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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162165
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20230101AFI20241114BHJP
   C02F 1/78 20230101ALI20241114BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
C02F1/72 101
C02F1/78
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077459
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
【Fターム(参考)】
4D037AA13
4D037AB11
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA12
4D050AA13
4D050AB14
4D050BB02
4D050BC09
4D050BD02
4D050BD03
4D050BD04
4D050BD06
4D050BD08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、ホルムアルデヒド含有排水の処理において、ホルムアルデヒド除去に係る処理を、高効率かつ低コストで安定して行うことができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、排水中の有機物濃度を検出する検出部と、オゾン酸化部と、UV照射部と、検出部の検出結果に基づき、オゾン酸化部によるオゾン注入量またはUV照射部によるUV照射量を制御する制御部と、を備えるホルムアルデヒド含有排水を処理する排水処理装置及びこの装置を用いた排水処理方法を提供する。本発明は、促進酸化処理において、排水中の有機物濃度がホルムアルデヒドの除去効率に影響するという知見に基づき、促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入量またはUV照射量)を制御する。これにより、ホルムアルデヒド除去に係る過剰処理を抑制し、高効率かつ低コストで安定した排水処理が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド含有排水を処理する排水処理装置であって、
前記排水中の有機物濃度を検出する検出部と、
前記排水にオゾン注入を行うオゾン酸化部と、
前記排水にUV照射を行うUV照射部と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記オゾン酸化部によるオゾン注入量または前記UV照射部によるUV照射量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする、排水処理装置。
【請求項2】
前記排水中のホルムアルデヒド濃度を所定値にするための処理に必要なデータをあらかじめ記憶する記憶部を備え、
前記記憶部で記憶するデータが、前記排水中のホルムアルデヒド濃度が所定値となるときの前記オゾン注入量または前記UV照射量と前記有機物濃度との関係を含み、
前記制御部は、前記記憶部のデータに基づく制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記UV照射部から排出される処理水は、再利用箇所で要求される水質を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
ホルムアルデヒド含有排水を処理する排水処理方法であって、
前記排水中の有機物濃度を検出する検出工程と、
前記排水にオゾン注入を行うオゾン酸化工程と、
前記排水にUV照射を行うUV照射工程と、
前記検出工程の検出結果に基づき、前記オゾン酸化工程におけるオゾン注入量または前記UV照射工程におけるUV照射量を制御する制御工程と、を備えることを特徴とする、排水処理方法。
【請求項5】
前記排水中のホルムアルデヒド濃度を所定値にするための処理に必要なデータをあらかじめ記憶する記憶工程を備え、
前記記憶工程で記憶するデータが、前記排水中のホルムアルデヒド濃度が所定値となるときの前記オゾン注入量または前記UV照射量と前記有機物濃度との関係を含み、
前記制御工程は、前記記憶工程におけるデータに基づく制御を行うことを特徴とする、請求項4に記載の排水処理方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置及び排水処理方法に関するものである。より詳細には、本発明は、ホルムアルデヒド含有排水を処理するための排水処理装置及び排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水処理設備においては、流入する排水の水質(含有成分)に応じた処理が行われている。例えば、工場等から排出される排水にホルムアルデヒドが含まれる場合、排水中のホルムアルデヒド濃度を低減させる処理が必要となる。
【0003】
ホルムアルデヒド含有排水の処理の一つとして、生物処理を利用することが知られている。
例えば、特許文献1には、ホルムアルデヒド含有排水の処理として、分離膜を備えたメンブレンバイオリアクターを利用し、曝気しながら40度以上の高温で処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-268468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、ホルムアルデヒド含有排水に対して生物処理を利用した処理を行う場合、微生物培養に時間を要するほか、低濃度のホルムアルデヒドの処理においては処理が安定しないという課題がある。
【0006】
また、ホルムアルデヒド含有排水は各種工場から排出され得るものであるが、特に、飲料や食品類を取り扱う工場から排出されることがある。より具体的には、飲料・食品類等の内容物を収容する容器の洗浄や、内容物充填における高圧高温殺菌処理(レトルト処理)に際し、容器に使用される塗料等が由来となって、ホルムアルデヒド含有排水が排出されることがある。ここで、容器洗浄やレトルト処理には大量の水を使用する必要があるが、食品衛生の観点から、使用される水の水質については比較的厳しい基準を満たす必要がある。
一般に、コスト低減の観点から、排水処理後の処理水を再利用することは広く行われているが、飲料や食品類を取り扱う工場から排出された排水を処理して得られる処理水を有効に再利用するためには、高効率かつ低コストでホルムアルデヒドを除去することが強く求められる。
【0007】
本発明の課題は、ホルムアルデヒド含有排水の処理において、ホルムアルデヒド除去に係る処理を、高効率かつ低コストで安定して行うことができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、ホルムアルデヒド含有排水の処理において、オゾン酸化及びUV照射による促進酸化処理を用いることで安定したホルムアルデヒド除去を可能とすることと併せて、排水中の有機物濃度に応じた促進酸化処理を行うことで、高効率かつ低コストでの排水処理が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の排水処理装置及び排水処理方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の排水処理装置は、ホルムアルデヒド含有排水を処理する排水処理装置であって、排水中の有機物濃度を検出する検出部と、排水にオゾン注入を行うオゾン酸化部と、排水にUV照射を行うUV照射部と、検出部の検出結果に基づき、オゾン酸化部によるオゾン注入量またはUV照射部によるUV照射量を制御する制御部と、を備えるという特徴を有する。
本発明の排水処理装置は、生物処理ではなく、オゾン注入及びUV照射による促進酸化処理によって排水中のホルムアルデヒドの除去を行うものである。また、本発明者らは、促進酸化処理において、排水中の有機物濃度がホルムアルデヒドの除去効率に影響することを見出した。
そして、本発明の排水処理装置は、この知見に基づくものであり、排水中の有機物濃度の検出結果を基に、オゾン注入量またはUV照射量のように、促進酸化処理に係る各機器の操作量(以下、単に「操作量」とも呼ぶ)について制御を行うものである。これにより、安定した処理と併せて、オゾンの過剰注入やUVの過剰照射を抑制し、高効率かつ低コストでの排水処理が可能となる。
【0010】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様は、排水中のホルムアルデヒド濃度を所定値にするための処理に必要なデータをあらかじめ記憶する記憶部を備え、記憶部で記憶するデータが、排水中のホルムアルデヒド濃度が所定値となるときのオゾン注入量またはUV照射量と有機物濃度との関係を含み、制御部は、記憶部のデータに基づく制御を行うという特徴を有する。
上述のとおり、本発明者らは、促進酸化処理において、排水中の有機物濃度がホルムアルデヒド除去効率に影響することを見出した。
この特徴によれば、排水中のホルムアルデヒド濃度を所定濃度にするために必要なデータを記憶する記憶部を設けるとともに、このとき記憶するデータとして、ホルムアルデヒド濃度が所定値になるときの促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入量またはUV照射量)と有機物濃度との関係性についてあらかじめ求めた結果を用いることで、促進酸化処理に係る制御の精度を高め、より一層の最適化を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様は、UV照射部から排出される処理水は、再利用箇所で要求される水質を満たすという特徴を有する。
この特徴によれば、促進酸化処理後の処理水を再利用するに当たり、再利用箇所に応じた水質を満たしたものを供給することができるため、有効な再利用が可能となる。これにより、排水処理装置内の再利用だけではなく、被処理水の排出源に対しても処理水の有効利用が可能となり、節水等による環境への負荷低減や低コスト化を図ることが可能となる。
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明の排水処理方法としては、ホルムアルデヒド含有排水を処理する排水処理方法であって、排水中の有機物濃度を検出する検出工程と、排水にオゾン注入を行うオゾン酸化工程と、排水にUV照射を行うUV照射工程と、検出工程の検出結果に基づき、オゾン酸化工程におけるオゾン注入量またはUV照射工程におけるUV照射量を制御する制御工程と、を備えるという特徴を有する。
本発明の排水処理方法は、生物処理ではなく、オゾン注入及びUV照射による促進酸化処理によって排水中のホルムアルデヒドの除去を行うものである。また、本発明の排水処理方法は、促進酸化処理において、排水中の有機物濃度がホルムアルデヒドの除去効率に影響するという本発明者らによる知見に基づき、排水中の有機物濃度の検出結果を基に、促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入量またはUV照射量)について制御を行うものである。これにより、安定した処理と併せて、オゾンの過剰注入やUVの過剰照射を抑制し、高効率かつ低コストでの排水処理が可能となる。
【0013】
また、本発明の排水処理方法の一実施態様は、排水中のホルムアルデヒド濃度を所定値にするための処理に必要なデータをあらかじめ記憶する記憶工程を備え、記憶工程で記憶するデータが、排水中のホルムアルデヒド濃度が所定値となるときのオゾン注入量またはUV照射量と有機物濃度との関係を含み、制御工程は、記憶工程におけるデータに基づく制御を行うという特徴を有する。
この特徴によれば、排水中のホルムアルデヒド濃度を所定濃度にするために必要なデータを記憶する記憶工程を設けるとともに、このとき記憶するデータとして、ホルムアルデヒド濃度が所定値になるときの促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入量またはUV照射量)と有機物濃度との関係性についてあらかじめ求めた結果を用いることで、促進酸化処理に係る制御の精度を高め、より一層の最適化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホルムアルデヒド含有排水の処理において、ホルムアルデヒド除去に係る処理を、高効率かつ低コストで安定して行うことができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施態様に係る排水処理装置の概略説明図である。
図2】促進酸化処理を伴う試験設備の概要説明図である。
図3】オゾン注入率と、ホルムアルデヒド濃度及びTOC濃度との関係を示すグラフである。
図4】処理液中のホルムアルデヒドが所定の濃度(0.08mg/L)となるときの促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入率またはUV照射量)とTOC濃度との関係を示すグラフである。なお、図4Aはオゾン注入率とTOC濃度の関係を示し、図4BはUV照射量とTOC濃度の関係を示す。
図5】本発明の第2の実施態様に係る排水処理装置の概略説明図である。
図6】本発明の第3の実施態様に係る排水処理装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る排水処理装置の実施態様を詳細に説明する。また、本発明の排水処理方法については、以下の排水処理装置の構造及び作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する排水処理装置については、本発明に係る排水処理装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様に記載する排水処理方法についても、本発明に係る排水処理装置を用いた排水処理方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明の排水処理装置及び排水処理方法は、被処理水としてホルムアルデヒドを含有する排水(ホルムアルデヒド含有排水)に対する処理において好適に利用されるものである。
【0018】
本発明の処理対象(被処理水)であるホルムアルデヒド含有排水とは、食品工場、化学工場等の各種工場から排出される排水が挙げられる。特に、食品類を取り扱う工場においては、飲料や食品などの内容物を容器に充填する過程に伴う容器洗浄や高圧高温殺菌処理(レトルト処理)によって、容器に使用される塗料等に由来したホルムアルデヒドを含む排水(以下、「レトルト排水」と呼ぶ)が排出されることがある。
以下、本発明の処理対象となるホルムアルデヒド含有排水としては、レトルト排水を主たる例として扱うが、これに限定されるものではない。
【0019】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。
本実施態様に係る排水処理装置1Aは、図1に示すように、排出源S(例えば、食品類を取り扱う工場、特にレトルト処理に係る作業を行う工場など)からのホルムアルデヒド含有排水(以下、「被処理水W0」と呼ぶ)の有機物濃度を測定する検出部2と、オゾン酸化部3と、UV照射部4Aと、制御部5を備えるものである。さらに、オゾン酸化部3に対して被処理水W0を導入するための導入配管であるラインL1と、オゾン酸化部3とUV照射部4Aとを接続する接続配管であるラインL2と、UV照射部4Aから排出された処理水W2を系外に排出するための排出配管であるラインL3を備えている。なお、図1中、一点鎖線で示された矢印は、入出力又は制御可能に接続されていることを示している。
【0020】
検出部2は、被処理水W0中の有機物濃度を検出するものである。より詳細には、検出部2は、オゾン酸化部3及びUV照射部4Aによる処理を行う前の被処理水W0中に含まれる有機物濃度を検出するものである。
また、検出部2は、制御部5に対して入力可能に接続されており、検出部2で得られた被処理水W0中の有機物濃度は、制御部5に入力される。
【0021】
後述するように、本発明者らは、被処理水W0中の有機物濃度が、オゾン酸化部3及びUV照射部4Aによる処理(促進酸化処理)におけるホルムアルデヒド除去効率に影響するという知見を得た。したがって、促進酸化処理前の被処理水W0中の有機物濃度を検出し、この検出結果を制御部5における制御パラメータの一つとして用いることで、促進酸化処理における過剰処理(オゾンの過剰注入やUVの過剰照射)を抑制した排水処理が可能となる。
【0022】
本実施態様における検出部2で検出する有機物濃度としては、特定の有機物に係る濃度を検出するものではなく、被処理水W0中に含まれる有機物全体の濃度(総量)に係る情報を把握できるものが好ましい。具体的には、全有機炭素(TOC)、あるいは化学的酸素要求量(COD)や生物化学的酸素要求量(BOD)を用いることが挙げられる。なお、排水中に含まれる有機物全体の総量に係る情報取得が容易であるとともに、迅速かつ安定した測定が可能であり、さらにインライン検出やリアルタイム検出が容易であるという観点から、TOCを検出することが好ましい。
また、本実施態様における検出部2としては、被処理水W0中の有機物濃度を検出することができる公知の計測機器を用いることができる。検出部2の具体的な一例としては、TOC計、COD計、BOD計などが挙げられる。
そして、検出部2は、オゾン酸化部3より前段に設けることが好ましく、図1に示すように、ラインL1上に検出部2としての計測機器を直接設けることのほか、排出源Sから排出された被処理水W0を一時貯留する貯留槽をラインL1上流側に設け、この貯留槽に対して検出部2としての計測機器を設けることや、ラインL1からサンプリングした被処理水W0に対する検出を行うものを検出部2とすることなどが挙げられる。
【0023】
オゾン酸化部3は、検出部2で有機物濃度を検出した後の被処理水W0が導入され、オゾン注入によるオゾン酸化処理を行うためのものである。
オゾン酸化部3では、オゾンの酸化力により、被処理水W0中のホルムアルデヒドが水と炭酸に酸化分解されることで、ホルムアルデヒド除去が進行する。
【0024】
本実施態様におけるオゾン酸化部3としては、被処理水W0に対してオゾン酸化処理を行うことができるものであればよく、図1に示すように、処理槽31と、オゾン発生器32と、オゾン注入手段33とを備えるものが挙げられる。
【0025】
処理槽31は、排出源Sからの被処理水W0を貯留し、オゾン注入手段33を介して槽内部で被処理水W0に対してオゾン注入を行うものである。
図1に示すように、ラインL1を介して被処理水W0が処理槽31内に供給され、オゾン注入後の被処理水W1は、ラインL2を介してUV照射部4Aに送液される。
【0026】
オゾン発生器32及びオゾン注入手段33は、処理槽31内にオゾンを注入するためのものである。
オゾン発生器32及びオゾン注入手段33の具体的な構成については、特に限定されないが、後述する制御部5によって、処理槽31内に注入するオゾン注入量の制御(変更)が可能となるものが挙げられる。
【0027】
本実施態様におけるオゾン発生器32としては、放電式、電解分解式、紫外線式など、公知の発生装置を使用することができる。
また、本実施態様におけるオゾン注入手段33の一例としては、オゾン発生器32で発生したオゾンを処理槽31に注入するための配管33aと、配管33aと接続した散気管33bと、配管33a上に設けられる流量調整機構(バルブなど)33cを備えるものが挙げられる。
このとき、制御部5によってオゾン注入量の制御を行うために、オゾン発生器32の出力を調整する出力調整機構(不図示)やオゾン注入手段33における流量調整機構33cを制御部5と接続し、各調整機構の駆動(操作)に係る制御を可能とすることが挙げられる。なお、オゾン発生器32及びオゾン注入手段33のうち、少なくともいずれか一方と制御部5とを接続し、制御可能とするものであればよい。
【0028】
UV照射部4Aは、オゾン酸化部3でオゾン注入された後の被処理水W1が導入され、オゾンを含む被処理水W1にUV照射を行うためのものである。
UV照射部4Aでは、被処理水W1中のオゾンに対するUV照射によって酸化力の強いヒドロキシルラジカル(・OH)が生成し、このヒドロキシルラジカルの酸化力により、被処理水W1中のホルムアルデヒドの酸化分解が生じ、ホルムアルデヒド除去がより一層進行する。
【0029】
本実施態様におけるUV照射部4Aとしては、被処理水W1に対してUV照射を行うことができるものであればよく、図1に示すように、反応槽41と、UV照射装置42とを備えるものが挙げられる。
【0030】
反応槽41は、オゾン酸化部3からの被処理水W1を貯留し、UV照射装置42を介して槽内部の被処理水W1に対してUV照射を行うものである。
図1で示すように、ラインL2を介して被処理水W1が反応槽41内に供給され、UV照射後の処理水W2は、ラインL3を介して系外に排出される。
【0031】
UV照射装置42は、反応槽41内の被処理水W1に対し、UVを照射するためのものである。
本実施態様におけるUV照射装置42としては、オゾンによるヒドロキシルラジカル生成を効果的に進行させるため、波長253.7nmの光を照射できるものを選択することが好ましい。
また、後述する制御部5によって、反応槽41内の被処理水W1に対して照射するUV照射量の制御(変更)が可能となるよう、UV照射装置42の出力を調整する出力調整機構(不図示)と制御部5を接続する。
【0032】
制御部5は、検出部2で検出した被処理水W0中の有機物濃度に基づき、オゾン酸化部3によるオゾン注入量またはUV照射部4AによるUV照射量を制御するものである。
【0033】
本発明者らは、被処理水W0としてホルムアルデヒド含有排水を促進酸化処理するに当たり、被処理水W0中の有機物濃度がホルムアルデヒド除去効率に影響することを見出しており、制御部5における制御内容はこの知見に基づくものである。
【0034】
以下、被処理水W0中の有機物濃度とホルムアルデヒド除去効率の関係性について、促進酸化処理を伴う試験設備を用いて説明する。
図2は、促進酸化処理を伴う試験設備に係る概略説明図である。
図2に示すように、試験設備は、促進酸化処理を行う処理部として、循環経路R上に、オゾン酸化を行う箇所(処理部A)と、UV照射を行う箇所(処理部B)と、試験液内の気体を脱気する気液分離部Dと、循環ポンプPとを備える。
この試験設備を用い、循環経路R上に試験液を投入した後、試験液が処理部A及びBを繰り返し通過する循環処理を行う。そして、処理部A及びBを経た処理液について所定時間ごとにサンプリングを行い、水質分析(ホルムアルデヒド濃度測定、TOC濃度測定)を行った。
【0035】
試験条件は以下のとおりである。
試験液:ホルムアルデヒド(濃度2mg/L)を含むレトルト排水
処理部A:オゾン発生器(住友精密工業製SGA-01-PSA2)
処理部B:UV照射装置(100W低圧UVランプ)
水質分析(ホルムアルデヒド濃度測定):ホルムアルデヒド濃度計(MBTH比色法(笠原理化製HCHO-V1))
水質分析(TOC濃度測定):TOC計(ガス透過膜式導電率測定方式(Sievers製M9e))
【0036】
この試験設備では、投入された試験液は、処理部A及びBを繰り返し通過するとともに、所定時間ごとに循環経路R上からサンプリングにより引き抜かれていくことになる。したがって、処理部Aにおいてオゾン発生器を介して注入されるオゾン注入量は、試験液量当たりのオゾン注入量の累積値(オゾン注入率)で評価される。
図3は、オゾン注入率と、ホルムアルデヒド濃度及びTOC濃度との関係を示すグラフである。なお、図3のグラフは、横軸がオゾン注入率(単位:mg/L)、縦軸がホルムアルデヒド濃度及びTOC濃度(単位:mg/L)を示す。
図3に示すように、オゾン注入率の増加とともに、ホルムアルデヒド濃度及びTOC濃度は減少するが、ホルムアルデヒド濃度の減少傾向とTOC濃度の減少傾向は異なっている。したがって、促進酸化処理におけるホルムアルデヒドの除去効率は、試験液中の有機物濃度(TOC濃度)に影響を受け、オゾン注入率に対して直接的な比例関係にはないことが分かる。
【0037】
そこで、本実施態様における制御部5では、被処理水W0中の有機物濃度(検出部2の検出結果)を、促進酸化処理に係る操作量(オゾン酸化部3におけるオゾン注入量またはUV照射部4AにおけるUV照射量)を制御する制御パラメータの一つとして用いるものとする。
【0038】
本実施態様の制御部5における制御内容の一例について、以下説明する。
図3に示したように、ホルムアルデヒド除去効率は、促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入量(オゾン注入率))とは直接的な比例関係にない。
その一方で、本発明者らは、ホルムアルデヒド濃度が所定値となるときの促進酸化処理に係る操作量と有機物濃度との間には相関関係があることを見出した。
図4は、処理液中のホルムアルデヒドが所定の濃度(0.08mg/L)となるときの促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入率またはUV照射量)とTOC濃度との関係を示すグラフである。なお、図4A及び図4Bは、それぞれオゾン注入率とTOC濃度の関係(図4A)、UV照射量とTOC濃度の関係(図4B)を示すものであり、図4Aのグラフは、横軸がTOC濃度(単位:mg/L)、縦軸がオゾン注入率(単位:mg/L)を示し、図4Bのグラフは、横軸がTOC濃度(単位:mg/L)、縦軸がUV照射量(単位:W/L)を示す。
【0039】
図4に示すように、促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入率またはUV照射量)と有機物濃度との間には強い相関関係があることが分かる。
ここで、図4に示した相関関係(促進酸化処理に係る操作量と有機物濃度との相関関係)を用いると、検出部2の検出結果(被処理水W0中の有機物濃度)から、被処理水W0中のホルムアルデヒド濃度を所定値にするために必要なオゾン注入量及びUV照射量を導出することが可能となる。具体例を挙げて説明すると、仮に検出部2の検出結果(TOC濃度)が2mg/Lであった場合、図4の相関関係から、被処理水W0のホルムアルデヒド濃度を0.08mg/Lにするために必要なオゾン注入量は約35mg/L、UV照射量は約1230W/Lと求められる。
【0040】
以上のことから、本実施態様の制御部5における制御内容としては、検出部2の検出結果(被処理水W0中の有機物濃度)に係る情報の取得を行い、被処理水W0中のホルムアルデヒド濃度を所定値にするための処理に必要なデータ(促進酸化処理に係る操作量と有機物濃度との相関関係)を基に、オゾン酸化部3によるオゾン注入量またはUV照射部4AによるUV照射量を調整(設定)することが挙げられる。このとき、促進酸化処理に係る操作量のうち、いずれか一つを制御(調整)するものとしてもよいが、オゾン注入量及びUV照射量の両方を同時制御することが好ましい。これにより、促進酸化処理に係る処理効率向上(ホルムアルデヒド除去効率向上)を図ることが可能となる。
【0041】
なお、本実施態様の制御部5においては、少なくとも被処理水W0中の有機物濃度(検出部2の検出結果)に基づく制御を行うものであればよく、図4に示した相関関係(被処理水W0中のホルムアルデヒド濃度が所定値になるときの促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入率またはUV照射量)と有機物濃度との相関関係)に基づく制御のみに限定されるものではない。例えば、被処理水W0中の有機物濃度(検出部2の検出結果)から、被処理水W0に含まれるホルムアルデヒド含有量を推計して、促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入率またはUV照射量)を制御するものとしてもよい。より具体的には、被処理水W0中の有機物濃度に係数を掛けたものを被処理水W0中のホルムアルデヒド含有量とみなし、促進酸化処理に係る操作量(オゾン注入率またはUV照射量)を制御すること等が挙げられる。
【0042】
また、本実施態様における排水処理装置1Aには、制御部5における制御で用いるパラメータの一つである、被処理水W0中のホルムアルデヒド濃度を所定値にするための処理に必要なデータ(図4に示す促進酸化処理に係る操作量と有機物濃度との相関関係など)をあらかじめ記憶する記憶部6を設けることが好ましい。
そして、記憶部6と制御部5とを入力可能に接続することで、制御部5における制御において、記憶部6に記憶されたデータの利用を容易にするとともに、促進酸化処理に係る制御の精度を高め、より一層の最適化を図ることが可能となる。
【0043】
制御部5における制御は、連続的に行うものとしてもよく、所定期間ごとに行うものとしてもよい。
例えば、検出部2による検出をリアルタイムかつインラインで行う場合、検出部2の検出結果を基に、促進酸化処理に係る各機器の操作量(オゾン注入量またはUV照射量)を連続的に調整するものとしてもよい。これにより、被処理水W0中のホルムアルデヒド濃度の変動が高頻度で生じる場合においても、過剰処理を行うことなく、安定した処理を継続することが可能となる。
一方、被処理水W0中のホルムアルデヒド濃度の変動自体は少ない場合、検出部2による検出を所定時間ごとに行い、その検出結果を基に、促進酸化処理に係る操作量を調整するものとしてもよい。これにより、装置全体としてのランニングコスト低減を図ることが可能となる。
【0044】
ここで、図4においては、被処理水W0中のホルムアルデヒド濃度が0.08mg/Lとなる処理を行うことを前提とし、促進酸化処理に係る操作量と有機物濃度との相関関係を求めたが、これに限定されるものではない。例えば、ラインL2から系外に排出される処理水W2を再利用するため、再利用箇所で要求される水質を満たすようにホルムアルデヒド濃度の所定値を設定し、設定した値に応じた促進酸化処理に係る操作量と有機物濃度との相関関係を基に、制御部5による制御を行うことが挙げられる。
なお、ホルムアルデヒド濃度の所定値を0.08mg/L以下とした場合、この値を満たす処理水W2は水道水基準を満たすものとなり、レトルト排水の排出源Sとなる食品類を取り扱う工場においても利用することが可能となる。これにより、大量の水(特に水道水基準を満たす水)を必要とする箇所(被処理水W0の排出源S)を、処理水W2の再利用箇所とすることができ、システム全体としての環境負荷低減や低コスト化を図ることが可能となる。
【0045】
本実施態様の排水処理装置1Aにおける検出部2、制御部5及び記憶部6について、演算、機器の運転制御あるいはデータ取得を実行するための具体的手段は特に限定されない。例えば、作業者や管理者等、人による操作や判断を行うもの以外に、ネットワーク回線を介したデータの送受信装置や、データの整理、演算を行う計算装置等、あらかじめ設定されたプログラムなどに基づき、操作や演算を自動化するものなどが挙げられる。
検出部2、制御部5及び記憶部6に係る操作や演算を自動化するものの例としては、例えば、記憶部6としては、ROMやRAM等、半導体記憶素子やHDDで構成されるものを用いることが挙げられる。また、検出部2や制御部5としては、データ取得、演算及び機器の運転制御を行うために必要なプログラムを作成し、CPU等のプロセッサにより実行するものが挙げられる。
【0046】
以上のように、本実施態様における排水処理装置1A及びこの排水処理装置1Aを用いた排水処理方法は、生物処理ではなく、オゾン注入及びUV照射による促進酸化処理によって排水中のホルムアルデヒドの除去を行うものである。併せて、本実施態様における排水処理装置1A及びこの排水処理装置1Aを用いた排水処理方法は、排水中の有機物濃度の検出結果を基に、促進酸化処理に係る各機器の操作量(オゾン注入量またはUV照射量)について制御を行うものである。これにより、安定した処理と併せて、オゾンの過剰注入やUVの過剰照射を抑制し、高効率かつ低コストでの排水処理が可能となる。
【0047】
〔第2の実施態様〕
図5は、本発明の第2の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る排水処理装置1Bは、図5に示すように、第1の実施態様に係る排水処理装置1Aにおいて単一の反応槽41及び単一のUV照射装置42からなるUV照射部4Aに代えて、複数の反応槽43a~43i及び複数のUV照射装置44a~44iからなるUV照射部4Bとするものである。なお、第1の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0048】
UV照射部4Bとして、複数の反応槽43a~43i及び複数のUV照射装置44a~iを設けることで、制御部5におけるUV照射量に係る制御を、UV照射装置44a~44iの駆動(点灯)台数や、被処理水W1が流入する反応槽43a~43iの個数の調整により行うことが可能となる。
【0049】
本実施態様の排水処理装置1Bにおける制御内容の一例としては、例えば、図5に示すように、UV照射部4Bとして、反応槽43とUV照射装置44を3×3列に並べ、TOC濃度に応じて点灯させるUV照射装置44の台数を調整することが挙げられる。より具体的には、TOC濃度が比較的高い範囲にあり、多くのUV照射量を必要とする場合は、全てのUV照射装置44を点灯させ、TOC濃度が比較的低い範囲にある場合は、一部のUV照射装置44(例えば、UV照射部4Bにおいて下流側に配置されたUV照射装置44c、44f、44i)を消灯する。
また、別の例としては、反応槽43とUV照射装置44を3×3列に並べるとともに、各段の入口に流量調整用のバルブ(バルブV1~V3)を備え、TOC濃度に応じてバルブを操作することで、被処理水W1が流入する反応槽43の個数を調整することが挙げられる。より具体的には、TOC濃度が比較的高い範囲にあり、多くのUV照射量を必要とする場合は、全てのバルブを開き、全ての反応槽43に被処理水W1を流入させ、各反応槽43に設けられたUV照射装置44によってUV照射を行う一方、TOC濃度が比較的低い範囲にある場合は、反応槽43へ被処理水W1を流入させるライン上にあるバルブの一部(例えば、バルブV3)を閉じ、一部の反応槽43(例えば、UV照射部4Bにおいて最下段に配置された反応槽43g~43i)への被処理水W1の流入を停止する。
【0050】
本実施態様におけるUV照射部4Bを用いることで、単一の反応槽41及び単一のUV照射装置42からなるUV照射部4Aと比べ、UV照射装置の出力調整に係る出力安定までの時間短縮が可能となり、それに伴い、制御遅延防止を図ることが可能となる。また、UV照射部4Bは、複数のUV照射装置43を組み合わせるものであるため、個々のUV照射装置43自体は高出力・高性能である必要がない。したがって、UV照射部4Aと比べ、UV照射装置のイニシャルコスト及びランニングコストを低減させることも可能となる。
【0051】
本実施態様における排水処理装置1Bの別態様としては、複数の反応槽43a~43iの代わりに単一の槽を設け、この槽内に複数のUV照射装置44a~44iを配置し、TOC濃度に応じて点灯させるUV照射装置44の台数を調整するものとしてもよい。さらに、排水処理装置1Bの別態様として、反応槽43自体を省略し、複数のバルブ(バルブV1~V3)を介して分岐させた配管内に、複数のUV照射装置44a~44iを配置し、TOC濃度に応じて点灯させるUV照射装置44の台数や、被処理水W1が流入する配管の数を調整するものとしてもよい。これにより、排水処理装置1B全体としての省スペース化を図ることが容易となる。
【0052】
〔第3の実施態様〕
図6は、本発明の第3の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る排水処理装置1Cは、図6に示すように、第1の実施態様に係る排水処理装置1Aにおけるオゾン酸化部3及びUV照射部4Aとして、別々の槽(処理槽31及び反応槽41)を設けるのではなく、1つの処理槽34からなるものとする。なお、第1の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0053】
本実施態様における排水処理装置1Cは、オゾン酸化部3及びUV照射部4が1つの槽内に配置されることになるため、装置全体としての省スペース化が可能となる。本実施態様における排水処理装置1Cは、被処理水W0の排出総量が少ない条件下において特に好適に活用されるものとなる。
【0054】
本実施態様における排水処理装置1Cについても、上述した排水処理装置1Aと同様に、検出部2の検出結果に基づき、制御部5を介してオゾン酸化部3によるオゾン注入量及び/またはUV照射部4によるUV照射量を制御することで、安定した処理と併せて、オゾンの過剰注入やUVの過剰照射を抑制し、高効率かつ低コストでの排水処理が可能となる。
【0055】
なお、上述した実施態様は排水処理装置及び排水処理方法の一例を示すものである。本発明に係る排水処理装置及び排水処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る排水処理装置及び排水処理方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の排水処理装置及び排水処理方法は、ホルムアルデヒド含有排水に対する排水処理において好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B,1C 排水処理装置、2 検出部、3 オゾン酸化部、31,34 処理槽、32 オゾン発生器、33 オゾン注入手段、33a 配管、33b 散気管、33c 流量調整機構、4A,4B UV照射部、41 反応槽、42 UV照射装置、43a~43i 反応槽、44a~44i UV照射装置、5 制御部、6 記憶部、A,B 処理部、D 気液分離部、L1~L3 ライン、P 循環ポンプ、R 循環経路、S 排出源、V1~V3 バルブ、W0,W1 被処理水、W2 処理水
図1
図2
図3
図4
図5
図6