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2024-162187液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162187
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20241114BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077505
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 準也
(72)【発明者】
【氏名】藤下 翔平
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA15
2H290AA18
2H290AA33
2H290AA53
2H290AA73
2H290BD01
2H290BF24
2H290BF25
2H290BF51
2H290DA01
2H290DA03
4J043PA08
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA02
4J043SA06
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA251
4J043UA261
4J043UA331
4J043UA361
4J043UA662
4J043UA672
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB132
4J043UB142
4J043UB162
4J043UB211
4J043UB231
4J043UB282
4J043UB302
4J043UB401
4J043UB402
4J043XA16
4J043YA06
4J043YA08
4J043ZB23
(57)【要約】
【課題】良好な液晶配向性を示しながら、ちらつき及び残像の発生が十分に低減された液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】第1の重合体と第2の重合体とを含有し、第1の重合体は、式(1)で表される化合物に由来する構造単位(U1)を含み、第2の重合体は、ジアミン(D1)及びジアミン(D2)よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位(U2)を含む液晶配向剤とする。ジアミン(D1):脱離性基が結合した窒素原子を有するジアミン、ジアミン(D2):芳香族縮合環構造及び連結環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である部分構造(a)を有する特定のジアミン。式(1)中、Xは、-O-、-S-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルカンジイル基等である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重合体と、前記第1の重合体とは異なる第2の重合体と、を含有し、
前記第1の重合体は、下記式(1)
【化1】
(式(1)中、A及びAは、互いに独立して3価の芳香環基である。Xは、-O-、-S-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルカンジイル基、又は炭素数1~20のアルカンジイル基におけるメチレン基の一部が-O-、-S-、-SO-、-CO-、-COO-若しくは-CONR10-に置き換えられた2価の基である。R10は水素原子又は1価の炭化水素基である。)
で表される化合物に由来する構造単位(U1)を含み、
前記第2の重合体は、下記に示すジアミン(D1)及びジアミン(D2)よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位(U2)を含む、液晶配向剤。
ジアミン(D1):脱離性基が結合した窒素原子を有するジアミン(ただし、脱離性基が結合した窒素原子がピリジン環に結合した部分構造を有するジアミン、及び、前記Xが炭素数1~20のアルカンジイル基である場合に、「-R11-N(R12)(R13)」で表される1価の基(R11はアルカンジイル基であり、R12は脱離性基であり、R13は水素原子又は脱離性基である。)がベンゼン環に結合した部分構造を有するジアミンを除く。)
ジアミン(D2):芳香族縮合環構造及び2個以上の芳香環が直結した連結環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である部分構造(a)を1分子内に2個以上有するか、又は前記部分構造(a)と、前記部分構造(a)とは異なる芳香環構造とを1分子内に有するジアミン
【請求項2】
前記ジアミン(D1)は、-B-NR-B-、-NR-CO-、-NR-CO-NR-、-NR-CO-O-又は*-B-NR(Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、互いに独立して2価の芳香環基又は脂肪族炭化水素基である。Bは単結合又は2価の有機基である。「*」は、主鎖との結合手を表す。)で表される部分構造を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記ジアミン(D1)は、下記式(d1-1)で表される化合物、下記式(d1-2)で表される化合物、下記式(d1-3)で表される化合物及び下記式(d1-4)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】
(式(d1-1)中、Ar及びArは、互いに独立して2価の芳香環基である。Yは、炭素数2~20のアルカンジイル基における一部のメチレン基が-NR-、-NR-CO-、-NR-CO-NR-又は-NR-CO-O-で置き換えられた2価の基である。Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。ただし、脱離性基が結合する窒素原子がArに隣接している場合、Arは芳香族炭化水素環基である。脱離性基が結合する窒素原子がArに隣接している場合、Arは芳香族炭化水素環基である。)
【化3】
(式(d1-2)中、Arは、置換又は無置換の2価の芳香族炭化水素基である。Arは2価の芳香環基である。R1aは1価の脱離性基である。Yは、炭素数1~20の2価の炭化水素基である。R1b及びYは、R1bが1価の脱離性基であり、かつYが単結合若しくは2価の有機基であるか、又はR1bとYとが互いに合わせられて、R1b及びYが結合する窒素原子と共に構成される環構造を表す。mは0~3の整数である。mが2以上の場合、複数のYは同一又は異なり、複数のR1bは同一又は異なる。ただし、mが1以上であって、かつR1bが1価の脱離性基である場合、Arは、置換又は無置換の2価の芳香族炭化水素基である。)
【化4】
(式(d1-3)中、Ar及びArは、互いに独立して2価の芳香環基である。Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。Bは単結合又は2価の有機基である。Bは、水素原子又は1価の有機基である。Y及びYは、互いに独立して単結合又は2価の有機基である。rは1~3の整数である。)
【化5】
(式(d1-4)中、Ar及びArは、互いに独立して3価の芳香環基である。Yは2価の有機基である。Yは-B-NRである。Yは水素原子又は-B-NRである。Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、互いに独立して単結合又は2価の有機基である。jは0~2の整数である。ただし、上記式(1)中のXが炭素数1~20のアルカンジイル基である場合、B及びBは単結合である。)
【請求項4】
前記ジアミン(D2)は、下記式(d2)で表される、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化6】
(式(d2)中、Ar及びAr10は、互いに独立して2価の芳香環基である。ただし、Ar及びAr10のうち少なくとも一方はビフェニル構造又は縮合環構造を有する。Z及びZは、互いに独立して、単結合、-NR-、-O-、-S-、-CO-、*-NR-CO-、*-CO-NR-、-NR-CO-NR-、*-CO-O-又は*-O-CO-である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の有機基である。「*」は、Ar又はAr10との結合手を表す。Lは、-NR-、-O-、-S-、-CO-、*-NR-CO-、*-CO-NR-、-NR-CO-NR-、*-CO-O-又は*-O-CO-である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の有機基である。「*」は、Bとの結合手を表す。B及びBは、互いに独立して炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。kは0~3の整数である。kが2又は3の場合、複数のBは同一又は異なり、複数のLは同一又は異なる。)
【請求項5】
前記第1の重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記第2の重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記第1の重合体は、ポリアミック酸であり、
前記第2の重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記第1の重合体は、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位を更に含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布し、該塗布した後に光配向処理又はラビング処理を施して液晶配向能を付与する、液晶配向膜の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、液晶テレビやインフォメーションディスプレイ等といった比較的大型の表示装置から、スマートフォン等の小型の表示装置まで幅広い用途に適用されている。液晶素子の性能は、液晶の配向性やプレチルト角の大きさ、電圧保持率等の各種特性により決定される。液晶素子の性能を向上させるべく、従来、液晶材料の改良のほか、液晶を一定方向に配列させるための液晶配向膜の改良が進められている。
【0003】
液晶素子において、液晶セル内に電荷が蓄積されると、観察者に残像(DC残像)として視認されたり、また液晶素子の駆動中にフリッカー(ちらつき)が発生する原因となったりすることにより、液晶素子の表示品位が低下することが懸念される。そのため、液晶配向膜に対して要求される特性の1つとして、電荷の蓄積量を少なくできることが挙げられる。液晶セル内に電荷が蓄積する原因としては、交流駆動による正負非対称電圧の印加や、液晶配向膜によるバックライト光の吸収等が考えられる。特に、非対称の電極構造を有するFFS(Fringe Field Switching)型液晶表示素子では、DC残像やちらつきが生じやすい傾向にある。
【0004】
そこで従来、液晶セル内における電荷の蓄積を抑制し、液晶素子の表示品位を改善するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。特許文献1には、N4,N4’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジンのような窒素含有ジアミンを含むジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸を液晶配向剤に含有させることにより蓄積電荷の低減を図ることが開示されている。特許文献2には、カルバゾール構造とベンゼン環とがアミノ基により結合した構造を有するジアミンから得られる重合体を液晶配向剤に含有させることにより、蓄積電荷の緩和が早く、駆動中にフリッカー(ちらつき)が起こりにくい液晶配向膜を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-107811号公報
【特許文献2】国際公開第2018/110354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の更なる高性能化の要求を満たすべく、液晶素子は、駆動中のちらつきが十分に抑制される(すなわち、ちらつき特性が良好である)とともに、残像の発生が少ないことが重要である。そこで、基本特性の1つである液晶配向性を良好に保ちながら、液晶セル内に電荷を蓄積しにくく、かつ蓄積された残留電荷をより速やかに緩和できる液晶配向膜を形成できる液晶配向剤を開発することが求められる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、良好な液晶配向性を示しながら、ちらつき及び残像の発生が十分に低減された液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
<1> 第1の重合体と、前記第1の重合体とは異なる第2の重合体と、を含有し、前記第1の重合体は、下記式(1)
【化1】
(式(1)中、A及びAは、互いに独立して3価の芳香環基である。Xは、-O-、-S-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルカンジイル基、又は炭素数1~20のアルカンジイル基におけるメチレン基の一部が-O-、-S-、-SO-、-CO-、-COO-若しくは-CONR10-に置き換えられた2価の基である。R10は水素原子又は1価の炭化水素基である。)
で表される化合物に由来する構造単位(U1)を含み、前記第2の重合体は、下記に示すジアミン(D1)及びジアミン(D2)よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位(U2)を含む、液晶配向剤。
ジアミン(D1):脱離性基が結合した窒素原子を有するジアミン(ただし、脱離性基が結合した窒素原子がピリジン環に結合した部分構造を有するジアミン、及び、前記Xが炭素数1~20のアルカンジイル基である場合に、「-R11-N(R12)(R13)」で表される1価の基(R11はアルカンジイル基であり、R12は脱離性基であり、R13は水素原子又は脱離性基である。)がベンゼン環に結合した部分構造を有するジアミンを除く。)
ジアミン(D2):芳香族縮合環構造及び2個以上の芳香環が直結した連結環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である部分構造(a)を1分子内に2個以上有するか、又は前記部分構造(a)と、前記部分構造(a)とは異なる芳香環構造とを1分子内に有するジアミン
【0010】
<2> 上記<1>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<3> 上記<1>の液晶配向剤を基板上に塗布し、該塗布した後に光配向処理又はラビング処理を施して液晶配向能を付与する、液晶配向膜の製造方法。
<4> 上記<2>の液晶配向膜を備える液晶素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶配向剤によれば、良好な液晶配向性を示しながら、駆動中のちらつきが十分に抑制され、かつ残像の発生が十分に低減された液晶素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪液晶配向剤≫
以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0013】
なお、本明細書において、「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。「脂肪族炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基をいう。「芳香環」は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を包含する意味である。「有機基」とは、炭素を含む化合物(すなわち有機化合物)から任意の水素原子を取り除いてなる原子団をいう。
【0014】
本開示の液晶配向剤は、第1の重合体と、第1の重合体とは異なる第2の重合体とを含有する。以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる第1の重合体及び第2の重合体、並びに必要に応じて配合される成分について説明する。
【0015】
<第1の重合体>
第1の重合体は、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(U1)を含む。
【化2】
(式(1)中、A及びAは、互いに独立して3価の芳香環基である。Xは、-O-、-S-、-SO-、-CO-、炭素数1~20のアルカンジイル基、又は炭素数1~20のアルカンジイル基におけるメチレン基の一部が-O-、-S-、-SO-、-CO-、-COO-若しくは-CONR10-に置き換えられた2価の基である。R10は水素原子又は1価の炭化水素基である。)
【0016】
上記式(1)において、A又はAで表される3価の芳香環基は、置換又は無置換の芳香環の環部分から3個の水素原子を取り除いた基である。当該芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環等の芳香族複素環が挙げられる。A又はAで表される3価の芳香環基が環部分に置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。A又はAで表される3価の芳香環基を構成する芳香環は、中でも、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0017】
が炭素数1~20のアルカンジイル基である場合、当該アルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよい。良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を得る観点から、Xで表される炭素数1~20のアルカンジイル基は直鎖状であることが好ましい。また、炭素数は1~12が好ましく、1~10がより好ましい。
が、炭素数1~20のアルカンジイル基におけるメチレン基の一部が-O-等に置き換えられた2価の基である場合、炭素数1~20のアルカンジイル基の好ましい具体例については上記の説明が適用される。R10で表される1価の炭化水素基は、アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0018】
は、ちらつき及びDC残像を低減させる効果をより高くできる点、並びに上記式(1)で表される化合物の入手性の観点から、上記の中でも、-O-、-S-、-SO-、又は炭素数1~12のアルカンジイル基におけるメチレン基の一部が-O-、-S-若しくは-COO-に置き換えられた2価の基であることが好ましく、更に電気特性の観点から、-O-又は-S-であることがより好ましい。
【0019】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(t1-1)~式(t1-14)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化3】
【0020】
第1の重合体における構造単位(U1)の含有割合は、第1の重合体を構成する構造単位の全量に対して、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(U1)の含有割合は、第1の重合体を構成する構造単位の全量に対して、例えば50モル%以下であり、電気特性の観点から35モル%以下が好ましい。第1の重合体における構造単位(U1)の含有割合を上記範囲とすることにより、良好な液晶配向性を示しながら、ちらつき及びDC残像の発生が少ない液晶素子を得ることができる。
【0021】
第1の重合体は、テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位として構造単位(U1)のみを含んでいてもよいし、構造単位(U1)とは異なる構造単位(以下、「構造単位(T1)」ともいう。)を更に含んでいてもよい。構造単位(T1)を与える単量体としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0022】
構造単位(T1)を与える単量体の具体例としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等が挙げられる。また、構造単位(T1)を与えるテトラカルボン酸二無水物としては上記のほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物であって、上記式(1)で表される化合物とは異なる化合物を用いることができる。構造単位(T1)を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
第1の重合体は、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位(以下、「構造単位(T1-1)」ともいう。)を更に含むことが好ましい。第1の重合体が構造単位(T1-1)を更に含むことにより、第1の重合体の溶解性を高めたり、液晶配向剤により形成される有機膜に光配向性を付与したりすることができる点で好適である。第1の重合体における構造単位(T1-1)の含有割合は、第1の重合体に含まれるテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、構造単位(T1-1)の含有割合は、第1の重合体に含まれるテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。
【0024】
特に光配向法により液晶配向膜を形成する場合、構造単位(T1)を与えるテトラカルボン酸二無水物として、シクロブタン環構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。
【0025】
第1の重合体は、構造単位(U1)を含む限り、その主骨格は特に限定されない。液晶との親和性及び機械的強度が高く、かつ電圧保持特性に優れた液晶配向膜を形成できる点、並びに構造単位(U1)の導入が比較的容易である点で、第1の重合体は、テトラカルボン酸誘導体とジアミン化合物との重縮合体であることが好ましく、具体的には、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。ここで、「テトラカルボン酸誘導体」は、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を含む。
【0026】
(ポリアミック酸)
第1の重合体がポリアミック酸である場合、当該ポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸[P1]」ともいう)は、例えば、上記式(1)で表される化合物を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させる方法により製造することができる。
【0027】
第1の重合体の合成に際して使用するテトラカルボン酸二無水物としては、上記に例示した上記式(1)で表される化合物及び構造単位(T1)を与える単量体が挙げられる。第1の重合体の合成に際し、上記式(1)で表される化合物の使用割合は、第1の重合体の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。上記式(1)で表される化合物の使用割合を上記範囲とすることにより、良好な液晶配向性、ちらつき特性及びDC残像特性がバランス良く改善された液晶素子を得ることができる。また、第1の重合体における構造単位(U1)の量が多すぎることによるDC残像特性の低下を抑制する観点から、上記式(1)で表される化合物の使用割合は、第1の重合体の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が更に好ましい。
【0028】
ポリアミック酸[P1]の合成に使用するジアミン化合物としては、液晶配向膜の重合体成分を構成するジアミン化合物として公知の化合物を適宜使用することができる。ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。脂肪族ジアミンは、鎖状ジアミン及び脂環式ジアミンを含む。ジアミン化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
ジアミン化合物の具体例としては、鎖状ジアミンとして、m-キシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等を;脂環式ジアミンとして、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等を;
芳香族ジアミンとして、ドデカノキシジアミノベンゼン、テトラデカノキシジアミノベンゼン、ペンタデカノキシジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、コレステリルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-(4-ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、N-(2,4-ジアミノフェニル)-4-(4-ヘプチルシクロヘキシル)ベンズアミド、下記式(E-1)
【化4】
(式(E-1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、-O-、*-COO-又は*-OCO-(ただし、「*」はジアミノフェニル基側との結合手を表す)である。Rは、炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIは、単結合又は炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIIは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基である。aは0又は1である。bは0~3の整数である。cは0~2の整数である。dは0又は1である。ただし、1≦a+b+c≦3である。)
で表される化合物等の配向性基含有ジアミン:
パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、N,N-ビス(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノジフェネチルウレア等を;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0030】
上記式(E-1)における「-X-(R-XII-」で表される2価の基としては、炭素数1~3のアルカンジイル基、-O-、*-COO-、-O-C-O-(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)等が挙げられる。RIIIで表される基は直鎖状であることが好ましい。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4-位又は3,5-位にあることが好ましい。
【0031】
上記式(E-1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(E-1-1)~式(E-1-4)のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
【化5】
【0032】
本開示の液晶配向剤は、第1の重合体と第2の重合体とを含み、第2の重合体には、ジアミンに由来する構造単位として構造単位(U2)が導入される。第1の重合体は、構造単位(U2)を含んでいてもよく、構造単位(U2)を含まなくてもよい。第1の重合体における構造単位(U2)の含有割合は、第2の重合体よりも少ないことが好ましく、具体的には、第1の重合体を構成するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下が更に好ましい。第2の重合体に構造単位(U2)を導入する一方、第1の重合体における構造単位(U2)の含有割合を上記範囲とすることにより、膜形成時に第1の重合体と第2の重合体との相分離がより生じやすくなり、液晶素子の液晶配向性、ちらつき特性及びDC残像特性をバランス良く改善する観点から好適である。
【0033】
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸[P1]は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸[P1]の合成反応において、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましい。分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
【0034】
ポリアミック酸[P1]の合成反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等を挙げることができる。これらの具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を反応溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と、他の有機溶媒(例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量が、反応溶液の全量に対して0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0035】
以上のようにして、ポリアミック酸[P1]を溶解してなる重合体溶液が得られる。この重合体溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、重合体溶液中に含まれるポリアミック酸[P1]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0036】
(ポリアミック酸エステル)
第1の重合体がポリアミック酸エステルである場合、当該ポリアミック酸エステル(以下、「ポリアミック酸エステル[P1]」ともいう。)は、例えば、[I]ポリアミック酸[P1]とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミン化合物とを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物とを反応させる方法、等によって得ることができる。ポリアミック酸エステル[P1]は、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。ポリアミック酸エステル[P1]を溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステル[P1]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0037】
(ポリイミド)
第1の重合体がポリイミドである場合、当該ポリイミド(以下、「ポリイミド[P1]」ともいう。)は、例えば、上記の如くして合成されたポリアミック酸[P1]を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミド[P1]は、その前駆体であるポリアミック酸[P1]が有していたアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミド[P1]は、イミド化率が20~99%であることが好ましく、30~90%であることがより好ましい。なお、イミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0038】
ポリアミック酸[P1]の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸[P1]を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法により行われる。この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸[P1]のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸[P1]の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃である。反応時間は、好ましくは1.0~120時間である。なお、ポリイミド[P1]を含有する反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミド[P1]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0039】
<第2の重合体>
第2の重合体は、下記に示すジアミン(D1)及びジアミン(D2)よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位(U2)を含む。
ジアミン(D1):脱離性基が結合した窒素原子を有するジアミン(ただし、脱離性基が結合した窒素原子がピリジン環に結合した部分構造を有するジアミン、及び、前記Xが炭素数1~20のアルカンジイル基である場合に、「-R11-N(R12)(R13)」で表される1価の基(ただし、R11はアルカンジイル基であり、R12は脱離性基であり、R13は水素原子又は脱離性基である。)がベンゼン環に結合した部分構造を有するジアミンを除く。)
ジアミン(D2):芳香族縮合環構造及び2個以上の芳香環が直結した連結環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である部分構造(a)を1分子内に2個以上有するか、又は前記部分構造(a)と、前記部分構造(a)とは異なる芳香環構造とを1分子内に有するジアミン
【0040】
・ジアミン(D1)
ジアミン(D1)は、重合反応に関与する2個の1級アミノ基と共に、脱離性基が結合した窒素原子を有するジアミンである。窒素原子に結合する脱離性基は、熱や光により脱離して水素原子に置き換わる基である。脱離性基は、熱により脱離して水素原子に置き換わる基(以下、「熱脱離性基」ともいう)であることが好ましい。この場合、液晶配向剤を基板に塗布し加熱して液晶配向膜を形成する過程において、窒素原子に結合する脱離性基を脱離させることができ、プロセスの簡略化を図ることができる点で好ましい。液晶配向膜を形成する過程で脱離を生じさせる観点から、熱脱離性基は、120~300℃の温度において分解し、水素原子に置き換わる基であることが好ましい。
【0041】
脱離性基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。熱による脱離性に優れ、かつ脱離した構造の膜中における残存量を少なくできる点で、これらのうちBoc基が好ましい。
【0042】
ただし、ジアミン(D1)は、脱離性基が結合した窒素原子がピリジン環に結合した部分構造を有しない。また、第1の重合体中の構造単位(U1)を与える単量体が、上記式(1)中のXが炭素数1~20のアルカンジイル基である化合物の場合、ジアミン(D1)は、「-R11-N(R12)(R13)」で表される1価の基(ただし、R11はアルカンジイル基であり、R12は脱離性基であり、R13は水素原子又は脱離性基である。)がベンゼン環に結合した部分構造を有しない。
【0043】
具体的には、ジアミン(D1)は、脱離性基が結合した窒素原子を含む部分構造として、-B-NR-B-、-NR-CO-、-NR-CO-NR-、-NR-CO-O-又は*-B-NR(ただし、Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、互いに独立して2価の芳香環基又は脂肪族炭化水素基である。Bは単結合又は2価の有機基である。「*」は、主鎖との結合手を表す。)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0044】
又はRで表される1価の熱脱離性基の例示及び好ましい例については上述したとおりである。B又はBで表される2価の芳香環基としては、置換又は無置換の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が挙げられる。B又はBが芳香環部分に置換基を有している場合、置換基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。B又はBは、好ましくは、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の窒素含有芳香族複素環基であり、より好ましくは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である。
【0045】
又はBで表される2価の芳香環基の具体例としては、芳香族炭化水素基として、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環及びアントラセン環の各環を構成する炭素原子に結合する任意の水素原子を2個取り除いてなる基を;窒素含有芳香族複素環基として、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環及びアクリジン環の各環を構成する炭素原子に結合する任意の水素原子を2個取り除いてなる基を、それぞれ挙げることができる。
【0046】
液晶配向性をより高めることができる点で、B又はBで表される2価の芳香環基は中でも、置換又は無置換のベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、ピリジン環又はピリミジン環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基であることが好ましく、置換又は無置換のフェニレン基がより好ましい。
【0047】
又はBで表される2価の脂肪族炭化水素基としては、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基が挙げられる。2価の鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。B又はBが2価の鎖状炭化水素基である場合、当該鎖状炭化水素基は飽和であること好ましく、炭素数1~10のアルカンジイル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状のアルカンジイル基が更に好ましい。また、B又はBが2価の脂環式炭化水素基である場合、当該脂環式炭化水素基としては、置換又は無置換のシクロヘキシレン基等が挙げられる。B又はBで表される2価の脂肪族炭化水素基は、これらのうち、2価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1~10のアルカンジイル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状のアルカンジイル基が更に好ましい。
【0048】
が2価の有機基である場合、当該有機基としては、炭素数1~10の2価の炭化水素基等が挙げられる。Bは、好ましくは単結合又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、より好ましくは単結合又は炭素数1~6のアルカンジイル基であり、更に好ましくは単結合である。「*-B-NR」で表される基は主鎖に結合している。「*-B-NR」で表される基は、主鎖を構成する鎖状構造に結合していてもよく、環状構造に結合していてもよい。液晶配向性をより良好にする観点から、「*-B-NR」で表される基は、主鎖を構成する鎖状構造に結合していることが好ましい。
【0049】
ジアミン(D1)は、具体的には、下記式(d1-1)で表される化合物、下記式(d1-2)で表される化合物、下記式(d1-3)で表される化合物及び下記式(d1-4)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化6】
(式(d1-1)中、Ar及びArは、互いに独立して2価の芳香環基である。Yは、炭素数2~20のアルカンジイル基における一部のメチレン基が-NR-、-NR-CO-、-NR-CO-NR-又は-NR-CO-O-で置き換えられた2価の基である。Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。ただし、脱離性基が結合する窒素原子がArに隣接している場合、Arは芳香族炭化水素環基である。脱離性基が結合する窒素原子がArに隣接している場合、Arは芳香族炭化水素環基である。)
【化7】
(式(d1-2)中、Arは、置換又は無置換の2価の芳香族炭化水素基である。Arは2価の芳香環基である。R1aは1価の脱離性基である。Yは、炭素数1~20の2価の炭化水素基である。R1b及びYは、R1bが1価の脱離性基であり、かつYが単結合若しくは2価の有機基であるか、又はR1bとYとが互いに合わせられて、R1b及びYが結合する窒素原子と共に構成される環構造を表す。mは0~3の整数である。mが2以上の場合、複数のYは同一又は異なり、複数のR1bは同一又は異なる。ただし、mが1以上であって、かつR1bが1価の脱離性基である場合、Arは、置換又は無置換の2価の芳香族炭化水素基である。)
【化8】
(式(d1-3)中、Ar及びArは、互いに独立して2価の芳香環基である。Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。Bは単結合又は2価の有機基である。Bは、水素原子又は1価の有機基である。Y及びYは、互いに独立して単結合又は2価の有機基である。rは1~3の整数である。)
【化9】
(式(d1-4)中、Ar及びArは、互いに独立して3価の芳香環基である。Yは2価の有機基である。Yは-B-NRである。Yは水素原子又は-B-NRである。Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、互いに独立して単結合又は2価の有機基である。jは0~2の整数である。ただし、上記式(1)中のXが炭素数1~20のアルカンジイル基である場合、B及びBは単結合である。)
【0050】
上記式(d1-1)~式(d1-4)について、Ar、Ar、Ar、Ar又はArで表される2価の芳香環基の具体例及び好ましい例については、B又はBで表される2価の芳香環基として例示した基と同様の基が挙げられる。
Arで表される2価の芳香族炭化水素基としては、B又はBで表される2価の芳香族炭化水素基として例示した基と同様の基が挙げられる。
Ar又はArで表される3価の芳香環基としては、B又はBで表される2価の芳香環基として例示した基から更に1個の水素原子を取り除いた基が挙げられる。
【0051】
、R1a又はR1bで表される1価の脱離性基の具体例及び好ましい例については、ジアミン(D1)が有する脱離性基として説明したとおりである。
が1価の有機基である場合、当該1価の有機基としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基、1価の熱脱離性基等が挙げられる。Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基が好ましく、1価の熱脱離性基がより好ましい。
【0052】
上記式(d1-2)中、Yで表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのうち。Yは、鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1~10のアルカンジイル基がより好ましい。
【0053】
が2価の有機基である場合、当該2価の有機基としては、炭素数1~20の2価の炭化水素基、炭化水素基における一部のメチレン基が、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-NR20-、-NR20-CO-、-NR20-CO-NR21-又は-NR20-CO-O-で置き換えられた2価の基が挙げられる。なお、R20及びR21は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の熱脱離性基である(以下同じ)。Yで表される2価の有機基は、良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を得る観点から、炭素数1~10のアルカンジイル基であるか、又は炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が-NR20-、-NR20-CO-、-NR20-CO-NR21-若しくは-NR20-CO-O-で置き換えられた2価の基であることが好ましい。
【0054】
1b及びYが、R1bとYとが互いに合わせられて、R1b及びYが結合する窒素原子と共に構成される環構造を表す場合、当該環構造としては、ピペリジン構造、ピペラジン構造等が挙げられる。
【0055】
上記式(d1-3)中、Bが1価の有機基である場合、当該1価の有機基としては、炭素数1~10のアルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。Bは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
又はYが2価の有機基である場合、当該2価の有機基としては、上記式(d1-2)中のYが2価の有機基である場合の具体例として示した基と同様の基が挙げられる。Y又はYで表される2価の有機基は、これらのうち、炭素数1~10のアルカンジイル基であるか、又は炭素数2~10のアルカンジイル基における一部のメチレン基が-O-、-CO-、-COO-若しくは-CONR22-(ただし、R22は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基)で置き換えられた2価の基であることが好ましい。
【0056】
上記式(d1-4)において、Yで表される2価の有機基としては、上記式(d1-2)中のYが2価の有機基である場合の具体例として示した基と同様の基が挙げられる。
jが0の場合、Y中のBは単結合が好ましい。jが1又は2の場合、B及びBは、単結合又は炭素数1~10のアルカンジイル基が好ましく、単結合又は炭素数1~5のアルカンジイル基がより好ましく、単結合が更に好ましい。
【0057】
ジアミン(D1)の具体例としては、下記式(d1-1-1)~式(d1-1-23)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化10】
【化11】
(式(d1-1-1)~式(d1-1-23)中、「Boc」はtert-ブトキシカルボニル基を表す。tは1~18の整数である。)
【0058】
ジアミン(D1)は、液晶配向性、ちらつき特性及びDC残像特性の改善効果をより高くできる点で、上記式(d1-1)~式(d1-4)のうち、上記式(d1-1)~式(d1-3)のそれぞれで表される化合物が好ましく、上記式(d1-2)で表される化合物及び上記式(d1-3)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、上記式(d1-3)で表される化合物が更に好ましい。
【0059】
・ジアミン(D2)
ジアミン(D2)は、芳香族縮合環構造及び2個以上の芳香環が直結した連結環構造よりなる群から選択される少なくとも1種である部分構造(a)を1分子内に2個以上有するか、又は部分構造(a)と、部分構造(a)とは異なる芳香環構造とを1分子内に有するジアミンである。
【0060】
部分構造(a)のうち芳香族縮合環構造としては、ナフタレン環構造、アントラセン環構造、フェナントレン環構造、キノリン環構造、イソキノリン環構造、アクリジン環構造、ベンゾフラン環構造、ベンゾチオフェン環構造等が挙げられる。ジアミン(D2)の合成容易性及び液晶との相互作用の観点から、ジアミン(D2)中の芳香族縮合環構造としては、これらのうち、ナフタレン環構造又はアントラセン環構造が好ましい。
【0061】
部分構造(a)のうち、2個以上の芳香環が直結した連結環構造は、ジアミン(D2)の合成容易性及び液晶との相互作用の観点から、ビフェニル環構造又はトリフェニル環構造が好ましく、ビフェニル環構造がより好ましい。
【0062】
部分構造(a)は、ジアミン(D2)の合成容易性及び液晶との相互作用の観点から、中でも、ビフェニル環構造、トリフェニル環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造、フェナントレン環構造、キノリン環構造、イソキノリン環構造、アクリジン環構造、ベンゾフラン環構造及びベンゾチオフェン環構造よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ビフェニル環構造、トリフェニル環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造及びフェナントレン環構造よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ビフェニル環構造、ナフタレン環構造及びアントラセン環構造よりなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。なお、部分構造(a)を構成する環は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0063】
ジアミン(D2)は、部分構造(a)とは異なる芳香環構造を更に有していてもよい。当該芳香環構造は、好ましくは単環構造である。また、部分構造(a)とは異なる芳香環構造を構成する芳香環は、芳香族炭化水素環であってもよく、芳香族複素環であってもよい。芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の具体例としては、ベンゼン環、ピロール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。これらのうち、ベンゼン環、ピリジン環及びピリミジン環よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ベンゼン環及びピリジン環よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。なお、部分構造(a)とは異なる芳香環構造が有する芳香環は置換基を有していてもよい。ジアミン(D2)が、部分構造(a)とは異なる芳香環構造を有する場合、部分構造(a)とは異なる芳香環構造の合計数は、例えば1~4個であり、好ましくは1~3個である。
【0064】
ジアミン(D2)は、具体的には、以下のジアミン(D2-1)及びジアミン(D2-2)よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ジアミン(D2-1):部分構造(a)を2個以上有するジアミン
ジアミン(D2-2):部分構造(a)を1個有し、かつ部分構造(a)とは異なる芳香環構造(具体的には単環の芳香環構造)を1個以上有するジアミン
液晶素子の液晶配向性、ちらつき特性及びDC残像特性をバランス良く改善する効果を十分に得る観点から、ジアミン(D2)は、部分構造(a)を主鎖に有し、これにより部分構造(a)を第2の重合体の主鎖中に導入可能な構造を有することが好ましい。
【0065】
ジアミン(D2)は、具体的には、下記式(d2)で表される化合物であることが好ましい。
【化12】
(式(d2)中、Ar及びAr10は、互いに独立して2価の芳香環基である。ただし、Ar及びAr10のうち少なくとも一方はビフェニル構造又は縮合環構造を有する。Z及びZは、互いに独立して、単結合、-NR-、-O-、-S-、-CO-、*-NR-CO-、*-CO-NR-、-NR-CO-NR-、*-CO-O-又は*-O-CO-である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の有機基である。「*」は、Ar又はAr10との結合手を表す。Lは、-NR-、-O-、-S-、-CO-、*-NR-CO-、*-CO-NR-、-NR-CO-NR-、*-CO-O-又は*-O-CO-である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の有機基である。「*」は、Bとの結合手を表す。B及びBは、互いに独立して炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。kは0~3の整数である。kが2又は3の場合、複数のBは同一又は異なり、複数のLは同一又は異なる。)
【0066】
上記式(d2)において、Ar又はAr10で表される2価の芳香環基としては、置換又は無置換の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が挙げられる。Ar又はAr10が芳香環部分に置換基を有している場合、当該置換基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。Ar又はAr10は、好ましくは、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の窒素含有芳香族複素環基であり、より好ましくは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である。Ar又はAr10で表される2価の芳香環基の具体例については、B又はBで表される2価の芳香環基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0067】
液晶素子のちらつき特性及びDC残像特性を良好に保ちながら、液晶配向性をより高めることができる点で、Ar又はAr10で表される2価の芳香環基は、中でも、Ar及びAr10のうち一方が、置換又は無置換のベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環又はアントラセン環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基であり、他方が、置換又は無置換のビフェニル環、ナフタレン環又はアントラセン環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基であることが好ましい。
【0068】
又はZが-NR-、*-NR-CO-、*-CO-NR-又は-NR-CO-NR-である場合、R又はRで表される1価の有機基としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基、1価の脱離性基が挙げられる。炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~10の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~6のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基が好ましく、膜密度をより高める観点から、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。R又はRで表される1価の脱離性基としては、ジアミン(D1)が有する脱離性基として例示した基と同様の基が挙げられる。
及びRは、これらの中でも、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はBoc基が好ましい。
【0069】
第2の重合体の主鎖に光配向性部位(好ましくは、シクロブタン環構造)を導入する場合に第2の重合体の光反応性を高める観点から、Z及びZは、Z又はZに隣接する芳香族基(Ar、Ar10)の電子密度を高める電子供与性基が好ましい。具体的には、Z及びZのうち少なくとも一方は、-O-、-S-又は-NR56-(R56は水素原子又は1価の有機基である。Zの場合にはRを表し、Zの場合にはRを表す。)であることが好ましく、-O-であることがより好ましい。また、上記観点から、Z及びZの両方が-O-、-S-又は-NR56-であることが更に好ましく、-O-であることがより更に好ましい。
【0070】
又はBで表される2価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基が挙げられる。これらのうち、炭素数1~20の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状の飽和鎖状炭化水素基、炭素数2~20の直鎖状又は分岐状の不飽和鎖状炭化水素基が挙げられる。炭素数3~20の脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、単環でも多環でもよい。B又はBが脂環式炭化水素基である場合、当該脂環式炭化水素基は、単環の飽和脂環式炭化水素基が好ましく、例えば、シクロペンタン環及びシクロヘキサン環の各環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基が挙げられる。
【0071】
又はBで表される2価の脂肪族炭化水素基は、膜密度をより高めることができ、液晶素子のちらつき特性及び残像特性の改善効果が高い液晶配向膜を形成できる点で、これらの中でも、炭素数1~10の2価の直鎖状又は分岐状の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。B及びBの炭素数は、ちらつき特性及び残像特性の改善効果を十分に得つつ、良好な液晶配向性を示す液晶素子を得る観点から、8以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好ましく、1又は2がより更に好ましい。
【0072】
が-NR-、*-NR-CO-、*-CO-NR-又は-NR-CO-NR-である場合、R又はRで表される1価の有機基の具体例及び好ましい例については、上述したR又はRで表される1価の有機基において説明した基と同様の基が挙げられる。
kは、ちらつき特性及び残像特性の改善効果を十分に高めつつ、良好な液晶配向性を示す液晶素子を得る観点から、0~2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0073】
なお、構造単位(U2)は、部分構造(a)と、窒素原子に結合する脱離性基とを同一分子内に有するジアミンに由来する構造単位であってもよい。本明細書において、部分構造(a)と、窒素原子に結合する脱離性基とを同一分子内に有するジアミンはジアミン(D2)に分類するものとする。
【0074】
ジアミン(D2)の具体例としては、下記式(d2-1)~式(d2-12)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化13】
(式(d2-1)~式(d2-8)中、sは3~10の整数である。)
【0075】
なお、上記式(d2-1)~式(d2-12)で表される化合物のうち、上記式(d2-1)、式(d2-2)、式(d2-7)~式(d2-9)のそれぞれで表される化合物は、部分構造(a)として連結環構造を有するジアミンに相当する。また、上記式(d2-3)~式(d2-7)、式(d2-10)~式(d2-12)のそれぞれで表される化合物は、部分構造(a)として縮合環構造を有するジアミンに相当する。
【0076】
液晶素子のちらつき特性及び残像特性を良好に保ちながら、液晶配向性をより優れたものとすることができる点で、構造単位(U2)は上記の中でも、上記式(d1-3)で表される化合物及び上記式(d2)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0077】
第2の重合体における構造単位(U2)の含有割合は、第2の重合体が有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して、5モル%以上であることが好ましい。液晶素子のちらつき特性及び残像特性を良好に保ちながら、液晶配向性をより優れたものとする観点から、構造単位(U2)の含有割合は、第2の重合体が有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上が更に好ましい。なお、第2の重合体が有する構造単位(U2)は1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
【0078】
第2の重合体は、構造単位(U2)を含む限り、その主骨格は特に限定されない。液晶との親和性及び機械的強度が高く、かつ電圧保持特性に優れた液晶配向膜を形成できる点、並びに構造単位(U2)の導入が比較的容易である点で、第2の重合体は、テトラカルボン酸誘導体とジアミン化合物との重縮合体が好ましく、具体的には、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0079】
(ポリアミック酸)
第1の重合体がポリアミック酸である場合、当該ポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸[P2]」ともいう)は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、構造単位(U2)を与える単量体を含むジアミン化合物とを反応させる方法により製造することができる。
【0080】
第2の重合体の合成に際して使用するテトラカルボン酸二無水物は、特に限定されない。第2の重合体の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、上記に例示した上記式(1)で表される化合物及び構造単位(T1)を与える単量体が挙げられる。上記式(1)で表される化合物を第2の重合体の合成に使用する場合、第2の重合体における構造単位(U1)の含有割合は、第1の重合体よりも少ないことが好ましい。具体的には、第2の重合体において、構造単位(U1)の含有割合は、第2の重合体を構成するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が更に好ましい。第1の重合体に対しては構造単位(U1)を導入する一方、第2の重合体における構造単位(U1)の含有割合を上記範囲とすることにより、良好な液晶配向性を示しながら、ちらつき特性及びDC残像特性の発生がより低減された液晶素子を得ることができる。
【0081】
第2の重合体は、ジアミン化合物に由来する構造単位として構造単位(U2)のみを含んでいてもよいが、構造単位(U2)とは異なる構造単位(以下、「構造単位(A1)」ともいう。)を更に含んでいてもよい。構造単位(A1)を与える単量体としては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等を挙げることができる。脂肪族ジアミンとしては、鎖状ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。これらの具体例としては、第1の重合体の合成に際して用いることができるジアミン化合物として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0082】
ポリアミック酸[P2]は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸[P2]の合成方法の詳細については、ポリアミック酸[P1]の説明を適用することができる。また、第2の重合体がポリアミック酸エステル又はポリイミドである場合についても、それぞれ、ポリアミック酸エステル[P1]、ポリイミド[P1]の説明を適用することができる。
【0083】
液晶配向剤の調製に使用する第1の重合体及び第2の重合体の溶液粘度はそれぞれ、濃度10質量%の溶液としたときに10~800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、重合体の良溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0084】
第1の重合体及び第2の重合体のそれぞれにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。また、GPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)に対するMwの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。
【0085】
液晶配向剤における第1の重合体及び第2の重合体の合計の含有量は、液晶配向剤に含まれる固形分の全量(すなわち、液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量)100質量部に対し、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が更に好ましい。なお、液晶配向剤の調製に際し、第1の重合体としては1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、第2の重合体としては1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
液晶配向剤に含まれる第1の重合体と第2の重合体との比率は、質量比で、第1の重合体:第2の重合体=40:60~95:5とすることが好ましい。第1の重合体と第2の重合体との比率を上記範囲内とすることで、液晶素子の液晶配向性、ちらつき特性及び残像特性をバランス良く発現することができる。このような観点から、液晶配向剤に含まれる第1の重合体と第2の重合体との比率は、第1の重合体:第2の重合体=50:50~90:10とすることがより好ましく、50:50~85:15とすることが更に好ましい。
【0087】
第1の重合体と第2の重合体との組み合わせは、液晶素子の液晶配向性、ちらつき特性及び残像特性をバランス良く改善する観点から、第1の重合体が、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ第2の重合体が、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも特に、第1の重合体がポリアミック酸であり、第2の重合体が、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合、第1の重合体と第2の重合体とを含有する本開示の液晶配向剤を基板上に塗布した際に、第1の重合体が基板側に偏在しやすくなり、これにより本開示の効果をより高くできるものと考えられる。
【0088】
<その他の成分>
本開示の液晶配向剤は、第1の重合体及び第2の重合体のほか、必要に応じて、第1の重合体及び第2の重合体とは異なる成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含有していてもよい。
【0089】
・その他の重合体
本開示の液晶配向剤は、重合体成分として、第1の重合体及び第2の重合体とは異なる重合体(以下、「その他の重合体」ともいう。)を更に含有していてもよい。その他の重合体の主骨格は特に限定されない。その他の重合体としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリエナミン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、付加重合体等が挙げられる。付加重合体としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、マレイミド系重合体、スチレン-マレイミド系共重合体等が挙げられる。
【0090】
信頼性の高い液晶素子を得る観点から、その他の重合体は、上記の中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0091】
その他の重合体を液晶配向剤に含有させる場合、その他の重合体の含有割合は、第1の重合体と第2の重合体とその他の重合体との合計量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。その他の重合体としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0092】
・架橋剤
本開示の液晶配向剤は、架橋剤を更に含有していてもよい。架橋剤としては、重合性炭素-炭素結合を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ヒドロキシアルキルアミド基、保護されたヒドロキシアルキルアミド基、環状カーボネート基、基「-CR30=CR31-R32-」(ただし、R30は、アミノ基との反応により脱離する1価の有機基である。R31は水素原子又はアルキル基、R32は電子求引性基である。)、シラノール基、アミノ基、保護されたアミノ基及びアルコキシシリル基よりなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基を有する化合物が挙げられる。
【0093】
上記の架橋性基のうち、重合性炭素-炭素結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、アルケニル基、ビニルフェニル基、ビニルエーテル基、3-メチレンテトラヒドロフラン-2(3H)-オン-5-イル基等が挙げられる。架橋剤としては、上記のうち、アミノ基又はカルボキシ基と反応可能な官能基を有する化合物を好ましく使用することができ、中でも、環状エーテル基、ヒドロキシアルキルアミド基、保護されたヒドロキシアルキルアミド基、メチロール基、保護されたメチロール基、保護されたイソシアネート基、アミノ基及び保護されたアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種を1分子内に合計2個以上有する化合物を好ましく使用することができる。
【0094】
架橋剤が1分子内に有する架橋性基の数は、液晶素子の液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度をバランス良く改善する観点から、2~12個が好ましく、2~10個がより好ましい。架橋剤の分子量は、良好な保存安定性を確保する観点から、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、更に好ましくは1,000以下である。
【0095】
架橋剤の具体例としては、環状エーテル基を有する化合物として、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジグリシジル-アミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジル-シクロヘキシルアミン、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルの過酸化水素によるエポキシ化反応生成物等を;
ヒドロキシアルキルアミド基又は保護されたヒドロキシアルキルアミド基を有する化合物として、下記式(c-1)~式(c-3)で表される化合物等を;
メチロール基又は保護されたメチロール基を有する化合物として、下記式(c-4)~式(c-9)で表される化合物等を;
保護されたイソシアネート基を有する化合物として、下記式(c-10)~式(c-14)で表される化合物等を;
アミノ基又は保護されたアミノ基を有する化合物として、下記式(c-15)~式(c-18)のそれぞれで表される化合物等を、それぞれ挙げることができる。
【化14】
【化15】
(式(c-8)中、Acはアセチル基である。)
【化16】
(式(c-10)及び式(c-11)中、R34はtert-ブトキシ基である。)
【化17】
【0096】
本開示の液晶配向剤に架橋剤を含有させる場合、その含有割合は、液晶配向性及び電圧保持特性をより良好にする観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全量(すなわち、第1の重合体と第2の重合体とその他の重合体との合計量)100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましい。架橋剤の含有割合は、重合体成分の全量100質量部に対して、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、液晶素子の液晶配向性及び電圧保持特性や、液晶配向剤の保存安定性を満足させる観点から、架橋剤の含有割合は、重合体成分の全量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。架橋剤としては1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
・溶剤
本開示の液晶配向剤は、第1の重合体、第2の重合体及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
【0098】
溶剤としては有機溶媒が好ましく使用される。その具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、フェノール、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジアセトンアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、プロパン-1,2-ジオール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールジエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールジアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。溶剤としては、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0099】
液晶配向剤に含有されるその他の成分としては、上記のほか、例えば、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0100】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%以上であると、塗膜の膜厚を十分に確保でき、より良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を得ることができる点で好適である。一方、固形分濃度が10質量%以下であると、塗膜を適度な厚みとすることができ、良好な液晶配向性を示す液晶配向膜が得られやすい傾向がある。また、液晶配向剤の粘性が適度となり、塗布性を良好にできる傾向がある。
【0101】
≪液晶配向膜及び液晶素子≫
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により製造される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を備える。液晶素子における液晶の駆動方式は特に限定されず、例えばTN型、STN型、VA型(VA-MVA型、VA-PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA(Polymer Sustained Alignment)型等の種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は、各動作モード共通である。
【0102】
<工程1:塗膜の形成>
まず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜等を用いることができる。
【0103】
基板への液晶配向剤の塗布方法は特に限定されない。基板への液晶配向剤の塗布は、例えば、スピンコート方式、印刷方式(例えば、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式等)、インクジェット方式、スリットコート方式、バーコーター方式、エクストリューションダイ方式、ダイレクトグラビアコーター方式、チャンバードクターコーター方式、オフセットグラビアコーター方式、含浸コーター方式、MBコーター方式等により行うことができる。
【0104】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化すること等を目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~280℃であり、より好ましくは80~250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。
【0105】
<工程2:配向処理>
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に対し、液晶配向能を付与する処理(配向処理)が施される。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、基板上に形成した塗膜の表面をコットンやナイロン等で擦るラビング処理、又は塗膜に光照射処理を施して液晶配向能を付与する光配向処理を用いることが好ましい。垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用してもよく、液晶配向能を更に高めるために、工程1で形成した塗膜に対し配向処理を施してもよい。
【0106】
光配向のための光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線の場合の照射方向は斜め方向とする。
【0107】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。放射線の照射量は、好ましくは200~30,000J/mであり、より好ましくは500~10,000J/mである。配向能付与のための光照射後において、基板表面を、例えば水、有機溶媒(例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル等)又はこれらの混合物を用いて洗浄する処理や、基板を加熱する処理を行ってもよい。
【0108】
<工程3:液晶セルの構築>
液晶配向膜が形成された一対の基板を対向配置し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤により貼り合わせ、基板表面とシール剤で囲まれたセルギャップ内に液晶を注入充填し注入孔を封止する方法、ODF方式による方法等が挙げられる。シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶を挙げることができ、中でもネマチック液晶が好ましい。
【0109】
液晶表示装置を製造する場合、続いて、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
【0110】
本開示の液晶素子は、種々の用途に有効に適用することができる。具体的には、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置や、調光装置、位相差フィルム等として用いることができる。
【0111】
以上詳述した本開示によれば、次の手段が提供される。
〔手段1〕 第1の重合体と、前記第1の重合体とは異なる第2の重合体と、を含有し、
前記第1の重合体は、上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(U1)を含み、前記第2の重合体は、上記に示すジアミン(D1)及びジアミン(D2)よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位(U2)を含む、液晶配向剤。
〔手段2〕 前記ジアミン(D1)は、-B-NR-B-、-NR-CO-、-NR-CO-NR-、-NR-CO-O-又は*-B-NR(Rは1価の脱離性基である。Rは水素原子又は1価の有機基である。B及びBは、互いに独立して2価の芳香環基又は脂肪族炭化水素基である。Bは単結合又は2価の有機基である。「*」は、主鎖との結合手を表す。)で表される部分構造を有する、〔手段1〕の液晶配向剤。
〔手段3〕 前記ジアミン(D1)は、上記式(d1-1)で表される化合物、上記式(d1-2)で表される化合物、上記式(d1-3)で表される化合物及び上記式(d1-4)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕又は〔手段2〕に記載の液晶配向剤。
〔手段4〕 前記ジアミン(D2)は、下記式(d2)で表される、〔手段1〕~〔手段3〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段5〕 前記第1の重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕~〔手段4〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段6〕 前記第2の重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕~〔手段5〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段7〕 前記第1の重合体は、ポリアミック酸であり、前記第2の重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕~〔手段6〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段8〕 前記第1の重合体は、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位を更に含む、〔手段1〕~〔手段7〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段9〕 〔手段1〕~〔手段8〕のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
〔手段10〕 〔手段1〕~〔手段8〕のいずれかに記載の液晶配向剤を基板上に塗布し、該塗布した後に光配向処理又はラビング処理を施して液晶配向能を付与する、液晶配向膜の製造方法。
〔手段11〕 〔手段9〕に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【実施例0112】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
<化合物の構造と略号>
以下の例で使用した主な化合物の構造と略号は以下のとおりである。
[テトラカルボン酸二無水物]
化合物(TA-1)~化合物(TA-13);下記式(TA-1)~式(TA-13)のそれぞれで表される化合物
【化18】
【0114】
[ジアミン(D1)]
化合物(DA-1)~化合物(DA-8);下記式(DA-1)~式(DA-8)のそれぞれで表される化合物
【化19】
【0115】
[ジアミン(D2)]
化合物(DB-1)~化合物(DB-6);下記式(DB-1)~式(DB-6)のそれぞれで表される化合物
【化20】
【0116】
[その他のジアミン]
化合物(DC-1)~化合物(DC-7);下記式(DC-1)~式(DC-7)のそれぞれで表される化合物
【化21】
【0117】
[添加剤]
化合物(AD-1)~化合物(AD-3);下記式(AD-1)~式(AD-3)のそれぞれで表される化合物
【化22】
【0118】
[溶剤]
NMP;N-メチル-2-ピロリドン
BC;ブチルセロソルブ
【0119】
<重合体の合成>
以下の合成例1~43において重合体をそれぞれ合成した。なお、以下の例において、重合体溶液中のポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。
・ポリイミドのイミド化率の測定
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMR測定を行った。得られたH-NMRスペクトル(400MHz)から、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1-(A/(A×α)))×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるアミド基のプロトン由来のピーク面積であり、Aは化学シフト6~9ppm付近に現れる芳香族基のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるアミド基のプロトン1個に対する芳香族基のプロトンの個数割合である。)
【0120】
[合成例1]
ジアミン(DC-1)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(TA-2)を加え、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸(これを「重合体(PA-1)」とする。)の15質量%溶液を得た。
【0121】
[合成例2~31]
テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1に記載のとおりに変更した以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸(重合体(PA-2)~重合体(PA-31))をそれぞれ得た。なお、テトラカルボン酸二無水物の使用量(2種以上用いる場合にはその合計量)は、各合成に使用するジアミンの合計量に対して0.95モル当量とした。
【0122】
[合成例32]
ジアミン(全ジアミン100モル部に対して、ジアミン(DA-1)50モル部、ジアミン(DC-1)50モル部)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(TA-1)を加え、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸の溶液を得た。得られた溶液に、脱水剤として、ポリアミック酸のカルボキシ基に対して1.5モル当量の1-メチルピペリジン及び無水酢酸をそれぞれ加え、60℃で3時間加熱撹拌した。得られた溶液に対して、減圧濃縮とNMPによる希釈を繰り返して、ポリイミド(これを「重合体(PI-1)」とする。)の10質量%溶液を得た。重合体(PI-1)のイミド化率は80%であった。
【0123】
[合成例33~50]
テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量をそれぞれ下記表2に記載のとおりに変更した以外は合成例32と同様にしてポリイミド(これを重合体(PI-2)~重合体(PI-19)とする)を得た。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
表1及び表2中の数値は、酸二無水物については、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量(100モル%)に対する各化合物の使用割合(モル%)を示し、ジアミンについては、合成に使用したジアミンの合計量(100モル%)に対する各化合物の使用割合(モル%)を示す。
【0127】
<液晶配向剤の調製及び評価>
[実施例1:光配向FFS型液晶表示素子]
(1)液晶配向剤の調製
重合体成分(固形分換算:重合体(PI-1)15質量部、重合体(PA-9)85質量部)、添加剤(AD-2)5質量部を混合し、NMP及びBCによって希釈することにより、固形分濃度が3.5質量%、溶剤組成比がNMP:BC=65:35(質量比)となる溶液を得た。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
【0128】
(2)光配向法による液晶配向膜の形成
平板電極、絶縁層及び櫛歯状電極がこの順で片面に積層されたガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とのそれぞれの面上に、上記(1)で調製した液晶配向剤(AL-1)を、スピンコーターを用いて塗布し、90℃のホットプレート上で1分間加熱した後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで20分間加熱を行い、平均膜厚100nmの塗膜を形成した。この塗膜表面に、Hg-Xeランプを用いて、直線偏光された254nmの輝線を含む紫外線500mJ/cmを、基板法線方向から照射して光配向処理を行った。この光配向処理が施された塗膜を、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで40分間加熱して熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。
【0129】
(3)FFS型液晶表示素子の製造
上記(2)で作製した液晶配向膜付き基板のうち1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、液晶注入口を残して直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をディスペンサー塗布した後、一対の基板の液晶配向膜を有する面を対向させ、各基板の配向処理方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙にポジ型ネマチック液晶(Merck社製、LCCC-18-514)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、120℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の配向処理方向と45°の角度をなすように貼り合わせることによりFFS型液晶表示素子を製造した。
【0130】
(4)液晶配向性の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子について、7.2Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を顕微鏡によって倍率50倍で観察した。評価は、異常ドメインが全く観察されなかった場合を「優良」、異常ドメインが部分的に観察された場合を「良好」、異常ドメインが全面に観察された場合を「不良」とした。その結果、本実施例では「優良」の評価であった。
【0131】
(5)常温Flicker(ちらつき特性)の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子を23℃、1気圧の環境下に置いた。5000cd/mのバックライト照射下で、FFS型液晶表示素子の画素を、相対透過率が25%となるAC電圧印加により駆動させた。徐々に蓄積される電荷により画素内にFlicker(ちらつき)が生じた。その光のちらつきをRD-80S(トプコンテクノハウス社製)で検出した。駆動から30分経過時の初期状態からのFlicker変動割合が2%未満であった場合を「優良」、2%以上4%未満であった場合を「良好」、4%以上であった場合を「不可」とした。その結果、本実施例では「優良」の評価であった。
【0132】
(6)高温短期残像(DC蓄積・緩和特性)の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子を65℃、1気圧の環境下に置いた。周波数30Hzの交流矩形波(AC)により相対透過率100%で駆動させて任意の2画素の間の輝度差を0に設定した後、5000cd/mのバックライト照射下で片方画素のみAC駆動させることで電荷を蓄積させた。両画素を相対透過率が25%となるAC駆動に戻すと、蓄積された電荷によって2画素の間に輝度差が生じた。AC駆動を続けると、蓄積した電荷が解放されることで2画素の輝度差が徐々に低減した。相対透過率が25%となるAC駆動を3分継続した際の輝度差をΔLとした。なお、一般的な傾向として、室温に比べて高温では液晶セルに電荷が蓄積されやすい。そこで、より厳しい条件で液晶セルの電荷の蓄積しやすさをサンプル間で比較するために、高温環境下における初期の蓄積電荷量を反映させる方法により、その液晶素子の電荷の蓄積しやすさを評価した(短期残像評価)。輝度差ΔLが少ないほど、電荷が蓄積しにくいか、又は蓄積した電荷が解放されやすいか、又は電荷が蓄積しにくく且つ蓄積した電荷が解放されやすく、残像特性が良好といえる。輝度差ΔLを2画素の輝度の平均値で割った値が1%未満であった場合を「優良」、1%以上3%未満であった場合を「良好」、3%以上であった場合を「不可」とした。その結果、本実施例では「優良」の評価であった。
【0133】
[実施例2~37及び比較例1~17]
上記実施例1において、液晶配向剤に含有させる重合体成分及び添加剤の種類及び量を下記表3に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、液晶配向剤を調製して光配向法により液晶配向膜を形成するとともに、FFS型液晶表示素子を製造して各種評価を行った。評価結果を下記表3及び表4に示した。
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
[実施例38:ラビング配向FFS型液晶表示素子]
(1)液晶配向剤の調製
重合体成分(固形分換算:重合体(PA-28)10質量部、重合体(PA-7)90質量部)を混合し、NMP及びBCによって希釈することにより、固形分濃度が3.5質量%、溶剤組成比がNMP:BC=65:35(質量比)となる溶液を得た。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-55)を調製した。
【0137】
(2)ラビング法による液晶配向膜の形成
平板電極、絶縁層及び櫛歯状電極がこの順で片面に積層されたガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とのそれぞれの面上に、上記(1)で調製した液晶配向剤(AL-55)を、スピンコーターを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱した後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間加熱を行い、平均膜厚100nmの塗膜を形成した。この塗膜表面に、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度30mm/秒、毛足押し込み長さ0.3mmにて2回ラビング処理を行った。このラビング配向処理が施された塗膜を、超純水中で1分間超音波洗浄した後、100℃のオーブンで10分間乾燥を行い、液晶配向膜を形成した。
【0138】
(3)FFS型液晶表示素子の製造
液晶配向膜を有する基板として、上記(2)でラビング法により作製した液晶配向膜を有する一対の基板を用いた以外は、実施例1と同様にしてFFS型液晶表示素子を製造した。
【0139】
(4)液晶配向性の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子について、実施例1と同様にして液晶配向性の評価を行った。その結果、本実施例では「優良」の評価であった。
(5)常温Flicker(ちらつき特性)の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子について、実施例1と同様にしてちらつき特性の評価を行った。その結果、本実施例では「優良」の評価であった。
(6)高温短期残像(DC蓄積特性)の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子について、実施例1と同様にして液晶配向性の評価を行った。その結果、本実施例では「優良」の評価であった。
【0140】
[実施例39~46及び比較例18~32]
上記実施例38において、液晶配向剤に含有させる重合体成分及び添加剤の種類及び量を下記表5に示すとおりに変更した以外は実施例38と同様にして、液晶配向剤を調製してラビング法により液晶配向膜を形成するとともに、FFS型液晶表示素子を製造して各種評価を行った。評価結果を下記表5に示した。
【0141】
【表5】
【0142】
表3~表5から明らかなように、構造単位(U1)を含む第1の重合体と、構造単位(U2)を含む第2の重合体とを含む実施例1~46の液晶配向剤によれば、液晶配向性、ちらつき特性及び残像特性がバランス良く向上された液晶素子を得ることができた。
これに対し、構造単位(U1)を含む第1の重合体、及び構造単位(U2)を含む第2の重合体のうちいずれかのみを含むか、又は両方含まない比較例1~32の液晶配向剤は、液晶配向性、ちらつき特性及びDC残像特性のうち1つ以上が不良であり、実施例1~46よりも劣っていた。