(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162189
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】CNF含有樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 1/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C08L1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077508
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 啓仁
(72)【発明者】
【氏名】中屋 亮二
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA012
4J002AB011
4J002BB032
4J002BB122
4J002BC032
4J002BD052
4J002BG022
4J002CF002
4J002CF192
4J002GC00
4J002GN00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂成形体の引張弾性率等の機械的強度を向上させることができ、更に樹脂中における繊維の分散性、並びに機械的特性の均一性に優れたCNF含有樹脂成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中にセルロースナノファイバーを分散させたCNF溶液を熱可塑性樹脂に添加して成形を行い、前記セルロースファイバーの添加割合を成形材料全量に対して0.1wt%~4.5wt%とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中にセルロースナノファイバーを分散させたCNF溶液を熱可塑性樹脂に添加して成形を行い、前記セルロースファイバーの添加割合が成形材料全量に対して0.1wt%~4.5wt%である、CNF含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記CNF溶液が、第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩に植物繊維または植物繊維を原料とする化学繊維を加え、それらの混合物をそのまま或いはアルコールを添加して加熱することで繊維を解繊処理して製造された、請求項1記載のCNF含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
CNF含有樹脂の引張弾性率がCNF非含有の同樹脂よりも50%以上大きい、請求項1記載のCNF含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂にCNF溶液を加えて撹拌し、更にこれを加熱処理して有機溶媒を揮発させてから成形を行う、請求項1記載のCNF含有樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料にセルロースナノファイバーを添加したCNF含有樹脂成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形分野において樹脂材料に繊維を添加して成形される繊維含有プラスチックは周知であり、繊維を添加することで添加しない樹脂よりも機械的強度を向上させたり外観を変化させたりすることができる。また繊維材料には種々の繊維が用いられるが、セルロース繊維を用いたものも公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来のセルロース繊維を添加したプラスチックは樹脂中における繊維の分散性が悪かったため、成形体全体において機械的物性にムラが生じ易かった。またセルロース系繊維を添加することによって破断点伸び率が大きく低下し易かったため、樹脂の靱性が大きく損なわれる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約すると樹脂成形体の引張弾性率等の機械的強度を向上させることができ、更に樹脂中における繊維の分散性、並びに機械的特性の均一性に優れたCNF含有樹脂成形体の製造方法の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、有機溶媒中にセルロースナノファイバーを分散させたCNF溶液を熱可塑性樹脂に添加して成形を行い、前記セルロースファイバーの添加割合を成形材料全量に対して0.1wt%~4.5wt%とした(効果は後述する)。
【0007】
なお本明細書中の「セルロースナノファイバー(CNF)」とは、セルロースミクロフィブリル(シングルナノファイバー)単独、または縦に引き裂かれたもの、もつれたもの、または網目状の構造を持つそれらの集合体からなり、幅3nm~100nm・アスペクト比10以上、長さ100μmまでのものをいう。
【0008】
上記CNF溶液については、第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩に植物繊維または植物繊維を原料とする化学繊維を加え、それらの混合物をそのまま或いはアルコールを添加して加熱することで繊維を解繊処理して製造されたものを好適に使用できる。
【0009】
上記CNF含有樹脂は引張弾性率がCNF非含有の同樹脂よりも50%以上大きくなるようにするのが好ましい。
【0010】
また非発泡の樹脂成形体の場合には、ボイドの発生を抑制するために成形前に熱可塑性樹脂にCNF溶液を加えて撹拌し、更にこれを加熱処理して有機溶媒を揮発させてから成形を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のCNF含有樹脂成形体は、セルロースナノファーバーが所定の添加割合となるようにCNF溶液を樹脂に添加して成形を行うことで、樹脂成形体の引張弾性率等の機械的物性を向上させることができ、更に破断点伸び率の低下も抑えることができる。またセルロースナノファーバーは樹脂中に分散し易いため、機械的物性にムラのない樹脂成形体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「CNF含有樹脂成形体の製造方法」
[1]基本工程について
本発明の実施形態について以下に説明する。まず基本的な製造工程として、樹脂成形機への投入前または投入時に、有機溶媒中にセルロースナノファイバー(CNF)を分散させたCNF溶液を熱可塑性樹脂に添加し、これらを加熱混練した状態で樹脂成形を行う。その際、樹脂成形体におけるCNFの添加割合が成形材料全量に対して0.1wt%~4.5wt%となるようにする。
【0013】
これにより樹脂成形体の引張応力および引張弾性率を向上させることができ、更にCNFの分散性を改善して成形体の物性を均一化することができる。なおCNFの添加割合が0.1wt%未満の場合、引張弾性率などの機械的物性の改善効果が低下し、また4.5wt%超の場合、CNFの分散性が低下して成形体に物性のムラが生じ易くなる。また上記セルロースナノファイバーを使用することにより破断点伸び率の低下を抑えることができる。
【0014】
[2]CNF溶液について
[2-1]セルロースナノファイバーの解繊処理
上記セルロースナノファイバーについては、第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩に植物繊維または植物繊維を原料とする化学繊維を加え、それらの混合物をそのまま或いはアルコールを添加して加熱することで繊維をナノオーダーのサイズに解繊処理したものを使用するのが好ましい。
【0015】
[2-1]セルロースナノファイバーの原料
上記セルロースナノファイバーの原料である植物繊維としては、綿繊維または綿繊維を原料とする化学繊維が好ましく、木綿やコットンリンター、コットンリンターを原料とするキュプラ等を使用できる。また上記CNFの原料に、綿繊維以外の植物繊維、例えば、木材パルプやマニラ麻などの麻繊維を使用することもできる。更にこれらの植物繊維を混ぜて使用してもよく、廃棄された衣服やタオルなどの綿製品を原料として使用することもできる。
【0016】
更に上記解繊処理を行った後、アンモニウム塩に溶解し、かつ、解繊繊維を溶解しない溶剤を加えることで解繊繊維をセルロースナノファイバーとして分離回収できる。なお上記解繊時の加熱処理は、第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩に繊維を加えて低温から加熱する方法を採用することもできるが、所定温度まで加熱した第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩に繊維を加える方が解繊処理速度の点で好ましい。これにより短時間でセルロースナノファイバーの解繊処理を行えるため、製造効率の向上させることができる。
【0017】
また上記セルロースナノファイバーは、非水系のイオン液体や溶媒を用いた化学処理によって解繊処理されるため、樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂など熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂など)となじみが良く、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂と混練して成形する際に樹脂中におけるナノファイバーの分散性が良好となる。
【0018】
[2-2]第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩
上記第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩の原料としては、アミンとハロゲン化物を使用でき、アミンとしては、特許第6295495号や特開2015-20954号の実施形態に示される下記の[化1]~[化4]で示される化合物、ハロゲン化物としては下記の[化5]で示されるベンジルハライドを好適に使用できる。例えば、その中でも、ピリジンとベンジルクロライドを加熱により化学反応させて得られた1-ベンジルピリジニウムクロライドの使用が好ましい。その他、アンモニウム塩の原料には、[化6]~[化15]で示される骨格をもったものを適宜選択して、或いは組み合わせて使用できる。アンモニウム塩におけるアミンとハロゲン化物の比率としては、特に限定されないがモル比で1~650:1(好ましくは1:1)の範囲で調製するのが好ましい。
【化1】
(式中、R1は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化2】
【化3】
(式中、R2、R3、R4は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化4】
【化5】
(式中、Xは独立にハロゲンを意味する。)
【化6】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化8】
(式中、R1、R2、R3は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化9】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化10】
(式中、R1、R2、R3、R4は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化11】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化12】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化13】
(式中、R1、R2、R4は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化14】
(式中、R1、R2、R3は独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【化15】
(式中、Rは独立に水素、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、芳香族を意味する。)
【0019】
なお上記第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩としては、ベンジルクロライドと4-ジメチルアミノピリジンを加熱反応させて得られる1-ベンジル-4-(ジメチルアミノ)ピリジニウムクロライドや、ベンジルクロライドとトリエチルアミンを加熱反応させて得られるN,N,N-トリエチルベンゼンアミニウムクロライド、ベンジルクロライドとピロリジンを加熱反応させて得られる1-ベンジルピロリジンハイドロクロライド、ベンジルクロライドとイミダゾールを加熱反応させて得られる1-ベンジルイミダゾリウムクロライドなどを使用することもできる。
【0020】
上記アンモニウム塩を合成する際には、溶媒を使用せずに合成を行うこともできるが、非水系のアルコールやエーテル、アセトニトリルなどを溶媒として使用することもできる。上記アンモニウム塩を合成する際の加熱に関しては、アミンの種類によって異なるが、反応温度を高くすれば反応時間を短くすることができる。ピリジンとベンジルクロライドの場合には、120℃~150℃(好ましくは125℃以上)の温度で1分~10分加熱して反応させるのが好ましい。
【0021】
[2-3]解繊工程における加熱処理
上記第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩と、綿繊維または綿繊維を原料とする化学繊維との混合物の加熱処理に関しては、120℃~160℃の温度で5分~60分(好ましくは5分~40分)加熱して解繊処理を行うのが好ましい。アンモニウム塩や綿繊維の種類によって加熱温度や反応時間は異なるが1-ベンジルピリジニウムクロライドと綿繊維を使用する場合には30分程度の加熱で解繊処理を行うことができる。
【0022】
[2-4]CNFの分離回収
上記アンモニウム塩に溶解し、かつ、解繊繊維を溶解しない溶剤としては、特に限定されないがアンモニウム塩に1-ベンジルピリジニウムクロライドを使用する場合には、溶剤にアルコール系溶剤(より好ましくはメタノール)の使用が好ましく、解繊繊維を含有するアンモニウム塩にメタノールを加えることでセルロースナノファイバーを析出させ、ろ過により回収することができる。
【0023】
[2-5]有機溶媒
上記CNF溶液の有機溶媒としては、メタノールの使用が好適であるが、その他にもエタノール等のアルコール系有機溶媒や、エーテル系有機溶媒、アセトニトリル系有機溶媒、アセトン等のケトン系有機溶媒、ピリジン、トルエン、クロロホルムなどの有機溶媒を使用することもできる。塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)に添加する際には、セルロースナノファイバーをピリジンに分散させたCNF溶液と、樹脂をピリジンに分散させた溶液を混合してピリジンを揮発させ、これを樹脂に添加して成形を行うこともできる。
【0024】
[2-6]CNF溶液中のCNF含有率
上記熱可塑性樹脂に添加する際のCNF溶液のCNF含有率は特に限定されないが、CNF溶液のCNF含有率が少なすぎる(薄すぎる)と有機溶媒の揮発量が多くなり、またCNF含有率が多すぎる(濃すぎる)と粘度が高くなって樹脂に混ざり難くなるため、10wt%~30wt%の範囲で調整するのが好ましい。また非発泡成形体の場合、成形時に有機溶媒が樹脂中に残留していると樹脂成形体のボイドの原因となるため、成形前に熱可塑性樹脂にCNF溶液を加えて撹拌し、更にこれを加熱処理して有機溶媒を揮発させてから成形を行うのが好ましい。更に成形機内で真空引きを行えば樹脂中に残留する有機溶媒も揮発させることができる。
【0025】
[3]熱可塑性樹脂について
上記CNF溶液を添加する熱可塑性樹脂については、押出成形や射出成形、ブロー成形などに使用できる樹脂であればよく、例えば、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)や塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂などを使用できる。その中でも成形時にセルロースナノファイバーまたは有機溶媒が加熱によって変色しないように成形温度が180℃以下の熱可塑性樹脂を使用するのが好ましい。
【0026】
[4]CNF含有樹脂成形体の機械的物性について
上記CNF含有樹脂成形体の機械的物性については、引張応力および引張弾性率がCNF非含有の同樹脂よりも大きくなる。特に引張弾性率については、CNF非含有の同樹脂よりも50%以上(好ましくは60%以上)大きくすることができる。一方、破断点伸び率については、セルロースナノファイバーの使用によって低下を抑制できるが、CNF非含有の同樹脂と比較して50%以上(好ましくは80%以上)の数値を維持するのが好ましい。
【0027】
[5]CNF含有樹脂成形体の用途について
上記CNF含有樹脂成形体は、非発泡体であっても発泡体であってもよく、最終成形品であってもペレットであってもよい。また最終成形品の用途としては、樹脂の弾性率を向上させることにより自動車部品などに好適に利用でき、高強度を活かして卓球ラケットやスピーカーなどにも利用できる。またセルロースナノファイバーの整泡作用を利用してシューズのソール等の発泡体としても好適に利用できる。
【0028】
[6]最終成形品について
上記CNF含有樹脂成形体の最終成形品に関しては、熱可塑性樹脂とCNF溶液を混ぜて最終成形品の成形を一段階で行うこともできるが、一旦、ペレットとして成形してから再度成形を行って最終成形品を製造することもできる。また一旦、発泡成形体として成形してから、再度成形を行い、有機溶媒を揮発させて最終成形品を製造することもできる。
【実施例0029】
次に効果の実証試験について説明する。本試験では、熱可塑性樹脂に塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)およびポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)を使用し、これにCNF溶液を添加して同形状に押出成形を行い実施例1~4の試験片を作製した。そして、こられの試験片の引張応力および引張弾性率、破断点伸び率、曲げ弾性率をJIS K7161に準拠してそれぞれ測定した。
【0030】
「実施例1」
本実施例では、セルロースナノファイバーの原料に綿繊維を使用し、第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩(1-ベンジルピリジニウムクロライド)に綿繊維を加えて加熱することにより解繊処理を行った。更にこのセルロースナノファイバーを分離回収してメタノール中に分散させたCNF溶液(CNF含有率20wt%)を、塩化ビニル樹脂に5.0wt%添加して押出成形を行い、セルロースナノファイバーの添加割合が成形材料全量に対し1.0wt%となるように試験片を作製した。そしてこの試験片の機械的物性を測定した結果、引張強度39.0MPa、引張弾性率4.66GPa、破断点伸び率104.3%であった。
【0031】
「実施例2」
本実施例では、実施例1と同じCNF溶液を塩化ビニル樹脂に10.0wt%添加して押出成形を行い、セルロースナノファイバーの添加割合が成形材料全量に対し2.0wt%となるように試験片を作製した。そしてこの試験片の機械的物性を測定した結果、引張強度37.5MPa、引張弾性率5.37GPa、破断点伸び率66.4%、曲げ弾性率2.90GPaであった。
【0032】
「実施例3」
本実施例では、実施例1と同じCNF溶液をポリ乳酸樹脂に2.5wt%添加して押出成形を行い、セルロースナノファイバーの添加割合が成形材料全量に対し0.5wt%となるように試験片を作製した。そしてこの試験片の機械的物性を測定した結果、引張強度68.3MPa、曲げ弾性率3.65GPaであった。
【0033】
「実施例4」
本実施例では、セルロースナノファイバーの原料に木材パルプを使用し、第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩(1-ベンジルピリジニウムクロライド)に綿繊維を加えて加熱することにより解繊処理を行った。更にこのセルロースナノファイバーを分離回収してメタノール中に分散させたCNF溶液(CNF含有率20wt%)を、ポリ乳酸樹脂に1.5wt%添加して押出成形を行い、セルロースナノファイバーの添加割合が成形材料全量に対し0.3wt%となるように試験片を作製した。そしてこの試験片の機械的物性を測定した結果、引張強度71.7MPa、曲げ弾性率3.61GPaであった。
【0034】
「実施例5」
本実施例では、セルロースナノファイバーの原料にマニラ麻を使用し、第四級アンモニウム塩を含むアンモニウム塩(1-ベンジルピリジニウムクロライド)に綿繊維を加えて加熱することにより解繊処理を行った。更にこのセルロースナノファイバーを分離回収してメタノール中に分散させたCNF溶液(CNF含有率20wt%)を、ポリ乳酸樹脂に2.5wt%添加して押出成形を行い、セルロースナノファイバーの添加割合が成形材料全量に対し0.5wt%となるように試験片を作製した。そしてこの試験片の機械的物性を測定した結果、引張強度69.6MPa、曲げ弾性率3.78GPaであった。
【0035】
「比較例1」
本比較例では、CNF溶液を添加せずに塩化ビニル樹脂を押出成形して試験片を作製した。そしてこの試験片の機械的物性を測定した結果、引張強度37.1MPa、引張弾性率2.80GPa、破断点伸び率105.4%、曲げ弾性率2.76GPaであった。
【0036】
「比較例2」
本比較例では、CNF溶液を添加せずにポリ乳酸樹脂を押出成形して試験片を作製した。そしてこの試験片の機械的物性を測定した結果、引張強度57.3MPa、曲げ弾性率3.48GPaであった。
【0037】
[実証試験の効果のまとめ]
上記実施例1~2と比較例1の結果から、塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)にCNF溶液を添加した実施例1~2は添加なしの比較例1よりも引張弾性率が大きく向上し、引張強度も向上していることが確認できた。また破断点伸び率の低下も抑えられていることが確認できた。上記実施例3~5と比較例2の結果から、ポリ乳酸樹脂にCNF溶液を添加した実施例3~5は添加なしの比較例2よりも引張強度および曲げ弾性率が向上していることが確認できた。試験結果をまとめた表を以下に示す。
【表1】