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  • -プレキャスト床版の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162149
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】プレキャスト床版の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
E04B5/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077426
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小前 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友也
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】安齋 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】横谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】乙藤 佳名子
(57)【要約】
【課題】鉄骨建方サイクル中にプレキャスト床版の設置を含めた工程としても工期短縮に寄与するプレキャスト床版の施工方法を提供する。
【解決手段】鉄骨造骨組構築工程では、鉄骨の建方を行う鉄骨建方工程と、鉄骨接合部23の接合を行う鉄骨接合工程と、を有する。プレキャスト床版1には、溶接作業者7(鉄骨の接合を行う作業者)が通り抜け可能な第1切り欠き部41(第1孔部)が形成される。プレキャスト床版設置工程は、鉄骨建方工程の後に連続して行われ、鉄骨接合工程は、プレキャスト床版設置工程の後に行われ、溶接作業者7が第1切り欠き部41を通ってプレキャスト床版1の上方からプレキャスト床版1の下方に仮設された足場6の上に移動し、プレキャスト床版1の下方から鉄骨を接合する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨造の骨組を構築する鉄骨造骨組構築工程と、
前記鉄骨造の骨組の上にプレキャスト床版を設置するプレキャスト床版設置工程と、を有し、
前記鉄骨造骨組構築工程では、
鉄骨の建方を行う鉄骨建方工程と、
鉄骨の接合を行う鉄骨接合工程と、を有し、
前記プレキャスト床版には、
上下方向に貫通し、前記鉄骨の接合を行う作業者が通り抜け可能な第1孔部が形成され、
前記プレキャスト床版設置工程は、前記鉄骨建方工程の後に連続して行われ、
前記鉄骨接合工程は、前記プレキャスト床版設置工程の後に行われ、
前記鉄骨の接合を行う作業者が前記第1孔部を通って前記プレキャスト床版の上方から前記プレキャスト床版の下方に仮設された足場の上に移動し、前記プレキャスト床版の下方から前記鉄骨を接合する下方鉄骨接合工程を有するプレキャスト床版の施工方法。
【請求項2】
前記プレキャスト床版には、
前記鉄骨の接合部の上方に位置し、上下方向に貫通する第2孔部と、が形成され、
前記プレキャスト床版設置工程では、前記第2孔部が前記鉄骨の接合部の上方に位置するように前記プレキャスト床版を設置し、
前記鉄骨接合工程は、
前記第2孔部を介して前記プレキャスト床版の上方から前記鉄骨を接合する上方鉄骨接合工程を有する請求項1に記載のプレキャスト床版の施工方法。
【請求項3】
前記上方鉄骨接合工程では、前記第1孔部を介して前記プレキャスト床版の上方から前記鉄骨を接合可能である請求項2に記載のプレキャスト床版の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト床版の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の建設において省力化やコスト低減などを図るためにプレキャスト床版を採用している(例えば、特許文献1参照)。
半導体や精密機器などを生産する生産施設では、微振動の発生を防止できるように上下方向に貫通する複数の穴が形成された高剛性穴あきプレキャスト床版が採用する事例が増加している。高剛性穴あきプレキャスト床版を採用する場合、従来工法の施工も可能であるが、昨今の逼迫する労務事情や、生産事業をすぐ開始したいという生産施設特有の状況を鑑みて、主たる構造骨組は鉄骨造で計画し、床に高剛性穴あきプレキャスト床版を採用している。
このような場合、高剛性穴あきプレキャスト床版が載置される構造骨組を高剛性架構とするため、梁や柱などの鉄骨の接合を剛接合とする必要がある。これらの接合には、ボルト接合ではなく溶接接合が採用される。なお、施工性やコストなどの観点からボルト接合ではなく溶接接合が採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-2251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造骨組の上に高剛性穴あきプレキャスト床版などのプレキャスト床版を設置すると、プレキャスト床版によって鉄骨の接合部が隠れてしまうため、プレキャスト床版を設置する前に鉄骨の接合を完了させる必要がある。このため、鉄骨建方の後にプレキャスト床版の設置を連続して行うことができず、鉄骨の接合を完了する必要があるため、クレーンを移動させながら施工を行う建て逃げ方式の場合も効率が良くないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、鉄骨建方サイクル中にプレキャスト床版の設置を含めた工程としても工期短縮に寄与するプレキャスト床版の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャスト床版の施工方法は、鉄骨造の骨組を構築する鉄骨造骨組構築工程と、前記鉄骨造の骨組の上にプレキャスト床版を設置するプレキャスト床版設置工程と、を有し、前記鉄骨造骨組構築工程では、鉄骨の建方を行う鉄骨建方工程と、鉄骨の接合を行う鉄骨接合工程と、を有し、前記プレキャスト床版には、上下方向に貫通し、前記鉄骨の接合を行う作業者が通り抜け可能な第1孔部が形成され、前記プレキャスト床版設置工程は、前記鉄骨建方工程の後に連続して行われ、前記鉄骨接合工程は、前記プレキャスト床版設置工程の後に行われ、前記鉄骨の接合を行う作業者が前記第1孔部を通って前記プレキャスト床版の上方から前記プレキャスト床版の下方に仮設された足場の上に移動し、前記プレキャスト床版の下方から前記鉄骨を接合する下方鉄骨接合工程を有する。
【0007】
本発明では、プレキャスト床版に第1孔部が形成されていることにより、鉄骨造の骨組の上にプレキャスト床版を設置した状態であっても、第1孔部によって、作業者がプレキャスト床版の上方から下方に移動し、プレキャスト床版の下方から鉄骨を接合できる。このため、鉄骨の建方の後に連続してプレキャスト床版を鉄骨造の骨組の上に設置できるため、鉄骨の建方およびプレキャスト床版の設置に連続してクレーンを使用でき、効率よく作業を行うことができる。その結果、鉄骨建方サイクル中にプレキャスト床版の設置を含めた工程としても工期短縮を図ることができる。
【0008】
本発明に係るプレキャスト床版の施工方法では、前記プレキャスト床版には、前記鉄骨の接合部の上方に位置し、上下方向に貫通する第2孔部と、が形成され、前記プレキャスト床版設置工程では、前記第2孔部が前記鉄骨の接合部の上方に位置するように前記プレキャスト床版を設置し、前記鉄骨接合工程は、前記第2孔部を介して前記プレキャスト床版の上方から前記鉄骨を接合する上方鉄骨接合工程を有していてもよい。
【0009】
このような構成とすることにより、鉄骨造の骨組の上にプレキャスト床版を設置した状態であっても第2孔部によって鉄骨の接合部が露出しているため、プレキャスト床版の上方から鉄骨を接合できる。このため、鉄骨の建方の後に連続してプレキャスト床版を鉄骨造の骨組の上に設置できるため、鉄骨の建方およびプレキャスト床版の設置に連続してクレーンを使用でき、効率よく作業を行うことができる。その結果、工期短縮を図ることができる。更に、鉄骨の接合作業をプレキャスト床版が設置された状態で行うことができるため、作業性および安全性を向上できる。
【0010】
本発明に係るプレキャスト床版の施工方法では、前記上方鉄骨接合工程では、前記第1孔部を介して前記プレキャスト床版の上方から前記鉄骨を接合可能であってもよい。
【0011】
このような構成とすることにより、作業者が通り抜けるための第1孔部を鉄骨の接合にも利用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉄骨建方サイクル中にプレキャスト床版の設置を含めた工程としても工期短縮に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】鉄骨骨組の上にプレキャスト床版が載置された様子を示す平面図である。
図2】プレキャスト床版の平面図である。
図3図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態によるプレキャスト床版の施工方法について、図1図3に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態によるプレキャスト床版1は、半導体や精密機器などを生産する生産施設の床部に使用される。プレキャスト床版1は、鉄骨柱21や鉄骨梁221,222で組まれた鉄骨造骨組2の上に複数配列される。プレキャスト床版1は、外縁部が鉄骨梁221,222上に載置された状態で鉄骨造骨組2の上に設置される。隣り合うプレキャスト床版1,1は、間に充填されたコンクリートによって接合されている。
本実施形態のプレキャスト床版1は、鉄筋コンクリート製で、上下方向に貫通する複数の穴3が形成された高剛性穴あきプレキャスト床版である。
【0015】
図1から図3に示すように、プレキャスト床版1は、長尺の平板状である。プレキャスト床版1の四隅には、切り欠き部4が形成されている。切り欠き部4は、プレキャスト床版1が鉄骨造骨組2の上に設置された際に、鉄骨柱21と鉄骨梁221との接合部や、鉄骨梁221,222どうしの接合部など鉄骨接合部23の上に配置される。鉄骨接合部23は、プレキャスト床版1が鉄骨造骨組2の上に設置された際に、切り欠き部4によって露出している。
切り欠き部4には、大きさの異なる第1切り欠き部41(第1孔部)と、第2切り欠き部42(第2孔部)と、がある。第1切り欠き部41は、プレキャスト床版1が鉄骨造骨組2の上に設置された際に、溶接作業者7(図3参照)が上下方向に通り抜け可能な切り欠き部である。第1切り欠き部41の開口は、例えば、400mm×650mm程度である。第2切り欠き部42は、第1切り欠き部41よりも開口が小さく、プレキャスト床版1が鉄骨造骨組2の上に設置された際に、人が上下方向に通り抜けることを想定していない切り欠き部である。第2切り欠き部42の開口は、例えば、200mm×200mm程度である。
【0016】
本実施形態では、四隅全てに第2切り欠き部42が形成されたプレキャスト床版11と2つ角部には第1切り欠き部41が形成され、2つの角部に第1切り欠き部41が形成されたプレキャスト床版12と、が鉄骨造骨組2の上に配列されている。
【0017】
本実施形態によるプレキャスト床版の施工方法は、鉄骨造骨組構築工程と、プレキャスト床版設置工程を行う。鉄骨造骨組構築工程では、鉄骨造骨組2の鉄骨の建方を行う鉄骨建方工程と、鉄骨造骨組2の鉄骨接合部23の本締めおよび現場溶接を行う溶接工程と、を行う。
まず、鉄骨造骨組2の鉄骨の建方を行う(鉄骨建方工程)。鉄骨建方工程では、建方を行った鉄骨の仮締めを行う。
続いて、溶接工程を行う前に、プレキャスト床版設置工程を行う。プレキャスト床版設置工程では、鉄骨造骨組2の上にプレキャスト床版1を設置する。プレキャスト床版1の設置は、鉄骨の建方に連続して、クレーンで行う。
プレキャスト床版設置工程では、鉄骨柱21と鉄骨梁221との接合部や、鉄骨梁221,222どうしの接合部などの鉄骨接合部23の上方に第1切り欠き部41または第2切り欠き部42が配置されるようにプレキャスト床版1を設置する。
【0018】
プレキャスト床版1が設置されたら、プレキャスト床版1の下方に吊り足場6を仮設する。吊り足場6は、プレキャスト床版1に吊り下げられて支持されている。
【0019】
続いて、鉄骨接合部23の本締めおよび現場溶接を行う(溶接工程)。
鉄骨接合部23の上部側の溶接、例えば、鉄骨柱21と鉄骨梁221の上フランジとの溶接や、鉄骨梁221,222の上フランジ同士の溶接は、第2切り欠き部42を介してプレキャスト床版1の上方から行う。
鉄骨接合部23の下部側の溶接、鉄骨柱21と鉄骨梁221の下フランジやウェブとの溶接や、鉄骨梁221,222の下フランジ同士やウェブ同士の溶接は、溶接作業者7が第1切り欠き部41を通ってプレキャスト床版1の上方からプレキャスト床版1の下方の吊り足場6の上に移動し、プレキャスト床版1の下方から行う。
【0020】
鉄骨接合部23の溶接が完了したら、隣り合うプレキャスト床版1,1の間に配筋を行った後コンクリートを充填して隣り合うプレキャスト床版1,1を接合する。このとき、切り欠き部4にもコンクリートを充填する。
クレーンを移動させながら施工を行う建て逃げ方式の場合は、クレーンを移動させながら上記の工程を繰り返し行う。
【0021】
次に、本実施形態によるプレキャスト床版の施工方法の作用・効果について説明する。
本実施形態によるプレキャスト床版の施工方法では、プレキャスト床版1に第1切り欠き部41および第2切り欠き部42が形成されていることにより、鉄骨造骨組2の上にプレキャスト床版11を設置した状態であっても第2切り欠き部42によって鉄骨接合部23が露出しているため、鉄骨接合部23の上部側の溶接が可能であるとともに、第1切り欠き部41によって、プレキャスト床版1の上方から下方に移動し、プレキャスト床版1の下方から鉄骨接合部23の下部側を溶接できる。このため、鉄骨の建方の後に連続してプレキャスト床版1を鉄骨造骨組2の上に設置できるため、鉄骨の建方およびプレキャスト床版1の設置に連続してクレーンを使用でき、効率よく作業を行うことができる。その結果、鉄骨建方サイクル中にプレキャスト床版1の設置を含めた工程としても工期短縮を図ることができる。更に、鉄骨柱21と鉄骨梁221との溶接や、鉄骨梁221,222どうしの溶接をプレキャスト床版1が設置された状態で行うことができるため、作業性および安全性を向上できる。
【0022】
本実施形態では、溶接作業者7が通り抜けるための第1切り欠き部41を鉄骨接合部23の上部側の溶接にも利用できる。
【0023】
以上、本発明によるプレキャスト床版の施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、鉄骨の接合(鉄骨柱21と鉄骨梁221との接合、および鉄骨梁221,222同士の接合)は、溶接であるが、ボルト接合など溶接以外の接合であってもよい。
上記の実施形態では、プレキャスト床版1に溶接作業者7が通り抜けるための第1孔部(第1切り欠き部41)およびプレキャスト床版1の上方から溶接を行うための第2孔部(第2切り欠き部42)の両方を形成しているが、第1孔部のみを形成してもよい。このような場合、プレキャスト床版1から鉄骨柱21と鉄骨梁221との接合、および鉄骨梁221,222同士の接合を行うようにしてもよい。
【0024】
上記の実施形態では、溶接作業者7が通り抜けるための第1孔部およびプレキャスト床版1の上方から鉄骨を接合するための第2孔部は、プレキャスト床版1の四隅に形成された第1切り欠き部41および第2切り欠き部42である。第1孔部および第2孔部は、鉄骨接合部23の位置に合わせてプレキャスト床版1の任意の位置に形成されていてもよい。1孔部および第2孔部は、第1切り欠き部41および第2切り欠き部42のような切り欠きの形状であってもよいし、丸孔や各孔などの孔の形状であってもよい。
【0025】
上記の実施形態では、第1切り欠き部41(第1孔部)は、鉄骨接合部23の上方に重なる位置に形成され、鉄骨の接合にも使用されているが、鉄骨接合部23と重ならない位置に形成され、鉄骨の接合には使用されない構成であってもよい。
上記の実施形態では、プレキャスト床版1の下方に仮設される足場は、プレキャスト床版1に吊り下げられた吊り足場6であるが、吊り足場以外の足場であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1,11,12 プレキャスト床版
2 鉄骨造骨組
6 吊り足場(足場)
7 溶接作業者(作業者)
21 鉄骨柱
23 鉄骨接合部(鉄骨の接合部)
41 第1切り欠き部(第1孔部)
42 第2切り欠き部(第2孔部)
221,222 鉄骨梁
図1
図2
図3