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特開2024-162128車両の制御装置、車両の制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162128
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両の制御装置、車両の制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077377
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100167461
【弁理士】
【氏名又は名称】上木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】原 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤野 次郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 悟
(72)【発明者】
【氏名】森本 寛
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】ドライバが車両外部の物標を認識しているかの判断を、ドライバの視野範囲の変化を考慮して実施できるようにする。
【解決手段】制御装置4は、車両100の周辺の状況を表す周辺データに基づいて車両100の周囲に存在する注視すべき物標を検出し、車両100のドライバの状態を表すドライバデータに基づいて、ドライバの視点位置及び視線方向を検出し、車両100の速度、道路種別、又は道路形状に基づいてドライバの視線方向に向けてドライバの視野を設定し、物標の位置に、物標が投影された仮想平面を車両と対面するように設定するとともに、仮想平面上においてドライバの視野が物標の投影箇所に重なっているかを判定し、ドライバの視野が物標の投影箇所に重なっていなければ、安全措置を取るように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両の周辺の状況を表す周辺データに基づいて、前記車両の周囲に存在する注視すべき物標を検出し、
前記車両のドライバの状態を表すドライバデータに基づいて、前記ドライバの視線方向を検出し、
前記車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいて、前記ドライバの視線方向に向けて前記ドライバの視野を設定し、
前記物標の位置に、前記物標が投影された仮想平面を前記車両と対面するように設定するとともに、前記仮想平面上において、前記ドライバの視野が前記物標の投影箇所に重なっているかを判定し、
前記ドライバの視野が前記物標の投影箇所に重なっていなければ、安全措置を取るように構成される、
車両の制御装置。
【請求項2】
前記ドライバの視点位置を頂点とし、前記ドライバの視点位置から前記ドライバの視線方向に向かって延びる視線ベクトルを中心軸とする所定の頂角を有する錐体を前記ドライバの視野として設定するとともに、前記車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいて前記頂角を変更するように構成される、
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
車両の速度が大きいときは、小さいときと比べて前記頂角を小さい値に設定するように構成される、
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記道路種別が平均車速の大きい道路であるときは、前記道路種別が平均車速の小さい道路であるときと比べて前記頂角を小さい値に設定するように構成される、
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記道路形状が相対的に高速で走行可能な形状であるときは、前記道路形状が相対的に低速で走行する必要のある形状であるときと比べて前記頂角を小さい値に設定するように構成される、
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両は前記ドライバに対して通知を行うための出力機器を有しており、
前記安全措置として、前記出力機器を介した通知を行うように構成される、
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記安全措置として、前記物標を回避するように、前記車両の運転操作を自動で実施するように構成される、
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
制御装置による車両の制御方法であって、
前記車両の周辺の状況を表す周辺データに基づいて、前記車両の周囲に存在する注視すべき物標を検出し、
前記車両のドライバの状態を表すドライバデータに基づいて、前記ドライバの視線方向を検出し、
前記車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいて、前記ドライバの視線方向に向けて前記ドライバの視野を設定し、
前記物標の位置に、前記物標が投影された仮想平面を前記車両と対面するように設定するとともに、前記仮想平面上において、前記ドライバの視野が前記物標の投影箇所に重なっているかを判定し、
前記ドライバの視野が前記物標の投影箇所に重なっていなければ、安全措置を取るように構成される、
車両の制御方法。
【請求項9】
車両の制御装置用のコンピュータプラグラムであって、
前記制御装置に、
前記車両の周辺の状況を表す周辺データに基づいて、前記車両の周囲に存在する注視すべき物標を検出させ、
前記車両のドライバの状態を表すドライバデータに基づいて、前記ドライバの視点位置及び視線方向を検出させ、
前記車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいて、前記ドライバの視線方向に向けて前記ドライバの視野を設定させ、
前記物標の位置に、前記物標が投影された仮想平面を前記車両と対面するように設定させるとともに、前記仮想平面上において、前記ドライバの視野が前記物標の投影箇所に重なっているかを判定させ、
前記ドライバの視野が前記物標の投影箇所に重なっていなければ、前記車両に安全措置を取らせる、
ことを実行させるためのコンピュータプラグラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置、車両の制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライバの注視状況に応じて報知を行うことが可能な従来の警報装置として、ドライバの視線の方向を示す視線情報とドライバの三次元座標上の眼球位置を示す眼球位置情報とに基づいてドライバが注視している注視点を算定し、注視すべき対象物と注視点とに基づいてドライバが対象物を注視しているか否かを判定し、注視していないと判定された場合に報知するように構成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-185218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバの視野は、車両の速度が大きくなるほど狭くなる傾向にある。そのためドライバは、車両の速度が大きくなるほど、車両外部の他車両や歩行者等の物標を認識し難くなる傾向にある。したがって、このような視野範囲の変化を考慮してドライバが車両外部の物標を認識できているかを判断しないと、車両外部の注視すべき物標をドライバが認識できていないにもかかわらず、当該物標をドライバが認識できていると判断してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、ドライバが車両外部の物標を認識しているかの判断を、当該ドライバの視野範囲の変化を考慮して実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)車両の制御装置であって、車両の周辺の状況を表す周辺データに基づいて車両の周囲に存在する注視すべき物標を検出し、車両のドライバの状態を表すドライバデータに基づいてドライバの視点位置及び視線方向を検出し、車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいて、ドライバの視線方向に向けてドライバの視野を設定し、物標の位置に、物標が投影された仮想平面を車両と対面するように設定するとともに、仮想平面上においてドライバの視野が物標の投影箇所に重なっているかを判定し、ドライバの視野が物標の投影箇所に重なっていなければ、安全措置を取るように構成される、車両の制御装置。
【0008】
(2)ドライバの視点位置を頂点とし、視点位置から視線方向に向かって延びる視線ベクトルを中心軸とする所定の頂角を有する錐体をドライバの視野として設定するとともに、車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいて頂角を変更する、上記(1)に記載の車両の制御装置。
【0009】
(3)車両の速度が大きいときは、小さいときと比べて頂角を小さい値に設定する、上記(2)に記載の車両の制御装置。
【0010】
(4)道路種別が平均車速の大きい道路であるときは、道路種別が平均車速の小さい道路であるときと比べて頂角を小さい値に設定する、上記(2)に記載の車両の制御装置。
【0011】
(5)道路形状が相対的に高速で走行可能な形状であるときは、道路形状が相対的に低速で走行する必要のある形状であるときと比べて頂角を小さい値に設定する、上記(2)に記載の車両の制御装置。
【0012】
(6)車両はドライバに対して通知を行うための出力機器を有しており、安全措置として、出力機器を介した通知を行うように構成される、上記(1)から(5)までのいずれかに記載の車両の制御装置。
【0013】
(7)安全措置として、物標を回避するように、車両の運転操作を自動で実施するように構成される、上記(1)から(6)までのいずれかに記載の車両の制御装置。
【0014】
(8)制御装置による車両の制御方法であって、車両の周辺の状況を表す周辺データに基づいて車両の周囲に存在する注視すべき物標を検出し、車両のドライバの状態を表すドライバデータに基づいてドライバの視点位置及び視線方向を検出し、車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいてドライバの視線方向に向けてドライバの視野を設定し、物標の位置に、物標が投影された仮想平面を車両と対面するように設定するとともに、仮想平面上においてドライバの視野が物標の投影箇所に重なっているかを判定し、ドライバの視野が物標の投影箇所に重なっていなければ、安全措置を取る、車両の制御方法。
【0015】
(9)車両の制御装置用のコンピュータプラグラムであって、制御装置に、記車両の周辺の状況を表す周辺データに基づいて車両の周囲に存在する注視すべき物標を検出させ、ドライバの状態を表すドライバデータに基づいてドライバの視点位置及び視線方向を検出させ、車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいてドライバの視線方向に向けてドライバの視野を設定させ、物標の位置に、物標が投影された仮想平面を車両と対面するように設定させるとともに、仮想平面上においてドライバの視野が物標の投影箇所に重なっているかを判定させ、ドライバの視野が物標の投影箇所に重なっていなければ車両に安全措置を取らせる、ことを実行させるためのコンピュータプラグラム。
【発明の効果】
【0016】
本発明のこれらの態様によれば、ドライバの視野を車両の速度、道路種別、又は道路形状に応じた適切な範囲に設定することができるので、ドライバが車両外部の物標を認識しているかの判断を、ドライバの視野範囲の変化を考慮して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による車両の概略システム構成図である。
図2】制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による通知処理の詳細について説明するフローチャートである。
図4】ドライバの視野について説明する図である。
図5】車両の速度に基づいて視円錐の頂角を設定するための視野設定テーブルの一例を示す図である。
図6A】ドライバが注視対象物標を認識できているか否かを判定する方法の一例を説明する図である。
図6B】ドライバが注視対象物標を認識できているか否かを判定する方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による車両100のシステム概略図である。
【0020】
車両100は、周辺センサ1と、ドライバセンサ2と、出力機器3と、制御装置4と、を備える。周辺センサ1、ドライバセンサ2、出力機器3、及び制御装置4は、それぞれコントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワーク5を介して通信可能に接続される。車両100は、自動運転機能や運転支援機能が付いた車両であってもよいし、手動運転車両であってもよい。
【0021】
周辺センサ1は、車両100の周辺の状況を表す周辺データを生成するためのセンサである。本実施形態では周辺センサ1として、車両100の周囲を撮影するための一又は複数の外部カメラを備える。外部カメラは、所定のフレームレート(例えば、10[Hz]~40[Hz])で車両100の周囲を撮影し、車両100の周囲が写った周囲画像を生成する。外部カメラは、周囲画像を生成する度に、生成した周囲画像を周辺データとして制御装置4に送信する。
【0022】
なお外部カメラに替えて、又は外部カメラに加えて、車両100の周囲に存在する他車両や歩行者、自転車などの物標までの距離を計測する測距センサを周辺センサ1として備えていてもよい。測距センサの例としては、例えば、レーダ光を照射してその反射光に基づいて距離を計測するライダ(LiDAR;Light Detection And Ranging)や、電波を照射してその反射波に基づいて距離を計測するミリ波レーダセンサなどが挙げられる。
【0023】
ドライバセンサ2は、ドライバの状態を表すドライバデータを生成するためのセンサである。本実施形態ではドライバセンサ2として、ドライバの顔を含むドライバの外観を撮影するためのドライバモニタカメラを備える。ドライバモニタカメラは、所定のフレームレート(例えば、10[Hz]~40[Hz])でドライバの外観を撮影し、ドライバの外観が写った外観画像を生成する。ドライバモニタカメラは、ドライバの外観画像を生成する度に、生成した外観画像をドライバデータとして制御装置4に送信する。
【0024】
出力機器3は、車両100のドライバの体感覚(例えば、視覚、聴覚及び触覚など)を通じてドライバに通知を行うための機器である。本実施形態では、出力機器3として、ドライバが視認できる位置に配置されるディスプレイ(例えば、メーターディスプレイ、センターディスプレイ又はヘッドアップディスプレイなど)と、スピーカと、を備える。ディスプレイは、制御装置4から出力された表示信号に応じた情報(例えば、文字情報や画像情報)を表示する。スピーカは、制御装置4から出力された音声信号に応じた音声を出力する。
【0025】
制御装置4は、通信部41と、記憶部42と、処理部43と、を備えるECU(Electronic Control Unit)であって(図2参照)、注視すべき車両外部の物標(注視対象物標)を特定し、ドライバの当該物標の認識状況に応じて、当該ドライバに対して出力機器3を介して通知を行うことができるように、少なくとも構成される。制御装置4には、前述した周辺データやドライバデータの他にも、例えば、測位センサによって取得された車両位置データや、車速センサによって取得された車速データなどの各種のデータを入力することができる。
【0026】
図2は、制御装置4のハードウェア構成を示す図である。
【0027】
制御装置4は、通信部41と、記憶部42と、処理部43と、を備える。
【0028】
通信部41は、制御装置4を車内ネットワーク5に接続するためのインターフェース回路を備える。通信部41は、外部から受信したデータ(周辺データやドライバデータなど)を処理部43に供給する。また通信部41は、処理部43から出力された表示信号及び音声信号を出力機器3に送信する。
【0029】
記憶部42は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid Disk Drive)、半導体メモリ等の記憶媒体を有し、処理部43での処理に用いられる各種のコンピュータプログラムやデータ等を記憶する。
【0030】
処理部43は、一又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有し、記憶部42に格納された各種のコンピュータプログラムを実行するものであり、例えばプロセッサである。以下、図3を参照して、処理部43、ひいては制御装置4で実行される処理の一例について説明する。
【0031】
図3は、本実施形態による通知処理の詳細について説明するフローチャートである。
【0032】
ステップS1において、制御装置4は、周辺センサ1から受信した周辺データ、具体的には外部カメラから受信した周囲画像に基づいて、車両100の周囲に存在する物標を検出する。
【0033】
本実施形態では制御装置4は、外部カメラから受信した周囲画像を識別器に順次入力することで、周囲画像において物標が表されている領域と、その領域に表された物標の種類と、を検出する。識別器は、例えば、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。そして制御装置4は、物標の種類ごとに記憶部42に記憶された物標の標準サイズと、周囲画像において検出された物標のサイズとを用いて外部カメラから物標までの距離を推定するとともに、周囲画像において検出された物標を時系列に沿って追跡(トラッキング)することで物標の位置及び速度を算出する。なお、物標の検出方法はこのような方法に限られるものではなく、公知の種々の手法で検出すればよいものである。
【0034】
ステップS2において、制御装置4は、車両100の周囲に存在する物標のうち、注視すべき物標(以下「注視対象物標」という。)を特定する。注視対象物標は、例えば車両100に接近してくる他車両や、歩行者、自転車などの物標、すなわち車両100と衝突する可能性のある物標とすることができる。しかしながらこれに限らず、例えば歩行者、自転車などの予め定められた所定の物標を注視対象物標として特定してもよいし、車両100の進行方向に直交する方向(横方向)において車両100との間隔が所定閾値よりも小さい物標を注視対象物標として特定してもよい。
【0035】
ステップS3において、制御装置4は、ドライバセンサ2から受信したドライバデータ、具体的にはドライバモニタカメラから受信したドライバの外観画像に基づいて、ドライバの視点位置及び視線方向を検出する。
【0036】
本実施形態では制御装置4は、ドライバモニタカメラ21から受信した顔画像に対して画像処理を順次施すことによって、動点となる瞳孔中心の位置(すなわちドライバの視点位置)と、基準点となるプルキニエ像(角膜反射像)の位置と、を検出し、プルキニエ像と瞳孔中心との位置関係(基準点に対する動点の位置)に基づいてドライバの視線方向を検出している。なお、ドライバの視点位置及び視線方向の検出方法はこのような方法に限られるものではなく、公知の種々の手法で検出すればよいものである。
【0037】
ステップS4において、制御装置4は、ドライバの視野を設定する。前述した通り、ドライバの視野は、車両の速度が大きくなるほど狭くなる傾向にある。そこで本実施形態では、図4に示すように、ドライバの視点位置を頂点とし、視点位置から視線方向に向かって延びる視線ベクトルを中心軸とする所定の頂角(画角)を有する視円錐をドライバの視野と仮定し、車両の速度に応じて視円錐の頂角を変更することとした。視野の頂点は、必ずしもドライバの視点位置である必要はなく、例えば、顔の中心位置などにしてもよい。
【0038】
本実施形態では制御装置4は、実験等によって予め設定された図5に示す視野設定テーブルを参照し、車両の速度に基づいて視円錐の頂角を設定する。図5に示すように、視円錐の頂角は、基本的に車両の速度が大きいときには、小さいときと比べて小さくされる。これにより、基本的に車両の速度が大きくなるほど、視円錐の頂角、ひいては視円錐の底面の半径が小さくなるので、ドライバの視野を狭くすることができる。
【0039】
なお、図5に示す視野設定テーブルの形状はあくまでも一例であり、図5に示すように車両の速度が大きくなるにつれて漸進的に頂角を小さくしてもよいし、これに限らず、車両の速度が大きくなるにつれて段階的に頂角を小さくしてもよい。
【0040】
また本実施形態では、図4に示すように、視野の形状を円錐としているが、視野の形状は円錐に限られるものではなく、楕円錐や多角錐などの他の錐体であってもよい。また図4に示す視円錐は、中心軸が底面の重心を通るいわゆる直錐体であったが、中心軸が底面の重心を通らないいわゆる斜錐体であってもよい。
【0041】
また本実施形態では、車両の速度に基づいて視円錐の頂角を設定していたが、これに限らず、現在走行している道路の種別(一般道や高速道など)を判別し、道路種別に基づいて視円錐の頂角を設定するようにしてもよい。この場合、例えば、道路種別毎の平均車速などに応じて、視円錐の頂角を、道路種別毎に予め設定された所定値に設定すればよく、平均車速が高い道路ほど所定値を小さくすればよい。
【0042】
また前方の道路の形状(直線やカーブなど)を判別し、道路形状に基づいて視円錐の頂角を設定するようにしてもよい。この場合、前方の道路の形状が相対的に低速で走行する必要のある形状(例えばカーブ)であった場合には、相対的に高速で走行可能な形状(例えば直線)であった場合よりも、頂角を大きくすればよい。
【0043】
ステップS5において、制御装置4は、ドライバが注視対象物標を認識できているか否かを判定する。制御装置4は、ドライバが注視対象物標を認識できているときは、今回の処理を終了する。一方で制御装置4は、ドライバが注視対象物標を認識できていないときはステップS6の処理に進む。
【0044】
本実施形態では制御装置4は、例えば図6Aに示すように、注視対象物標が投影された仮想平面を車両進行方向に対して直交するように設定し、仮想平面上においてドライバの視野が注視対象物標の投影箇所に重なっていれば、ドライバが注視対象物標を認識できていると判定し、一方で図6Bに示すように、仮想平面上においてドライバの視野が注視対象物標の投影箇所に重なっていなければ、ドライバが注視対象物標を認識できていないと判定する。図6Aにおける車両の速度は、図6Bにおける車両の速度より小さく、したがって図6Aにおける視野は、図6Bにおける視野よりも広くなっている。なお図6A及び図6Bでは、仮想平面は、ドライバの視点位置から注視対象物標までの最短距離となる位置に設定されているが、これに限らず、例えば注視対象物標が含まれる位置に設定することができる。
【0045】
ステップS6において、制御装置4は、注視対象物標との衝突を回避するための安全措置を取る。本実施形態では安全措置として、出力機器3を介した通知をドライバに行う。通知方法は特に限られるものではなく、例えば注視対象物標を認識できていないことを音声によるアナウンスを実施することによって通知してもよいし、警告音を発することによって通知してもよいし、画像情報や文字情報を駆使することによって通知してもよいし、これらの組み合わせによって通知してもよい。
【0046】
また車両100が加速、操舵、及び制動に関する少なくとも一部の運転操作を自動で実施することが可能な車両(例えば自動運転機能付きの車両や運転支援機能付きの車両)であれば、安全措置として、注視対象物標との衝突を回避するように運転操作を自動で実施するようにしてもよい。
【0047】
以上説明した本実施形態による車両の制御装置4は、車両の周辺の状況を表す周辺データに基づいて車両の周囲に存在する注視すべき注視対象物標を検出し、ドライバの状態を表すドライバデータに基づいてドライバの視点位置及び視線方向を検出し、車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいてドライバの視野を設定し、注視対象物標の位置に当該注視対象物標が投影された仮想平面を車両と対面するように設定するとともに、仮想平面上においてドライバの視野が注視対象物標の投影箇所に重なっているかを判定し、ドライバの視野が注視対象物標の投影箇所に重なっていなければ、安全措置を取るように構成されている。
【0048】
具体的には制御装置4は、ドライバの視点位置を頂点とし、視点位置から視線方向に向かって延びる視線ベクトルを中心軸とする所定の頂角を有する錐体をドライバの視野として設定するとともに、前記車両の速度、道路種別、又は道路形状に基づいて頂角を変更するように構成される。頂角は、例えば、車両の速度が大きいときは、小さいときと比べて小さい値に設定することができる。また頂角は、例えば、道路種別が平均車速の大きい道路であるときは、道路種別が平均車速の小さい道路であるときと比べて小さい値に設定することができる。また頂角は、例えば、道路形状が相対的に高速で走行可能な形状であるときは、道路形状が相対的に低速で走行する必要のある形状であるときと比べて小さい値に設定することができる。
【0049】
これにより、ドライバが車両外部の注視対象物標を認識しているかの判断を、当該ドライバの視野範囲の変化を考慮して実施することができるので、注視対象物標を認識しているか否かの判定精度を向上させることができる。
【0050】
また制御装置4は、安全措置として、出力機器を介した通知を行うか、又は注視対象物標を回避するように車両の運転操作を自動で実施するため、注視対象物標と衝突するのを抑制することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0052】
例えば、上記の実施形態において、制御装置4において実行されるコンピュータプログラム(通知処理)は、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
3 出力機器
4 制御装置
100 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B