(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162126
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20241114BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20241114BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61B17/22
A61M25/10 520
A61M25/14 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077372
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泊 晃平
(72)【発明者】
【氏名】竹中 完
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160EE21
4C267AA02
4C267AA07
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB08
4C267BB27
4C267BB29
4C267BB40
4C267CC22
4C267DD10
(57)【要約】
【課題】十二指腸乳頭部の切開により生じるリスクを低減させながら、単一のデバイスによって十二指腸乳頭部の拡張および結石除去を実施することを可能にするバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】本発明に係るバルーンカテーテル10は、可撓性材料からなり、結石除去用バルーン流体導出口111から流出させる流体を流通する結石除去用バルーンルーメンと、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121から流出させる流体を流通する十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンと、を軸方向に沿って有するカテーテルチューブ100と、結石除去用バルーン流体導出口111から流出した流体により膨張可能な結石除去用バルーン170と、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121から流出した流体により膨張可能な十二指腸乳頭部拡張用バルーン180と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
十二指腸乳頭部から胆管または膵管に挿入されるバルーンカテーテルであって、
可撓性材料からなり、遠位端部に設けられた結石除去用バルーン流体導出口から流出させる流体を流通する結石除去用バルーンルーメンと、遠位端部に設けられた十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口から流出させる流体を流通する十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンと、を軸方向に沿って有するカテーテルチューブと、
胆管または膵管内の結石を除去するために前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられており、前記結石除去用バルーン流体導出口から流出した流体により膨張可能な結石除去用バルーンと、
十二指腸乳頭部を拡張するために前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられており、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口から流出した流体により膨張可能な十二指腸乳頭部拡張用バルーンと、を備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記結石除去用バルーンが伸縮性素材からなり、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンが非伸縮性素材からなることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記結石除去用バルーンが、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンより前記カテーテルチューブの遠位側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテルチューブの内部に軸方向に沿って、前記結石除去用バルーンルーメンとしての第1ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられた造影剤導出口から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメンとしての第2ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられたガイドワイヤ挿通口から導出させるガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンとしての第3ルーメンと、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンとしての第4ルーメンと、が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテルチューブの内部に軸方向に沿って、前記結石除去用バルーンルーメンとしての第1ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられた造影剤導出口から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメンとしての第2ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられたガイドワイヤ挿通口から導出させるガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンとしての第3ルーメンと、が形成されており、
前記第2ルーメンの内部に軸方向に沿って挿通されたチューブ部材の管腔が前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンとして用いられ、前記チューブ部材の遠位端が前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口として前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン内に開口することを特徴とする請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記カテーテルチューブの内部に軸方向に沿って、前記結石除去用バルーンルーメンとしての第1ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられた造影剤導出口から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメンとしての第2ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部において充填物により閉塞された第3ルーメンとが、形成されており、
前記第3ルーメンの前記充填物よりも近位側に前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口が形成されており、前記第3ルーメンの前記充填物よりも近位側が前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンとして用いられ、
前記第3ルーメンの前記充填物よりも遠位側にガイドワイヤを導入するガイドワイヤ導入口が形成されているとともに、前記第3ルーメンの前記ガイドワイヤ導入口よりも遠位側にガイドワイヤを導出するガイドワイヤ挿通口が形成されており、前記第3ルーメンの前記充填物よりも遠位側が前記ガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンとして用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十二指腸乳頭部から胆管または膵管に挿入されるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胆管内に生じた結石(胆石)を除去する総胆管結石治療が知られている。この治療では、例えば、経鼻または経口内視鏡を用いて十二指腸乳頭部から総胆管にアプローチし、胆管内に生じた結石を除去する内視鏡的胆道結石除去術が行われる。
【0003】
総胆管結石治療では、結石を総胆管外に取り出しやすくする目的、または結石除去デバイスを総胆管内に挿入しやすくする目的で、総胆管への入口である十二指腸乳頭部を拡張する手技が実施される場合がある。十二指腸乳頭部を拡張する手技としては、十二指腸乳頭部にある乳頭括約筋を切開する内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST:Endoscopic Sphincterotomy)、十二指腸乳頭部をバルーンにより拡張する内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD:Endoscopic papillary balloon dilation)または内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(EPLBD:Endoscopic papillary large balloon dilation)が知られている。
【0004】
また、胆管内に生じた結石を除去する際には、例えばバスケット型の胆管結石砕石具で結石を砕石または採石する手技、結石除去用バルーンカテーテルを胆管内に挿入してバルーンで結石を掻き出す手技等が知られている。
【0005】
下記の特許文献1には、胆管や樹枝状胆管系の他の部位における胆石の除去に用いられるデバイスが開示されている。特許文献1に開示されているデバイスが備えるカテーテルは、カテーテルの外部における切断用ワイヤの可動域より近位で、膨張可能なバルーンを保持している。これにより、単一のデバイスで切断用ワイヤによる乳頭括約筋の切開、およびバルーンによる胆石の除去が実施可能となり、胆石の除去に必要なカテーテルの数およびカテーテル交換回数を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、胆管または膵管内に巨大結石や積み上げ結石等が存在する場合には、ESTによる十二指腸乳頭部を大きく切開する必要が生じるが、ESTによる切開は出血を伴うため大きく切開することができないという問題がある。
【0008】
また、抗血小板薬や抗凝固薬が休薬されていない場合や、病状によって血液が極度に固まりにくい状態となっている場合には、切開による出血のリスクが高いことからESTによる切開を実施することができず、上記の特許文献1に記載されているデバイスを適用することができないという問題がある。
【0009】
この場合、EPBD/EPLBD等の手技によって十二指腸乳頭部の拡張処置を行った後に、結石除去用バルーンカテーテルにデバイスを交換して結石の除去処置を行う必要がある。このため、煩雑なデバイス交換の処理が発生して効率的ではないとともに、デバイス交換に必要な時間が患者の負担を増大させるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十二指腸乳頭部の切開により生じるリスクを低減させながら、単一のデバイスにより十二指腸乳頭部の拡張および結石除去を実施することを可能にするバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明に係るバルーンカテーテルは、十二指腸乳頭部から胆管または膵管に挿入されるバルーンカテーテルであって、可撓性材料からなり、遠位端部に設けられた結石除去用バルーン流体導出口から流出させる流体を流通する結石除去用バルーンルーメンと、遠位端部に設けられた十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口から流出させる流体を流通する十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンと、を軸方向に沿って有するカテーテルチューブと、胆管または膵管内の結石を除去するために前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられており、前記結石除去用バルーン流体導出口から流出した流体により膨張可能な結石除去用バルーンと、十二指腸乳頭部を拡張するために前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられており、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口から流出した流体により膨張可能な十二指腸乳頭部拡張用バルーンと、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、本発明に係るバルーンカテーテルは、結石除去用バルーン、および十二指腸乳頭部拡張用バルーンを備えており、デバイス交換を行うことなく、単一のデバイスによって十二指腸乳頭部を拡張するとともに結石除去を実施することができる。また、上記の構成によれば、十二指腸乳頭部の切開を行わずに十二指腸乳頭部を大きく拡張することができるため、巨大結石や積み上げ結石等が存在する場合や、抗血小板薬や抗凝固薬等の服用により出血のリスクを伴う場合に特に有用である。
【0013】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記結石除去用バルーンが伸縮性素材からなり、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンが非伸縮性素材からなってもよい。
【0014】
上記の構成によれば、胆管または膵管内の結石の除去性に優れた結石除去用バルーンを実現するとともに、十二指腸乳頭部の拡張性に優れた十二指腸乳頭部拡張用バルーンを実現することができる。
【0015】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記結石除去用バルーンが、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンより前記カテーテルチューブの遠位側に設けられていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、十二指腸乳頭部の拡張状態を確実に維持しながら、胆管または膵管内の結石を除去することができる。
【0017】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記カテーテルチューブの内部に軸方向に沿って、前記結石除去用バルーンルーメンとしての第1ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられた造影剤導出口から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメンとしての第2ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられたガイドワイヤ挿通口から導出させるガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンとしての第3ルーメンと、前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンとしての第4ルーメンと、が形成されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、4つのルーメン(第1~第4ルーメン)が形成されたカテーテルチューブを用いて、本発明に係るバルーンカテーテルを実現することができる。
【0019】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記カテーテルチューブの内部に軸方向に沿って、前記結石除去用バルーンルーメンとしての第1ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられた造影剤導出口から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメンとしての第2ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられたガイドワイヤ挿通口から導出させるガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンとしての第3ルーメンと、が形成されており、前記第2ルーメンの内部に軸方向に沿って挿通されたチューブ部材の管腔が前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンとして用いられ、前記チューブ部材の遠位端が前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口として前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン内に開口していてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、3つのルーメン(第1~第3ルーメン)が形成されたカテーテルチューブを用いて、本発明に係るバルーンカテーテルを実現することができる。また、造影剤用ルーメンに挿通したチューブ部材により十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンを形成することで、十二指腸乳頭部を拡張するための流体の流路を確保して当該流体の流通性を向上させることができ、十二指腸乳頭部拡張用バルーンの拡張即応性を向上させることができる。
【0021】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記カテーテルチューブの内部に軸方向に沿って、前記結石除去用バルーンルーメンとしての第1ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部に設けられた造影剤導出口から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメンとしての第2ルーメンと、前記カテーテルチューブの遠位端部において充填物により閉塞された第3ルーメンとが、形成されており、前記第3ルーメンの前記充填物よりも近位側に前記十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口が形成されており、前記第3ルーメンの前記充填物よりも近位側が前記十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメンとして用いられ、前記第3ルーメンの前記充填物よりも遠位側にガイドワイヤを導入するガイドワイヤ導入口が形成されているとともに、前記第3ルーメンの前記ガイドワイヤ導入口よりも遠位側にガイドワイヤを導出するガイドワイヤ挿通口が形成されており、前記第3ルーメンの前記充填物よりも遠位側が前記ガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンとして用いられてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、3つのルーメン(第1~第3ルーメン)が形成されたカテーテルチューブを用いて、本発明に係るバルーンカテーテルを実現することができる。また、バルーンカテーテルにガイドワイヤを挿通させる長さを短くすることができ、ガイドワイヤの近位端側からバルーンカテーテルを挿入する作業や、ガイドワイヤからバルーンカテーテルを抜去する作業を容易に実施することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテルの全体図である。
【
図2】
図1に示すバルーンカテーテルの十二指腸乳頭部拡張用バルーン近傍の長手方向に沿った断面を示す模式断面図である。
【
図3】
図1のA-A断面図であり、
図1に示すバルーンカテーテルの太径部の断面を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテルの使用例を示す概念図であり、十二指腸乳頭部から総胆管内に挿入されたバルーンカテーテルの結石除去用バルーンおよび十二指腸乳頭部拡張用バルーンを膨張させた状態を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態におけるバルーンカテーテルの全体図である。
【
図6】
図5に示すバルーンカテーテルの十二指腸乳頭部拡張用バルーン近傍の長手方向に沿った断面を示す模式断面図である。
【
図7】
図5のB-B断面図であり、
図5に示すバルーンカテーテルの細径部の断面を示す断面図である。
【
図8】
図5のC-C断面図であり、
図5に示すバルーンカテーテルの太径部の断面を示す断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態におけるバルーンカテーテルの全体図である。
【
図10】
図9に示すバルーンカテーテルの十二指腸乳頭部拡張用バルーン近傍の長手方向に沿った断面を示す模式断面図である。
【
図11】
図9のD-D断面図であり、
図9に示すバルーンカテーテルの細径部の断面を示す断面図である。
【
図12】
図9のE-E断面図であり、
図9に示すバルーンカテーテルの太径部の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1~第3実施形態におけるバルーンカテーテルについて説明する。本明細書では、バルーンカテーテルの使用者を基準として、患者の体内側を遠位側とし、使用者の手元側を近位側とする。本明細書において参照する図面は、実際の寸法に対して必ずしも正確な縮尺を有するものではなく、本発明に係る構成を模式的に示すために一部を誇張または簡略化したものである。
【0025】
本発明に係るバルーンカテーテルは、その遠位端部を十二指腸乳頭部から胆管または膵管に挿入し、胆管または膵管に生じた結石を除去するために用いることが可能である。本明細書の第1~第3実施形態では、本発明に係るバルーンカテーテルの一例として、胆管に生じた結石を除去するバルーンカテーテルについて説明するが、本発明に係るバルーンカテーテルは、膵管に生じた結石を除去するバルーンカテーテルとしても適用され得るものである。
【0026】
(第1実施形態)
図1~
図3を参照しながら、本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテル10の構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテル10の全体図である。
図2は、
図1に示すバルーンカテーテル10の十二指腸乳頭部拡張用バルーン180近傍の長手方向に沿った断面を示す模式断面図である。
図3は、
図1のA-A断面図であり、
図1に示すバルーンカテーテル10の太径部100bの断面を示す断面図である。なお、
図2は実際の断面図ではなく、バルーンカテーテル10の内部を模式的に図示してバルーンカテーテル10の内部に形成された第1~第4ルーメン151~154の連通状態を説明するための図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテル10は、カテーテルチューブ100と、結石除去用バルーン170と、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180と、カバー13と、4つの第1~第4枝管14a~14dと、4つの第1~第4ハブ15a~15dと、を概略備えて構成されている。
【0028】
カテーテルチューブ100は、可撓性材料によって形成されたチューブ状の長尺部材であり、経内視鏡的に体内に挿入される遠位側に位置する遠位端部101と、近位側に位置する近位端部102とを有している。カテーテルチューブ100の全長は、通常500~2500mmである。カテーテルチューブ100の材料は、可撓性を有する材料であれば特に限定されないが、高分子材料であることが好ましく、ポリアミドあるいはポリアミド系エラストマーであることが特に好ましい。
【0029】
図1に示すように、カテーテルチューブ100の外径は、近位端部102よりも遠位端部101が小さくなっている。カテーテルチューブ100は、例えば、遠位端部101に位置する境界部100cよりも遠位側が細径部100aとなっており、境界部100cよりも近位側が太径部100bとなっている。このようにカテーテルチューブ100の外径を近位側で太径とするとともに遠位側で細径とすることで、太径部100bにおいて剛性を向上させて、カテーテルチューブ100の挿入性を維持しながら、細径部100aにおいて柔軟性を向上させて、遠位端部101に取り付けられたバルーンの操作性を向上させることができる。
【0030】
カテーテルチューブ100を胆管に挿入する場合には、太径部100bの外径は、例えば1.0~4.2mmである。細径部100aの外径は、例えば太径部100bの外径の50~95%であり、60~90%であることが好ましい。例えば、胆管への挿入に使用するカテーテルチューブ100は、太径部100bの外径を2.40mmとし、細径部100aの外径を2.10mmとすることができる。なお、カテーテルチューブ100を胆管よりも細い膵管に挿入する場合には、カテーテルチューブ100の外径を膵管に合わせてより細くしてもよい。また、細径部100aの長手方向の長さ(カテーテルチューブ100の遠位端から境界部100cまでの長さ)は特に限定されないが、例えば30~400mmである。
【0031】
境界部100cでは、カテーテルチューブ100の外径が滑らかに変化していることが好ましく、境界部100cは、例えば遠位側に向かって細径となるようテーパー状に形成されていることが好ましい。境界部100cをテーパー状にすることで、軸方向に滑らかに進退可能となり、カテーテルチューブ100の挿入性を向上させることができる。
【0032】
カテーテルチューブ100の内部には、
図2に示すように、4つのルーメン(第1~第4ルーメン151~154)がカテーテルチューブ100の長手方向に沿って形成されている。すなわち、カテーテルチューブ100は、多ルーメンチューブで構成されている。第1~第4ルーメン151~154は、
図3の断面図に示すように、互いに連通することなく独立したルーメンとして形成されており、これら第1~第4ルーメン151~154の断面形状および断面積は、各ルーメンの用途に応じて適宜設定されればよい。
図3にはカテーテルチューブ100の太径部100bの断面が図示されているが、カテーテルチューブ100の細径部100aの断面も同様のものとなる。
【0033】
第1ルーメン151は、結石除去用バルーン170を膨張させるために用いる空気等の流体を結石除去用バルーン170の内部に送るための流路と用いられる。すなわち、第1ルーメン151は、結石除去用バルーンルーメン110として用いられる。結石除去用バルーンルーメン110としての第1ルーメン151は、カテーテルチューブ100の近位端から遠位端まで貫通しており、さらにカテーテルチューブ100の遠位端部101に形成された結石除去用バルーン流体導出口111で開口している。
【0034】
結石除去用バルーン流体導出口111は、結石除去用バルーン170の内部に位置するように形成された開口である。図示省略しているが、第1ルーメン151は、結石除去用バルーン流体導出口111よりも遠位側の位置において、例えば充填物により閉塞されている。これにより、カテーテルチューブ100の近位端から導入された結石除去用バルーン170を膨張させるための流体は、結石除去用バルーン流体導出口111のみから外部に流出して結石除去用バルーン170の内部に導入されるようになっている。
【0035】
第2ルーメン152は、結石の位置を確認する等の目的で体内のX線造影を行う場合に導入される造影剤の流路として用いられる。すなわち、第2ルーメン152は、造影剤用ルーメン130として用いられる。造影剤用ルーメン130としての第2ルーメン152は、カテーテルチューブ100の近位端から遠位端まで貫通しており、さらにカテーテルチューブ100の遠位端部101に形成された造影剤導出口131で開口している。
【0036】
造影剤導出口131は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180よりも遠位側に位置するように形成された開口である。造影剤導出口131は、例えば
図1に示すように、結石除去用バルーンルーメン110の近傍(例えば、軸方向に10mm以内離隔した位置)に設けることが好ましい。造影剤導出口131は、結石除去用バルーンルーメン110の近位側および遠位側のいずれの位置に形成されてもよいが、
図1に示すバルーンカテーテル10では、近位側の位置に形成されている。図示省略しているが、第2ルーメン152は、造影剤導出口131よりも遠位側の位置において、例えば充填物により閉塞されている。これにより、カテーテルチューブ100の近位端から導入された造影剤は、造影剤導出口131のみから外部に流出して体内に導入されるようになっている。また、造影剤導出口131の開口の向きは特に限定されず、例えばカテーテルチューブ100の径方向に沿った向き(すなわち、カテーテルチューブ100の軸方向に直交する向き)に形成すればよいが、造影剤導出口131から噴出する流体が造影剤導出口131よりも近位側に向かうようにカテーテルチューブ100の軸方向に対して斜めの向きに形成してもよい。造影剤導出口131の向きをこのようにカテーテルチューブ100の軸方向に対して斜めの向きに形成することによって、その造影剤導出口131から噴出させる流体に対し、胆管内の胆石や胆泥を洗い流す機能を付与することができる。なお、造影剤導出口131から噴出させる流体で胆管内の胆石や胆泥を洗い流す場合に用いる流体は特に限定されず、例えば生理食塩水や造影剤を用いることができる。
【0037】
第3ルーメン153は、ガイドワイヤ5を挿通するためのルーメンとして用いられる。すなわち、第3ルーメン153は、ガイドワイヤルーメン140として用いられる。ガイドワイヤルーメン140としての第3ルーメン153は、カテーテルチューブ100の近位端から、カテーテルチューブ100の遠位端に形成されたガイドワイヤ挿通口141まで貫通しており、ガイドワイヤルーメン140に挿通されたガイドワイヤ5は、ガイドワイヤ挿通口141から外部に露出できるようになっている。
【0038】
第4ルーメン154は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させるために用いる生理食塩水等の流体を十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部に送るための流路と用いられる。すなわち、第4ルーメン154は、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン120として用いられる。十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン120としての第4ルーメン154は、カテーテルチューブ100の近位端から遠位端まで貫通しており、さらにカテーテルチューブ100の遠位端部101の十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121で開口している。
【0039】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部に位置するように形成された開口である。図示省略しているが、第4ルーメン154は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121よりも遠位側の位置において、例えば充填物により閉塞されている。これにより、カテーテルチューブ100の近位端から導入された十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させるための流体は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121のみから外部に流出して十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部に導入されるようになっている。
【0040】
カテーテルチューブ100の遠位端は、挿入性を向上させるために、遠位側に向かって細径となるようテーパー状に形成されていてもよく、カテーテルチューブ100の遠位端に、テーパー状の先端チップが取り付けられていてもよい。カテーテルチューブ100の遠位端に先端チップを取り付ける場合には、ガイドワイヤルーメン140としての第3ルーメン153と連通するように筒状に形成された先端チップを用いることで、先端チップの遠位端開口部にガイドワイヤ5を外部に露出するためのガイドワイヤ挿通口141を設けることができる。
【0041】
第1~第4枝管14a~14dは、カテーテルチューブ100に形成されている第1~第4ルーメン151~154にそれぞれ接続されたチューブである。また、第1~第4ハブ15a~15dは、第1~第4枝管14a~14dの近位端にそれぞれ接続される部材であり、その近位端に形成された開口は、第1~第4枝管14a~14dに接続された第1~第4ルーメン151~154とそれぞれ連通している。
【0042】
第1~第4枝管14a~14dおよび第1~第4ハブ15a~15dの材質は特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましい。また、第1~第4枝管14a~14dと第1~第4ルーメン151~154との接続方法は特に限定されないが、例えば、第1~第4枝管14a~14dの遠位端をそれぞれテーパー状とし、その外周面に接着剤を塗布して、それぞれ対応する第1~第4ルーメン151~154に挿入して接着することができる。同様に、第1~第4枝管14a~14dと第1~第4ハブ15a~15dとの接続方法も特に限定されず、接着等によって接続することができる。
【0043】
第1枝管14aは、カテーテルチューブ100内の第1ルーメン151に接続されているとともに、第1ハブ15aに接続されている。第1ルーメン151は上述したように結石除去用バルーンルーメン110として機能し、カテーテルチューブ100の遠位端部101の結石除去用バルーン流体導出口111で開口している。この構成により、第1ハブ15aの開口と結石除去用バルーン流体導出口111との間が連通しており、第1ハブ15aにシリンジ等を接続して空気等の流体を導入または導出することで、結石除去用バルーン流体導出口111から結石除去用バルーン170の内部に流体を導入または導出させて、結石除去用バルーン170を膨張または収縮させることができる。また、第1ハブ15aは、二方活栓を備えており、二方活栓を開状態にして結石除去用バルーン170の内部に流体を導入して結石除去用バルーン170を膨張させた後、二方活栓を閉状態にすることで、結石除去用バルーン170の膨張状態を維持させることができる。
【0044】
第2枝管14bは、カテーテルチューブ100内の第2ルーメン152に接続されているとともに、第2ハブ15bに接続されている。第2ルーメン152は上述したように造影剤用ルーメン130として機能し、カテーテルチューブ100の遠位端部101の造影剤導出口131で開口している。この構成により、第2ハブ15bの開口と造影剤導出口131との間が連通しており、第2ハブ15bにシリンジ等を接続して造影剤を導入することで、造影剤導出口131から体内に造影剤を導入させることができる。
【0045】
第3枝管14cは、カテーテルチューブ100内の第3ルーメン153に接続されているとともに、第3ハブ15cに接続されている。第3ルーメン153は上述したようにガイドワイヤルーメン140として機能し、カテーテルチューブ100の遠位端に設けられたガイドワイヤ挿通口141で開口している。この構成により、第3ハブ15cの開口とガイドワイヤ挿通口141との間が連通しており、第3ハブ15cとガイドワイヤ挿通口141との間のガイドワイヤルーメン140にガイドワイヤ5を挿通させることができる。
【0046】
第4枝管14dは、カテーテルチューブ100内の第4ルーメン154に接続されているとともに、第4ハブ15dに接続されている。第4ルーメン154は上述したように十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン120として機能し、カテーテルチューブ100の遠位端部101の十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121で開口している。この構成により、第4ハブ15dの開口と十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121との間が連通しており、第4ハブ15dにインフレータ等を接続して生理食塩水等の流体を導入または導出することで、
図2に示すように、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121から十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部に流体を導入または導出させて、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張または収縮させることができる。
【0047】
カバー13は、カテーテルチューブ100と第1~第4枝管14a~14dとの接続部を補強して保護するために、その接続部を覆うように設けられている。カバー13の形状は特に限定されないが、例えば箱型あるいは筒型である。カバー13の材質としては、特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましい。また、熱収縮チューブをカバー13として用いてもよい。
【0048】
カバー13の遠位側のカテーテルチューブ100の外周には、任意選択的にタグ16を取り付けてもよい。タグ16には、例えば、どれくらいの流体容量で結石除去用バルーン170がどれくらいの外径に膨張するか等の情報を表示することができるようになっている。
【0049】
結石除去用バルーン170は、カテーテルチューブ100の遠位端部101において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180よりも遠位側に設けられている。結石除去用バルーン170は、結石除去用バルーン流体導出口111を覆うようにカテーテルチューブ100の外周面に取り付けられている。
【0050】
結石除去用バルーン170は伸縮性材料により構成されており、カテーテルチューブ100の結石除去用バルーンルーメン110を介して内部に流体が導入されることにより膨張するようになっている。胆管内で膨張した結石除去用バルーン170により胆管内の結石を掻き出したり押し出したりすることで、胆管内の結石除去を行うことができる。なお、結石除去用バルーン170を体内に挿入する際には、結石除去用バルーン170を収縮させ、結石除去用バルーン170がカテーテルチューブ100の外周面に密着した状態で体内に挿入される。
【0051】
結石除去用バルーン170を構成する伸縮性材料としては、100%モジュラス(JISK6251に準拠して測定した値)が、0.1~10Mpaであるものが好ましく、1~5Mpaであるものが特に好ましい。100%モジュラスが小さすぎると結石除去用バルーン170の強度が不足するおそれがあり、大きすぎると結石除去用バルーン170を十分な大きさに膨張できなくなるおそれがある。結石除去用バルーン170を構成する伸縮性材料としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。結石除去用バルーン170を伸縮性材料で構成することにより、結石除去用バルーン170は、その形状を胆管内の形状に合わせて胆管を閉塞するように柔軟に変更することが可能となり、胆管内の結石の除去性に優れた結石除去用バルーン170が実現されるようになる。
【0052】
結石除去用バルーン170は、
図1に示すように、全体として球状または筒状である。結石除去用バルーン170の遠位側の端部および近位側の端部には、カテーテルチューブ100の外周面と接合される固定部170a、170bが形成されており、結石除去用バルーン170は、結石除去用バルーン170の内部の流体が固定部170a、170bから外部に漏出しないようにカテーテルチューブ100に固定されている。固定部170a、170bは、柔軟性を有する細径部100aに固定されることが好ましい。
【0053】
固定部170a、170bの軸方向の長さは例えば0.5~5.0mmである。結石除去用バルーン170の固定部170a、170bをカテーテルチューブ100の外周面に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0054】
固定部170aと固定部170bとの間には、カテーテルチューブ100の外周面と接合されておらず、結石除去用バルーン170の内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部170cが形成されている。
【0055】
結石除去用バルーン170の膨張部170cは、膨張した状態での最大外径が、萎んだ状態での外径の200~1500%であることが好ましい。この比率が小さすぎると結石除去用バルーン170が十分な大きさに膨張しないおそれがあり、大きすぎるとカテーテルチューブ100を体内に挿入する際に結石除去用バルーン170が邪魔になるおそれがある。膨張部170cの軸方向の長さは例えば5~20mmであり、膜厚は例えば0.10~0.50mmである。
【0056】
結石除去用バルーン170を製造する方法は特に限定されず、伸縮性材料の製膜方法として公知の方法を用いればよく、例えばディッピング成形法を用いることができる。ディッピング成形法では、伸縮性材料と必要に応じて各種添加剤を溶剤に添加して溶液あるいは懸濁液とし、この溶液(懸濁液)に所望するバルーンの形状と略等しい外形を有する型を浸漬させて型の表面に溶液(懸濁液)を塗布し、溶剤を蒸発させて型の表面に被膜を形成させる。この浸漬と乾燥を繰り返すことにより所望の肉厚を有するバルーンを製膜することができる。なお、伸縮性材料の種類により、必要に応じて製膜後に架橋を行ってもよい。
【0057】
結石除去用バルーン170は、固定部170aと固定部170bとの間に位置する膨張部170cがカテーテルチューブ100の軸心に対して偏心して膨張するように構成されていてもよく、カテーテルチューブ100の軸心に対して対称に膨張するように構成されていてもよい。第1実施形態におけるバルーンカテーテル10は、
図1に示すように、膨張部170cがカテーテルチューブ100の軸心に対して偏心して膨張するようになっている。
【0058】
膨張部170cの一部にオフセットシート170dを貼付することで、膨張部170cをカテーテルチューブ100の軸心に対して偏心して膨張させることができる。オフセットシート170dは、例えば、オフセットシート170dの軸方向の長さが膨張部170cの軸方向の長さよりも長く設定された細長い形状を有している。オフセットシート170dは、軸方向に沿って膨張部170cの一部に貼付されるとともに、その両端が固定部170a、170b、あるいはカテーテルチューブ100の外周面に固定される。
【0059】
オフセットシート170dが貼付された膨張部170cの一部はカテーテルチューブ100に対して固定されている。このため、オフセットシート170dが貼付されている側の膨張部170cは膨張しにくい状態、または膨張できない状態となる。その結果、結石除去用バルーン170の内部に流体が導入された場合には、オフセットシート170dが貼付されていない側の膨張部170cが偏って膨張することで、カテーテルチューブ100の軸心に対して偏心した形状に膨張する。
【0060】
オフセットシート170dの材質は特に限定されず、例えばカテーテルチューブ100と同一の樹脂等を用いることができる。オフセットシート170dの固定方法は特に限定されず、例えば、接着、熱融着、高周波融着等が可能である。一例として、裏面に接着剤が塗布してあるオフセットシート170dを使用し、オフセットシート170dが、膨張部170cを含む結石除去用バルーン170の周方向の一部およびカテーテルチューブ100の一部に接着されるようにすればよい。オフセットシート170dの幅は、例えばカテーテルチューブ100の外周面の周方向の長さの1/2以下の幅であり、好ましくは1/3~1/5の幅である。この幅が小さすぎると結石除去用バルーン170を偏心した状態で膨張させることが困難となり、この幅が大きすぎると結石除去用バルーン170が膨張すること自体困難となる。
【0061】
なお、ここでは、オフセットシート170dの貼付によりカテーテルチューブ100の軸心に対して偏心した形状に結石除去用バルーン170を膨張させているが、例えば膨張部170cをカテーテルチューブ100の外周面の一部に偏るように設ける等、上記以外の構成によって、結石除去用バルーン170がカテーテルチューブ100の軸心に対して偏心した状態で膨張できるようにしてもよい。
【0062】
また、X線造影下で結石除去用バルーン170の位置を確認できるように、結石除去用バルーン170の近傍に1つまたは複数のX線不透過性マーカー115が取り付けられてもよい。例えば、
図1に示す構成では、結石除去用バルーン170の内部および近位側において、カテーテルチューブ100の遠位端部101にX線不透過性マーカー115が取り付けられている。X線不透過性マーカー115は、例えばX線不透過材料である金、プラチナ、プラチナイリジウム合金等の金属や、X線不透過物質の粉末を含有する樹脂組成物を用いて作製することができる。なお、
図2ではX線不透過性マーカー115の図示を省略している。
【0063】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は、カテーテルチューブ100の遠位端部101において、結石除去用バルーン170よりも近位側に設けられている。十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121を覆うようにカテーテルチューブ100の外周面に取り付けられている。
【0064】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は非伸縮性材料により構成されており、カテーテルチューブ100の十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン120を介して内部に流体が導入されることにより膨張するようになっている。
図4を参照しながら後述するように、十二指腸乳頭部2aに挿通させた状態で十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させることによって、十二指腸乳頭部2aを拡張することができる。なお、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を体内に挿入する際には、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を収縮させ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180がカテーテルチューブ100の外周面に密着した状態で体内に挿入される。
【0065】
結石除去用バルーン170と十二指腸乳頭部拡張用バルーン180との間の離隔距離(例えば、結石除去用バルーン170の近位端から十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の遠位端までの軸方向の距離)は、カテーテルチューブ100を挿入する管腔臓器の長さに合わせて設定すればよく、例えば胆管に挿入する場合には、通常30~200mm程度にすればよい。
【0066】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を構成する非伸縮性材料としては、ある程度の可撓性を有し、かつ十二指腸乳頭部2aに挿入して膨張させることにより十二指腸乳頭部2aを拡張できる程度の剛性を有する材質であることが好ましい。十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を構成する非伸縮性材料としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド、ポリイミド系エラストマー等が挙げられる。十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を非伸縮性材料で構成することにより、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は、その剛性によって膨張時に十二指腸乳頭部2aを確実に拡張することが可能となり、十二指腸乳頭部2aの拡張性に優れた十二指腸乳頭部拡張用バルーン180が実現されるようになる。
【0067】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は、
図1および
図2に示すように、全体として筒状である。十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の遠位側の端部および近位側の端部には、カテーテルチューブ100の外周面と接合される固定部180a、180bが形成されており、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部の流体が固定部180a、180bから外部に漏出しないようにカテーテルチューブ100に固定されている。
【0068】
固定部180a、180bは、カテーテルチューブ100の遠位端部101を構成する細径部100aに固定されてもよく、あるいは、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180が境界部100cを跨ぐように、遠位側の固定部180aが細径部100aに固定され、近位側の固定部180bが太径部100bに固定されてもよい。ここでは一例として、
図1および
図2に示すように、固定部180a、180bはともに細径部100aに固定されている。
【0069】
固定部180a、180bの軸方向の長さは例えば1.0~10.0mmである。十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の固定部180a、180bをカテーテルチューブ100の外周面に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0070】
固定部180aと固定部180bとの間には、カテーテルチューブ100の外周面と接合されておらず、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部180cが形成されている。
【0071】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の膨張部180cの大きさは、十二指腸乳頭部2aの大きさおよび必要な拡張量に応じて適宜設定可能である。膨張部180cの軸方向の長さは例えば30~60mmであり、膜厚は、例えば0.01~0.50mmである。また、膨張時における十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の外径は例えば4~22mmであり、好ましくは12~18mmである。
【0072】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を製造する方法は特に限定されず、非伸縮性材料の製膜方法として公知の方法を用いればよく、例えばブロー成形法を用いることができる。
【0073】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は、固定部180aと固定部180bとの間に位置する膨張部180cがカテーテルチューブ100の軸心に対して対称に膨張するように構成されている。すなわち、この十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の膨張部180cは、外力を受けない状態において、カテーテルチューブ100の軸心を回転軸としてカテーテルチューブ100の側方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されている。十二指腸乳頭部2aに挿入した状態で膨張部180cが軸心に対して対称に膨張することで、十二指腸乳頭部2aに対してその内壁を広げる力が均等に作用して、十二指腸乳頭部2aを効率良く拡張させることができるようになる。
【0074】
また、結石除去用バルーン170と同様に、X線造影下で十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の位置を確認できるように、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の近傍に1つまたは複数のX線不透過性マーカーが取り付けられてもよい。例えば、
図1に示す構成では、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の拡張有効部(十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させて十二指腸乳頭部2aを拡張するときに十二指腸乳頭部2aの内壁と接し得る部分)の遠位端と近位端のそれぞれの軸方向に対応する位置の、カテーテルチューブ100の遠位端部101にX線不透過性マーカー115が取り付けられている。また、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の外表面や十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の近傍に、内視鏡下で視認可能な内視鏡マーカーが設けられてもよい。さらに、膨張して十二指腸乳頭部2aの内壁に当接した十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の軸方向への位置ずれを防止するために、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の外表面に段差が設けられてもよい。
【0075】
次に、第1実施形態におけるバルーンカテーテル10の使用例について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテル10の使用例を示す概念図であり、十二指腸乳頭部2aから総胆管2b内に挿入されたバルーンカテーテル10の結石除去用バルーン170および十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させた状態を示す図である。
図4には、十二指腸および総胆管2bを含む管腔組織の断面が模式的に図示されている。
図4において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180は十二指腸乳頭部2aの位置で膨張しており、結石除去用バルーン170は総胆管2b内で膨張している。
【0076】
第1実施形態におけるバルーンカテーテル10は、一例として、総胆管2b内の結石(胆石)を体外に取り出して除去する総胆管結石治療を行う際に使用される。まず、内視鏡1を体内に挿入し、内視鏡1の先端を総胆管2bの入り口である十二指腸乳頭部2aの近傍に位置させる。この状態で、適宜カニューラを組み合わせて用いて内視鏡1のチャネルを介してガイドワイヤ5を患者の体内に挿入し、ガイドワイヤ5の遠位端を総胆管2b内まで挿入する。
【0077】
次いで、バルーンカテーテル10の遠位端に開口したガイドワイヤ挿通口141にガイドワイヤ5の近位端を挿入して、ガイドワイヤルーメン140としての第3ルーメン153にガイドワイヤ5を挿通させる。そして、結石除去用バルーン170および十二指腸乳頭部拡張用バルーン180が収縮してカテーテルチューブ100の外周面に密着した状態で、バルーンカテーテル10のカテーテルチューブ100の遠位端部101をガイドワイヤ5に沿わせながら十二指腸乳頭部2a近傍まで挿入する。
【0078】
次いで、内視鏡1下で十二指腸乳頭部2aの周辺を確認しながら、バルーンカテーテル10のカテーテルチューブ100の遠位端部101を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b内に挿入する。なお、十二指腸乳頭部2aにある乳頭括約筋に小切開を事前に形成して、カテーテルチューブ100の遠位端部101が十二指腸乳頭部2aを容易に挿通できるようにしてもよい。
【0079】
さらにカテーテルチューブ100を押し進めて、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の軸方向略中央部が十二指腸乳頭部2aの内側に配置されるように位置決めを行う。このとき、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180よりも遠位側に取り付けられた結石除去用バルーン170は、総胆管2bの奥部に配置された状態となる。
【0080】
次いで、第4ハブ15dおよび第4枝管14dから、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン120としての第4ルーメン154および十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121を介して、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部に生理食塩水等の流体を導入し、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させる。十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させることで、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の外周面が十二指腸乳頭部2aの内壁に当接し、十二指腸乳頭部2aを拡張させることができる。
【0081】
十二指腸乳頭部2aが所望の大きさまで拡張したことを確認した後、第1ハブ15aおよび第1枝管14aから、結石除去用バルーンルーメン110としての第1ルーメン151および結石除去用バルーン流体導出口111を介して、結石除去用バルーン170の内部に空気等の流体を導入し、結石除去用バルーン170を所望の大きさまで膨張させる。
図4に、総胆管2b内に挿入したバルーンカテーテル10の結石除去用バルーン170および十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させた状態を示す。
【0082】
次いで、第2ハブ15bおよび第2枝管14bから、造影剤用ルーメン130としての第2ルーメン152および造影剤導出口131を介して、総胆管2b内に造影剤を噴出させる。造影剤の噴出によって、X線造影下で総胆管2b内の結石の様子を確認することができるようになる。
【0083】
続いて、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部に充填した流体を十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121から排出して十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を収縮させる。十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を収縮させた場合であっても、十二指腸乳頭部2aが十分に拡張した状態は維持される。
【0084】
そして、結石除去用バルーン170を膨張させた状態を維持したまま、カテーテルチューブ100を適宜進退させながら結石除去用バルーン170を近位側に引き戻すことで、結石除去用バルーン170により総胆管2b内の結石を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b外(十二指腸内)へ掻き出す。膨張した結石除去用バルーン170の外周面は総胆管2bの内壁に当接しており、総胆管2b内の結石を総胆管2b外へ掻き出すことができる。総胆管2b外に掻き出された結石は、通常、自然に体外まで排出される。
【0085】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の作用により、十二指腸乳頭部2aは拡張した状態となっている。これにより、総胆管2b内に巨大結石や積み上げ結石等が存在する場合であっても、十二指腸乳頭部2aで詰まりが生じることなく、拡張した十二指腸乳頭部2aを通じて巨大結石や積み上げ結石等を総胆管2b外へ円滑に排出させることができるようになる。また、巨大結石や積み上げ結石等を総胆管2b外へ排出するために十二指腸乳頭部2aの乳頭括約筋を大きく切開する必要がなく、十二指腸乳頭部2aの切開により生じる出血のリスクを低減させることができる。
【0086】
結石除去用バルーン170を総胆管2bから十二指腸内に引き戻して総胆管2b内から結石を除去した後、結石除去用バルーン170を収縮させて、カテーテルチューブ100の遠位端部101を内視鏡1のチャネルから体外に抜去した後に内視鏡1を体外に取り出すか、あるいはカテーテルチューブ100が挿通された内視鏡1自体を体外に取り出すことで、結石除去の処置は完了となる。
【0087】
上述したバルーンカテーテル10は、カテーテルチューブ100の遠位端部101において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180が、結石除去用バルーン170よりも近位側に取り付けられている。しかしながら、結石除去用バルーン170と十二指腸乳頭部拡張用バルーン180との位置を逆にして、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180が、結石除去用バルーン170よりも遠位側に取り付けられてもよい。
【0088】
この場合、結石除去用バルーン170および十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の位置に合わせて、結石除去用バルーン流体導出口111および十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121が形成される。すなわち、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の内部で開口する十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121は、結石除去用バルーン170の内部で開口する結石除去用バルーン流体導出口111よりも遠位側に形成される。なお、結石除去用バルーン170と十二指腸乳頭部拡張用バルーン180との間の離隔距離は特に限定されないが、上述した十二指腸乳頭部拡張用バルーン180が結石除去用バルーン170よりも近位側に取り付けられた場合のバルーンカテーテル10の離隔距離よりも小さくしてもよい。また、造影剤導出口131は、結石除去用バルーンルーメン110よりも遠位側の位置に形成されることが好ましい。
【0089】
また、特に限定されないが、結石除去用バルーン170および十二指腸乳頭部拡張用バルーン180はともに、カテーテルチューブ100の遠位端部101を構成する細径部100aに取り付けられることが好ましい。すなわち、結石除去用バルーン170の固定部170a、170b、および十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の固定部180a、180bはともに細径部100aに位置することが好ましい。
【0090】
以下、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180が結石除去用バルーン170よりも遠位側に取り付けられた場合のバルーンカテーテル10の使用例について説明する。
【0091】
上述した使用例と同様に、バルーンカテーテル10のカテーテルチューブ100の遠位端部101を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b内に挿入して、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180の軸方向略中央部が十二指腸乳頭部2aの内側に配置されるように位置決めを行う。このとき、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180よりも近位側に取り付けられた結石除去用バルーン170は、総胆管2b外に配置された状態となる。
【0092】
この状態で十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を膨張させて、十二指腸乳頭部2aを所望の大きさまで拡張させた後、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180を収縮させ、さらにカテーテルチューブ100を押し進めて、結石除去用バルーン170を総胆管2bの奥部に配置する。
【0093】
次いで、結石除去用バルーン170を所望の大きさまで膨張させ、造影剤導出口131を通じて造影剤を総胆管2b内に噴出してX線造影下で総胆管2b内の結石の様子を確認した後、カテーテルチューブ100を適宜進退させながら結石除去用バルーン170を近位側に引き戻すことで、結石除去用バルーン170により総胆管2b内の結石を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b外(十二指腸内)へ掻き出すことができる。
【0094】
(第2実施形態)
図5~
図8を参照しながら、本発明の第2実施形態におけるバルーンカテーテル20の構成について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態におけるバルーンカテーテル20の全体図である。
図6は、
図5に示すバルーンカテーテル20の十二指腸乳頭部拡張用バルーン280近傍の長手方向に沿った断面を示す模式断面図である。
図7は、
図5のB-B断面図であり、
図5に示すバルーンカテーテル20の細径部200aの断面を示す断面図である。
図8は、
図5のC-C断面図であり、
図5に示すバルーンカテーテル20の太径部200bの断面を示す断面図である。なお、
図6は実際の断面図ではなく、バルーンカテーテル20の内部を模式的に図示してバルーンカテーテル20の内部に形成された第1~第3ルーメン251~253の連通状態を説明するための図である。
【0095】
図5に示すように、本発明の第2実施形態におけるバルーンカテーテル20は、カテーテルチューブ200と、結石除去用バルーン270と、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280と、カバー23と、4つの第1~第4枝管24a~24dと、4つの第1~第4ハブ25a~25dと、を概略備えて構成されている。
【0096】
カテーテルチューブ200は、可撓性材料によって形成されたチューブ状の長尺部材であり、経内視鏡的に体内に挿入される遠位側に位置する遠位端部201と、近位側に位置する近位端部202とを有している。
【0097】
図5に示すように、カテーテルチューブ200の外径は、近位端部202よりも遠位端部201が小さくなっている。カテーテルチューブ200は、例えば、遠位端部201に位置する境界部200cよりも遠位側が細径部200aとなっており、境界部200cよりも近位側が太径部200bとなっている。このようにカテーテルチューブ200の外径を近位側で太径とするとともに遠位側で細径とすることで、太径部200bにおいて剛性を向上させて、カテーテルチューブ200の挿入性を維持しながら、細径部200aにおいて柔軟性を向上させて、遠位端部201に取り付けられたバルーンの操作性を向上させることができる。
【0098】
カテーテルチューブ200の全長および材料、細径部200aおよび太径部200bの外径等は、第1実施形態のカテーテルチューブ100と同様である。また、境界部200cでは、カテーテルチューブ200の外径が滑らかに変化していることが好ましく、境界部200cは、例えば遠位側に向かって細径となるようテーパー状に形成されていることが好ましい。
【0099】
カテーテルチューブ200の内部には、
図6に示すように、3つのルーメン(第1~第3ルーメン251~253)がカテーテルチューブ200の長手方向に沿って形成されている。すなわち、カテーテルチューブ200は、多ルーメンチューブで構成されている。第1~第3ルーメン251~253は、
図7および
図8の断面図に示すように、互いに連通することなく独立したルーメンとして形成されており、これら第1~第3ルーメン251~253の断面形状および断面積は、各ルーメンの用途に応じて適宜設定されればよい。
図7にはカテーテルチューブ200の細径部200aの断面が図示されており、
図8にはカテーテルチューブ200の太径部200bの断面が図示されている。
【0100】
第1ルーメン251は、結石除去用バルーン270を膨張させるために用いる空気等の流体を結石除去用バルーン270の内部に送るための流路と用いられる。すなわち、第1ルーメン251は、結石除去用バルーンルーメン210として用いられる。結石除去用バルーンルーメン210としての第1ルーメン251は、カテーテルチューブ200の近位端から遠位端まで貫通しており、さらにカテーテルチューブ200の遠位端部201に形成された結石除去用バルーン流体導出口211で開口している。
【0101】
結石除去用バルーン流体導出口211は、結石除去用バルーン270の内部に位置するように形成された開口である。図示省略しているが、第1ルーメン251は、結石除去用バルーン流体導出口211よりも遠位側の位置において、例えば充填物により閉塞されている。これにより、カテーテルチューブ200の近位端から導入された結石除去用バルーン270を膨張させるための流体は、結石除去用バルーン流体導出口211のみから外部に流出して結石除去用バルーン270の内部に導入されるようになっている。
【0102】
第2ルーメン252は、結石の位置を確認する等の目的で体内のX線造影を行う場合に導入される造影剤の流路として用いられる。すなわち、第2ルーメン252は、造影剤用ルーメン230として用いられる。造影剤用ルーメン230としての第2ルーメン252は、カテーテルチューブ200の近位端から遠位端まで貫通しており、さらにカテーテルチューブ200の遠位端部201に形成された造影剤導出口231で開口している。
【0103】
造影剤導出口231は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280よりも遠位側に位置するように形成された開口である。造影剤導出口231は、例えば
図5に示すように、結石除去用バルーンルーメン210の近傍(例えば、軸方向に10mm以内離隔した位置)に設けることが好ましい。造影剤導出口231は、結石除去用バルーンルーメン210の近位側および遠位側のいずれの位置に形成されてもよいが、
図5に示すバルーンカテーテル20では、近位側の位置に形成されている。図示省略しているが、第2ルーメン252は、造影剤導出口231よりも遠位側の位置において、例えば充填物により閉塞されている。これにより、カテーテルチューブ200の近位端から導入された造影剤は、造影剤導出口231のみから外部に流出して体内に導入されるようになっている。また、造影剤導出口231の開口の向きは特に限定されず、例えばカテーテルチューブ200の径方向に沿った向き(すなわち、カテーテルチューブ200の軸方向に直交する向き)に形成すればよいが、造影剤導出口231から噴出する流体が造影剤導出口231よりも近位側に向かうようにカテーテルチューブ200の軸方向に対して斜めの向きに形成してもよい。造影剤導出口231の向きをこのようにカテーテルチューブ200の軸方向に対して斜めの向きに形成することによって、その造影剤導出口231から噴出させる流体に対し、胆管内の胆石や胆泥を洗い流す機能を付与することができる。なお、造影剤導出口231から噴出させる流体で胆管内の胆石や胆泥を洗い流す場合に用いる流体は特に限定されず、例えば生理食塩水や造影剤を用いることができる。
【0104】
さらに、第2実施形態における第2ルーメン252は、
図6に示すように、カテーテルチューブ200の遠位端部201に形成されたチューブ部材挿通口232で開口している。チューブ部材挿通口232は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に位置するように形成された開口である。後述するように、第2ルーメン252の内部にはチューブ部材260が挿通されており、チューブ部材260の遠位端262が、チューブ部材挿通口232を通じて十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に露出している。
【0105】
第3ルーメン253は、ガイドワイヤ5を挿通するためのルーメンとして用いられる。すなわち、第3ルーメン253は、ガイドワイヤルーメン240として用いられる。ガイドワイヤルーメン240としての第3ルーメン253は、カテーテルチューブ200の近位端から、カテーテルチューブ200の遠位端に形成されたガイドワイヤ挿通口241まで貫通しており、ガイドワイヤルーメン240に挿通されたガイドワイヤ5は、ガイドワイヤ挿通口241から外部に露出できるようになっている。
【0106】
本発明の第2実施形態におけるバルーンカテーテル20は、さらにチューブ部材260を備えて構成されている。チューブ部材260は、
図6および
図8に示すように、第2ルーメン252の内部に挿通されている。チューブ部材260は、可撓性材料によって形成されたチューブ状の長尺部材であり、その内部には管腔261が形成されている。チューブ部材260の材質は特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましく、例えばポリエーテルブロックアミド共重合体、非晶PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等を用いることで、軸方向への剛性、可撓性および接着性に優れたチューブ部材260を実現することができる。
【0107】
チューブ部材260の管腔261は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張させるために用いる生理食塩水等の流体を十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に送るための流路と用いられる。すなわち、チューブ部材260の管腔261は、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220として用いられる。
【0108】
チューブ部材260は、カテーテルチューブ200の近位端から第2ルーメン252に形成されたチューブ部材挿通口232の位置まで延在し、チューブ部材挿通口232を通じてカテーテルチューブ200の外部で開口している。チューブ部材挿通口232は十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に位置するように形成されているので、チューブ部材260の遠位端262は、チューブ部材挿通口232を通じて十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に露出した状態となっている。
【0109】
十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220としてのチューブ部材260の管腔261は、カテーテルチューブ200の近位端からチューブ部材260の遠位端262まで貫通している。カテーテルチューブ200の近位端に位置するチューブ部材260の近位端から導入された十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張させるための流体は、チューブ部材260の管腔261内を流れて遠位端262から外部に流出し、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に導入されるようになっている。チューブ部材260の遠位端262は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口221を構成する。
【0110】
チューブ部材260の外周面とチューブ部材挿通口232の内周面との間は、例えば接着剤等を流し込むことで密封されている。これにより、第2ルーメン252内を流れる造影剤は、チューブ部材挿通口232から外部に漏出しないようになっている。
【0111】
また、例えば
図6に示すように、チューブ部材挿通口232を形成する際に、カテーテルチューブ200の外周面の一部のみを切開してカテーテルチューブ200に繋がるフラップ部233を残しておき、フラップ部233とチューブ部材260の外周面とを接着してもよい。このようにフラップ部233とチューブ部材260の外周面とを接着することで、チューブ部材260とカテーテルチューブ200との接着力を向上させることができ、チューブ部材260の遠位端262をチューブ部材挿通口232に安定して固定させることができる。
【0112】
このように、造影剤用ルーメン230としての第2ルーメン252に挿通したチューブ部材260の管腔261によって十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220を形成することで、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張させるための流体の流路を確保して当該流体の流通性を向上させることができ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の拡張即応性を向上させることができる。
【0113】
カテーテルチューブ200の遠位端は、挿入性を向上させるために、遠位側に向かって細径となるようテーパー状に形成されていてもよく、カテーテルチューブ200の遠位端に、テーパー状の先端チップが取り付けられていてもよい。カテーテルチューブ200の遠位端に先端チップを取り付ける場合には、ガイドワイヤルーメン240としての第3ルーメン253と連通するように筒状に形成された先端チップを用いることで、先端チップの遠位端開口部にガイドワイヤ5を外部に露出するためのガイドワイヤ挿通口241を設けることができる。
【0114】
第1~第4枝管24a~24dは、カテーテルチューブ200に形成されている第1~第3ルーメン251~253、およびチューブ部材260の管腔261にそれぞれ接続されたチューブである。また、第1~第4ハブ25a~25dは、第1~第4枝管24a~24dの近位端にそれぞれ接続される部材であり、その近位端に形成された開口は、第1~第4枝管24a~24dに接続された第1~第3ルーメン251~253およびチューブ部材260の管腔261とそれぞれ連通している。
【0115】
第1~第4枝管24a~24dおよび第1~第4ハブ25a~25dの材質は特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましい。また、第1~第4枝管24a~24dと第1~第3ルーメン251~253およびチューブ部材260の管腔261との接続方法は特に限定されないが、例えば、第1~第4枝管24a~24dの遠位端をそれぞれテーパー状とし、その外周面に接着剤を塗布して、それぞれ対応する第1~第3ルーメン251~253およびチューブ部材260の管腔261に挿入して接着することができる。同様に、第1~第4枝管24a~24dと第1~第4ハブ25a~25dとの接続方法も特に限定されず、接着等によって接続することができる。
【0116】
第1枝管24aは、カテーテルチューブ200内の第1ルーメン251に接続されているとともに、第1ハブ25aに接続されている。第1ルーメン251は上述したように結石除去用バルーンルーメン210として機能し、カテーテルチューブ200の遠位端部201の結石除去用バルーン流体導出口211で開口している。この構成により、第1ハブ25aの開口と結石除去用バルーン流体導出口211との間が連通しており、第1ハブ25aにシリンジ等を接続して空気等の流体を導入または導出することで、結石除去用バルーン流体導出口211から結石除去用バルーン270の内部に流体を導入または導出させて、結石除去用バルーン270を膨張または収縮させることができる。また、第1ハブ25aは、二方活栓を備えており、二方活栓を開状態にして結石除去用バルーン270の内部に流体を導入して結石除去用バルーン270を膨張させた後、二方活栓を閉状態にすることで、結石除去用バルーン270の膨張状態を維持させることができる。
【0117】
第2枝管24bは、カテーテルチューブ200内の第2ルーメン252に接続されているとともに、第2ハブ25bに接続されている。第2ルーメン252は上述したように造影剤用ルーメン230として機能し、カテーテルチューブ200の遠位端部201の造影剤導出口231で開口している。この構成により、第2ハブ25bの開口と造影剤導出口231との間が連通しており、第2ハブ25bにシリンジ等を接続して造影剤を導入することで、造影剤導出口231から体内に造影剤を導入させることができる。
【0118】
第3枝管24cは、カテーテルチューブ200内の第3ルーメン253に接続されているとともに、第3ハブ25cに接続されている。第3ルーメン253は上述したようにガイドワイヤルーメン240として機能し、カテーテルチューブ200の遠位端に設けられたガイドワイヤ挿通口241で開口している。この構成により、第3ハブ25cの開口とガイドワイヤ挿通口241との間が連通しており、第3ハブ25cとガイドワイヤ挿通口241との間のガイドワイヤルーメン240にガイドワイヤ5を挿通させることができる。
【0119】
第4枝管24dは、チューブ部材260の管腔261に接続されているとともに、第4ハブ25dに接続されている。チューブ部材260の管腔261は上述したように十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220として機能し、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口221としてチューブ部材260の遠位端262で開口している。この構成により、第4ハブ25dの開口と十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口221との間が連通しており、第4ハブ25dにインフレータ等を接続して生理食塩水等の流体を導入または導出することで、
図6に示すように、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口221から十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に流体を導入または導出させて、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張または収縮させることができる。
【0120】
カバー23は、カテーテルチューブ200と第1~第4枝管24a~24dとの接続部を補強して保護するために、その接続部を覆うように設けられている。カバー23の形状は特に限定されないが、例えば箱型あるいは筒型である。カバー23の材質としては、特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましい。また、熱収縮チューブをカバー23として用いてもよい。
【0121】
カバー23の遠位側のカテーテルチューブ200の外周には、任意選択的にタグ26を取り付けてもよい。タグ26には、例えば、どれくらいの流体容量で結石除去用バルーン270がどれくらいの外径に膨張するか等の情報を表示することができるようになっている。
【0122】
結石除去用バルーン270は、カテーテルチューブ200の遠位端部201において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280よりも遠位側に設けられている。結石除去用バルーン270は、結石除去用バルーン流体導出口211を覆うようにカテーテルチューブ200の外周面に取り付けられている。
【0123】
結石除去用バルーン270は伸縮性材料により構成されており、カテーテルチューブ200の結石除去用バルーンルーメン210を介して内部に流体が導入されることにより膨張するようになっている。胆管内で膨張した結石除去用バルーン270により胆管内の結石を掻き出したり押し出したりすることで、胆管内の結石除去を行うことができる。なお、結石除去用バルーン270を体内に挿入する際には、結石除去用バルーン270を収縮させ、結石除去用バルーン270がカテーテルチューブ200の外周面に密着した状態で体内に挿入される。結石除去用バルーン270を構成する伸縮性材料や、結石除去用バルーン270を製造する方法は、第1実施形態の結石除去用バルーン170と同様である。
【0124】
結石除去用バルーン270は、
図5に示すように、全体として球状または筒状である。結石除去用バルーン270の遠位側の端部および近位側の端部には、カテーテルチューブ200の外周面と接合される固定部270a、270bが形成されており、結石除去用バルーン270は、結石除去用バルーン270の内部の流体が固定部270a、270bから外部に漏出しないようにカテーテルチューブ200に固定されている。固定部270a、270bは、柔軟性を有する細径部200aに固定されることが好ましい。
【0125】
固定部270a、270bの軸方向の長さは例えば0.5~5.0mmである。結石除去用バルーン270の固定部270a、270bをカテーテルチューブ200の外周面に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0126】
固定部270aと固定部270bとの間には、カテーテルチューブ200の外周面と接合されておらず、結石除去用バルーン270の内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部270cが形成されている。
【0127】
結石除去用バルーン270の膨張部270cは、膨張した状態での最大外径が、萎んだ状態での外径の200~1500%であることが好ましい。この比率が小さすぎると結石除去用バルーン270が十分な大きさに膨張しないおそれがあり、大きすぎるとカテーテルチューブ200を体内に挿入する際に結石除去用バルーン270が邪魔になるおそれがある。膨張部270cの軸方向の長さは例えば5~20mmであり、膜厚は例えば0.10~0.50mmである。
【0128】
結石除去用バルーン270は、固定部270aと固定部270bとの間に位置する膨張部270cがカテーテルチューブ200の軸心に対して偏心して膨張するように構成されていてもよく、カテーテルチューブ200の軸心に対して対称に膨張するように構成されていてもよい。第2実施形態におけるバルーンカテーテル20は、
図5に示すように、膨張部270cがカテーテルチューブ200の軸心に対して偏心して膨張するようになっている。
【0129】
膨張部270cの一部にオフセットシート270dを貼付することで、膨張部270cをカテーテルチューブ200の軸心に対して偏心して膨張させることができる。オフセットシート270dは、第1実施形態のオフセットシート170dと同様のものを用いることができる。
【0130】
なお、ここでは、オフセットシート270dの貼付によりカテーテルチューブ200の軸心に対して偏心した形状に結石除去用バルーン270を膨張させているが、例えば膨張部270cをカテーテルチューブ200の外周面の一部に偏るように設ける等、上記以外の構成によって、結石除去用バルーン270がカテーテルチューブ200の軸心に対して偏心した状態で膨張できるようにしてもよい。
【0131】
また、X線造影下で結石除去用バルーン270の位置を確認できるように、結石除去用バルーン270の近傍に1つまたは複数のX線不透過性マーカー215が取り付けられてもよい。例えば、
図5に示す構成では、結石除去用バルーン270の内部および近位側において、カテーテルチューブ200の遠位端部201にX線不透過性マーカー215が取り付けられている。X線不透過性マーカー215は、例えばX線不透過材料である金、プラチナ、プラチナイリジウム合金等の金属や、X線不透過物質の粉末を含有する樹脂組成物を用いて作製することができる。なお、
図6ではX線不透過性マーカー215の図示を省略している。
【0132】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン280は、カテーテルチューブ200の遠位端部201において、結石除去用バルーン270よりも近位側に設けられている。十二指腸乳頭部拡張用バルーン280は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口221を覆うようにカテーテルチューブ200の外周面に取り付けられている。
【0133】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン280は非伸縮性材料により構成されており、カテーテルチューブ200の十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220を介して内部に流体が導入されることにより膨張するようになっている。十二指腸乳頭部2aに挿通させた状態で十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張させることによって、十二指腸乳頭部2aを拡張することができる。なお、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を体内に挿入する際には、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を収縮させ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280がカテーテルチューブ200の外周面に密着した状態で体内に挿入される。
【0134】
結石除去用バルーン270と十二指腸乳頭部拡張用バルーン280との間の離隔距離(例えば、結石除去用バルーン270の近位端から十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の遠位端までの軸方向の距離)は、カテーテルチューブ200を挿入する管腔臓器の長さに合わせて設定すればよく、例えば胆管に挿入する場合には、通常30~200mm程度にすればよい。
【0135】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を構成する非伸縮性材料や、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を製造する方法は、第1実施形態の十二指腸乳頭部拡張用バルーン180と同様である。
【0136】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン280は、
図5および
図6に示すように、全体として筒状である。十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の遠位側の端部および近位側の端部には、カテーテルチューブ200の外周面と接合される固定部280a、280bが形成されており、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部の流体が固定部280a、280bから外部に漏出しないようにカテーテルチューブ200に固定されている。
【0137】
固定部280a、280bは、カテーテルチューブ200の遠位端部201を構成する細径部200aに固定されてもよく、あるいは、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280が境界部200cを跨ぐように、遠位側の固定部280aが細径部200aに固定され、近位側の固定部280bが太径部200bに固定されてもよい。ここでは一例として、
図5および
図6に示すように、固定部280aが細径部200aに固定され、固定部280bが太径部200bに固定されており、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280が境界部200cを跨がるように設けられている。また、チューブ部材挿通口232は、カテーテルチューブ200の太径部200bで開口しており、チューブ部材260は、チューブ部材挿通口232より近位側の太径部200bに形成された第2ルーメン252に挿通されている。
【0138】
このようにチューブ部材260を太径部200bに配置することで、チューブ部材260の管腔261を大きくすることができる。これにより、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220としてのチューブ部材260の管腔261において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張させるための流体の流量を多くすることができ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を迅速かつ効率良く膨張または収縮させることができるようになる。また、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の遠位側の端部を細径部200aに配置することで、十二指腸乳頭部2aや胆管への挿入性を向上させることができるようになる。
【0139】
固定部280a、280bの軸方向の長さは例えば1.0~10.0mmである。十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の固定部280a、280bをカテーテルチューブ200の外周面に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0140】
固定部280aと固定部280bとの間には、カテーテルチューブ200の外周面と接合されておらず、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部280cが形成されている。
【0141】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の膨張部280cの大きさは、十二指腸乳頭部2aの大きさおよび必要な拡張量に応じて適宜設定可能である。膨張部280cの軸方向の長さは例えば30~60mmであり、膜厚は、例えば0.01~0.50mmである。また、膨張時における十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の外径は例えば4~22mmであり、好ましくは12~18mmである。
【0142】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン280は、固定部280aと固定部280bとの間に位置する膨張部280cがカテーテルチューブ200の軸心に対して対称に膨張するように構成されている。すなわち、この十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の膨張部280cは、外力を受けない状態において、カテーテルチューブ200の軸心を回転軸としてカテーテルチューブ200の側方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されている。十二指腸乳頭部2aに挿入した状態で膨張部280cが軸心に対して対称に膨張することで、十二指腸乳頭部2aに対してその内壁を広げる力が均等に作用して、十二指腸乳頭部2aを効率良く拡張させることができるようになる。
【0143】
また、結石除去用バルーン270と同様に、X線造影下で十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の位置を確認できるように、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の近傍に1つまたは複数のX線不透過性マーカーが取り付けられてもよい。例えば、
図5に示す構成では、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の内部において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の拡張有効部(十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張させて十二指腸乳頭部2aを拡張するときに十二指腸乳頭部2aの内壁と接し得る部分)の遠位端と近位端のそれぞれの軸方向に対応する位置の、カテーテルチューブ200の遠位端部201にX線不透過性マーカー215が取り付けられている。また、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の外表面や十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の近傍に、内視鏡下で視認可能な内視鏡マーカーが設けられてもよい。さらに、膨張して十二指腸乳頭部2aの内壁に当接した十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の軸方向への位置ずれを防止するために、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の外表面に段差が設けられてもよい。
【0144】
第2実施形態におけるバルーンカテーテル20の使用方法は、上述した第1実施形態におけるバルーンカテーテル10の使用方法と同様である。例えば、総胆管2b内の結石(胆石)を体外に取り出して除去する総胆管結石治療を行う際には、バルーンカテーテル20のカテーテルチューブ200の遠位端部201を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b内に挿入する。そして、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280を膨張させることで、十二指腸乳頭部2aを所望の大きさまで拡張し、さらに、結石除去用バルーン270を膨張させて、カテーテルチューブ200を適宜進退させながら結石除去用バルーン270を近位側に引き戻すことで、結石除去用バルーン270により総胆管2b内の結石を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b外(十二指腸内)へ掻き出すことができる。
【0145】
また、第1実施形態で説明したように、結石除去用バルーン270と十二指腸乳頭部拡張用バルーン280との位置を逆にして、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280が、結石除去用バルーン270よりも遠位側に取り付けられてもよい。
【0146】
(第3実施形態)
図9~
図12を参照しながら、本発明の第3実施形態におけるバルーンカテーテル30の構成について説明する。
図9は、本発明の第3実施形態におけるバルーンカテーテル30の全体図である。
図10は、
図9に示すバルーンカテーテル30の十二指腸乳頭部拡張用バルーン380近傍の長手方向に沿った断面を示す模式断面図である。
図11は、
図9のD-D断面図であり、
図9に示すバルーンカテーテル30の細径部300aの断面を示す断面図である。
図12は、
図9のE-E断面図であり、
図9に示すバルーンカテーテル30の太径部300bの断面を示す断面図である。なお、
図10は実際の断面図ではなく、バルーンカテーテル30の内部を模式的に図示してバルーンカテーテル30の内部に形成された第1~第3ルーメン351~353の連通状態を説明するための図である。
【0147】
図9に示すように、本発明の第3実施形態におけるバルーンカテーテル30は、カテーテルチューブ300と、結石除去用バルーン370と、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380と、カバー33と、3つの第1~第3枝管34a~34cと、3つの第1~第3ハブ35a~35cと、を概略備えて構成されている。
【0148】
カテーテルチューブ300は、可撓性材料によって形成されたチューブ状の長尺部材であり、経内視鏡的に体内に挿入される遠位側に位置する遠位端部301と、近位側に位置する近位端部302とを有している。
【0149】
図9に示すように、カテーテルチューブ300の外径は、近位端部302よりも遠位端部301が小さくなっている。カテーテルチューブ300は、例えば、遠位端部301に位置する境界部300cよりも遠位側が細径部300aとなっており、境界部300cよりも近位側が太径部300bとなっている。このようにカテーテルチューブ300の外径を近位側で太径とするとともに遠位側で細径とすることで、太径部300bにおいて剛性を向上させて、カテーテルチューブ300の挿入性を維持しながら、細径部300aにおいて柔軟性を向上させて、遠位端部301に取り付けられたバルーンの操作性を向上させることができる。
【0150】
カテーテルチューブ300の全長および材料、細径部300aおよび太径部300bの外径等は、第1実施形態のカテーテルチューブ100と同様である。また、境界部300cでは、カテーテルチューブ300の外径が滑らかに変化していることが好ましく、境界部300cは、例えば遠位側に向かって細径となるようテーパー状に形成されていることが好ましい。
【0151】
カテーテルチューブ300の内部には、
図10に示すように、3つのルーメン(第1~第3ルーメン351~353)がカテーテルチューブ300の長手方向に沿って形成されている。すなわち、カテーテルチューブ300は、多ルーメンチューブで構成されている。第1~第3ルーメン351~353は、
図11および
図12の断面図に示すように、互いに連通することなく独立したルーメンとして形成されており、これら第1~第3ルーメン351~353の断面形状および断面積は、各ルーメンの用途に応じて適宜設定されればよい。
図11にはカテーテルチューブ300の細径部300aの断面が図示されており、
図12にはカテーテルチューブ300の太径部300bの断面が図示されている。
【0152】
第1ルーメン351は、結石除去用バルーン370を膨張させるために用いる空気等の流体を結石除去用バルーン370の内部に送るための流路と用いられる。すなわち、第1ルーメン351は、結石除去用バルーンルーメン310として用いられる。結石除去用バルーンルーメン310としての第1ルーメン351は、カテーテルチューブ300の近位端から遠位端まで貫通しており、さらにカテーテルチューブ300の遠位端部301に形成された結石除去用バルーン流体導出口311で開口している。
【0153】
結石除去用バルーン流体導出口311は、結石除去用バルーン370の内部に位置するように形成された開口である。図示省略しているが、第1ルーメン351は、結石除去用バルーン流体導出口311よりも遠位側の位置において、例えば充填物により閉塞されている。これにより、カテーテルチューブ300の近位端から導入された結石除去用バルーン370を膨張させるための流体は、結石除去用バルーン流体導出口311のみから外部に流出して結石除去用バルーン370の内部に導入されるようになっている。
【0154】
第2ルーメン352は、結石の位置を確認する等の目的で体内のX線造影を行う場合に導入される造影剤の流路として用いられる。すなわち、第2ルーメン352は、造影剤用ルーメン330として用いられる。造影剤用ルーメン330としての第2ルーメン352は、カテーテルチューブ300の近位端から遠位端まで貫通しており、さらにカテーテルチューブ300の遠位端部301に形成された造影剤導出口331で開口している。
【0155】
造影剤導出口331は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380よりも遠位側に位置するように形成された開口である。造影剤導出口331は、例えば
図9に示すように、結石除去用バルーンルーメン310の近傍(例えば、軸方向に10mm以内離隔した位置)に設けることが好ましい。造影剤導出口331は、結石除去用バルーンルーメン310の近位側および遠位側のいずれの位置に形成されてもよいが、
図9に示すバルーンカテーテル30では、近位側の位置に形成されている。図示省略しているが、第2ルーメン352は、造影剤導出口331よりも遠位側の位置において、例えば充填物により閉塞されている。これにより、カテーテルチューブ300の近位端から導入された造影剤は、造影剤導出口331のみから外部に流出して体内に導入されるようになっている。また、造影剤導出口331の開口の向きは特に限定されず、例えばカテーテルチューブ300の径方向に沿った向き(すなわち、カテーテルチューブ300の軸方向に直交する向き)に形成すればよいが、造影剤導出口331から噴出する流体が造影剤導出口331よりも近位側に向かうようにカテーテルチューブ300の軸方向に対して斜めの向きに形成してもよい。造影剤導出口331の向きをこのようにカテーテルチューブ300の軸方向に対して斜めの向きに形成することによって、その造影剤導出口331から噴出させる流体に対し、胆管内の胆石や胆泥を洗い流す機能を付与することができる。なお、造影剤導出口331から噴出させる流体で胆管内の胆石や胆泥を洗い流す場合に用いる流体は特に限定されず、例えば生理食塩水や造影剤を用いることができる。
【0156】
第3ルーメン353は、カテーテルチューブ300の近位端から、カテーテルチューブ300の遠位端に形成されたガイドワイヤ挿通口341まで貫通している。第3ルーメン353は、さらに、カテーテルチューブ300の遠位端部301において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321、およびガイドワイヤ導入口342で開口している。十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321、およびガイドワイヤ導入口342はともに十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部で開口するように形成されている。
【0157】
ここでは、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321およびガイドワイヤ導入口342は、カテーテルチューブ300の境界部300cよりも近位側に形成されている。すなわち、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321およびガイドワイヤ導入口342は、カテーテルチューブ300の太径部300bに形成されている。
【0158】
図10に示すように、第3ルーメン353は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321とガイドワイヤ導入口342との間において、例えば充填物325により閉塞されている。十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321とガイドワイヤ導入口342との間に配置される充填物325は特に限定されないが、一例として、流動状態で第3ルーメン353内に注入した後に硬化する接着剤等の樹脂を用いることができる。なお、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321とガイドワイヤ導入口342との間に、カテーテルチューブ300の外周面から第3ルーメン353まで貫通する充填物導入口(図示省略)を設け、この充填物導入口を通じて流動状態の充填物325を第3ルーメン353に流し込むようにしてもよい。
【0159】
充填物325の材料は、特に限定されないが、第3ルーメン353に流動状態で注入した後に硬化可能な材料を用いることができる。このような材料としては、例えばアクリレート系紫外線硬化性樹脂やエポキシ系紫外線硬化性樹脂等の紫外線硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂、フェノール系熱硬化性樹脂、ポリエステル系熱硬化性樹脂等の熱硬化性樹脂、エポキシ系二液常温硬化性樹脂、アクリル系二液常温硬化性樹脂等の二液常温硬化性樹脂、酢酸ビニル系溶剤揮散型接着剤等の溶剤揮散型接着剤、シアノアクリレート系湿気硬化型接着剤等の湿気硬化型接着剤が挙げられる。
【0160】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部であって、第3ルーメン353を閉塞する充填物325よりも近位側に位置するように形成された開口である。これにより、カテーテルチューブ300の近位端から導入された十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を膨張させるための流体は充填物325で堰き止められ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321のみから外部に流出して十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部に導入されるようになっている。充填物325よりも近位側の第3ルーメン353は、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320として用いられる。
【0161】
ガイドワイヤ導入口342は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部であって、第3ルーメン353を閉塞する充填物325よりも遠位側に位置するように形成された開口である。ガイドワイヤ導入口342には、カテーテルチューブ300の外周側から第3ルーメン353にガイドワイヤ挿通用チューブ部材360が導入されている。
【0162】
本発明の第3実施形態におけるバルーンカテーテル30は、さらにガイドワイヤ挿通用チューブ部材360を備えて構成されている。ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360は、可撓性材料によって形成されたチューブ状の長尺部材であり、その内部には管腔361が形成されている。ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の材質は特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましく、例えばポリエーテルブロックアミド共重合体、非晶PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等を用いることで、軸方向への剛性、可撓性および接着性に優れたガイドワイヤ挿通用チューブ部材360を実現することができる。
【0163】
ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360は、
図9および
図10に示すように、カテーテルチューブ300の軸方向に沿って延在している。ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の近位端は、例えばカバー33近傍に配置されており、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の遠位端362は、ガイドワイヤ導入口342を通じて第3ルーメン353に配置されている。ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360は、軸方向に沿って延在する一部または全体がカテーテルチューブ300に固定されていてもよい。例えば、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の外周面とカテーテルチューブ300とが接着剤等により一部または全体において接着されてもよく、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360とカテーテルチューブ300とを係合する係合部材等を用いて固定されてもよい。
【0164】
ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の管腔361は、ガイドワイヤ5を挿通するためのルーメンとして用いられる。すなわち、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の管腔361は、ガイドワイヤルーメン340として用いられる。
【0165】
ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の遠位端362は、ガイドワイヤ導入口342を通じて第3ルーメン353に挿入配置されており、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の管腔361は、第3ルーメン353の充填物325よりも遠位側に連通している。すなわち、充填物325よりも遠位側に位置するとともにガイドワイヤ導入口342よりも遠位側に位置する第3ルーメン353は、ガイドワイヤルーメン340として用いられる。ガイドワイヤルーメン340としての第3ルーメン353は、カテーテルチューブ300を閉塞する充填物325の遠位端から、カテーテルチューブ300の遠位端に形成されたガイドワイヤ挿通口341まで貫通している。これにより、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の遠位端362を通じて第3ルーメン353に挿通されたガイドワイヤ5は、ガイドワイヤ挿通口341から外部に露出できるようになっている。
【0166】
ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の外周面とガイドワイヤ導入口342の内周面との間は、例えば接着剤等を流し込むことで密封されている。これにより、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部に導入された流体は、ガイドワイヤ導入口342から充填物325よりも遠位側の第3ルーメン353の内部に流入しないようになっている。
【0167】
また、例えば
図10に示すように、ガイドワイヤ導入口342を形成する際に、カテーテルチューブ300の外周面の一部のみを切開してカテーテルチューブ300に繋がるフラップ部343を残しておき、フラップ部343とガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の外周面とを接着してもよい。このようにフラップ部343とガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の外周面とを接着することで、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360とカテーテルチューブ300との接着力を向上させることができ、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の遠位端362をガイドワイヤ導入口342に安定して固定させることができる。
【0168】
また、
図10に示すように、フラップ部343を折り曲げて第3ルーメン353を堰き止めるように第3ルーメン353内に配置してもよい。これにより、フラップ部343よりも近位側の第3ルーメン353に流動状態で注入された充填物325がフラップ部343よりも遠位側に流れ込みにくくなり、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321とガイドワイヤ導入口342との間に充填物325を充填させる作業が容易となる。
【0169】
このように、第3実施形態におけるバルーンカテーテル30は、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の管腔361、および充填物325よりも遠位側に位置する第3ルーメン353が連通しており、この連通した空間がガイドワイヤルーメン340として用いられる。したがって、第3実施形態では、第3ルーメン353は、充填物325よりも近位側(カテーテルチューブ300の近位端と十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321との間)では、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320として機能し、充填物325よりも遠位側(ガイドワイヤ導入口342とカテーテルチューブ300の遠位端との間)では、ガイドワイヤルーメン340として機能する。
【0170】
カテーテルチューブ300の遠位端は、挿入性を向上させるために、遠位側に向かって細径となるようテーパー状に形成されていてもよく、カテーテルチューブ300の遠位端に、テーパー状の先端チップが取り付けられていてもよい。カテーテルチューブ300の遠位端に先端チップを取り付ける場合には、ガイドワイヤルーメン340としての第3ルーメン353と連通するように筒状に形成された先端チップを用いることで、先端チップの遠位端開口部にガイドワイヤ5を外部に露出するためのガイドワイヤ挿通口341を設けることができる。
【0171】
第1~第3枝管34a~34cは、カテーテルチューブ300に形成されている第1~第3ルーメン351~353にそれぞれ接続されたチューブである。また、第1~第3ハブ35a~35cは、第1~第3枝管34a~34cの近位端にそれぞれ接続される部材であり、その近位端に形成された開口は、第1~第3枝管34a~34cに接続された第1~第3ルーメン351~353とそれぞれ連通している。
【0172】
第1~第3枝管34a~34cおよび第1~第3ハブ35a~35cの材質は特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましい。また、第1~第3枝管34a~34cと第1~第3ルーメン351~353との接続方法は特に限定されないが、例えば、第1~第3枝管34a~34cの遠位端をそれぞれテーパー状とし、その外周面に接着剤を塗布して、それぞれ対応する第1~第3ルーメン351~353に挿入して接着することができる。同様に、第1~第3枝管34a~34cと第1~第3ハブ35a~35cとの接続方法も特に限定されず、接着等によって接続することができる。
【0173】
なお、第3実施形態におけるバルーンカテーテル30は、
図9に示すように、第3枝管34cがカテーテルチューブ300の近位端よりも遠位側において、カテーテルチューブ300の外周面から第3ルーメン353に挿入された構成となっている。図示省略しているが、第3ルーメン353を流れる造影剤がカテーテルチューブ300の近位端から外部に漏出しないようにするために、例えば第3ルーメン353に挿入した第3枝管34cを第3ルーメン353の内周壁に密着させたり、第3枝管34cの接続部よりも近位側において、例えば充填物により第3ルーメン353を閉塞したりすることが好ましい。
【0174】
第1枝管34aは、カテーテルチューブ300内の第1ルーメン351に接続されているとともに、第1ハブ35aに接続されている。第1ルーメン351は上述したように結石除去用バルーンルーメン310として機能し、カテーテルチューブ300の遠位端部301の結石除去用バルーン流体導出口311で開口している。この構成により、第1ハブ35aの開口と結石除去用バルーン流体導出口311との間が連通しており、第1ハブ35aにシリンジ等を接続して空気等の流体を導入または導出することで、結石除去用バルーン流体導出口311から結石除去用バルーン370の内部に流体を導入または導出させて、結石除去用バルーン370を膨張または収縮させることができる。また、第1ハブ35aは、二方活栓を備えており、二方活栓を開状態にして結石除去用バルーン370の内部に流体を導入して結石除去用バルーン370を膨張させた後、二方活栓を閉状態にすることで、結石除去用バルーン370の膨張状態を維持させることができる。
【0175】
第2枝管34bは、カテーテルチューブ300内の第2ルーメン352に接続されているとともに、第2ハブ35bに接続されている。第2ルーメン352は上述したように造影剤用ルーメン330として機能し、カテーテルチューブ300の遠位端部301の造影剤導出口331で開口している。この構成により、第2ハブ35bの開口と造影剤導出口331との間が連通しており、第2ハブ35bにシリンジ等を接続して造影剤を導入することで、造影剤導出口331から体内に造影剤を導入させることができる。
【0176】
第3枝管34cは、カテーテルチューブ300内の第3ルーメン353に接続されているとともに、第3ハブ35cに接続されている。第3ルーメン353の近位側は上述したように十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320として機能し、カテーテルチューブ300の遠位端部301の十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321で開口している。この構成により、第3ハブ35cの開口と十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321との間が連通しており、第3ハブ35cにインフレータ等を接続して生理食塩水等の流体を導入または導出することで、
図10に示すように、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321から十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部に流体を導入または導出させて、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を膨張または収縮させることができる。
【0177】
カバー33は、カテーテルチューブ300と第1枝管34aおよび第2枝管34bとの接続部を補強して保護するために、その接続部を覆うように設けられている。カバー33の形状は特に限定されないが、例えば箱型あるいは筒型である。カバー33の材質としては、特に限定されないが、高分子材料を用いることが好ましい。また、熱収縮チューブをカバー33として用いてもよい。
【0178】
第3実施形態では、
図9に示すように、第3枝管34cは、カバー33よりも近位側においてカテーテルチューブ300の外周面から第3ルーメン353に挿入されている。第3枝管34cおよび第3ハブ35cは、十二指腸乳頭部2aを拡張する処置において十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の膨張のために使用され、一方、第1枝管34aおよび第1ハブ35a、ならびに第2枝管34bおよび第2ハブ35bは、結石を除去する処置において結石除去用バルーン370の膨張および造影剤の導入のためにそれぞれ使用される。このように、それぞれの用途に応じて、第1枝管34aおよび第2枝管34bとは異なる位置に第3枝管34cを配置することで、バルーンカテーテル30の使用者の操作性を向上させることができ、各用途に応じて使用する第1~第3ハブ35a~35cの取り間違えを防ぐことができる。ただし、第3枝管34cを配置する位置は特に限定されず、例えば上述した第1および第2実施形態と同様に、すべての第1~第3枝管34a~34cがカバー33の近位側に配置されるようにしてもよい。
【0179】
カバー33の遠位側のカテーテルチューブ300の外周には、任意選択的にタグ36を取り付けてもよい。タグ36には、例えば、どれくらいの流体容量で結石除去用バルーン370がどれくらいの外径に膨張するか等の情報を表示することができるようになっている。
【0180】
結石除去用バルーン370は、カテーテルチューブ300の遠位端部301において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380よりも遠位側に設けられている。結石除去用バルーン370は、結石除去用バルーン流体導出口311を覆うようにカテーテルチューブ300の外周面に取り付けられている。
【0181】
結石除去用バルーン370は伸縮性材料により構成されており、カテーテルチューブ300の結石除去用バルーンルーメン310を介して内部に流体が導入されることにより膨張するようになっている。胆管内で膨張した結石除去用バルーン370により胆管内の結石を掻き出したり押し出したりすることで、胆管内の結石除去を行うことができる。なお、結石除去用バルーン370を体内に挿入する際には、結石除去用バルーン370を収縮させ、結石除去用バルーン370がカテーテルチューブ300の外周面に密着した状態で体内に挿入される。結石除去用バルーン370を構成する伸縮性材料や、結石除去用バルーン370を製造する方法は、第1実施形態の結石除去用バルーン170と同様である。
【0182】
結石除去用バルーン370は、
図9に示すように、全体として球状または筒状である。結石除去用バルーン370の遠位側の端部および近位側の端部には、カテーテルチューブ300の外周面と接合される固定部370a、370bが形成されており、結石除去用バルーン370は、結石除去用バルーン370の内部の流体が固定部370a、370bから外部に漏出しないようにカテーテルチューブ300に固定されている。固定部370a、370bは、柔軟性を有する細径部300aに固定されることが好ましい。
【0183】
固定部370a、370bの軸方向の長さは例えば0.5~5.0mmである。結石除去用バルーン370の固定部370a、370bをカテーテルチューブ300の外周面に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0184】
固定部370aと固定部370bとの間には、カテーテルチューブ300の外周面と接合されておらず、結石除去用バルーン370の内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部370cが形成されている。
【0185】
結石除去用バルーン370の膨張部370cは、膨張した状態での最大外径が、萎んだ状態での外径の200~1500%であることが好ましい。この比率が小さすぎると結石除去用バルーン370が十分な大きさに膨張しないおそれがあり、大きすぎるとカテーテルチューブ300を体内に挿入する際に結石除去用バルーン370が邪魔になるおそれがある。膨張部370cの軸方向の長さは例えば5~20mmであり、膜厚は例えば0.10~0.50mmである。
【0186】
結石除去用バルーン370は、固定部370aと固定部370bとの間に位置する膨張部370cがカテーテルチューブ300の軸心に対して偏心して膨張するように構成されていてもよく、カテーテルチューブ300の軸心に対して対称に膨張するように構成されていてもよい。第3実施形態におけるバルーンカテーテル30は、
図9に示すように、膨張部370cがカテーテルチューブ300の軸心に対して対称に膨張するようになっている。この結石除去用バルーン370の膨張部370cは、外力を受けない状態において、カテーテルチューブ300の軸心を回転軸としてカテーテルチューブ300の側方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されている。
【0187】
また、X線造影下で結石除去用バルーン370の位置を確認できるように、結石除去用バルーン370の近傍に1つまたは複数のX線不透過性マーカー315が取り付けられてもよい。例えば、
図9に示す構成では、結石除去用バルーン370の内部および近位側において、カテーテルチューブ300の遠位端部301にX線不透過性マーカー315が取り付けられている。X線不透過性マーカー315は、例えばX線不透過材料である金、プラチナ、プラチナイリジウム合金等の金属や、X線不透過物質の粉末を含有する樹脂組成物を用いて作製することができる。なお、
図10ではX線不透過性マーカー315の図示を省略している。
【0188】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン380は、カテーテルチューブ300の遠位端部301において、結石除去用バルーン370よりも近位側に設けられている。十二指腸乳頭部拡張用バルーン380は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321を覆うようにカテーテルチューブ300の外周面に取り付けられている。
【0189】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン380は非伸縮性材料により構成されており、カテーテルチューブ300の十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320を介して内部に流体が導入されることにより膨張するようになっている。十二指腸乳頭部2aに挿通させた状態で十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を膨張させることによって、十二指腸乳頭部2aを拡張することができる。なお、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を体内に挿入する際には、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を収縮させ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380がカテーテルチューブ300の外周面に密着した状態で体内に挿入される。
【0190】
結石除去用バルーン370と十二指腸乳頭部拡張用バルーン380との間の離隔距離(例えば、結石除去用バルーン370の近位端から十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の遠位端までの軸方向の距離)は、カテーテルチューブ300を挿入する管腔臓器の長さに合わせて設定すればよく、例えば胆管に挿入する場合には、通常30~200mm程度にすればよい。
【0191】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を構成する非伸縮性材料や、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を製造する方法は、第1実施形態の十二指腸乳頭部拡張用バルーン180と同様である。
【0192】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン380は、
図9および
図10に示すように、全体として筒状である。十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の遠位側の端部および近位側の端部には、カテーテルチューブ300の外周面と接合される固定部380a、380bが形成されており、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380は、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部の流体が固定部380a、380bから外部に漏出しないようにカテーテルチューブ300に固定されている。
【0193】
なお、固定部380bの位置には、ガイドワイヤ挿通用チューブ部材360がカテーテルチューブ300の外周面に当接するように配置されている。固定部380bは、例えばガイドワイヤ挿通用チューブ部材360およびカテーテルチューブ300を取り巻くようにして、固定部380bとガイドワイヤ挿通用チューブ部材360との間、および固定部380bとカテーテルチューブ300との間に隙間が生じないように固定される。
【0194】
固定部380a、380bは、カテーテルチューブ300の遠位端部301を構成する細径部300aに固定されてもよく、あるいは、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380が境界部300cを跨ぐように、遠位側の固定部380aが細径部300aに固定され、近位側の固定部380bが太径部300bに固定されてもよい。ここでは一例として、
図9および
図10に示すように、固定部380aが細径部300aに固定され、固定部380bが太径部300bに固定されており、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380が境界部300cを跨がるように設けられている。また、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321は、カテーテルチューブ300の太径部300bで開口しており、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320としての第3ルーメン353は、太径部300bに位置している。
【0195】
このように、太径部300bに形成された第3ルーメン353を十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320として使用することで、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320を大きくすることができる。これにより、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を膨張させるための流体の流量を多くすることができ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を迅速かつ効率良く膨張または収縮させることができるようになる。また、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の遠位側の端部を細径部300aに配置することで、十二指腸乳頭部2aや胆管への挿入性を向上させることができるようになる。
【0196】
固定部380a、380bの軸方向の長さは例えば1.0~10.0mmである。十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の固定部380a、380bをカテーテルチューブ300の外周面に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0197】
固定部380aと固定部380bとの間には、カテーテルチューブ300の外周面と接合されておらず、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部380cが形成されている。
【0198】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の膨張部380cの大きさは、十二指腸乳頭部2aの大きさおよび必要な拡張量に応じて適宜設定可能である。膨張部380cの軸方向の長さは例えば30~60mmであり、膜厚は、例えば0.01~0.50mmである。また、膨張時における十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の外径は例えば4~22mmであり、好ましくは12~18mmである。
【0199】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン380は、固定部380aと固定部380bとの間に位置する膨張部380cがカテーテルチューブ300の軸心に対して対称に膨張するように構成されている。すなわち、この十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の膨張部380cは、外力を受けない状態において、カテーテルチューブ300の軸心を回転軸としてカテーテルチューブ300の側方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されている。十二指腸乳頭部2aに挿入した状態で膨張部380cが軸心に対して対称に膨張することで、十二指腸乳頭部2aに対してその内壁を広げる力が均等に作用して、十二指腸乳頭部2aを効率良く拡張させることができるようになる。
【0200】
また、結石除去用バルーン370と同様に、X線造影下で十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の位置を確認できるように、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の近傍に1つまたは複数のX線不透過性マーカーが取り付けられてもよい。例えば、
図9に示す構成では、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の内部において、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の拡張有効部(十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を膨張させて十二指腸乳頭部2aを拡張するときに十二指腸乳頭部2aの内壁と接し得る部分)の遠位端と近位端のそれぞれの軸方向に対応する位置の、カテーテルチューブ300の遠位端部301にX線不透過性マーカー315が取り付けられている。また、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の外表面や十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の近傍に、内視鏡下で視認可能な内視鏡マーカーが設けられてもよい。さらに、膨張して十二指腸乳頭部2aの内壁に当接した十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の軸方向への位置ずれを防止するために、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380の外表面に段差が設けられてもよい。
【0201】
第3実施形態におけるバルーンカテーテル30の使用方法は、カテーテルチューブ300の近位側において、ガイドワイヤ5がガイドワイヤ挿通用チューブ部材360の管腔361に挿通される点を除いて、上述した第1実施形態におけるバルーンカテーテル10の使用方法と同様である。例えば、総胆管2b内の結石(胆石)を体外に取り出して除去する総胆管結石治療を行う際には、バルーンカテーテル30のカテーテルチューブ300の遠位端部301を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b内に挿入する。そして、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380を膨張させることで、十二指腸乳頭部2aを所望の大きさまで拡張し、さらに、結石除去用バルーン370を膨張させて、カテーテルチューブ300を適宜進退させながら結石除去用バルーン370を近位側に引き戻すことで、結石除去用バルーン370により総胆管2b内の結石を十二指腸乳頭部2aから総胆管2b外(十二指腸内)へ掻き出すことができる。
【0202】
また、第1実施形態で説明したように、結石除去用バルーン370と十二指腸乳頭部拡張用バルーン380との位置を逆にして、十二指腸乳頭部拡張用バルーン380が、結石除去用バルーン370よりも遠位側に取り付けられてもよい。
【0203】
以下、上述した第1~第3実施形態におけるバルーンカテーテル10、20、30の作用について説明する。
【0204】
第1~第3実施形態におけるバルーンカテーテル10、20、30は、十二指腸乳頭部2aから胆管または膵管に挿入されるバルーンカテーテル10、20、30であって、カテーテルチューブ100、200、300と、結石除去用バルーン170、270、370と、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180、280、380と、を備えている。
【0205】
カテーテルチューブ100、200、300は、可撓性材料からなり、遠位端部101、201、301に設けられた結石除去用バルーン流体導出口111、211、311から流出させる流体を流通する結石除去用バルーンルーメン110、210、310と、遠位端部に設けられた十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121、221、321から流出させる流体を流通する十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン120、220、320と、を軸方向に沿って有している。
【0206】
結石除去用バルーン170、270、370は、胆管または膵管内の結石を除去するためにカテーテルチューブ100、200、300の遠位端部101、201、301に設けられており、結石除去用バルーン流体導出口111、211、311から流出した流体により膨張可能なように構成されている。
【0207】
十二指腸乳頭部拡張用バルーン180、280、380は、十二指腸乳頭部2aを拡張するためにカテーテルチューブ100、200、300の遠位端部101、201、301に設けられており、十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口121、221、321から流出した流体により膨張可能なように構成されている。
【0208】
上記の構成によれば、第1~第3実施形態におけるバルーンカテーテル10、20、30は、結石除去用バルーン170、270、370、および十二指腸乳頭部拡張用バルーン180、280、380を備えており、デバイス交換を行うことなく、単一のデバイスによって十二指腸乳頭部2aを拡張するとともに結石除去を実施することができる。また、上記の構成によれば、十二指腸乳頭部2aの切開を行わずに十二指腸乳頭部2aを大きく拡張することができるため、巨大結石や積み上げ結石等が存在する場合や、抗血小板薬や抗凝固薬等の服用により出血のリスクを伴う場合に特に有用である。
【0209】
第1~第3実施形態におけるバルーンカテーテル10、20、30は、結石除去用バルーン170、270、370が伸縮性素材からなり、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180、280、380が非伸縮性素材からなってもよい。
【0210】
上記の構成によれば、胆管または膵管内の結石の除去性に優れた結石除去用バルーン170、270、370を実現するとともに、十二指腸乳頭部2aの拡張性に優れた十二指腸乳頭部拡張用バルーン180、280、380を実現することができる。
【0211】
第1~第3実施形態におけるバルーンカテーテル10、20、30は、結石除去用バルーン170、270、370が、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180、280、380よりカテーテルチューブ100、200、300の遠位側に設けられていてもよい。
【0212】
上記の構成によれば、十二指腸乳頭部2aの拡張状態を確実に維持しながら、胆管または膵管内の結石を除去することができる。
【0213】
また、第1実施形態のように、バルーンカテーテル10は、カテーテルチューブ100の内部に軸方向に沿って、結石除去用バルーンルーメン110としての第1ルーメン151と、カテーテルチューブ100の遠位端部101に設けられた造影剤導出口131から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメン130としての第2ルーメン152と、カテーテルチューブ100の遠位端部101に設けられたガイドワイヤ挿通口141から導出させるガイドワイヤ5を挿通するガイドワイヤルーメン140としての第3ルーメン153と、十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン120としての第4ルーメン154と、が形成されていてもよい。
【0214】
上記の構成によれば、4つのルーメン(第1~第4ルーメン151~154)が形成されたカテーテルチューブ100を用いて、本発明に係るバルーンカテーテル10を実現することができる。
【0215】
また、第2実施形態のように、バルーンカテーテル20は、カテーテルチューブ200の内部に軸方向に沿って、結石除去用バルーンルーメン210としての第1ルーメン251と、カテーテルチューブ200の遠位端部201に設けられた造影剤導出口231から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメン230としての第2ルーメン252と、カテーテルチューブ200の遠位端部201に設けられたガイドワイヤ挿通口241から導出させるガイドワイヤ5を挿通するガイドワイヤルーメン240としての第3ルーメン253と、が形成されており、第2ルーメン252の内部に軸方向に沿って挿通されたチューブ部材260の管腔261が十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220として用いられ、チューブ部材260の遠位端262が十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口221として十二指腸乳頭部拡張用バルーン280内に開口していてもよい。
【0216】
上記の構成によれば、3つのルーメン(第1~第3ルーメン251~253)が形成されたカテーテルチューブ200を用いて、本発明に係るバルーンカテーテル20を実現することができる。また、造影剤用ルーメン230に挿通したチューブ部材260により十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン220を形成することで、十二指腸乳頭部2aを拡張するための流体の流路を確保して当該流体の流通性を向上させることができ、十二指腸乳頭部拡張用バルーン280の拡張即応性を向上させることができる。
【0217】
また、第3実施形態のように、バルーンカテーテル30は、カテーテルチューブ300の内部に軸方向に沿って、結石除去用バルーンルーメン310としての第1ルーメン351と、カテーテルチューブ300の遠位端部301に設けられた造影剤導出口331から流出させる造影剤を流通する造影剤用ルーメン330としての第2ルーメン352と、カテーテルチューブ300の遠位端部301において充填物325により閉塞された第3ルーメン353とが、形成されており、第3ルーメン353の充填物325よりも近位側に十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口321が形成されており、第3ルーメン353の充填物325よりも近位側が十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン320として用いられ、第3ルーメン353の充填物325よりも遠位側にガイドワイヤ5を導入するガイドワイヤ導入口342が形成されているとともに、第3ルーメン353のガイドワイヤ導入口342よりも遠位側にガイドワイヤ5を導出するガイドワイヤ挿通口341が形成されており、第3ルーメン353の充填物325よりも遠位側がガイドワイヤ5を挿通するガイドワイヤルーメン340として用いられてもよい。
【0218】
上記の構成によれば、3つのルーメン(第1~第3ルーメン351~353)が形成されたカテーテルチューブ300を用いて、本発明に係るバルーンカテーテル30を実現することができる。また、バルーンカテーテル30にガイドワイヤ5を挿通させる長さを短くすることができ、ガイドワイヤ5の近位端側からバルーンカテーテル30を挿入する作業や、ガイドワイヤ5からバルーンカテーテル30を抜去する作業を容易に実施することができるようになる。
【0219】
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであり、本発明を限定するものではない。上述した実施形態に開示された各構成要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。また、各実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせて得られる構成も本発明に包含される。
【0220】
例えば、上述した第1および第2実施形態におけるバルーンカテーテル10、20において、第3実施形態のように、結石除去用バルーン170、270の膨張部170c、270cが、カテーテルチューブ100、200の軸心に対して対称に膨張するようになっていてもよい。また、例えば、上述した第1および第2実施形態におけるバルーンカテーテル10、20において、第3実施形態のように、十二指腸乳頭部拡張用バルーン180、280を膨張させるための流体を導入する枝管およびハブ(第4枝管14d、24d、および第4ハブ15d、25d)を、他の枝管およびハブとは異なる位置に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0221】
1 内視鏡
2a 十二指腸乳頭部
2b 総胆管
5 ガイドワイヤ
10、20、30 バルーンカテーテル
13、23、33 カバー
14a、24a、34a 第1枝管
14b、24b、34b 第2枝管
14c、24c、34c 第3枝管
14d、24d 第4枝管
15a、25a、35a 第1ハブ
15b、25b、35b 第2ハブ
15c、25c、35c 第3ハブ
15d、25d 第4ハブ
16、26、36 タグ
100、200、300 カテーテルチューブ
100a、200a、300a 細径部
100b、200b、300b 太径部
100c、200c、300c 境界部
101、201、301 遠位端部
102、202、302 近位端部
110、210、310 結石除去用バルーンルーメン
111、211、311 結石除去用バルーン流体導出口
115、215、315 X線不透過性マーカー
120、220、320 十二指腸乳頭部拡張用バルーンルーメン
121、221、321 十二指腸乳頭部拡張用バルーン流体導出口
130、230、330 造影剤用ルーメン
131、231、331 造影剤導出口
140、240、340 ガイドワイヤルーメン
141、241、341 ガイドワイヤ挿通口
151、251、351 第1ルーメン
152、252、352 第2ルーメン
153、253、353 第3ルーメン
154 第4ルーメン
170、270、370 結石除去用バルーン
170a、170b、270a、270b、370a、370b 固定部
170c、270c、370c 膨張部
170d、270d オフセットシート
180、280、380 十二指腸乳頭部拡張用バルーン
180a、180b、280a、280b、380a、380b 固定部
180c、280c、380c 膨張部
232 チューブ部材挿通口
233、343 フラップ部
260 チューブ部材
261、361 管腔
262、362 遠位端
325 充填物
342 ガイドワイヤ導入口
360 ガイドワイヤ挿通用チューブ部材