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特開2024-162251光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング装置、及び破断検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162251
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング装置、及び破断検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077595
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】伊坪 諒人
(72)【発明者】
【氏名】森 洸遥
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 直人
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC02
2G064BC12
2G064BC22
2G064BC33
2G064CC41
2G064DD08
2G064DD15
2G064DD21
(57)【要約】
【課題】光ファイバ及び支持線を含む光ファイバケーブルにおける支持線の破断を検知すること。
【解決手段】本開示に係る光ファイバセンシングシステムは、光ファイバ(11)及び光ファイバ(11)を支持する支持線(12)を含む光ファイバケーブル(10)と、光ファイバ(11)に対してパルス光を送信すると共に、光ファイバ(11)から光信号を受信する通信部(21)と、光信号に基づいて、光ファイバ(11)に発生した振動の周波数特性を導出し、振動の周波数特性に基づいて、支持線(12)が破断したか否かを検知する検知部(22)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルと、
前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知部と、を備える、
光ファイバセンシングシステム。
【請求項2】
前記検知部は、前記光ファイバに発生した振動のうち、所定の周波数以下の振動に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項3】
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記パルス光及び前記光信号に基づいて、前記支持線が破断した破断位置を特定する特定部と、
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記支持線が破断したこと及び前記破断位置を所定の報知先に報知する報知部と、をさらに備える、
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項4】
前記検知部は、前記光ファイバケーブルの周囲が所定の風速以下の状態であるときに前記光ファイバに発生した振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項5】
前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバを内包するケーブル本体と、前記支持線と、が首部によって連結された構造である、
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項6】
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルにおける前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知部と、を備える、
光ファイバセンシング装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記光ファイバに発生した振動のうち、所定の周波数以下の振動に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
請求項6に記載の光ファイバセンシング装置。
【請求項8】
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記パルス光及び前記光信号に基づいて、前記支持線が破断した破断位置を特定する特定部と、
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記支持線が破断したこと及び前記破断位置を所定の報知先に報知する報知部と、をさらに備える、
請求項6に記載の光ファイバセンシング装置。
【請求項9】
前記検知部は、前記光ファイバケーブルの周囲が所定の風速以下の状態であるときに前記光ファイバに発生した振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
請求項6に記載の光ファイバセンシング装置。
【請求項10】
前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバを内包するケーブル本体と、前記支持線と、が首部によって連結された構造である、
請求項6に記載の光ファイバセンシング装置。
【請求項11】
光ファイバセンシング装置による破断検知方法であって、
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルにおける前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信ステップと、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知ステップと、を含む、
破断検知方法。
【請求項12】
前記検知ステップでは、前記光ファイバに発生した振動のうち、所定の周波数以下の振動に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
請求項11に記載の破断検知方法。
【請求項13】
前記検知ステップにより前記支持線が破断したと判断された場合、前記パルス光及び前記光信号に基づいて、前記支持線が破断した破断位置を特定する特定ステップと、
前記検知ステップにより前記支持線が破断したと判断された場合、前記支持線が破断したこと及び前記破断位置を所定の報知先に報知する報知ステップと、をさらに含む、
請求項11に記載の破断検知方法。
【請求項14】
前記検知ステップでは、前記光ファイバケーブルの周囲が所定の風速以下の状態であるときに前記光ファイバに発生した振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
請求項11に記載の破断検知方法。
【請求項15】
前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバを内包するケーブル本体と、前記支持線と、が首部によって連結された構造である、
請求項11に記載の破断検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング装置、及び破断検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバをセンサとして使用する光ファイバセンシングと呼ばれる技術の開発が進められている。光ファイバセンシングでは、光ファイバに発生した振動を検知することにより、光ファイバの周辺で発生した事象を検知することが可能である。
【0003】
光ファイバセンシングに必要不可欠な光ファイバは、例えば、支持線によって光ファイバが支持される態様の光ファイバケーブルとして敷設される。しかし、この態様の光ファイバケーブルでは、台風などの外乱の影響で支持線が破断してしまうことがある。支持線が破断すると、光ファイバにテンションがかかる。その結果、光ファイバ自体が破損すると、正確にセンシングすることができなくなってしまう。
【0004】
そのため、光ファイバ及び支持線を含む光ファイバケーブルにおける支持線の破断を検知する技術が望まれている。このような技術に関連する関連技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、ケーブルを、導体線と光ファイバとを撚り合わせた構造にることにより、ケーブルに負荷が作用した際に、その負荷が光ファイバに作用し易くする。さらに、光ファイバの一端に、光ファイバにレーザー光を出射すると共に光ファイバの散乱光を検知する光学装置を接続し、光ファイバセンシングを利用することによって、光ファイバに負荷が作用した箇所を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-085248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1に記載の技術は、光ファイバセンシングを利用することによって、光ファイバに負荷が作用した箇所を検知する技術であり、支持線の破断を検知する技術ではない。
【0008】
そこで本開示の目的は、上述した課題を鑑み、光ファイバ及び支持線を含む光ファイバケーブルにおける支持線の破断を検知することが可能な光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング装置、及び破断検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様による光ファイバセンシングシステムは、
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルと、
前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知部と、を備える。
【0010】
一態様による光ファイバセンシング装置は、
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルにおける前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知部と、を備える。
【0011】
一態様による破断検知方法は、
光ファイバセンシング装置による破断検知方法であって、
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルにおける前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信ステップと、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
上述の態様によれば、光ファイバ及び支持線を含む光ファイバケーブルにおける支持線の破断を検知することが可能な光ファイバセンシングシステム、光ファイバセンシング装置、及び破断検知方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
図2】実施の形態1に係る光ファイバケーブルの構造例を示す図である。
図3】支持線が破断したときの状態の例を示す図である。
図4】振動データ及び振動の周波数特性の例を示す図である。
図5】光ファイバの距離のうち支持線の破断位置に対応する距離で発生した振動の周波数特性を、支持線の破断前後で比較した例を示す図である。
図6】支持線の破断前に光ファイバの各距離で発生した振動の周波数特性を示す図である。
図7】支持線の破断後に光ファイバの各距離で発生した振動の周波数特性を示す図である。
図8】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの概略的な動作の流れの例を示すフロー図である。
図9】実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
図10】実施の形態2に係る特定部により保持される対応テーブルの例を示す図である。
図11】実施の形態2に係る報知部により所定の報知先に報知されるGUI画面の例を示す図である。
図12】実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの概略的な動作の流れの例を示すフロー図である。
図13】実施の形態1,2に係る光ファイバセンシング装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、以下で示す具体的な数値などは、本開示の理解を容易とするための例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0015】
<実施の形態1>
図1に、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す。図1に示されるように、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムは、光ファイバケーブル10及び光ファイバセンシング装置20を備えている。
【0016】
光ファイバケーブル10は、光ファイバ11と、光ファイバ11を支持する支持線12と、を含むケーブルである。
図2に、光ファイバケーブル10の構造例を示す。図2に示される光ファイバケーブル10は、光ファイバ11を内包するケーブル本体13と、支持線12と、が首部14によって連結された構造であり、自己支持型ケーブルとも称される。ただし、光ファイバケーブル10の構造は、自己支持型ケーブルに限定されるものではない。
【0017】
また、光ファイバケーブル10は、電柱や鉄塔などの柱に架空で敷設される。ただし、光ファイバケーブル10が懸架される物体は、柱に限定されるものではない。
また、光ファイバケーブル10は、光ファイバ11の一端が光ファイバセンシング装置20に接続される。
【0018】
光ファイバセンシング装置20は、例えば、DFOS(Distributed Fiber Optic Sensing)装置などのセンシング装置によって実現されるもので、通信部21及び検知部22を備えている。
【0019】
通信部21は、光ファイバケーブル10に含まれる光ファイバ11に対してパルス光を送信すると共に、そのパルス光が光ファイバ11を伝送されることに伴い発生した後方散乱光を、光信号として受信する。
【0020】
光ファイバ11に振動が発生すると、光ファイバ11を伝送される光信号は、特性(例えば、波長)が変化する。
そのため、検知部22は、通信部21により光ファイバ11から受信された光信号に基づいて、光ファイバ11に発生した振動を検知することが可能であり、さらに、その振動の振動強度を検知することが可能である。
【0021】
また、検知部22は、通信部21により光ファイバ11にパルス光が送信された時刻と、通信部21により光ファイバ11から光信号が受信された時刻と、の時間差に基づいて、その光信号が発生した箇所、すなわち、その光信号に基づき検知された振動が発生した箇所(光ファイバセンシング装置20からの光ファイバ11の距離)を特定することが可能である。
そのため、検知部22は、光ファイバセンシング装置20からの光ファイバ11の各距離で発生した振動の振動強度を示す振動データを導出することが可能である。
【0022】
図3に、光ファイバケーブル10に含まれる支持線12が破断したときの状態の例を示す。図3に示されるように、支持線12が破断すると、光ファイバ11には架線方向(重力方向)にテンションがかかり、その結果、光ファイバ11に振動が発生する。
【0023】
本発明者らは、支持線12が破断したときに、光ファイバ11に発生した振動の周波数特性には、支持線12が破断していないときには表れない周波数特徴が表れることを見出した。具体的には、本発明者らは、光ファイバ11に発生した振動のうち約20Hz(所定の周波数)以下の振動に、支持線12が破断していないときには表れない周波数特徴が表れることを見出した。以下、この点につき詳細に説明する。
【0024】
図4に、検知部22により導出される振動データ及び振動の周波数特性の例を示す。
検知部22は、上述したように、図4の左側に示されるような振動データを導出することが可能である。図4の左側において、横軸は、光ファイバセンシング装置20からの光ファイバ11の距離を示し、縦軸は、その距離で発生した振動の振動強度を示す。
【0025】
また、検知部22は、図4の左側に示される振動データを周波数変換(ここでは、FFT(Fast Fourier Transform))することにより、図4の右側に示されるような、振動の周波数特性を導出することが可能である。図4の右側の周波数特性は、光ファイバ11のある距離で発生した振動の周波数特性の例である。図4の右側において、横軸は、周波数を示し、縦軸は、その周波数の周波数強度を示す。
【0026】
図5に、光ファイバ11の距離のうち支持線12の破断位置に対応する距離で発生した振動の周波数特性を、支持線12の破断前後で比較した例を示す。図5において、横軸は、周波数を示し、縦軸は、その周波数の周波数強度を示す。
【0027】
図5に示されるように、支持線12の破断後の周波数特性は、破断前の周波数特性と比較して、10Hz以下の振動の周波数強度が高い傾向があり、その傾向は約5Hz以下で特に顕著であることがわかる。なお、図5は、10Hz以下の振動の周波数特性のみが示されているが、本発明者らは、支持線12の破断後の周波数強度が高くなる傾向は、約20Hz以下から続いていることを確認した。
【0028】
図6に、支持線12の破断前に光ファイバ11の各距離で発生した振動の周波数特性を示し、図7に、支持線12の破断後に光ファイバ11の各距離で発生した振動の周波数特性を示す。図6及び図7において、横軸は、光ファイバセンシング装置20からの光ファイバ11の距離を示し、縦軸は、その距離で発生した振動の周波数を示す。
【0029】
図6及び図7の例では、光ファイバ11の距離約43000mに対応する位置において、実際に支持線12が破断したことが確認されている。そこで、図6及び図7に示されるように、光ファイバ11の距離約43000m付近の周波数特性に着目すると、支持線12の破断前には表れない約20Hzの振動が、支持線12の破断後には表れていることがわかる。
【0030】
そこで本実施の形態1では、検知部22は、通信部21により光ファイバ11から受信された光信号に基づいて、光ファイバ11に発生した振動の周波数特性(例えば、図5図7のような周波数特性)を導出することとし、導出された振動の周波数特性に基づいて、支持線12が破断したか否かを検知する。具体的には、検知部22は、光ファイバ11に発生した振動のうち、約20Hz(所定の周波数)以下の振動に基づいて、支持線12が破断したか否かを検知する。
【0031】
続いて、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの概略的な動作について説明する。図8に、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの概略的な動作の流れの例を示す。
【0032】
図8に示されるように、通信部21は、光ファイバケーブル10に含まれる光ファイバ11にパルス光を送信すると共に、光ファイバ11から後方散乱光を光信号として受信する(ステップS11)。
【0033】
次に、検知部22は、ステップS11で通信部21により受信された光信号に基づいて、光ファイバ11に発生した振動の周波数特性を導出する(ステップS12)。
【0034】
その後、検知部22は、ステップS12で導出された振動の周波数特性に基づいて、光ファイバケーブル10に含まれる支持線12が破断したか否かを検知する(ステップS13)。
【0035】
上述したように本実施の形態1によれば、通信部21は、光ファイバケーブル10に含まれる光ファイバ11にパルス光を送信すると共に、光ファイバ11から光信号を受信する。検知部22は、光信号に基づいて、光ファイバ11に発生した振動の周波数特性を導出し、導出された振動の周波数特性に基づいて、光ファイバケーブル10に含まれる支持線12が破断したか否かを検知する。これにより、光ファイバ11及び支持線12を含む光ファイバケーブル10における支持線12の破断を検知することが可能となる。
【0036】
<実施の形態2>
図9に、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す。図9に示されるように、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムは、上述した実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムと比較して、光ファイバセンシング装置20が光ファイバセンシング装置20Aに置換されている点が異なる。また、本実施の形態2に係る光ファイバセンシング装置20Aは、上述した実施の形態1に係る光ファイバセンシング装置20と比較して、特定部23及び報知部24が追加されている点が異なる。
【0037】
特定部23は、光ファイバセンシング装置20Aからの光ファイバ11の距離と、その距離での緯度/経度と、を示す対応テーブルを保持している。図10に対応テーブルの例を示す。なお、対応テーブルは、特定部23が保持することには限定されない。例えば、光ファイバセンシング装置20Aの内部又は外部の任意の構成要素が対応テーブルを保持し、その対応テーブルを特定部23が読み出して使用する、といった態様であっても良い。
【0038】
特定部23は、検知部22により支持線12が破断したと判断された場合、通信部21により光ファイバ11に送信されたパルス光と、通信部21により光ファイバ11から受信された光信号と、に基づいて、光ファイバセンシング装置20Aからの光ファイバ11の距離のうち支持線12の破断位置に対応する距離を特定する。具体的には、特定部23は、パルス光が送信された時刻と、光信号が受信された時刻と、の時間差に基づいて、支持線12の破断位置に対応する距離を特定する。さらに、特定部23は、特定された距離と対応テーブルとを用いて、支持線12が破断した破断位置(緯度/経度)を特定する。例えば、図10の例では、支持線12の破断位置に対応する距離が距離aaである場合、特定部23は、支持線12の破断位置を、緯度/経度:Xa/Yaと特定する。
【0039】
報知部24は、検知部22により支持線12が破断したと判断された場合、支持線12が破断したこと及び支持線12の破断位置を所定の報知先に報知する。所定の報知先は、例えば、光ファイバケーブル10を管理する管理センターや管理者の端末などで良い。また、報知方法は、例えば、報知先の端末のスピーカからメッセージを音声出力する方法でも良いし、報知先の端末のディスプレイやモニタなどにGUI(Graphical User Interface)画面を表示する方法でも良い。図11にGUI画面の例を示す。図11に示されるGUI画面では、光ファイバケーブル10の敷設位置及び支持線12の破断位置を、地図上に重畳して表示している。
【0040】
続いて、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの概略的な動作について説明する。図12に、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの概略的な動作の流れの例を示す。
【0041】
図12に示されるように、まず、上述した実施の形態1の図8のステップS11~S13と同様のステップS21~S23の処理が行われる。
【0042】
ステップS23で検知部22により支持線12が破断したと判断された場合(ステップS23のYes)、特定部23は、ステップS21で通信部21により送受信されたパルス光及び光信号に基づいて、支持線12が破断した破断位置(緯度/経度)を特定する(ステップS24)。また、報知部24は、支持線12が破断したこと及びステップS24で特定部23により特定された支持線12の破断位置を、所定の報知先に報知する(ステップS25)。
一方、ステップS23で検知部22により支持線12が破断したと判断されなかった場合(ステップS23のNo)、処理を終了する。
【0043】
上述したように本実施の形態2によれば、検知部22により支持線12が破断したと判断された場合、特定部23は、支持線12が破断した破断位置(緯度/経度)を特定し、報知部24は、支持線12が破断したこと及び支持線12の破断位置を、所定の報知先に報知する。これにより、支持線12が破断したこと及び支持線12の破断位置を、所定の報知先に知らせることができる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0044】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態1,2では、通信部21、検知部22、特定部23、及び報知部24は、同じ光ファイバセンシング装置20,20A内に設けられているが、これには限定されず、互いに分離させて配置しても良い。例えば、通信部21、検知部22、特定部23、及び報知部24は、互いに別々の装置に配置しても良い。また、検知部22、特定部23、及び報知部24は、クラウド上に配置しても良い。
【0045】
また、上述した実施の形態1,2では、光ファイバケーブル10に含まれる支持線12の破断を検知する際の風速の条件を設けていない。しかし、風速が強い場合、振動の周波数特性において、強い振動が表れるため、支持線12の破断に特有の周波数特徴が、判別しにくくなる可能性がある。そこで、検知部22は、光ファイバケーブル10の周囲が所定の風速(例えば、風速2.0m/s程度)以下の状態であるときに光ファイバ11に発生した振動の周波数特性に基づいて、支持線12が破断したか否かを検知しても良い。
【0046】
<実施の形態に係る光ファイバセンシング装置のハードウェア構成>
続いて、上述した実施の形態1,2に係る光ファイバセンシング装置20,20Aを実現するコンピュータについて説明する。図13に、上述した実施の形態1,2に係る光ファイバセンシング装置20,20Aを実現するコンピュータ90のハードウェア構成例を示す。
【0047】
図13に示されるように、コンピュータ90は、プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、入出力インタフェース(入出力I/F)94、及び通信インタフェース(通信I/F)95などを備える。プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、入出力インタフェース94、及び通信インタフェース95は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0048】
プロセッサ91は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ92は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。ストレージ93は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカードなどの記憶装置である。また、ストレージ93は、RAMやROMなどのメモリであっても良い。
【0049】
ストレージ93は、光ファイバセンシング装置20,20Aが備える構成要素の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ91は、これら各プログラムを実行することで、光ファイバセンシング装置20,20Aが備える構成要素の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ91は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ92上に読み出してから実行しても良いし、メモリ92上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ92やストレージ93は、光ファイバセンシング装置20,20Aが備える構成要素が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0050】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(コンピュータ90を含む)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-ROM)、CD-R(CD-Recordable)、CD-R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバなどの有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0051】
入出力インタフェース94は、表示装置941、入力装置942、音出力装置943などと接続される。表示装置941は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニターのような、プロセッサ91により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置942は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサなどである。表示装置941及び入力装置942は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置943は、スピーカのような、プロセッサ91により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0052】
通信インタフェース95は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース95は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0053】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
例えば、上述した実施の形態は、一部又は全部を相互に組み合わせて用いても良い。
【0054】
また、上述した実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルと、
前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知部と、を備える、
光ファイバセンシングシステム。
(付記2)
前記検知部は、前記光ファイバに発生した振動のうち、所定の周波数以下の振動に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
付記1に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記3)
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記パルス光及び前記光信号に基づいて、前記支持線が破断した破断位置を特定する特定部と、
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記支持線が破断したこと及び前記破断位置を所定の報知先に報知する報知部と、をさらに備える、
付記1に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記4)
前記検知部は、前記光ファイバケーブルの周囲が所定の風速以下の状態であるときに前記光ファイバに発生した振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
付記1に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記5)
前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバを内包するケーブル本体と、前記支持線と、が首部によって連結された構造である、
付記1に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記6)
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルにおける前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知部と、を備える、
光ファイバセンシング装置。
(付記7)
前記検知部は、前記光ファイバに発生した振動のうち、所定の周波数以下の振動に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
付記6に記載の光ファイバセンシング装置。
(付記8)
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記パルス光及び前記光信号に基づいて、前記支持線が破断した破断位置を特定する特定部と、
前記検知部により前記支持線が破断したと判断された場合、前記支持線が破断したこと及び前記破断位置を所定の報知先に報知する報知部と、をさらに備える、
付記6に記載の光ファイバセンシング装置。
(付記9)
前記検知部は、前記光ファイバケーブルの周囲が所定の風速以下の状態であるときに前記光ファイバに発生した振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
付記6に記載の光ファイバセンシング装置。
(付記10)
前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバを内包するケーブル本体と、前記支持線と、が首部によって連結された構造である、
付記6に記載の光ファイバセンシング装置。
(付記11)
光ファイバセンシング装置による破断検知方法であって、
光ファイバ及び前記光ファイバを支持する支持線を含む光ファイバケーブルにおける前記光ファイバに対してパルス光を送信すると共に、前記光ファイバから光信号を受信する通信ステップと、
前記光信号に基づいて、前記光ファイバに発生した振動の周波数特性を導出し、前記振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する検知ステップと、を含む、
破断検知方法。
(付記12)
前記検知ステップでは、前記光ファイバに発生した振動のうち、所定の周波数以下の振動に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
付記11に記載の破断検知方法。
(付記13)
前記検知ステップにより前記支持線が破断したと判断された場合、前記パルス光及び前記光信号に基づいて、前記支持線が破断した破断位置を特定する特定ステップと、
前記検知ステップにより前記支持線が破断したと判断された場合、前記支持線が破断したこと及び前記破断位置を所定の報知先に報知する報知ステップと、をさらに含む、
付記11に記載の破断検知方法。
(付記14)
前記検知ステップでは、前記光ファイバケーブルの周囲が所定の風速以下の状態であるときに前記光ファイバに発生した振動の周波数特性に基づいて、前記支持線が破断したか否かを検知する、
付記11に記載の破断検知方法。
(付記15)
前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバを内包するケーブル本体と、前記支持線と、が首部によって連結された構造である、
付記11に記載の破断検知方法。
【符号の説明】
【0055】
10 光ファイバケーブル
11 光ファイバ
12 支持線
13 ケーブル本体
14 首部
20,20A 光ファイバセンシング装置
21 通信部
22 検知部
23 特定部
24 報知部
90 コンピュータ
91 プロセッサ
92 メモリ
93 ストレージ
94 入出力インタフェース
941 表示装置
942 入力装置
943 音出力装置
95 通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13