(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162175
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241114BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20241114BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/30 572B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077477
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】309042864
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・イー・ティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 倫正
【テーマコード(参考)】
5F043
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
5F043CC16
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F146MA07
5F146MA10
5F157AA15
5F157AA64
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BB22
5F157BB24
5F157BC53
5F157BE23
5F157BE43
5F157BH18
5F157CF16
5F157CF22
5F157CF34
5F157DB02
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】基板の処理面への均一な処理液の供給に資する基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、処理面S1を下向きにして基板11を回転テーブル14の上方に水平に保持する。回転テーブル14と基板11との間に傾斜面ユニット17が回動自在に配される。傾斜面ユニット17は、回転テーブル14と同軸に配され回転テーブル14と逆向きに回転する回転板31と、回転板31の上面に設けられた複数の衝突ブロック32を有し、衝突ブロック32に傾斜面が形成されている。傾斜面は、基板11の径方向及び周方向に互いにずらして配されている。回転板31の中央に配されたノズルから噴出される硫酸過水を傾斜面に衝突させ、処理面S1に向けて飛散させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持し、前記基板の処理面に対する処理の際に、鉛直軸まわりに前記基板と一体に回転する基板回転部と、
前記基板回転部に保持される前記基板の前記処理面側で前記基板回転部の回転中心の近傍に前記処理面から離して配され、前記基板の径方向に処理液を噴出するノズルと、
前記基板の前記処理面側に前記基板の径方向及び周方向に互いにずらして配され、前記ノズルからの処理液が衝突して前記処理面に向けて処理液を飛散させる複数の傾斜面を有し、前記基板回転部と同軸に配されるとともに、前記処理面に対する処理の際に前記複数の傾斜面が一体に前記ノズルからの処理液の噴出方向に対して相対的に回転する傾斜面ユニットと
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記複数の傾斜面のそれぞれは、回転移動の先端から後端に向かうにしたがい、当該傾斜面の面位置が外周側に漸次ずれていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数の傾斜面のそれぞれは、前記基板の径方向に傾きを持つ直線に沿って延びた平面であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記複数の傾斜面は、径方向に直交する成分の長さに対する径方向成分の長さの比が外周に配されるものほど小さいことを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記傾斜面ユニットは、前記複数の傾斜面の一部が配される複数の配置領域に前記基板の周方向に分けられ、前記周方向に隣接する前記配置領域の配置パターンが互いに異なることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ノズルは、前記基板の回転中心からオフセットされ、前記基板の回転中心側に処理液を噴出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板回転部は、前記処理面を下向きにして前記基板を保持することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイス製造プロセスにおいて、回路パターンを形成するためのエッチング又はイオン注入などのマスクとして感光性樹脂であるレジスト膜が広く使用されている。例えばシリコン基板(シリコンウエハ)の処理面に形成されたレジスト膜をマスクとしてエッチングやイオン注入などを行った後に、シリコン基板の処理面からレジスト膜を除去する。レジスト膜を除去する手法として、SPM洗浄法が知られている。SPM洗浄法では、硫酸と過酸化水素水を混合した硫酸過水にシリコン基板を浸漬することで、硫酸過水で生成される過硫酸(カロ酸、ペルオキソ一硫酸)によりレジスト膜を溶解して除去する。通常は、硫酸過水を100℃以上に加熱することで、過硫酸の生成を促進している。
【0003】
また、シリコン基板を、例えば回路パターンを形成する処理面を下向きにした状態で保持する基板処理装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。この基板処理装置では、処理面を下向きにした姿勢で回転テーブルの上方にシリコン基板を保持し、そのシリコン基板を回転テーブルと一体に回転させている間に、加熱したシリコン基板の処理面に硫酸過水を吹き付けることによって、レジスト膜を除去する。硫酸過水は、回転テーブルの回転中心に配されたスプレーノズルから処理面に噴霧される。処理液を処理面の径方向に広げてスプレーノズルから処理面に供給し、シリコン基板の回転による遠心力によって、供給された処理液を処理面の外周部にまで展開している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、回転テーブルの回転中心に配したスプレーノズルからの噴霧によって、処理面に処理液を広げて供給する構成では、処理面上の噴霧される領域の中心部と外周部とでは処理液の供給量に違いが生じる。このため、高い均一性で処理面を処理することが難しかった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、基板の処理面への均一な処理液の供給に資する基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板処理装置は、基板を水平に保持し、基板の処理面に対する処理の際に、鉛直軸まわりに基板と一体に回転する基板回転部と、基板回転部に保持される基板の処理面側で基板回転部の回転中心の近傍に処理面から離して配され、基板の径方向に処理液を噴出するノズルと、基板の処理面側に基板の径方向及び周方向に互いにずらして配され、ノズルからの処理液が衝突して処理面に向けて処理液を飛散させる複数の傾斜面を有し、基板回転部と同軸に配されるとともに、処理面に対する処理の際に複数の傾斜面が一体にノズルからの処理液の噴出方向に対して相対的に回転する傾斜面ユニットとを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の径方向及び周方向に互いにずらして配された傾斜面にノズルからの処理液を衝突させて飛散した処理液を回転する基板の処理面に供給するようにしたので、処理面により均一に処理液が供給できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ノズルから噴出される硫酸過水が傾斜面に衝突して飛散する状態を模式的に示す説明図である。
【
図3】回転板上に設けた衝突ブロックを示す斜視図である。
【
図4】回転板上での傾斜面の配置のパターンの一例を模式的に示す説明図である。
【
図5】回転板上での傾斜面の配置のパターンの別の例を模式的に示す説明図である。
【
図6】供給量を調整する溝を設けた衝突ブロックの例を示す斜視図である。
【
図7】傾斜面を周方向に沿った曲面とした衝突ブロックの例を示す斜視図である。
【
図8】回転テーブルに処理面を上向きにして保持する基板処理装置の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、基板処理装置10は、基板11に形成されたレジスト膜(図示省略)を除去するものである。この例では、基板11は、単結晶のシリコンウエハ(シリコン基板)であり、硫酸と過酸化水素水を混合した硫酸過水を用いてレジスト(フォトレジスト、感光性樹脂)膜を除去する。基板11は、その一方の面が処理対象となる処理面S1である。すなわち、処理面S1が半導体素子などで構成される回路が形成される基板面(シリコンウエハの表面)であって、基板処理装置10は、この処理面S1に回路を形成する際に形成したレジスト膜を除去する。基板11は、シリコン以外の材料で形成されたものであってもよく、例えば化合物半導体基板(例えばInPやGaAs等のIII-V族半導体基板)、SiC基板等であってもよい。
【0011】
基板処理装置10は、ハウジング12、回転テーブル14、ローディング機構15、ノズル部16、傾斜面ユニット17、加熱部18、排出部19等を備えており、各部は、制御部(図示省略)によって統括的に制御される。ハウジング12には、基板11が収容される。ハウジング12は、有底の円筒状であり、上部には円形状に開口した上部開口12aが設けられている。上部開口12aは、基板11よりも大きな径で形成されている。この上部開口12aを通して、ハウジング12内に対する基板11の出し入れを行う。また、後述するように、この例では、上部開口12aがハウジング12内に外気を取り込む取込口になっている。
【0012】
回転テーブル14は、円盤状であって、ハウジング12内に配されている。回転テーブル14は、テーブル駆動軸としての外側駆動軸21の上端に固定されている。この外側駆動軸21は、回転テーブル14と同軸にされている。外側駆動軸21は、ハウジング12の底面12bをその厚み方向(上下方向)に貫通している。外側駆動軸21の内部に上下方向に貫通する貫通孔21aが形成されており、回転テーブル14の中央部には、貫通孔21aと連接した貫通孔14aが形成されている。
【0013】
回転テーブル14は、外側駆動軸21と一体に、鉛直な回転軸(鉛直回転軸)Zまわりに回動自在にされており、その上面を水平にした状態で回動する。また、回転テーブル14は、外側駆動軸21と一体に上下方向に移動自在にされており、後述する基板保持部25の上部を上部開口12aから突出した上昇位置と、この上昇位置から下方に移動し、基板11をハウジング内に収容して処理を行う降下位置との間で移動する。ローディング機構15と基板保持部25との間で基板11を授受する際に、回転テーブル14は、上昇位置にされる。
【0014】
回転テーブル14の上面には、基板11を保持する基板保持部25が設けられている。この基板保持部25は、回転テーブル14とともに基板回転部を構成する。基板保持部25は、回転テーブル14の周縁部に設けられた複数のチャックピン25aと各チャックピン25aのそれぞれに隣接して設けられた複数の支持ピン(図示省略)とからなり、これらのチャックピン25a及び支持ピンは回転テーブル14と一体に回転する。複数のチャックピン25a及び支持ピンは、回転テーブル14の周方向に所定の間隔で配列されている。なお、
図1では、2本のチャックピン25aだけを描いてあるが、実際には例えば6本のチャックピン25aと6本の支持ピンとが設けられている。
【0015】
基板保持部25の各支持ピンは、回転テーブル14の上面からの高さが互いに同じになるように調整されている。回転テーブル14上に基板11を保持する場合には、各支持ピンの上端に基板11の周縁部がローディング機構15によって載せられ、この状態でチャックピン25aがそれぞれ回転テーブル14の中心に向かって移動する。これにより、チャックピン25aが基板11を挟持し、基板11を回転テーブル14の上面と所定の間隔をあけて平行すなわち水平にした状態に保持する。このように、基板11は、基板保持部25に保持され、回転テーブル14と同軸に固定される。固定された基板11は、回転テーブル14と一体に回転する。基板11をローディング機構15に渡す際には、チャックピン25aがそれぞれ回転テーブル14の外周に向かって移動し、基板11の保持を解除する。なお、上記の基板保持部25の構成は一例であり、これに限定されない。
【0016】
上述のように、基板保持部25に対する基板11の授受は、ローディング機構15により行われる。ローディング機構15は、複数の搬送アームや基板反転部等で構成される。基板11は、処理面S1が上向きとなる姿勢で収納カセット(図示省略)に収納されている。処理対象となる基板11は、搬送アームによって収納カセットから取り出されて基板反転部に搬送され、この基板反転部で処理面S1が下向きになるように上下が反転されてから、別の搬送アームによって基板反転部から基板保持部25が支持する位置まで移動される。したがって、この例では、ローディング機構15は、処理面S1を下向きにして基板11を基板保持部25にセットするセット機構になっている。
【0017】
傾斜面ユニット17は、回転板31と、この回転板31の上面に設けた複数の衝突ブロック32を有する。各衝突ブロック32には、処理液としての硫酸過水を処理面S1に向けて飛散させる傾斜面32a(
図2参照)をそれぞれ形成してある。各衝突ブロック32は、回転板31の回転により一体に回転する。衝突ブロック32及びその傾斜面32aの詳細は、後述する。なお、
図1では、図の煩雑化を避けるために、2個の衝突ブロック32だけを描いてある。
【0018】
回転板31は、円板形状であって、回転板駆動軸としての内側駆動軸33の上端に固定されている。回転板31は、基板保持部25に保持される基板11よりも低い位置で回転テーブル14の上方に配されており、回転テーブル14及び基板11に対して平行にされている。内側駆動軸33は、上記回転テーブル14の貫通孔14a及び外側駆動軸21の貫通孔21aに通されている。回転板31と内側駆動軸33とは、回転テーブル14と同軸であり、回転軸Zまわりに回動自在にされている。回転板31及び内側駆動軸33は、回転テーブル14とともに上下方向に移動する。内側駆動軸33には、その内部に上下方向に貫通する貫通孔33aが形成され、回転板31の中央部には、貫通孔33aと連接した貫通孔31a(
図2参照)が形成されている。
【0019】
駆動機構部23は、外側駆動軸21及び内側駆動軸33の回転及び上下方向の移動を行なう。この駆動機構部23は、動力源となるモータや、このモータの駆動力で外側駆動軸21及び内側駆動軸33を回転させ、また上下方向に移動させるギア等から構成されている。駆動機構部23は、外側駆動軸21を回転することによって、回転テーブル14を回転し、外側駆動軸21を上下方向に移動することによって、回転テーブル14を上昇位置と降下位置との間で移動する。また、駆動機構部23は、外側駆動軸21を回転することによって、回転テーブル14を回転し、内側駆動軸33を回転することによって、回転板31を回転する。
【0020】
この例では、駆動機構部23は、回転テーブル14と回転板31とを互いに逆向きに回転する。また、駆動機構部23は、外側駆動軸21と内側駆動軸33とを一体に上下方向に移動することによって、回転テーブル14を上昇位置と降下位置との間で移動するとともに、これにあわせて回転板31を上下方向に移動する。
【0021】
ノズル部16は、
図2に示すように、処理面S1に形成されているレジスト膜を除去するための硫酸過水を噴出するノズルヘッド35及び処理面S1を洗浄(純水リンス)するための純水を噴出するノズルヘッド36を有し、回転板31の貫通孔31a内に配されている。すなわち、ノズル部16は、回転板31の中央部に配されている。なお、ノズル部16は、回転テーブル14、回転板31と一体に上下方向に移動するが、回転方向については回転テーブル14、回転板31から切り離されて固定されており回転しない。
【0022】
ノズルヘッド35は、硫酸過水を噴出するノズル35aを有し、このノズル35aから噴出する硫酸過水を各衝突ブロック32に衝突させることによって、硫酸過水を上方の処理面S1に向けて飛散させるように偏向する。これにより、回転する基板11の処理面S1に硫酸過水を供給する。ノズルヘッド36は、供給される純水を噴出する複数のノズル36aからなり、各々のノズル36aから回転する基板11の処理面S1に向けて純水を噴出する。これにより、回転する基板11の処理面S1の全面に純水を供給して処理面S1を洗浄する。
【0023】
図1において、供給管37a、37bは、内側駆動軸33の貫通孔33a内にそれぞれ通されて、それらの一端がノズルヘッド35、36にそれぞれ接続されている。供給管37a、37bの他端は、供給ユニット26にそれぞれ接続されている。供給ユニット26は、ノズルヘッド35に対して供給管37aを介して硫酸過水を、ノズルヘッド36に対して供給管37bを介して純水を供給する。硫酸過水と純水の供給とは選択的に行われ、純水の供給は、硫酸過水によるレジスト膜の除去処理後に行う。
【0024】
加熱部18は、基板11に光を照射することによって、その基板11を加熱するものであり、例えばハロゲンランプヒータで構成され、下向きに赤外線を放射する。この加熱部18は、上部開口12aの直上に配されており、上部開口12aに近接して基板11を加熱する加熱位置と、この加熱位置から上方に移動して、上部開口12aから基板11の出し入れを許容する退避位置との間で上下方向に移動機構39によって移動される。加熱位置における加熱部18は、上部開口12aの周縁との間に小さな隙間を形成する。この例では、加熱部18を上下方向に移動して加熱位置と退避位置とにしているが、基板11の出し入れに支障がないように上部開口12aの直上から水平に移動した位置を退避位置として加熱部18を水平方向に移動してもよい。
【0025】
基板11のレジスト膜を除去する際には、加熱部18が加熱位置とされる。この加熱位置において、加熱部18は、その直下にある基板11の背面S2(処理面S1と反対側の面、シリコンウエハの裏面)に、上部開口12aを通して赤外線を照射して基板11を加熱する。基板11を加熱することで、硫酸過水によるレジスト膜の酸化分解を促進する。
【0026】
ハウジング12内には、ガイド筒41が設けられている。この例におけるガイド筒41は、その上部が上方に向って径が漸減するテーパ形状をした筒状である。ガイド筒41は、例えばハウジング12に固定されており、その軸心が回転テーブル14の回転中心と一致するように調整されている。また、ガイド筒41の下端は、ハウジング12の底面12bに達している。ガイド筒41の上部の開口41a内に、降下位置の回転テーブル14が配される。降下位置では、回転テーブル14は、その表面がガイド筒41の上端と同じ高さに、あるいはそれよりも僅かに高くされる。開口41aの内径は、回転テーブル14の外径よりも僅かに大きい程度であり、回転テーブル14とガイド筒41との間の隙間を小さくしてある。このガイド筒41は、ハウジング12との間に排気のルートを形成する。また、このガイド筒41を設けることによって、回転テーブル14の回転によるパーティクルの巻き上げを防止して、パーティクルの基板11への付着を抑制し、また処理液やその気化物が外側駆動軸21等の機構部に流れることを防止する。
【0027】
排出部19は、上述の取込口としての上部開口12a、ハウジング12の底面12bに形成された排出ポート44、吸引機45等で構成される。吸引機45としては、例えばポンプが用いられており、排出ポート44に接続されている。この排出部19は、吸引機45を駆動して排出ポート44から吸引を行うことにより、基板11と回転テーブル14との間及び上部開口12aよりも、排出ポート44の圧力を小さくする圧力差を生じさせる。これにより、上部開口12aからハウジング12とガイド筒41との間を通って排出ポート44に向う気流を形成し、基板11と回転テーブル14との間から流出する各種のガス、処理液やその飛沫、さらには処理によって発生するパーティクル等の異物を効率的に排出ポート44に導いてハウジング12の外部に排出するとともに、それらが上部開口12aからハウジング12の外部に漏れ出ることを防止する。排出ポート44には、気液分離機構が設けられており、気体と液体とを分離して排出する。なお、排出ポート44から排出される気体中のミストや処理液が気化したガスはデミスター等により捕集される。
【0028】
ハウジング12の外側で上部開口12aの近傍に送水パイプ47が設けられている。この送水パイプ47は、その先端から噴出する純水をハウジング12内の回転テーブル14に保持された基板11の背面S2に供給して、背面S2を洗浄する。
【0029】
傾斜面ユニット17は、ノズルヘッド35のノズル35aから噴出される硫酸過水を処理面S1に向けて供給するように偏向すなわち処理液の進行方向を変化させるとともに、その硫酸過水で処理面S1を走査する走査機構として機能する。硫酸過水の偏向は、衝突ブロック32の傾斜面32aに硫酸過水を衝突させて上方すなわち処理面S1に向けて飛散させることによって行う。
【0030】
処理面S1の走査は、硫酸過水が飛散する領域(以下、飛散領域と称する)を基板11の径方向に移動する径方向走査と飛散領域を基板11の周方向に移動する周方向走査とに分けることができる。径方向走査は、回転板31の回転によって、傾斜面32aとの硫酸過水の衝突位置を基板11の径方向に移動することで行なう。また、周方向走査は、基板11を回転することによって、傾斜面32aとの硫酸過水の衝突位置を基板11の周方向に移動することで行なう。
【0031】
径方向走査は、回転板31すなわち傾斜面ユニット17とノズル35aの硫酸過水の噴出方向との相対的な回転でよく、例えば傾斜面ユニット17を固定してノズル35aの硫酸過水の噴出方向を回転軸Zまわりに回転させてもよい。また、周方向走査は、傾斜面32aと硫酸過水との衝突位置に対して処理面S1(基板11)が回転すればよいので、ノズル35aの硫酸過水の噴出方向と基板11とが相対的に回転すればよい。
【0032】
図2に示されるように、上述のようにノズル部16のノズルヘッド35には、硫酸過水を噴出するノズル35aが設けられている。ノズル35aは、基板11の回転中心である回転軸Zに対してオフセット配置されている。具体的には、ノズル35aの先端が、ノズル35aからの硫酸過水の噴出する向きとは逆向きに回転軸Zから離れるようにずらして配されている。これにより、回転板31の中央部近傍に配置した衝突ブロック32の傾斜面32aにノズル35aからの硫酸過水を衝突させて飛散させることにより、処理面S1の中央部にも硫酸過水が供給されるようにしている。なお、例えば、処理面S1の中央部に最も近い傾斜面32aについて、他の傾斜面32aよりも後述する傾斜角θを大きくして、ノズル35a側上方に飛散する硫酸過水の量を多くすることで処理面S1の中央部への硫酸過水の供給量を調整してもよい。
【0033】
ノズル35aは、傾斜面32aに入射する高さで、硫酸過水を水平に噴出するように調整されている。ノズル35aからの硫酸過水が傾斜面32aに衝突すると、その硫酸過水が飛散して処理面S1に供給される。傾斜面32aの水平面(回転板31の上面)となす傾斜角θを増減することによって、基板11の径方向及び周方向における硫酸過水の飛散範囲を調整できる。傾斜角θを大きくするほど、径方向及び周方向における硫酸過水の飛散範囲が大きくなる。傾斜角θは、衝突ブロック32ごとに設定してもよく、また1つの傾斜面32aにおいて傾斜角θを変えてもよい。
【0034】
図3に1つの衝突ブロック32を示す。衝突ブロック32は回転板31の上面に設けられ、回転板31と一体に回転方向(矢印A方向)に回転する。衝突ブロック32は、その回転における径方向すなわち回転板31の径方向と交差する方向に延びて形成されている。この衝突ブロック32の内周側に当該衝突ブロック32と同方向に延びた傾斜面32aが形成されている。
【0035】
傾斜面32aは、上述のように、水平面に対して所定の角度で傾斜した面であって、処理面S1及び回転板31の中央を向く上向き斜面として形成されている。すなわち、傾斜面32aの法線ベクトルが処理面S1に向う成分及び衝突ブロック32の回転中心すなわち回転板31の回転中心に向う成分を有することを意味する。これにより、回転板31の中央に配されたノズル35aから噴出される硫酸過水が傾斜面32aに衝突すると、その硫酸過水が処理面S1に向けて飛散する。なお、衝突ブロック32の回転における径方向、回転中心は、基板保持部25に保持される基板11、回転テーブル14、回転板31の径方向、回転中心と同義である。
【0036】
この例では、直線状に延びた衝突ブロック32に、回転板31の径方向と所定の角度で交差する直線状に延びた平面(直線に沿って延びた平面)として傾斜面32aを形成してある。傾斜面32aは、その回転方向の先端側の端部Pfから後端側の端部Peに向かうにしたがい傾斜面32aの面位置が外周側に漸次ずらした斜行配置となっている。傾斜面32aの先端側は、当該傾斜面32aにおいて最初に処理液が衝突する側であり、後端側は、当該傾斜面32aにおいて最後に処理液が衝突する側である。なお、
図3では、回転板31上で端部Pfが通る軌跡を符号Bで示してある。
【0037】
上述のように傾斜面32aを斜行配置しているため、傾斜面32aの回転移動によって硫酸過水が傾斜面32aに衝突する位置が外周に向かって漸次ずれる。すなわち、処理面S1への硫酸過水の供給位置が径方向外側に移動する。また、後述するように、複数の衝突ブロック32は、回転板31上の径方向にずらして配置されており、それらの傾斜面32aに順次にノズル35aからの硫酸過水が衝突することによって、基板11の中心から外縁まで硫酸過水が供給される。さらに、傾斜面32aの斜行配置により、傾斜面32aへの衝突による硫酸過水の微粒化の妨げとなる傾斜面32a上の硫酸過水の滞留を効果的に防止している。
【0038】
図4に回転板31上の傾斜面32aの配置の一例を模式的に示す。この例では、配置領域数が「4」であって、回転板31の上面が、中心角90°の扇形状の第1配置領域D1~第4配置領域D4に4分割されている。すなわち、基板11の周方向に4分割されている。これらの配置順は、第1配置領域D1から反時計回りに第2配置領域D2、第3配置領域D3、第4配置領域D4である。第1配置領域D1~第4配置領域D4には、それぞれ対応する配置パターンで複数の傾斜面32a(衝突ブロック32)が配置される。
【0039】
また、この例では、配置パターン数が「2」であって、互いに配置パターンが異なる第1配置パターンと第2配置パターンとがある。第1配置領域D1及び第3配置領域D3には、第1配置パターンで傾斜面32aが配置され、第2配置領域D2及び第4配置領域D4には、第2配置パターンで傾斜面32aが配置されている。
【0040】
基板11の処理面S1に対面する回転板31の上面の円形領域Cを径方向に第1トラック~第8トラックに分割してあり、トラック数が「8」になっている。第1トラックは、貫通孔31aを囲むように区画された回転板31の中央部の領域であり、この第1トラックから外側に向って順番に第2トラック、第3トラック、・・・第8トラックとなっている。第1トラック~第8トラックは、それぞれドーナツ状(円環状)の領域である。
【0041】
第1配置パターンと第2配置パターンとは、傾斜面32aが中心から外周に向って交互にトラックに割り当てられるように、傾斜面32aの配置パターンが決められている。具体的には、第1配置パターンは、第1トラック、第3トラック、第5トラック、第7トラックに傾斜面32aがそれぞれ配置され、第2配置パターンは、第2トラック、第4トラック、第6トラック、第8トラックに傾斜面32aが配置される。
【0042】
また、第1配置パターン及び第2配置パターンは、いずれも回転板31の径方向において傾斜面32aが互いに重ならないように、回転板31の回転方向に複数の傾斜面32aをずらして配置してある。具体的には、第1配置パターンでは、第1トラック、第3トラック、第5トラック、第7トラックの順番で、回転板31の回転と逆向き(
図4において反時計方向)にずらして傾斜面32aがそれぞれ配置されている。また、第2配置パターンでは、第2トラック、第4トラック、第6トラック、第8トラックの順番で、回転板31の回転と逆向きにずらして傾斜面32aがそれぞれ配置されている。これにより、ノズル35aからの硫酸過水が内周側の傾斜面32aで遮られることなく、外周側の傾斜面32aに到達するようにしている。
【0043】
各々の傾斜面32aは、それが配置されるトラックの内周側のトラックの境界上に先端側の端部Pfが、また外周側のトラックの境界上に後端側の端部Peがそれぞれ配されるように斜行配置される。また、傾斜面32aは、径方向に直交する成分の長さ(La)に対する径方向成分の長さ(Lb)の比(=Lb/La、成分比と称する)を調整することにより、処理面S1の径方向の単位長さ当たりの硫酸過水の供給量が調整されている。換言すれば、各傾斜面32aが、そのような成分比となるように、第1トラック~第8トラックの幅(径方向の長さ:外径と内径の差)が決められており、傾斜面32aの端部Pf、Peの位置がトラックの境界になる。
【0044】
1つの観点からは、外周に配される傾斜面32aほど、成分比が小さくなるように斜行配置する。このような成分比の関係となるように各傾斜面32aを配することによって、周速度が大きくなる処理面S1の外周に対応し、また周速度が大きくなる外周の傾斜面32aほど、径方向走査の速度を小さくし、処理面S1の径方向の単位長さ当たりの硫酸過水の供給量を多くしている。これにより、基板11の径方向についての処理面S1に対する硫酸過水が均一に供給されるようにしている。
【0045】
上記のように回転板31上には、全体としてまた配置領域ごとに、複数の傾斜面32aが離散的に配置されており、傾斜面32a上の硫酸過水の滞留を効果的に防止する。この例では、複数の傾斜面32aが離散的な配置と、各傾斜面32aの傾斜配置とを併用することで硫酸過水の滞留の防止効果が大きくなっている。なお、この例の各配置パターンは、内周側のものから外周側のものに向かって順番に硫酸過水が衝突するように傾斜面32aが配置されているが、硫酸過水が衝突する傾斜面32aの順番は、どのようなものであってもよい。例えば、外周側のものから内周側のものに向かって順番に硫酸過水が衝突するように傾斜面32aを配置してもよい。また、例えば第1トラック、第7トラック、第3トラック、第5トラックの順番でそのトラックに配置された傾斜面32aに硫酸過水が衝突するように配置してもよい。
【0046】
図4の例では、回転板31の中心から各傾斜面32aを臨む角度が同じになるようにして、外周に配される傾斜面32aほど成分比を小さくしている。また、周方向に隣接する各傾斜面32aの間には隙間がないように配置している。
【0047】
なお、この例のように、傾斜面32aが直線状に延びている場合の成分比は、例えば傾斜面32aの延びた方向における中心(端部Pfと端部Peとの中間点)を通る径についての径方向成分の長さの径方向に直交する方向成分の長さに対する比とする。
【0048】
回転板31の回転速度は、硫酸過水を処理面S1に供給して処理をしている処理期間中に、ノズル35aからの硫酸過水の噴出方向と基板11の回転位置と回転板31上の傾斜面32aの配置パターンとの位置関係が同じにならないようにすることが好ましく、この例でもそのようにしている。これにより、より均一に処理面S1に硫酸過水を供給する。ここで、基板11の回転位置は、1回転するごとにノズル35aからの硫酸過水の噴出方向と同じ位置関係になる。一方、傾斜面32aの配置パターンは、回転板31が1/2回転するごとにノズル35aからの硫酸過水の噴出方向に対して同じ位置関係になる。なお、この例における処理期間中の基板11の回転速度は、180rpm(180回毎分)程度であり、回転板31の回転速度は53rpm(53回毎分)程度である。
【0049】
次に上記構成の作用について説明する。なお、以下に説明する処理の手順は一例であり、処理の手順を限定するものではない。吸引機45は、常時駆動されており、ハウジング12内が吸引された状態になっている。基板11に処理を行なう際には、加熱部18が退避位置に移動されている状態で、まず回転テーブル14が上昇位置とされ、ハウジング12の上部開口12aから基板保持部25の支持ピンの先端が上方に突出される。この状態で、ローディング機構15が処理面S1を下向きにした姿勢の基板11の周縁部を各支持ピン上に載せる。
【0050】
ローディング機構15による基板11の保持が解除された後、各チャックピン25aによって基板11が挟持される。これにより、基板11がその処理面S1を下向きにした状態で、回転テーブル14上に固定される。基板11の固定後には、回転テーブル14が降下位置に移動される。なお、上記回転テーブル14の上昇位置への上昇、降下位置への降下の際には、回転板31が回転テーブル14とともに、駆動機構部23によって上昇し、また降下する。
【0051】
続いて、駆動機構部23によって、回転テーブル14が回転され、この回転テーブル14と一体に基板11が回転する。また、駆動機構部23によって、回転板31が回転テーブル14と逆向きに回転される。さらに、回転テーブル14の回転開始後、加熱部18が加熱位置に移動される。そして、加熱部18のハロゲンランプヒータが点灯して、基板11が背面S2側から所定の温度(例えば240℃)にまで加熱される。
【0052】
処理期間になると、供給ユニット26から供給管37aを介してノズルヘッド35に硫酸過水の供給が開始され、ノズル35aから硫酸過水が水平に噴出する。噴出した硫酸過水は、回転板31と一体に回転する衝突ブロック32の傾斜面32aに衝突(入射)する。傾斜面32aに衝突した硫酸過水は、その傾斜面32aとの衝突点を起点に、径方向及び周方向に広がりながら上方の処理面S1に向かって飛散する。そして、その硫酸過水が飛散している飛散領域を通過している処理面S1の部分に飛散した硫酸過水が供給される。このようにして処理面S1に供給された硫酸過水は、基板11の回転によって作用する遠心力で処理面S1の外周に向って処理面S1上を流れ、基板11の外縁部から処理面S1の外側に排出される。
【0053】
傾斜面32aに硫酸過水が衝突する衝突点は、回転板31の回転にともなって当該傾斜面32aの端部Peに向かって移動し、衝突点が端部Peに達すると、硫酸過水は、それまで衝突していた傾斜面32aとは径方向にずらして配されている別の傾斜面32aに衝突する。そして、その別の傾斜面32aの端部Pfから端部Peに向かって衝突点が移動する。上述のように傾斜面32aが傾斜配置されているので、1つの傾斜面32a内における衝突点は、傾斜面32a内すなわち端部Pfから端部Peにまで移動する間に径方向外側に向かって移動する。この結果、硫酸過水が飛散する飛散領域も径方向に移動する。
【0054】
また、回転板31の回転によって、硫酸過水が衝突する傾斜面32aが順次に切り換わる。この傾斜面32aの切り替わりによって、硫酸過水の衝突点の径方向の移動範囲が径方向にずれる。これにより、傾斜面32aの径方向のずれ分だけ、硫酸過水の飛散領域の移動範囲も径方向にずれる。そして、次々と傾斜面32aが切り換わることによって、飛散領域の移動範囲も次々に径方向にずれる。
【0055】
この例では、上述のように第1配置領域D1~第4配置領域D4に第1配置パターンと第2配置パターンとを回転方向(基板11の周方向)に交互に並ぶように割り当てて、回転板31上の傾斜面32aを配置している。このため、硫酸過水の衝突点が傾斜面32a内を移動し、また硫酸過水が衝突する傾斜面32aが順次に切り換わることによって、回転板31が半回転することで、処理面S1の半径分の領域を網羅するように1回の径方向走査がなされる。すなわち、1回の径方向走査では、硫酸過水の飛散領域が処理面S1の半径分だけ移動する。そして、回転板31が半回転するごとに径方向走査がなされる。
【0056】
一方、基板11の回転によって、飛散領域に対して処理面S1がその周方向に移動して、周方向走査がなされる。そして、回転板31の繰り返しの回転すなわち径方向走査の繰り返しと、基板11の繰り返しの回転による周方向走査の繰り返しによって、処理面S1の全面が飛散領域を通過し、硫酸過水が処理面S1の全面に直接に供給される。
【0057】
処理面S1のレジスト膜は、硫酸過水に曝されると、その部分が硫酸過水で酸化分解されて徐々に除去される。そして、処理面S1が下向きとなっていることから、処理面S1で生じたパーティクル等の異物が処理面S1に残留し難い。処理面S1から離れたパーティクル等は、硫酸過水とともに回転板31上に落下し、あるいは硫酸過水とともに基板11の外側に運ばれ、排出ポート44を介して排出される。このときに、加熱部18からの赤外線によって基板11が加熱されているため、硫酸過水によるレジスト膜の酸化分解が促進される。硫酸過水の供給開始から所定処理時間が経過すると、供給ユニット26からの硫酸過水の供給が停止され処理期間が終了する。また、加熱部18のハロゲンランプヒータが消灯され、加熱部18が退避位置に移動される。なお、所定処理時間は、レジスト膜を完全に除去できる時間として予め設定されている。
【0058】
処理時間内では、上記のように、ノズル35aからの硫酸過水の噴出方向と、基板11の回転位置と、回転板31上の傾斜面32aの配置パターンとの位置関係が同じにならないように回転板31の回転速度を決めてあるから、処理面S1は、その全面に硫酸過水が均一に供給され、レジスト膜の酸化分解がより均一に進んだ状態になっている。
【0059】
また、上記のように、硫酸過水の飛散の起点である硫酸過水と傾斜面32aとの衝突点を処理面S1の径方向に半径分移動させて、飛散する硫酸過水を処理面S1に供給している。このため、飛散領域の中心部とそれよりも外側の外周部において飛散量の違いが生じていても、その飛散領域が径方向に半径分移動するため、処理面S1の径方向に硫酸過水の供給ムラが生じることがない。すなわち、従来のように、回転テーブルの中央部に設けた1または複数のスプレーノズルから処理面に向けて硫酸過水を供給する構成では、スプレーノズルによる硫酸過水の噴霧領域の中心部と外周部との噴霧量の差が生じ、その差が処理面S1の径方向について固定されるので、径方向の供給ムラとなる。しかしながら、この基板処理装置10ではそのような供給ムラが生じない。したがって、処理面S1は、より高い均一性をもって処理される。
【0060】
さらに、硫酸過水と傾斜面32aとの衝突点を処理面S1の径方向に半径分移動させて、傾斜面32aから直接に硫酸過水が処理面S1に供給される。このため、処理面S1の径方向における温度ムラが抑制され、より高い均一性をもって処理される。すなわち、加熱された基板11の処理面に硫酸過水を供給する場合、硫酸過水が直接に供給される領域(以下、直接供給領域という)は、直接に供給される硫酸過水に熱が移動するが、その直接供給領域から基板11の回転による遠心力で展開される硫酸過水が供給される領域(以下、間接供給領域という)は硫酸過水に熱の移動がほとんどない。このため、直接供給領域と間接供給領域とに温度差が生じ、処理のより高い均一性を確保するうえでの支障になっていた。しかしながら、基板処理装置10では、上記のように処理面S1の径方向の領域に傾斜面32aから直接に硫酸過水を供給しているので、温度差が生じない。
【0061】
加熱部18の退避位置への移動後、供給ユニット26から供給管37bを介してノズルヘッド36に純水が供給される。これにより、ノズルヘッド36から基板11の処理面S1に向けて純水が噴出され、純水が基板11の回転により、処理面S1上で周方向に広がりながら、基板11の周縁に向って流れる。また、送水パイプ47から基板11の背面S2に純水が供給される。これにより、純水が基板11の回転により、背面S2上で周方向に広がりながら、基板11の周縁に向って流れる。このようにして、処理面S1及び背面S2の全面にそれぞれ純水が供給されて洗浄される。所定の時間の経過後に、ノズルヘッド36及び送水パイプ47への純水の供給が停止される。
【0062】
上記の純水による処理の際には、ノズル部16に設けた回転板用ノズル(図示せず)から回転板31の上面に純水を供給する。これにより、基板11と同様に、回転板31及び各衝突ブロック32についても、付着したパーティクル等の異物の除去と純水による洗浄が行われる。回転する基板11、回転板31から飛び散った硫酸過水及び純水がハウジング12の内壁に衝突する。これによって、ハウジング12の内壁に付着したパーティクル等の異物の除去と純水による洗浄が行われる。このようにして、基板処理装置10は、基板11の処理と同時に、ハウジング12の内部がセルフクリーニングされる。なお、チャックピン25a及び支持ピンについては、所定の処理枚数ごとに、それらに専用に設けたノズルより純水を供給することで洗浄が行われる。
【0063】
純水による洗浄後、回転テーブル14及び回転板31の回転速度が増大される。これにより、基板11の両面に付着している純水が遠心力で飛ばされ、基板11が水切りされる。また、回転テーブル14、基板保持部25、回転板31、各衝突ブロック32も同様に水切りされる。
【0064】
上記のようにレジスト膜の除去、純水による洗浄、水切りを行っているときに、基板11や回転板31から流れ出た硫酸過水及び純水、さらにはハウジング12の内壁に付着して流れ落ちる硫酸過水及び純水は、排出ポート44から吸引されて排出される。また、硫酸過水及び純水の細かな飛沫や蒸気が発生しても、その飛沫や蒸気は上部開口12aからの気流によって排出ポート44に導かれる。このため、硫酸過水及び純水の飛沫や蒸気が上部開口12aから漏れ出ることはない。
【0065】
水切りが完了すると、回転テーブル14、回転板31の回転を停止する。回転テーブル14が降下位置から上昇位置に移動し、チャックピン25aによる挟持による基板11の保持が解除される。そして、ローディング機構15によって、基板11が別の基板処理装置に搬送され、SC-1処理液、純水による洗浄を順次に行なった後に乾燥される。この後に、基板11は、ローディング機構15によって収納カセットに戻される。
【0066】
以上のようにして、1枚の基板11に対する処理が終了し、この後に同様な手順で新たな基板11に対する処理を行う。上記のように回転板31やハウジング12の内部のセルフクリーニングが完了しているから、新たな基板11の処理を直ちに行うことができる。
【0067】
図5は、傾斜面32aの別の配置パターンの例を示している。この例は、配置領域数が「3」、配置パターン数が「3」、トラック数が「12」である。回転板31の上面の円形領域Cは、中心角が120°の扇形状の第1配置領域D1A~第3配置領域D3Aに3分割されており、第1配置領域D1Aから反時計回りに第2配置領域D2A、第3配置領域D3Aになっている。第1配置領域D1Aには第1配置パターンで、第2配置領域D2Aには第2配置パターンで、第3配置領域D3Aには第3配置パターンで、それぞれ複数の傾斜面32aが配置されている。第1配置パターン、第2配置パターン、第3配置パターンは、互いに傾斜面32aの配置が異なっている。
【0068】
径方向には円形領域Cは、第1トラック~第12トラックに分割している。第1トラックは、回転板31の中央部の領域であり、この第1トラックから外側に向って順番に第2トラック、第3トラック、・・・第12トラックとなっている。第1トラック~第12トラックは、それぞれドーナツ状の領域である。
【0069】
第1配置パターンは、第1トラック、第4トラック、第7トラック、第10トラックに傾斜面32aが配される。また、第2配置パターンは、第2トラック、第5トラック、第8トラック、第11トラックに傾斜面32aがそれぞれ配され、第3配置パターンは、第3トラック、第6トラック、第9トラック、第12トラックに傾斜面32aがそれぞれ配される。
【0070】
また、第1~第3配置パターンは、
図4の例の第1、第2配置パターンと同様に、いずれも回転板31の径方向において傾斜面32aが互いに重ならないように、回転板31の回転方向に複数の傾斜面32aをずらして配置してある。これにより、ノズル35aからの処理液が内周側の傾斜面32aで遮られることなく、外周側の傾斜面32aに到達するようにしている。各傾斜面32aは、外周に配されるものほど成分比を小さくしている。
【0071】
傾斜面32aの配置は、
図4、
図5に示されるものに限定されず、配置領域数、配置パターン数、トラック数は、2以上の値に適宜に決めることができる。例えば配置領域数が「4」、配置パターン数が「4」、トラック数が「16」としたり、配置領域数が「6」、配置パターン数が「2」、トラック数が「8」としたりすることができる。また、上記の各配置パターンでは、硫酸過水が衝突する傾斜面32aが配置パターン内において内周側のものから外周側のものに向かって順番に切り替わるように傾斜面32aを配置しているが、その順番は任意であり、例えば外周側のものから内周側のものに向かって順番に切り替わるよう配置してもよい。
【0072】
図6は、処理面S1への供給量を調整する溝51が設けられた衝突ブロック32の例を示している。この例では、衝突ブロック32に複数の溝51が設けられ、各溝51は、衝突ブロック32を傾斜面32aから背面(外周側の面)32bまで貫通している。傾斜面32aに入射するノズル35aからの硫酸過水の一部が溝51を通して逃げる。これにより、処理面S1に向けて飛散する硫酸過水が減少する。衝突ブロック32に設ける溝51の幅、ピッチ、深さ等を変えることによって、飛散する硫酸過水の量を調整できる。なお、溝51に代えて傾斜面32aから背面32bまで貫通する1または複数の貫通孔を衝突ブロック32に設けてもよい。
【0073】
上記の例の傾斜面は、直線状に延びた平面であるが、
図7に示す例のように、傾斜面32aを回転板31の回転方向(周方向)に沿って円弧状に延びる曲面としてもよい。この場合には、飛散する硫酸過水の径方向の広がりにより、傾斜面32aの直上を含む領域に硫酸過水を供給する。
【0074】
図8は、処理面S1を上向きにして、回転テーブル14の基板保持部25で基板11を保持する例を示している。この例の基板処理装置10では、基板保持部25で保持される基板11の上方に傾斜面ユニット17が配される。傾斜面ユニット17は、回転板31の下面に衝突ブロック32が設けられる。回転板31の下面側中央にノズル部16が露呈される。ノズル部16に設けたノズル35aから噴出される硫酸過水は、衝突ブロック32の傾斜面32aに衝突し、衝突で飛散する硫酸過水は、その勢いと重力とによって処理面S1に向かって供給される。傾斜面ユニット17は、ローディング機構15と基板保持部25との間で基板11を授受する際には、ハウジング12の上部開口12aから離れた非処理位置に移動し、基板11に対して処理を行なう場合には、
図8に示されるように、ハウジング12内で処理面S1に近づいた処理位置に移動する。なお、
図8では、断面を示すハッチングを省略している。
【0075】
上記では処理液として硫酸過水を用いてレジスト膜を除去する例について説明しているが、本発明は、これに限らず、種々の処理液を基板の処理面に供給して各種処理をする場合に利用することができる。例えば、処理液としてリン酸水溶液等のリン酸を含むリン酸溶液を基板の処理面に供給し、処理面上の窒化ケイ素膜(SiN)をエッチングする場合にも利用できる。
【0076】
上記の例では、ハウジング内に1個のガイド筒を設けているが、上部の開口の高さが異なる複数のガイド筒を、回転テーブルの回転中心と各軸心を一致させて設けるとともに、回転テーブルを、各ガイド筒の上部に形成した各開口内で回転可能なように昇降させる構成としてもよい。この構成によれば、一番外側のガイド筒とハウジングとの間、及びガイド筒とガイド筒との間に気流の複数の経路が形成される。これにより、供給するガスや処理液の種類によって、回転テーブルの高さ変えて処理することで、回転テーブルと基板との間から流れ出るガスや処理液を流す経路を変えて、それらを別々にハウジング外に排出することが可能となる。なお、このような構成については、特開2012-209559号公報、特開2007-180268号公報に記載されている。
【0077】
処理液を処理面に向けて供給する構成、例えば硫酸過水を処理面に噴霧するスプレーを併用してもよい。例えば、ノズル部に処理液を噴霧するスプレーを設け、処理面の中央部に対しては、このスプレーからの噴霧によって処理液を供給してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 基板処理装置
11 基板
14 回転テーブル
17 傾斜面ユニット
25 基板保持部
31 回転板
32 衝突ブロック
32a 傾斜面
35a ノズル
S1 処理面