(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162202
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】水性皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20241114BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/67
A61K8/34
A61K8/60
A61Q19/00
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077526
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】三原 祐理子
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC582
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD641
4C083CC02
4C083CC04
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】高温安定性が良く、皮膚になじませた後にきしみ感が無く、塗り広げ時に浸透感があり、空気が乾燥した環境下でも肌のふっくら感が持続する水性皮膚化粧料の提供。
【解決手段】成分(A)を1~10質量%、成分(B)を0.1~20質量%、成分(C)を1~40質量%、成分(D)を0.5~20質量%含む水性皮膚化粧料。
(A)水溶性ビタミン
(B)[I]式のアルキレンオキシド誘導体
Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n [I]
(Zはすべての水酸基を除いた残基、nは3または4、a、bおよびcは、EO(オキシエチレン基)、PO(オキシプロピレン基)およびBO(オキシブチレン基)の平均付加モル数であり、0≦a≦20、0≦b≦10、0≦c≦5、1≦a+bである。)
(C)炭素数3~6の2~3価の多価アルコール
(D)炭素数4~12の糖類
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)を1~10質量%、成分(B)を0.1~20質量%、成分(C)を1~40質量%、成分(D)を0.5~20質量%含む水性皮膚化粧料。
(A)水溶性ビタミン
(B)下記[I]式で表されるアルキレンオキシド誘導体
Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n [I]
([I]式中において、Zは水酸基を3または4個有する化合物からすべての水酸基を除いた残基であり、nは水酸基を3または4個有する前記化合物の水酸基数であり、EO、POおよびBOは、それぞれ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基を示し、a、bおよびcは、それぞれ、前記EO、POおよびBOの平均付加モル数であり、かつ0≦a≦20、0≦b≦10、0≦c≦5、1≦a+bであり、aとbが共に0でない場合には、前記EOとPOがランダム付加もしくはブロック付加し、前記POのEOに対する含有量比(PO/EO)がモル比で1/5~5/1である。)
(C)炭素数3~6の2~3価の多価アルコール
(D)炭素数4~12の糖類
【請求項2】
下記成分(E)を0.1~10%含む、請求項1に記載の水性皮膚化粧料。
(E)平均分子量が300~5,000であるポリエチレングリコール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温安定性が良く、皮膚になじませた後にきしみ感が無く、塗り広げ時に浸透感があり、かつ、空気が乾燥した環境下でも肌のふっくら感が持続する水性皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には大抵、乾燥、ニキビ、シミ、シワなど、肌の悩みに応じた様々な成分が配合されている。中でも、美白・抗酸化作用等がある水溶性ビタミンの人気は高く、特に、エイジングケア化粧料では抗シワ効果があることが知られているナイアシンアミド(ビタミンB)を配合した化粧料が増加している。従来、エイジングケア化粧料は、肌の老化が気になり始める中高年女性用のものが多く、高保湿タイプで、比較的しっとり感やパック感、もっちり感が強い化粧料が求められる傾向にあった。しかし最近では、若々しい肌を維持するために、若いうちからエイジングケアを始める人が増えており、女性に限らず、男性の使用者も増加している。また、このような若年層の人や男性の中には、しっとり感の強い感触よりもみずみずしくさっぱりとした使用感を好む人も多い。さらに、エイジングケアの効果実感の観点から、肌に若々しい潤いとハリを感じられるようなふっくら感、ビタミンがより肌に入っていくような浸透感を感じられる化粧料が求められている。
【0003】
化粧水や透明系ジェルなどの水性皮膚化粧料は、油剤をほとんど含まない化粧料であり、みずみずしくさっぱりとした感触を得られやすい剤型である。これら化粧料は一連のスキンケアの中で最初に適用されることが多く、また、乳液やクリームを重ね付けする際にべたつきが気になったり、そもそも重ね付けが面倒であったり、乳液やクリームの膜感や油っぽい感触が苦手であったりする人等は、水性皮膚化粧料のみでスキンケアを済ませることも多い。一方で、水性皮膚化粧料は、油分が少ないため、残り感や膜感、肌なじみが足りず、浸透感や保湿感、ふっくら感が得られにくいという課題があった。
【0004】
ナイアシンアミドは水溶性が高いため、エイジングケア向け水性皮膚化粧料にも多く配合することができる。しかし、ナイアシンアミドを高配合すると、化粧料を肌になじませた後にきしみを感じやすくなることがあった。保湿剤を配合すると、きしみを感じにくくなり、ふっくら感も向上させることができるが、保湿剤による膜感が強くなることで、べたついたり浸透感を感じにくくなったりすることがあった。また、塗布直後のふっくら感と浸透感を両立するように保湿剤の種類と量を調整しても、冬場やエアコンによる空調が効いた部屋など空気が乾燥した環境下ではふっくら感が持続しないという課題があった。そのため、例えば、お風呂上りや就寝前に水性皮膚化粧料で保湿しても、翌朝には肌が乾燥してしまうことがあった。
【0005】
このような課題を解決するために、例えば特許文献1では、ナイアシンアミドを含有する化粧料に、酸化エチレンの平均モル数が10~30であるポリオキシエチレングリセリンを含有させることで、べたつき感やきしみ感が無く、保湿性に優れた化粧料を提案している。しかし、この化粧料は浸透感、ふっくら感の面では不十分だった。
【0006】
また特許文献2では、プロテオグリカン、アルキレンオキシド誘導体、ジカルボン酸エステルを組み合わせることで、保湿感と浸透感に優れた水性皮膚化粧料を提案している。しかし、この化粧料はきしみ感の無さとふっくら感が不十分だった。また、この化粧料は、アルキレンオキシド誘導体を含むことで、夏場の保管時など40℃以上の高温下で一定期間保管された場合に、白濁して外観が悪くなったり、分離したりする等、安定性が悪くなることがあった。
【0007】
また特許文献3では、親水性セグメントおよびオルガノポリシロキサンセグメントを含み、水または低級アルコールに溶解または分散する共重合体と、ナイアシンアミドなどの活性成分とを組み合わせることで、肌の保湿感とハリ感(ふっくら感)、使用感が良好で、さらに安定性に優れる化粧料を提案している。しかし、この化粧料は、浸透感、空気が乾燥した環境下でのふっくら感の持続性については不十分だった。
【0008】
以上のことから、みずみずしい水性皮膚化粧料のみを使用した場合に、きしみを感じにくく、浸透感があり、かつ、空気が乾燥した環境下でも肌のふっくら感が持続し、高温安定性が良好な化粧料が求められていたが、これまで解決はできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2022-129777号公報
【特許文献2】特開2022-177532号公報
【特許文献3】特開平10-316550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、高温安定性が良く、皮膚になじませた後にきしみ感が無く、塗り広げ時に浸透感があり、かつ、空気が乾燥した環境下でも肌のふっくら感が持続する水性皮膚化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、水溶性ビタミン、特定構造を持つアルキレンオキシド誘導体、多価アルコールおよび糖類を所定の配合量で組み合わせることにより、上記課題を解決できる水性皮膚化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は次の〔1〕および〔2〕の態様を含む。
〔1〕下記成分(A)を1~10質量%、成分(B)を0.1~20質量%、成分(C)を1~40質量%、成分(D)を0.5~20質量%含む水性皮膚化粧料。
(A)水溶性ビタミン
(B)下記[I]式で表されるアルキレンオキシド誘導体
Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n [I]
([I]式中において、Zは水酸基を3または4個有する化合物からすべての水酸基を除いた残基であり、nは水酸基を3または4個有する前記化合物の水酸基数であり、EO、POおよびBOは、それぞれ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基を示し、a、bおよびcは、それぞれ、前記EO、POおよびBOの平均付加モル数であり、かつ0≦a≦20、0≦b≦10、0≦c≦5、1≦a+bであり、aとbが共に0でない場合には、前記EOとPOがランダム付加もしくはブロック付加し、前記POのEOに対する含有量比(PO/EO)がモル比で1/5~5/1である。)
(C)炭素数3~6の2~3価の多価アルコール
(D)炭素数4~12の糖類
【0013】
〔2〕下記成分(E)を0.1~10%含む、上記〔1〕に記載の水性皮膚化粧料。
(E)平均分子量が300~5,000であるポリエチレングリコール
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性皮膚化粧料は、高温安定性が良く、皮膚になじませた後にきしみ感が無く、塗り広げ時に浸透感があり、かつ、空気が乾燥した環境下でも肌のふっくら感が持続する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は本明細書で説明される実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
本明細書において段階的に記載されている複数の数値範囲において、各上限値および各下限値は、任意に組み合わされた数値範囲の上限値または下限値になり得る。例えば、ある成分の含有量について「5~20質量%、10~15質量%」の記載がある場合、「5~15質量%」、「10~20質量%」、「5~10質量%」、「15~20質量%」の各数値範囲を構成し得る。
また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値または実施例から一義的に導き出される値に置き換えることができる。
【0016】
<水性皮膚化粧料>
本発明の水性皮膚化粧料は、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
【0017】
〔成分(A)〕
本発明に用いられる成分(A)は水溶性ビタミンであり、例えば、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)、ビタミンC、およびそれらの塩や誘導体が挙げられる。例えば、L-アスコルビン酸2-グルコシドやナイアシンアミドが挙げられ、ナイアシンアミドが好ましい。ナイアシンアミドは、分子構造C6H6N2O(分子量122.12)のビタミンB3誘導体であり、ニコチン酸アミド、ニコチンアミドとも呼ばれ、美白、抗シワ効果を有することが知られている。本発明の成分(A)は天然物から抽出もしくは合成によって得ることができ、市販のものを使用することができる。成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0018】
成分(A)の含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、1~10質量%であり、好ましくは2~8質量%、より好ましくは3~7%である。成分(A)の含有量が少なすぎると、期待される美白や抗シワ効果が得られないことがあり、成分(A)の含有量が多すぎると、きしみ感が強くなったり、浸透感が得られ難くなったり、析出の可能性が高くなったりすることがある。
【0019】
〔成分(B)〕
本発明に用いられる成分(B)は下記[I]式で表されるアルキレンオキシド誘導体である。
Z-[O(EO)a(PO)b-(BO)c-H]n [I]
【0020】
[I]式中、Zは水酸基を3または4個有する化合物からすべての水酸基を除いた残基であり、nはZで示される残基を有する化合物の水酸基数であり、3または4である。
[I]式において、nが3よりも小さい場合にはふっくら感と浸透感が十分に発揮されない場合があり、nが4よりも大きい場合にはべたつき感を生じる場合があり、好ましくはn=4である。
【0021】
EO、POおよびBOは、それぞれ、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基を示す。
POで示されるオキシプロピレン基としては、直鎖または分岐鎖状のいずれでもよいが、プロピレンオキシド(1,2-エポキシプロパン)に由来するオキシプロピレン基が好ましい。
BOで示されるオキシブチレン基としては、直鎖または分岐鎖状のいずれでもよいが、1,2-ブチレンオキシドに由来するオキシブチレン基が好ましい。
【0022】
a、bおよびcは、それぞれ、EO、POおよびBOの平均付加モル数であり、かつ0≦a≦20、0≦b≦10、0≦c≦5、1≦a+bである。好ましくは、0≦a≦10、3≦b≦7、0≦c≦1であり、さらに浸透感の点ではa=0、4≦b≦6、c=0が好ましい。
[I]式において、aとbが共に0でない場合、1≦a≦20、1≦b≦10、0≦c≦5であり、1≦a≦10、1≦b≦5、0≦c≦2が好ましく、2≦a≦5、1≦b≦3、1≦c≦2がより好ましい。EOおよびPOは、ランダム状、ブロック状のいずれの形態で水酸基に付加されていても良いが、浸透感を得るには、ランダム状に付加されていることが好ましい。POのEOに対する含有量比(PO/EO)はモル比で1/5~5/1であり、1/2~3/1が好ましく、1/1~2/1がより好ましい。なお、BOはアルキレンオキシド鎖の末端にブロック状に付加される。
【0023】
[I]式で表されるアルキレンオキシド付加誘導体は、公知のアルキレンオキシド付加反応により適宜合成して製造することができる。また、日油株式会社より提供されている「WILBRIDE(登録商標)S-753」([I]式中、Zはグリセリンから水酸基を除いた残基、a=2.7、b=1.7、c=1、n=3であり、(PO/EO)=5/8(モル比)である。)、「マクビオブライド(登録商標)MG-20P」([I]式中、Zはメチルグルコシドから水酸基を除いた残基、a=0、b=5、c=0、n=4)等の市販の製品を成分(B)として用いることもできる。成分(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0024】
成分(B)の含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~5質量%である。成分(B)の含有量が少なすぎると、浸透感やふっくら感の持続性が十分に得られないことがあり、多すぎると、高温安定性が低くなったり、膜感が強くなり浸透感を感じ難くなったり、きしみを感じやすくなったりすることがある。
【0025】
〔成分(C)〕
本発明に用いられる成分(C)は炭素数3~6の2~3価の多価アルコールである。かかる多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコールが挙げられる。これらの中で好ましくは、グリセリン、ペンチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングルコール、1,3-プロパンジオールであり、より好ましくはグリセリン、1,3-ブチレングリコールである。成分(C)として、上記多価アルコールから選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
成分(C)の含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、1~40質量%であり、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%である。成分(C)の含有量が少なすぎると、高温安定性、きしみ感の無さ、浸透感、ふっくら感の持続性が十分に得られないことがあり、多すぎると、膜感が強くなり浸透感が得られ難くなったり、べたつきによるきしみ感を生じたりすることがある。
【0027】
〔成分(D)〕
本発明に用いられる成分(D)は、炭素数4~12の糖類であり、例えば、単糖、二糖、糖アルコールが挙げられる。例えば、単糖としては、グルコース、フルクトースが挙げられ、二糖としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースが挙げられ、糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールが挙げられる。これらの中で、好ましくは、ソルビトールおよびスクロースであり、より好ましくはソルビトールである。成分(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
成分(D)の含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、0.5~20質量%であり、好ましくは1~10質量%、より好ましくは1.5~5質量%である。成分(D)の含有量が少なすぎると、ふっくら感の持続性が十分に得られないことがあり、多すぎると、膜感により浸透感が得られ難くなったり、きしんだり、高温安定性が低くなったりすることがある。
【0029】
上記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。また、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
〔水〕
本発明の水性皮膚化粧料は、上記成分(A)~(D)に加え、通常、水を含有する。
水としては、化粧品用または医薬品用等として一般的に用いられる水を用いることができ、例えば、イオン交換水、精製水、注射用水等を用いることが好ましい。
【0031】
水の含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、通常、30~97.4質量%であり、好ましくは45~95質量%であり、特に好ましくは50~90質量%である。更に好ましくは60~90質量%である。
【0032】
〔成分(E)〕
本発明の水性皮膚化粧料は、上記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を少なくとも含有し、更に成分(E)として、特定の平均分子量を有するポリエチレングリコールを含有していてもよい。
成分(E)のポリエチレングリコールは、エチレングリコールが重合してなるポリエーテルであり、平均分子量が300~5,000であるものが好適に用いられる。ポリエチレングリコールの平均分子量は、350~4,000がより好ましく、400~3,500が特に好ましい。ポリエチレングリコールの平均分子量が低すぎると、ふっくら感の持続性が十分に得られないことがあり、平均分子量が高すぎると、きしみやすくなったり、浸透感が得られ難くなったりすることがある。
本発明においては、ポリエチレングリコールの平均分子量が300~5,000の範囲内となればよく、異なる平均分子量を有するポリエチレングリコールを2種以上組み合わせて、平均分子量が300~5,000の範囲内となるように調整して用いることもできる。
【0033】
なお、ポリエチレングリコールの平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリエチレングリコールを用いて作成した検量線から求められるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量である。本発明においては、自体公知の方法により所望の平均分子量のポリエチレングリコールを合成して用いてもよいが、「PEG#1540」(日油株式会社製)(平均分子量=約1,500)、「PEG#400」(日油株式会社製)(平均分子量=約400)等の市販の製品を用いることもできる。
【0034】
本発明の水性皮膚化粧料が成分(E)を含有する場合、成分(E)の含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~7質量%であり、特に好ましくは1~5質量%である。
本発明の水性皮膚化粧料に成分(E)が上記含有量にて含有されると、きしみ感の抑制効果や、ふっくら感を持続させる効果を更に向上させることが期待できる。
【0035】
〔他の成分〕
本発明の水性皮膚化粧料は、上記成分(A)~(E)および水の他に、必要に応じて、本発明の特徴を損なわない範囲で、化粧料または医薬品に常用されている他の成分が配合されていてもよい。他の成分としては、例えば、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、色素、防腐剤、香料などが挙げられる。他の成分の含有量は、水性皮膚化粧料全体に対し、通常、10質量%以下であり、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~1質量%である。
【0036】
本発明の水性皮膚化粧料は、上記成分(A)~(D)、更に必要に応じて上記の成分(E)や他の成分を水中に加え、混合した後に、各成分が所望の含有量となるように水を用いて全量を100質量%とすることにより調製される。
【実施例0037】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0038】
〔水性皮膚化粧料の調製と評価方法〕
成分(A)~(E)、(B′)、水、表4に示すその他成分を用いて、表2,3に示す組成で水性皮膚化粧料として調製し、(1)高温安定性、(2)きしみ感の無さ、(3)浸透感、および(4)ふっくら感の持続性について、下記評価基準にて評価を行った。成分(B)およびこれには該当しない成分(B′)として表1に示される4種のアルキレンオキシド誘導体を使用した。なお、表1中のZ、a、b、c、PO/EO、nは[I]式中の記号を示す。
【0039】
【0040】
(1)高温安定性
各水性皮膚化粧料50gをガラス瓶に入れ、40℃の恒温槽に1週間静置した。1週間後、40℃の時の化粧料および室温に戻した時の化粧料のそれぞれの状態を確認し、下記評価基準により評価した。
<評価基準>
◎:白濁が認められず、高温安定性が良い。
○:極僅かに白濁が見られるが、室温に戻すと均一な状態に戻る。
×:白濁が見られ、室温に戻すと液が分離している。
【0041】
(2)きしみ感の無さ
20名の女性(23~55才)をパネリストとし、顔に水性皮膚化粧料をなじませた後のきしみを下記評価基準により点数化した。パネリスト20名の評価点の合計点を求め、合計点が20点以上である場合、きしみ感の少ない水性皮膚化粧料と判断した。
<評価基準>
2点:きしみを感じなかった。
1点:僅かにきしみを感じた。
0点:きしみを感じた。
<評価>
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上、30点未満
△:合計点が10点以上、20点未満
×:合計点が10点未満
【0042】
(3)浸透感
20名の女性(23~55才)をパネリストとし、顔に水性皮膚化粧料を塗り広げる時の浸透感(塗布時に肌なじみが良く、化粧料が肌に入っていくような感覚)を下記評価基準により点数化した。パネリスト20名の評価点の合計点を求め、合計点が20点以上である場合、浸透感のある水性皮膚化粧料と判断した。
<評価基準>
2点:浸透感を感じた。
1点:わずかに浸透感を感じた。
0点:浸透感を感じなかった。
<評価>
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上、30点未満
△:合計点が10点以上、20点未満
×:合計点が10点未満
【0043】
(4)ふっくら感の持続性
20名の女性(23~55才)をパネリストとし、室温20℃、湿度40%の部屋に15分程度滞在させた後、顔に水性皮膚化粧料を塗布し、6時間、同じ部屋に滞在させた。その後、肌のふっくら感(塗布後、なじませた後に肌の内側から保湿感があり、かつ、肌表面にハリを感じる感覚)について、下記評価基準により点数化した。パネリストパネラー20名の評価点の合計点を求め、合計点が20点以上である場合、空気が乾燥した環境下でも肌のふっくら感が持続する水性皮膚化粧料と判断した。
<評価基準>
2点:ふっくら感を感じた。
1点:僅かにふっくら感を感じた。
0点:ふっくら感を感じなかった。
<評価>
◎:合計点が30点以上
○:合計点が20点以上、30点未満
△:合計点が10点以上、20点未満
×:合計点が10点未満
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
実施例1~10については、いずれのサンプルにおいても、高温安定性が良く、皮膚になじませた後にきしまず、塗り広げる時に浸透感があり、空気が乾燥した環境下でも肌のふっくら感を持続させることができた。
【0048】
一方、比較例1~8については、十分な効果は得られなかった。
すなわち、比較例1では成分(B)が含まれていなかったため、浸透感、ふっくら感の持続性の面で不十分だった。
比較例2では成分(C)が含まれていなかったため、高温安定性、きしみ感の無さ、浸透感、ふっくら感の持続性の面で不十分だった。
比較例3では成分(D)が含まれていなかったため、ふっくら感の持続性の面で不十分だった。
比較例4では成分(B)の含有量が多かったため、高温安定性、浸透感の面で不十分だった。
比較例5では成分(C)の含有量が多かったため、きしみ感の無さ、浸透感の面で不十分だった。
比較例6では成分(D)の含有量が多かったため、高温安定性、きしみ感の無さ、浸透感の面で不十分だった。
比較例7では成分(A)の含有量が多かったため、きしみ感の無さ、浸透感の面で不十分だった。
比較例8では、成分(B)とは異なる成分(B′)を配合したため、ふっくら感、特に浸透感の面で不十分だった。
本発明の水性皮膚化粧料は、肌などの皮膚に適用することができ、従来の水性皮膚化粧料では得られない特有の効果、具体的には、高温安定性の良さ、皮膚になじませた後のきしみ感の無さ、塗り広げ時の浸透感、空気が乾燥した環境下でのふっくら感の持続性を併せて奏することができるため、広く水性皮膚化粧料への応用が期待できる。