IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -画像形成装置 図1
  • -画像形成装置 図2
  • -画像形成装置 図3
  • -画像形成装置 図4
  • -画像形成装置 図5
  • -画像形成装置 図6
  • -画像形成装置 図7
  • -画像形成装置 図8
  • -画像形成装置 図9
  • -画像形成装置 図10
  • -画像形成装置 図11
  • -画像形成装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162170
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077469
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA09
2C056EB13
2C056EB46
2C056EC12
2C056EC33
2C056HA29
2C056HA32
(57)【要約】
【課題】画質を保ちつつシートとの距離を適切に調整することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、シートを吸着するための搬送ベルト24を有し、搬送ベルト24に吸着したシートを搬送するプリントベルトユニット2200と、搬送ベルト24にシートを吸着させるための圧力室26と、プリントベルトユニット2200により搬送されるシートに画像を形成する記録部2300と、搬送ベルト24を記録部2300に対して接近或いは離間させるプリントギャップ調整機構と、を備える。プリントギャップ調整機構は、シートの厚みに応じた量だけ圧力室26を移動させることで、シートと記録部2300との距離を一定に保つ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを吸着するためのベルトを有し、前記ベルトに吸着した前記シートを搬送する搬送手段と、
前記ベルトに前記シートを吸着させるための吸着手段と、
前記搬送手段により搬送される前記シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記ベルトを前記画像形成手段に対して接近或いは離間させるプリントギャップ調整手段と、
前記プリントギャップ調整手段を制御する制御手段と、を備え、
前記プリントギャップ調整手段は、
前記吸着手段に当接するカムと、
前記カムを回転させるための駆動力を出力する駆動手段と、を有し、
前記制御手段は、前記シートの厚みに応じた量だけ前記駆動手段を駆動することで前記カムを所定の位相まで回転させ、該カムの回転により前記吸着手段を移動させることで前記ベルトを前記画像形成手段に対して接近或いは離間させることにより、前記シートと前記画像形成手段との距離を所定の距離で一定に保つことを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記吸着手段は、圧力室を有し、
前記圧力室は、前記カムが当接する従節を有することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カムは、偏芯カムであることを特徴とする、
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記プリントギャップ調整手段の制御に必要な情報を記憶する記憶手段をさらに備えており、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶される前記情報に基づいて前記プリントギャップ調整手段を制御することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記シートと前記画像形成手段とが前記所定の距離になるような前記カムの回転位相を表す前記情報を記憶し、
前記制御手段は、前記カムが当該回転位相になるように、前記情報に基づいて前記駆動手段を駆動することを特徴とする、
請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、回転位相に対応して、前記駆動手段を駆動するパルス信号のパルス数を前記情報として記憶することを特徴とする、
請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記プリントギャップ調整手段は、前記駆動手段から前記カムに駆動力を伝達するための駆動軸と、
前記駆動軸に設けられ、前記カムの回転を一方向に制限するためのワンウェイクラッチと、さらに備えることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記シートと前記画像形成手段との距離を前記所定の距離に制御した後、前記駆動手段の励磁を切ることを特徴とする、
請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成手段は、前記シートにインクを吐出することで画像を形成することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成手段は、前記インクを吐出する記録ヘッドを有し、
前記制御手段は、前記記録ヘッドのノズル面と前記シートとの距離を前記所定の距離で一定に保つことを特徴とする、
請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記ベルトを張架する複数のローラと、
前記複数のローラを支持するフレームと、をさらに備え、
前記記録ヘッドは、前記フレームに固定されることを特徴とする、
請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記吸着手段は、ガイド部材を有して前記フレームの内部に搭載されており、
前記フレームには、前記ガイド部材が挿入される開口部が設けられていることを特徴とする、
請求項11記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式でシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴を吐出することにより、搬送されているシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-60712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクを吐出する記録ヘッドのノズル面と画像が形成されるシートの面(画像の印字面)との間のギャップ(プリントギャップ)が大きいほど、ノズル面からインクが吐出されてからシートに到達するまでの時間が長くなる。即ち、搬送されているシートに画像を形成する構成では、プリントギャップが第1の大きさである場合のシート上の画像形成位置が、プリントギャップが第1の大きさより大きい第2の大きさである場合のシート上の画像形成位置とは異なってしまう。具体的には、シートが搬送される搬送方向において、プリントギャップが第2の大きさである場合のシート上の画像形成位置は、プリントギャップが第1の大きさである場合のシート上の画像形成位置よりも上流側に位置する。
【0005】
プリントギャップの大きさは、使用されるシートの種類(具体的には、シートの厚さ)によって異なる。即ち、使用されるシートの種類によって、シートに対する画像の相対的な位置が異なってしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑み、シートに対する画像の相対位置が、使用されるシートの種類によって異なってしまうことを抑制することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、シートを吸着するためのベルトを有し、前記ベルトに吸着した前記シートを搬送する搬送手段と、前記ベルトに前記シートを吸着させるための吸着手段と、前記搬送手段により搬送される前記シートに画像を形成する画像形成手段と、前記ベルトを前記画像形成手段に対して接近或いは離間させるプリントギャップ調整手段と、前記プリントギャップ調整手段を制御する制御手段と、を備え、前記プリントギャップ調整手段は、前記吸着手段に当接するカムと、前記カムを回転させるための駆動力を出力する駆動手段と、を有し、前記制御手段は、前記シートの厚みに応じた量だけ前記駆動手段を駆動することで前記カムを所定の位相まで回転させ、該カムの回転により前記吸着手段を移動させることで前記ベルトを前記画像形成手段に対して接近或いは離間させることにより、前記シートと前記画像形成手段との距離を所定の距離で一定に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートに対する画像の相対位置が、使用されるシートの種類によって異なってしまうことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成システムの構成図。
図2】プリントベルトユニットの構成図。
図3】圧力室と負圧発生ユニットの斜視図。
図4】圧力室周辺の概略図。
図5】記録ヘッドの固定状態の説明図。
図6】圧力室を負圧発生ユニット側から見た斜視図。
図7】カムの回転による圧力室の位置の変化の説明図。
図8】プリントベルトユニットフレームの構成図。
図9】プリントギャップ調整機構の説明図。
図10】コントローラの構成図。
図11】回転位相の情報の例示図。
図12】プリントギャップ調整処理を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の画像形成システムの構成図である。この画像形成システム100は、例えば商業/産業印刷分野で使用される印刷機である。本実施形態の画像形成システム100は、反応液とインクとの2液を用いてシートにインク像を形成して成果物を生成する枚葉式のインクジェット記録装置である。画像形成システム100は、給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、及び排紙積載モジュール7000を備える。画像が印刷されるカットシート(以下、単に「シート」という)は、給紙モジュール1000から供給され、各モジュールで所定の処理が行われ、排紙積載モジュール7000に排出される。
【0012】
給紙モジュール1000は、複数(本実施形態では3段)の収納庫1100a~1100cを備える。各収納庫1100a~1100cには、それぞれシートが収納可能である。各収納庫1100a~1100cは、装置正面側に引き出し可能な構成であり、装置正面側に引き出されてシートが収納される。給紙モジュール1000は、シートをプリントモジュール2000へ一枚ずつ給送する。そのために各収納庫1100a~1100cには、分離ベルト及び搬送ローラが設けられる。なお、収納庫1100a~1100cの数は一例であり、1段、2段、或いは4段以上であってもよい。
【0013】
プリントモジュール2000は、インクジェット方式の画像形成装置であり、給紙モジュール1000から給送されたシートに画像を形成する。プリントモジュール2000は、作像前レジ補正部8、プリントベルトユニット2200、及び記録部2300を備える。作像前レジ補正部8は、給紙モジュール1000から供給されたシートの傾きや位置を補正してプリントベルトユニット2200へ搬送する。
【0014】
プリントベルトユニット2200と記録部2300とは、シートの搬送方向で作像前レジ補正部8の下流側に、シートの搬送経路を挟んで対向して配置される。プリントベルトユニット2200は、作像前レジ補正部8から搬送されるシートを吸着搬送する。記録部2300は、プリントベルトユニット2200により搬送されるシートに対して、上方から記録ヘッドにより記録処理(印字)を行なって画像を形成するシート処理部である。記録ヘッドは、シートにインクを吐出することで印字を行う。シートは、プリントベルトユニット2200により吸着搬送されることで、記録ヘッドとのクリアランスが一定に保たれる。
【0015】
記録ヘッドは、シートの搬送方向に沿って複数並べられている。本実施形態の記録ヘッドは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色に加えて、反応液に対応した5個のライン型記録ヘッドである。なお、色数及び記録ヘッドの数は5個に限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、不図示のインクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッドに供給される。
【0016】
記録部2300で印字されたシートは、プリントベルトユニット2200により搬送される。記録部2300に対して搬送方向下流側には、インラインスキャナである画像読取装置1が配置される。画像読取装置1は、シートに形成された画像のズレや色濃度を検出して、印刷画像を補正するために用いられる。
【0017】
乾燥モジュール3000は、プリントモジュール2000により画像が形成されたシートを乾燥させる。乾燥モジュール3000は、シートを乾燥させることでインクに含まれる液体成分を減少させて、シートとインクとの定着性を向上させる。乾燥モジュール3000は、デカップリング部3200、乾燥ベルトユニット3300、及び温風吹付部3400を備える。
【0018】
プリントモジュール2000の記録部2300で印字されたシートは、乾燥モジュール3000内のデカップリング部3200に搬送される。デカップリング部3200は、上方からの風圧とベルトの摩擦とによりシートを弱く保持して搬送する。これにより、シートは、デカップリング部3200とプリントベルトユニット2200に跨がった状態で、プリントベルトユニット2200上に残る部分のズレが防止される。
【0019】
デカップリング部3200から搬送されたシートは、乾燥ベルトユニット3300で吸着搬送されると同時に、ベルト上方に配置された温風吹付部3400から熱風が吹き付けられてインク付与面(画像の印字面)が乾燥する。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式の他に、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式や、発熱体の接触による伝導伝熱方式を組み合わせて構成されてもよい。
【0020】
定着モジュール4000は、乾燥モジュール3000で乾燥されたシートを加熱してインクを乾燥させることで、画像をシートに定着させる。定着モジュール4000は、上ベルトユニットと下ベルトユニットを有する定着ベルトユニット4100を備える。定着モジュール4000は、乾燥モジュール3000から搬送されたシートを、加熱した上ベルトユニットと下ベルトユニットの間に通過させることで、インクをシートに定着させる。
【0021】
冷却モジュール5000は、定着モジュール4000により画像が定着されたシートを冷却して、加熱により軟化したインクを固化するとともに、下流の装置によるシートの温度変化を抑制する。冷却モジュール5000は、複数の冷却部5001を備える。複数の冷却部5001は、定着モジュール4000から搬送された高温のシートを冷却する。各冷却部5001は、外気をファンで冷却ボックス内に取り込むことで冷却ボックス内の圧力を高め、搬送ガイドに形成されたノズルから噴き出す風をシートに当てることにより、シートを冷却する構成である。複数の冷却部5001は、搬送経路の両側に配置され、シートを両面から冷却することができる。
【0022】
冷却モジュール5000内には搬送経路切替部5002が設けられる。搬送経路切替部5002は、シートを反転モジュール6000に搬送する場合と、両面印刷時に使用する両面搬送経路に搬送する場合とに応じて、シートの搬送経路を切り替える。
【0023】
両面印刷時、シートは冷却モジュール5000の下方の搬送経路に搬送され、定着モジュール4000、乾燥モジュール3000、プリントモジュール2000、及び給紙モジュール1000の両面搬送経路を搬送される。定着モジュール4000の両面搬送部には、シートの表裏面を反転させる第1反転部4200が設けられる。シートは、第1反転部4200へ一旦搬送された後に反転して乾燥モジュール3000側へ搬送されることで、画像の印字面が反転される。第1反転部4200を経由することで、シートの裏面への印字が可能となる。その後、シートは、再度、プリントモジュール2000の作像前レジ補正部8、プリントベルトユニット2200、記録部2300へ搬送されて印字される。
【0024】
反転モジュール6000は、第2反転部6400を備える。反転モジュール6000は、第2反転部6400により、搬送されるシートの表裏面を反転させることができる。これにより、排紙されるシートの表裏面の向きを変更することができる。排紙積載モジュール7000は、トップトレイ7200と積載部7500を備える。排紙積載モジュール7000は、反転モジュール6000から搬送されたシートを整列積載する。
【0025】
(プリントベルトユニット)
図2は、プリントベルトユニット2200の構成図である。プリントベルトユニット2200は、プリントベルトユニットフレーム2201に支持された複数(本実施形態では4本)の張架ローラ20~23と、張架ローラ20~23に張架される無端状の搬送ベルト24と、を備えている。プリントベルトユニットフレーム2201は、図2の手前側と奥側から張架ローラ20~33の両端を挟み込むように構成される。プリントベルトユニットフレーム2201の詳細は後述する。
【0026】
張架ローラ20~23は、少なくとも一つが駆動ローラとして機能し、搬送ベルト24を回転させる。搬送ベルト24が回転することで、シートが搬送方向に搬送される。また、張架ローラ20~23は、駆動ローラを除く少なくとも一つのローラがテンションローラとして機能し、搬送ベルト24に所定の張力を与える。搬送ベルト24は、所定の張力が与えられることで、撓むことなく回転することができる。
【0027】
シートは、搬送ベルト24の張架ローラ20と張架ローラ21とで張架されるベルト面に吸引吸着される。搬送ベルト24には、シートを吸引するための複数の吸引穴が設けられる。シートは、搬送ベルト24に吸引吸着されることで搬送挙動が安定する。
【0028】
記録部2300は、上記の複数の記録ヘッド2301が、シートの搬送方向(搬送ベルト24の回転方向)に並んで設けられる。各記録ヘッド2301は、シートにインクを吐出することでシートに画像を形成する。各記録ヘッド2301は、シートの搬送挙動が安定することで、シートの印字面に対して安定した印字を行うことができる。
【0029】
プリントベルトユニット2200は、シートを搬送する搬送ベルト24のベルト面を挟んで記録部2300に対向する位置に、複数の穴が設けられたプラテン25を有する圧力室26を備える。プラテン25は、シート搬送面を形成し、記録部2300に対向して配置される。圧力室26は、圧力室26の内部に負圧を発生させる複数の負圧発生ユニット27が接続される。圧力室26及び複数の負圧発生ユニット27は、プリントベルトユニットフレーム2201の内部に取り外し可能に搭載される。
【0030】
図3は、圧力室26と負圧発生ユニット27の斜視図である。圧力室26は、複数の負圧発生ユニット27が設けられる側に複数の加圧部28が設けられる。複数の負圧発生ユニット27は、それぞれにファンFを備える。ファンFは、対応する負圧発生ユニット27内部の空気を排出する。これにより負圧発生ユニット27内部に負圧が発生する。
【0031】
複数の負圧発生ユニット27の内部は、圧力室26の内部に連通している。そのために複数の負圧発生ユニット27の内部が負圧になることで、圧力室26の内部も負圧になる。圧力室26の内部が負圧になることで、圧力室26に設けられるプラテン25の穴を介して、搬送ベルト24に設けられた吸引穴に吸引力が発生する。搬送ベルト24の吸引穴に発生した吸引力により、シートが搬送ベルト24に吸着する。
【0032】
加圧部28は、圧力室26の負圧発生ユニット27が設けられる側の四隅に設けられる突起である。加圧部28は、圧力室26を記録部2300に対して接近或いは離間するために用いられる。
【0033】
図4は、圧力室26周辺の概略図である。張架ローラ20~23を支持するプリントベルトユニットフレーム2201には、シートの搬送方向Aに直交する方向に、圧力室26を挟んで対向する2個の記録部保持部材40a、40bが固定されている。記録部保持部材40a、40bは、複数の記録ヘッド2301の各々に対応する位置にヘッド固定部41a、41bが設けられる。本実施形態には、2個の記録部保持部材40a、40bのそれぞれに、5個の記録ヘッド2301に対応して5個のヘッド固定部41a、41bが設けられる。
【0034】
図5は、記録ヘッド2301の固定状態の説明図である。ここでは、1個の記録ヘッド2301の固定状態について説明する。記録ヘッド2301は、プリントベルトユニットフレーム2201に固定される。記録ヘッド2301は、対応するヘッド固定部41a、41bに突き当てられて固定される。記録ヘッド2301は、対応するヘッド固定部41a、41bによって位置決めされる。記録ヘッド2301は、プリントモジュール2000本体又は記録ヘッド2301内に設けられる不図示の加圧機構によって、記録部保持部材40a、40b方向に付勢されて動かないように固定される。
【0035】
図6は、圧力室26を負圧発生ユニット27側から見た斜視図である。本実施形態のプリントモジュール2000は、記録ヘッド2301を有する記録部2300の位置が圧力室26以外の移動しない部品により固定され、圧力室26の位置が可変になっている。つまり位置が固定された記録部2300に対して、圧力室26が移動可能となっている。
【0036】
このような構成ではシートの厚さに応じて圧力室26を移動させることで、プラテン25が記録部2300に対して接近或いは離間することができる。そのために、プラテン25部分の搬送ベルト24に吸着されるシートの印字面と記録部2300の記録ヘッド2301のノズル面(インクが吐出される面)との距離(プリントギャップ)を、シートの種類によらずに一定に調整することが可能である。
【0037】
上述の通り記録ヘッド2301は、プリントベルトユニットフレーム2201に固定されている。そのため、圧力室26を記録ヘッド2301に対して移動させることで、プリントギャップが調整される。各記録ヘッド2301は、インクを吐出するノズル面とシートの印字面との距離が一定に保たれるために、シートに付着するインクの面積が一定になる。そのために、シートに印字される画像の1ドットのサイズが一定になる。即ち、使用されるシートの種類に起因して画像形成装置によって出力される画像の解像度が異なってしまうことを抑制することができる。
【0038】
図6に示すように本実施形態では、圧力室26を記録部2300に対して接近或いは離間するように移動させるための移動調整機構に、カム29が用いられる。カム29は、圧力室26の四隅に設けられる加圧部28に当接するように、4個設けられる。カム29が原節として機能し、加圧部28(圧力室26)が従節として機能する。カム29の回転により、圧力室26が記録部2300に対して接近或いは離間するように移動する。そのために、カム29が回転することで、プリントギャップが一定に調整されるプリントギャップ調整が行われる。カム29は、どのような構成であってもよいが、本実施形態では偏芯カムを用いる。
【0039】
図7は、カム29の回転による圧力室26の位置の変化の説明図である。図7(a)は、圧力室26が最も記録ヘッド2301から離間した状態を示す。図7(b)は、圧力室26が最も記録ヘッド2301に接近した状態を示す。カム29は、駆動軸31を中心に回転する。カム29の中心と駆動軸31の回転中心は、所定のズレ量だけズレている。カム29は、ベアリング35に圧入されている。カム29の回転中心(駆動軸31の回転中心)とベアリング35の中心は、カム29の中心と駆動軸31の回転中心のズレ量と同じ量だけズレている。このような構成では、駆動軸31の回転によりカム29が回転することで、ベアリングが加圧部28を押し上げる方向、或いは押し下げる方向に移動する。これにより圧力室26が記録ヘッド2301に対して移動する。
【0040】
本実施形態では、圧力室26が最も記録ヘッド2301から離間した状態(図7(a))からカム29が180度回転することで、圧力室26が最も記録ヘッド2301に接近した状態(図7(b))になるように、カム29の形状が設定されている。カム29の形状により、圧力室26の位置の変位量や、回転角度と圧力室26の位置の関係が自由に設定可能である。カム29の回転中心(駆動軸31の回転中心)とベアリング35の中心とのズレ量により、圧力室26の移動可能な量が調整される。つまり、図7(a)の状態から図7(b)の状態までの圧力室26の変位量は、カム29の回転中心(駆動軸31の回転中心)とベアリング35の中心とのズレ量により決まる。
【0041】
図8は、プリントベルトユニットフレーム2201の構成図である。プリントベルトユニットフレーム2201は、圧力室26を内部に搭載する際の位置決め用に、第1開口部42及び第2開口部43が設けられる。第2開口部43は、加圧部28が挿入されるように、4個の加圧部28に対応した4個設けられる。カム29は、第2開口部43に挿入された加圧部28に接触するように、図8中、第2開口部43の下側に設けられる。
【0042】
圧力室26の負圧発生ユニット27が設けられる側には、突起44が設けられる。第1開口部42は、この突起44が挿入される。第1開口部42に挿入された突起44は、圧力室26が移動する際のガイド部材となる。プリントベルトユニット2200の組み立て時には、第1開口部42に突起44が挿入され、且つ第2開口部43に加圧部28が挿入される。これにより圧力室26がプリントベルトユニットフレーム2201の所定の位置に配置される。
【0043】
圧力室26がカム29の回転により移動する際には、第1開口部42に挿入された突起44により移動方向がガイドされる。そのため、シートの印字面と記録ヘッド2301とは、カム29の回転により、距離が接近或いは離間するが、印字位置がズレることはない。つまり、圧力室26の移動方向は、記録部2300に向かう方向(または離れる方向)にのみ移動が制限される。
【0044】
図9は、プリントギャップ調整機構の説明図である。4個のカム29は、同様のプリントギャップ調整機構50により個々に回転制御される。図9では1個のカム29のプリントギャップ調整機構50について説明する。
【0045】
プリントギャップ調整機構50は、ステッピングモータM、駆動ベルト30、駆動軸31、ワンウェイクラッチ32、及びセンサフラグ33を備える。ステッピングモータMは、カム29を回転させるための駆動力を出力する駆動源である。ステッピングモータMは、駆動ベルト30を回転させる。駆動ベルト30は、駆動軸31を回転させる。上記の通り駆動軸31は、カム29に取り付けられており、回転することでカム29を回転させる。このようにステッピングモータMの駆動力は、駆動ベルト30及び駆動軸31を介してカム29に伝達される。
【0046】
ステッピングモータMは、回転方向が可変である。ステッピングモータMの回転方向が変わることで、各部品の寸法公差で生じる軸方向のブレにより、カム29の回転角と最上点の高さのズレが生じることがある。そのためにカム29は、回転方向が一方向(本実施形態ではB方向)に制限される。
【0047】
圧力室26の自重と張架されている搬送ベルト24の張力とによって、カム29は、加圧部28から力を受ける。この力により、カム29は、回転位相によってはB方向とは逆方向の力(逆回転力)を受けることがある。ワンウェイクラッチ32は、カム29の回転を一方向に制限し、印刷中に逆回転力によってカム29が逆方向に回転して圧力室26の位置が変動することを防止するために、駆動軸31上に設けられる。ワンウェイクラッチ32を設けることで、逆回転力による圧力室26の位置の変動がなくなるため、プリントギャップ調整時以外ではステッピングモータMへの電力供給が不要になる。
【0048】
センサフラグ33は、駆動軸31上に設けられる。センサフラグ33は、カム29の回転位相の基準位相の検知に用いられる。基準位相は、例えば加圧部28が最下点或いは最高点になる回転位相に設定される。本実施形態では、図7(a)に例示するように、加圧部28が最下点になるカム29の回転位相を基準位相とする。
【0049】
図10は、このようなプリントギャップ調整機構50の動作を制御するコントローラの構成図である。コントローラは、CPU(Central Processing Unit)601、ROM(Read Only Memory)602、RAM(Random Access Memory)603、不揮発性メモリ604、及び操作部605を備える。CPU601は、ROM602に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、プリントギャップ調整機構50の動作を制御する。CPU601は、プリントモジュール2000の全体動作を制御する不図示の主制御部の指示により動作が制御される。RAM603は、CPU601が処理を実行する際の作業領域を提供する。
【0050】
不揮発性メモリ604は、プリントギャップ調整機構50の動作制御に必要な各種の情報を記憶する。例えば不揮発性メモリ604には、プリントベルトユニット2200の組み立て時にプリントギャップ調整機構50が取り付けられた段階で、出荷前に、適切なプリントギャップに対応するカム29の回転位相を表す情報が記憶される。不揮発性メモリ604に記憶される情報が表す回転位相は、センサフラグ33が検知する基準位相からのステッピングモータMの回転数に対応する。不揮発性メモリ604は、シートの厚みに応じた複数の回転位相についての情報を、モータ毎に記憶することができる。
【0051】
例えば、不揮発性メモリ604に記憶される回転位相の情報は、実際にシートを搬送ベルト24に吸着させた状態で各色のプリントギャップを所定距離に保ったときに測定されるカム29の回転位相を表す。複数種類のシート(普通紙、厚紙、薄紙等)のそれぞれについてこのような回転位相の測定を行い、それぞれの回転位相の情報が不揮発性メモリ604に記憶される。不揮発性メモリ604は、例えばシートの種類に応じた厚みと回転位相とを関連付けた情報を、モータ毎に記憶する。なお、所定距離は、例えば1.38[mm]である。
【0052】
この結果、4つのカム29のそれぞれに公差があったとしても、紙種によらず各色におけるプリントギャップを所定距離に保つことができる。そのために、各色においてノズル面からインクが吐出されてからシートに到達するまでの時間が所定の時間になる。即ち、シートに対する各色の画像の相対位置が、使用されるシートの種類によって異なってしまうことを抑制することができる。即ち、画像が形成されるシートの面と記録ヘッドのノズル面との距離を調整する際に色ずれ等の画像不良が生じることを抑制することができる。つまり、画質が低下してしまうことを抑制することができる。
【0053】
図11は、不揮発性メモリ604に記憶される回転位相の情報の例示図である。この情報は、シートの種類を坪量により表している。シートの坪量に応じた回転位相は、カム29の回転位相に相関のあるステッピングモータMの回転数により表される。ステッピングモータMの回転数は、CPU601がステッピングモータMを制御するための制御信号であるパルス信号のパルス数により表される。なお、シートの種類を示す情報はシートの厚さであっても良い。
【0054】
CPU601は、不揮発性メモリ604に記憶される情報を参照して、坪量に応じたパルス数を確認する。CPU601は、センサフラグ33が基準位相を検知したタイミングを契機に、確認したパルス数に応じた回転数だけ、ステッピングモータMを回転させる。これによりカム29がパルス数に応じた位相だけ回転するために、カム29の回転位相が高精度に制御される。カム29の回転位相により、圧力室26の位置が、記録部2300に対して接近或いは離間するように移動し、プリントギャップが決定する。カム29の回転位相が高精度に制御されることで、プリントギャップが高精度に制御される。
【0055】
操作部605は、入力インタフェース及び出力インタフェースを有するユーザインタフェースである。入力インタフェースは、各種キーボタン、タッチパネル等である。出力インタフェースは、ディスプレイ、スピーカ等である。
【0056】
(印刷動作)
画像形成システム100は、印刷ジョブで使用することができるシートの厚みを記憶する記憶装置を備える。画像形成システム100は、この記憶装置により、印刷ジョブで指示されたシートの厚みの情報を取得する。シートの厚みの情報は、ユーザによる操作部605からのシートの紙種の入力、或いはシートの搬送経路に設けられる不図示のメディアセンサにより検知結果により取得される。
【0057】
操作部605からシートの紙種が入力される場合、画像形成システム100は、紙種とシートの厚みの情報との関連を表すテーブルを予め保持し、このテーブルを参照してシートの厚みの情報を取得する。メディアセンサを用いる場合、メディアセンサは、給紙モジュール1000内部のシートの搬送経路或いはプリントモジュール2000の記録部2300へシートを搬送する搬送経路に設けられる。メディアセンサは、例えば超音波センサであり、シートに向けて超音波を発し、該シートを透過した該超音波を受信する。画像形成システム100は、メディアセンサで受信した超音波の振幅とシートの厚みの情報との関連を表すテーブルを予め保持し、このテーブルを参照してシートの厚みの情報を取得する。
【0058】
図12は、本実施形態のプリントギャップ調整処理を表すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、印刷ジョブを開始する指示が入力されるとCPU601によって実行される。
【0059】
CPU601は、シート情報としてシートの厚みの情報を取得する(S10)。ここでは、CPU601は、シートの厚みの情報としてシートの坪量を取得する。CPU601は、各ステッピングモータMを励磁して、各ステッピングモータMの駆動を開始する(S11)。CPU601は、不揮発性メモリ604に記憶された情報を参照して、通知されたシートの厚みの情報(坪量)に関連けられたパルス数をモータ毎に確認する(S12)。これにより、各カム29の回転位相が決定する。
【0060】
CPU601は、センサフラグ33が基準位相を検知するまで待機する(S13:N)。センサフラグ33が基準位相を検知すると(S13:Y)、CPU601は、S12の処理で確認したパルス数分だけ各スイッチングモータMを駆動することで、圧力室26を移動させる(S14)。これにより、シートの厚みに適したプリントギャップが色毎に確保される。プリントギャップを適切に制御した後、ワンウェイクラッチ32によりカム29の回転が抑止されるため、CPU601は、各ステッピングモータMの励磁を止め、各ステッピングモータMの駆動を停止する(S15)。
【0061】
プリントギャップが変化することで、搬送ベルト24にかかる張力が変化して、搬送ベルト24の回転速度や姿勢に変化が生じる場合がある。この場合、プリントベルトユニット2200は、テンションローラとして機能する張架ローラの位置を制御することで、搬送ベルト24に所定の張力を与えて静定する。CPU601は、プリントギャップ調整による搬送ベルト24の静定のために、所定時間待機する(S16)。待機する所定時間は、例えば30秒である。待機時間の終了により、プリントギャップ調整処理が終了する。画像形成システム100は、搬送ベルト24を静定に必要な時間だけ回転させてから印刷ジョブを介する。
【0062】
このように、プリントギャップ調整機構50によって圧力室26及びプラテン25の位置(シートの位置)がシートの厚さに応じて高精度に制御される。この結果、インクを吐出するノズル面とシートの印字面との距離が紙種によらず所定距離に保たれるために、シートに付着するインクの面積が所定の大きさになる。そのために、シートに印字される画像の1ドットのサイズが一定になる。即ち、使用されるシートの種類に起因して画像形成装置によって出力される画像の解像度が異なってしまうことを抑制することができる。
【0063】
また、インクを吐出するノズル面とシートの印字面との距離が紙種によらず所定距離に保たれるために、ノズル面からインクが吐出されてからシートに到達するまでの時間が所定の時間になる。この結果、シートに対する画像の相対位置が、使用されるシートの種類によって異なってしまうことを抑制することができる。
【0064】
また、4つのモータによって圧力室26及びプラテン25の位置(シートの位置)が調整されることにより、4つのカムそれぞれに公差があったとしても、紙種によらず各色におけるプリントギャップを所定距離に保つことができる。その結果、シートに対する各色の画像の相対位置が、使用されるシートの種類によって異なってしまうことを抑制することができる。即ち、画像が形成されるシートの面と記録ヘッドのノズル面との距離を調整する際に色ずれ等の画像不良が生じることを抑制することができる。つまり、画質が低下してしまうことを抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、圧力室26が、例えば約10[kg]である。また、記録ヘッド2301は、例えば1個が約8[kg]である。そのために、複数の記録ヘッド2301が固定されたヘッダホルダユニットをシート搬送面に対して移動させる構成に比べて、圧力室26を記録ヘッド2301に対して移動させる構成は、必要な駆動力が小さくすみ、簡易な構成で実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12