(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162248
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電力融通システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H02J1/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077585
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 晃浩
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165BB01
5G165BB09
5G165CA02
(57)【要約】
【課題】各直流配電システム及び電力融通線が過負荷および過電圧とならないようにして、安定的に互いに電力を融通することができるようにする。
【解決手段】直流配電システム100a、100bの直流バス108a、108bに接続される融通電力変換器10a、10bと、融通電力変換器10a、10bを接続する電力融通線20を備え、融通電力変換器10a、10bは、電力融通線20へ電力を出力する際の直流バス目標電圧、融通線上限電圧、融通線下限電圧を有し、融通電力変換器10a、10bは、直流バス目標電圧になるように融通電力を制御するとともに、直流バス108a、108bの電圧が直流バス目標電圧に達するまでに電力融通線20の電圧が融通線上限電圧又は融通線下限電圧に達した場合は、融通線上限電圧又は融通線下限電圧を維持するように融通電力の制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直流配電システム間で電力を融通する電力融通システムであって、
前記複数の直流配電システムのうち少なくとも一つは、電源からの電力の供給を受け、またその他の直流配電システムのうち少なくとも一つは、直流負荷もしくは蓄電池などの充電設備を持ち、
複数の前記直流配電システムの直流バスに接続される複数の融通電力変換器と、
複数の前記融通電力変換器同士を接続する電力融通線を備え、
複数の前記融通電力変換器は、前記電力融通線へ電力を出力する際の前記直流バスの電圧目標値である直流バス目標電圧、前記電力融通線の電圧上限値である融通線上限電圧、前記電力融通線の電圧下限値である融通線下限電圧を有し、
前記融通電力変換器は、前記直流バスの電圧が前記直流バス目標電圧になるように融通電力を制御するとともに、
前記融通電力変換器は、前記直流バスの電圧が前記直流バス目標電圧に達するまでに前記電力融通線の電圧が前記融通線上限電圧又は前記融通線下限電圧に達した場合は、前記融通線上限電圧又は前記融通線下限電圧を維持するように融通電力の制御を行う電力融通システム。
【請求項2】
前記融通電力変換器は、前記電力融通線へ出力する電力の上限値である融通出力上限電力及び前記電力融通線から入力する電力の上限値である融通入力上限電力を有し、
前記直流バス目標電圧、前記融通線上限電圧及び前記融通線下限電圧に達する前に前記融通出力上限電力又は前記融通入力上限電力に達した場合、前記融通電力変換器は、前記融通出力上限電力又は前記融通入力上限電力を維持するように融通電力の制御を行う請求項1に記載の電力融通システム。
【請求項3】
前記融通線上限電圧は、電力の融通を行いたい前記融通電力変換器の順番に高く設定する請求項1または請求項2に記載の電力融通システム。
【請求項4】
前記融通線下限電圧は、電力の融通を受けたい前記融通電力変換器の順番に低く設定する請求項1または請求項2に記載の電力融通システム。
【請求項5】
前記融通線上限電圧は、融通される出力電力が大きくなるごとに前記融通線上限電圧を小さくしていくドループ特性を有する請求項1または請求項2に記載の電力融通システム。
【請求項6】
前記融通線下限電圧は、融通を受ける電力が大きくなるごとに前記融通線下限電圧を大きくしていくドループ特性を有する請求項1または請求項2に記載の電力融通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力融通システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、直流電力で発電される太陽電池などの再生可能エネルギー、更には直流電力で充放電する蓄電池などの普及に伴い、それらを直流で接続することで効率よく利用する直流配電システムが注目されている。
さらに直流配電システム同士を電力変換器を介して接続し、電力を融通する電力融通システムがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の電力融通システムにおいては、融通元の直流配電システムの供給可能電力以上に融通を行ったり、あるいは融通元の変換器の融通可能電力以上に融通を行うと、融通元のシステムあるいは融通元の変換器が過負荷で停止してしまうという問題点があった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、各直流配電システムの電力に関して、各システム及び融通線が過負荷および過電圧とならないようにして、安定的に互いに電力を融通することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される電力融通システムは、
複数の直流配電システム間で電力を融通するものであって、
前記複数の直流配電システムのうち少なくとも一つは、電源からの電力の供給を受け、またその他の直流配電システムのうち少なくとも一つは、直流負荷もしくは蓄電池などの充電設備を持ち、
複数の前記直流配電システムの直流バスに接続される複数の融通電力変換器と、
複数の前記融通電力変換器同士を接続する電力融通線を備え、
複数の前記融通電力変換器は、前記電力融通線へ電力を出力する際の前記直流バスの電圧目標値である直流バス目標電圧、前記電力融通線の電圧上限値である融通線上限電圧、前記電力融通線の電圧下限値である融通線下限電圧を有し、
前記融通電力変換器は、前記直流バスの電圧が前記直流バス目標電圧になるように融通電力を制御するとともに、
前記融通電力変換器は、前記直流バスの電圧が前記直流バス目標電圧に達するまでに前記電力融通線の電圧が前記融通線上限電圧又は前記融通線下限電圧に達した場合は、前記融通線上限電圧又は前記融通線下限電圧を維持するように融通電力の制御を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される電力融通システムによれば、各直流配電システムの電力に関して、各システム及び融通線が過負荷および過電圧とならないようにして、安定的に互いに電力を融通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1における電力融通システムの融通電力変換器による電力制御のフローチャートである。
【
図3】実施の形態1における融通電力変換器のハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図10】実施の形態2による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図11】実施の形態2による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態2による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図14】実施の形態2による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図15】実施の形態2による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図16】実施の形態3による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図17】実施の形態3による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図18】実施の形態3による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図19】実施の形態3による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図20】実施の形態3による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図21】実施の形態3による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図22】実施の形態4による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図23】実施の形態4による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図24】実施の形態4による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図25】実施の形態4による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図26】実施の形態4による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【
図27】実施の形態4による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本実施の形態は、直流配電システム間で電力融通を行う電力融通システムに関するものである。
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
図1は、実施の形態1による電力融通システムの構成を示すブロック図である。電力融通システムは、直流配電システム100a、100b、DC/DCコンバータからなる融通電力変換器10a、10b、及び電力融通線20を備える。
直流配電システム100a、100bは、太陽電池(PV)101a、101b、太陽電池の電力を変換する太陽電池DC/DCコンバータ104a、104b、蓄電池102a、102b、蓄電池の電力を変換する蓄電池DC/DCコンバータ105a、105b、電力系統103a、103b、電力系統の電力を変換するAC/DCコンバータ106a、106bにより構成される。ここで電力系統とは、電力を需要家の受電設備に供給するための、発電、変電、送電、配電を統合したシステムをいう。
更に直流配電システム100a、100bは、各電力変換器の出力を接続する直流バス108a、108b、および直流バス108a、108bに接続される直流負荷107a、107bにより構成される。
【0011】
太陽電池DC/DCコンバータ104a、104bは、太陽電池101a、101bと、直流バス108a、108bの間に接続され、太陽電池101a、101bによる発電の最大電力を、使用することのできる最大電力点追従方式(MPPT:MAXIMUM POWER POINT TRACKING)で制御するDC/DCコンバータであり、基本的に発電された最大電力を出力する。また、直流バス電圧が設定電圧を超える場合は、設定電圧の出力となるように出力を抑制する。
【0012】
蓄電池DC/DCコンバータ105a、105bは蓄電池の充放電を行う。目標電圧を設定することにより、直流バスの電圧が目標電圧以下であれば放電を行い、目標電圧以上であれば充電行うことにより、直流バス電圧を安定させることができる。また充放電電力の上限値を設定することができる。実施の形態1の動作においては、充電動作は行わず、直流バスの電圧を目標電圧に制御するよう放電動作を行い、上限電力に達すると上限電力で動作する。
【0013】
AC/DCコンバータ106a、106bは、交流系統の電力を、直流電力に変換する。直流バスの目標電圧を設定し、その電圧になるように出力電力を制御する。また、AC/DCコンバータの上限電力に達すると、目標電圧未満であったとしても上限電力で動作する。
本実施の形態による電力融通システムは、複数の直流配電システムのうち少なくとも一つは、電源(太陽電池(PV)、電力系統等)からの電力の供給を受け、またその他の直流配電システムのうち少なくとも一つは、直流負荷もしくは蓄電池などの充電設備を持っているものである。
【0014】
直流配電システム100a、100bの構成は上記に限られず、上記の一部から構成されるものであっても良いし、他の需要設備を有するものであっても良い。例えば燃料電池、風力発電などの再生可能エネルギー、およびその電力を変換するDC/DCコンバータ、更にはEV(ELECTRIC VEHICL)とその充放電用DC/DCコンバータが接続されてもよい。又電力系統の電力を変換するAC/DCコンバータは双方向に電力制御されるものであってもよい。
【0015】
融通電力変換器10a、10bは、直流配電システム100a、100bの直流バス108a、108bにそれぞれ接続される。また、融通電力変換器10a、10bの間は電力融通線20を介して接続され、各直流配電システム間を双方向で電力融通する。融通電力変換器10a、10bは、それぞれ電力融通線20へ出力する電力の上限値である融通出力上限電力C、電力融通線20から入力する電力の上限値である融通入力上限電力D、直流バス目標電圧、融通線上限電圧A、融通線下限電圧Bが設定される。直流バス目標電圧は、融通電力変換器10a、10bが接続される直流配電システム100a、100bにおける融通を行いたい電源が接続される電力変換器の制御電圧である目標電圧より小さく設定し、融通したくない電源が接続される電力変換器の制御電圧である目標電圧より大きく設定する。
【0016】
融通電力変換器10a、10bは、直流バス電圧が直流バス目標電圧になるように融通される電力を制御する。また融通出力上限電力Cは他のシステムに対して融通出力する場合の上限電力であり、融通入力上限電力Dは、他のシステムからの融通電力を受け取り、入力する場合の上限電力である。目標電圧に達する前に融通電力が融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dに達した場合、その電力で融通を行う。また、目標電圧に達することなく、融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dに達しないまま、電力融通線20の電圧が融通線上限電圧Aまたは融通線下限電圧Bに達する場合は、その電圧を維持するように融通電力を制御する。
【0017】
この時に、直流バス108a、108bの電圧が目標電圧よりも高い場合は、融通出力0を下限として融通出力を減少させ、融通入力まではしないようにし、また直流バス108a、108bの電圧が目標電圧よりも低い場合は、融通入力0を下限として融通入力を減少させ、融通出力まではしないように制御することにより、複数の直流配電システムにおいて電力の余剰分もしくは不足分が発生した場合に、不要に融通を行い、もしくは融通を受けることを防止する。
【0018】
図2は、融通電力変換器による電力制御のフローチャートである。この制御は、融通電力変換器10a、10bの内部の制御部で実施される。制御部は、例えばCPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)などを含むプロセッサで構成されている。
図3は融通電力変換器10のハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。融通電力変換器10のハードウェアとしては、プロセッサ600と記憶装置601から構成される。記憶装置601は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ600は、記憶装置601から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ600にプログラムが入力される。また、プロセッサ600は、演算結果等のデータを記憶装置601の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。そしてプロセッサ600は、記憶装置601に記憶されたプログラムを読み出して実行する。
【0019】
図2において、まずステップS200において、融通電力変換器10a、10bの内部で測定された融通線電圧と、制御部が保持している融通線電圧の融通線上限電圧Aを比較する。融通線電圧が融通線上限電圧Aを上回っていた場合、融通電力変換器10a、10bは、融通線電圧が融通線上限電圧Aとなるように電圧を制御する(ステップS201)。その後ステップS205の処理において、融通電力変換器10a、10bの融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dを超えていないかを確認し、超えていれば融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dに修正したうえで、出力電圧を変更する(リミッター処理)。
ステップS200において、融通線電圧が融通線上限電圧Aを超えていない場合、ステップS202で、融通線電圧が融通線下限電圧Bを下回っていないか確認する。もし下回っていれば、ステップS203に進み、融通線電圧が融通線下限電圧Bとなるように電力を調整し、その後ステップS205の処理で、融通電力の融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dを超えていないかを確認し、超えていれば融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dに修正したうえで、出力電圧を変更する。
【0020】
ステップS202において、融通線電圧が融通線下限電圧Bを下回っていない場合、ステップS204に進み、直流バス側の電圧を、目標電圧にするように出力電力を調整し、その後ステップS205の処理で、融通電力の融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dを超えていないかを確認し、超えていれば融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dに修正したうえで、出力電圧を変更する。
【0021】
以上のように本実施の形態によれば、複数の融通電力変換器10は、電力融通線20へ電力を出力する際の直流バスの電圧目標値である直流バス目標電圧、電力融通線20の電圧上限値である融通線上限電圧A、電力融通線20の電圧下限値である融通線下限電圧Bを有し、融通電力変換器10は、直流バス目標電圧になるように融通電力を制御するとともに、融通電力変換器10は、直流バス108の電圧が直流バス目標電圧に達するまでに電力融通線20の電圧が融通線上限電圧A又は融通線下限電圧Bに達した場合は、融通線上限電圧A又は融通線下限電圧Bを維持するように融通電力の制御を行うものである。
【0022】
更に融通電力変換器10は、電力融通線20へ出力する電力の上限値である融通出力上限電力C及び電力融通線20から入力する電力の上限値である融通入力上限電力Dを有し、直流バス目標電圧、融通線上限電圧A及び融通線下限電圧Bに達する前に、融通出力上限電力C又は融通入力上限電力Dに達した場合、融通電力変換器10は、融通出力上限電力C又は融通入力上限電力Dを維持するように融通電力の制御を行う。
【0023】
次に具体的な動作について記載する。先ずパターン1として、(片方のシステムの余剰電力)<(他方のシステムの不足電力)の場合について説明する。
それぞれの目標電圧および上限電力について、太陽電池DC/DCコンバータ104a、104bの目標電圧および上限電力を、390V、10kW、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105bの目標電圧を370V、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105bの上限電力については、放電動作の場合は2kW、充電動作の場合は0kW、AC/DCコンバータ106a、106bの目標電圧および上限電力を、350V、10kWとする。更に融通電力変換器10a、10bの目標電圧を380V、融通出力上限電力C及び融通入力上限電力Dを3kWと設定する。また融通電力変換器10a、10bの、融通線上限電圧Aを290V、融通線下限電圧Bを280Vと設定する。
【0024】
上記設定とすることで、それぞれの直流配電システムにおいて、各変換器の目標電圧が、(太陽電池DC/DCコンバータの目標電圧)>(融通電力変換器の目標電圧)>(蓄電池DC/DCコンバータの目標電圧)>(AC/DCコンバータの目標電圧)となるため、太陽電池の余剰電力を他方のシステムに融通し、また太陽電池の電力が負荷に対して不足している場合に、他方のシステムから電力が融通されるという動作となる。
【0025】
上記の設定において、太陽電池101aの発電電力が7kW、太陽電池101bの発電電力が2kW、直流負荷107a、107bの電力が5kWである場合についてのシステムの動作を示す。
直流配電システム100aにおいて、もし融通電力変換器がないとすると、PV発電7kWに対して、直流負荷が5kWであるため、太陽電池DC/DCコンバータ104aは電力を5kW出力しながら、直流バス電圧390Vで動作する。一方直流配電システム100b側では、PV発電2kWに対して、直流負荷が5kWであるため、残り3kWのうち2kWを蓄電池DC/DCコンバータ105bが放電し、残りの1kWをAC/DCコンバータ106bから供給し、直流バス電圧が350Vに制御される。
【0026】
この状態で、融通電力変換器10の動作を
図4に基づいて説明する。融通電力変換器10aは、直流バスの目標電圧が380Vであるため、電力融通線20に向けて電力を供給する。一方、融通電力変換器10bは、直流バスの目標電圧が380Vであり、現状350Vであるため、直流バスに電力を供給する。
直流配電システム100a側においてPVの余剰電力は2kWであるため、融通電力変換器10aが2kWを電力融通線20に電力を供給した時点で、直流バス108aの電圧は低下し、融通電力変換器10aの目標電圧380Vを維持するように、融通電力変換器10aが、電力融通線20側に電力を出力する。このように直流バス108aの電圧を380Vを維持するように出力すると、融通電力変換器10aは電力融通線20側に2kWの電力を出力する状態になっている。
【0027】
一方直流配電システム100b側において、PVの不足電圧が3kWであるため、融通電力変換器10aの出力により融通電力変換器10bが2kWの出力状態においても、融通電力変換器10bの目標電圧である380Vに直流バス108bの電圧が達しないため、さらに直流バスへの融通電力を増加させようとする。しかしながらそれにより、電力融通線20の電圧は低下していき、融通電力変換器10bの融通線下限電圧Bである280Vに達する。即ち融通電力変換器10aからの入力電力が2kWであるのに対し、出力側の融通電力変換器10bが2kW以上の電力を取り出そうとすると、電力が足りないため電力融通線20の電圧が低下する。低下していくと、融通線下限電圧Bである280Vに達する時が来る。
【0028】
そこで、融通電力変換器10bは、融通線下限電圧Bを維持するように、2kWの電力を維持するように制御を行う。そして直流負荷に対する不足分の1kWは、次に目標電圧の高い蓄電池DC/DCコンバータ105bから供給され、直流バス電圧は370Vに制御される。
以上の制御により、直流配電システム100a側のPVの余剰電力2kWが、直流配電システム100b側に融通される。また、それぞれの直流バス108a、108bの電圧、および電力融通線20の電圧が、過負荷などにより電圧低下および電圧上昇することなく適切に制御され、電力の融通が達成される。
【0029】
次にパターン2として、(片方システムの余剰電力)>(他方システムの不足電力)の場合について説明する。
上記のパターン1から、直流配電システム100b側の太陽電池101bの発電電力が4kWとなった場合のシステムの動作について説明する。もし融通電力変換器がないと考えた場合、直流配電システム100aにおいてはパターン1の場合と同様に、太陽電池101aは2kWの余剰電力があり、直流バス108aの電圧は390Vに制御される。一方直流配電システム100b側では、太陽電池101bの発電4kWに対して、直流負荷が5kWであるため、残りの1kWを蓄電池DC/DC105bが放電し、直流バス電圧が370Vに制御される。
【0030】
この状態で、融通電力変換器の動作を
図5に基づいて説明する。融通電力変換器10bは、直流バス108bへの融通電力を増加させ、1kWになった時点で、蓄電池102bが放電して賄っていた電力分を出力でき、目標電圧の直流バス電圧を380Vに制御できる。これにより蓄電池DC/DCコンバータ105bの出力電力は0kWとなる。融通電力変換器10aは、パターン1の場合と同様に、太陽電池101aの余剰電力である2kWを電力融通線20に供給しようと電力を増加させるが、融通電力変換器10bは1kWに制御されるため、1kW以上の出力をしようとすると、電力融通線20の電圧が上昇する。
【0031】
ここで電力融通線20の電圧が290Vに上昇すると、融通電力変換器10aは、290Vを維持するように、出力電圧を1kWに維持する。それにより、電力融通線20の電圧の過負荷を防止しながら、直流配電システム100bが必要とする1kWを融通することが達成される。また直流バス108aの電圧は、太陽電池101aの発電電力が7kWであるのに対して、PV用DC/DCコンバータ104aが、6kWに出力を抑制し、電圧390Vに制御する形となり、390Vで安定的に動作する。
【0032】
次にパターン3として、(融通元余剰電力)>(融通先における融通電力変換器の融通入力上限電力)の場合について説明する。
図6は、パターン2の状態から、融通電力変換器10bの融通入力上限電力Dが0.5kWになった場合のシステム動作を示す。もし融通電力変換器がないと考えた場合は、パターン2における融通電力変換器がない場合と同様の動作となる。
【0033】
その状態で、融通電力変換器10の動作を
図6に基づいて説明する。融通電力変換器10bは、直流バス電圧への融通電力を増加させる。融通電力が融通入力上限電力である0.5kWに達すると、0.5kWで出力を維持する。直流負荷107bへの残りの0.5kWについては、蓄電池DC/DCコンバータ105bが出力し、直流バス108bの電圧は370Vとなる。一方融通電力変換器10aは、パターン2の場合と同様に、融通電力が0.5kWとなった時点で融通線電圧が融通線上限電圧である290Vに上昇し、その電圧を維持するために、出力電力を0.5kWに維持する。それにより、電力融通線20の電圧における過負荷を防止しながら、融通先の融通電力変換器10bの融通入力上限電力Dで電力融通を行うことが達成されている。また直流バス108aの電圧は、太陽電池101aの発電電力が7kWであるのに対して、PV用DC/DCコンバータ104aが、5.5kWに出力を抑制し、電圧390Vに制御する形となり、390Vで安定的に動作する。
【0034】
次にパターン4として、(融通元の融通電力変換器の融通出力上限電力)<(融通先不足電力)の場合について説明する。
図7は、パターン2の状態から、融通電力変換器10aの融通出力上限電力Cが0.5kWになった場合のシステム動作を示す。もし融通電力変換器がないと考えた場合は、パターン2における融通電力変換器がない場合と同様の動作となる。
その状態で、融通電力変換器10の動作を説明する。融通電力変換器10aは、太陽電池101aの余剰電力が2kWあるため、電力融通線20への融通電力を増加させる。
【0035】
融通電力変換器10aの融通出力上限電力Cが0.5kWであるため、0.5kWで出力を維持する。融通電力変換器10bは、直流バス108bの電圧を目標電圧である380Vにするために、融通電力を増加させる。融通電力が0.5kWになった時点で、融通電力変換器10aからの融通電力を超えるため、電力融通線20の電圧は低下していき、融通電力変換器10bの融通線下限電圧Bである280Vに達する。そこで、融通電力変換器10bは、融通線下限電圧Bを維持するように、0.5kWの電力を維持する。それにより、電力融通線20の電圧における過負荷を防止しながら、融通元の融通出力上限電力Cで電力融通を行うことが達成されている。直流負荷107bへの残りの0.5kWについては、蓄電池DC/DCコンバータ105bが出力し、直流バス108bの電圧は370Vとなる。また、直流バス108aの電圧は、太陽電池101aの発電電力が7kWであるのに対して、PV用DC/DCコンバータ104aが、5.5kWに出力を抑制し、電圧390Vに制御する形となり、390Vで安定的に動作する。
【0036】
次にパターン5として、両側の直流配電システムにおいて余剰電力がある場合について説明する。
パターン2の状態から、直流配電システム100b側の太陽電池101bの発電電力が7kWになった場合について説明する。融通電力変換器がないとすると、直流配電システム100a、100bは同じように、PV発電7kWに対して、直流負荷が5kWであるため、太陽電池DC/DCコンバータ104a、104bは電力を5kW出力しながら、直流バス電圧390Vで動作する。
【0037】
この状態で融通電力変換器10の動作を
図8に基づいて説明する。融通電力変換器10aは、直流バスの目標電圧が380Vであるため、電力融通線20に向けて電力を供給する。同様に融通電力変換器10bも、直流バスの目標電圧が380Vであるため、電力融通線20に向けて電力を供給する。それにより、ほぼ0kWの出力で電力融通線20の電圧は上昇し、電力融通線20の電圧は融通電力変換器10a、10bの融通線上限電圧Aである290Vに達し、それを維持するようにそれぞれ0kWでの動作を維持する。
【0038】
次にパターン6として、両側の直流配電システムに余剰電力がない場合について説明する。
図9は、直流配電システム100a、100bにおける太陽電池101a、101bの発電電力が両方とも2kWである場合を示すブロック図である。融通電力変換器がないとすると、直流配電システム100aにおいて、太陽電池DC/DCコンバータ104aがMPPT制御を行い、2kWを出力する。直流負荷107aは5kWであるため、不足分の3kWを蓄電池DC/DCコンバータ102aが2kWを出力し、AC/DCコンバータ106aが残りの1kWを出力し、直流バス108aの電圧は350Vに制御される。直流配電システム100bにおいても、同様の制御が行われる。
【0039】
この状態で融通電力変換器10の動作を
図9に基づいて説明する。融通電力変換器10aの直流バスの目標電圧は380Vであるため、直流バス108aに対して電力を供給しようとする。また、融通電力変換器10bも同様に、直流バス108bに対して電力を供給しようとする。そのため、電力融通線20には電力が供給されず、電力融通線20の電圧は0Vとなるが、電力融通されるべき電力がないため問題はない。
【0040】
もしこの電力融通を行わない状態においても、融通線電力を維持することが必要な場合は、直流バス電圧が目標電圧を下回っている状態においても、電力融通線20に対して電力を供給する構成にすることにより、電力融通線20に電力を供給し、280Vを維持することが可能となる。この場合、融通入力0を下限にするのではなく、融通線電圧を維持するように電力融通線20への融通出力を実施するように制御すれば、280Vに維持することができる。
またさらに、電力融通線20に融通線下限電圧Bの280Vを維持するため、融通線側に電力を出力する制御において、制御電力に応じて融通線下限電圧Bを大きくしていくというドループ特性を持たせておくことにより、各変換器の電力が均等に出力されるため、各融通電力変換器が、280Vを維持するだけのほぼ0kWの電力を出力し、不要に電力融通が実施されることを防止できる。
【0041】
以上のように、融通電力変換器10において、融通出力上限電力C、融通入力上限電力D、直流バスの目標電圧、融通線上限電圧A、融通線下限電圧Bを設定し、融通電力変換器10a、10bは、直流バスの電圧が直流バス目標電圧になるように融通電力を制御し、目標電圧に達する前に融通電力が融通出力上限電力Cもしくは融通入力上限電力Dに達した場合、その電力で融通を行う。また、目標電圧に達さず、融通可能電力もしくは融通許容電力に達さないまま、電力融通線20の電圧が融通線上限電圧Aもしくは融通線下限電圧Bに達した場合には、その電圧を維持するように融通電力を制御する。このような制御を行うことにより、直流バスの電圧及び電力融通線20の電圧が過電圧もしくは不足電圧となることなく、融通出力上限電力C又は融通入力上限電力Dの融通の範囲内で、自動的に余剰分電力を不足側に電力融通することが可能となる。
【0042】
実施の形態2.
次に、実施の形態2を説明する。
図10、
図11は、実施の形態2による電力融通システムの構成を示すブロック図である。尚
図10、
図11は、本来電力融通線20によりG―G間で繋がっているものであり、一続きに繋がっているものである。以上のことは後で説明する
図12~
図27においても同様である。
図10、
図11に示すように、実施の形態2においては、4つの直流配電システム100a、100b、100c、100dが融通電力変換器10a、10b、10c、10dを介して電力融通線20に接続されており、直流配電システム内は、実施の形態1と同じ構成となっている。
融通電力変換器10a、10b、10c、10dにおける直流バスの目標電圧はすべて380Vであり、融通電力変換器10a、10b、10c、10dの融通線上限電圧Aは290V、融通電力変換器10a、10b、10c、10dの融通線下限電圧Bは280Vである。又融通電力変換器10a、10b、10c、10dの融通出力上限電力C及び融通入力上限電力Dの設定値はすべて3kWである。
【0043】
各変換器の目標電圧および上限電力は実施の形態1と同様であり、太陽電池DC/DCコンバータ104a、104b、104c、104dの目標電圧および上限電力は390V、10kW、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105b、105c、105dの目標電圧は370V、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105b、105c、105dの上限電力については、放電動作の場合は2kW、充電動作の場合は0kW、AC/DCコンバータ106a、106b、106c、106dの目標電圧および上限電力は350V、10kWである。
【0044】
次にパターン7として、システム全体の太陽電池の発電電力がシステム全体の直流負荷電力より大きい場合について説明する。
この設定において、太陽電池101aの発電電力が2.5kW、太陽電池101b、101c、101dの発電電力が7kW、直流負荷107a、107b、107c、107dの電力が5kWである場合についてのシステムの動作について
図12、
図13に基づいて説明する。
まず融通電力変換器がない場合を考える。直流配電システム100b、100c、100dにおいて、PV発電電力が7kWであり、直流負荷の電力が5kWであるためそれぞれ2kWの余剰電力がある。また直流配電システム100aにおいては、直流負荷電力が5kWであり、PV発電電力が2.5kWであるため、PVのみでは2.5kWの不足電力がある。
【0045】
この状態において、融通電力変換器10が動作した場合、
図12、
図13に示すような動作となる。融通電力変換器10aは、不足分である2.5kWの融通を受けようと変換し、また電力余剰分がある融通電力変換器10b、10c、10dは融通線上限電圧Aがすべて290Vであるため、各融通電力変換器内部の電圧検出のずれにより、検出電圧が最も低く認識されている融通電力変換器から優先して電力が出力される。例えば同じ290Vを、融通電力変換器10bが291V、融通電力変換器10cが290V、融通電力変換器10dが289Vと認識する場合、融通電力変換器10dが余剰分の2kWを出力し、更に不足分である0.5kWを融通電力変換器10cが出力する。
【0046】
これは、融通電力変換器10が、融通線上限電圧A以上と認識すると、融通電力を抑制するためであり、電圧が高く検出されるものから抑制され、出力されないためである。このように融通電力変換器10の出力順位が決まり、融通線電圧および各直流配電システムの直流バス電圧が安定的に制御されながら、電力の融通が実施される。また融通電力変換器10aは、直流バス108aが目標電圧である380Vとなるように、2.5kWの電力を直流バス108aに出力するため、直流バス電圧は380Vとなる。
【0047】
次にパターン8として、システム全体の太陽電池の発電電力がシステム全体の直流負荷電力より小さい場合について説明する。
この設定において、太陽電池101a、101b、101cの発電電力が3kW、太陽電池101dの発電電力が7.5kW、直流負荷107a、107b、107c、107dの電力が5kWである場合についてのシステムの動作を示す。
まず融通電力変換器がない場合を考える。直流配電システム100dにおいて、PV発電電力は7.5kWであり、直流負荷電力が5kWであるため、2.5kW余剰電力がある。また直流配電システム100a、100b、100cにおいては、直流負荷電力が5kWであり、PV発電電力が3kWであるため、PVのみではそれぞれ2kWの不足電力がある。
【0048】
その状態において、融通電力変換器10が動作した場合の動作を
図14、
図15に示す。融通電力変換器10dは、余剰分である2.5kWの電力を融通しようと変換し、また電力が不足している融通電力変換器10a、10b、10cは融通線下限電圧Bがすべて280Vであるため、各融通電力変換器内部の電圧検出のずれにより、検出電圧を最も高く認識している融通電力変換器から優先して融通を受ける。例えば同じ280Vを、融通電力変換器10aが279V、融通電力変換器10bが280V、融通電力変換器10cが281Vと認識する場合、融通電力変換器10cが不足分の2kWの融通を受け、残りのPV余剰分である0.5kWを融通電力変換器10bが融通される。これは、融通電力変換器10が、融通線下限電圧B以下と認識すると、融通を受ける電力を抑制するためであり、電圧が低く検出されるものから抑制され、融通されないためである。このように融通電力変換器10の融通を受ける順位が決まりながら、融通線電圧および各直流配電システムの直流バス電圧が安定的に制御され、電力の融通が実施される。
【0049】
このように、直流配電システムが3つ以上の複数ある場合においても、電力融通線20の電圧、および各直流配電システムの直流バスの電圧が異常となることなく、安定的に電力融通を行うことが可能である。
【0050】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。
図16、
図17は、実施の形態3による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
図16、
図17に示すように、実施の形態3においては、実施の形態2と同様に、4つの直流配電システム100a、100b、100c、100dが融通電力変換器10a、10b、10c、10dを介して電力融通線20に接続されている。又直流配電システム内も、実施の形態2と同じ構成となっている。
【0051】
融通電力変換器10a、10b、10c、10dにおける直流バスの目標電圧はすべて380Vであるが、融通線上限電圧Aおよび融通線下限電圧Bが実施の形態2と異なっている。即ち融通電力変換器10aの融通線上限電圧Aは290V、融通電力変換器10bの融通線上限電圧Aは295V、融通電力変換器10cの融通線上限電圧Aは300V、融通電力変換器10dの融通線上限電圧Aは305Vである。また融通電力変換器10aの融通線下限電圧Bは265V、融通電力変換器10bの融通線下限電圧Bは270V、融通電力変換器10cの融通線下限電圧Bは275V、融通電力変換器10dの融通線下限電圧Bは280Vである。融通出力上限電力C及び融通入力上限電力Dの設定値はすべて3kWである。
【0052】
各変換器の目標電圧および上限電力は実施の形態1、2と同様であり、太陽電池DC/DCコンバータ104a、104b、104c、104dの目標電圧および上限電力は390V、10kW、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105b、105c、105dの目標電圧は370V、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105b、105c、105dの上限電力は、放電動作の場合は2kW、充電動作の場合は0kW、AC/DCコンバータ106a、106b、106c、106dの目標電圧および上限電力は350V、10kWである。
【0053】
次にパターン9として、(直流配電システムの余剰電力の合計値)>(直流配電システムの不足電力の合計値)の場合について説明する。この設定において、太陽電池101aの発電電力が2.5kW、太陽電池101b、101c、101dの発電電力が7kW、直流負荷107a、107b、107c、107dの電力が5kWである場合についてのシステムの動作を示す。
まず融通電力変換器がない場合を考える。直流配電システム100b、100c、100dにおいて、PV発電電力は7kWであり、直流負荷の電力が5kWであるため、それぞれ2kW余剰電力がある。また直流配電システム100aにおいては、直流負荷の電力が5kWであり、PV発電電力が2.5kWであるため、PVのみでは2.5kWの不足電力がある。
【0054】
その状態において、融通電力変換器10が動作した場合、
図18、
図19に示すような動作となる。融通電力変換器10aは、不足分である2.5kWの融通を受けようと変換し、また電力余剰分がある融通電力変換器10b、10c、10dのうち融通線上限電圧Aが305Vであり最も高い融通電力変換器10dが余剰分の2kWを出力する。更にその不足分である0.5kWを次に融通線上限電圧Aが高い300Vである融通電力変換器10cが出力し、電力融通線20の電圧が300Vとなりながら出力する。
【0055】
これは融通電力変換器において、電力融通線20の電圧が、融通線上限電圧Aに達すると融通する電力を抑制する制御となっているため、高いものは抑制されずに出力していき、融通電圧を保つために最後に出力するものが電力を調整して電圧を維持するためである。すなわち融通線上限電圧Aの高いものから優先して出力されていくこととなる。融通電力変換器10aは、直流バス108aが目標電圧である380Vとなるように、2.5kWの電力を直流バス108aに出力するため、直流バスの電圧は380Vとなる。
【0056】
次にパターン9とは別の(直流配電システムの余剰電力の合計値)>(直流配電システムの不足電力の合計値)の場合をパターン10として説明する。
この設定において、太陽電池101a、101bの発電電力が2.5kW、太陽電池101c、101dの発電電力が7kW、直流負荷107a、107b、107c、107dの電力が5kWである場合についてのシステムの動作を示す。
【0057】
まず融通電力変換器がない場合を考える。直流配電システム100c、100dにおいて、PV発電電力は7kWであり、直流負荷の電力が5kWであるためそれぞれ2kW余剰電力がある。また直流配電システム100a、100bにおいては、直流負荷の電力が5kWであり、PV発電電力が2.5kWであるため、PVのみでは2.5kWの不足電力がある。
【0058】
この状態において、融通電力変換器10が動作した場合、
図20、
図21に示すような動作となる。融通電力変換器10c、10dは、余剰分である2kWを融通しようと変換し、また電力不足分がある融通電力変換器10aの融通線下限電圧Bが265Vであり最も低い融通電力変換器10aが不足分の2.5kWの融通を受け、残りの余剰分である1.5kWを次に融通線下限電圧Bが高い270Vである融通電力変換器10bが受け、融通線電圧を270Vに制御する。
【0059】
これは融通電力変換器において、融通線電圧が、融通線下限電圧Bに達すると、融通を受ける電力を抑制する制御となっているため、融通線下限電圧Bの設定値が低いものは抑制されずに融通を受け、融通電圧を保つために最後に融通を受けるものが電力を調整して電圧を維持するためである。すなわち融通線下限電圧Bの低いものから優先して融通を受けていくこととなる。融通電力変換器10aは、直流バスが目標電圧である380Vとなるように、2.5kWの電力を直流バス108aに出力するため、直流バス108aの電圧は380Vとなる。又直流バス108bは、不足分の1kWを蓄電池DC/DCコンバータ105bが出力するため370Vとなり、直流バス108c、108dは、余剰分を融通電力変換器10c、10dが直流バスの目標電圧の380Vに制御するように融通するため、380Vとなる。
【0060】
上記のように、融通線上限電圧Aを、電力の融通を行いたい融通電力変換器の順番に高くする。また、融通線下限電圧Bを電力の融通を受けたい融通電力変換器の順番に低くする。このようにして融通線電圧及び直流バスの電圧を安定的に制御しながら、電力の融通行う順番及び受ける順番を希望通りに融通することができるようになる。
【0061】
実施の形態4.
次に、実施の形態4を説明する。
図22、
図23は、実施の形態4による電力融通システムの構成を示すブロック図である。
図22、
図23に示すように、実施の形態4においては、実施の形態2と同様の構成となっており、融通電力変換器10a、10b、10c、10dの融通線上限電圧A及び融通線下限電圧Bに、ドループ特性が備えていることが異なっている。融通電力変換器10a、10b、10c、10dの融通線上限電圧Aは300V、また融通電力変換器10a、10b、10c、10dの融通線下限電圧Bは270Vであるが、出力電力1kWに対して4Vの傾きで融通線上限電圧A、融通線下限電圧Bを変更するドループ特性が備わっており、融通線上限電圧Aは、融通される出力電力が大きくなるごとに融通線上限電圧を小さくしていく特性を持つ。また、融通線下限電圧Bは、融通を受ける電力が大きくなるごとに融通線下限電圧を大きくしていく特性を持つ。この特性により、融通線上限電圧Aもしくは融通線下限電圧Bで制御される融通電力変換器については、電力融通線20の電圧により、融通電力変換器の出力が制御されるため、融通電力を均等に分配することが可能となる。
【0062】
尚各変換器の目標電圧および上限電力は実施の形態1と同様である。即ち太陽電池DC/DCコンバータ104a、104b、104c、104dの目標電圧および上限電力は390V、10kW、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105b、105c、105dの目標電圧は370V、蓄電池DC/DCコンバータ105a、105b、105c、105dの上限電力については放電動作の場合は2kW、充電動作の場合は0kW、AC/DCコンバータ106a、106b、106c、106dの目標電圧および上限電力は350V、10kWである。
【0063】
パターン11として、(直流配電システムの余剰電力の合計値)>(直流配電システムの不足電力の合計値)の場合について説明する。この設定において、太陽電池101aの発電電力が3.5kW、太陽電池101b、101c、101dの発電電力が7kW、直流負荷107a、107b、107c、107dの電力が5kWである場合についてのシステムの動作について説明する。
まず融通電力変換器がない場合を考える。直流配電システム100b、100c、100dにおいて、PV発電電力7kWであり、直流負荷電力が5kWであるためそれぞれ2kW余剰電力がある。また直流配電システム100aにおいては、直流負荷電力が5kWであり、PV発電電力が3.5kWであるため、PVのみでは1.5kWの不足電力がある。
【0064】
この状態において、融通電力変換器10が動作した場合、
図24、
図25に示す動作となる。融通電力変換器10aは、不足分である1.5kWの融通を受けようと変換し、また電力余剰分がある融通電力変換器10b、10c、10dは融通線上限電圧Aが0kW時に300Vであるドループ特性を有しているため、出力電力が揃い、それぞれ0.5kWを出力する。これは、例えば1台ずつ動作していくことを考えた場合に、まず1台目が1.5kWを出力し、それにより例えば融通線上限電圧Aがドループ特性により6V低下し、294Vで制御される。
【0065】
次に2台目が動作すると、出力0kWなので融通線上限電圧は300Vに制御され、294Vよりも大きいため、出力を増加させていき、1台目および2台目が0.75kWの出力となったときにそれぞれ3Vずつ融通線上限電圧Aが低下して融通線上限電圧Aが297Vに設定され、297Vで動作し、融通電力が等分されるということが行われるためである。そのため3台目が動作した時には、0.5kWずつ均等に出力し、電力融通線20は、それぞれの融通線上限電圧Aである、298Vに制御される。融通電力変換器10aは、直流バス108aが目標電圧である380Vとなるように、1.5kWの電力を直流バス108aに出力するため、直流バス電圧は380Vとなる。
【0066】
次に(直流配電システムの余剰電力の合計値)>(直流配電システムの不足電力の合計値)の場合の別のパターンについて、パターン12として説明する。この設定において、太陽電池101a、101bの発電電力が2.5kW、太陽電池101c、101dの発電電力が7kW、直流負荷107a、107b、107c、107dの電力が5kWである場合についてのシステムの動作を示す。
まず融通電力変換器がない場合を考える。直流配電システム100c、100dにおいて、PV発電電力が7kWであり、直流負荷の電力が5kWであるため、それぞれ2kWの余剰電力がある。また直流配電システム100a、100bにおいては、直流負荷の電力が5kWであり、PV発電電力が2.5kWであるため、PVのみでは2.5kWの不足電力がある。
【0067】
この状態において、融通電力変換器が動作した場合、
図26、
図27に示す動作となる。融通電力変換器10c、10dは、余剰分である2kWを融通しようと変換し、また電力不足分がある融通電力変換器10a、10bは、融通線下限電圧Bが0kW時に270Vとなるドループ特性を有しているため、電力が揃い、それぞれ2kWが融通される。
【0068】
直流バス108a、108bの電圧は、不足分を蓄電池DC/DCコンバータ105bが出力するため370Vとなり、直流バス108c、108dにおいては、PVの余剰分を融通電力変換器10c、10dが直流バスの目標電圧である380Vに制御するように融通しているため、380Vとなる。
【0069】
このように、融通線上限電圧に、融通出力電力が大きくなるごとに融通線上限電圧を小さくし、更に融通線下限電圧に、融通入力電力が大きくなるごとに融通線下限電圧を大きくするドループ特性を持たせることにより、供給電力、あるいは受ける電力を均等化することができる。
【0070】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0071】
以下、本開示の諸態様を付記してまとめて記載する。
【0072】
(付記1)
複数の直流配電システム間で電力を融通する電力融通システムであって、
前記複数の直流配電システムのうち少なくとも一つは、電源からの電力の供給を受け、またその他の直流配電システムのうち少なくとも一つは、直流負荷もしくは蓄電池などの充電設備を持ち、
複数の前記直流配電システムの直流バスに接続される複数の融通電力変換器と、
複数の前記融通電力変換器同士を接続する電力融通線を備え、
複数の前記融通電力変換器は、前記電力融通線へ電力を出力する際の前記直流バスの電圧目標値である直流バス目標電圧、前記電力融通線の電圧上限値である融通線上限電圧、前記電力融通線の電圧下限値である融通線下限電圧を有し、
前記融通電力変換器は、前記直流バスの電圧が前記直流バス目標電圧になるように融通電力を制御するとともに、
前記融通電力変換器は、前記直流バスの電圧が前記直流バス目標電圧に達するまでに前記電力融通線の電圧が前記融通線上限電圧又は前記融通線下限電圧に達した場合は、前記融通線上限電圧又は前記融通線下限電圧を維持するように融通電力の制御を行う電力融通システム。
(付記2)
前記融通電力変換器は、前記電力融通線へ出力する電力の上限値である融通出力上限電力及び前記電力融通線から入力する電力の上限値である融通入力上限電力を有し、
前記直流バス目標電圧、前記融通線上限電圧及び前記融通線下限電圧に達する前に前記融通出力上限電力又は前記融通入力上限電力に達した場合、前記融通電力変換器は、前記融通出力上限電力又は前記融通入力上限電力を維持するように融通電力の制御を行う付記1に記載の電力融通システム。
(付記3)
前記融通線上限電圧は、電力の融通を行いたい前記融通電力変換器の順番に高く設定する付記1又は付記2に記載の電力融通システム。
(付記4)
前記融通線下限電圧は、電力の融通を受けたい前記融通電力変換器の順番に低く設定する付記1から付記3のいずれか1項に記載の電力融通システム。
(付記5)
前記融通線上限電圧は、融通される出力電力が大きくなるごとに前記融通線上限電圧を小さくしていくドループ特性を有する付記1から付記4のいずれか1項に記載の電力融通システム。
(付記6)
前記融通線下限電圧は、融通を受ける電力が大きくなるごとに前記融通線下限電圧を大きくしていくドループ特性を有する付記1から付記5のいずれか1項に記載の電力融通システム。
【符号の説明】
【0073】
10a~10d 融通電力変換器、20 電力融通線、
100a~100d 直流配電システム、107a~107d 直流負荷、
108a~108d 直流バス。