に移動するガラスリボンGRの中途部にスクライブ装置によって幅方向に沿うスクライブ線SL1を形成し(スクライブ工程)、このスクライブ線SL1に沿ってガラスリボンGRの一部を折割ることで、枚葉状のガラス板Gを形成する(折割工程)。
【0072】
スクライブ工程において、スクライブ装置のホイールカッタは、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、ガラスリボンGRの幅方向Wにスクライブ線SL1を形成する。折割工程において、応力付与部10は、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、接触部9を支点としてガラスリボンGRを湾曲させるための動作(A1方向の動作)を行う。この応力付与部10の動作により、スクライブ線SL1に曲げ応力が付与される。その結果、ガラスリボンGRがスクライブ線SL1に沿って幅方向に折り割られ、ガラスリボンGRからガラス板Gが切り出される。
【0073】
図1及び図2に示すように、応力付与部10は、切り出されたガラス板Gを縦姿勢のままB方向に沿って搬送した後、第一受け渡し位置P1でガラス板Gを第一搬送装置15に受け渡す。受け渡し後、応力付与部10は、ガラス板Gの幅方向両端部の保持を解除すると共に、ガラスリボンGRから次のガラス板Gを切り出すために、切り出しを開始する前の位置に戻る。第一搬送装置15はガラス板Gの上辺Gaを把持部20によって把持した状態で、受渡ゾーン11の第二受け渡し位置P2で待機する第二搬送装置16に向かって移動する。
【0074】
第一搬送装置15が第二受け渡し位置P2まで到達すると、第二搬送装置16は、その把持部20によって、第一搬送装置15の把持部20によって支持されているガラス板Gの上辺Gaを把持する。その後、第一搬送装置15は、ガラス板Gの把持を解除し、第一受け渡し位置P1に戻る。第二搬送装置16は、第一搬送装置15からガラス板Gを受け取ると、切断ゾーン12に向かってガラス板Gを搬送する。
【0075】
第二切断工程は、切断ゾーン12内において、第二搬送装置16によって縦姿勢に保持されるガラス板Gに対して、第二切断装置によって不要部Gxを除去する工程である。第二切断工程では、第二切断装置のスクライブ装置によってガラス板Gにスクライブ線SL2を形成し(スクライブ工程)、その後、折割装置によってガラス板Gの不要部Gxを折割る(折割工程)。切断工程S4が終了すると、第二搬送装置16は、不要部Gxが除去されたガラス板Gを検査ゾーン13へと搬送する。
【0076】
検査工程S5は、切断工程S4を通過したガラス板Gに含まれる欠陥を検出し、この欠陥に基づいて各ガラス板Gの良否を検査する工程である。
【0077】
検査工程S5では、第二搬送装置16によって受け取り位置P3に搬送されたガラス板Gを、第三搬送装置17における二系統の上搬送装置17a1,17a2によって交互に搬送する。
【0078】
図4及び図5は、第三搬送装置17の第一上搬送装置17a1が受け渡し位置P4に位置し、第三搬送装置17の第二上搬送装置17a2が受け取り位置P3に位置している場合を示している。この状態では、第一上搬送装置17a1が把持するガラス板Gに関しては、既に検査設備21による検査が終了している。第一上搬送装置17a1は、このガラス板Gを第四搬送装置18に受け渡す動作を行う。
【0079】
第一上搬送装置17a1は、第四搬送装置18へのガラス板Gの受け渡しが終了すると、第一上辺把持部20aを把持位置から退避位置へと移動させる。さらに、第一上搬送装置17a1は、上流側の受け取り位置P3に向かって移動を開始する。第一上搬送装置17a1の移動開始の時期は、第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20aがガラス板Gを次工程(梱包工程S6)の第四搬送装置18に受け渡してから、第二上搬送装置17a2の第二上辺把持部20bがガラス板Gを次工程に受け渡すまでの間であれば、いつでもよい。この第一上搬送装置17a1及び第二上搬送装置17a2の移動に関する制御は、制御装置19によって行われる。
【0080】
本実施形態では、第二上搬送装置17a2がガラス板Gを搬送するために受け取り位置P3から移動を開始した後に第一上搬送装置17a1が移動を開始する例について説明する。この例に限らず、第一上搬送装置17a1は、第二上搬送装置17a2及び下搬送装置17bが搬送するガラス板Gの検査が終了するまで、受け渡し位置P4において待機し、その後に移動を開始してもよい。
【0081】
図8及び図9に示すように、第一上搬送装置17a1は、検査設備21に到達する前に、検査設備21の下流側の位置で一時停止する。第一上搬送装置17a1は、この停止位置において、第二上搬送装置17a2及び下搬送装置17bが搬送するガラス板Gの検査が終了するまで待機する。これにより、第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20aが検査設備21によって検出されることを防止することができる。
【0082】
一方、第三搬送装置17の第二上搬送装置17a2は、受け取り位置P3に到達したガラス板Gを第二搬送装置16から受け取る動作を行う。すなわち、第二上搬送装置17a2の第二上辺把持部20bは、第二搬送装置16によって支持されているガラス板Gの上辺Gaを把持する。その後、第二搬送装置16は、その把持部20によるガラス板Gの上辺Gaの把持を解除し、第二受け渡し位置P2へと戻る。
【0083】
第三搬送装置17の第二上搬送装置17a2が受け取り位置P3においてガラス板Gの受け取りを行っている間、第三搬送装置17の下搬送装置17bは、把持待機位置P5にて待機している。
【0084】
図8及び図9に示すように、第三搬送装置17の第二上搬送装置17a2は、第二搬送装置16からガラス板Gを受け取ると、このガラス板Gを下流側の検査設備21に向かって搬送する。第二上搬送装置17a2は、下搬送装置17bが待機している把持待機位置P5の上方に到達すると、ガラス板Gの搬送を停止する。
【0085】
次に、下搬送装置17bは、その下辺把持部20cによってガラス板Gの下辺Gbを把持する。これにより、ガラス板Gは、その上辺Ga及び下辺Gbが第二上搬送装置17a2及び下搬送装置17bによって支持された状態となる。その後、第二上搬送装置17a2と下搬送装置17bは、ガラス板Gを検査設備21に向かって搬送する。
【0086】
制御装置19は、第二上搬送装置17a2と下搬送装置17bとが同じ速度で搬送方向Wに沿って移動するように、第二上搬送装置17a2及び下搬送装置17bの動作を制御する。制御装置19は、下搬送装置17bの移動速度を、下搬送装置17bに設けられたエンコーダによって検出することができる。制御装置19は、検査設備21に対して下搬送装置17bの移動速度に係る信号を送信する。
【0087】
図10及び図11に示すように、ガラス板Gは、第三搬送装置17の第二上搬送装置17a2及び下搬送装置17bによって縦姿勢に支持された状態で、検査設備21における検査装置21aと照明装置21bとの間の空間を通過する。
【0088】
検査設備21は、ガラス板Gに対して照明装置21bから光を照射しつつ、検査装置21aの撮像装置21a1によってガラス板Gを撮像し、その画像データを取得する。撮像装置21a1が一度の撮像で取得できる画像データは、ガラス板Gの幅方向の大きさと比べて小さい。このため、搬送されるガラス板Gを複数回撮像し、得られた画像データをつなぎ合わせることで、ガラス板Gの全面の画像データを得ることが行われる。この手法はタイリングと呼ばれる場合がある。検査装置21aは、制御装置19から受信した信号に基づき、ガラス板Gの搬送速度、すなわち、下搬送装置17bの移動速度に同期するように、撮像装置21a1による撮像速度を好適に制御する。詳細には、撮像装置21a1が一度の撮像で撮像する範囲、及び下搬送装置17bの移動速度に応じて、撮像装置21a1がガラス板Gを撮像するタイミングを制御する。これにより、撮像したガラス板Gの複数の画像データを、隙間なく、かつ過剰に重なることなく、つなぎ合わせることができる。
【0089】
検査設備21における検査装置21aの解析装置は、撮像装置21a1によって取得された画像データに基づき、ガラス板Gに含まれる欠陥を検出する。解析装置は、例えば、ガラス板Gの欠陥情報として、ガラス板Gの偏肉(板厚)、筋(脈理)、欠陥の種類(例えば、泡、異物など)、位置(座標)、大きさ、各欠陥の個数などを検出することができる。
【0090】
検査装置21aの解析装置は、検出した欠陥を所定の判定基準によって判定し、ガラス板Gの合否を決定する。検査に合格したガラス板Gは、第三搬送装置17によって梱包ゾーン14に搬送される。
【0091】
搬送工程において、制御装置19は、第二上辺把持部20b及び下搬送装置17bが搬送するガラス板Gに対する検査設備21の検査終了後から第二上辺把持部20bがガラス板Gを次工程(梱包工程S6)に受け渡すまでの間に、下辺把持部20cによるガラス板Gの下辺Gbの把持を解除させる。その後、制御装置19は、受け渡し位置P4から受け取り位置P3に向かう方向への移動を下辺把持部20cに開始させる。
【0092】
具体的には、制御装置19は、ガラス板Gの全体が検査設備21を通過し終えたときに、検査終了のトリガ信号を第一上搬送装置17a1及び下搬送装置17bに送信する。
【0093】
図12及び図13に示すように、下搬送装置17bは、制御装置19からのトリガ信号を受信すると、把持解除位置P6において、下辺把持部20cによるガラス板Gの下辺Gbの把持を解除する。その後、下搬送装置17bは、移動方向を反転させ、把持解除位置P6から上流側の把持待機位置P5に向かって移動する。下搬送装置17bは、把持待機位置P5に到達すると、第一上搬送装置17a1が次の検査対象となるガラス板Gが把持待機位置P5に搬送してくるまで待機する。
【0094】
図12及び図13に示すように、第二上搬送装置17a2及び下搬送装置17bが搬送するガラス板Gの検査が終了すると、待機していた第一上搬送装置17a1は、制御装置19からのトリガ信号を受信し、上流側の受け取り位置P3に向かって移動を開始する。
【0095】
第一上搬送装置17a1は、受け取り位置P3への移動中に、ガラス板Gを受け渡し位置P4へと搬送する第二上搬送装置17a2とすれ違うことになる。この場合において、第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20aと、第二上搬送装置17a2の第二上辺把持部20bとがガラス板Gの搬送方向Wにおいて、すなわちX方向からの側面視において重なることになる。
【0096】
上記のように、第一上辺把持部20aの位置と第二上辺把持部20bの位置とが重なるとき、ガラス板Gの搬送方向Wに対して垂直な方向、すなわちガラス板Gの板厚方向Tにおいて、第一上辺把持部20aの位置と第二上辺把持部20bの位置は異なる。すなわち、ガラス板Gの板厚方向Tにおいて、把持位置にある第一上辺把持部20aと、退避位置にある第二上辺把持部20bとが離れている。このため、第一上搬送装置17a1と、第二上搬送装置17a2とがすれ違う場合においても、第一上辺把持部20aと第二上辺把持部20bとが接触することはない。
【0097】
第二上搬送装置17a2は、検査設備21の上方を搬送方向Wに沿って通過すると、移動速度を維持しながらガラス板Gを受け渡し位置P4まで搬送する。図14に示すように、受け渡し位置P4に到達すると、第二上搬送装置17a2は停止し、ガラス板Gを第四搬送装置18に受け渡す。次に、第二上搬送装置17a2は、第二上辺把持部20bを把持位置から退避位置へと移動させる。その後、第二上搬送装置17a2は、受け渡し位置P4から受け取り位置P3に向かう方向に、移動を開始する。第二上搬送装置17a2の移動開始の時期は、第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20aが受け取り位置P3においてガラス板Gを受け取ってから、このガラス板Gを次工程(梱包工程S6)に受け渡すまでの間であれば、いつでもよい。第二上搬送装置17a2は、検査設備21に到達する前に停止し、次の検査対象であるガラス板Gの検査が終了するまで待機する。
【0098】
図14に示すように、第一上搬送装置17a1は、受け取り位置P3に到達すると、第二搬送装置16によって搬送されたガラス板Gの受け取り動作を行う。第一上搬送装置17a1は、ガラス板Gを受け取ると、受け渡し位置P4に向かってガラス板Gを搬送する。その後の第一上搬送装置17a1の動作は、第二上搬送装置17a2がガラス板Gを受け取り位置P3から受け渡し位置P4まで搬送する上記の動作と同じである。
【0099】
梱包工程S6において、第四搬送装置18は、第三搬送装置17から受け取ったガラス板Gを縦姿勢で保持し、パレットCに搬送する。ガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態でパレットCに積載される。なお、複数の第四搬送装置18により複数のパレットCに同時にガラス板Gを積載するようにしてもよい。所定数のガラス板GがパレットCに積載されることで、パレットC上にガラス板積層体が構成される。その後、ガラス板積層体を保護するための保護カバーや位置規制部材がパレットCに取り付けられる。これにより、ガラス板梱包体が製造される。ガラス板梱包体を構成するガラス板Gは、切断や端面研磨、洗浄、検査等の所定の後工程を施され、製品ガラス板となる。このような製品ガラス板は、例えばディスプレイ用ガラス基板として使用される。
【0100】
以上説明した本実施形態に係るガラス板Gの製造装置及び製造方法によれば、検査工程S5において、二系統の上搬送装置17a1,17a2によってガラス板Gを交互に受け取り位置P3から受け渡し位置P4まで搬送することで、検査設備21によるガラス板Gの検査を効率良く行うことが可能となる。
【0101】
図15は、ガラス板の製造装置における他の実施形態を示す。本実施形態に係る第三搬送装置17の第一上搬送装置17a1及び第二上搬送装置17a2は、ガラス板Gの搬送方向Wに対して垂直な上下方向に沿って移動可能に構成される。
【0102】
本実施形態では、検査工程S5において、第二上搬送装置17a2がガラス板Gを搬送している間に、検査設備21の下流側にある第一上搬送装置17a1を、図15において実線で示す位置から二点鎖線で示す上方位置に移動させる。これにより、第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20aは、検査設備21よりも上方に配置される。その後、第一上搬送装置17a1は、上流側の受け取り位置P3に向かって移動する。この動作により、第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20aは、検査設備21によって検出されることなく、検査設備21の上方を通過することができる。
【0103】
本実施形態では、ガラス板Gの搬送方向Wにおいて、第一上辺把持部20aの位置と第二上辺把持部20bの位置とが重なるとき、ガラス板Gの搬送方向Wに対して垂直な方向である上下方向において、第一上辺把持部20aの位置と第二上辺把持部20bの位置が異なる。すなわち、上下方向において、第一上辺把持部20aと、第二上辺把持部20bとが離れていることから、第一上搬送装置17a1と、第二上搬送装置17a2とがすれ違う場合においても、第一上辺把持部20aと第二上辺把持部20bとが接触することはない。
【0104】
本実施形態によれば、ガラス板Gを第四搬送装置18に受け渡した後の第一上搬送装置17a1を検査設備21の下流側で待機させることなく、受け取り位置P3まで移動させることができる。これにより、ガラス板Gの検査を効率良く行うことができる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0106】
上記の実施形態では、第三搬送装置17の第一上搬送装置17a1と第二上搬送装置17a2とが同じ高さに設定されていたが、本発明はこの構成に限定されない。第一上搬送装置17a1と第二上搬送装置17a2とは、異なる高さに配置されてもよい。
【0107】
この場合には、第一上搬送装置17a1の第一上辺把持部20aと、第二上搬送装置17a2の第二上辺把持部20bの高さとを同一に設定するように、支持アーム23を上下方向に伸縮自在な構成としてもよい。
【0108】
上記の実施形態では、第三搬送装置17の下搬送装置17bが把持待機位置P5と把持解除位置P6との間を往復移動する例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。下搬送装置17bは、受け取り位置P3と受け渡し位置P4との間を往復移動するように構成されてもよい。
【0109】
上記の実施形態では、第四搬送装置18へのガラス板Gの受け渡しが終了した際に、第一上辺把持部20aを把持位置から退避位置へと移動させていたが、本発明はこの構成に限定されない。第四搬送装置18へのガラス板Gの受け渡しの終了後から、第二上搬送装置17a2に把持されたガラス板Gとすれ違い始めるまでの間に、把持位置から退避位置への移動が完了していればよい。
【0110】
上記の実施形態では、第一上辺把持部20a及び第二上辺把持部20bが搬送方向Wに対して直交する方向(板厚方向T又は上下方向)に移動可能に構成されていたが、本発明はこの構成に限定されない。第一上辺把持部20a及び第二上辺把持部20bの移動方向が搬送方向Wに交差していれば、直交していなくてもよい。
【0111】
上記の実施形態では、第一上搬送装置17a1と、第二上搬送装置17a2の二系統の上搬送装置が設けられていたが、本発明はこの構成に限定されない。三系統以上の上搬送装置が設けられていてもよい。
【0112】
上記の実施形態では、一系統の下搬送装置17bが設けられていたが、本発明はこの構成に限定されない。二系統以上の下搬送装置が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0113】
13 検査ゾーン
17 第三搬送装置
19 制御装置
20a 第一上辺把持部
20b 第二上辺把持部
20c 下辺把持部
21a 検査装置
21a1 撮像装置
G ガラス板
P3 受け取り位置
P4 受け渡し位置
S5 検査工程
T 板厚方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15