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特開2024-16218リポタンパク質アフェレーシスを受けている高脂血症の患者を治療するための抗PCSK9阻害抗体
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  • 特開-リポタンパク質アフェレーシスを受けている高脂血症の患者を治療するための抗PCSK9阻害抗体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016218
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】リポタンパク質アフェレーシスを受けている高脂血症の患者を治療するための抗PCSK9阻害抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240130BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20240130BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P3/06 ZNA
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C07K16/40
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023191963
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2021151754の分割
【原出願日】2016-08-17
(31)【優先権主張番号】62/206,326
(32)【優先日】2015-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/264,361
(32)【優先日】2015-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/270,790
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/291,571
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/311,455
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/367,374
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・シー・ポーディー
(72)【発明者】
【氏名】ガレン・マンヴェリアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者のリポタンパク質アフェレーシス治療の必要性を低減又は除去するための方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物を患者に投与することを含む。特定の実施形態では、PCSK9阻害剤とは抗PCSK9抗体である。本発明の方法は、リポタンパク質アフェレーシス(例えば、LDLアフェレーシス又はLp(a)アフェレーシス)を含む治療レジメンで現在治療をうけている患者の高脂血症及びそれに関連する状態の治療に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標とするリポタンパク質レベルを達成するために患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシス療法を除去する又は患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシス治療の頻度を低減する方法であって、初期の頻度(治療前)でリポタンパク質アフェレーシス療法を実施している又は実施していた、高コレステロール血症である患者を選択し、次いで、PCSK9阻害剤を一回又はそれ以上の用量で患者に投与し、それにより、患者の血清中の少なくとも1種のリポタンパク質のレベルを低減して、目標とするリポタンパク質レベルを達成するために患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシスの頻度を低減することを含む方法。
【請求項2】
アフェレーシスの初期(治療前)頻度が、週に1回又は2週間に1回である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PCSK9阻害剤を1回又はそれ以上の用量で投与した後のアフェレーシスの頻度が、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、又は5週間に1回未満の頻度である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
PCSK9阻害剤を1回又はそれ以上の用量で投与した後、患者は、もはや目標とするリポタンパク質レベルを維持するためのアフェレーシスを必要としない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
PCSK9阻害剤により1回又はそれ以上の用量で治療する前に、患者を、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(HeFH)又はホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)及び/又は高リポタンパク質(a)(Lp(a))であると診断する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リポタンパク質アフェレーシス療法が、カスケード濾過、免疫吸着、ヘパリン誘導LDL沈殿、LDL吸着(デキストラン硫酸)リポソーバー、LDL血液灌流、及びLDL-血液灌流(リポソーバーD)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
PCSK9阻害剤により1回又はそれ以上の用量で治療する前又はその時点で、患者が、PCSK9阻害剤の最初の用量を投与する前少なくとも2週間前、初期(治療前)頻度でリポタンパク質アフェレーシスを安定した予定で行っている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
患者が、PCSK9阻害剤による1回又はそれ以上の用量の投与を受ける前、安定したバックグラウンドで脂質変性療法(LMT)を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
患者が、PCSK9阻害剤による1回又はそれ以上の用量の投与をうけるのと並行して、安定したバックグラウンドで脂質変性療法(LMT)を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
安定なバックグラウンドのLMTが、低、中、又は高用量のスタチン療法である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
PCSK9阻害剤による1回又はそれ以上の用量の投与後に患者の血清中で低下するリポタンパク質が、LDL-C、ApoB、非-HDL-C、総コレステロール、及びLp(a)から成る群から選択される1種又はそれ以上のリポタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
目標とするリポタンパク質レベルが、200mg/dL未満、130mg/dL未満、100mg/dL未満、又は70mg/dL未満の血清LDL-Cレベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
PCSK9阻害剤が、PCSK9に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
PCSK9に特異的に結合する抗体又は抗原結合タンパク質約75mg用量を、2週間に1回の頻度で患者に投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
PCSK9に特異的に結合する抗体又は抗原結合タンパク質約150mg用量を、2週間に1回の頻度で患者に投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
PCSK9に特異的に結合する抗体又は抗原結合タンパク質約300mgの用量を、4週間に1回の頻度で患者に投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
PCSK9に特異的に結合する抗体又は抗原結合タンパク質を、2週間に1回の頻度で約140mgの用量を患者に投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
PCSK9に特異的に結合する抗体又は抗原結合タンパク質を、4週間に1回の頻度で約420mgの用量を患者に投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
抗体又は抗原結合断片が、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ及びラルパンシズマブからなる群から選択される、請求項13~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
抗体又は抗原結合タンパク質がアリロクマブである、請求項14~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
抗体又は抗原結合タンパク質がエボロクマブである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項22】
抗体又はその抗原結合断片が、配列番号1/6を有するHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖及び軽鎖CDRを含む、請求項13~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
抗体又はその抗原結合断片が、配列番号2,3,4,7,8及び10を有する重鎖及び軽鎖CDRアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗体又はその抗原結合断片が、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVR及び配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高レベルの脂質及びリポタンパク質に関連する疾患及び障害の治療的処置の分野に関する。より具体的には、本発明は、高脂血症及び関連する状態を有し、現在、リポタンパク質アフェレーシス(例えば、LDLアフェレーシス又はLp(a)アフェレーシス)を含む治療レジメンで治療している患者を治療するためのPCSK9阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高脂血症とは、血液中の上昇したレベルの脂質及び/又はリポタンパク質により、特徴付けられるか、又は関連付けられる疾患及び障害を包含する一般的用語である。高脂血症には、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂血症と高リポタンパク質a(Lp(a))との組合わせが含まれる。多くの集団において特に流行している高脂血症の形態は、高コレステロール血症である。多くの集団において、蔓延している高脂血症の特定の形態は、高コレステロール血症である。
【0003】
高コレステロール血症、特に低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL-C)レベルの上昇は、アテローム性動脈硬化症及び冠状動脈性心疾患(CHD)の発症の主要リスクを構成する(非特許文献1)。低密度リポタンパク質コレステロールは、コレステロール低下療法の主要な標的として同定され、有効な代替治療エンドポイントとして一般に受け入れられている。多くの研究で、LDL-Cレベルを低下させると、LDL-CレベルとCHDイベントとの間の直接的で強い関係で、CHDのリスクが低下することを実証しており、LDL-Cの1mmol/L(約40mg/dL)の減少につき、心血管疾患(CVD)の死亡率及び罹患率が22%低下する。LDL-Cの減少が大きいほど、より大きなイベントの減少を産み出し、しかも、標準的なスタチン治療との集中的な比較データは、LDL-Cレベルが低いほど、心血管(CV)リスクが非常に高い患者の利益がより大きくなることを示唆している。
【0004】
家族性高コレステロール血症(FH)は、先天的な脂質代謝障害であり、このような人はより早い時期から心臓血管疾患(CVD)にかかりやすくなる。低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL-C)の肝クリアランスに関与するタンパク質をコードする少なくとも3種の異なる遺伝子が欠損すると、FHを引き起こし得る。そのような欠損の例としては、循環からLDL-Cを除去するLDL受容体(LDLR)をコードする遺伝子、及びLDL粒子の主要タンパク質であるアポリポタンパク質(Apo)Bの遺伝子、における突然変異が挙げられる。ある種のFHの場合、LDLRの分解に関与する酵素(機能変異の獲得)であるプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)をコードする遺伝子が変異されている。すべての症例において、FHは、出生からの血漿中のLDL-Cの蓄積、及び腱のキサントーマ、キサンテラスマ、アテローム、及びCVDのその後の発生を特徴とする。FHは、個体が有する遺伝子に関連するコピーの遺伝的欠陥を1つの(ヘテロ接合性)又は両方の(ホモ接合性)に有するかどうかに応じて、ヘテロ接合FH(heFH)又はホモ接合FH(hFH)の何れかに分類することができる。
【0005】
現在のLDL-C低下薬には、スタチン、コレステロール吸収阻害薬、フィブラート、ナイアシン、及び胆汁酸封鎖剤が挙げられる。スタチンは、LDL-C低下のために一般的に処方される治療である。しかし、このような脂質低下療法が利用可能であるにもかかわらず、多くの高リスク患者は、それらのガイドラインの目標としてのLDL-Cレベル
に達することができない(非特許文献2)。利用可能な脂質改変治療(LMT)にもかかわらず、依然としてLDL-Cのガイドラインの目標とするレベルを達成できない患者のために、リポタンパク質アフェレーシス(例、LDLアフェレーシス)によるLDL-Cの機械的除去が時々処方される。リポタンパク質アフェレーシスは、血液からアポタンパク質B100含有リポタンパク質を除去する。これは、進行性心血管疾患と永続的に上昇したLDL-Cを有する患者のための最後の頼みの綱として一般的に見なされている。
【0006】
然しながら、LDLアフェレーシスは、患者にとって侵襲的であり、負担の大きい高価な手順である。アフェレーシスは、一般に、患者からの機械的除去血液を含み、血液は体外で、遠心分離にかけ、ろ過又は他の分離工程に付し、望ましくない成分を除去し、次いで患者に再導入される。リポタンパク質アフェレーシスは、LDL-C濃度を50-75%まで急激に低下させ、これは、アフェレーシス実施間の時間平均で約30%LDL-C低下に換算出来る。通常のアフェレーシスプロセスは、血清リポタンパク質濃度が一時的に低下し、引き続く時間の間に、リポタンパク質レベルは、上昇した「ベースライン」レベルにほぼ直線的に戻ることを特徴とする。リポタンパク質アフェレーシス療法の特徴であるリポタンパク質レベルのこの変動パターンは、一つの個体の生涯にわたり必要とする周期的アフェレーシス処置の必要性を説明する。更に、地理上の所在地に関してはアフェレーシス施設の多くがまばらであるため、多くの患者はこの処置のために、相当な距離を旅行し、患者のLDL-Cレベルと心臓血管のリスクにも依るが、通常3時間以上にわたり、毎週から4週間毎に投与を受けなければならない。更に、この処置には、頻繁な血管利用のためのシャントを設置する必要もある。低密度リポタンパク質アフェレーシスは、一般に良く許容されてはいるが、低血圧、低カルシウム血症、アレルギー反応、及び血清タンパク質レベルの急激な低下をもたらし得る。脂質低下薬のみで治療した患者と比較すると、脂質低下薬の他にアフェレーシスを受けている患者が生活の質(QOL)(アンケートにより決定されるQoL)が、より低いことが報告されている(非特許文献3)。従って、最適化したLMT療法を受けたにもかかわらず、LDL-C目標に達していない患者、及びLDL-Cを低下させるためのアフェレーシスを必要とする患者は、アフェレーシスの必要性を低減又は除去する能力のある代替LDL-C低下療法に、多大な恩恵を受けるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sharrettら、2001、Circulation 104:1108-1113
【非特許文献2】Gittら、2010、Clin Res Cardiol 99(11):723-733
【非特許文献3】Schielら、1995、Int J Artif Organs 18:786-793
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リポタンパク質アフェレーシス療法を受けている患者における高脂血症の治療方法を提供する。本発明の治療方法は、血清リポタンパク質のレベルの低下をもたらし、それにより、患者のリポタンパク質アフェレーシスの必要性を除去又は低減するのに役立つ。特定の実施形態において、目標とするリポタンパク質のレベル(例、目標LDL-Cレベル)を達成するために患者が必要とするアフェレーシス治療の頻度は、本発明の治療方法を適用することにより低減される。特定の実施形態において、本発明の治療方法を患者に適用することにより、目標とするリポタンパク質レベル(例えば、目標LDL-Cレベル)を達成するためのアフェレーシスの必要性が除去される。
【0009】
一態様によれば、本発明の方法は、リポタンパク質アフェレーシスで治療している、若しくは(最近6ヶ月以内に)治療してきた患者に、PCSK9阻害剤の1種又はそれ以上の用量を投与することを含み、ここで、患者へのPCSK9阻害剤の投与が、患者の血清中のリポタンパク質の少なくとも1種のレベルの低下をもたらし、結果として、患者によるリポタンパク質アフェレーシス治療の必要性を低減又は除去する。
【0010】
別の態様によれば、本発明の方法は、初期(治療前)の頻度でリポタンパク質アフェレーシスで治療しているか又は治療してきた高コレステロール血症患者を選択すること、及び1回又はそれ以上のPCSK9阻害剤を投与することを含み、それにより、患者の血清中のリポタンパク質の少なくとも1種のレベルを低下させ、結果として、目標とするリポタンパク質レベルを達成するために患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシスの頻度を低下させる。
【0011】
本発明の方法により治療する又は治療可能な患者としては、例えば、家族性高コレステロール血症(FH)の患者を含む高コレステロール血症の患者が含まれる。特定の実施形態では、本発明の方法により治療する又は治療可能な患者は、ホモ接合FH(hoFH)又はヘテロ接合FH(heFH)と診断された(又は、そうでなければ有することが既知の)患者である。
【0012】
本発明の特定の実施形態によれば、PCSK9阻害剤は、患者における既存の脂質低下治療(例えば、患者のバックグラウンドであるスタチン療法のその上)へのアドオン療法として患者に投与される。
【0013】
本発明は又、リポタンパク質アフェレーシス治療の必要性を低減又は除去するために使用するか、又は患者によるリポタンパク質アフェレーシス治療の頻度を低減するために使用するためのPCSK9阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明の方法の観点で使用し得る代表的なPCSK9阻害剤には、例えば、抗PCSK9抗体、小分子PCSK9阻害剤、及び骨格をベースとするPCSK9結合分子が含まれる。
【0015】
本発明の他の実施形態は、以下に続く詳細な説明を概観することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本明細書の実施例2に記載された試験の全体計画を示す図である。 この試験には、2週間のスクリーニング期間、18週間の二重盲検治療期間、及び場合により8週間の追跡調査/非盲検の延長期間を含む。
図2図2は、プラセボ及びアリロクマブ治療患者群(ITT集団)における7週目から18週目までのアフェレーシス治療における個々の患者の減少の割合を示す滝プロットである。ポイントオブケア毎に休んだアフェレーシス治療のLDL-C値のみを、「アフェレーシスが起こらない」ものとしてカウントする。第7週から第18週までのアフェレーシス処置情報の欠落(何らかの理由で)は、来院時に「起こった」アフェレーシス処置の結果に起因するものとする。
図3図3は、プラセボ及びアリロクマブ治療患者群における第7週~第18週の標準化したアフェレーシスの割合を示す。アフェレーシスの割合は、x軸に沿って示されている。y軸は、対応するアフェレーシス割合範囲を示す患者のパーセンテージを示す。
図4図4は、第7週から第18週までの試験の種々の時点で、プラセボ及びアリロクマブで治療した患者のうちの、アフェレーシスを受けた患者の割合を示す。この表に示した患者は、試験開始時はアフェレーシスを毎週(QW)受けていた患者である。
図5図5は、第7週から第18週までの試験の種々の時点で、プラセボ及びアリロクマブで治療した患者のうちの、アフェレーシスを受けた患者の割合を示す。この表に示した患者は、試験開始時はアフェレーシスを2週間毎に受けていた患者(Q2W)である。
図6図6は、第7週から第18週までの試験の種々の時点で、プラセボ及びアリロクマブで治療した患者のうちの、アフェレーシスを受けた患者の割合を示す。この表に示した患者は、研究に登録した全患者を表す。
図7図7は、試験計画の全期間中の種々の時点での、プラセボ及びアリロクマブ治療の患者群におけるベースラインからのLDL-Cパーセント変化の計算値を示す。「アフェレーシス変動」と表示された黒い矢印は、LDL-Cレベルに基づいて個々の患者についてアフェレーシス頻度を前に進める時点を示す。この時点に先立ち、患者は、個々の患者のために確立したスケジュールに基づき一定の頻度でアフェレーシスを受けた。
図8図8は、試験期間中の種々の時点でのプラセボ及びアリロクマブ治療患者群における計算したLDL-Cレベル(LS平均(+/-SE)mg/dLで表される)を示す。「アフェレーシス変動」と表示された黒い矢印は、LDL-Cレベルに基づいて個々の患者についてアフェレーシス頻度を前に進める時点を示す。この時点に先立ち、患者は、個々の患者のために確立したスケジュールに基づき一定の頻度でアフェレーシスを受けた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明を記載する前に、本発明は、方法及び条件が変わる可能性があるため、記載した特定の方法及び実験条件に限定するものではないことを理解されたい。又、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、かつ、限定することを意図するものではないことも理解されたい、なぜなら、本発明の範囲は添付した特許請求の範囲によってのみ限定するつもりであるからである。
【0018】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書で使用する場合、「約」という用語は、列挙した特定の数値に関して使用する場合、その値は列挙した値から1%以下だけ変化し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用する表現「約100」は、99及び101ならびにその間のすべての値(例えば、99.1,99.2,99.3,99.4など)を含む。
【0019】
本発明の実施において、本明細書に記載されているものと類似又は等価な方法及び材料を任意に使用することができるが、ここでは好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書中で言及した全ての刊行物は、その全体を記載するために参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
リポタンパク質アフェレーシスの必要性を低減又は除去するための方法
本発明は、一般に、血清リポタンパク質レベル(例、LDL-C及び/又はLp(a))を低下させるために、リポタンパク質アフェレーシスを受けているか、又は受けてきた(例、最近6ヶ月以内又はそれ以上)患者のリポタンパク質レベルを低下させるための方法及び組成物に関する。特定の実施形態によれば、本発明の方法は、そのような患者の血清中のリポタンパク質レベルの低下をもたらし、その結果、リポタンパク質アフェレーシスの必要性を低減又は除去する。
【0021】
本明細書で使用する「リポタンパク質」という用語は、タンパク質と脂質の両方を含む生体分子粒子を意味する。リポタンパク質の例としては、例えば、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)及
びリポタンパク質(a)(Lp(a))が含まれる。
【0022】
本発明に関連して使用される場合、「リポタンパク質アフェレーシス」とは、患者から機械的な血液除去を行い、続いて患者の血液から、濾過、吸着、沈殿、等の工程を経て、リポタンパク質(例、LDL-C及び/又はLp(a))を除去し、そして最後に処理した血液を患者の血流の中に再導入することを含む治療工程を意味する。本開示の目的のために、「LDLアフェレーシス」及び「Lp(a)アフェレーシス」は、アフェレーシスの類型と見做し、従って、より一般的な定義「リポタンパク質アフェレーシス」の定義に包含される。
【0023】
本発明の観点の中に包含されるリポタンパク質アフェレーシスの特定の類型としては、例えば、二重膜濾過、免疫吸着、ヘパリン誘発LDL沈殿、脂質の直接吸着、デキストラン硫酸-セルロース吸着(血漿又は全血)、ヘパリン体外LDL沈降(HELP)システム、DFPP及び熱濾過血漿交換、及び血液灌流が挙げられる。
【0024】
本発明は、特定の実施形態によれば、リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性を除去する方法を含む。本明細書で使用する特定の患者の「リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性」は、患者の血清中で測定、又は検出される1種又はそれ以上のリポタンパク質(例、LDL-C及び/又はLp(a))のレベルに基づいて、医師、医師の助手、診断医、又は医療専門家により、決定される。患者の「リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性」は又、他の要因、例えば、患者の家族歴、医学的バックグラウンド、現在の治療療法の状況、並びに一般に受容され、若しくは流行している、全米医師会(national medical associations)及び医師集団によって採用された目標とするリポタンパク質により、決定され得る、又は影響を受け得る。例えば、特定の状況において、約70mg/dLに等しいかそれ以上のLDL-Cレベルは、患者による「リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性」を示す。他の状況では、約100mg/dLに等しいかそれ以上のLDL-Cレベルは、患者による「リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性」を示す。特定の状況では、約150mg/dL、200mg/dL、250mg/dL、300mg/dL、400mg/dLに等しいかそれ以上のLDL-Cレベルは、患者による「リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性」を示す。更に、他の観点では、LDL-C又はLp(a)レベルの減少が特定のパーセンテージに合致しているかどうかにかかわらず、特定の開始点「ベースライン」における患者のLDL-C又はLp(a)レベルとの相対比較を、患者が「リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性」を有するかどうかを決定するために使用しても良い。例えば、ベースラインから50%未満(例、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満等)のLDL-C又はLp(a)の減少は、「リポタンパク質アフェレーシス療法の必要性」を意味する。
【0025】
本発明は、特定の実施形態によれば、患者のリポタンパク質アフェレーシス療法の頻度を減少させる方法を含む。当業者には理解されるように、特定のリポタンパク質目標(例、LDL-Cレベル100mg/dL未満、又はLDL-Cレベル70mg/dL未満)を達成するために、患者を特定の頻度によるリポタンパク質アフェレーシス療法で治療しても良い。所定の頻度は、患者がリポタンパク質目標を達成し、かつ、維持するために、特定期間(例、毎週、毎月など)に患者が必要とするアフェレーシス治療の回数に基づいて決定される。代表的なリポタンパク質アフェレーシス頻度としては、例えば、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、2ヶ月に1回等が挙げられる。本発明は 1回又はそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与することにより、患者におけるリポタンパク質アフェレーシス療法の頻度を低減する方法を含む。本発明の特定の実施形態によれば、1回又はそれ以上のPCSK9阻害剤の投与後のアフェレーシスの頻度は、患者の治療前アフェレーシス頻度から少なくとも50%は減少する。例えば、PCSK9阻害剤による治療をする前の患者が、リポ
タンパク質アフェレーシス治療レジメン上、1週間に1回の頻度(QW)であり、PCSK9阻害剤による治療をした後の患者に関するアフェレーシス頻度が2週間に1回(Q2W)に減少した場合、患者は治療後にリポタンパク質アフェレーシス頻度の50%減少を達成したと言う。特定の実施形態では、本発明によるPCSK9阻害剤を1回又はそれ以上投与した後のアフェレーシスの頻度は、75%、又は100%低減した(即ち、治療後のリポタンパク質アフェレーシスの必要性の除去)。
【0026】
本発明との関連において、リポタンパク質アフェレーシス頻度は、治療前頻度及び治療後頻度の面から表しても良い。「治療前頻度」とは、PCSK9阻害剤の投与を含む治療レジメンの開始前に、目標とする特定のリポタンパク質レベルを達成及び/又は維持するために患者に必要とされていたアフェレーシス療法の頻度を意味する。「治療後頻度」とは、PCSK9阻害剤の投与を含む治療レジメンの開始後に、目標とする特定のリポタンパク質レベルを達成及び/又は維持するために患者に必要とされるアフェレーシス療法の頻度を意味する。特定の患者にとっての、目標とする特定のリポタンパク質レベルを達成及び/又は維持するために必要とされるアフェレーシス療法の頻度は、好ましくは、当業界で普遍的に受容されている、低減又は制御を望むリポタンパク質の血清レベル、を含む判定基準に基づき有資格医療専門家により決定される。
【0027】
従って、本発明は、1回又はそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与することを含む治療方法であって、患者のリポタンパク質アフェレーシスの治療後頻度が、患者のリポタンパク質アフェレーシスの治療前頻度より少ない。例えば、本発明は、PCTK9阻害剤の1回又はそれ以上の用量を、例えば週1回の治療前頻度でリポタンパク質アフェレーシス療法を受けているか又は受けていた患者に投与することを含む治療方法を含み、ここで、PCTK9阻害剤の1回又はそれ以上の用量を受けた後、目標とする特定のリポタンパク質レベル(すなわち、治療後頻度)を達成及び/又は維持するために患者に必要とされるリポタンパク質アフェレーシスの頻度は、例えば、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回、又はより少ない頻度である。いくつかの例では、目標とする特定のリポタンパク質レベルを達成及び/又は維持するために患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシスの必要性は、PCSK9阻害剤の1回又はそれ以上の用量を投与後に完全に除去される。
【0028】
特定の実施形態によれば、本発明は、リポタンパク質アフェレーシス治療の必要性を低減又は除去する方法であって、その方法は、最近月に、最近2ヶ月間に、最近3ヶ月間、最近4ヶ月間、最近5ヶ月間、最近6ヶ月間、又はより長い期間にわたり、リポタンパク質アフェレーシスで治療を受けている高脂血症(例えば高コレステロール血症)の患者を選出し、1回又はそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を投与することを含む。本発明のこの態様による方法は、患者の血清中の少なくとも1種のリポタンパク質のレベルを低下させ、結果として、患者によるリポタンパク質アフェレーシス療法の必要性を低減又は除去することが可能になる。例えば、本発明の特定の実施形態では、1回又はそれ以上の用量のPCSK9阻害剤の投与後、目標とする特定のリポタンパク質レベルを達成及び/又は維持するために患者に必要なリポタンパク質アフェレーシス療法の治療後頻度が低下するように、又はリポタンパク質アフェレーシスがもはや必要ないと結論付けられるように、患者の血清LDL-Cレベルを所定のレベル未満(例、100mg/dL未満又は70mg/dL未満)に低下させる。
【0029】
特定の実施形態において、アフェレーシスの割合(又は頻度)は、目標とする特定のリポタンパク質レベルを達成及び/又は維持するために患者に必要なアフェレーシスの正規化率として表される。本明細書中で使用される場合、特定の患者のアフェレーシスの正規化率は、抗PCSK9治療レジメンの開始後の定義された期間に亘り患者が受けた実際のアフェレーシス治療の回数を、抗PCSK9治療レジメンの開始前に同等の期間に亘り患
者が受けたアフェレーシス治療の回数で割ったものして定義する。例えば、抗PCSK9抗体の投与を含む治療レジメンを開始する前に、患者が8週間にわたり(例、週に1回)8回のアフェレーシス治療を受け、抗PCSK9治療レジメンを開始した後、患者が 8週間にわたり(例、4週間毎に1回)に2回のアフェレーシス処置を受けた場合、患者のアフェレーシスの正規化率は2/8=0.25である。本発明は、PCSK9阻害剤を投与した後の患者のアフェレーシスの正規化率が、例えば0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満、又は0.1未満である方法を含む。
【0030】
特定の実施形態によれば、本発明の方法により治療可能な患者は、高コレステロール血症(例、70mg/dL若しくは、それ以上の血清LDL-C濃度、又は100mg/dL若しくは、それ以上の血清LDL-C濃度)を有する。特定の実施形態において、患者の高コレステロール血症は、スタチン療法では不適切に制御される。例えば、本発明は、患者によるリポタンパク質アフェレーシス療法の頻度を低減又は除去する方法であり、その患者はアトルバスタチン(アトルバスタチン+エゼチミブを含む)、ロスバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン(シンバスタチン+エゼチミブを含む)、プラバスタチン、及びそれらの組合わせから成る群から選択されたスタチンの毎日の用量により不適切に制御される高コレステロール血症を有する。本発明は又、高コレステロール血症を有し、スタチン不耐性を示すか、又はスタチン療法に対して他の経験または望ましくない反応を経験(例、骨格筋痛、疼痛、衰弱又は痙攣(例えば、筋肉痛、筋障害、横紋筋融解症など))した患者によるリポタンパク質アフェレーシス療法の頻度を低減又は除去する方法を含む。
【0031】
脂質病変の治療法
本発明は更に、高コレステロール血症の身体徴候を治療し、復帰し又は回復するための方法及び組成物に関する。特定の実施形態によれば、本発明は、高コレステロール血症に関連する脂質病変を有する患者を治療するための方法を提供する。例えば、本発明は、1つ又はそれ以上のキサンテラスマ(xanthelasmata.)を有する患者を治療するための方法を提供する。本発明のこの態様による方法及び組成物は、1回又はそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含み、PCSK9阻害剤による治療の前に患者に存在していた脂質病変が、1回又はそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与した後に、減少し、回復し若しくは除去する。特定の実施形態によれば、本発明は、高コレステロール血症に関連する脂質病変を有する患者を治療する方法であって、脂質病変(例えば、キサンテン)を有する患者の選択と、患者への1回又はそれ以上の用量のPCSK9阻害剤の投与を含む。
【0032】
患者の選出
本発明は、リポタンパク質アフェレーシスを受けているか、又は最近(例、最近6ヶ月以内、最近12週間以内、最近8週間以内、最近6週間以内、最近4週間以内、最近2週間以内など)受けた患者を治療するのに有用な方法及び組成物を含む。本発明の方法によって治療可能な患者は又、1つ又はそれ以上の更なる選択基準を示すこともできる。例としては、患者が、例えば、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症(HIFH)、常染色体優性高コレステロール血症(ADH、例、PCSK9遺伝子における1つ又はそれ以上の機能獲得変異に関連するADH)、常染色体劣性高コレステロール血症(ARH、例、LDLRAP1における変異に関連するARH)並びに、家族性高コレステロール血症(非FH)とは明確に異なる高コレステロール血症の発生等の高コレステロール血症状態が発生するリスクが有ると診断又は同定された場合、患者は本発明の方法による治療を選択しても良い。家族性高コレステロール血症(例えば、heFH又はhoFH)の診断は、遺伝子型解析及び/又は臨床基準によって行うことができる。遺伝子型が決定されていない患者の場合、臨床診断は、明
確なFHの基準を有するSimon Broome基準又はスコア>8点を有するWHO/オランダの脂質ネットワーク基準の何れかに基づくことができる。
【0033】
特定の実施形態によれば、患者は、冠状動脈性心疾患(CHD)の病歴を有することに基づいて選出しても良い。本明細書で使用される「CHDの病歴」(又は「CHDの既往歴」)としては、(i)急性心筋梗塞(MI)(ii)無症候性MI(iii)不安定狭心症(iv)冠動脈血管再建術(例えば、経皮的冠動形成術(PCI)又は冠動脈バイパス移植手術(CABG))、及び/又は(v)侵襲的又は非侵襲的検査(冠動脈造影、トレッドミルによるストレス検査、負荷心エコー検査又は核医学イメージング(nuclear imaging)など)によって診断された臨床的に有意なCHD等、の内の一つ又はそれ以上を含む。
【0034】
特定の実施形態によれば、患者は、非冠状動脈性心疾患心血管疾患(「非CHD CVD」)を有することに基づいて選出しても良い。本明細書で使用される「非CHD CVD」としては、(i)以前の既往歴であり、アテローム血栓性起源であると考えられ、24時間を超えて持続した局所虚血性神経学的欠損を有する虚血性脳卒中(ii)末梢動脈疾患(iii)腹部大動脈瘤;(iv)アテローム性動脈硬化性腎動脈狭窄及び/又は(v)頸動脈疾患(一過性虚血発作又は頸動脈の50%超の閉塞)のうちの一つ又はそれ以上を含む。
【0035】
特定の実施形態によれば、患者は、以下の(i)~(iii)の内の1つ又はそれ以上の更なるリスク因子を有することに基づいて選出しても良く、例えば、(i)3ヶ月又はそれ以上30≦eGFR<60mL/mL/min/1.73m2であることで定義されるような、中程度の慢性腎疾患(CKD)の既往歴、(ii)標的臓器損傷(例えば、網膜症、腎症、微小アルブミン尿症)の有無には関わりなく、1型又は2型真性糖尿病、(iii)算出した10年間の致命的CVDリスクスコアが5%以上である(異常脂質血症の管理のためのESC/EASガイドライン、Conroy et al、2003、EuHeart J.24:987-1003)である。
【0036】
特定の実施形態によれば、患者は、年齢(例、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、又は80歳)人種、出身国、性別(男性又は女性)、運動習慣(例、定期的な運動者、非運動者)、他の既存の病状(例、II型糖尿病、高血圧等)、及び現在の投薬状態(例、現時点で摂取しているベータ遮断剤、ナイアシン、エゼチミブ、フィブラート、オメガ-3脂肪酸、胆汁酸樹脂など)から成る群から選ばれた一つ又はそれ以上の追加的リスクを有していることに基づき選出しても良い。
【0037】
本発明によれば、患者は、前述の選択基準又は治療特性のうちの1つ又はそれ以上の組合わせに基づいて選出しても良い。例えば、特定の実施形態によれば、本発明の方法での治療に適した患者は、リポタンパク質アフェレーシスを受けている、又は最近受けた(例えば、最近の6ヶ月以内に)外に、更に、(i)既往歴としてのCHD(ii)非CHD
CVD、及び/又は(iii)標的臓器損傷を有する真性糖尿病と組み合わせて、FH又は非FHを有することに基づいて選出しても良く、そのような患者はまた、70mg/dL以上の血清LDL-C濃度を有することに基づいて選択しても良い。
【0038】
特定の他の実施形態によれば、本発明の方法による治療に適した患者は、毎日の中程度の用量の治療用スタチン計画によって適切に制御されない高コレステロール血症を有する外に、更に、CHD又は非CHD CVD無しのFH又は非FH、を有することに基づいて選出しても良く、然し(i)算出された10年間の致命的CVDリスクSCORE≧5%であるか又は(ii)標的臓器損傷のない真性糖尿病のどちらか、そのような患者もまた、100mg/dL又はそれ以上の血清LDL-C濃度を有することに基づいて選択し
ても良い。
【0039】
アドオン療法としてのPCSK9阻害剤の投与
本発明は、リポタンパク質アフェレーシスを受けている患者、又は最近受けていた患者に、特定の投与量及び頻度に従ってPCSK9阻害剤を投与し、かつPCSK9阻害剤を、患者が既に実施している毎日の治療用スタチンレジメンにアドオンするように、患者が既に実施している毎日の脂質低下療法(適用出来る場合)へのアドオンとして投与する治療方法を含む。
【0040】
例えば、本発明の方法は、PCSK9阻害剤を、アドオン療法として、患者がPCSK9阻害剤を受ける前に実施している、同じ安定した毎日の治療用スタチンレジメン(即ち、スタチンの投与量は同じ)に投与するアドオン治療レジメンを含む。他の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9阻害剤を投与する前に患者が実施していたスタチンの用量より多い又は少ない量のスタチンを含む治療用スタチンレジメンへのアドオン療法として投与する。例えば、特定の投薬頻度及び量で投与されるPCSK9阻害剤を含む治療レジメンを開始した後、患者に投与又は処方されるスタチンの1日用量は、PCSK9阻害剤治療レジメンを開始する前に患者の治療ニーズに応じて、患者が摂取していた毎日のスタチン用量と比較して(a)同量を維持するか(b)増加するか、又は(c)減少して(例えば、アップタイトレーション又はダウンタイトレション)も良い。
【0041】
治療効果
本発明の方法は、LDL-C、ApoB100、非HDL-C、総コレステロール、VLDL-C、トリグリセリド、Lp(a)及び残存コレステロールからなる群から選択される1種又はそれ以上の脂質成分の血清レベルでの低下をもたらす。従って、本発明の治療レジメンのリポタンパク質低下効果は、患者が目標とするリポタンパク質のレベルを達成するためのリポタンパク質アフェレーシスの頻度を低減し、又は必要性を無くす。例えば、本発明の特定の実施形態によれば、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物を、リポタンパク質アフェレーシスを受けているか、又は最近受けた患者に投与すると、血清中の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のベースラインからの平均減少率が少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%、又はそれ以上、ApoB100中のベースラインからの平均減少率が少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%、又はそれ以上、非HDL-C中のベースラインからの平均減少率が少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%、又はそれ以上、総コレステロール中のベースラインからの平均減少率が少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%又はそれ以上、VLDL-C中のベースラインからの平均減少率が少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%又はそれ以上、トリグリセリド中のベースラインからの平均減少率が;少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%又はそれ以上、及び/又は、Lp(a)中のベースラインからの平均減少率が少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%又はそれ以上という結果をもたらす。
【0042】
本発明は、高コレステロール血症を有する患者を治療する方法であって、その方法は、複数回用量の抗PCSK9抗体を1用量あたり約75~150mgの投薬量で、及び2週間毎に約1回の投薬頻度、患者に投与すること(又は本明細書の他の箇所に記載されているようなアップタイトレーション投与レジメンに従う投与レジメン)を含み、ここで、患者はリポタンパク質アフェレーシスを受けているか、又は最近受けたことがあり、抗PCSK9抗体による治療の後、約12、14、16、18、20、22、24又はそれ以上の週に、患者は、LDL-Cレベルがベースラインから少なくとも50%の低下を示し、従って、患者によるリポタンパク質アフェレーシスの頻度が減少し又は、必要性の除去をもたらす。ある実施形態では、抗PCSK9抗体での治療後1週間又はそれ以上の後、患者は、ベースラインから約55%、60%、70%、又はそれ以上のLDL-Cレベルの
低下を示す。
【0043】
PCSK9 阻害剤
本発明の方法は、PCSK9阻害剤を含む治療用組成物を患者に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「PCSK9阻害剤」は、ヒトPCSK9に結合し、又は相互作用し、インビトロ又はインビボでPCSK9の正常な生物学的機能を阻害する任意の薬剤である。PCSK9阻害剤に分類される例としては、小分子PCSK9アンタゴニスト、PCSK9発現又は活性の核酸ベース阻害剤(例、siRNA又はアンチセンス)、PCSK9と特異的に相互作用するペプチドベースの分子(例、ペプチボディ)、PCSK9と特異的に相互作用する受容体分子、LDL受容体のリガンド結合部分を含むタンパク質、PCSK9結合骨格分子(例えば、DARPins、HEATリピートタンパク質、ARMリピートタンパク質、テトラリコペプチドリピートタンパク質、フィブロネクチンベースの骨格構築物、及び天然由来のリピートタンパク質ベースの他の骨格(例、Boersma and Pluckthun、2011、Curr。Opin。Biotechnol。22:849-857及び、その中に引用された参考文献参照])、及び抗PCSK9アプタマー又はその一部を挙げられるが、これらに限定する訳ではない。特定の実施形態によれば、本発明の観点で使用出来る、PCSK9阻害剤は、抗PCSK9抗体、又はヒトPCSK9に特異的に結合する抗体の抗原結合断片である。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語「ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型」又は「ヒトPCSK9」若しくは「hPCSK9」は、配列番号197に示される核酸配列を有するPCSK9及び配列番号198のアミノ酸配列、又はその生物学的に活性な断片を意味する。
【0045】
本明細書で使用する用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された2本の重(H)鎖及び2本軽(L)鎖である4本のポリペプチド鎖を含む、免疫グロブリン分子、並びにその多量体(例えば、IgM)を指すことを意図している。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVと略記)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2及びC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVと略記)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。V及びV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分し、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存される領域に散在させることが出来る。V及びVの各々は、3つのCDRと4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配置されている。本発明の種々の実施形態において、抗PCSK9抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であっても、又は天然に若しくは人工的に変性してあっても良い。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義することが出来る。
【0046】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。本明細書中で使用する抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」等の用語は、抗原に特異的に結合し複合体を形成する、天然に存在し、酵素的に入手可能な、合成された、又は遺伝子操作されたポリペプチド、又は糖タンパク質の何れをも含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質消化、又は抗体可変及び場合により定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組換え遺伝子工学技術などの適切な標準技術の何れかを使用して完全抗体分子から誘導しても良い。このようなDNAは公知であり、及び/又は例えば商業的供給源から、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、又は合成しても良い。DNAは、化学的に、又は分子生物学技術を用いて配列決定及び操作することができ、例えば、1つ又はそれ以上の可変及び/又は定常ドメインを適切な配置に並べ、又はコドンを導入し、又は、システイン残基を作
製し、アミノ酸を変性し、付加又は削除、等、しても良い。
【0047】
限定する訳ではないが、抗原結合断片の例としては、(i)Fab断片(ii)F(ab’)2断片(iii)Fd断片(iv)Fv断片(v)一本鎖Fv(scFv)分子(vi)dAb断片、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位、又は拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディ等)小モジュラー免疫薬剤(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメイン等、他の改変分子も又、本明細書中で使用する「抗原結合断片」という表現内に包含する。
【0048】
抗体の抗原結合断片は、通常は、少なくとも1つの可変ドメインを含むものである。可変ドメインは、任意のサイズ又はアミノ酸組成物でも良く、一般に、少なくとも1つのCDRを含み、1つ又はそれ以上のフレームワーク配列に隣接するか、又はフレーム内にある。Vドメインと会合したVドメインを有する抗原結合断片において、Vドメイン及びVドメインは、任意の適切な配置で互いに相対して位置し得る。例えば、可変領域は二量体であり、V-V、V-V又はV-V二量体を含んでも良い。或いは又、抗体の抗原結合断片は、単量体V又はVドメインを含んでも良い。
【0049】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合断片内に見出され得る可変ドメイン及び定常ドメインの代表的配置には、これに限定する訳ではないが、以下の(i)V-C1(ii)V-C2(iii)V-C3(iv)V-C1-C2(v)V-C1-C2-C3(vi)V-C2-C3(vii)V-C(viii)V-C1(ix)V-C2(x)V-C3(xi)V-C1-C2(xii)V-C1-C2-C3(xiii)V-C2-C3(xiv)V-Cが含まれる。上記に挙げた代表的な配置の何れかを含む、可変ドメイン及び定常ドメインの何れかの配置において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接連結していても良く、又は完全若しくは部分ヒンジ又はリンカー領域により連結していても良い。ヒンジ領域は、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上)のアミノ酸から成っていても良く、それは単一のポリペプチド分子内で、隣接する可変ドメイン及び/又は定常ドメインとの間で可撓性又は半可撓性の連結をもたらす。更に、本発明の抗体の抗原結合断片は、相互に非共有結合的に会合して、及び/又は1つ以上の単量体V又はVドメイン(例、ジスルフィド結合によって)と共に、上記に列挙した任意の可変及び不変ドメイン配置のホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含んでいても良い。
【0050】
完全抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合断片は、通常少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、可変ドメイン各々は、別々の抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を有する。本明細書中に開示する代表的な二重特異性抗体形式を含む任意の多重特異性抗体形式は、当該分野で利用可能な日常的な技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合断片の観点で適合させ使用しても良い。
【0051】
抗体の定常領域は、抗体が補体を固定し、細胞依存性細胞毒性を媒介する能力において重要である。従って、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞毒性を媒介することが望ましいかどうかに基づいて選択され得る。
【0052】
本明細書で使用する用語「ヒト抗体」とは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来す
る可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図している。それにもかかわらず、本発明のヒト抗体は、例えばCDR中で、及び特にCDR3中で、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例、インビトロでのランダム又は部位特異的突然変異誘発又はインビボでの体細胞突然変異により導入された変異)によっては、コードされないアミノ酸残基を含んでも良い。然しながら、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含まないことを意図している。
【0053】
本明細書中で使用する場合、用語「組換えヒト抗体」とは、組換え手段により、調製、発現、作製又は単離されるヒト抗体の全てを含むことを意図し、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体(更に後述する)、組換えした組合せヒト抗体ライブラリーから単離した抗体(更に後述する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子による遺伝子組換え動物(例えば、マウス)から単離した抗体(例、Taylorら(1992)Nucl。Acids Res。20:6287-6295を参照)又は、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列と他のDNA配列との継合わせを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体を含むことを意図している。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。然しながら、特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列の遺伝子組換動物が使用する場合、インビボでの体細胞突然変異誘発)に供され、従って、組換え抗体のV及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系のV及びV配列に由来し、かつ関連するが、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然では存在しない配列である。
【0054】
ヒト抗体は、ヒンジ異質性に関連する2つの形態で存在することができる。1つの形態では、免疫グロブリン分子は、約150~160kDaの安定な4本鎖構築物を含み、ここで二量体は鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されている。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されず、共有結合した軽鎖及び重鎖(半抗体)から構成される約75~80kDaの分子が形成されている。これらの形態は、アフィニティ精製後でさえ、分離することが極めて困難であった。
【0055】
種々のインタクトなIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造的差異に起因するが、これに限定する訳ではない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換により、第2の形態(Angalら(1993)Molecular Immunology 30:105)の出現を、ヒトIgG1ヒンジを用いて通常観察されるレベルまで顕著に低下させることが出来る。本発明は、ヒンジ、C2又はC3領域内に1つ又はそれ以上の変異を有する抗体を包含しても良く、これは、例えば、産生時にて所望する形態の抗体の収率を改善するために、望ましい。
【0056】
本明細書で使用する「単離された抗体」とは、同定され、その自然環境の少なくとも1つの成分から分離及び/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、又は抗体が天然に存在するか若しくは天然に産生する組織若しくは細胞から、分離又は除去された抗体が、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内のインシチュの抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1回の精製又は単離工程に供された抗体である。特定の実施形態によれば、単離された抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含み得ない。
【0057】
「特異的に結合する」などの用語は、抗体又はその抗原結合断片が、生理学的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラ
ズモン共鳴などが挙げられる。例えば、本発明の観点で使用されるPCSK9に「特異的に結合する」抗体としては、PCSK9又はその一部に結合する抗体を表面プラズモン共鳴アッセイで測定したKが約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、又は約0.5nM未満のものを含む。然しながら、ヒトPCSK9に特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のPCSK9分子のような他の抗原に対して交差反応性を有する。
【0058】
本発明の方法に有用な抗PCSK9抗体は、抗体の由来する対応する生殖系列配列と比較対照して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域における1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含んでも良い。そのような突然変異は、本明細書中に開示されるアミノ酸配列を、例えば公的抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認し得る。本発明は、本明細書に開示したアミノ酸配列の何れかに由来する抗体及びその抗原結合断片の使用に関わる方法を含み、1つ又はそれ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1つ又はそれ以上のアミノ酸が、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基に、又は別のヒト生殖系列配列の対応する残基に、又は対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換に変異する(そのような配列の変化を本明細書において集合的に「生殖系列突然変異」と呼ぶ)。当業者が、本明細書に開示される重鎖及び軽鎖可変領域配列から始めると、1つ又はそれ以上の個別の生殖系列突然変異又はそれらの組合わせを含む多数の抗体及び抗原結合断片を容易に産生することができる。特定の実施形態では、V及び/又はVドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基の全てが、抗体が由来した起源の生殖細胞系配列に見出される残基に戻って突然変異する。他の実施形態では、特定の残基のみ、例えばFR1の最初の8アミノ酸内又はFR4の最後の8アミノ酸内に見出される突然変異残基のみ、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内に見出される突然変異残基のみ、が元の生殖系列配列に戻って突然変異する。他の実施形態では、フレームワーク及び/又はCDR残基の1つ又はそれ以上が、異なる生殖系列配列(即ち、抗体が由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基に突然変異する。更に、本発明の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内に2つ以上の生殖系列突然変異の組合わせの何れかを含んでも良く、例えば、特定の個々の残基が特定の生殖系列配列の対応する残基に突然変異し、一方、元の生殖系列配列とは異なる特定の他の残基は維持されるか、異なる生殖系列配列の対応する残基に突然変異される。1つ又はそれ以上の生殖系列突然変異を含む抗体及び抗原結合断片は、一度得られれば、結合特異性の向上、結合親和性の増加、アンタゴニスト又はアゴニストとしての生物学的特性(場合による)の向上又は増強、免疫原性の低減、等の望ましい特性の1つ又はそれ以上を容易に試験できる。この一般的方法で得た抗体及び抗原結合断片の使用は、本発明に包含される。
【0059】
本発明は、又、1つ又はそれ以上の保存的置換を有し、本明細書中で開示したHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列の何れかの変異体を有する抗PCSK9抗体の使用に関わる方法も含む 。例えば本発明は、抗PCSK9抗体の有する、保存的アミ
ノ酸置換が、本明細書中に開示したHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列の何れかと比較して、例えば10個又はそれ以下、8個又はそれ以下、6個又はそれ以下、4個又はそれ以下である抗PCSK9抗体の使用を含む。
【0060】
本明細書で使用する「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIAcore(登録商標)システム(Biacore Life Sciences division of GE Healthcare, Piscataway, NJ).を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタ
イムでの相互作用を分析することが可能な光学現象を意味する。
【0061】
本明細書で使用する用語「K」とは、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すものとする。
【0062】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域内の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は1つ以上のエピトープを有し得る。従って、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合し、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、高次構造的又は線状の何れかであり得る。高次構造エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なる部分からのアミノ酸を空間的に並置することにより産生する。線状エピトープは、ポリペプチド鎖の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。特定の環境において、エピトープは、糖類、ホスホリル基又は抗原上のスルホニル基の一部を含み得る。
【0063】
特定の実施形態によれば、本発明の方法において使用される抗PCSK9抗体は、pH依存性の結合特性を有する抗体である。本明細書中で使用する場合、「pH依存性結合」という表記は、抗体又はその抗原結合断片が「中性pHと比較して酸性pHではPCSK9への結合性が減少する」を表すことを意味する(本開示の目的としては、両方の表記を交換可能に使用しても良い)。例えば、「pH依存性結合特性を有する」抗体としては、酸性pHより中性pHで高い親和性でPCSK9に結合する抗体及びその抗原結合断片が含まれる。特定の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合断片は、中性pHでは酸性pHよりも、少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍又はそれ以上の、高い親和性で、PCSK9に結合する。
【0064】
本発明のこの態様によれば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、親抗PCSK9抗体に比較すると、1つ又はそれ以上のアミノ酸変異を有し得る。例えば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、例えば親抗PCSK9抗体の1つ又はそれ以上のCDR中に1つ又はそれ以上のヒスチジン置換又は挿入を含み得る。従って、本発明の特定の実施形態によれば、親の抗体の1つ又はそれ以上のCDRの1つ又はそれ以上のアミノ酸がヒスチジン残基で置換されていることを除いて、親抗PCSK9抗体のCDRアミノ酸配列と同一であるCDRアミノ酸配列(例、重鎖および軽鎖のCDR)を含む抗PCSK9抗体を投与することを含む方法を提供する。pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、又はそれ以上のヒスチジン置換を有することが出来、それは親抗体の単一のCDR内に、又は親の抗PCSK9抗体の(例えば、2、3、4、5又は6つの)CDR全体を通して多重に分布している。例えば、本発明は、pH依存性結合を有し、親抗PCSK9抗体のHCDR1における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、HCDR2における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、HCDR3における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、LCDR1における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、LCDR2における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、及び/又はLCDR3における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、を含む抗PCSK9抗体の使用を含む。
【0065】
本明細書で使用する「酸性pH」という表記は、pH6.0又はそれ以下(例、約6.0未満、約5.5未満、約5.0未満等)を意味する。「酸性pH」という表記は、pH値が、約6.0、5.95、5.90、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0又は、それ以下を含む。本明細書中で使用する「中性pH」という表記は、pHが約7.0~約7.4を意味する。「中性pH」という表記は、pH値が約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7
.35、及び7.4を含む。
【0066】
本発明の観点において使用し得る抗PCSK9抗体の例としては、これに限定する訳ではないが例えば、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、ラルパンシズマブ、又は前述の抗体の抗原結合部分の何れかを挙げられる。
【0067】
ヒト抗体の調製
遺伝子組換えマウスにおいてヒト抗体を調製する方法は、当技術分野で公知である。このような既知の方法の何れかを本発明の観点で使用して、ヒトPCSK9に特異的に結合するヒト抗体を作製しても良い。
【0068】
モノクローナル抗体を生成するためのVELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、米国特許第6,596,541号、Regeneron Pharmaceuticals社参照)又は他の既知の方法を使用して、PCSK9に対して高親和性の、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有するキメラ抗体を最初に単離した。このVELOCIMMUNE(登録商標)技術は、遺伝子組換えマウスの作製を含み、そのマウスは抗原性刺激に応答してヒト可変領域及びマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内因性マウス定常領域座に作動可能に連結されたヒト重鎖及び軽鎖可変領域を含むゲノムを有する。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結させる。次いで、完全ヒト抗体を発現することが出来る細胞中でDNAを発現させる。
【0069】
一般には、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに対象の抗原を感作し、抗体を発現しているマウスからリンパ細胞(例えば、B細胞)を回収する。リンパ細胞をミエローマ細胞株と融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を調製し、そのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、次いで選択し、対象とする抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、次いで、重鎖及び軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域に連結しても良い。このような抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞内で産生しても良い。或いは、抗原特異的キメラ抗体をコードするDNA、又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインを、抗原特異的リンパ球から直接単離しても良い。
【0070】
最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。抗体は、当業者に知られた標準的な手順を使用して、親和性、選択性、エピトープなどを含む所望の特性について特徴付けし、選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域で置換し、本発明の完全ヒト抗体、例えば野生型又は変性IgG1又はIgG4.を産生する。選択する定常領域は具体的用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合及び標的特異性は可変領域に存在する。
【0071】
一般に、本発明の方法で使用し得る抗体は、固相上に固定化された抗原、又は溶液相中の抗原の何れかに結合することにより測定する場合、上記のように高い親和性を有する。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域で置換して、本発明の完全ヒト抗体を産生する。選択される定常領域は具体的用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合及び標的特異性は可変領域に存在する。
【0072】
本発明の方法の観点において使用し得るPCSK9に特異的に結合するヒト抗体又は抗体の抗原結合断片の具体的な例としては、重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)を有し、配列番号1及び11、又は、その配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列
を有する任意の抗体又は抗原結合断片を挙げることが出来る。或いは、本発明の方法の観点において使用し得るPCSK9に特異的に結合する抗体のヒト抗体又は抗原結合断片の具体的な例としては、重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)を有し、配列番号37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、141、149、157、165、173、181、及び189、又は、その配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列と実質的に類似の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する 任意の抗体又は抗原結合断片を挙げることが出来る。抗体又はその抗原結合断片は、配列番号6及び15、又はその配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含み得る。或いは、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、145、153、161、169、177、185、及び193、又はその配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含み得る。
【0073】
2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、参照アミノ酸配列の全長にわたって決定され、即ち、配列番号で同定したアミノ酸配列を、最良の配列アラインメントを用いて、及び/又は2つのアミノ酸配列間の最良の配列アラインメントの領域に亘って使用し、ここで、最良の配列アラインメントは、公知のツール、例えば 標準設定を用いるAlign、好ましくはEMBOSS:針、マトリックス:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を用いて、得ても良い。
【0074】
本発明の特定の実施形態では、抗体又は抗原結合タンパク質は、配列番号1/6及び11/15からなる群から選択される、重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列対(HCVR/LCVR)由来の6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。或いは、本発明の特定の実施形態では、抗体又は抗原結合タンパク質は、配列番号37/41、45/49、53/57、61/65、69/73、77/81、85/89、93/97、101/105、109/113、117/121、125/129、133/137、141/145、149/153、157/161、165/169、173/177、181/185及び189/193からなる群から選択される、重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列対(HCVR/LCVR)由来の6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。
【0075】
本発明の特定の実施形態では、本発明の方法で使用し得る抗PCSK9抗体又は抗原結合タンパク質は、配列番号2/3/4/7/8/10(mAb316P(「REGN727」又は「アリロクマブ」とも称す))及び12/13/14/16/17/18(mAb300N)(米国特許公開第2010/0166768号参照)から選択されるHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3アミノ酸配列を有し、ここで、配列番号16は、アミノ酸残基30(L30H)におけるロイシンのヒスチジンの置換を含む。
【0076】
本発明の特定の実施形態では、抗体又は抗原結合タンパク質は、配列番号1/6及び11/15からなる群から選択されたHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。特定の代表的な実施形態では、抗体又は抗原結合タンパク質は、配列番号1のHCVRアミノ酸配
列、及び配列番号6のLCVRアミノ酸配列を含む。特定の代表的な実施形態では、抗体又は抗原結合タンパク質は、配列番号11のHCVRアミノ酸配列及び配列番号15のLCVRアミノ酸配列を含む。特定の例示的な実施形態では、抗体又は抗原結合タンパク質は、配列番号11のHCVRアミノ酸配列、及びアミノ酸残基30(L30H)におけるロイシンのヒスチジン置換を有する配列番号15のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0077】
医薬組成物及び投与方法
本発明は、PCSK9阻害剤を患者に投与することを含む方法であり、ここでPCSK9阻害剤が医薬組成物内に含まれている。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、及び適切な移動、送達、耐容性などを付与する他の薬剤と共に処方される。製薬化学者全てに知られている処方集には、多くの適切な製剤を見出すことが出来る。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、ベシクル(LIPOFECTIN (登録商標)等)を含む脂質(カチオン性又はアニオン性)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、 水中油及び油中水エマルジョン、エマルジョンcarbowax(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びcarbowax含有半固体混合物を挙げることが出来る。Powell et al.“Compendium of
excipients for parenteral formulations”
PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311.も参照のこと。
【0078】
本発明の観点で使用出来る抗PCSK9抗体を含む代表的な医薬製剤には、米国特許第8,795,669号(就中、アリロクマブを含む代表的な製剤を記載)、又は国際特許第2013/166448号、又は国際特許第2012/168491号に記載されている何れかの製剤を挙げられる。
【0079】
種々の送達系が知られており、例えば、リポソーム中にカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、突然変異ウイルスを発現出来る組換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシス(例、Wu et. 1987、J.Biol。Chem。262:4429-4432
参照)。投与方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口経路が挙げられるが、これらに限定する訳ではない。組成物は、都合のよい任意の経路、例えば、注入又は大量投与により、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を通じた吸収により、投与しても良く、及び他の生物学的に活性な薬剤と共に投与しても良い。
【0080】
本発明の医薬組成物は、標準針及び注射器を用いて皮下又は静脈内に送達することができる。更に、本発明の医薬組成物を皮下送達するには、ペン送達装置を手軽に適用できる。このようなペン送達装置は、再使用可能又は使い捨て可能なもので良い。再使用可能なペン送達装置には、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物を全て投与し、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄出来、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換する。その後、ペン送達装置を再使用出来る。使捨て型ペン送達装置の中には、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使捨て型ペン送達装置は、医薬組成物が装置内のリザーバに保持されて予め充填されて売られている。リザーバの医薬組成物が一度空になれば、装置全体を廃棄する。
【0081】
多くの再使用可能なペン型及び自己注射器送達装置を本発明の医薬組成物の皮下送達に適用し得る。例としては、これに限定する訳ではないが、ほんの僅かな商品名を挙げるならば、AUTOPEN(登録商標)(Owen Mumford、Inc.、Woods
tock,UK)、DISETRONIC(登録商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(登録商標)ペン、HUMALOG(登録商標)ペン、HUMALIN 70/30(登録商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN), NOVOPEN(登録商標)I,II 及びIII(Novo Nordisk, Copenhagen,Denmark),、NOVOPEN JUNIOR(登録商標)(Novo Nordisk、Copenhagen,Denmark)、BD(登録商標)ペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ),、OPTIPEN(登録商標)、OPTIPEN PRO(登録商標)、OPTIPEN STARLET(登録商標)、及びOPTICLIK(登録商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)等挙げられる。使い捨てペン送達装置を本発明の医薬組成物の皮下送達に適用し得る例としては、これに限定する訳ではないが、ほんの僅かな商品名を挙げるならば、SOLOSTAR(登録商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(登録商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(登録商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(登録商標)自動注射器(AAmgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(登録商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、LP)及び、HUMIRA(登録商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)等挙げられる。
【0082】
特定の状況において、医薬組成物は制御放出系で送達し得る。一実施形態では、ポンプを使用しても良い(上記Langer、Sefton、1987、CRC Crit。Ref。Biomed。Eng。14:201参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用しても良い。Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Florida.を参照のこと。更に別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的近傍に配置することができるので、全身投与量のほんの一部しか必要としない(例、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、pp。115-138参照)。他の制御放出系は、Langer、1990、Science 249:1527-1533の総説で議論されている。
【0083】
注射用製剤は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴剤等用の剤形を含み得る。これらの注射用製剤は、公知の方法によって調製出来る。例えば、従来から注射用に使用されている滅菌水性媒体又は油性媒体中で、上記の抗体又はその塩を、溶解、懸濁又はエマルジョン化することにより、注射用製剤を調製しても良い。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースを含む等張液等の補助剤等が挙げられ、適当な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤((例、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物))等と組合せて使用しても良い。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油等を採用し、それらは安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤と併用しても良い。このようにして調製した注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填する。
【0084】
好都合には、上記の経口又は非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に合致するのに適する単位用量の剤形で調製される。このような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル化剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0085】
投薬量
本発明の方法に従って被験者に投与されるPCSK9阻害剤(例、抗PCSK9抗体)
の量は、一般に治療有効量である。本明細書中で使用する場合、語句「治療有効量」とは、LDL-C、ApoB100、非HDL-C、総コレステロール、VLDL-C、トリグリセリド、Lp(a)および残余コレステロールからなる群から選択される1種又はそれ以上のパラメーターにおいて、検出可能な減少(ベースラインから、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%又はそれ以上)をもたらすPCSK9阻害剤の用量、又は患者のリポタンパク質アフェレーシスの必要性を低減又は除去する量、又は(本明細書の他の場所で定義されているように)患者の正規化アフェレーシス割合を低下させる量を意味する。
【0086】
抗PCSK9抗体の場合、治療有効量は、約0.05mgから約600mgであれば良く、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130 mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、又は約600mgの抗PCSK9抗体で良い。本発明の特定の代表的な実施形態によれば、抗PCSK9抗体の治療有効量は、75mg、150mg若しくは300mg(例、アリロクマブの場合)又は140mg若しくは420mg(例、エボロクマブの場合)。PCSK9阻害剤の他の投与量は、当業者には、明らかになるであろうし、本発明の範囲内であると考えられる。
【0087】
個々の用量内に含有する抗PCSK9抗体の量は、患者の体重1キログラム当たりの抗体のミリグラム(即ち、mg/kg)で表し得る。例えば、抗PCSK9抗体は、患者の体重あたり約0.0001~約10mg/kgの用量で患者に投与し得る。
【0088】
併用療法
本明細書の他の箇所に記載したように、本発明の方法は、患者がそれ以前に、処方を受けた脂質低下療法と組合わせて、「その上に」PCSK9阻害剤を患者に投与することを含み得る。例えば、リポタンパク質アフェレーシスの必要性を低減又は除去するという観点において、PCSK9阻害剤を、毎日の安定したスタチン治療レジメンと組み合わせて患者に投与しても良い。本発明の観点においてPCSK9阻害剤を併用して投与しても良い代表的な一日のスタチン治療レジメンとしては、例えば、アトルバスタチン(毎日10、20、40又は80mg)、(アトルバスタチン/エゼチミブ毎日10/10又は40/10mg)、ロスバスタチン(毎日5,10又は20mg)、セリバスタチン(毎日0.4又は0.8mg)、ピタバスタチン(毎日1,2又は4mg)、フルバスタチン(毎日20,40又は80mg)、シンバスタチン(毎日5,10,20,40又は80mg)、 シンバスタチン/エゼチミブ(毎日10/10,20/10,40/10又は80/10mg)、ロバスタチン(毎日10,20,40又は80mg)、プラバスタチン(毎日10,20,40又は80mg)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の観点においてPCSK9阻害剤を併用して投与しても良い他の脂質低下療法としては、例えば、(1)コレステロール摂取及び/又は胆汁酸再吸収を阻害する薬剤(例えば、エゼチミブ)、(2)リポタンパク異化作用を増加させる薬剤(ナイアシンなど)及び/又は(3)22-ヒドロキシコレステロールのようなコレステロール除去において役割を果
たすLXR転写因子の活性化剤。
【0089】
本発明の特定の実施形態によれば、PCSK9阻害剤(例、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、又はラルパンシズマブなどの抗PCSK9抗体)をアンジオポエチン様タンパク質3の阻害剤(例、REGN1500のような抗ANGPTL3抗体)、アンジオポエチン様タンパク質4の阻害剤(例、米国特許第9,120,851号で「H1H268P」又は「H4H284P」を指す抗ANGPTL4抗体などの抗ANGPTL4抗体)、又はアンジオポエチン様タンパク質8の阻害剤(例、抗ANGPTL8抗体)と組合わせて、患者に投与することを含む方法を提供する。
【0090】
本発明の方法の観点において、追加的な治療有効成分、例えば上に列挙した薬剤又はその誘導体の何れかは、PCSK9阻害剤の投与の直前、同時、又は直後に投与しても良い(本開示の目的にとって、このような投与レジメンは、PCSK9阻害剤を追加的な治療有効成分と「併用して」投与すると見做す)。本発明は、PCSK9阻害剤を、本明細書の他の箇所に記載したように1又はそれ以上の追加的な治療有効成分と同時処方した医薬組成物及びその使用方法を含む。
【0091】
投与レジメン
本発明の特定の実施形態によれば、被験者にPCSK9阻害剤(即ち、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物)を多数回用量で、所定の時間の経過に亘り(例えば、毎日のスタチン治療レジメン又は他のバックグラウンドとなる脂質低下療法のその上に)投与を行なって良い。本発明のこの態様による方法は、被験者に多数回用量のPCSK9阻害剤を順次投与することを含む。本明細書で使用される「順次投与する」とは、PCSK9阻害剤の各用量を、異なる時点に、例えば、所定の間隔(例、時間、日、週又は月)で隔てた異なる日に被験者に投与することを意味する。本発明は、患者にPCSK9阻害剤を単一初期投与用量で投与し、次いで、PCSK9阻害剤を1回又はそれ以上の二次的投与用量で、及び場合により、引き続きPCSK9阻害剤を1回又はそれ以上の3次的投与用量を順次投与することを含む方法を挙げられる。
【0092】
用語「初回用量」、「二次用量」及び「三次用量」は、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物の個々の用量の経時的な投与順序を指す。従って、「初回用量」は、治療レジメンの開始時に投与する用量(「ベースライン用量」とも称す)であり、「二次用量」とは、初回用量の後に投与する用量であり、次に「三次用量」は、二次用量の後に投与する用量である。初回用量、二次用量及び三次用量は全て同量のPCSK9阻害剤を含有しても良いが、一般的に投与頻度という点では互いに異なっても良い。然しながら、特定の実施形態において、初回用量、二次用量及び/又は三次用量に含まれるPCSK9阻害剤の量は、治療過程の間で互いに異なる(例、適切に上下に調整する)。特定の実施形態では、2回又はそれ以上の(例、2,3,4又は5)用量が、「負荷用量」として治療レジメンの開始時に投与され、引き続き、より低い頻度を基準とする用量で投与される(例、「維持用量」)。
【0093】
本発明の代表的な実施形態によれば、二次及び/又は三次用量の各々は、直前の投与用量の1~26週間後(例えば、1、11/2、2、21/2、3、31/2、4、41/2、5、51/2、6、61/2、7、71/2、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、1
2、121/2、13、131/2、14、141/2、15、151/2、16、161/2、17、
171/2、18、181/2、19、191/2、20、201/2、21、211/2、22、221/2、23、231/2、24、241/2、25、251/2、26、261/2、又はそれ以上)に投与される。本明細書中で使用する「直前の投与用量」という語句は、多数回投与の順序において、介在する投与を挟むことない順序において將に次の用量投与の前に患者に投与される抗原結合分子の用量を意味する。
【0094】
本発明のこの態様による方法は、PCSK9阻害剤の任意の回数で二次及び/又は三次用量を患者に投与することを含み得る。例えば、特定の実施形態では、単回の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回又はそれ以上(例、2、3、4、5、6、7、8回又はそれ以上の)二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態では、単回の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回又はそれ以上(例、2、3、4、5、6、7、8回又はそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0095】
多数回の二次用量を含む実施形態では、二次用量の各々は、他の二次用量と同じ頻度で投与しても良い。例えば、二次用量の各々は、直前用量の1から2、4、6、8週又はそれ以上の週の後に患者に投与しても良い。同様に、多数回の三次用量を含む実施形態では、三次用量の各々は、他の三次用量と同じ頻度で投与しても良い。例えば、三次用量の各々は、直前用量の1から2,4,6,8週又はそれ以上の週の後に患者に投与しても良い。或いは、二次及び/又は三次用量を患者に投与する頻度は、治療レジメンの全過程に亘って変化しても良い。投与頻度は、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師による治療過程の間に調整しても良い。
【0096】
本発明は、アップタイトレーションオプション(本明細書では「用量修正」とも称す)を含む投与レジメンを含む。本明細書で使用する「アップタイトレーションオプション」は、特定の回数のPCSK9阻害剤を受けた後に、患者が1種又はそれ以上の定義した治療パラメータにおいて特定の減少を達成しない場合、PCSK9阻害剤の用量を、その後増量したことを意味する。例えば、75mg用量の抗PCSK9抗体を2週間に1回の頻度で患者に投与することを含む治療レジメンの場合、もし8週間後に(即ち、0週目、2週目、及び4週目、6週目及び8週目に5回投与をする場合)、患者が70mg/dL未満の血清LDL-C濃度を達成していない場合、抗PCSK9抗体の用量は、その後、例えば2週間に1回150mgに増加する(例えば、第10週又は第12週又はそれ以降に開始する)。
【0097】
特定の実施形態では、抗PCSK9抗体を、2週間毎に約75mgの用量で、被験者に投与し、例えば、少なくとも3回の用量の間(又は、日、週、月又は年に及ぶ治療レジメンの全過程に亘り)。
【0098】
特定の実施形態では、抗PCSK9抗体を、2週間毎に約150mgの用量で、被験者に投与し、例えば、少なくとも3回の用量の間(又は、日、週、月又は年に及ぶ治療レジメンの全過程に亘り)。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗体を、被験者に、2週間毎に約75mgの用量で12週間投与し、8週目に被験者のLDL-C値が100mg/dl未満であり、LDL-Cが30%減少であった場合、用量は2週間毎に約75mgのままである。
【0100】
他の実施形態では、抗体を、被験者に、2週間毎に約75mgの用量で12週間投与し、8週目に被験者のLDL-C値は100mg/dl又はそれ以上であるなら、用量は2週間毎に約150mgにアップタイトレーションする。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗体を、被験者に、2週間毎に約75mgの用量で12週間投与し、8週目に被験者のLDL-C値70mg/dl未満であり、LDL-Cが30%減少であるなら、2週間毎に約75mgの用量はそのままとする。
【0102】
別の実施形態では、抗体を、被験者に、4週間毎に約300mgの用量で投与する。
【0103】
更なる実施形態では、抗体を、被験者に、4週間毎に約300mgの用量で合計3回の用量を投与し、8週目に、被験者が所定の治療目標を達成しなかったか、又は被験者のLDL-Cがベースラインから少なくとも30%の減少を有しなかった場合、用量を2週間毎に約150mgの用量で追加の36週間投与に変更する。
【0104】
特定の実施形態では、抗PCSK9抗体を、被験者に4週間毎に約150mgの用量で少なくとも3回の用量を投与する。
【0105】
いくつかの実施形態において、抗体を、被験者に4週間毎に約150mgの用量で12週間投与し、8週目に、被験者のLDL-C値 が100mg/dl未満であり、かつLDL-Cが30%減少であるなら、4週間毎に約150mgの用量はそのままとする。
【0106】
他の実施形態では、抗体を、被験者に、4週間毎に約150mgの用量で12週間投与し、8週目に被験者のLDL-C値が100mg/dlに等しいか、又はそれ以上であるなら、2週間毎に約300mgの用量にアップタイトレーションする。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体を、被験者に、4週間毎に約150mgの用量で12週間投与し、8週目に、被験者のLDL-C値 が70mg/dl未満であり、かつLDL-Cが30%減少であるなら、4週間毎に約150mgの用量は、そのままとし、追加の12週とする。
【0108】
別の実施形態において、抗体を、被験者に、4週間毎に約300mgの用量で投与する。
【0109】
更なる実施形態では、抗体を、被験者に、4週間毎に約300mgの用量で合計3回の用量で投与し、8週目に、被験者が所定の治療目標を達成しなかったか、又は被験者のLDL-Cがベースラインから少なくとも30%の減少を有しなかった場合、用量を2週間毎に約150mgの用量で追加の36週間投与に変更する。
【実施例0110】
以下の実施例は、当業者に本発明の組成物、製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示され、かつ、発明者らが自分の発明と見做している範囲を限定することを意図するものではない。使用した数値(例、量、温度等)に関しては、正確さを保つための努力はしているが、いくらかの実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。他に示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はそれに近い。
【0111】
実施例1. ヒトPCSK9に対するヒト抗体の生成
ヒト抗PCSK9抗体を、米国特許第8,062,640号に記載されているように生成した。以下の実施例で使用される代表的なPCSK9阻害剤は、「mAb316P」と称するヒト抗PCSK9抗体であり、「REGN727」又は「アリロクマブ」としても知られている。mAb316Pは、以下のアミノ酸配列の特徴、即ち、配列番号5を含む重鎖及び配列番号9を含む軽鎖、配列番号1を含む重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号6を含む軽鎖可変領域(LCVR)、配列番号2を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号3を含むHCDR2、配列番号4を含むHCDR3、配列番号7を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)配列番号8を含むLCDR2、及び配列番号10を含むLCDR3、を有する。
【0112】
実施例2. 脂質アフェレーシス療法を受けているヘテロ接合性家族性高コレステロール血症患者におけるアリロクマブの有効性及び安全性を評価するための無作為化二重盲検プ
ラセボ対照並行群研究
緒言
本研究の目的は、LDLアフェレーシス療法を受けているHeFH患者におけるLDLアフェレーシス治療の頻度に及ぼす、2週間毎に1回投与する(「Q2W」)アリロクマブ150mgの効果をプラセボと比較して評価することであった。
【0113】
HeFHと診断され、LDLアフェレーシス療法を毎週1回又は2週間に1回の頻度で受けている成人男性及び成人女性を、この研究に登録した。被験者のLMTによるバックグラウンド治療は、研究全体を通して維持した。そのような患者では、対照としてのプラセボの選択が本研究の目的にとって適切である、といいうのはアリロクマブの有効性及び安全性について最も左右されにくい評価を提供するからである。
【0114】
アフェレーシスの技術及び期間に依るが、LDL-C値の平均的低減は30%~75%の範囲である(Bambauerら、Scientific World Journal、2012、2012:1~19)。毎週又は隔週の治療で、LDL-Cレベルを40~50%低下させることが出来る。本研究では、来診時のLDL-C値がベースライン(アフェレーシス前)のLDL-C値より30%以上低い場合、アフェレーシスは実施しなかった。LDL-Cレベルは、各アフェレーシス手順後にベースラインに向かって上昇するが、元のレベルには達しない。毎週又は隔週のアフェレーシスを繰り返すと、プラトーに達するまでベースラインレベルは低下し続ける(Thompsenら、Atherosclerosis、2006,189:31-38)。このように、LDL-Cレベルの30%低下に基づいて、アフェレーシスの必要性を判断するという基準は、理に適っていると言える、というのは、アリロクマブを投与して観察した場合、この低下は、アフェレーシスによる手順の場合とほぼ同等レベルのLDL-Cの低下を達成する時間経過と矛盾なく一致するからである。
【0115】
アリロクマブQ2W(75mg及び150mg SC)及びQ4W(150mg及び300mg SC)投薬レジメンを、アリロクマブの他の第三相試験で評価した。用量発見のための2回の試験結果に基づき、150mg Q2W投薬によって提供される12週目に最大の有効性を有する、Q2W投薬レジメンを選択し、すべての患者において、投与インターバルの間の全体に亘り、一定のLDL-C低下を維持した。ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症患者は、一般に高いベースラインLDL-Cレベルを有する。これらの患者が生涯にわたり、高いLDL-Cに曝露されることを考慮すると、その目標とするLDL-Cは、CVD又は他の危険因子の病歴にも依るが、100mg/dL又は70mg/dLの何れかである。彼らの目標とするLDL-Cに到達し、維持するために、そのような患者は、アリロクマブの最も強力な用量と、投与間隔の終了時に、この効果を維持するのに要した頻度、を必要としている可能性が非常に高いと推測された。従って、この研究のために150mgのQ2W用量を選択した。
【0116】
この研究の二重盲検治療期間において、1週間又は2週間毎にアフェレーシスを必要とするHeFH患者にアリロクマブ150mgをQ2Wで18週間投与しLDL-Cを低下させ、スクリーニングする前の8週間の頻度と比較して、第7週~第18週のアフェレーシスの頻度を低減する能力を評価した。患者には、非盲検治療期間中、76週目までアリロクマブQ2W 150mgを投与した。
【0117】
第2相試験、DFI11565、DFI11566、及びR727 CL1003からの予備的薬物動態(PK)データは、アリロクマブへの曝露が、二重盲検処置期間に続いて行なう8週間の追跡期間中に減少し、アリロクマブの総血清濃度は依然として検出可能であるが、非常に低いレベルであることを示した。従って、十分に低く、効果のない血清中のアリロクマブの濃度を確定するために、患者を8週間の追跡期間(即ち、最後の投与
から10週間)に追跡した。
【0118】
研究目的
研究の第一の目的は、毎週又は隔週毎にLDLアフェレーシス療法を受けているHeFH患者のLDLアフェレーシス治療の頻度に及ぼす、アリロクマブ150mgQ2Wの効果を、プラセボと比較して、評価することであった。
【0119】
この研究の第2の目的は以下の通りである。(a)LDLアフェレーシス療法を受けているHeFH患者のLDL-Cレベルに及ぼす、アリロクマブ150mg Q2Wの効果の評価。(b)研究期間中にLDLアフェレーシス療法を受けているHeFH患者における以下のパラメータ、ApoB、非HDL-C、総コレステロール、Lp(a)、HDL-C、TG及びApoA-1に及ぼす、アリロクマブ150mgQ2Wの効果の評価。(c)LDLアフェレーシス療法を受けているHeFH患者におけるアリロクマブ150 mg Q2Wの安全性及び耐用性の評価。(d)LDLアフェレーシス療法を受けているHeFH患者(QW対Q2W)におけるアリロクマブ150mgQ2WのPKの評価。(e)抗アリロクマブ抗体の開発の評価。(f)アリロクマブ療法ならびにアフェレーシス前後に対応するPCSK9レベルの評価。及び(g)これらの患者の生活の質(QOL)の評価。
【0120】
研究デザイン
本研究は、1週間又は2週間毎にLDLアフェレーシス療法を受けているHeFH患者の無作為化二重盲検プラセボ対照並行群試験であった。
【0121】
試験は、スクリーニング、二重盲検治療期間、非盲検治療期間、及び追跡調査の4つの期間からなっていた。二重盲検治療期間は、2つの間隔を含み、1日~6週目(1日目、15日目、及び29日目に試験薬剤の投与を予定)、この時に、個々の患者の確立された計画にアフェレーシス頻度を固定することになる、及び、7週目~18週目(43,57,71,75,99及び113日目に試験薬剤の投与を予定)、この時に、アフェレーシス頻度を患者の治療に対する反応に基づいて調整する。
【0122】
スクリーニング:スクリーニング来院(2週目)前の少なくとも4週間安定なアフェレーシス施設で(7日又は14日毎に)安定なアフェレーシス計画を受けていて、及び、スクリーニング来院(2週目)前の少なくとも8週間(2週目)、安定なバックグラウンド医療LMTを受けている患者が、2週間のスクリーニング期間に入った。
【0123】
二重盲検治療:すべての包含基準を満たし、除外基準が全くない患者を、2:1の比で無作為に割り当て、18週間の治療、アリロクマブ150mg SC Q2W、又は、アリロクマブSC Q2Wの代わりのプラセボ、を受けさせた。
【0124】
二重盲検治療期間中の治療用注射は、無作為化の日(第0週(1日目)/訪問2回目)からQ2Wで投与を開始した。最初の投与後30分間は、臨床現場で患者を監視した。LDLアフェレーシスが試験薬剤投与と一致した場合、試験薬剤はLDLアフェレーシス手順を完了した直後に投与した。
【0125】
第1日から第6週まで、アフェレーシス頻度は、個々の患者に確立されたスケジュール(QW又はQ2W)に固定された。7週目から、LDLアフェレーシスをその来院時のLDL-C値に基づいて投与した(ポイントオブケア試験により決定)。LDLアフェレーシスは、その来院時のLDL-C値が、アフェレーシスの前のベースライン(1日目)LDL-C値よりも少なくとも30%低い場合には投与しなかった。LDL-Cレベルの30%低下に基づいて、アフェレーシスの必要性を判断するという基準は、理に適っている
と言える、というのは、アリロクマブを投与して観察した場合、この低下は、アフェレーシスによる手順の場合とほぼ同等レベルのLDL-Cの低下を達成する時間経過と矛盾なく一致するからである。研究責任医師は、LDL-Cのポイントオブケア実験値に対して盲検化されたままであり、LDLアフェレーシスが投与されるべきかどうかについて警告を受けただけであった。
【0126】
非盲検治療:非盲検治療期間中、患者にアリロクマブ150mg SC Q2Wを投与した。治療は、二重盲検処置期間(第16週の最後の投与)の研究薬剤の最後の投与から第18週(非盲検治療期間の第1回投与)迄、通して、第76週迄中断せず継続した。
【0127】
非盲検治療期間中の最初の注射を、患者への注射訓練の一部として18週の来院時(非盲検治療期間の最初の来院)に投与した。その後の注射は、患者又は指定の介護者(配偶者、親戚など)により、患者の好む場所(例、家又は仕事先)で投与した。患者は、又、Q2Wサイトに戻ることを選択し、研究スタッフによる注射の投与を受けることも出来た。
【0128】
アフェレーシス治療は、研究の非盲検治療期間には必要ではなかった。研究責任医師の裁量で、患者は必要に応じてアフェレーシス治療を受け続けることが許可された。計画していたアフェレーシス手順が診療所訪問又はアリロクマブ投薬日と一致した場合、試験の評価はアフェレーシスの前に行い、アフェレーシス後にアリロクマブを投与した。
【0129】
追跡調査:患者は第86週の研究訪問終了時に面会した。
【0130】
研究全般:臨床検査室(脂質及び脂質専門班)のための全試料及びPK評価は、LDLアフェレーシス手順の直前及び直後(LDLアフェレーシスがその来院時に投与される場合)及び研究薬剤投与の前に得た。
【0131】
来院時にLDLアフェレーシスを受けない患者については、臨床検査評価のための全試料は、試験薬剤の投与前に得た。
【0132】
全体の安全性は、所定の時点で、TEAE、身体検査、バイタルサイン(脈拍数及び血圧)、心電図(ECG)、及び臨床安全試験室の監視/評価により評価した。抗アリロクマブ抗体の発生潜在力を評価した。アフェレーシス前後のPCSK9レベルを評価した。
【0133】
スタチン、エゼチミブ、フィブラート、ナイアシン、及び胆汁酸樹脂(但し、これに限定する訳ではない)を含む、血清脂質を変化させることが知られている全ての医薬品と栄養補助食品(赤酵母製品の摂取を含む)の使用はその治療がスクリーニング来院(第2週)前の少なくとも8週間安定していれば許可された。患者は、スクリーニングの開始を通じ治療終了時の来院まで、研究全期間中、バックグラウンドの医療LMTを継続して実施するように指示を受けた。
【0134】
患者の食事は、スクリーニングから開始して治療期間終了時の来院迄の、研究全期間中、安定を維持した。
【0135】
患者の運動計画は、スクリーニングから開始して治療期間終了時の来院迄の、研究全期間中、安定を維持した。
【0136】
患者の選別
研究プロトコルのために、米国及びドイツにおいて、高々15診療所、約63人の患者が登録されることが必要であった。患者は以下の通りに、無作為化された。登録患者の約
3分の1(約21人)がプラセボを受け、登録患者の約3分の2(約42人)がアリロクマブを受けた。
【0137】
集団は、HeFHと診断された成人男性及び女性で構成され、1週間又は2週間毎のLDLアフェレーシス療法を実施中であった。
【0138】
無作為化は、以下に従って層別化した。アフェレーシス頻度:QW対Q2W、及びベースラインLp(a)レベル:正常(30mg/dL未満)対上昇(30mg/dL)。LDL-Cの上昇している一部の患者はLp(a)レベルも上昇していたため、層別化によりプラセボ/治療群で適切な表現を確実にした。
【0139】
包含基準:この研究に登録される患者は、本研究に包含されるための条件1~6(下記)を満たし、適格となる必要があった。
【0140】
(1)スクリーニング来院時に18歳以上の男性及び女性。
【0141】
(2)HeFHの診断;(注HeFHの診断は、遺伝子タイピングにより又は臨床基準により、行った。遺伝子型が同定されていない患者の臨床診断は、確定的なFHについての基準を用いるSimon Broomeの基準、又はWHO/Dutch Lipid
Network基準でスコア>8点の何れかに基づいて行うことが出来よう。)
【0142】
(3)スクリーニング来院前(2週目)に、LDLアフェレーシス療法をQWで少なくとも4週間、又はQ2Wで少なくとも8週間、現に受けており、かつ、アフェレーシス治療をその前の少なくとも5ヶ月前に開始していた。(注:受容可能なアフェレーシス技術としては、二重膜濾過、免疫吸着、ヘパリン誘発LDL沈殿、脂質の直接吸着、デキストラン硫酸吸着(血漿)、デキストラン硫酸吸着(全血))。
【0143】
(4)診療所訪問及び研究関連手順に喜んで従うことが出来ること。
【0144】
(5)署名入りインフォームドコンセントを提供し、そして
【0145】
(6)研究関連のアンケートを理解し、完了することが出来ること。
【0146】
除外基準:以下の基準の何れかを満たした前向きの患者を研究から除外した。
【0147】
(1)ホモ接合型FH;
【0148】
(2)スクリーニング来院(2週目)の前の、バックグラウンド医療LMT(該当する場合)が少なくとも8週間安定していなかった。
【0149】
(3)毎週アフェレーシスを受けている患者で、スクリーニング来院(2週目)前に少なくとも4週間、及び、隔週アフェレーシスを受けている患者で、スクリーニング来院(2週目)前に少なくとも8週間、LDLアフェレーシ計画/アフェレーシス設定が安定的ではなかった。
【0150】
(4)QW~Q2W以外のLDLアフェレーシ計画。
【0151】
(5)スクリーニング来院(2週目)前、8週間以内に新しい運動プログラムを開始したか、又は運動していたが安定していない場合。
【0152】
(6)スクリーニング来院(2週目)前の8週間以内に新しいダイエットを開始したか、又はダイエットをしていたが安定していない場合。
【0153】
(7)スクリーニング来院(2週目)前、又はスクリーニング時の訪問と無作為化の時の訪問との間の少なくとも8週間前に、脂質に悪影響を及ぼすことが知られている栄養補助食品又は店頭薬療法を安定しない用量又は量で使用した場合。
【0154】
(8)血清脂質又はリポタンパク質に影響を及ぼすことが知られている臨床的に有意な制御されない内分泌疾患の存在;
【0155】
(9)甲状腺機能低下症の徴候及び症状(甲状腺置換療法が可能);
【0156】
(10)スクリーニング来院前12ヶ月以内の肥満外科手術歴(2週目)。
【0157】
(11)スクリーニング来院前2ヶ月以内の不安定な体重(変動>5kg)(2週目)
【0158】
(12)新しく診断された真性糖尿病(無作為化のための来院(第1日目)前3ヶ月以内に)又は制御不能な糖尿病(ヘモグロビンA1c[HbA1c]>9%)。
【0159】
(13)全身性副腎皮質ステロイドの使用、但し無作為化の前、少なくとも6週間下垂体/副腎疾患の置換治療として安定したレジメンで使用される場合を除く。局所、関節内、鼻内、吸入及び眼科用ステロイド療法は、「全身性」とはみなさず、許容される。
【0160】
(14)スクリーニング来院(2週目)前、6週間から治療レジメンが安定していなくても、エストロゲン又はテストステロン療法を使用し、かつ試験中にそのレジメンを変更する予定がない場合。
【0161】
(15)スクリーニング来院時(2週目)又は無作為化のための来院時(1日目)の最高血圧>160mmHg又は最低血圧>100mmHg[注:試験適格性についての血圧評価は、患者がアフェレーシス計画のためのスクリーニング時又は無作為化時に来院した2回の訪問の間の、所定の高血圧薬を服用せず、又は服用する予定がない場合の訪問時に得ても良い。
【0162】
(16)心筋梗塞(MI)、入院に至る不安定狭心症、冠動脈バイパス移植手術(CABG)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、制御不能な心臓不整脈、頸動脈手術又はステント挿入、脳卒中、一過性虚血、又は、スクリーニング来院前の3ヶ月以内(2週目)の頸動脈血管再生術、又はスクリーニング来院前の1ヶ月以内に(2週目)血管内処置若しくは末梢血管疾患のための外科的インターベンションの病歴。
【0163】
(17)スクリーニング来院前、12ヶ月以内の、ニューヨーク心臓協会の分類する心不全III期又はIV期の病歴。
【0164】
(18)出血性脳卒中の既往歴
【0165】
(19)過去5年間の癌の病歴、但し適切に治療された基底細胞皮膚癌、扁平上皮細胞癌、又はin situ子宮頸癌を除く。
【0166】
(20)ヒト免疫不全ウイルスの陽性試験の既往歴;
【0167】
(21)スクリーニングの1ヶ月、又は5半減期以内の何れか長い方の、有効な任意の
治験薬の使用。
【0168】
(22)他の何れかの臨床研究においてアリロクマブ又は他の何れかの抗PCSK9モノクローナル抗体を少なくとも1回投与され治療を受けた患者;
【0169】
(23)以下のような条件/状況。(a)スクリーニングの時点で臨床的に有意な異常であると特定された異常は、研究責任医師または副研究責任医師の判断で、研究の安全な完了やエンドポイントの評価の制約を排除する。例えば主要な全身性疾患、平均余命が短い患者。又は、(b)本研究のために不適切であると研究責任医師又は研究責任医師の何れかが考える何らかの理由、例えば、(i)予定通りの来院等の特定の実施要項の要件を満たすことが出来ないとみなされる。(ii)患者又は研究責任医師によって、注射に耐えられないとみなされる。(iii)研究責任医師又は副研究責任医師、薬剤師、研究進行者、その他の試験スタッフ又はその実施要項の実施に直接関与する関係者等。(iv)調査の期間中の患者の参加を束縛又は制限すると研究責任医師が、実際に又は予想されると、感じるその他の条件の存在(例えば、地理的又は社会的)
【0170】
(24)スクリーニング期間中の臨床検査所見(無作為化検査を含まない)(a)B型肝炎表面抗原及び/又はC型肝炎抗体の陽性検査(b)出産可能な女性の陽性血清β-hCG又は尿妊娠試験(c)TG>500mg/dL>5.65mmol/L)(1回の反復検査が可能)(d)4変数でのダイエット変更による腎疾患研究式に基づく(Central Labによって計算された)数値がeGFR<15mL/分/1.73m2;(e)アラニンアミノ転移酵素(ALT)又はアスパラギン酸アミノ転移酵素(AST)>3x、正常な上限値の3倍以上(ULN)(1回の反復実験が可能)(f)CPK>3×ULN(1回の反復実験が可能)。
【0171】
(25)モノクローナル抗体治療薬又は医薬品の何れかの成分に対する既知の過敏症。
【0172】
(26)妊婦又は授乳中の女性;
【0173】
(27)有効性の高い受胎調節の方法(インフォームドコンセントフォーム[ICF]及び/又は地方毎の要項補遺に定義されている)により、保護されていない、及び/又は妊娠検査が不本意でるか若しくは出来ない出産可能な女性。閉経後の女性は少なくとも12ヶ月間無月経でなければならない。
【0174】
研究治療
研究治療は、自動注入器又は充填済注射器中に入った150mg用量のアリロクマブ又はプラセボの1mLを単回でSC注入し、腹部、大腿部、に投与し、又は上腕部外側領域にQ2W投与した。
【0175】
二重盲検治療期間(第1日~第18週)中に、適格な患者を無作為化して、アリロクマブ150mg SC Q2W、又はアリロクマブSC Q2Wの代わりのプラセボを受けさせた。
【0176】
非盲検治療期間中、患者は、アリロクマブ150mg SC Q2Wを非盲検で受け、これは第18週に開始し、第76週に最後の用量を投与した。
【0177】
滅菌アリロクマブ薬剤を、ヒスチジン、pH6.0、ポリソルベート20及びショ糖中、の150mg/mLの濃度で自動注射器又は充填済注射器に入れて供給した。
【0178】
プラセボ適合性アリロクマブを、アリロクマブと同じ製剤でタンパク質の添加はなしに
、自動注射器又は充填済注射器中に入れて供給した。
【0179】
投薬日に病院の外で治験薬を注射するように選ばれた全ての患者及び/又は介護者は、注射を投与する前に研究スタッフによる訓練を受けた。患者/介護者は、18週目の来院時に治験薬の投与を指示され、18週目の来院時には、非盲検治療期間の初回投与を自己投与した。その後の注射は、患者(自己注射)又は指定された介護者(配偶者、親戚など)により、患者の好みの場所(例えば、家又は仕事場)において、Q2Wで投与した。
【0180】
患者は、施設Q2Wに戻り、試験担当者に注射を投与してもらうという選択肢も与えられた。
【0181】
治療割当て方法
患者は無作為に、プラセボ又はアリロクマブ150mgQ2Wを1:2の比率で投与するように割り当てられ、治療割り当ての均等な分布を確保するために置換ブロック設計を実施した。無作為化は、アフェレーシス治療の頻度(7又は14日ごと)及びLp(a)レベル(正常又は上昇)に従って層別化した。患者の2/3以上がアフェレーシスを受けないように登録は制限を設けた。
【0182】
二重盲検治療期間における割当て治療に関係なく、すべての患者は、非盲検治療期間中にアリロクマブ150mg Q2Wを受けた。
【0183】
併用療法
インフォームドコンセントの時点から追跡期間/最終研究来院の終了まで投与される何れの治療も、併用療法とみなされる。これには、試験前に開始され、かつ試験中に実施していた薬剤が含まれる。研究中の併用薬は最小限に維持した。患者の福祉のために必要であり、治験薬を妨害する可能性が低いと考えられる場合、(研究中に禁じられているものを除く)併用薬は、研究責任医師の裁量で、安定した投与量(可能な場合)で投与することを認めた。
【0184】
禁止薬物:スクリーニング来院前の少なくとも8週間(第2週)安定していないバックグラウンド医療LMTは何れも禁止される。
【0185】
許可薬物:血清脂質を変化させることが知られている、スタチン、エゼチミブ、フィブラート、ナイアシン、及び胆汁酸樹脂を含む、但しこれに限定する訳ではない、全ての薬物及び栄養補助食品(赤酵母製品の摂取を含む)の使用は、スクリーニング来院前の少なくとも8週間(2週目)安定した治療である限り、許可される。患者は、スクリーニング時の開始から治療終了の訪問まで、研究全期間中、バックグラウンドの医療LMTを継続して行うように指示を受けた。
【0186】
患者の食事は、スクリーニング時の開始から治療終了時の来院に至る、研究の全期間を通じて安定したままであった。
【0187】
患者の運動プログラムは、スクリーニング時の開始から治療終了時の来院に至る、研究の全期間を通じて安定したままであった。
【0188】
研究のエンドポイント
ベースライン特性には、標準的な人口統計学(例、年齢、人種、体重、身長など)、病歴を含む疾患の特徴、及び各患者の投薬履歴を含む。
【0189】
一次有効性エンドポイント:一次有効性エンドポイントは、週-10から週-2の、ス
クリーニング時の各患者の確立されたスケジュール、に従って計画されたアフェレーシス治療の回数で正規化された、7週目から18週目までの12週間の間のアフェレーシス治療の割合である。
【0190】
アフェレーシスの正規化割合は、各患者について、7週目から18週目に受けた実際のアフェレーシス治療の回数を、ベースライン時の無作為化層ごとに計画していたアフェレーシス治療の回数で割ったものとして定義される(Q2Wについては6、QWについては12)。
【0191】
18週前に患者が離脱した場合、実際のアフェレーシス手順の回数(7週目から18週目)は、分子の無作為化の階層に従って計画された残りのアフェレーシス治療の帰属数に加える。
【0192】
計画しているアフェレーシス治療に対する正規化の影響は、ベースラインで確立した各患者の計画に従って、異なるアフェレーシス計画(即ち、アフェレーシスがQW、又はQ2W)で研究に参入した患者について、同じ割合の尺度に均質化することを可能にする。
【0193】
二次有効性エンドポイント:二重盲検治療期間中のベースラインから特定のポストベースライン到達へのパーセント変化等の以下の脂質エンドポイントについては、アフェレーシス手順の前後で2つの時点を定義する。重要な有効性エンドポイントについては、各アフェレーシス手順の前に収集された評価を用いて脂質パラメーターを分析する。要項で指定した来院時にアフェレーシスが行われない場合、収集のために計画した単一の臨床検査評価を、両方の時点(即ち、主要有効性エンドポイントを含む)に使用する。ベースライン値は、治験薬剤の最初の二重盲検投与前の各パラメータについて、最後に入手可能な値として定義する。
【0194】
本研究の二次エンドポイントは以下の通りであった。
【0195】
(1)治療への遵守に関係なく、LDL-C(アフェレーシス前)のベースラインから第6週までのパーセント変化。
【0196】
(2)一次有効性エンドポイントと同様に定義された、15週目から18週目までの4週間の期間におけるアフェレーシス治療の標準化した割合。
【0197】
(3)治療への遵守に関係なく、ApoB(アフェレーシス前)のベースラインから第6週迄のパーセント変化。
【0198】
(4)治療への遵守に関係なく、非HDL-C(アフェレーシス前)のベースラインから第6週迄のパーセント変化。
【0199】
(5)治療への遵守に関係なく、総コレステロール(アフェレーシス前)のベースラインから第6週迄のパーセント変化。
【0200】
(6)治療への遵守に関係なく、ApoA-1(アフェレーシス前)のベースラインから第6週迄のパーセント変化。
【0201】
(7)治療への遵守に関係なく、第6週において、LDL-C(アフェレーシス前)が30%以上減少した患者の割合;
【0202】
(8)治療への遵守に関係なく、第6週において、LDL-C(アフェレーシス前)が
50%以上減少した患者の割合;
【0203】
(9)治療への遵守に関係なく、LDL-C(アフェレーシス前)のベースラインから18週までのパーセント変化。
【0204】
(10)治療への遵守に関係なく、ApoB(アフェレーシス前)のベースラインから18週までのパーセント変化。
【0205】
(11)治療への遵守に関係なく、非HDL-C(アフェレーシス前)のベースラインから第18週までのパーセント変化。
【0206】
(12)治療への遵守に関係なく、総コレステロール(アフェレーシス前)のベースラインから第18週までのパーセント変化。
【0207】
(13)治療への遵守に関係なく、ApoA-1(アフェレーシス前)のベースラインから18週までのパーセント変化。
【0208】
(14)治療への遵守に関係なく、第18週にLDL-C(アフェレーシス前)が30%以上減少した患者の割合。
【0209】
(15)治療への遵守に関係なく、第18週にLDL-C(アフェレーシス前)が50%以上減少した患者の割合。
【0210】
(16)治療への遵守に関係なく、ベースラインから第18週までのW-BQ22指標スコアの変化。
【0211】
(17)治療への遵守に関係なく、Lp(a)(アフェレーシス前)のベースラインから第6週までのパーセント変化。
【0212】
(18)治療への遵守に関係なく、HDL-C(アフェレーシス前)のベースラインから第6週までのパーセント変化。
【0213】
(19)治療への遵守に関係なく、TGレベル(アフェレーシス前)のベースラインから第6週までのパーセント変化。
【0214】
(20)治療への遵守に関係なく、Lp(a)(アフェレーシス前)のベースラインから第18週までのパーセント変化。
【0215】
(21)治療への遵守に関係なく、HDL-C(アフェレーシス前)のベースラインから第18週までのパーセント変化。
【0216】
(22)治療への遵守に関係なく、TGレベル(アフェレーシス前)のベースラインから第18週までのパーセント変化。
【0217】
(23)治療への遵守に関係なく、ベースラインから第6週までのApoB/ApoA-1比(アフェレーシス前)の変化。
【0218】
(24)治療への遵守に関係なく、ベースラインから第18週までのApoB /ApoA-1比(アフェレーシス前)の変化。
【0219】
(25)7週目から10週目までの4週間の期間におけるアフェレーシス治療の標準化された割合は、従って一次有効性エンドポイントとして定義される。
【0220】
(26)第11週から第14週までの4週間の期間におけるアフェレーシス治療の標準化された割合は、従って一次有効性エンドポイントとして定義される。
【0221】
(27)第7週の初めから第18週の終わりまでの12週間のアフェレーシス頻度及びLDL-C値の総合評価(LDL-C値及びアフェレーシス率に従ってランク付けした患者;全ての患者の平均ランクを決定し、各治療患者のLDL-Cレベル又はアフェレーシス率とその変数に関する平均ランクからの差異をパーセンテージとして表し、その2変数の患者ベースごとのパーセンテージ差異を加算し、累積したパーセント差異を提供する。治療群ごとに組合わせて分析すると、得られた数値は低LDL-C及び/又はアフェレーシス率の低下を示す)。
【0222】
(28)治療への遵守に関係なく、6週目のアフェレーシスの前に、LDL-Cレベルが<200mg/dL、<130mg/dL、<100mg/dL及び<70mg/dLを達成した患者の割合。
【0223】
(29)治療への遵守に関係なく、18週目のアフェレーシスの前に、LDL-Cレベルが<200mg/dL、<130mg/dL、<100mg/dL及び<70mg/dLを達成した患者の割合。
【0224】
(30)治療への遵守に関係なく、二重盲検治療期間における、ベースラインから各々到達した両時点までの、生の値、並びにパーセント及びLDL-C及び他の脂質の絶対変化。
【0225】
(31)治療への遵守に関係なく、非盲検治療期間における、ベースラインから各到達点までの、生の値、並びにパーセント及びLDL-C及び他の脂質の絶対変化。
【0226】
(32)研究を通して評価した安全性パラメーター(AE(宣告を受けた心血管イベントを含む)、臨床検査データ、バイタルサイン、及びECG)。
【0227】
他のエンドポイント:(1)試験を通して評価した抗アリロクマブ抗体(2)高感受性C反応性タンパク質(hs-CRP)及びHbA1cのベースラインから18週及び6週までのパーセント変化(3)アフェレーシス前及びアフェレーシス後の血清中の総アリロクマブの濃度(4)アフェレーシス前及びアフェレーシス後の遊離の又は全PCSK9レベル。
【0228】
試験手順
研究薬剤の用量を投与する前に、すべての実験室試料は収集した。血液試料は、来院する全ての脂質研究班のために、可能であれば絶食状態(例、一晩(少なくとも10時間の絶食)、水のみ)の患者から収集した。空腹時は、好ましいとは言え、脂質パネルの試料の必須条件ではなかった。48時間以内のアルコール摂取と喫煙、又は採血前の24時間以内の激しい運動は許可しなかった。
【0229】
総C、HDL-C、TG、ApoB、ApoA-1及びLp(a)は、中央検査室で直接測定した。LDL-CはFriedewald式を用いて計算した。TG値が400mg/dL(4.52mmol/L)を超えた場合、LDL-Cを計算するのではなく、中央検査室で再帰的に(β定量法によって)LDL-Cを測定した。非HDL-Cは、総-C からHDL-Cを減じて計算した。ApoB/ApoA-1の比を算出した。
【0230】
脂質研究班(絶食):脂質研究班の血液試料(総-C、TG、HDL-C、及び計算したLDL-C)を、予め指定された時点で少なくとも10時間絶食後に採取した。
【0231】
脂質専門研究班(絶食):予め指定された時点で少なくとも10時間絶食後に、特殊脂質研究班(ApoB、ApoA-1、及びLp[a])の血液試料を採取した。
【0232】
幸福感アンケート:W-BQ22を使用して、特定の時点での高コレステロール血症と治療の幸福感に及ぼす影響を評価した。
【0233】
血圧及び心拍数:予め指定された時点で血圧及び心拍数を評価した。血圧は、標準的な座位状態で、ほぼ同じ日に、同じ腕、同じ装置(患者が座位で少なくとも5分間快適に休息した後)測定することが好ましい。最初のスクリーニング来院時に、両腕で血圧を測定した。最高の拡張期血圧を有する腕をこの来院時に決定し、血圧はこの研究全体を通してこの腕で測定した。この最高値は、電子的症例報告書(eCRF)に記録した。心拍数は血圧の測定の時に測定した。
【0234】
身体検査:事前に指定された時点に十分で完全な身体検査を行った。
【0235】
体重及び身長:体重は、患者が下着又は非常に軽い服を着用し、靴を着用せず、膀胱を空にし状態で得た。研究全体を通して、同じ測定具を用いるのが好ましい。可能であれば、校正済みの天秤ばかりの使用を推奨する。
【0236】
心電図:血液採取を必要とする来院中の採血前に心電図記録を実施した。事前に指定された時点に、標準の12誘導ECGを実施した。12誘導ECGは、少なくとも10分間の休息後に仰臥位で行われた。各電極は、研究全体のECG記録について、可能な限り同一場所に配置した。ECGは調査者が、施設毎に解釈した。ECGパラメータの新規な及び/又は臨床的に有意な変化は、関係する患者のための如何なる決定も、それを下す前に直ちに再確認した。臨床的に有意な異常は、何れもAE/SAEとして適宜文書化した。トレースの各々は、スクリーニング時に記録したトレースと比較して分析した。ECGトレースの全てを、ソースデータとして保持した。心室拍動数から心拍数を記録し、PR、QRS、RR及びQT間隔を記録した。
【0237】
検査室検査:すべての検査試料(PK及びADA試料を含む)は、評価実施後、かつ、投薬日に対応する来院時に研究薬剤の用量を投与する前に、収集した。
【0238】
心血管イベントの宣告:宣告した心臓血管イベントには、積極的に宣告したすべての心臓血管AEを含ませた。宣告した分類は以下の通りであった。(1)CHD死(2)致命的でないMI(3)致命的及び非致命的な虚血性脳卒中(4)入院を必要とする不安定狭心症(5)入院を必要とするうっ血性心不全(6)虚血駆動冠動脈再建術(PCI、CABG)。
【0239】
統計分析
患者63人(アリロクマブ42:プラセボ21)の試料サイズで、両側有意水準を用い、かつ、標準偏差を40%と仮定した時、少なくとも85%の検出力(power)を有し、平均アフェレーシス率は33%の差を有するだろうと推定した。
【0240】
一次有効性分析集団は、全患者が無作為化されているとして定義された一次治療企図(ITT)集団であった。二次的有効性分析集団は、試験薬物の最初の投与の前に少なくとも1回のアフェレーシス前の計算LDL-C値を有し(又は患者が如何なる試験薬物を受
けなかった場合は無作為化)及び、第6週までのアフェレーシス前分析窓の1つにおいて、少なくとも1つの計算LDL-C値を有する無作為化患者に基づいている。統計分析は、最後の患者が18週目に全ての有効性評価を完了した時に実施した。LDL-Cデータは、6~18週目(アフェレーシス療法の中止の可能性が生じた後)のLDL-Cの区間平均を評価するためのKroon式を使用して、事後、分析した。
【0241】
アフェレーシスの標準化した割合は、12週間の期間(7週目~18週目)に受けた治療の回数を、計画した治療の回数で割り、(隔週(Q2W)は6回、毎週は12回)、共分散(ANCOVA)モデルのランク付け分析を使用して分析する。標準化したアフェレーシス割合は0~1の範囲であり、0は、患者が7~18週目の計画したアフェレーシス治療を全て休んだことを示し、1は患者が計画した治療を全て受けたことを示す。0.75の割合は、患者が計画したアフェレーシス治療の75%を受けた(及び計画した治療の25%を休んだ)ことを示した。患者の離脱は、所定の基準に従って説明した。治療の中央値の差をHodges-Lehmann推定及び、Moses分布のない信頼区間を用いる95%信頼区間(CI)を用いて、決定した。
【0242】
階層的推論アプローチを用いて、第1種過誤(α過誤)を制御した。一次エンドポイント分析は5%αレベルで有意であったため、主要な二次有効エンドポイントを順次試験した。
【0243】
結果
ベースライン特性
研究に登録した患者のベースライン特性を表1~4に要約する。
【0244】
【表1】
【0245】
【表2】
【0246】
【表3】
【0247】
【表4】
【0248】
heFHを有し、定期的に毎週又はQ2Wでリポタンパク質アフェレーシスを受けている76人の患者から、参加の同意の提供を受け、スクリーニングを行った。表1-4に要約したように、合計62人の患者(年齢:平均±SD年齢、58.7±9.7歳)を無作為化した。無作為化した患者の58.1%が男性であった。スクリーニング時の来院では、28人の患者が耐用性のためにスタチンを受けておらず、34人の患者が毎日スタチンを摂取していることを示し、内19人が最大毎日用量を摂取していた。全患者がアテローム性動脈硬化症(冠状動脈及び/又は脳血管及び/又は末梢)を有し、かつ、56.5%
は冠状動脈性心疾患の家族歴があった。平均的な患者は、(平均±SD)7.6±7.7年の間、定期的にリポタンパク質アフェレーシスを受けていた。中央値(最小:最大)は4.9(0.5:32.9)年である。アフェレーシス頻度はQ2W(56.5%)及びQW(43.5%)であった。患者の16.1%が糖尿病を有していた。患者の1.6%が慢性腎疾患を有していた。ベースラインの平均LDL-Cは4.7mmol/L(180.7mg/dL)であり、中央値(最小:最大)が4.7(1.4:8.2)mmol/L(179.5(53.0:316.0)mg/dL)であった。ベースライン平均Lp(a)は43.9mg/dL(中央値(最小:最大)は19.0(1.5:285.0)mg/dL)であった。
【0249】
60人の患者が6週間の二重盲検治療期間(アリロクマブ群の内の40[97.6%]人、プラセボ群の内の20[95.2%]人)を完了し(即ち、この時、患者の確立したスケジュールによってアフェレーシスの割合が決定された)、及び57人が18週の二重盲検治療期間(それぞれ37[90.2%]人、及び20[95.2%]人)を完了し、この時、以前に達成したLDL-C値により、アフェレーシス計画を決定した。試験治療を早期に中止した5人(8.1%)の患者のうち、1人(4.8%)がプラセボ(有害イベントにより中止)を受け、4人(9.8%)がアリロクマブを受けた(2人が有害イベント、1人は遵守性に乏しく、1人の患者が同意を撤回した)。
【0250】
集団の平均±標準偏差(SD)年齢は、58.7±9.7歳であり、36人(58.1%)の患者が男性であり、60人(96.8%)が白人であった。研究開始前のアフェレーシス治療継続時間の中央値(最小、最大)は4.9(0.5,32.9)年であった。
【0251】
ベースライン特性は、治療群の間で均衡していた。計算したベースラインLDL-C値の平均(試験開始時)は、アリロクマブ群では4.5±1.4mmol/L(175.1mg/dL)であり、プラセボ群では5.0±1.8mmol/L(191.6mg/dL)であった(P=0.35 )。ベースライン時に毎週のアフェレーシス計画に従った患者は27人(43.5%)、Q2W計画に従った患者は35人(56.5%)で有った。アフェレーシスを毎週受けている患者の平均LDL-C値は、3.9±1.3mmol/L(151.3±51.3mg/dL)であり、これに対して、アフェレーシスをQ2Wで受けている患者においては5.3±1.4mmol/L(204.9±55.7mg/dL)であった。38人(61.3%)の患者は正常なベースラインリポタンパク質(a)レベル(30mg/dL未満)を有し、及び24(38.7%)人は上昇したレベルを有した。スクリーニング時にスタチンを服用していた患者は34人(54.8%)であり、その内の19人(55.9%)が最大毎日用量を受けていた。ベースラインLDL-C値はスタチンで治療中の患者で4.0±1.4mmol/L(155.0±54.6mg/dL)であったのに比べ、スタチンを服用していない患者では5.4±1.4mmol/L208.0±53.2mg/dL)であった。30人(48.4%)の患者がドイツから、そして、32人(51.6%)が米国からであった。
【0252】
注射による曝露の平均±SD持続時間は、アリロクマブ群では17.4±2.3週(8.6±1.3回注射)、プラセボ群では17.5±3.1週(8.4±1.7回注射)であった。
【0253】
有効性の結果
有効性の結果を表5~8にまとめた。
【0254】
表5に、第7週~第18週のアフェレーシスの標準化された割合を示した。
【0255】
【表5】
【0256】
【表6】
【0257】
一次有効性エンドポイントは、アリロクマブで治療した患者に統計的に有意な利益を達成し、対プラセボ0.75(95%信頼区間:0.67-0.83)の治療差のHodges-Lehmann中央値推定値を得た。従って、アリロクマブ治療患者は、プラセボ治療患者と比較して、アフェレーシス治療の標準化率において0.75(75%)の追加的な減少を有した(P<0.0001)。以前に達成したLDL-C濃度により、アフェレーシス治療を決定した、第7週~第18週のアフェレーシス治療の標準化された割合における治療差中央値は、毎週アフェレーシスを受けた患者について0.75(95%CI
0.58-0.92)であり、Q2W計画での患者ではアリロクマブのために、0.6
7(95%CI 0.50-1.00)であった。
【0258】
4週間(第15週~第18週)にわたるアフェレーシス治療の標準化された割合の中央値治療差は、アリロクマブのために0.50(95%CI 0.50~1.00;P<0.0001)であり、アフェレーシス治療の標準化された割合は、対プラセボで50%の低下を示した。
【0259】
表5に示すように、アリロクマブで治療した患者におけるアフェレーシス治療の平均割合は0.128であったが、プラセボ群でのアフェレーシス治療の平均割合は0.806であった。 12週間にわたるプラセボ群の個々の患者と比較した個々のアリロクマブ治
療患者のアフェレーシス治療の割合の減少パーセントの描図を図2に示す。この期間中、アリロクマブ患者の63.4%はアフェレーシス処置を行わず、92.7%は処置の少なくとも半分をしなくて済すんだ。即ち、アリロクマブ治療群の26人の患者が、アフェレーシス治療の割合を100%減少させた。対照的に、プラセボ群の患者のうち、アフェレーシス治療の割合が100%低下した患者はいなかった。これらの結果はまた、表6および図3~6に反映され、試験の第7週~第18週のプラセボおよびアリロクマブ治療群における患者のアフェレーシス治療の割合を示す。 結果は、既存治療レジメンにアリロク
マブを添加した患者が、標準化したアフェレーシス治療の頻度をプラセボと比較して12週間にわたって75%有意に減少させることを示した(P<0.0001)。
【0260】
表7及び図7及び8は、全試験中の血清LDL-Cレベルの変化に関して、プラセボと比較したアリロクマブ治療の効果を示す。全体的に、アリロクマブ治療患者は、第6週でベースラインからLDL-Cが平均50%を超える減少を示し、一方、プラセボ群の患者は如何なる、有意な程度のLDL-C低下も示さなかった。
【0261】
【表7】
【0262】
プラセボ及びアリロクマブで治療した患者の重要な二次的有効性の結果を表8にまとめ
た。
【0263】
【表8】
【0264】
【表9】
【0265】
アフェレーシス前平均LDL-C値は、アリロクマブ群において、ベースライン時の4.5mmol/L(175mg/dL)から6週目での2.3mmol/L(90mg/dL)に減少し、対応するプラセボ群の患者のデータは、5.0mmol/L192mg/dL)及び4.8mmol/L(185mg/dL)である(図8)。第6週目のベースラインからのアフェレーシス前のLDL-C値における、LS平均±SE(95%CI)のパーセント変化は、アリロクマブ群で-53.7±2.3(-58.2から-49.2)であり、プラセボ群で1.6±3.1(-4.7から7.9)(LS平均±SEパー
セント差-55.3±3.9、95%C -63.1から-47.5、P<0.0001)。第18週までに、アリロクマブ群のLDL-C平均値は2.9mmol/L(110mg/dL)まで僅かに上昇し、これと比較してプラセボ群(LS平均± SEパーセント差 -46.4±7.9、95%CI -62.3から-30.5。P<0.0001)は4.9mmol/L(191mg/dL)であった。
【0266】
ポイントオブケアのLDL-C値と中央検査室値とを比較する交差検証は、両方の測定値が非常に相関していることを示した(ピアソン相関0.86)。
【0267】
第18週までの、リポタンパク質(a)のベースラインからパーセント変化は、正常ベースライン値を有する患者において、アロロクマブについて-5.7%対プラセボに対して-3.0%、そして、ベースライン値が上昇している患者において、それぞれ、4.9%対7.6%であった。アフェレーシス治療を取止めることができ得る時の7~18週の間、アリロクマブ治療は、より低い平均±SD時間平均LDL-C値(Kroon式18を使用)に関連しており、(潜在的な)アフェレーシス間隔の全体にわたり、2.4±1.3(92.7±50.2mg/dL)であり、これに対し、プラセボでは3.8±1.7mmol/L(146.7±65.6mg/dL)であった(P<0.0001)。
【0268】
事後分析では、アリロクマブ治療患者の時間平均LDL-C値は、プラセボ治療患者のそれよりも一貫して低かった。
【0269】
安全性
TEAEは、アリロクマブ群の患者の75.6%及びプラセボ群の患者の76.2%によって報告されたが、何れも致命的ではなかった。重篤な有害イベント(アリロクマブで9.8%、プラセボで9.5%)及び治療中止に至るイベント(それぞれ4.9%と4.8%)の割合も両群で同等であった。
【0270】
アリロクマブ群の3人の患者(7.3%)、及びプラセボ群ではいなかった、は2つの連続した前アフェレーシスでのLDL-C値<0.7mmol/L(25mg/dL)を有していた。これらの患者の内の2人に少なくとも1つの有害イベントがあり、その内の一人には数種の重篤な有害イベント(肺炎、急性心筋梗塞、急性呼吸不全、心不全性うっ血、敗血症及び大動脈弁狭窄症)があった。アフェレーシス後の患者27人(アリロクマブ投与群23人(56.1%)、プラセボ投与群4人(19.0%])は、アフェレーシス後の2つのLDL-C値が0.7mmol/L未満であり、そのうち15人(65.2%)及び2人(50.0%)は それぞれ有害イベントを有していた。いずれのイベントも重篤ではなかったが、1人の患者(4.3%)はアリロクマブによる治療を中止した。
【0271】
総括及び結論
本研究は、アリロクマブを投与した患者は、プラセボを投与した患者と比較して、アフェレーシス治療の割合が低下し、研究全過程にわたり、アフェレーシス治療の回数が減少したことを示している。特に、アリロクマブ治療は、プラセボ治療と比較して、アフェレーシス治療を、中央値推定で0.75又は75%より高い割合で低減するという結果を得た(p<0.0001)。
【0272】
本研究はまた、アリロクマブで治療した患者の63.4%は、アフェレーシスを実施しなかったのに対し、プラセボで治療した患者については0%であったことを示した(即ち、プラセボ治療群の患者はアフェレーシス治療無しで済ますことは全く出来なかったが、一方で、アリロクマブ治療で装備した群の患者の63.4%は、アリロクマブ治療後にアフェレーシス治療を完全に無くすことが出来た)。加えて、アリロクマブで治療した患者の92.7%は、アフェレーシス頻度が少なくとも50%減少し、これに対しプラセボ治療患者では14.3%であった。更に、アリロクマブは6週目に、175mg/dlから89.5mg/dlまでLDL-Cを55%(PBOに対して)低下させた。アリロクマブで治療した患者では、apoB、非HDL-C及びTCにおいても、有意な減少が観察された。 アリロクマブ治療は、アフェレーシス治療の標準化した割合を15週から18週に減少させた。
【0273】
安全性に関して、1週間又は2週間ごとにLDLアフェレーシス治療を受けているHeFH患者におけるアリロクマブの皮下投与は、一般に安全で十分に許容された。TEAE全体及びAESIを報告している患者の数は、治療群間で同等であった。
【0274】
この研究の全ての患者は心血管リスクが高く、スタチンを含めて、LLTを以前に服用していた。スクリーニングでは、患者の54.8%のみがスタチンを服用し、55.9%が最大耐用量であった。全集団の大部分は、耐用性の問題(43.5%)によりスタチン治療をダウンタイトレーションしたという既往歴があり、62.9%は異なるスタチンに変更したという既往歴があった。スタチンを服用しないこと又は1日最大用量を服用しないことの理由としては、筋肉症状から副作用に関する不安、及び地域習慣/局所的標識化に至るまで、様々に挙げられ、これはアフェレーシスを実施しているheFHの患者は、治療に関して選択肢が限定され、多様でかつ治療困難な集団を代表していることを示している。
【0275】
米国の患者は、ドイツの患者とは異なる特徴を示し、ベースラインLDL-Cが高く、スタチン不耐用性がより蔓延し、しかも、アフェレーシスレジメンはより少ない。米国では、heFHのためのリポタンパク質アフェレーシスは、6ヶ月後に最大許容薬物療法に対する適切な応答を持たず、LDL-Cの外に他の心血管リスク因子が高くなっている患者に対してのみ考慮されることが多い。アフェレーシスセンターがより一般的であるドイツでは、12ヶ月以内の食事療法及びLLTの失敗、及びLDL-C閾値がより低い時、アフェレーシスが考慮され、更に、Q2Wより毎週のアフェレーシスが好ましいとされる。更に、欧州からのLDL-Cの低減に関する勧告は、リスクを層別化した、目標達成に向けた治療手法に基づいているが、米国のガイドラインは用量適応手法を主張している。欧州ガイドラインの手法の観点では、目標とするLDL-C値が<1.8mmol/L(70mg/dL)であり、この目標値を上回るLDL-Cを有するアリロクマブを受けているドイツ人患者は依然としてアフェレーシスの基準を満たしていることになる。その結果、アリロクマブを含むLLTは、非常に高いLDL-Cを有する患者又はLDL-Cの目標値を満たしていない患者において、リポタンパク質アフェレーシスと相補的であることを証明することができる。
【0276】
結論として、この研究は一次有効性エンドポイントにおける有意な低減を達成し、アリロクマブのようなPCSK9阻害剤が、患者のリポタンパク質アフェレーシス治療の必要性を低減若しくは除去し、又はそのような治療の必要性を遅延する有効な治療選択肢であることを実証した。
【0277】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定するものではない。実際、本明細書に記載したものの他に、当業者には、本発明の様々な改変が、前述の説明及び添付図面から明らかになるであろう。そのような改変も、添付した特許請求の範囲の視野の範囲内に入ることを企図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024016218000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標とするリポタンパク質レベルを達成するために患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシス療法を除去する又は患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシス治療の頻度を低減する方法であって、初期の頻度(治療前)でリポタンパク質アフェレーシス療法を実施している又は実施していた、高コレステロール血症である患者を選択し、次いで、PCSK9阻害剤を一回又はそれ以上の用量で患者に投与し、それにより、患者の血清中の少なくとも1種のリポタンパク質のレベルを低減して、目標とするリポタンパク質レベルを達成するために患者が必要とするリポタンパク質アフェレーシスの頻度を低減することを含む方法。
【外国語明細書】