IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2024-162145ひび割れ検出方法とひび割れ検出装置、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162145
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ひび割れ検出方法とひび割れ検出装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/12 20170101AFI20241114BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G06T7/12
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077406
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本澤 昌美
(72)【発明者】
【氏名】堀口 賢一
(72)【発明者】
【氏名】野村 価生
(72)【発明者】
【氏名】上村 勇太
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB03
2G051CA04
2G051EA11
2G051EA14
2G051EB01
2G051EC01
2G051ED21
2G051FA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA03
5L096FA26
5L096FA64
5L096FA67
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】ひび割れ1本ごとの方向を高い精度で分類することのできる、ひび割れ検出方法とひび割れ検出装置、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】ひび割れ検出方法は、入力画像作成工程と、ウェーブレット画像作成工程と、二値化画像作成工程と、ひび割れ画像作成工程と、セグメンテーション画像作成工程、ひび割れ方向分類工程を有し、ひび割れ方向分類工程は、セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、該ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成する、分割ひび割れ作成工程と、各ラベルのひび割れにおいて、該ひび割れを構成する各分割ひび割れの方向を、該分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての該分割ひび割れの方向に基づいて該ひび割れの方向を判定する、ひび割れ方向判定工程とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひび割れを内包するコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像を作成する、入力画像作成工程と、
前記入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、前記入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、該想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、該想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、前記入力画像に対してひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像に対してウェーブレット変換処理を実行し、各画素がウェーブレット係数を有するウェーブレット画像を作成する、ウェーブレット画像作成工程と、
ウェーブレット係数の閾値となるウェーブレット係数テーブルを用いて、前記ウェーブレット画像の各画素を二値化して二値化画像を作成する、二値化画像作成工程と、
前記二値化画像に対して、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、ラベリングされた複数の該ひび割れを備えるひび割れ画像を作成する、ひび割れ画像作成工程と、
前記ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する、セグメンテーション画像作成工程と、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れを、複数の方向カテゴリー毎に分類する、ひび割れ方向分類工程とを有し、
前記ひび割れ方向分類工程は、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、該ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成する、分割ひび割れ作成工程と、
各ラベルのひび割れにおいて、該ひび割れを構成する各分割ひび割れの方向を、該分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての該分割ひび割れの方向に基づいて該ひび割れの方向を判定する、ひび割れ方向判定工程とを有することを特徴とする、ひび割れ検出方法。
【請求項2】
前記分割ひび割れ作成工程では、前記分割ひび割れの長さが所定の目安長さ以下となるまで、該ひび割れを前記所定数で割る演算を順次実行することを特徴とする、請求項1に記載のひび割れ検出方法。
【請求項3】
前記ひび割れ方向判定工程では、全ての前記分割ひび割れの方向のうち、5割以上の割合を占める方向がある場合は、当該方向を前記ひび割れの方向として判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のひび割れ検出方法。
【請求項4】
全てのラベルのひび割れが、一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを分類する、全体ひび割れ状態分類工程をさらに有し、
前記全体ひび割れ状態分類工程では、
全てのラベルの前記ひび割れに含まれる、全ての前記分割ひび割れの方向に基づいて、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合を超える場合に一方向ひび割れに分類し、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合以下の場合に二方向ひび割れに分類することを特徴とする、請求項1又は2に記載のひび割れ検出方法。
【請求項5】
コンピュータに入力された、ひび割れを内包するコンクリート表面の撮影画像に基づいて入力画像を作成する入力画像作成部と、
前記入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、前記入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、該想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、該想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、前記入力画像に対してひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像に対してウェーブレット変換処理を実行し、各画素がウェーブレット係数を有するウェーブレット画像を作成するウェーブレット画像作成部と、
ウェーブレット係数の閾値となるウェーブレット係数テーブルを用いて、前記ウェーブレット画像の各画素を二値化して二値化画像を作成する二値化画像作成部と、
前記二値化画像に対して、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、ラベリングされた複数の該ひび割れを備えるひび割れ画像を作成する、ひび割れ画像作成部と、
前記ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する、セグメンテーション画像作成部と、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れを、複数の方向カテゴリー毎に分類する、ひび割れ方向分類部とを有し、
前記ひび割れ方向分類部は、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、該ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成する、分割ひび割れ作成部と、
各ラベルのひび割れにおいて、該ひび割れを構成する各分割ひび割れの方向を、該分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての該分割ひび割れの方向に基づいて該ひび割れの方向を判定する、ひび割れ方向判定部とを有することを特徴とする、ひび割れ検出装置。
【請求項6】
前記分割ひび割れ作成部では、前記分割ひび割れの長さが所定の目安長さ以下となるまで、該ひび割れを前記所定数で割る演算を順次実行することを特徴とする、請求項5に記載のひび割れ検出装置。
【請求項7】
前記ひび割れ方向判定部では、全ての前記分割ひび割れの方向のうち、5割以上の割合を占める方向がある場合は、当該方向を前記ひび割れの方向として判定することを特徴とする、請求項5又は6に記載のひび割れ検出装置。
【請求項8】
コンクリート表面上のひび割れを検出するコンピュータに以下の処理を実行させるプログラムであって、
ひび割れを内包するコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像を作成する、入力画像作成工程と、
前記入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、前記入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、該想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、該想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、前記入力画像に対してひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像に対してウェーブレット変換処理を実行し、各画素がウェーブレット係数を有するウェーブレット画像を作成する、ウェーブレット画像作成工程と、
ウェーブレット係数の閾値となるウェーブレット係数テーブルを用いて、前記ウェーブレット画像の各画素を二値化して二値化画像を作成する、二値化画像作成工程と、
前記二値化画像に対して、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、ラベリングされた複数の該ひび割れを備えるひび割れ画像を作成する、ひび割れ画像作成工程と、
前記ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する、セグメンテーション画像作成工程と、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れを、複数の方向カテゴリー毎に分類する、ひび割れ方向分類工程とを有し、
前記ひび割れ方向分類工程は、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、該ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成する、分割ひび割れ作成工程と、
各ラベルのひび割れにおいて、該ひび割れを構成する各分割ひび割れの方向を、該分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての該分割ひび割れの方向に基づいて該ひび割れの方向を判定する、ひび割れ方向判定工程とを有することを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひび割れ検出方法とひび割れ検出装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、道路や橋梁、トンネルといった様々なインフラ施設の老朽化が進んでおり、改修工事が各地で行われ、また改修計画が進められている。インフラ施設の多くは鉄筋コンクリート構造物(RC(Reinforced Concrete)構造物)や鋼構造物であるが、例えば竣工から40年以上が経過したRC構造物等の表面上には、様々な損傷部が存在している。この損傷部の具体例として、コンクリート表面上においては、ひび割れや白華、遊離石灰、錆汁等が挙げられる。
RC構造物等の改修工事や改修計画に際しては、まず、インフラ施設の技術担当者や業務委託された調査会社もしくは建設会社の技術担当者により、RC構造物等の表面の点検が実施される。この点検では、ひび割れの幅や長さ、遊離石灰等の形状や面積などが定量的に評価され、この定量評価に基づいて、構造物の改修施工の有無やメンテナンスの有無等が判断されることになる。
【0003】
ところで、RC構造物のコンクリート表面におけるひび割れを定量的に検出する方法が種々提案されている(特許文献1乃至7参照)。これら特許文献1乃至7にて提案されているひび割れ検出方法はいずれも、ウェーブレット変換処理と二値化処理を実行する方法を共通の工程とした上で、必要に応じてノイズ除去処理を実行してひび割れを検出する方法である。これらのひび割れ検出方法によれば、コンクリート表面の汚れや照明条件などによりひび割れの検出が困難な場合においても、高精度にひび割れの検出を行うことができる。
【0004】
一方、特許文献8には、検査対象のコンクリート表面に存在する多数のひび割れが、全体として一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを定量的に分類することを可能にした、コンクリート表面上のひび割れ方向特定方法が提案されている。
このコンクリート表面上のひび割れ方向特定方法は、ひび割れを内包するコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像を作成する入力画像作成工程と、入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行し、各画素がウェーブレット係数を有するウェーブレット画像を作成するウェーブレット画像作成工程と、ウェーブレット係数の閾値となるウェーブレット係数テーブルを用いて、前記ウェーブレット画像の各画素を二値化して二値化画像を作成する二値化画像作成工程と、二値化画像における各ひび割れを、複数の方向カテゴリー毎に分類するひび割れ方向分類工程とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-162583号公報
【特許文献2】特開2008-267943号公報
【特許文献3】特開2008-185510号公報
【特許文献4】特開2010-121992号公報
【特許文献5】特開2012-002531号公報
【特許文献6】特開2013-117409号公報
【特許文献7】特開2013-002839号公報
【特許文献8】特開2019-102031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献8に記載のコンクリート表面上のひび割れ方向特定方法によれば、検査対象のコンクリート表面に存在する多数のひび割れが、全体として一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを定量的に分類することができる。すなわち、このひび割れ方向特定方法は、検査対象のコンクリート表面に存在する多数のひび割れが、全体として一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを特定するものであり、個々のひび割れの方向を高精度に特定する手段を開示するものではない。
コンクリート構造物の状態把握においては、ひび割れ1本ごとの方向を高精度に分類できることが望ましい。
【0007】
本発明は、ひび割れ1本ごとの方向を高い精度で分類することのできる、ひび割れ検出方法とひび割れ検出装置、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明によるひび割れ検出方法の一態様は、
ひび割れを内包するコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像を作成する、入力画像作成工程と、
前記入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、前記入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、該想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、該想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、前記入力画像に対してひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像に対してウェーブレット変換処理を実行し、各画素がウェーブレット係数を有するウェーブレット画像を作成する、ウェーブレット画像作成工程と、
ウェーブレット係数の閾値となるウェーブレット係数テーブルを用いて、前記ウェーブレット画像の各画素を二値化して二値化画像を作成する、二値化画像作成工程と、
前記二値化画像に対して、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、ラベリングされた複数の該ひび割れを備えるひび割れ画像を作成する、ひび割れ画像作成工程と、
前記ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する、セグメンテーション画像作成工程と、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れを、複数の方向カテゴリー毎に分類する、ひび割れ方向分類工程とを有し、
前記ひび割れ方向分類工程は、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、該ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成する、分割ひび割れ作成工程と、
各ラベルのひび割れにおいて、該ひび割れを構成する各分割ひび割れの方向を、該分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての該分割ひび割れの方向に基づいて該ひび割れの方向を判定する、ひび割れ方向判定工程とを有することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、入力画像からウェーブレット画像を作成し、ウェーブレット画像から二値化画像を作成し、二値化画像からひび割れ画像を作成し、ひび割れ画像からセグメンテーション画像を作成した後、セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成し、各ラベルのひび割れを構成する各分割ひび割れの方向をその始点と終点の座標を用いて判定し、全ての分割ひび割れの方向に基づいてひび割れの方向を判定することにより、ひび割れ1本ごとの方向を高い精度で分類することが可能になる。
セグメンテーション画像における各ラベルの1本ごとのひび割れの総延長を、例えば2乃至10程度の所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成し、各分割ひび割れの方向を特定することにより、1本のひび割れが様々な方向に蛇行する線形を有する場合であっても、当該様々な方向を複数の分割ひび割れの方向として特定でき、特定された複数の分割ひび割れの方向に基づいて1本のひび割れの方向を特定することができる。
複数の分割ひび割れの方向に基づいて1本のひび割れの方向を特定する方法としては、主たる方向に関する閾値を設けておき、特定された複数の分割ひび割れの方向のうち、閾値を超える方向がある場合はこの方向を1本のひび割れの方向として特定する方法を挙げることができる。一方、閾値を超える方向がない場合は、判別不能とし、主たる方向を備えていないひび割れと判定してよい。
【0010】
セグメンテーション画像を作成するセグメンテーション画像作成工程においては、ひび割れの端点間の距離を特定し、端点間距離に関する閾値と端点間距離とを比較し、端点間距離が特定された2つのひび割れが同一ラベルのひび割れであるか否かを判定することができる。また、画像解析により、端点同士が離間しているひび割れを、別々のひび割れとしてピクセル単位で精度よく特定し、出力できることに加えて、セグメンテーション画像では、点検者による点検結果と同様に、条件を満たすひび割れ同士を、ピクセル単位ではなくて同一ラベルのひび割れとして特定し、出力することができる。出力に際しては、ピクセル単位の出力方法と、セグメンテーション画像としての出力方法のいずれか一方もしくは双方を選択的に出力できるようにしておくこともできる。
【0011】
また、ウェーブレット画像作成工程において、入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、この想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行することにより、ひび割れ画像解析範囲(もしくは解析対象)を可及的に絞ることができる。この方法によれば、解析時間の短縮を図ることが可能になる。また、想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成するに当たり、解析者による描画に代わり、コンクリート表面におけるひび割れの特徴を学習したコンピュータがこの学習情報に基づいて描画することにより、解析者による描画を解消することができ、解析者による描画に比べて格段に短時間にて想定ひび割れ描画ラインを作成することが可能になる。さらに、このようにして作成された描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行して二値化画像を作成することにより、高い精度でひび割れの検出を行うことができる。
【0012】
また、ウェーブレット画像作成工程において、入力画像に対してパス画像を作成する場合は、ひび割れ想定線に沿ってパスを作成し、パスに付したひび割れを覆う面を作成することにより、入力画像においてひび割れ位置を指定することができる。具体的には、市販の画像編集ソフトを使用して、たとえば1ピクセルの線や面からなるパスを作成する。そして、パス画像は、たとえば1ピクセル幅の線からなるパスに対し、その左右両側1ピクセル幅もしくは2ピクセル幅を加えた3ピクセル幅もしくは5ピクセル幅からなる面である。このように、入力画像においてひび割れ位置を指定した後にウェーブレット変換処理を実行してウェーブレット画像を作成することにより、ひび割れ画像解析範囲を可及的に縮小できることから、解析領域を大幅に縮小することができ、このことによって解析時間を大幅に短縮することが可能になり、さらには、連続解析が可能となり、データの読み込み時間や書き出し時間の短縮も可能になる。
【0013】
また、本発明によるひび割れ検出方法の他の態様において、
前記分割ひび割れ作成工程では、前記分割ひび割れの長さが所定の目安長さ以下となるまで、該ひび割れを前記所定数で割る演算を順次実行することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、分割ひび割れの長さが所定の目安長さ以下となるまでひび割れを所定数で割る演算を順次実行することにより、複数の目安長さの分割ひび割れを作成してそれぞれの分割ひび割れの方向を判定することができる。尚、1本のひび割れを所定数(所定のピクセル数)で分割して分割ひび割れの目安長さを設定することも、分割ひび割れの長さが所定の目安長さ以下となるまで所定数で分割することに含まれる。
【0015】
また、本発明によるひび割れ検出方法の他の態様において、
前記ひび割れ方向判定工程では、全ての前記分割ひび割れの方向のうち、5割以上の割合を占める方向がある場合は、当該方向を前記ひび割れの方向として判定することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、全ての分割ひび割れの方向の中で5割以上の割合を占める方向をひび割れの方向として判定することにより、1本のひび割れの方向を合理的に特定することができる。ここで、5割以上の割合を占める方向がない場合は、判別不能とし、主たる方向を備えていないひび割れと判定してよい。
【0017】
また、本発明によるひび割れ検出方法の他の態様は、
全てのラベルのひび割れが、一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを分類する、全体ひび割れ状態分類工程をさらに有し、
前記全体ひび割れ状態分類工程では、
全てのラベルの前記ひび割れに含まれる、全ての前記分割ひび割れの方向に基づいて、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合を超える場合に一方向ひび割れに分類し、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合以下の場合に二方向ひび割れに分類することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、コンクリート表面における全体ひび割れ状態に関して、全体として一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを定量的に分類することができる。
ここで、主たるひび割れ方向のひび割れの割合に関する「所定割合」は、過去の文献や経験則等に基づき、例えば55%、60%等に設定することができる。すなわち、例えば、60%を所定割合に設定した際に、この60%を超える割合のひび割れ方向のひび割れがある場合(例えば、橋軸方向をひび割れ方向とするひび割れ群が全体の60%を超える場合等)は、解析対象のひび割れ群を一方向ひび割れとすることができる。一方、全てのひび割れのひび割れ方向が60%以下の場合は、解析対象のひび割れ群を二方向ひび割れとすることができる。また、本明細書において、「二方向ひび割れ」とは、必ずしも二方向のみに延びる単数もしくは複数のひび割れのみを指称するものではなく、3以上の方向に延びる単数もしくは複数のひび割れを包含する。例えば、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合以下である場合に、3方向以上の様々な方向に延びる複数のひび割れが存在する場合も、これらのひび割れは「二方向ひび割れ」に含まれる。
【0019】
また、本発明によるひび割れ検出装置の一態様は、
コンピュータに入力された、ひび割れを内包するコンクリート表面の撮影画像に基づいて入力画像を作成する入力画像作成部と、
前記入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、前記入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、該想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、該想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、前記入力画像に対してひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像に対してウェーブレット変換処理を実行し、各画素がウェーブレット係数を有するウェーブレット画像を作成するウェーブレット画像作成部と、
ウェーブレット係数の閾値となるウェーブレット係数テーブルを用いて、前記ウェーブレット画像の各画素を二値化して二値化画像を作成する二値化画像作成部と、
前記二値化画像に対して、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、ラベリングされた複数の該ひび割れを備えるひび割れ画像を作成する、ひび割れ画像作成部と、
前記ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する、セグメンテーション画像作成部と、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れを、複数の方向カテゴリー毎に分類する、ひび割れ方向分類部とを有し、
前記ひび割れ方向分類部は、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、該ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成する、分割ひび割れ作成部と、
各ラベルのひび割れにおいて、該ひび割れを構成する各分割ひび割れの方向を、該分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての該分割ひび割れの方向に基づいて該ひび割れの方向を判定する、ひび割れ方向判定部とを有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、入力画像からウェーブレット画像を作成し、ウェーブレット画像から二値化画像を作成し、二値化画像からひび割れ画像を作成し、ひび割れ画像からセグメンテーション画像を作成した後、セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成し、各ラベルのひび割れを構成する各分割ひび割れの方向をその始点と終点の座標を用いて判定し、全ての分割ひび割れの方向に基づいてひび割れの方向を判定することにより、ひび割れ1本ごとの方向を高い精度で分類することが可能になる。
【0021】
また、本発明によるひび割れ検出装置の他の態様において、
前記分割ひび割れ作成部では、前記分割ひび割れの長さが所定の目安長さ以下となるまで、該ひび割れを前記所定数で割る演算を順次実行することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、分割ひび割れの長さが所定の目安長さ以下となるまでひび割れを所定数で割る演算を順次実行することにより、複数の目安長さの分割ひび割れを作成してそれぞれの分割ひび割れの方向を判定することができる。
【0023】
また、本発明によるひび割れ検出装置の他の態様において、
前記ひび割れ方向判定部では、全ての前記分割ひび割れの方向のうち、5割以上の割合を占める方向がある場合は、当該方向を前記ひび割れの方向として判定することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、全ての分割ひび割れの方向の中で5割以上の割合を占める方向をひび割れの方向として判定することにより、1本のひび割れの方向を合理的に特定することができる。
【0025】
また、本発明によるプログラムの一態様は、
コンクリート表面上のひび割れを検出するコンピュータに以下の処理を実行させるプログラムであって、
ひび割れを内包するコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像を作成する、入力画像作成工程と、
前記入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、前記入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、該想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、該想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行する、もしくは、前記入力画像に対してひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像に対してウェーブレット変換処理を実行し、各画素がウェーブレット係数を有するウェーブレット画像を作成する、ウェーブレット画像作成工程と、
ウェーブレット係数の閾値となるウェーブレット係数テーブルを用いて、前記ウェーブレット画像の各画素を二値化して二値化画像を作成する、二値化画像作成工程と、
前記二値化画像に対して、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、ラベリングされた複数の該ひび割れを備えるひび割れ画像を作成する、ひび割れ画像作成工程と、
前記ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する、セグメンテーション画像作成工程と、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れを、複数の方向カテゴリー毎に分類する、ひび割れ方向分類工程とを有し、
前記ひび割れ方向分類工程は、
前記セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、該ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成する、分割ひび割れ作成工程と、
各ラベルのひび割れにおいて、該ひび割れを構成する各分割ひび割れの方向を、該分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての該分割ひび割れの方向に基づいて該ひび割れの方向を判定する、ひび割れ方向判定工程とを有することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、プログラムの各工程をコンピュータに実行させることによって、入力画像からウェーブレット画像を作成し、ウェーブレット画像から二値化画像を作成し、二値化画像からひび割れ画像を作成し、ひび割れ画像からセグメンテーション画像を作成した後、セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成し、各ラベルのひび割れを構成する各分割ひび割れの方向をその始点と終点の座標を用いて判定し、全ての分割ひび割れの方向に基づいてひび割れの方向を判定することにより、ひび割れ1本ごとの方向を高い精度で分類することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明から理解できるように、本発明のひび割れ検出方法とひび割れ検出装置、及びプログラムによれば、ひび割れ1本ごとの方向を高い精度で分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係るひび割れ検出装置を含むひび割れ検出システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】ひび割れ検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】ひび割れ検出装置の機能構成の一例を示す図である。
図4】実施形態に係るひび割れ検出方法の一例を示すフローチャートである。
図5A】ウェーブレット変換処理における、入力画像と局所領域の関係の一例を示す図である。
図5B】ウェーブレット変換処理における、局所領域と注目画素の関係の一例を示す図である。
図6】擬似画像の一例を示す図である。
図7図6の擬似画像のウェーブレット係数の鳥瞰図の一例を示す図である。
図8】ウェーブレット係数テーブルの一例を示す図である。
図9】(a)は、相互に分離しているひび割れが、本来的には連続したひび割れであると判定される例を示す模式図であり、(b)と(c)はいずれも、相互に分離しているひび割れが、本来的には連続したひび割れではないと判定される例を示す模式図である。
図10】(a)、(b)、(c)はいずれも、図9(a)を用いて、判定部において、端点間距離が閾値以下の場合にさらに実施される判定例を示す模式図である。
図11】(a)と(b)はそれぞれ、図9(b)、(c)を用いて、判定部において、端点間距離が閾値以下の場合にさらに実施される判定例を示す模式図である。
図12】実施形態に係るひび割れ検出方法における、ひび割れ方向分類工程の一例を示すフローチャートである。
図13A】ひび割れ方向分類工程における分割ひび割れ作成工程の一例を説明する説明図である。
図13B図13Aに続いて、ひび割れ方向分類工程における分割ひび割れ作成工程の一例を説明する説明図である。
図13C】ひび割れ方向分類工程におけるひび割れ方向判定工程の一例を説明する説明図である。
図13D図13Cに続いて、ひび割れ方向分類工程におけるひび割れ方向判定工程の一例を説明する説明図である。
図14】ひび割れ方向分類工程において作成された出力シート一覧の一例を、検出対象のひび割れを内包するコンクリート表面の画像とともに示す図である。
図15図14におけるコンクリート表面の画像におけるXV部分を拡大した画像と、この画像に含まれるラベルのひび割れの出力結果を示す図である。
図16】全体ひび割れ状態分類工程において作成された出力シート一覧の一例を示す図である。
図17】全体ひび割れ状態分類工程において評価基準の一例として適用する、橋梁定期点検要領に記載される、床版ひび割れの損傷程度の評価区分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態に係るひび割れ検出方法とひび割れ検出装置について添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0030】
[実施形態]
<ひび割れ検出システム>
はじめに、実施形態に係るひび割れ検出装置を含む、ひび割れ検出システムについて説明する。図1は、実施形態に係るひび割れ検出装置を含むひび割れ検出システムの全体構成の一例を示す図である。図1に示すように、ひび割れ検出システム1000は、撮像装置100と、ひび割れ検出装置300とを有する。ひび割れ検出装置300は例えばサーバ装置であり、撮像装置100とひび割れ検出装置300は、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等のネットワーク200を介して接続されている。
【0031】
撮像装置100は、CCDカメラやデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像部と、撮像部で取り込まれた画像データを送信する通信部とを有している。尚、撮像装置100が撮影部のみを有し、撮像装置100を携帯端末等に接続し、携帯端末等から画像データを送信する形態であってもよい。撮像装置100で撮影した画像データは、ネットワーク200を介してひび割れ検出装置300に送信される。この画像データには、コンクリート表面の画像情報が含まれる。例えば、建設から数十年が経過した鉄筋コンクリート製の道路橋やトンネル等のインフラ施設に関し、その改修施工の必要性の有無を判断するべく、撮像装置100にてコンクリート表面が撮像される。
【0032】
ひび割れ検出装置300には、データ収集プログラム、データ解析プログラムがインストールされており、ひび割れ検出装置300はこれらのプログラムを実行することにより、データ収集部301及びデータ処理部302として機能する。
【0033】
データ収集部301は、撮像装置100で撮像され、撮像装置100もしくは撮像装置100に接続された携帯端末等から送信された画像データを受信し、データ格納部303に格納する。また、データ処理部302は、データ格納部303に格納された画像データに基づいて、各種の画像をシーケンシャルに作成し、作成された各種の画像を出力する処理を実行する。
【0034】
<ひび割れ検出装置>
次に、図2及び図3を参照して、実施形態に係るひび割れ検出装置の一例について説明する。
【0035】
(ひび割れ検出装置のハードウェア構成)
まず、図2を参照して、ひび割れ検出装置のハードウェア構成の一例について説明する。図2に示すように、ひび割れ検出装置300は、CPU(Central Processing Unit)401、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403、補助記憶部404、表示部405、及び通信部406を有し、各部はバス407を介して相互に接続されている。
【0036】
CPU401は、補助記憶部404にインストールされた各種プログラムを実行する。ROM402は不揮発性メモリであり、補助記憶部404に格納された各種プログラムをCPU401が実行するために必要な各種プログラムやデータ等を格納する主記憶部として機能する。RAM403は揮発性メモリであり、主記憶部として機能する。RAM403は、補助記憶部404に格納された各種プログラムがCPU401に実行される際の作業領域として機能する。補助記憶部404は、ひび割れ検出装置300にインストールされた各種プログラムや、各種プログラムを実行する際に用いるデータ等を格納する。
【0037】
表示部405は、各種画面を表示する。例えば、撮像装置100から送信されてきた画像データを撮影画像として表示し、その他、入力画像やウェーブレット画像、二値化画像、ひび割れ画像、及びセグメンテーション画像、各ラベルのひび割れ方向を示す出力シートや全体ひび割れ状態を示す出力シート等を表示する。
【0038】
通信部406は、撮像装置100もしくは撮像装置100と接続される携帯端末等と接続し、撮像装置100等から画像データを受信したり、ひび割れ検出装置300にて特定され、作成された各ラベルのひび割れの方向やひび割れ幅等を撮像装置100に接続された携帯端末等に送信する。
【0039】
(ひび割れ検出装置の機能構成)
次に、図3を参照して、ひび割れ検出装置の機能構成の一例について説明する。図3に示すように、撮像装置100から送信された画像データは、データ収集部301にて受信され、データ収集部301からデータ格納部303に一時的に格納される。データ処理部302による解析の実行に当たり、データ格納部303に格納されている画像データは、データ処理部302における入力部502に取り込まれる。
【0040】
データ処理部302は、入力部502、入力画像作成部504、ウェーブレット画像作成部506、ウェーブレット係数テーブル作成部508、二値化画像作成部510、ひび割れ画像作成部512、セグメンテーション画像作成部514、ひび割れ方向分類部520、全体ひび割れ状態分類部525、機械学習部530,及び描画部532を有する。セグメンテーション画像作成部514は、端点間距離特定部515,判定部516,及び描画部517を有する。ひび割れ方向分類部520は、分割ひび割れ作成部521、ひび割れ方向判定部522を有する。
【0041】
入力部502は、データ格納部303に格納されている画像データに基づく撮影画像を取り込む。データ格納部303には、様々なコンクリート表面の画像データが格納されているが、解析者による指定により、解析対象となる画像データに基づく撮影画像が選択され、入力部502に取り込まれて入力される。
【0042】
入力画像作成部504は、入力部502に入力された撮影画像に対し、必要に応じて撮影画像の輝度を補正して入力画像を作成する。例えば、輝度は輝度値0乃至255の256階調を有しているが、入力画像作成部504には、予め、解析者によって所定の輝度補正値が入力されている。例えば、入力画像作成部504に輝度補正値として150が入力されている場合、入力画像作成部504は、入力部502から取り込んだ撮影画像の輝度を特定し、撮影画像の輝度が輝度補正値である150になるように輝度補正処理をおこない、入力画像を作成する。尚、このような輝度補正の実行の有無は任意である。
【0043】
ここで、機械学習部530における学習情報に基づいて、入力画像においてひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、この想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像を描画部532にて作成してもよい。
【0044】
描画部532は、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、この想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、この想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像を作成する。
【0045】
ここで、機械学習部530における学習情報について概説する。まず、データ格納部303には、多様なコンクリート表面画像に関する特徴データベースが格納されている。このコンクリート表面画像の上には、解析者がひび割れであると判断するひび割れラインが描画されている。従って、格納されているコンクリート表面画像には、撮影画像と、描画されたひび割れラインが内包されている。機械学習部530では、データ格納部303に入力されているコンクリート表面画像と、コンクリート表面画像中に描画されているひび割れラインとに基づき、各々のコンクリート表面画像においてひび割れの特徴を機械学習させた関数やひび割れの特徴を示すモデルを作成する。
【0046】
ひび割れの特徴を機械学習させた関数やひび割れの特徴を示すモデルは、例えばニューラルネットワークを用いた教師付きの学習等、既存の技術を用いて作成することができるが、その作成手法は特に限定されない。機械学習部530において機械学習を繰り返すことにより、多様なコンクリート表面画像における多様なひび割れパターンが学習される。コンクリート表面画像に対して学習されたひび割れパターンに関する学習データは、再度データ格納部303に格納される。
【0047】
コンクリート表面におけるひび割れの特徴を学習したコンピュータがこの学習情報に基づいて描画した描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行して二値化画像及びひび割れ画像を作成することにより、高い精度でひび割れの検出を行うことが可能になる。
【0048】
また、その他、入力画像に対して、ひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像を作成してもよい。ひび割れ想定線に沿ってパスを作成し、パスに付したひび割れを覆う面を作成することにより、入力画像においてひび割れ位置を指定することができる。具体的には、市販の画像編集ソフトを使用し、たとえば1ピクセルの線や面からなるパスを作成する。そして、パス画像は、たとえば1ピクセル幅の線からなるパスに対し、その左右両側1ピクセル幅もしくは2ピクセル幅を加えた3ピクセル幅もしくは5ピクセル幅からなる面をパスに付したひび割れを覆う面とする。
【0049】
ひび割れ想定線に沿ってラフなパス(ひび割れ想定線の幅よりも数ピクセル幅の大きなパス)を作成してひび割れ位置を指定していることにより、パスからひび割れ想定線がはみ出してひび割れと判定されないといった不具合が生じることも解消され、パスがラフゆえにパスの作成も効率的におこなうことができ、パスの作成(ひび割れ位置の特定)に長い時間を必要としない。さらに、ひび割れ想定線にラフなパスを作成し、ウェーブレット変換した後に細線化処理をおこなうことで、ひび割れをより一層精度よく特定することが可能になる。
【0050】
ウェーブレット画像作成部506は、入力画像作成部504において作成された入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行することにより、ウェーブレット画像を作成する。ウェーブレット(wavelet)とは、小さな波という意味であり、局在性を持つ波の基本単位を、ウェーブレット関数を用いた式で表現することができる。このウェーブレット関数を拡大または縮小することにより、時間情報や空間情報と周波数情報を同時に解析することが可能になる。このウェーブレット係数を、ひび割れを有するコンクリート表面に適用する場合のこの係数の特徴としては、コンクリート表面の濃度と、ひび割れの濃度と、ひび割れの幅(もしくは広さ)に依存するということである。例えば、ひび割れの幅が大きくなるにつれてウェーブレット係数の値は大きくなる傾向があり、また、ひび割れの濃度が濃くなるにつれて(黒色に近づくにつれて)ウェーブレット係数の値は大きくなる傾向がある。ウェーブレット変換処理によって算定されるウェーブレット係数を用いて、二値化画像を作成するアルゴリズムについては以下で詳説する。
【0051】
ウェーブレット係数テーブル作成部508は、ウェーブレット画像から二値化画像を作成する際の閾値となるウェーブレット係数を作成する。ウェーブレット係数は、上記するようにひび割れの幅やひび割れの濃度、コンクリート表面の濃度によって変化することから、擬似的に作成されたデータを用いてひび割れの濃度とコンクリート表面の濃度に関するウェーブレット係数を各階調毎に算定しておき、ウェーブレット係数テーブルを作成する。例えば、対比される2つの濃度(一方の濃度をコンクリート表面の濃度、他方の濃度をひび割れの濃度と仮定することができる)に対応するウェーブレット係数(閾値)が、ウェーブレット係数テーブルを参照すれば一義的に決定される。
【0052】
二値化画像作成部510は、ウェーブレット画像作成部506で作成されたウェーブレット画像の各画素と、ウェーブレット係数テーブル作成部508で作成された閾値となるウェーブレット係数とを比較演算する二値化処理を実行する。例えば、ウェーブレット画像を構成する各画素のウェーブレット係数値が、ウェーブレット係数テーブルの閾値よりも大きい場合は当該画素がひび割れであると判断して1を割り当て、閾値よりも小さい場合は当該画素がひび割れでないと判断して0を割り当てる二値化処理を実行する。したがって、二値化画像は、各画素が0と1のいずれかで表現された画像となる。
【0053】
ひび割れ画像作成部512は、二値化画像に対して輪郭線追跡処理を行い、さらに細線化処理を行うことにより、ひび割れ画像を作成する。
【0054】
輪郭線追跡処理は、ある任意の画素(ひび割れと判断されている画素)から出発して、隣接する画素がひび割れ箇所の場合には出発画素と接続し、さらに隣接する画素がひび割れ箇所の場合にはさらに双方を接続し、最終的に出発画素に閉合した場合(例えば、第1画素、第2画素、…、第n-1画素、第n画素、第1画素の順に接続される場合)や、次に繋がるひび割れ箇所が存在しなくなった場合に終了する。この輪郭線追跡処理では、ループ状に閉合するようなひび割れラインや、複数の屈曲部を備えて線状に伸びるひび割れラインなど、適宜のひび割れラインが作成される。この際、繋げられる画素数の最小数を所定の値に設定しておくことで、この設定数以下の画素はすべてひび割れでないとして、画面のひび割れ表示から削除することができる。
【0055】
この輪郭線追跡処理により、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、このラベリングの過程で大きなノイズの除去が実行される。
【0056】
輪郭線追跡処理に続いて、細線化処理を行う。細線化処理は、その中心線で構成され、ひび割れ全体がたとえば1ピクセル幅を有するひび割れとする処理であり、この処理により小さなノイズの除去を実行できる。
【0057】
このように、二値化画像に対して輪郭線追跡処理を行い、さらに細線化処理を行うことにより、ラベリングされた複数のひび割れを備えるひび割れ画像が作成される。
【0058】
作成されたひび割れ画像は、ピクセル単位での高精度なひび割れ画像となる。ところで、物理的に端点同士が離れているひび割れであっても、本来的には連続したひび割れであると判定できる関係のひび割れは、同一ラベルのひび割れとして出力することにより、点検者が実際に点検してひび割れを判定する場合と同様のひび割れ検出の出力が可能になることから望ましい。そこで、セグメンテーション画像作成部514では、ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する。
【0059】
より詳細には、セグメンテーション画像作成部514は、端点間距離特定部515、判定部516、及び描画部517を有する。
【0060】
端点間距離特定部515は、ひび割れ画像において、分離している複数のひび割れのうち、相互に近接している端点間の距離を特定する。例えば、一方のひび割れの端点が隣接する他方のひび割れの途中と交差している場合であっても、双方の近接する端点同士は分離していることから、このような分離形態においても端点間距離を特定する。
【0061】
判定部516は、端点間距離に関する閾値と、端点間距離とを比較し、端点間距離が閾値以下の場合に、端点間距離が特定された二つのひび割れが、本来的には連続したひび割れであるとして双方を同一ラベルのひび割れであると判定する。
【0062】
ここで、端点間距離に関する閾値の設定方法は、集積された過去のコンクリート表面上におけるひび割れ検出結果に基づいて、相互に離間していても同一ラベルのひび割れである可能性が高い(例えば70%以上の可能性)の離間(例えば3cm)を特定し、閾値に設定できる。また、相互に離間しているひび割れの端点における幅もさらに考慮し、端点の幅と離間の双方に基づいて閾値を設定してもよい。
【0063】
さらに、閾値の設定は、機械学習部530により行うこともできる。機械学習部530では、相互に離間しているひび割れ同士が、本来的には連続したひび割れであると判断できる場合のひび割れの組み合わせ(双方のひび割れの線形、端点のひび割れ幅等も含まれる)と、その際の端点間距離に関する過去の多数のデータを利用して、機械学習させた関数等に基づいて設定してもよい。
【0064】
機械学習させた関数は、例えばニューラルネットワークを用いた教師付きの学習等、既存の技術を用いて作成することができるが、その作成手法は特に限定されない。機械学習部530において機械学習を繰り返すことにより、多様なコンクリート表面画像における多様なひび割れパターンに基づいて、離間したひび割れパターンに応じた最適な閾値が学習され、設定される。
【0065】
判定部516では、上記するように、相互に分離したひび割れの端点間距離と閾値を比較してセグメンテーション画像を作成する。
【0066】
ここで、セグメンテーション画像は、描画部517において自動的にひび割れ同士を繋ぐことにより作成される。尚、解析者が画像編集ソフト(手書きソフト)を使用してひび割れ同士を繋ぐことにより作成してもよい。後者の場合は、判定部516による判定の結果、相互に繋がれるべきひび割れの端点同士が画面上に表示されることにより、解析者は表示された端点同士を繋ぐことができる。
【0067】
上記するように、判定部516において、端点間距離と閾値の比較のみを行う判定方法の他に、端点間距離と閾値の比較によって端点間距離が閾値以下と判定された際に、続いて、双方のひび割れの端点近傍における方向性(ベクトル)を検証し、双方のベクトルが連続性を有すると判断できる場合に、同一ラベルのひび割れであると判定する判定方法を実行することもできる。すなわち、判定部516では、これらのいずれか一方の方法で判定することができ、解析者は、選択的に判定部516における判定アルゴリズムを選択することができる。例えば、端点間距離と閾値の比較のみによる判定を簡易判定とすることができ、端点間距離と閾値の比較に加えて、双方のひび割れの端点近傍のベクトルに基づいて連続性を特定する判定を詳細判定とすることができる。
【0068】
仮に端点間距離が閾値以下であっても、双方のひび割れの端点近傍のベクトルに基づけば明らかに同一ラベルのひび割れであると判定できない場合には、点検者が実際に点検する際に双方を同一ラベルのひび割れであるとは判定しないのが一般的である。従って、この詳細判定により、より高い精度でセグメンテーション画像を作成することが可能になる。尚、詳細判定における、双方のひび割れの端点近傍のベクトルに基づく連続性の判定方法については、以下で詳説する。
【0069】
作成されたひび割れ画像とセグメンテーション画像のいずれか一方もしくは双方は、解析者が所望により選択的に出力することができる。また、出力の一例であるひび割れ分布図において、ひび割れ一本ごとのひび割れ幅(最大ひび割れ幅)をひび割れの側方に付記することにより、コンクリート表面における各ひび割れの分布状況と各ひび割れの損傷状況を一画面で確認することができる。
【0070】
ひび割れ方向分類部520、セグメンテーション画像に含まれる多数のひび割れの個々のひび割れの方向を判定する。このひび割れ方向の判定に際しては、ひび割れを複数の分割ひび割れに分割し、分割ひび割れごとにその方向を判定する。ひび割れ方向分類部520は、分割ひび割れ作成部521とひび割れ方向判定部522を有する。
【0071】
分割ひび割れ作成部521は、セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、ひび割れの総延長を所定数(所定のピクセル数)で分割して複数の分割ひび割れを作成する。この所定数は、解析者の所望により設定してよい。
【0072】
例えば、分割ひび割れの長さを3ピクセルと最小長さにすることにより、ひび割れ方向の特定精度は最もよくなるが、その一方で、1本のひび割れの長さが長い場合に分割ひび割れの数が多くなることから、精度と解析効率の双方の観点から様々な長さの分割ひび割れを作成してよい。
【0073】
尤も、以下で説明するように、始点と終点から分割ひび割れの方向を特定するアルゴリズムに照らせば、分割ひび割れの長さが長すぎると、1つの分割ひび割れの中に複数のベクトル(方向)が内包される可能性があり、ひび割れ方向の特定精度が低下することから、分割ひび割れの長さはせいぜい10ピクセルまでとするのが望ましい。
【0074】
ひび割れ方向判定部522は、各ラベルのひび割れを構成する複数の分割ひび割れのそれぞれの方向を、分割ひび割れの始点と終点の座標を用いて判定し、全ての分割ひび割れの方向に基づいてひび割れの方向を判定する。
【0075】
分割ひび割れの方向は、その始点と終点の座標を繋ぐ直線方向を分割ひび割れの方向とする。そして、1本のひび割れを構成する全ての分割ひび割れの方向をこの方法で判定した後、全ての分割ひび割れの方向のうち、5割以上の割合を占める方向がある場合は、この方向をひび割れの方向として判定する。対して、5割以上の割合を占める方向がない場合は、判別不能とし、主たる方向を備えていないひび割れと判定する。
【0076】
このように、ひび割れ方向分類部520により、セグメンテーション画像に存在する全てのひび割れに関し、各ラベルのひび割れ毎にひび割れ方向を判定する。
【0077】
全体ひび割れ状態分類部525は、全てのラベルのひび割れが、一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを分類する。具体的には、全てのラベルのひび割れに含まれる、全ての分割ひび割れの方向に基づいて、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合を超える場合に一方向ひび割れに分類し、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合以下の場合に二方向ひび割れに分類する。
【0078】
この所定割合の設定は、過去の文献や経験則等に基づき、例えば55%、60%等に設定してよい。また、その他、全体ひび割れ状態の分類に際して使用頻度の高い、橋梁定期点検要領に記載される、床版ひび割れの損傷程度の評価区分等を参照に分類してもよい。この場合は、評価区分に記載される一方向ひび割れと二方向ひび割れに関する図面データをデータ格納部303に記憶しておき、全体ひび割れ状態分類部525が例えば機械学習部530を起動させて、図面データとセグメンテーション画像の全体を比較させ、一方向ひび割れと二方向ひび割れの判定を行うことができる。
【0079】
<ひび割れ検出方法>
次に、図4乃至図17を参照して、実施形態に係るひび割れ検出方法の一例について説明する。ここで、図4は、実施形態に係るひび割れ検出方法の一例を示すフローチャートであり、ひび割れ検出装置300における処理の流れを示している。
【0080】
ステップS700において、入力部502に取り込まれた画像データに基づき、入力画像作成部504において入力画像を作成する(入力画像作成工程)。
【0081】
入力画像に関し、例えば輝度の補正処理を要する場合は輝度補正処理を実行して入力画像を作成し、輝度の補正処理が不要な場合は撮影画像をそのまま入力画像とする。256階調の輝度のうち、その中央値である128を含む120乃至160程度の範囲内で解析者が最適と判断する輝度を設定しておく。撮影画像の輝度が設定されている輝度と符合しない場合、撮影画像に対して輝度の補正処理を実行し、設定されている輝度を有する入力画像を作成する。
【0082】
ステップS702において、ウェーブレット画像作成部506に入力画像を取り込み、入力画像に対してウェーブレット変換処理を実行することにより、ウェーブレット画像を作成する。この際、コンクリート表面におけるひび割れの特徴をコンピュータに学習させた学習情報に基づいて、入力画像からひび割れと想定される想定ひび割れを抽出し、想定ひび割れに沿って描画して想定ひび割れ描画ラインを作成し、想定ひび割れ描画ラインを含む描画含有画像に対してウェーブレット変換処理を実行することにより、ウェーブレット画像を作成してもよい。また、入力画像に対して、ひび割れと想定されるひび割れ想定線に沿って付されたパスを含むパス画像を作成し、パス画像に対してウェーブレット変換処理を実行することにより、ウェーブレット画像を作成してもよい(ウェーブレット画像作成工程)。
【0083】
ここで、ウェーブレット変換処理について説明する。図5Aは、ウェーブレット変換処理における、入力画像と局所領域の関係の一例を示す図である。また、図5Bは、ウェーブレット変換処理における、局所領域と注目画素の関係の一例を示す図である。入力画像1における広域領域2の中心である局所領域3においてウェーブレット変換をおこない、当該局所領域3の中心でひび割れの検出を行うものである。入力画像1内をくまなく広域領域2を上下左右に平行移動して、入力画像1内におけるひび割れの検出を行う。
【0084】
図5Bは局所領域3を拡大した図である。図示する実施形態では、例えば3×3の9つの画素(8つの近傍画素31,31,…と、中央に位置する注目画素32)の中心でひび割れの判定を行う。尚、ウェーブレット係数の算定は、図5Aにおける局所領域3を対象として行う。以下に、ウェーブレット関数(マザーウェーブレット関数)を用いたウェーブレット変換を行うことによりウェーブレット係数を算定する算定式を示す。
【0085】
【数1】
【0086】
【数2】
【0087】
【数3】
【0088】
ここで、f(x、y)は、入力画像(ここで、x、yは2次元入力画像中の任意の座標である)を、Ψは、マザーウェーブレット関数(ガボール関数)を、(x、y)はΨの平行移動量を、それぞれ示している。また、aは、Ψの拡大や縮小を(ここで、aは周波数の逆数であって、幾つかの周波数領域について計算するための周波数幅を整数kで示した値)、fは、中心周波数を、σは、ガウス関数の標準偏差を、それぞれ示している。さらに、θは、波の進行方向を表す回転角を、(x'、y')は、(x、y)を角度θだけ回転させた座標を、それぞれ示している。
【0089】
数式1を用いて計算した複数のθ、kに対して、ウェーブレット係数Ψの累計値C(x、y)を求める式が以下の数式4となる。
【0090】
【数4】
【0091】
上記のパラメータは任意に設定できるが、例えば、σを0.5乃至2に、aは0乃至5に、fは0.1に、回転角は0乃至180度に、それぞれ設定できる。数式4における平行移動量(x、y)は、注目画素の位置に対応するものであり、注目画素の位置を順次移動させることにより、ウェーブレット係数の連続量(C(x、y))が算定できる。
【0092】
局所領域3を構成する全画素に対して、ウェーブレット係数を上算定式に基づいて算定した後、注目画素を一つ左右または上下に移動させてできる広域領域2の全画素において同様にウェーブレット係数を算定する。
【0093】
ウェーブレット画像の作成に当たり、ウェーブレット係数テーブル作成部508にてウェーブレット係数テーブルの作成を実行する。ウェーブレット係数テーブルの作成では、入力画像とは何らの関係もない、対比する2つの濃度からなる擬似画像に対して、ウェーブレット係数の算定を行う。例えば、図6に示すように、コンクリート表面と仮定される背景色a(例えば、背景色のR、G、Bが、255,255,255とする)と、ひび割れと仮定される線分b1~b5からなる擬似画像のウェーブレット係数を求める。ここで、線分b1~b5は、線幅が順に1ピクセル~5ピクセルまで変化しており、さらに、各線分は、3種類の濃度を備えている(例えば、線分b1では、濃度の濃い順に、b11(黒色)、b12(薄い黒色)、b13(灰色)と変化している)。
【0094】
この擬似画像に対してウェーブレット変換を行うことにより算定されるウェーブレット係数の鳥瞰図を図7に示す。図7において、X軸は線分の幅を、Y軸は線分の色の濃度を、Z軸はウェーブレット係数をそれぞれ示している。同時に、対比する2つの濃度の組み合わせをそれぞれ0乃至255の256階調で行うことにより、図8に示すようなウェーブレット係数テーブルの作成が行われる。
【0095】
尚、ウェーブレット係数テーブルの作成のタイミングは、後述する二値化画像の作成までのいずれのタイミングでもよい。例えば、撮影画像の入力後に行ってもよいし、ウェーブレット画像の作成と並行して行ってもよいし、ウェーブレット画像を作成した後でかつ二値化画像の作成前に行ってもよい。
【0096】
ステップS704において、二値化画像作成部510にて二値化画像の作成を実行する(二値化画像作成工程)。
【0097】
ウェーブレット係数テーブル内において、局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数をウェーブレット係数に関する閾値とする。そして、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は注目画素をひび割れと判定し(画面上では例えば白色)、小さな場合は注目画素をひび割れでないと判定する(画面上では例えば黒色)。局所領域および注目画素を変化させながら、注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較演算を実行することにより、二値化画像が作成される。
【0098】
ステップS706において、ひび割れ画像作成部512に二値化画像を取り込み、幾何学的な連結性を備えた塊状の図形を個々のひび割れにラベリングし、ラベリングされた複数のひび割れを備えるひび割れ画像を作成する(ひび割れ画像作成工程)。
【0099】
上記するように、ひび割れ画像作成工程では、二値化画像に対して輪郭線追跡処理を行い、さらに細線化処理を行うことにより、大小のノイズを除去しながらひび割れ画像を作成する。
【0100】
ステップS708において、セグメンテーション画像作成部514にひび割れ画像を取り込み、ひび割れ画像において、相互に分離している複数のひび割れのうち、本来的には連続したひび割れであると判定されるひび割れの端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する(セグメンテーション画像作成工程)。
【0101】
セグメンテーション画像作成工程は、端点間距離特定工程と、判定工程と、描画工程とを有する。
【0102】
端点間距離特定工程は、端点間距離特定部515において、相互に分離しているひび割れの端点間の端点間距離を特定する。ひび割れ画像には、多数の相互に分離しているひび割れ(の組み合わせ)が存在することから、全ての相互に分離しているひび割れの端点間の距離を特定する。
【0103】
判定工程は、判定部516において、端点間距離に関する閾値と、端点間距離とを比較し、端点間距離が閾値以下の場合に、端点間距離が特定された二つのひび割れが、本来的には連続したひび割れであるとして、同一ラベルのひび割れと判定する。この閾値の設定方法には、上記するように、過去の実績に基づいて設定する方法や、機械学習部530において過去の実績を機械学習させることにより設定する方法等がある。
【0104】
描画工程は、同一ラベルのひび割れであると判定された二つのひび割れに関して、双方の端点同士を繋いでセグメンテーション画像を作成する。描画工程における描画方法は、上記するように、描画部517にて自動的にひび割れ同士を繋ぐことにより作成される。尚、解析者が手書きソフトを使用してひび割れ同士を繋ぐことにより作成してもよい。
【0105】
ここで、判定工程における上記判定方法は、端点間距離と閾値の比較のみを行う簡易判定であるが、端点間距離と閾値の比較によって端点間距離が閾値以下と判定された際に、続いて、双方のひび割れの端点近傍における方向性(ベクトル)を検証し、双方のベクトルが連続性を有すると判断できる場合に、同一ラベルのひび割れであると判定する詳細判定を行うこともできる。解析者は、選択的に判定部516における判定アルゴリズムを選択することができる。
【0106】
ここで、図9乃至図11を参照して、詳細判定の内容を説明する。図9(a)は、相互に分離しているひび割れが、本来的には連続したひび割れであると判定される例を示す模式図であり、図9(b)と図9(c)はいずれも、相互に分離しているひび割れが、本来的には連続したひび割れではないと判定される例を示す模式図である。また、図10(a)、(b)、(c)はいずれも、図9(a)を用いて、判定部において、端点間距離が閾値以下の場合にさらに実施される判定例を示す模式図である。さらに、図11(a)と図11(b)はそれぞれ、図9(b)と図9(c)を用いて、判定部において、端点間距離が閾値以下の場合にさらに実施される判定例を示す模式図である。
【0107】
図9(a)乃至図9(c)において、相互に分離するひび割れC1、C2の端点P1,P2の端点間距離t1、ひび割れC3、C4の端点P3,P4の端点間距離t2、ひび割れC5、C6の端点P5,P6の端点間距離t3はいずれも、設定されている閾値以下であるものとする。
【0108】
図9(a)において、ひび割れC1、C2のそれぞれの端点近傍(例えば、端点P1,P2から5ピクセル程度ひび割れの内側から端点P1,P2の範囲)のベクトルV1,V2は、相互に平行もしくは略平行(平行から30度乃至45度程度ずれている)であって、端点P1,P2同士が相互に交わる可能性のある方向に延設していると外見上は判断できる。そこで、同一ラベルのひび割れであるか否かの判定方法として、一方のひび割れの端点に無端状の輪郭範囲を設定し、この設定された無端状の輪郭範囲に他方のひび割れの端点が入る場合に双方のひび割れを同一ラベルのひび割れであると判定し、無端状の輪郭範囲に入らない場合は同一ラベルのひび割れではないと判定する方法を適用する。
【0109】
無端状の輪郭形状を様々に変化させた例を図10(a)乃至図10(c)に示す。図10(a)に示す例は、無端状の輪郭範囲として、所定長さr1の一辺を備える正三角形(正多角形の一例)を適用した例であり、図10(b)は、無端状の輪郭範囲として、所定長さr1の一辺を備える正方形(正多角形の一例)を適用した例であり、図10(c)は、無端状の輪郭範囲として、所定長さr1の直径を備える円形を適用した例である。
【0110】
無端状の輪郭範囲を規定する所定長さr1の設定は、過去のひび割れ検出方法における実績に基づき、相互に分離していても同一ラベルのひび割れであると判定できるひび割れの端点間距離から設定でき、例えば閾値と同値に設定することもできる。
【0111】
図10(a)においては、正三角形の頂点を一方のひび割れC1の端点P1に位置決めし、一方のひび割れC1の端点P1から端点近傍のベクトルV1を延ばした仮想延長線と正三角形の底辺の中点が交差するように正三角形を設定することにより、この正三角形はベクトルV1の延長線を中心に左右30度範囲を輪郭範囲A1とする。図10(a)では、正三角形の輪郭範囲A1に他方のひび割れC2の端点P2が入ることから、ひび割れC1、C2を同一ラベルのひび割れであると判定できる。
【0112】
一方、図10(b)においては、正方形の一つの隅角部を一方のひび割れC1の端点P1に位置決めし、一方のひび割れC1の端点P1から端点近傍のベクトルV1を延ばした仮想延長線上に正方形の上記一つの隅角部と対角位置にある他の隅角部を位置決めして正方形を設定することにより、この正三角形はベクトルV1の延長線を中心に左右45度範囲を輪郭範囲A2とする。図10(b)では、正方形の輪郭範囲A2に他方のひび割れC2の端点P2が入ることから、ひび割れC1、C2を同一ラベルのひび割れであると判定できる。
【0113】
さらに、図10(c)においては、円形の円周上の一点を一方のひび割れC1の端点P1に位置決めし、一方のひび割れC1の端点P1から端点近傍のベクトルV1を延ばした仮想延長線上に円形の上記一点と直径の両端位置関係にある他点を位置決めして円形を設定することにより、輪郭範囲A3の円形をベクトルV1の延長線方向に設定できる。図10(c)では、円形の輪郭範囲A3に他方のひび割れC2の端点P2が入ることから、ひび割れC1、C2を同一ラベルのひび割れであると判定できる。
【0114】
尚、無端状の輪郭範囲は、正方形や正三角形以外の多角形でもよく、円形の他に、楕円形等であってもよいが、正方形や正三角形が多角形の中でも輪郭範囲を明確に規定し易いこと、円形も図示例のようにベクトル方向に配設できてその半径や直径の設定によって輪郭範囲を明確に規定し易いことから、図示例の図形が好ましい。
【0115】
また、一方のひび割れの端点に無端状の輪郭範囲を設定した際に他方のひび割れの端点が入らない場合には、逆のケースとして、他方のひび割れの端点に無端状の輪郭範囲を設定し、一方のひび割れの端点が入るか否かを照査し、入る場合は、双方のひび割れを同一ラベルのひび割れであると判定し、入らない場合(いずれのケースともに無端状の輪郭範囲に隣接するひび割れの端点が入らない場合)は、双方のひび割れを同一ラベルのひび割れでないと判定することができる。
【0116】
一方、図11(a)は、図9(b)のモデルに対して正三角形の輪郭範囲を規定した場合を示しており、図11(b)は、図9(c)のモデルに対して円形の輪郭範囲を規定した場合を示している。
【0117】
図11(a)、図11(b)はそれぞれ、一方のひび割れC3,C5の端点P3,P5に設定された正三角形と円形の輪郭範囲A1,A3に、他方のひび割れC4,C6の端点P4,P6が入らないこと、その逆のケースである、他方のひび割れC4,C6の端点P4,P6に設定された正三角形と円形の輪郭範囲A1,A3に、一方のひび割れC3,C5の端点P3,P5が入らないことから、ひび割れC3,C4、ひび割れC5,C6ともに、同一ラベルのひび割れではないと判定する。
【0118】
このように、判定工程において、詳細判定にて同一ラベルのひび割れか否かを判定することにより、より一層高い精度でセグメンテーション画像を作成することが可能になる。
【0119】
図4に戻り、ステップS710において、セグメンテーション画像に内包される各ひび割れのひび割れ方向の分類を行う(ひび割れ方向分類工程)。ここで、図12は、実施形態に係るひび割れ検出方法における、ひび割れ方向分類工程の一例を示すフローチャートである。また、図13A図13Bはともに、ひび割れ方向分類工程における分割ひび割れ作成工程の一例を説明する説明図であり、図13C図13Dはともに、ひび割れ方向分類工程におけるひび割れ方向判定工程の一例を説明する説明図である。さらに、図14は、ひび割れ方向分類工程において作成された出力シート一覧の一例を、検出対象のひび割れを内包するコンクリート表面の画像とともに示す図であり、図15は、図14におけるコンクリート表面の画像におけるXV部分を拡大した画像と、この画像に含まれるラベルのひび割れの出力結果を示す図である。
【0120】
図12におけるフローチャートのうち、ステップS800乃至ステップS804までのフローが分割ひび割れ作成工程に含まれ、ステップS806乃至ステップS814までのフローがひび割れ方向判定工程に含まれる。
【0121】
まず、セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れの方向を判定するに当たり、各ラベルのひび割れ毎に、ひび割れの総延長を所定数で分割することにより、分割ひび割れの目安長さを設定する。図示例では、この所定数を「11(11ピクセル)」に設定し、ひび割れの総延長を11で分割することにより、分割ひび割れの目安長さを設定する(ステップS800)。
【0122】
図13Aは、エクセルシートの一例として、セグメンテーション画像における「ラベル2」のひび割れのうち、No7のセグメント~No9のセグメントの計37のピクセルを11で分割することにより、「3(ピクセル)」を算定し、この「3」を分割ひび割れの長さ(目安長さ)に設定している。尚、図では、各ピクセルの番号の横に、X座標とY座標が示されている。
【0123】
図12に戻り、ひび割れの総延長を11で分割した際に、目安長さが10ピクセル以下の条件を満たしているか否かを照査し(ステップS802)、10ピクセルを超える場合は、分割ひび割れをさらに2乃至10(ピクセル)で分割し(ステップS804)、目安長さが10ピクセル以下を満たすまでこの操作を繰り返し実行する。例えば、総延長が220の場合は、220/11=20となるが、20は10を超えるため、さらに20を2乃至10の範囲の所定値(例えば「2」)で分割することにより、20/2=10として「10」を目安長さに設定する。
【0124】
目安長さが10ピクセル以下の条件を満たす場合は、各セグメントの端部において目安長さ未満の値を除外する(ステップS806)。例えば、図13Bに示すように、No7 10はNo7セグメントを3ピクセルごとの分割ひび割れに分割した際の端数となることから、端数は除外する。尚、図13Bでは、着色の欄は除外される端数を示している。
【0125】
次に、分割ひび割れごとの終点と始点で分割ひび割れの方向を判定する(ステップS808)。具体的には、図13Cに示すように、各分割ひび割れの始点のX、Y座標と終点のX,Y座標に基づいて分割ひび割れの方向を判定する。図13Cでは、No7セグメントの最初の分割ひび割れの方向を、その始点と終点の座標に基づき90度と判定する。
【0126】
このように、各セグメントに含まれる各分割ひび割れの方向を判定することにより、図13Dに示すように分割ひび割れ毎の方向が判定される。
【0127】
図12に戻り、各ラベルのひび割れに関し、全ての分割ひび割れの方向のうちで5割以上の割合を占める方向があるか否かを照査し(ステップS810)、5割以上の割合を占める方向がある場合は、当該方向を当該ラベルのひび割れの方向として判定し、ひび割れの方向として、方向記号を出力シートに入力する。具体的には、図14では、その左欄にラベル1のひび割れに関する各ピクセルの座標を示しており、その右欄には、各ラベルのひび割れ総延長と平均ひび割れ幅、最大ひび割れ幅に加えて、ひび割れの方向記号を含む一覧を示している。尚、図14の右欄下方には、この一覧の対象となっているコンクリート表面の全体写真図を示している。
【0128】
ここで、5割以上の割合を占める方向がない場合は、判別不能とし(ステップS812)、図14におけるひび割れの方向記号として「×」を入力する。
【0129】
図15は、図14のXV部の拡大写真図と、この拡大写真図に含まれるラベル1-5の結果一覧を示している。
【0130】
ひび割れ方向分類工程によれば、セグメンテーション画像における各ラベルのひび割れ毎に、ひび割れの総延長を所定数で分割して複数の分割ひび割れを作成し、各ラベルのひび割れを構成する各分割ひび割れの方向をその始点と終点の座標を用いて判定し、全ての分割ひび割れの方向に基づいてひび割れの方向を判定することにより、ひび割れ1本ごとの方向を高い精度で分類することが可能になる。
【0131】
図4に戻り、ステップS712において、セグメンテーション画像における全体ひび割れ状態の分類を行う。より具体的には、セグメンテーション画像における全てのラベルのひび割れが、一方向ひび割れと二方向ひび割れのいずれであるかを分類する(全体ひび割れ状態分類工程)。
【0132】
全体ひび割れ状態分類工程では、全てのラベルのひび割れに含まれる、全ての分割ひび割れの方向に基づいて、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合を超える場合に一方向ひび割れに分類し、主たるひび割れ方向のひび割れの割合が所定割合以下の場合に二方向ひび割れに分類する。
【0133】
ここで、主たるひび割れ方向のひび割れの割合に関する「所定割合」は、過去の文献や経験則等に基づき、例えば55%、60%等に設定することができる。すなわち、例えば、60%を所定割合に設定した際に、この60%を超える割合のひび割れ方向のひび割れがある場合は、セグメンテーション画像における全体ひび割れ状態を一方向ひび割れとすることができる。一方、全てのひび割れのひび割れ方向が60%以下の場合は、セグメンテーション画像における全体ひび割れ状態を二方向ひび割れとすることができる。
【0134】
ここで、図16は、例えば図14に示す各ラベルのひび割れの方向を、X方向とY方向と斜め方向に分類し、それらの割合を示している。図示例では、3方向がほぼ均等の割合を占めており、従って、所定割合を55%と設定した際に、最大の割合:斜め方向の36%が55%未満であることから、二方向ひび割れと判定することができる。
【0135】
また、その他、全体ひび割れ状態の分類に際して使用頻度の高い、橋梁定期点検要領に記載される、床版ひび割れの損傷程度の評価区分等を参照に分類してもよい。
【0136】
ここで、図17は、全体ひび割れ状態分類工程において評価基準の一例として適用する、橋梁定期点検要領(国土交通省道路局国道技術課、平成31年3月)に記載される、床版ひび割れの損傷程度の評価区分を示す図である。
【0137】
図16に示す各方向の割合と図17を比較した結果、図17に示す右欄中央の二方向ひび割れに該当すると判定できる。尚、評価区分に記載される一方向ひび割れと二方向ひび割れに関する図面データをデータ格納部303に記憶しておき、全体ひび割れ状態分類部525が例えば機械学習部530を起動させて、図面データと図16の判定結果を比較し、評価区分における該当項目を判定することもできる。
【0138】
以上、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
100:撮像装置
200:ネットワーク
300:ひび割れ検出装置
301:データ収集部
302:データ処理部
303:データ格納部
504:入力画像作成部
506:ウェーブレット画像作成部
508:ウェーブレット係数テーブル作成部
510:二値化画像作成部
512:ひび割れ画像作成部
514:セグメンテーション画像作成部
515:端点間距離特定部
516:判定部
517:描画部
520:ひび割れ方向分類部
521:分割ひび割れ作成部
522:ひび割れ方向判定部
525:全体ひび割れ状態分類部
1000:ひび割れ検出システム
C1~C6:ひび割れ
P1~P6:端点
t1~t3:端点間距離
V1~V6:端点近傍のベクトル
A1~A3:輪郭範囲(無端状の輪郭範囲)
r1:所定長さ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17