IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162277
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】積層光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241114BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20241114BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241114BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241114BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241114BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241114BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20241114BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241114BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241114BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/30
C09D7/63
C09D201/00
C09D5/00 Z
C09D4/02
C09J4/02
B32B7/023
B32B27/00 D
B32B37/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077628
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】菅野 亮
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J004
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB16
2H149AB26
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149EA29
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA12Z
2H149FA51Z
2H149FA58Z
2H149FA66
2H149FA70
2H149FD19
2H149FD47
4F100AK26
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100CB04
4F100CB04B
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100EJ52
4F100EJ52A
4F100EJ52B
4F100EJ52C
4F100GB48
4F100JK06
4F100JL11B
4F100JN00A
4F100JN00C
4F100JN01C
4F100JN10
4F100YY00B
4J004AA10
4J004BA02
4J004FA01
4J038FA111
4J038NA12
4J038PB08
4J040KA13
4J040LA01
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げつつ、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の接着性に優れた積層光学フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムの製造方法。第1光学フィルムの貼合面に少なくとも特定のホウ素含有化合物および水を含有する易接着組成物を塗工する第1塗工工程と、第2光学フィルムの貼合面に少なくとも硬化性成分および重合開始剤を含有する接着剤組成物を塗工する第2塗工工程と、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを接着させる接着工程とを含む。易接着組成物中の水の含有量は40質量%以下であり、第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みをα、第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みをβとしたとき、β>αである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムの製造方法であって、
前記第1光学フィルムを搬送しながら、前記第1光学フィルムの貼合面に少なくとも下記一般式(1):
【化1】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)および水を含有する易接着組成物を塗工する第1塗工工程と、
前記第2光学フィルムを搬送しながら、前記第2光学フィルムの貼合面に少なくとも硬化性成分および重合開始剤を含有する接着剤組成物を塗工する第2塗工工程と、
前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、
前記第1光学フィルム面側または前記第2光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、少なくとも前記接着剤組成物を硬化させることにより形成された前記接着剤層を介して、前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムを接着させる接着工程とを含み、
前記易接着組成物中の前記水の含有量が40質量%以下であり、
前記第1塗工工程後の前記易接着組成物の膜厚みをα、前記第2塗工工程後の前記接着剤組成物の膜厚みをβとしたとき、β>αであることを特徴とする積層光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1塗工工程と前記貼合工程との間に乾燥工程を設けない請求項1に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1塗工工程終了から前記貼合工程開始までの所要時間が5秒以内である請求項1に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1光学フィルムが偏光子である請求項1に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2光学フィルムが透明保護フィルムである請求項1に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記接着剤組成物が、重合性成分として下記一般式(2):
【化2】
で表される化合物(ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、RおよびRは環状複素環を形成してもよい)を含有する請求項1に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記易接着組成物が、前記一般式(2)で表される化合物を含有する請求項1に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムの製造方法に関する。当該積層光学フィルムは液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDPなどの画像表示装置を形成し得る。
【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、PDA、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急激に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子が用いられる。特に、TVなどの用途では、ますます高輝度、高コントラスト、広い視野角が求められ、偏光フィルムにおいてもますます高透過率、高偏光度、高い色再現性などが求められている。
【0003】
偏光子としては、高透過率、高偏光度を有することから、例えばポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」ともいう)にヨウ素を吸着させ、延伸した構造のヨウ素系偏光子が最も一般的に広く使用されている。一般的に偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系の材料を水に溶かしたいわゆる水系接着剤によって、偏光子の両面に透明保護フィルムを貼り合わせたものが用いられている(下記特許文献1)。透明保護フィルムとしては、透湿度の高いトリアセチルセルロースなどが用いられる。前記水系接着剤を用いた場合(いわゆるウェットラミネーション)には、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせた後に、乾燥工程が必要となる。
【0004】
一方、前記水系接着剤の代わりに、活性エネルギー線硬化性接着剤が提案されている。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光フィルムを製造する場合には、乾燥工程を必要としないため、偏光フィルムの生産性を向上させることができる。例えば、N-置換アミド系モノマーを硬化性成分として使用した、ラジカル重合型の活性エネルギー線硬化性接着剤が提案されている(下記特許文献2)。
【0005】
下記特許文献3では、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光フィルムの製造方法であって、偏光子を搬送しながら、偏光子の貼合面に、溶媒を含有する易接着組成物を塗工してウェット第1塗膜を形成する第1塗工工程、透明保護フィルムを搬送しながら、透明保護フィルムの貼合面に、接着剤組成物を塗工して第2塗膜を形成する第2塗工工程、ウェット第1塗膜の厚みをインライン測定する第1厚み測定工程、第1厚み測定工程後、乾燥機を用いてウェット第1塗膜中の溶媒を除去してドライ第1塗膜を形成する乾燥工程、乾燥工程後、ドライ第1塗膜の厚みをインライン測定する第2厚み測定工程、インライン測定で得られたウェット第1塗膜の厚みとドライ第1塗膜の厚みの比が、特定の式を満たすように乾燥機の温度および/または風量を調節することにより、新たに形成されるドライ第1塗膜の乾燥度合を調節する乾燥度合調節工程、偏光子の貼合面に形成されたドライ第1塗膜と、透明保護フィルムの貼合面に形成された第2塗膜とを貼り合わせて未硬化接着剤層を形成する貼合工程、および未硬化接着剤層を硬化させて得られる接着剤層を介して、偏光子および透明保護フィルムを接着させる接着工程を含む偏光フィルムの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-296427号公報
【特許文献2】特開2012-052000号公報
【特許文献3】特開2020-160391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3では、乾燥度合調整工程を実施しているが、近年は特に生産性向上の観点から、積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げる必要がある。このため、接着剤層を構成する接着剤組成物や易接着組成物などの材料面および工程面の両方において、さらなる工夫の余地があることが判明した。
【0008】
本発明は、上記課題解決のために開発されたものであり、積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げつつ、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の接着性に優れた積層光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は下記構成により解決し得る。即ち本発明は、接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムの製造方法であって、前記第1光学フィルムを搬送しながら、前記第1光学フィルムの貼合面に少なくとも下記一般式(1):
【化1】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)および水を含有する易接着組成物を塗工する第1塗工工程と、前記第2光学フィルムを搬送しながら、前記第2光学フィルムの貼合面に少なくとも硬化性成分および重合開始剤を含有する接着剤組成物を塗工する第2塗工工程と、前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、前記第1光学フィルム面側または前記第2光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、少なくとも前記接着剤組成物を硬化させることにより形成された前記接着剤層を介して、前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムを接着させる接着工程とを含み、前記易接着組成物中の前記水の含有量が40質量%以下であり、前記第1塗工工程後の前記易接着組成物の膜厚みをα、前記第2塗工工程後の前記接着剤組成物の膜厚みをβとしたとき、β>αであることを特徴とする積層光学フィルムの製造方法(1)に関する。
【0010】
上記積層光学フィルムの製造方法(1)において、前記第1塗工工程と前記貼合工程との間に乾燥工程を設けない積層光学フィルムの製造方法(2)が好ましい。
【0011】
上記積層光学フィルムの製造方法(1)または(2)において、前記第1塗工工程終了から前記貼合工程開始までの所要時間が5秒以内である積層光学フィルムの製造方法(3)が好ましい。
【0012】
上記積層光学フィルムの製造方法(1)~(3)いずれかにおいて、前記第1光学フィルムが偏光子である積層光学フィルムの製造方法(4)が好ましい。
【0013】
上記積層光学フィルムの製造方法(1)~(4)いずれかにおいて、前記第2光学フィルムが透明保護フィルムである積層光学フィルムの製造方法(5)が好ましい。
【0014】
上記積層光学フィルムの製造方法(1)~(5)いずれかにおいて、前記接着剤組成物が、重合性成分として下記一般式(2):
【化2】
で表される化合物(ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、RおよびRは環状複素環を形成してもよい)を含有する積層光学フィルムの製造方法(6)が好ましい。
【0015】
上記積層光学フィルムの製造方法(1)~(6)いずれかにおいて、前記易接着組成物が、前記一般式(2)で表される化合物を含有する積層光学フィルムの製造方法(7)が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る積層光学フィルムの製造方法では、第1光学フィルムの貼合面に易接着組成物を塗工し(第1塗工工程)、第2光学フィルムの貼合面に接着剤組成物を塗工し(第2塗工工程)、互いの貼合面が重なるように第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを貼り合わせる(貼合工程)。ここで、本発明に係る積層光学フィルムの製造方法では、材料面で下記工夫を施している。
(i)易接着組成物中に、少なくとも特定のホウ素含有化合物(一般式(1)で表される化合物)および水を配合し、さらに易接着組成物中の水の含有量を40質量%以下に設計する。
(ii)接着剤組成物中に、少なくとも硬化性成分および重合開始剤を配合する。
加えて、本発明に係る積層光学フィルムの製造方法では、工程面で下記工夫を施している。
(iii)第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みをα、第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みをβとしたとき、β>αに設計する。
上記構成(i)、(ii)および(iii)を全て備えることにより、本発明に係る積層光学フィルムの製造方法によって、積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げつつ、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の接着性に優れた積層光学フィルムを製造することができる。このような効果を奏する理由として、以下のように推定できる。
【0017】
易接着組成物中に配合された特定のホウ素含有化合物は、第1光学フィルムと接着剤層との密着性の向上、特には加湿密着性の向上に大きく貢献する。ただし、積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げた場合、易接着組成物中の水が殆ど除去されないことに起因して、易接着組成物中の水分量が多くなることで、接着剤組成物中から移行してくる重合開始剤の相対的な濃度が低くなり、ホウ素含有化合物が接着剤組成物中に配合された硬化性成分と十分に反応できず、結果として第1光学フィルムと接着剤層との密着性が悪化することが予想される。しかしながら、本発明に係る積層光学フィルムの製造方法では、易接着組成物中の水の含有量を40質量%以下、つまり従来の易接着組成物よりも水の含有量を少なく設計しつつ(上記(i))、第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みをα、第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みをβとしたとき、β>αに設計しているため(上記(iii))、接着剤組成物中に配合した重合開始剤が易接着組成物中に移行しやすくする、つまり接着剤組成物中から移行してくる重合開始剤の相対的な濃度を高めることで、接着剤組成物中に配合した硬化性成分とホウ素含有化合物との反応率を高めている(上記(ii))。これらの結果、例えば第1塗工工程と貼合工程との間に乾燥工程を設けない、あるいは第1塗工工程終了から貼合工程開始までの所要時間を短く設計することで、積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げた場合であっても、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の接着性、特に耐水接着性に優れた積層光学フィルムを製造することができるものと推定される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る積層光学フィルムの製造方法は、接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムの製造方法であって、第1光学フィルムを搬送しながら、第1光学フィルムの貼合面に少なくとも下記一般式(1):
【化3】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)および水を含有する易接着組成物を塗工する第1塗工工程と、第2光学フィルムを搬送しながら、第2光学フィルムの貼合面に少なくとも硬化性成分および重合開始剤を含有する接着剤組成物を塗工する第2塗工工程と、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、第1光学フィルム面側または第2光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、少なくとも接着剤組成物を硬化させることにより形成された接着剤層を介して、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを接着させる接着工程とを含み、易接着組成物中の水の含有量が40質量%以下であり、第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みをα、第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みをβとしたとき、β>αである。まず、本発明に係る積層光学フィルムの製造方法において使用する各材料について説明する。
【0019】
(易接着組成物)
易接着組成物は、少なくとも下記一般式(1):
【化4】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)および水を含有する。
【0020】
一般式(1)で表される化合物中、前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の置換基を有してもよい直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3~20の置換基を有してもよい環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられ、アリール基としては、炭素数6~20の置換基を有してもよいフェニル基、炭素数10~20の置換基を有してもよいナフチル基等が挙げられ、ヘテロ環基としては例えば、少なくとも一つのヘテロ原子を含む、置換基を有してもよい5員環または6員環の基が挙げられる。これらは互いに連結して環を形成してもよい。一般式(1)中、RおよびRとして好ましくは、水素原子、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、最も好ましくは、水素原子である。
【0021】
一般式(1)で表される化合物が有するXは反応性基であって、接着剤層を構成する硬化性成分と反応し得る官能基であり、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、α,β-不飽和カルボニル基、メルカプト基、ハロゲン基などが挙げられる。接着剤層を構成する硬化性接着剤組成物が活性エネルギー線硬化性である場合、反応性基Xは、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基およびメルカプト基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、接着剤層を構成する硬化性接着剤組成物がラジカル重合性である場合、反応性基Xは、(メタ)アクリル基、スチリル基および(メタ)アクリルアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、一般式(1)で表される化合物が(メタ)アクリルアミド基を有する場合、反応性が高く、接着剤層中の硬化性成分との共重合率が高まるためより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド基の極性が高く、接着性に優れるため本発明の効果を効率的に得られるという点からも好ましい。接着剤層を構成する硬化性接着剤組成物がカチオン重合性である場合、反応性基Xは、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド、カルボキシル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、メルカプト基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有することが好ましく、特にエポキシ基を有する場合、得られる接着剤層と被着体との密着性に優れるため好ましく、ビニルエーテル基を有する場合、硬化性接着剤組成物の硬化性が優れるため好ましい。
【0022】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(1a)~(1d)が挙げられる。なお、一般式(1a)および(1b)中のRは水素原子またはメチル基である。
【化5】
【0023】
一般式(1)で表される化合物としては、前記例示した化合物以外にも、ヒドロキシエチルアクリルアミドとホウ酸のエステル、メチロールアクリルアミドとホウ酸のエステル、ヒドロキシエチルアクリレートとホウ酸のエステル、およびヒドロキシブチルアクリレートとホウ酸のエステルなど、(メタ)アクリレートとホウ酸とのエステルを例示可能である。
【0024】
接着剤層を構成する硬化性成分との共重合率を高め、第1光学フィルムと接着剤層との密着性を向上するために、易接着組成物中の一般式(1)で表される化合物の配合量は0.5~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0025】
本発明において使用する易接着組成物は、一般式(1)で表される化合物に加えて水を含有する。ただし、本発明に係る積層光学フィルムの製造方法では、積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げる必要があるため、易接着組成物中の水が殆ど除去されない。このため、易接着組成物中の水の含有量は40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明では易接着組成物中に水以外の溶媒を含んでもよい。易接着組成物が含んでもよい溶媒としては、一般式(1)で表される化合物を安定化して、溶解または分散し得るものが好ましい。かかる溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-ヒドロキシエチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;等から選択される。
【0027】
さらに本発明においては、易接着組成物中に他の添加剤、例えば粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを配合してもよい。
【0028】
本発明においては、易接着組成物中にも硬化性成分を配合してもよく、好ましくは硬化性成分として、接着剤組成物中に好適に配合される、一般式(2)で表される化合物を配合してもよい。一般式(2)で表される化合物については後述する。易接着組成物中に硬化性成分、好適には一般式(2)で表される化合物を配合する場合の配合量は、20~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。
【0029】
なお、本発明において第1塗工工程で使用する易接着組成物中には、重合開始剤を配合しないことが好ましく、仮に配合する場合であっても3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、重合開始剤を配合しないことが特に好ましい。
【0030】
(接着剤組成物)
接着剤組成物は、少なくとも硬化性成分および重合開始剤を含有する。本発明において使用する接着剤組成物は、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、ラジカル重合硬化性接着剤組成物とカチオン重合硬化性接着剤組成物に区分出来る。本発明において、波長範囲10nm~380nm未満の活性エネルギー線を紫外線、波長範囲380nm~800nmの活性エネルギー線を可視光線として表記する。
【0031】
ラジカル重合硬化性接着剤組成物に配合する硬化性成分としては、例えば、下記一般式(2):
【化6】
で表される化合物(ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、RおよびRは環状複素環を形成してもよい)が挙げられる。アルキル基、ヒドロキシアルキル基、および/またはアルコキシアルキル基のアルキル部分の炭素数は特に限定されないが、例えば1~4個のものが例示される。また、RおよびRが形成してもよい環状複素環は、例えばN-アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0032】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体などが挙げられる。また、環状エーテル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体としては、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられ、例えば、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等があげられる。これらのなかでも、反応性に優れる点、高弾性率の硬化物を得られる点、偏光子への接着性に優れる点から、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリンを好適に使用することができる。
【0033】
第1光学フィルムと接着剤層との間の接着性、さらには第1光学フィルムと第2光学フィルムとの接着性を向上する見地から、硬化性接着剤組成物中、一般式(2)に記載の化合物の含有量は、20~80質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明において使用する硬化性接着剤組成物は、一般式(2)で表される化合物以外に、硬化性成分として、他の単官能ラジカル重合性化合物を含有してもよい。単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する各種の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類が挙げられる。
【0035】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、などの多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;などが挙げられる。これらのなかでも各種保護フィルムとの接着性に優れることから、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ-ト、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0036】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレートなどのオキセタン基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブチロラクトン(メタ)アクリレート、などの複素環を有する(メタ)アクリレートや、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、p-フェニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのなかでも、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートは各種保護フィルムとの接着性に優れるため好ましい。
【0037】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0038】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドンなどのラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどの窒素含有複素環を有するビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0039】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物を用いることができる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、末端または分子中に(メタ)アクリル基などの活性二重結合基を有し、かつ活性メチレン基を有する化合物である。活性メチレン基としては、例えばアセトアセチル基、アルコキシマロニル基、またはシアノアセチル基などが挙げられる。前記活性メチレン基がアセトアセチル基であることが好ましい。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;2-エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N-(2-シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N-(2-プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N-(4-アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N-(2-アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミドなどが挙げられる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0040】
ラジカル重合硬化性接着剤組成物を構成する硬化性成分として二官能以上の多官能ラジカル重合性化合物を配合することができる。多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリルアミド誘導体であるN,N‘-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオぺンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンがあげられる。具体例としては、アロニックスM-220(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製)、SR-531(Sartomer社製)、CD-536(Sartomer社製)などが好ましい。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。なお、多官能(メタ)アクリルアミド誘導体は、重合速度が速く生産性に優れる上、接着剤組成物を硬化物とした場合の架橋性に優れるため、接着剤組成物に含有させることが好ましい。
【0041】
ラジカル重合性化合物は、第1光学フィルムや第2光学フィルムとの接着性と、過酷な環境下における光学耐久性を両立させる観点から、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。接着剤組成物中の単官能ラジカル重合性化合物の配合量は、30~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。接着剤組成物中の多官能ラジカル重合性化合物の配合量は、10~70質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましい。
【0042】
第1光学フィルムと接着剤層との間の接着性、さらには第1光学フィルムと第2光学フィルムとの接着性を向上する見地から、本発明で使用する接着剤組成物中には、硬化性成分として、前記一般式(1)で表される化合物を配合してもよい。硬化性接着剤組成物中、一般式(1)に記載の化合物の含有量は、0.1~7質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0043】
<ラジカル重合硬化性接着剤組成物の態様>
本発明で使用する接着剤組成物は、硬化性成分を活性エネルギー線硬化性成分として用いる場合には活性エネルギー線硬化性接着剤組成物として用いることができる。活性エネルギー線に紫外線または可視光線を用いる場合には、重合開始剤として、光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0044】
光重合開始剤は、活性エネルギー線によって適宜に選択される。紫外線または可視光線により硬化させる場合には紫外線または可視光線開裂の光重合開始剤が用いられる。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンゾインブチルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、ドデシルチオキサントンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。
【0045】
第1光学フィルムと接着剤層との間の接着性、さらには第1光学フィルムと第2光学フィルムとの接着性を向上する見地から、本発明において接着剤組成物中に光重合開始剤を配合する場合は、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0046】
また、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を可視光線硬化型で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を用いることが好ましい。380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤については後述する。
【0047】
前記光重合開始剤としては、下記一般式(3)で表される化合物;
【化7】
(式中、RおよびRは-H、-CHCH、-iPrまたはClを示し、RおよびRは同一または異なっても良い)を単独で使用するか、あるいは一般式(3)で表される化合物と後述する380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤とを併用することが好ましい。一般式(3)で表される化合物を使用した場合、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を単独で使用した場合に比べて接着性に優れる。一般式(3)で表される化合物の中でも、RおよびRが-CHCHであるジエチルチオキサントンが特に好ましい。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物中の一般式(3)で表される化合物の配合量は、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0048】
また、必要に応じて重合開始助剤を添加することが好ましい。重合開始助剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどが挙げられ、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルが特に好ましい。重合開始助剤を使用する場合、その添加量は、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0049】
また、必要に応じて公知の光重合開始剤を併用することができる。UV吸収能を有する光学機能層および基材フィルムは、380nm以下の光を透過しないため、光重合開始剤としては、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0050】
本発明において使用する接着剤組成物中には、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーを配合してもよい。接着剤組成物中にアクリル系オリゴマーを含有することで、該組成物に活性エネルギー線を照射・硬化させる際の硬化収縮を低減し、接着剤層と、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムとの界面応力を低減することで、密着性の低下を抑制することができる。
【0051】
活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、塗工時の作業性や均一性を考慮した場合、低粘度であることが好ましいため、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーも低粘度であることが好ましい。低粘度であって、かつ接着剤層の硬化収縮を防止できるアクリル系オリゴマーとしては、重量平均分子量(Mw)が15000以下のものが好ましく、10000以下のものがより好ましく、5000以下のものが特に好ましい。一方、硬化物層(接着剤層)の硬化収縮を十分に抑制するためには、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることが特に好ましい。アクリル系オリゴマーを構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、S-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、N-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これら(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。アクリル系オリゴマー(E)の具体例としては、東亞合成社製「ARUFON」、綜研化学社製「アクトフロー」、BASFジャパン社製「JONCRYL」などが挙げられる。
【0052】
接着剤組成物中のアクリル系オリゴマーの配合量は、3~40質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0053】
本発明で使用する接着剤組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤の具体例としては、活性エネルギー線硬化性の化合物としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0054】
好ましくは、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランである。
【0055】
上記以外の活性エネルギー線硬化性ではないシランカップリング剤の具体例としては、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。
【0056】
本発明で使用する接着剤組成物は、カチオン重合硬化性接着剤組成物であってもよい。カチオン重合硬化性接着剤組成物に使用されるカチオン重合性化合物としては、分子内にカチオン重合性官能基を1つ有する単官能カチオン重合性化合物と、分子内にカチオン重合性官能基を2つ以上有する多官能カチオン重合性化合物とに分類される。単官能カチオン重合性化合物は比較的液粘度が低いため、カチオン重合硬化性接着剤組成物に含有させることで液粘度を低下させることができる。また、単官能カチオン重合性化合物は各種機能を発現させる官能基を有している場合が多く、カチオン重合硬化性接着剤組成物に含有させることで、カチオン重合硬化性接着剤組成物及び/又はカチオン重合硬化性接着剤組成物の硬化物に各種機能を発現させることができる。多官能カチオン重合性化合物は、カチオン重合硬化性接着剤組成物の硬化物を3次元架橋させることができるため、カチオン重合硬化性接着剤組成物に含有させることが好ましい。単官能カチオン重合性化合物と多官能カチオン重合性化合物の比は、単官能カチオン重合性化合物100質量部に対して、多官能カチオン重合性化合物を10質量部から1000質量部の範囲で混合することが好ましい。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基やオキセタニル基、ビニルエーテル基が挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が挙げられ、本発明のカチオン重合性接着剤組成物としては、硬化性や接着性に優れることから、脂環式エポキシ化合物を含有することが特に好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのカプロラクトン変性物やトリメチルカプロラクトン変性物やバレロラクトン変性物等が挙げられ、具体的には、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085(以上、ダイセル化学工業(株製)、サイラキュアUVR-6105、サイラキュアUVR-6107、サイラキュア30、R-6110(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)等が挙げられる。オキセタニル基を有する化合物は、カチオン重合性接着剤組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。オキセタニル基を有する化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられ、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-211、アロンオキセタンOXT-221、アロンオキセタンOXT-212(以上、東亞合成社製)等が市販されている。ビニルエーテル基を有する化合物は、カチオン重合性接着剤組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。ビニルエーテル基を有する化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールものビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ペンタエリスリトール型テトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0057】
カチオン重合硬化性接着剤組成物は、硬化性成分として以上説明したエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、光カチオン重合開始剤が配合される。この光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。光カチオン重合開始剤としては、後述の光酸発生剤が好適に使用される。またカチオン重合性接着剤組成物を可視光線硬化性で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光カチオン重合開始剤を用いることが好ましいが、光カチオン重合開始剤は一般に、300nm付近またはそれより短い波長域に極大吸収を示す化合物であるため、それより長い波長域、具体的には380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤を配合することで、この付近の波長の光に感応し、光カチオン重合開始剤からのカチオン種または酸の発生を促進させることができる。光増感剤としては、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられ、これらは、2種類以上を混合して使用してもよい。特にアントラセン化合物は、光増感効果に優れるため好ましく、具体的にはアントラキュアUVS-1331、アントラキュアUVS-1221(川崎化成社製)が挙げられる。光増感剤の含有量は、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0058】
本発明においては、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物が、光酸発生剤を含有してもよい。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物が光酸発生剤を含有する場合、光酸発生剤を含有しない場合に比べて、接着剤層の耐水性および耐久性を飛躍的に向上することができる。光酸発生剤は、下記一般式(3)で表すことができる。
【0059】
一般式(4)
【化8】
(ただし、Lは、任意のオニウムカチオンを表す。また、Xは、PF6 、SbF 、AsF 、SbCl 、BiCl 、SnCl 、ClO 、ジチオカルバメートアニオン、SCN-よりからなる群より選択されるカウンターアニオンを表す。)
【0060】
次に、一般式(4)中のカウンターアニオンXについて説明する。
【0061】
一般式(4)中のカウンターアニオンXは原理的に特に限定されるものではないが、非求核性アニオンが好ましい。カウンターアニオンXが非求核性アニオンの場合、分子内に共存するカチオンや併用される各種材料における求核反応が起こりにくいため、結果として一般式(4)で表記される光酸発生剤自身やそれを用いた組成物の経時安定性を向上させることが可能である。ここでいう非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が低いアニオンを指す。このようなアニオンとしては、PF 、SbF 、AsF 、SbCl 、BiCl 、SnCl 、ClO 、B(C 、ジチオカルバメートアニオン、SCNなどが挙げられる。
【0062】
具体的には、「サイラキュアーUVI-6992」、「サイラキュアーUVI-6974」(以上、ダウ・ケミカル日本株式会社製)、「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP152」、「アデカオプトマーSP170」、「アデカオプトマーSP172」(以上、株式会社ADEKA製)、「Omnicat250」(IGM Resins B.V.社製)、「CI-5102」、「CI-2855」(以上、日本曹達社製)、「サンエイドSI-60L」、「サンエイドSI-80L」、「サンエイドSI-100L」、「サンエイドSI-110L」、「サンエイドSI-180L」(以上、三新化学社製)、「IK-1」、「CPI-100P」、「CPI-101A」、「CPI-110P」、「CPI-200K」、「CPI-210S」、「CPI-310B」、「CPI-410B」、「CPI-410S」(以上、サンアプロ株式会社製)、「WPI-069」、「WPI-113」、「WPI-116」、「WPI-041」、「WPI-044」、「WPI-054」、「WPI-055」、「WPAG-281」、「WPAG-567」、「WPAG-596」(以上、富士フイルム和光純薬社製)が本発明の光酸発生剤の好ましい具体例として挙げられる。
【0063】
(第1光学フィルム)
本発明において使用する第1光学フィルムとして、偏光子、透明保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられるが、特に第1光学フィルムとして偏光子を使用した場合、偏光子と接着剤層との接着性に優れるため好ましい。
【0064】
本発明において、偏光子は特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素を吸着させて一軸延伸したものなどが挙げられる。偏光子の厚みとしては例えば3~20μmが挙げられる。
【0065】
ただし、本発明においては高温高湿下の過酷な環境における加湿信頼性向上の観点から、偏光子として厚みが3μm以上、15μm以下の薄型偏光子を用いることが好ましい。特に12μm以下であるのが好ましく、さらには10μm以下、特には8μm以下であるのが好ましい。このような薄型偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0066】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0067】
偏光子はホウ酸を含有していることが延伸安定性や加湿信頼性の点から好ましい。また、偏光子に含まれるホウ酸含有量は、貫通クラックの発生抑制の観点から、偏光子全量に対して22質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがさらに好ましい。延伸安定性や加湿信頼性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10質量%以上であることが好ましく、さらには12質量%以上であることが好ましい。
【0068】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
などに記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0069】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0070】
(第2光学フィルム)
本発明において使用する第2光学フィルムとして、偏光子、透明保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられるが、特に第1光学フィルムとして偏光子を使用した場合、第2光学フィルムとして透明保護フィルムを使用することが好ましい。
【0071】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース系樹脂フィルムなどのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0072】
また透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましく、特に透湿度が150g/m/24h以下であるものがより好ましく、140g/m/24h以下のものが特に好ましく、120g/m/24h以下のものさらに好ましい。
【0073】
透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0074】
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄層性などの点より1~500μm程度であり、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。さらには10~200μmが好ましく、20~80μmが好ましい。
【0075】
前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差フィルムを用いることができる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0076】
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差フィルムの厚さも特に制限されないが、20~150μm程度が一般的である。
【0077】
位相差フィルムとしては、下記式(1)ないし(3):
0.70<Re[450]/Re[550]<0.97・・・(1)
1.5×10-3<Δn<6×10-3・・・(2)
1.13<NZ<1.50・・・(3)
(式中、Re[450]およびRe[550]は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した位相差フィルムの面内の位相差値であり、Δnは位相差フィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率を、それぞれnx、nyとしたときのnx-nyである面内複屈折であり、NZはnzを位相差フィルムの厚み方向の屈折率としたときの、厚み方向複屈折であるnx-nzと面内複屈折であるnx-nyとの比である)を満足する逆波長分散型の位相差フィルムを用いてもよい。
【0078】
本発明に係る積層光学フィルムの製造方法は、接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムの製造方法であって、第1光学フィルムを搬送しながら、第1光学フィルムの貼合面に少なくとも一般式(1)で表される化合物および水を含有する易接着組成物を塗工する第1塗工工程と、第2光学フィルムを搬送しながら、第2光学フィルムの貼合面に少なくとも硬化性成分および重合開始剤を含有する接着剤組成物を塗工する第2塗工工程と、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、第1光学フィルム面側または第2光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、少なくとも接着剤組成物を硬化させることにより形成された接着剤層を介して、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを接着させる接着工程とを含む。以下、各工程について説明する。
【0079】
(塗工工程)
本発明に係る積層光学フィルムの製造方法では、第1光学フィルムを搬送しながら、第1光学フィルムの貼合面に少なくとも一般式(1)で表される化合物および水を含有する易接着組成物を塗工する第1塗工工程と、第2光学フィルムを搬送しながら、第2光学フィルムの貼合面に少なくとも硬化性成分および重合開始剤を含有する接着剤組成物を塗工する第2塗工工程とを備える。本発明では、第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みをα、第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みをβとしたとき、β>αに設計する。積層光学フィルムの製造ラインのライン速度を上げつつ、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の接着性に優れた積層光学フィルムを製造するためには、β>1.0×αであることが好ましく、β>1.1×αであることがより好ましい。第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みαは200~2000nmであることが好ましく、300~1500nmであることがより好ましい。また、第2塗工工程後の前記接着剤組成物の膜厚みβは200~2000nmであることが好ましく、300~1500nmであることがより好ましい。
【0080】
易接着組成物および接着剤組成物を塗工する方法としては、組成物の粘度や目的とする厚みによって適宜選択され、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。易接着組成物および接着剤組成物の粘度は0.1~200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1~100mPa・sであり、最も好ましくは5~50mPa・sである。組成物の粘度が高い場合、塗工後の表面平滑性が乏しく外観不良が発生するため好ましくない。このため、各組成物を加熱または冷却して好ましい範囲の粘度に調整して塗布することができる。
【0081】
なお第1光学フィルムおよび/または第2光学フィルムは、塗工工程前に表面改質処理を行ってもよい。特に第1光学フィルムとして偏光子を使用する場合、表面改質処理を行うことが好ましい。表面改質処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理などの処理が挙げられ、特にコロナ処理であることが好ましい。コロナ処理を行うことで偏光子表面にカルボニル基やアミノ基などの反応性官能基が生成し、接着剤層との密着性が向上する。また、アッシング効果により表面の異物が除去されたり、表面の凹凸が軽減されたりして、外観特性に優れる積層光学フィルムを製造することができる。
【0082】
(貼合工程)
上記のように塗工した易接着組成物および接着剤組成物を介して、第1光学フィルムと第2光学フィルムとをロールラミネーターなどを使用して貼り合わせる。
【0083】
本発明に係る積層光学フィルムの製造方法では、製造ラインのライン速度を上げるために、第1塗工工程と貼合工程との間に、易接着組成物中に含まれる水を除去するための乾燥工程を設けないことが好ましい。また、製造ラインのライン速度を上げるために、第1塗工工程終了から貼合工程開始までの所要時間が10秒以内であることが好ましく、5秒以内であることがより好ましい。
【0084】
なお、本発明において第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みα、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを貼り合わせる際の易接着組成物の膜厚みα’、さらには第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みβは、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを搬送しながら、インライン測定により測定可能である。インライン測定に用いる膜厚計として、光学式(非接触)膜厚計を用いることが好ましい。光学式(非接触)膜厚計は特に制限されず、例えば、分光干渉式膜厚計、反射分光式膜厚計、及び共焦点式膜厚計などが挙げられる。特に、塗膜の厚みを全幅で測定できる分光干渉式膜厚計が好ましい。
【0085】
(接着工程)
第1光学フィルム面側または第2光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、少なくとも接着剤組成物を硬化させることにより形成された接着剤層を介して、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムを接着させる。活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。
【0086】
電子線を照射する場合の照射条件は、少なくとも接着剤組成物を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV~300kVであり、さらに好ましくは10kV~250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムにダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5~100kGy、さらに好ましくは10~75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムにダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0087】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。第1光学フィルムおよび第2光学フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる第1光学フィルム面および第2光学フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0088】
本発明に係る積層光学フィルムを製造する場合、活性エネルギー線として、波長範囲380nm~450nmの可視光線を含むもの、特には波長範囲380nm~450nmの可視光線の照射量が最も多い活性エネルギー線を使用することが好ましい。紫外線、可視光線を使用する場合であって、紫外線吸収能を付与した第2光学フィルム、例えば紫外線不透過型透明保護フィルムを使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は接着剤組成物に到達せず、その重合反応に寄与しない。さらに、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、第1光学フィルムおよび第2光学フィルム自体が発熱し、積層光学フィルムのカール・シワなど不良の原因となる。そのため、本発明において紫外線、可視光線を採用する場合、活性エネルギー線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380~440nmの積算照度と波長範囲250~370nmの積算照度との比が100:0~100:50であることが好ましく、100:0~100:40であることがより好ましい。本発明に係る積層光学フィルムを製造する場合、活性エネルギー線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380~440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光などの紫外線と可視光線を含む光源を使用することができ、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の紫外線を遮断して用いることもできる。第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の接着剤層の接着性能を高めつつ、積層光学フィルムのカールを防止するためには、ガリウム封入メタルハライドランプを使用し、かつ380nmより短波長の光を遮断可能なバンドパスフィルターを介して得られた活性エネルギー線、またはLED光源を使用して得られる波長405nmの活性エネルギー線を使用することが好ましい。
【0089】
本発明に係る積層光学フィルムを連続ラインで製造する場合、ライン速度は、接着剤組成物の硬化時間によるが、好ましくは1~500m/min、より好ましくは5~300m/min、さらに好ましくは10~100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、あるいは第1光学フィルムまたは第2光学フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐え得る積層光学フィルムが作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、接着剤組成物の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
【0090】
(積層光学フィルム)
積層光学フィルムは、接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層されているが、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0091】
粘着層は、異なる組成または種類などのものの重畳層として偏光フィルムや光学フィルムの片面または両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光フィルムや光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚みなどの粘着層とすることもできる。粘着層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1~500μmであり、1~200μmが好ましく、特に1~100μmが好ましい。
【0092】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚み条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0093】
積層光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光フィルムまたは光学フィルム、および必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0094】
液晶セルの片側または両側に光学積層体を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学積層体は液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に光学積層体を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【実施例0095】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0096】
<第1光学フィルム(偏光子)>
非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された5μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された薄型偏光子を構成する、厚さ5.5μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を得た。ここで得られた薄型偏光子を第1光学フィルムとして用いた。
【0097】
<第2光学フィルム(透明保護フィルム)>
・透明保護フィルム:トリアセチルセルロース系樹脂フィルム(商品名「TJ25」、富士フイルム社製)
上記透明保護フィルムを第2光学フィルムとして用いた。
【0098】
<活性エネルギー線>
活性エネルギー線として、可視光線(ガリウム封入メタルハライドランプ) 照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製Light HAMMER10 バルブ:Vバルブ ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm(波長380~440nm)を使用した。なお、可視光線の照度は、Solatell社製Sola-Checkシステムを使用して測定した。
【0099】
実施例1
(易接着組成物の調整)
N-アクリロイルモルホリン(一般式(2)で表される化合物(商品名「ACMO」、興人社製))65質量%、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸(一般式(1)で表される化合物(商品名「MAPBA」、純正化学社製))7質量%、純水27.8質量%、表面調整剤(商品名「EXP.4200」、日信化学工業社製)0.2質量%の割合で易接着組成物を調製した。
【0100】
(接着剤組成物の調整)
N-アクリロイルモルホリン(一般式(2)で表される化合物(商品名「ACMO」、興人社製))40.2質量%、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸(一般式(1)で表される化合物(商品名「MAPBA」、純正化学社製))2.9質量%、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)(商品名「アロニックスM-220」、東亞合成社製)52.6質量%、2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン(光重合開始剤(商品名「Omnirad 907」、IGM Resins B.V.社製))1.9質量%、ジエチルチオキサントン(光重合開始剤(商品名「KAYACURE DETX-S」、日本化薬社製))1.9質量%、表面調整剤(商品名「EXP.4200」、日信化学工業社製)0.5質量%の割合で接着剤組成物を調製した。
【0101】
(積層光学フィルム(偏光フィルム)の製造)
MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度200%/対ライン速)を用いて、第1光学フィルム(薄型偏光子)の貼合面に前記易接着組成物を塗工した(第1塗工工程)。第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みαは550nmであった。また、MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度160%/対ライン速)を用いて、第2光学フィルム(透明保護フィルム)の貼合面に前記接着剤組成物を塗工した(第2塗工工程)。第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みβは600nmであった。なお、膜厚みαおよびβは、分光干渉式膜厚計(オーシャンオプティクス社製:分光器「USB2000+」、光源「HL-2000」、ファイバー「OCF-103995」)を用いて、インライン測定を行うことで測定した。
【0102】
次に透明保護フィルムと薄型偏光子を備える光学フィルム積層体とをそれぞれ塗工面側からロール機で貼り合わせた(貼合工程)。第1塗工工程と貼合工程との間には乾燥工程を設けず、第1塗工工程から貼合工程までの所要時間は3秒に設計した。
【0103】
その後、貼り合わせた透明保護フィルム側から、活性エネルギー線照射装置により上記可視光線を照射して、易接着組成物および接着剤組成物を硬化させることにより得られた接着剤層を介して、薄型偏光子および透明保護フィルムを接着させた。次に光学フィルム積層体の非晶性PET基材を剥離することにより、積層光学フィルム(偏光フィルム)を製造した。
【0104】
実施例2~3および比較例1~2
第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みα(nm)および第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みβ(nm)を表1に記載のものに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で積層光学フィルム(偏光フィルム)を製造した。
【0105】
実施例4
(易接着組成物の調整)
N-アクリロイルモルホリン(一般式(2)で表される化合物(商品名「ACMO」、興人社製))77.8質量%、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸(一般式(1)で表される化合物(商品名「MAPBA」、純正化学社製))7質量%、純水15質量%、表面調整剤(商品名「EXP.4200」、日信化学工業社製)0.2質量%の割合で易接着組成物を調製した。
【0106】
第1塗工工程後の易接着組成物の膜厚みα(nm)および第2塗工工程後の接着剤組成物の膜厚みβ(nm)を表1に記載のものに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で積層光学フィルム(偏光フィルム)を製造した。
【0107】
<耐水ピール力(耐水接着性)の評価>
偏光フィルムのPET剥離面に両面テープ(No.500、日東電工社製)を貼り合わせた。さらに、薄型偏光子の延伸方向と平行に200mm、直行方向に15mmの大きさに切り出し、薄型偏光子と透明保護フィルムとの間にカッターナイフで切り込みを入れた後、両面テープの剥離フィルムを剥がし、粘着剤面をガラス板に貼り合わせた。次いで、得られたガラス板に貼り合わせられた偏光フィルムを、20℃98%RHの環境下に240時間暴露させて取り出した後、余分な水分を除去し、角度自在タイプ粘着・皮膜剥離解析装置(VPA-2、協和界面化学社製)により、90度方向に薄型偏光子と透明保護フィルムとを剥離速度1000mm/minで剥離し、その剥離強度(N/15mm)を測定した。
○:>1.5N以上、△:1.0N以上1.5N未満、×:1.0N未満
【0108】
【表1】