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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162178
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】半炭化片の製造方法および木材片
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C10L5/44
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077481
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】510236634
【氏名又は名称】株式会社ZEエナジー
(71)【出願人】
【識別番号】504035179
【氏名又は名称】松下 康平
(71)【出願人】
【識別番号】594173636
【氏名又は名称】株式会社タケエイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 康平
(72)【発明者】
【氏名】関口 裕司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴典
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA06
4H015BA08
4H015BA09
4H015BB03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】非バイオマス燃料との混燃において取り扱いが容易な半炭化バイオマス燃料を提供する。
【解決手段】製造方法は、含水量37%超の木材片を加熱し、前記含水量を20%乃至30%に制御するともに、表面の少なくとも一部を熱分解させる工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水量が37%超の木材片を加熱し、
前記含水量を20%乃至30%に制御するともに、
表面の少なくとも一部を熱分解させる工程を含む半炭化片の製造方法。
【請求項2】
前記熱分解させる工程は、前記木材片を摂氏300度乃至400度で、5分乃至15分間加熱する工程を含む請求項1に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項3】
前記木材片は、伐採後に乾燥処理がなされていない木材片である請求項1に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項4】
前記熱分解させる工程では、前記木材片となっている樹木の種類または前記木材片の含水率に応じて加熱温度と加熱時間が設定される請求項1に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項5】
前記加熱温度と加熱時間は、前記含水量を20%乃至30%に制御させるときの加熱温度と加熱時間の複数の組のうち、前記熱分解させる工程における電力消費量または燃料消費量が相対的に少ない組が選択される請求項4に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項6】
前記加熱温度と加熱時間は、前記含水量を20%乃至30%に制御させるときの加熱温度と加熱時間の複数の組のうち、前記熱分解させる工程によって処理された後の半炭化片の疎水性が前記熱分解させる工程によって処理される前の木材片よりも1.09倍に改善した組が選択される請求項4に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項7】
含水量が20%乃至30%であり、表面の少なくとも一部が熱分解されている木材片。
【請求項8】
前記表面の少なくとも一部が熱分解される前の原料の木材片と比較して、前記熱分解によって、疎水性が少なくとも1.09倍に改善している請求項7に記載の木材片。
【請求項9】
前記表面の少なくとも一部が熱分解される前の原料の木材片と比較して、前記熱分解によって、疎水性が少なくとも1.2倍に改善している請求項7に記載の木材片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半炭化片の製造方法および木材片に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バイオマスを半炭化したバイオマス燃料の製造方法が提案されている。例えば、特許文献1には、無酸素下又は低酸素下、かつ200℃から300℃の還元雰囲気下で、木質ペレットを熱分解する半炭化装置(半炭化炉)を主体とする装置が開示されている。特許文献3には、この発明の半炭化とは、バイオマスを加熱・加圧して完全脱水分解状態や、炭化して熱分解に至る前の状態であって、燃焼には寄与しない水分の脱水と、セルロースやヘミセルロースを変性・分解させ、リグニンは変性していない状態をいう、と開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7108354号公報
【特許文献2】特開2019-45078号公報
【特許文献3】特開2018-83876号公報
【特許文献4】特開2021-127443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バイオマス燃料の用途として、石炭他、非バイオマス燃料とバイオマス燃料とを混合して燃焼させる混燃を例示できる。しかし、上記従来の技術では、バイオマス燃料と非バイオマス燃料とを混燃する場合の配慮がない。一般に、石炭に例示される非バイオマス燃料は、半炭化チップ等のバイオマス燃料よりも比重が重い。このため、バイオマス燃料を石炭等の非バイオマス燃料と混燃すると、燃焼炉において、熱風によって非バイオマス燃料が吹き上げられ、安定した混燃が継続できないことが予想される。
【0005】
本発明の目的は、非バイオマス燃料との混燃において取り扱いが容易な半炭化バイオマス燃料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の実施形態は、半炭化片の製造方法によって例示できる。この製造方法は、含水量37%超の木材片を加熱し、前記含水量を20%乃至30%に制御するともに、表面の少なくとも一部を熱分解させる工程を含む。また、開示の実施形態は、含水量が20%乃至30%であり、表面の少なくとも一部が熱分解されている木材片によって例示される。
【発明の効果】
【0007】
本製造方法によれば、非バイオマス燃料との混燃において取り扱いが容易な半炭化バイオマス燃料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の製造設備の構成を例示する図である。
図2図2は、含水率データの一例である。
図3図3は、生木木材チップ、半炭化チップをそれぞれ水で浸漬させたときの経過時間に対する重量の変化を例示する図である。
図4図4は、半炭化チップでのドライスタートとウェットスタートの疎水性の測定結果を比較する図である。
図5図5は、生木木材チップとなる生木(樹木)の種類と、加熱温度、および加熱時間の関係を例示する制御テーブルの構成を例示する図である。
図6図6は、制御装置による製造工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る半炭化チップ、半炭化チップの製造装置、および製造方法が説明される。1つの側面では、本実施形態の半炭化チップの製造装置、および製造方法は、非バイオマス燃料との混燃において取り扱いが容易な半炭化チップを製造することを課題とする。また、例えば、比重の小さい物質は、より比重の大きい物質とともに攪拌しても混ざり合いにくい、という特性がある。そのため、本実施形態の半炭化チップは、燃料の攪拌混合の取扱いを容易にするという側面も有している。
【0010】
<製造装置の構成と動作>
図1は、半炭化チップの製造装置1の構成を例示する図である。製造装置1は、炭化炉10と、制御装置11と、記憶装置12を有する。半炭化チップは、半炭化片ということができる。
【0011】
炭化炉10は、生木木材チップC1を投入され、炉内の空間で生木木材チップC1を加熱し、半炭化チップC2を製造する。生木木材チップC1および半炭化チップC2は、いずれも、木材を粉砕または切断したものであり、木材片の一例ということができる。また、半炭化チップC2は、半炭化片の一例ということができる。生木木材チップC1は、伐採後に乾燥処理がなされていない木材片の一例ということができる。半炭化チップC2は、表面の少なくとも一部が熱分解されている木材片の一例ということができる。すなわち、本実施形態では、半炭化片も木材片に含まれる。
【0012】
炭化炉10の加熱方法に限定はない。炭化炉10は、例えば、窒素、二酸化炭素または水蒸気などの酸素が少ない不活性の気体に生木木材チップC1をさらした不活性雰囲気において、生木木材チップC1を伝熱面からの伝熱または輻射により加熱するものである。また、炭化炉10は、炉内の生木木材チップC1に、加熱した不活性なガスまたは水蒸気などの熱風を吹き付けるものであってもよい。さらに、このような加熱を行うための加熱機構にも限定はない。例えば、加熱機構は、電気ヒータを有するものでもよい。また、加熱機構は、重油、灯油、都市ガス、プロパンガス、メタンガス、天然ガス、バイオマスから生成される乾留ガス等の燃料を燃焼する燃焼炉を有するものであってもよい。
【0013】
制御装置11は、炭化炉10での加熱または炭化炉10内の温度を制御する。制御装置11は、例えば、炭化炉10内の温度センサから炉内温度を計測する。温度センサは、例えば、熱電対である。また、温度センサは、炉内の高温ガスの一部を吸引して計測する吸引式温度計であってもよい。また、温度センサは、温度に応じて、形状または寸法が変化するセラミックス等の材料、または温度に応じて色が変化する材料を用いたものであってもよい。さらに、温度センサは、炭化炉10内で処理中の生木木材チップC1および半炭化チップC2の表面温度を耐熱ガラス越しに計測するサーモグラフィであってもよい。要するに、制御装置11は、炭化炉10内の温度または炭化炉10内で処理中の生木木材チップC1、または、生木木材チップC1が半炭化された半炭化チップC2の温度を測定できればよい。
【0014】
そして、制御装置11は、温度センサによって検出された温度を所定時間継続して目標値に制御する。温度の制御の仕方に限定はない。例えば、炭化炉10が電気ヒータを有する場合には、制御装置11は、検出された温度が目標値に近づくように、電気ヒータに供給する電力を増減し、フィードバック制御すればよい。また、炭化炉10が燃料を燃焼す
る燃焼炉を有する場合には、制御装置11は、検出された温度が目標値に近づくように、燃焼炉に供給する燃料の投入量を調整し、フィードバック制御すればよい。
【0015】
記憶装置12は、制御装置11が炭化炉10を制御するときの制御パラメータを記憶する。記憶装置12は、制御装置11と別体の構成であって、例えば、有線または無線通信で制御装置11から入出力可能に構成されるものであってもよい。また、記憶装置12は、制御装置11と一体で構成されるもの、または、制御装置11に内蔵される主記憶装置と呼ばれるものでもよい。記憶装置12を内蔵した制御装置11は、マイクロコントローラまたはマイクロコンピュータと呼ばれるのであってもよい。ただし、制御装置11は主記憶装置を内蔵していて、記憶装置12は、制御装置11に内蔵される主記憶装置以外の外部記憶装置であってもよい。
【0016】
記憶装置12が記憶する制御パラメータは、例えば、炉内温度300度、350度、400等である。また、制御パラメータは、例えば、加熱時間5分、10分、あるいは15分等である。本実施形態では、制御装置11は比較的短時間の加熱で半炭化処理を実行するので、制御パラメータは、急速加熱条件のパラメータということもできる。
【0017】
炭化炉10へ原料となる生木木材チップC1を投入する投入機構および炭化炉10で生成された半炭化チップC2の排出機構に限定はない。炭化炉10はバッチ式で運転されるものであってもよい。すなわち、炭化炉10に、所定量の原料となる生木木材チップC1が投入され、記憶装置12に記憶された急速加熱条件で生木木材チップC1が加熱され、加熱が停止された後に、製造された半炭化チップC2が排出されるものでもよい。生木木材チップC1は、例えば、開閉可能な投入口からコンベア等によって炭化炉10へ投入されればよい。また、炭化炉10は、炭化炉10内で所定方向に平行移動し、半炭化チップC2を掻き取り可能なスクレーパまたはアクチュエータを有してもよい。製造された半炭化チップC2は、スクレーパ等によって、排出口から掻き出されればよい。
【0018】
ただし、炭化炉10は、連続運転され、所定の製造速度で連続または断続的に、半炭化チップC2を製造するものであってもよい。連続運転において、生木木材チップC1は、例えば、開閉可能な投入口からコンベア等によって炭化炉10へ所定時間ごとに所定量が投入される。炭化炉10は、例えば、水平面に対して所定角度で傾いて、回転可能に保持される円筒容器を有する。円筒容器は、投入口が相対的に高く、排出口が相対的に低く保持される。円筒容器は、容器内の原料となる生木木材チップC1を加熱しつつ、回転することで、徐々に生木木材チップC1を排出口に移動させ、目標の加熱温度で所定時間加熱後に、半炭化チップC2を排出口から排出すればよい。なお、排出口付近に設けられたアクチュエータ等によって半炭化チップC2が排出口から掻き出されるようにしてもよい。ただし、炭化炉10は、筒状の容器であって、鉛直方向上側に投入口を有し、鉛直方向下側に排出口を有するものでもよい。投入口と排出口には、例えば、バタフライ弁が設けられてもよい。所定時間ごとに投入口のバタフライ弁が開口することで、生木木材チップC1が炭化炉10に投入されればよい。所定時間ごとに排出口のバタフライ弁が開口することで、半炭化チップC2が排出口から排出されればよい。
【0019】
制御装置11は、製造装置1の運転開始とともに、記憶装置12から制御パラメータを読み出し、炭化炉10を制御する。すなわち、制御装置11は、炭化炉10が目標温度で燃焼するように制御するととともに、原料となる生木木材チップC1を炭化炉10に投入する。制御装置11は、所定の処理時間が経過後、炭化炉10において製造された半炭化チップC2を炭化炉10から排出させる。
【0020】
<生木木材チップC1の含水率>
生木木材チップC1は、含水率によって特徴付けられる。生木木材チップC1の含水率
は、生木の種類によってほぼ特定できることが知られている。例えば、図2は、長野県林業総合センターミニ技術情報No.50、平成26年5月(https://www.pref.nagano.lg.jp/ringyosogo/joho/minigijutsu/documents/50chipmc.pdf、2023年4月15日検索)に掲載された含水率データである。
【0021】
含水率は、乾量基準含水率と、湿量基準含水率の2種類の定義の仕方で算出される。乾量基準含水率は、(乾燥前重量-乾燥後重量)/乾燥後重量で定義される。また、湿量基準含水率は、(乾燥前重量-乾燥後重量)/乾燥前重量で定義される。以下、本実施形態では、含水率として、湿量基準含水率が用いられる。
【0022】
図2の例では、湿量基準含水率で見た場合、立木の幹または立木の枝では、最も湿量基準含水率が低いのは、ナラの梢端または枝の37.7%である。また、最も湿量基準含水率が高いのは、スギの幹の56.0%である。したがって、一般的には、生木木材チップC1の湿量基準含水率は、37%から56%の範囲と考えることができる。
【0023】
<半炭化チップC2の特徴>
発明者らは、種々の木材が混合された第1の生木木材チップ群を加熱温度摂氏350度で11分加熱して、平均の湿量基準含水率25.2%の半炭化チップC21を得た。また、発明者らは、同様の第2の生木木材チップ群を摂氏330度で11分加熱して、平均の湿量基準含水率18.6%の半炭化チップC22を得た(以下、摂氏は省略する)。この結果から、発明者らは、生木木材チップC1を加熱温度300度から400度程度で、5分以上15分(または20分)程度加熱することで、湿量基準含水率20%から30%程度の半炭化チップC2を得る見通しを得た。なお、半炭化チップC21、C22は、半炭化チップC2を細分化したものの例である。
【0024】
<半炭化チップC21、C22の疎水性>
図3は、生木木材チップC1、半炭化チップC21および半炭化チップC22をそれぞれ水で浸漬させたときの経過時間に対する重量の変化を例示する図である。材料が水で浸漬された後の重量の変化が大きい場合、当該材料は、吸水性が高く、疎水性が低いといえる。したがって、図3は、生木木材チップC1と比較して、半炭化チップC21および半炭化チップC22の疎水性を測定した結果を例示する図であるといえる。なお、生木木材チップC1は、半炭化前の原料の木材片の一例である。
【0025】
図3で横軸は、水で浸漬後の経過時間であり、縦軸は、生木木材チップC1、半炭化チップC21および半炭化チップC22の重量の変化量を%で例示したものである。また、図3の測定では、生木木材チップC1、半炭化チップC21および半炭化チップC22は、それぞれ、一旦、乾燥装置によって、重量の変化がなくなるまでの乾燥させた後、それぞれを水で浸漬させたときの結果である。このような重量の変化はドライスタートの重量の変化と呼ばれる。
【0026】
図3のように、例えば、浸漬後40時間から80時間の間では、半炭化チップC21は、生木木材チップC1と比較して、重量の増加の割合(自身のドライスタート時の重量に対する増加の割合)が25%程度少ない。また、半炭化チップC22は、生木木材チップC1と比較して、重量の増加の割合(自身のドライスタート時の重量に対する割合)が50%程度少ない。すなわち、図3の結果は、半炭化チップが生木木材チップC1と比較して、水で浸漬させたときの吸水性が低いこと、つまり、疎水性が高いことを例示している。
【0027】
すなわち、半炭化チップC21は、生木木材チップC1と比較して、疎水性が高いとい
える。例えば、図3において、経過時間40時間において、生木木材チップC1の重量増加の割合は300%であり、半炭化チップC21の重量増加の割合は、約275%である。これは、浸漬後40時間から80時間の間維持される。したがって、浸漬後40時間から80時間の間、半炭化チップC21の吸水率は、概ね、生木木材チップC1に対して、275/300=91%であることが分かる。逆に、半炭化チップC21の疎水性が生木木材チップC1に対して300/275=1.09倍に改善することが分かる。
【0028】
また、経過時間40時間において、半炭化チップC22の重量増加の割合は、約250%である。したがって、浸漬後40時間から80時間の間、半炭化チップC22の吸水率は、概ね、生木木材チップC1に対して、250/300=83%であることが分かる。逆に、半炭化チップC22の疎水性が生木木材チップC1に対して300/250=1.2倍に改善することが分かる。
【0029】
図4は、生木木材チップ群を330度で11分加熱し、含水率18.617%となった半炭化チップC22での、ドライスタートとウェットスタートの疎水性の測定結果を比較する図である。図4図3と同様、横軸は、水で浸漬後の経過時間であり、縦軸は、半炭化チップC22の重量の変化量を%で例示したものである。図3で説明したように半炭化チップC22を一旦、重量の変化がなくなるまでの乾燥させることをしないで、製造装置1によって製造された半炭化チップC22に、そのまま水を浸漬させる処理はウェットスタートと呼ぶことができる。
【0030】
ただし、ウェットスタートの場合、半炭化チップC22は、平均含水率18.617%を有することから、浸漬後の重量の変化率は、ドライスタートと比較して小さくなる。そこで、図4では、ドライスタートでの半炭化チップC22(含水率0%)を基準とするため、ウェットスタートでの重量変化の測定結果は、29.66%の増加率を増加補正している。330度で半炭化したチップの含水率(湿潤基準)は平均18.617%であった。これはドライチップ1gに対して水0.22875gを含んでいる。ウェットスタートのグラフ(D22)は、水0.22875gを含んだウェットチップを1gとして、浸漬開始時(経過時間0)から重量が変化する曲線となる。このウェットチップ1gを乾燥させたドライチップの重量は1-0.22875=0.77125gである。ウェットスタートのグラフ(D22)とドライスタートのグラフ(C22)とを浸漬後の重量の増加率(%)で比較する場合、浸漬開始時(経過時間0)での双方の重量の基準を一致させる必要がある。そこで、例えば、ドライチップ量1gを基準とする場合は、ウェットチップは、1/(1-0.22875)=1.2966倍とする必要があり、ウェットチップの重量の増加率(%)のグラフ(D22)は、29.66%だけベースを上げることとなる(E22)。
【0031】
図4で、C22は、図3と同一の半炭化チップC22の重量の変化を例示するグラフである。D22は、ウェットスタートの場合の半炭化チップC22の重量の変化を例示するグラフである。E22は、ウェットスタートの場合の半炭化チップC22の重量の変化を29.66%の増加率で補正したグラフである。図4のようにドライスタートでの重量の変化(C22)と、補正されたウェットスタートでの重量の変化(E22)はほぼ一致する。したがって、ドライスタートか、ウェットスタートかによらず、浸漬後の重量の変化率は、半炭化チップC22において、適正に測定されていることが分かる。また、半炭化チップC21、生木木材チップC1においても、図4と同様の結果が得られると推定できる。
【0032】
<製造方法の手順>
図5は、生木木材チップC1となる生木(樹木)の種類と、加熱温度、および加熱時間の関係を例示する制御テーブルの構成を例示する図である。図2のように、生木木材チッ
プC1の含水率は、生木の種類によってほぼ特定できる。したがって、生木の種類ごとに加熱温度と、加熱時間を変化させて実験することで、半炭化チップC2の湿量基準含水率を適正値、例えば、20%から30%程度とするための加熱温度と、加熱時間を求め、図5の制御テーブルを得ることができる。図5は、記憶装置12が実験結果を基に記憶する制御テーブルの構成を例示する図である。すなわち、加熱温度と加熱時間とは、生木(樹木)の種類または木材片の含水率に応じて設定することができる。
【0033】
図5の例では、生木の種類ごとに、適正な加熱温度と適正な加熱時間との関係が例示されている。図5においては、生木の種類ごとに、複数の加熱温度と加熱時間が例示されている。ただし、これらの加熱温度と加熱時間の複数の組の中から、さらに、最適な加熱温度と加熱時間が選択されてもよい。なお、図5の例では、表の1行が生木木材チップC1を半炭化する加熱制御に対応している。図5の例で、生木木材チップC1を半炭化する加熱制御において、単一な一定の加熱温度と、その加熱温度での加熱時間が設定されている。しかし、製造装置1による製造方法は、このような手順に限定されない。製造装置1例えば、複数の加熱温度TMPkと加熱時間TMkの複数の組(TMPk、TMk)、k=1,2,3,によって、生木木材チップC1を半炭化してもよい。
【0034】
例えば、制御装置11は、製造装置1における電力消費量または燃料消費量を加熱温度と加熱時間の組毎に記録しておき、電力消費量または燃料消費量が経験的に最も小さくなる加熱温度と加熱時間の組を最適なものと決定すればよい。また、例えば、制御装置11は、加熱温度と加熱時間の複数の組によって製造された半炭化チップC2について、図3と同様のデータである浸漬後の重量の変化データの入力を受け、記録してもよい。そして、制御装置11は、相対的に重量変化の少ない半炭化チップC2(または、重量変化が最小の半炭化チップC2)での加熱温度と加熱時間を最適なものと決定してもよい。また、制御装置11は、例えば、含水量が20%乃至30%に制御させるときの加熱温度と加熱時間の複数の組のうち、半炭化処理された後の半炭化チップC2の疎水性が半炭化処理される前の生木木材チップC1よりも少なくとも1.09倍、または、1.2倍に改善した組を選択すればよい。また、制御装置11は、例えば、含水量が20%乃至30%に制御させるときの加熱温度と加熱時間の複数の組のうち、半炭化処理された後の半炭化チップC2の浸漬後の重量の変化の少ない組(疎水性が相対的に高く改善した組)を選択してもよい。また、制御装置11は、例えば、炭化処理された後の半炭化チップC2の疎水性が相対的に高く改善した複数組のうち、電力消費量または燃料消費量が経験的に最も小さくなる加熱温度と加熱時間の組を最適なものと決定すればよい。このような最適な加熱温度と加熱時間の組は、複数の加熱温度と加熱時間を含んでもよい。
【0035】
また、製造装置1は、加熱処理前に、原料となる生木木材チップC1の含水率をオペレータからの入力により取得してもよい。原料となる生木木材チップC1の含水率が得られる場合には、図5の表に代えて、生木木材チップC1の含水率の範囲と、加熱温度と、加熱時間との関係を用いて、半炭化チップC2の含水率を適正値とするための制御テーブルが作成されてもよい。ここで、生木木材チップC1の含水率の範囲は、数%ごと、例えば、5%、あるいは10%ごとに区切られた範囲である。
【0036】
さらに、生木の種類、生木の含水率等によって、原料を分類しないで、平均的な含水率を想定して、加熱温度と加熱時間と関係を用いて、半炭化チップC2の含水率を適正値とする制御テーブルが作成されてもよい。
【0037】
制御装置11は、平均的な含水率を得るため、例えば、製造装置1に投入される生木木材チップC1の生木の種類又は生木木材チップC1の含水率の入力を常時受け付けてモニタすればよい。そして、制御装置11は、現在時点で得られている平均の含水率の実績値を現在処理中の生木木材チップC1の含水率として用いてもよい。なお、制御装置11は
、制御装置11の入力装置等から、オペレータが入力した生木木材チップC1の生木の種類を順次記録しておけばよい。また、制御装置11は、制御装置11の入力装置等から、オペレータが入力した原料サンプルの含水率を順次記録しておけばよい。
【0038】
以上のように、常時、生木木材チップC1の平均的な含水率がモニタされている場合には、制御装置11は、含水率の範囲と、加熱温度と、加熱時間と関係を規定した制御テーブルを参照すればよい。ただし、制御装置11は、このようなモニタによる生木木材チップC1の平均的な含水率を所定期間、例えば、1ヶ月、1年等の期間継続して用いてもよい。また、制御装置11は、このようなモニタによる生木木材チップC1の平均的な含水率を日々または毎時更新してもよい。
【0039】
なお、制御装置11は、生木木材チップC1の種類(または生木木材チップC1の含水率)、加熱温度、加熱時間、および目標とする半炭化チップC2の含水率の関係を回帰分析によって実験式で特定してもよい。制御装置11は、制御テーブルではなく、回帰分析による実験式に、生木木材チップC1の種類(または含水率)、加熱温度、加熱時間、および目標とする半炭化チップC2の含水率のいずれか1つを目的変数とする。また、制御装置11は、残りのパラメータを独立変数とする実験式を求めて、メモリ上に記憶すればよい。そして、制御装置11は、例えば、加熱時間を目的変数とし、独立変数(加熱時間以外の加熱温度等)に値を入力し、加熱時間を求めてもよい。また、制御装置11は、加熱時間に代えて、加熱温度を目的変数とし、加熱温度以外を独立変数とする実験式をメモリ上に記憶し、加熱温度を求めてもよい。
【0040】
図6は、制御装置11による製造工程を例示する図である。この処理は、例えば、制御装置11内のCentral Processing Unit(CPU)またはプロセッサ等が制御装置11内
のメモリに実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより実行される。
【0041】
この処理では、まず、制御装置11は、処理対象の生木木材チップC1の種類から、目標温度、加熱時間を取得する(S1)。処理対象の生木木材チップの種類は、例えば、制御装置11に接続される入力装置上のユーザインターフェースから、オペレータの操作によって入力される。入力装置は、例えば、キーボード、タッチパネル、またはディプレイとポインティングデバイスとの組み合わせ等である。
【0042】
そして、制御装置11は、炭化炉10を目標値の温度まで加熱する(S2)。目標値の温度とは、炉内の空間の温度、原料の表面温度、または原料を加熱するガスの温度等である。S2の処理は、炭化炉10を目標の運転状態にするための初期加熱ということができる。
【0043】
次に、制御装置11は、炭化炉10の投入口から、生木木材チップC1を投入する(S3)。次に、制御装置11は、炭化炉10が目標温度で維持されるように加熱制御する(S4)。そして、制御装置11は、所定の加熱時間が経過したか否かを判定する(S5)。所定の加熱時間が経過していない場合、制御装置11は、処理をS4に戻す。S4、S5の処理では、生木木材チップC1は、例えば、摂氏300度乃至400度で、5分乃至15分間加熱される。一方、所定の加熱時間が経過した場合には、制御装置11は、半炭化チップを炭化炉10から排出する(S6)。
【0044】
次に、制御装置11は、処理を終了するか否かを判定する(S7)。処理を終了しない場合、制御装置11は、処理をS3に戻し、次の生木木材チップC1を投入する。次の生木木材チップC1を処理しない場合、例えば、制御装置11は、オペレータの操作のしたがって処理を終了する。なお、S1からS6までの処理は、1つのバッチ処理ということができる。ただし、連続処理または断続処理においては、S3からS6の処理が所定時間
ごとに繰り替えされことになる。
【0045】
<実施形態の効果>
本実施形態では、製造装置1および製造装置1による製造方法は、含水量37%超の生木木材チップC1を加熱し、含水量が20%乃至30%に制御するともに、表面の少なくとも一部を熱分解させる工程により、半炭化チップC2を製造する。したがって、生木木材チップC1により、安定して大量に含水量が20%乃至30%の半炭化チップC2を製造できる。
【0046】
上記表面の少なくとも一部を熱分解させる工程は、例えば、生木木材チップC1を摂氏300度乃至400度で、5分乃至15分間加熱する工程を含む。したがって、製造装置1および製造装置1による製造方法は、15分以内の比較的短時間の処理で、半炭化チップC2を製造できる。また、製造装置1および製造装置1による製造方法は、生木木材チップC1の生木の種類、原料の含水率に応じて、適切な加熱温度と加熱時間を選択し、炭化炉10での電力消費量、または、燃料消費量を抑制できる。また、製造装置1および製造装置1による製造方法は、生木木材チップC1の生木の種類、原料の含水率に応じて、適切な加熱温度と加熱時間を選択することで、製造される半炭化チップC2の疎水性を向上できる。
【0047】
原料である生木木材チップC1は、伐採後に乾燥処理がなされていない木材片である。したがった、製造装置1および製造装置1による製造方法は、前処理のされていない生木の原料を使用して、大量の半炭化チップC2を製造できる。
【0048】
本実施形態における半炭化チップC2は、含水量が20%乃至30%であり、表面の少なくとも一部が熱分解されている。半炭化チップC2は、通常の半炭化チップと比較して、比較的高い含水率を有し、質量が重い。その結果、半炭化チップC2は、燃焼炉で、石炭等、他の燃料と混燃される場合でも、燃焼炉内に発生する熱風によって吹き上げられる可能性を低減し、安定した混燃の実施に効果を発揮する。すなわち、本実施形態の半炭化チップの製造装置、および製造方法は、非バイオマス燃料との混燃において取り扱いが容易な半炭化チップを製造することを可能にする。また、例えば、比重の小さい物質は、より比重の大きい物質とともに攪拌しても混ざり合いにくい、という特性がある。そのため、本実施形態の半炭化チップは、燃料の攪拌混合の取扱いを容易にすることができる。
【0049】
本実施形態における半炭化チップC21(生木木材チップ群を加熱温度350度で11分加熱)は、原料である生木木材チップC1と比較して、浸漬後40時間から80時間の間では、疎水性が少なくとも1.09倍に改善した。また、半炭化チップC22(生木木材チップ群を加熱温度330度で11分加熱)は、原料である生木木材チップC1と比較して、浸漬後40時間から80時間の間では、疎水性が少なくとも1.2倍に改善した。したがって、本実施形態の半炭化チップC21、C22は、屋外において、雨にさらされるような環境においても、含水率等の特性を維持しやすい。
【符号の説明】
【0050】
1 製造装置
10 炭化炉
11 制御装置
12 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水量が37%超の複数種類の木材が混合された木材片を加熱し、
前記含水量を20%乃至30%に制御するともに、
表面の少なくとも一部を熱分解させる工程を含む半炭化片の製造方法。
【請求項2】
前記熱分解させる工程は、前記木材片を摂氏300度乃至400度で、5分乃至15分間加熱する工程を含む請求項1に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項3】
前記木材片は、伐採後に乾燥処理がなされていない木材片である請求項1に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項4】
前記熱分解させる工程では、前記木材片となっている樹木の種類または前記木材片の含水率に応じて加熱温度と加熱時間が設定される請求項1に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項5】
前記加熱温度と加熱時間は、前記含水量を20%乃至30%に制御させるときの加熱温度と加熱時間の複数の組のうち、前記熱分解させる工程における電力消費量または燃料消費量が相対的に少ない組が選択される請求項4に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項6】
木材片を水で浸漬後の経過時間の所定範囲における重量の増加率の逆数によって疎水性を定義した場合に、前記加熱温度と加熱時間は、前記含水量を20%乃至30%に制御させるときの加熱温度と加熱時間の複数の組のうち、前記熱分解させる工程によって処理された後の半炭化片の前記疎水性が前記熱分解させる工程によって処理される前の木材片よりも1.09倍に改善した組が選択される請求項4に記載の半炭化片の製造方法。
【請求項7】
含水量が20%乃至30%であり、表面の少なくとも一部が熱分解されている、複数種
類の木材が混合された木材片。
【請求項8】
木材片を水で浸漬後の経過時間の所定範囲における重量の増加率の逆数によって疎水性を定義した場合に、前記表面の少なくとも一部が熱分解される前の原料の木材片と比較して、前記熱分解によって、前記疎水性が少なくとも1.09倍に改善している請求項7に記載の木材片。
【請求項9】
木材片を水で浸漬後の経過時間の所定範囲における重量の増加率の逆数によって疎水性を定義した場合に、前記含水量が少なくとも18%であり、前記表面の少なくとも一部が熱分解される前の原料の木材片と比較して、前記熱分解によって、前記疎水性が少なくとも1.2倍に改善している請求項7に記載の木材片。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
開示の実施形態は、半炭化片の製造方法によって例示できる。この製造方法は、含水量37%超の木材片を加熱し、前記含水量を20%乃至30%に制御するともに、表面の少なくとも一部を熱分解させる工程を含む。また、開示の実施形態は、含水量が20%乃至30%であり、表面の少なくとも一部が熱分解されている木材片によって例示される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
<実施形態の効果>
本実施形態では、製造装置1および製造装置1による製造方法は、含水量37%超の生木木材チップC1を加熱し、含水量が20%乃至30%に制御するともに、表面の少なくとも一部を熱分解させる工程により、半炭化チップC2を製造する。したがって、生木木材チップC1により、安定して大量に含水量が20%乃至30%の半炭化チップC2を製造できる。