(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162279
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】園芸ハウスにおける地中熱を利用した地温管理方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20241114BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241114BHJP
F24T 10/00 20180101ALI20241114BHJP
【FI】
A01G9/24 P
A01G7/00 601Z
F24T10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077631
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】505292111
【氏名又は名称】ジオシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高杉 真司
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA17
2B029SA04
2B029SA05
2B029SA06
(57)【要約】
【課題】施工が容易で、かつ、より安価なランニングコストにて地温管理が行えるようにする。
【解決手段】園芸ハウス内の圃場に熱源を地中熱とする熱交換器31を埋設して、上記圃場の地温を所定温度に保つ。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
園芸ハウス内の圃場に熱源を地中熱とする熱交換器を埋設して、上記圃場の地温を所定温度に保つことを特徴とする園芸ハウスにおける地中熱を利用した地温管理方法。
【請求項2】
栽培される植物が植えられている土塊の周りを囲むように、熱源を地中熱とする熱交換器を配置して上記土塊の地温を所定温度に保つことを特徴とする植物栽培における地中熱を利用した地温管理法。
【請求項3】
上記熱交換器には、熱媒体流入側の第1端管と熱媒体流出側の第2端管との間に可撓性を有する複数本の熱交換チューブを並列的に接続してなる面状熱交換器が用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の園芸ハウスにおける地中熱を利用した地温管理方法。
【請求項4】
上記熱交換器の周りがさらに遮熱シートによって囲まれることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培における地中熱を利用した地温管理法。
【請求項5】
上記土塊が搬送用のコンテナバッグ内に収納された状態で運搬用のパレット上に載置され、この状態のまま上記植物の栽培が行われることを特徴とする請求項2または4に記載の植物栽培における地中熱を利用した地温管理法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園芸ハウスにおける地中熱を利用した地温管理方法に関し、さらに詳しく言えば、園芸ハウス内の圃場の地温を地中熱熱交換器による地中熱を利用して、栽培する植物にとって好ましい温度に管理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
園芸ハウス(ビニールハウス等とも呼ばれる栽培施設)での植物栽培(ハウス栽培)において、ハウス内の温度管理はもっぱら室内の温度を管理することで行われている。それには多くの場合、灯油燃料等による加温器が用いられているが、燃料コストが高くつくばかりでなく、加温器から排出されるCO2による地球温暖化等の問題がある。
【0003】
他方において、植物の成長には、根の生長が重要であることから、地温管理として、植物が植えられている地中内の温度を管理することも行われている。
【0004】
その方法の一つとして、特許文献1に記載された発明では、加熱した熱伝導率の小さい熱媒体液を熱伝導率の小さい黒色の樹脂製放熱パイプで循環させて地中に放熱させる間接式暖房システムが提案されている。
【0005】
しかしながら、この間接式暖房システムによると、黒色の樹脂製放熱パイプを植物が植えられる地中内に張り巡らす必要があるばかりでなく、熱媒体液を加熱する加熱手段を必要とすることから、イニシャルコストおよびランニングコストを含めてコスト的に好ましくない。また、栽培植物ごとに個別的に地温管理することらついては関心が持たれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の第1の課題は、施工が容易で、かつ、より安価なランニングコストにて地温管理が行えるようにした園芸ハウスにおける地中熱を利用した地温管理方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の課題は、栽培植物の種類等に応じて個別的にその地温を管理し得るようにした園芸ハウスにおける地中熱を利用した地温管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の課題を解決するため、第1の発明は、園芸ハウス内の圃場に熱源を地中熱とする熱交換器を埋設して、上記圃場の地温を所定温度に保つことを特徴としている。
【0010】
また、上記第2の課題を解決するため、第2の発明は、栽培される植物が植えられている土塊の周りを囲むように、熱源を地中熱とする熱交換器を配置して上記土塊の地温を所定温度に保つことを特徴としている。
【0011】
いずれの発明においても、上記熱交換器には、熱媒体流入側の第1端管と熱媒体流出側の第2端管との間に可撓性を有する複数本の熱交換チューブを並列的に接続してなる面状熱交換器が用いられることが好ましい。
【0012】
また、上記熱交換器内を流れる熱媒体が、クローズドループ方式もしくはオープンループ方式の地中熱熱交換手段にて地中熱と熱交換が行われることが好ましい。
【0013】
上記第2の発明において、好ましくは上記熱交換器の周りがさらに遮熱シートによって囲まれる。
【0014】
また、上記第2の発明には、上記土塊が搬送用のコンテナバッグ内に収納された状態で運搬用のパレット上に載置され、この状態のまま上記植物の栽培が行われる態様が含まれる。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、熱交換器(好ましくは面状熱交換器)を植物が植えられる圃場に埋設するだけでよいことから容易に施工することができる。また、熱源として地下水や井戸水、河川水、農協用水、それに工場排水等を利用することができるため、ランニングコストも安価に抑えることができる。また、化石燃料による加温器の使用頻度が低下する分、加温器から排出されるCO2量を削減することができる。
【0016】
また、第2の発明によれば、上記第1の発明による効果に加えて、栽培植物の種類等に応じて個別的にその地温を最適に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用される園芸ハウスの一例を示す(a)模式的な断面図、(b)そのハウス内の圃場面を示す模式的な平面図。
【
図2a】本発明の第1実施形態の基本的な態様を説明するための模式図。
【
図2b】本発明の第2実施形態の基本的な態様を説明するための模式図。
【
図3a】上記第1実施形態における面状熱交換器の配置例と熱源との接続例を示す模式図。
【
図3b】上記第1実施形態における面状熱交換器の埋設例を示す断面図。
【
図4】本発明の各実施形態で用いられる面状熱交換器の一例を示す斜視図。
【
図5】本発明の各実施形態で用いられる熱源側の地中熱熱交換手段の第1例を示す模式的な断面図。
【
図6】本発明の各実施形態で用いられる熱源側の地中熱熱交換手段の第2例を示す模式的な断面図。
【
図7a】第2実施形態により地温管理されるフレコンバッグ型可搬植物を示す模式的な側面図。
【
図8】上記フレコンバッグ型可搬植物の配置例と熱源との接続例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、
図1ないし
図8を参照して、本発明の第1および第2の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1(a)に、本発明の地温管理方法が適用される園芸ハウス1の一例を示す。園芸ハウス1は、栽培施設として日光を透過する樹脂シートやガラス板等で囲まれた室内空間1aを有する。室内1aには、灯油燃料等による加温器1bが設けられてもよい。図示しないが、換気扇や循環扇が併用されてもよい。なお、園芸ハウス1は、例えば蒲鉾型のビニールハウスであってもよい。
【0020】
図1(b)の園芸ハウス1内の圃場1cを参照して、本実施形態の説明において便宜的に、圃場1cは、第1実施形態に係る地温管理方法が適用される第1栽培エリア10と、第2実施形態に係る地温管理方法が適用される第2栽培エリア20とに区画割りされている。第1栽培エリア10と第2栽培エリア20は、図示しない例えばカーテンにより仕切られてもよい。
【0021】
第1実施形態と第2実施形態には、ともに栽培土壌の地温を所定温度にするために熱源を地中熱とする
図4に示す熱交換器30が用いられる。熱交換器30には、熱媒体流入側の第1端管311と熱媒体流出側の第2端管312との間に複数本の熱交換チューブ313を並列的に接続してなる面状熱交換器31が好ましく採用される。
【0022】
各熱交換チューブ313は、第1端管311と第2端管312とに連通しており、熱媒体は、後述する熱源側から第1端管311に供給され、各熱交換チューブ313を通って第2端管312に向けて流れつつ栽培土壌との間で熱交換し、第2端管312から上記熱源側に戻される。
【0023】
熱交換チューブ313は、可撓性を有する合成樹脂チューブ、例えばポリエチレン製チューブであってよい。一例として、熱交換チューブ313は、φ6mm×長さ3.8mのチューブで、端管311,312の間に117本が梁部材314により間隔を揃えて平行に配置され、見かけ上1枚のシート状を呈していることから、面状熱交換器31は熱交換シートもしくはシート状熱交換器と呼ばれることがある。面状熱交換器31は丸めることもできる。
【0024】
第1実施形態では、
図2aに示すように、苗木等の栽培植物Pの根元付近に面状熱交換器31が配置(埋設)される。一例として、
図3aに示すように、面状熱交換器31は、園芸ハウス1の第1栽培エリア10内に日の字状として2箇所に並置される。なお、面状熱交換器31を地面を掘って埋設するのではなく、
図3bに示すように、面状熱交換器31を地面上に配置し、その上を覆土1dにて覆ってもよい。
【0025】
面状熱交換器31の各々(この例では10枚)が流入側(往路側)ヘッダユニット41および流出側(戻り側)ヘッダユニット42を介して熱源側と接続される。ヘッダユニット41と42は、
図3bに示す保護用のヘッダボックス40内に収納されている。
【0026】
流入側ヘッダユニット41と流出側ヘッダユニット42は、ともに10個の接続ポートを有し、各面状熱交換器31の第1端管311は流入側ヘッダユニット41に対して並列に接続され、また、各面状熱交換器31の第2端管312も流出側ヘッダユニット42に対して並列に接続される。なお、各面状熱交換器31の第1端管311側および/または第2端管312側に例えば流量調整弁を設けて、面状熱交換器31を個別的、所定個数のグループ別に地温管理することもできる。
【0027】
第1および第2のいずれの実施形態においても、面状熱交換器31内を流れる熱媒体は、オープンループ方式もしくはクローズドループ方式の地中熱熱交換手段にて地中熱と熱交換が行われる。
【0028】
まず、オープンループ方式の地中熱熱交換手段について説明する。その一例として、
図5に特許第7107769号に開示されている地中熱の熱交換装置を示し、これについて説明する。
【0029】
この熱交換装置100は、基本的な構成として、貯水槽110と、貯水槽110内に収納される熱交換器120と、貯水槽110内に熱源水を供給する熱源水供給手段130と、積極的に対流を起こす空気噴出手段140とを備えている。
【0030】
貯水槽110は、地面に掘削された貯水池であってもよいし、地表に設置された貯水タンクであってもよい。また、河川の一部が使用されてもよい。この例では、貯水槽110を貯水タンクとしている。
【0031】
熱交換器120には、先の
図4で説明した面状熱交換器31が用いられている。すなわち、本実施形態において、面状熱交換器31は、利用側の地温管理用と熱源側の地中熱熱交換用の双方に用いられているが、それらを識別するため、以下の説明において熱源側の面状熱交換器の符号は120(31)とする。
【0032】
好ましい態様として、熱源側の面状熱交換器120(31)は、渦巻き状に丸められて貯水槽110内に収納される。その際、隣接する内層と外層との間に、複数本のスペーサパイプ123を適宜の間隔で介在させて、隣接する内層と外層との間に隙間が生ずるようにしている。
【0033】
熱源側の面状熱交換器120(31)における熱媒体流入側の第1端管311と熱媒体流出側の第2端管312は、利用側が備える例えばヒートポンプ45(
図3a参照)の一次側に接続され、面状熱交換器31内には、不凍液等の熱媒体が循環するように流される。
【0034】
利用側については、流入側ヘッダユニット41の往路配管41aと流出側ヘッダユニット42の復路配管42aがヒートポンプ45の二次側に接続されるが、ヒートポンプ45を介在させずに、流入側ヘッダユニット41の往路配管41aと流出側ヘッダユニット42の復路配管42aを熱源側の面状熱交換器120(31)の第1端管311と第2端管312に接続するようにしてもよい。
【0035】
熱源水供給手段130として、熱源水供給ホース131が用いられる。熱源水供給ホース131は、熱源側の面状熱交換器120(31)と同じく渦巻き状として、各スペーサパイプ123の脚部123aを貫通し、貯水槽110の底部側において、脚部123aにほぼ水平に支持されている。
【0036】
作図の都合上図示されていないが、熱源水供給ホース131の上面(面状熱交換器120(31))の底部側と対向する面)には、所定の間隔をもって複数の水噴出孔が形成されている。
【0037】
熱源水供給ホース31には、給水ポンプP1より接続配管132を介して熱源水が供給される。供給される熱源水は、地下水(井戸水)や河川水、工業排水、農業用水、湧水等を例示することができる。
【0038】
貯水槽110の上部から、排水ポンプP2を有する排水管133が引き出されている。排水ポンプP2は、図示しないフロートスイッチにて熱源水の上限レベルが検知されると、運転を開始し、余剰の熱源水を排水する。
【0039】
空気噴出手段140として、空気供給ホース141が用いられている。空気供給ホース141も、熱源側の面状熱交換器120(31)と同じく渦巻き状として、各スペーサパイプ123の脚部123aを貫通し、貯水槽110の底部側において、熱源水供給ホース131の下側で脚部123aにほぼ水平に支持されている。
【0040】
作図の都合上図示されていないが、空気供給ホース141の上面(熱交換器120(面状熱交換器31)の底部側と対向する面)には、所定の間隔をもって複数の空気噴出孔が形成されている。空気供給ホース141には、ブロワーP3より接続配管142を介して圧搾空気が供給される。
【0041】
この熱交換装置100によれば、給水ポンプP1から供給される熱源水は、熱源水供給ホース131の各水噴出孔より、熱源側の面状熱交換器120(31)のスペーサパイプ123にて間隔が保持されている内層と外層の間の隙間に向けて噴射される。
【0042】
また、ブロワーP3から供給される圧搾空気は、空気供給ホース141の各空気噴出孔より、同じく、熱源側の面状熱交換器120(31)のスペーサパイプ23にて間隔が保持されている内層と外層の間の隙間に向けて噴射される。これにより、貯水槽110内には、面状熱交換器120(31)の隣接する内層と外層の間を通る大きな対流が生ずるため、熱源水と熱媒体との熱交換率が大幅に高められる。
【0043】
次に、クローズドループ方式の地中熱熱交換手段について説明する。その一例として、
図6に特許第5786014号に開示されている地中熱熱交換装置を示し、これについて説明する。
【0044】
図6に示すクローズドループ型地中熱熱交換装置200(以下、単に地中熱熱交換器200とする)は、地表面Gからほぼ鉛直に掘削された筒状の熱交換井210と、熱交換井210の中に沿って配置される熱交換チューブ(熱交換器)230とを備えている。
【0045】
熱交換井210は、地表面Gからほぼ鉛直に掘削ボーリングされた円筒状を呈し、好ましくは地下水位線WLを貫くように掘削される。熱交換井210は、通常、複数箇所に設けられる。
【0046】
熱交換井210には、その内周面に沿ってケーシング211が挿通されている。ケーシング211は、熱交換井210の内径とほぼ同径の鋼管からなり、内部は所定の仕切部材212を介して上下に区画されている。ケーシング211には、一部にスリット孔213が設けられたいわゆる孔明管が用いられている。
【0047】
仕切部材212の一部には、熱交換チューブ230を挿通する挿通孔224が設けられている。仕切部材212は、好ましくは熱交換井210が掘削された地層の地下水位線WLに該当する位置とほぼ同じ位置に配置される。
【0048】
仕切部材212を挟んでケーシング211の下側には、例えばスリット状の孔213が設けられている。このスリット孔213を通して地下水がケーシング211の内部を流れる。
【0049】
仕切部材212を挟んでケーシング211の上側には、充填材層225が設けられている。充填材層225は、砂礫などの比較的荒い粒状物からなる充填材を仕切部材212からほぼ地表面に至るまで充填して適度な透水性を備えた透水層である。
【0050】
熱交換チューブ230は、直管チューブをU字状に折り曲げて、一方を往路側、他方と復路側としたU字管が用いられ、その折り曲げた先端が熱交換井210の底部に向けて挿入されている。
【0051】
熱交換チューブ230の入口側と出口側はともに、地中熱熱交換ユニットHPに接続されている。この地中熱熱交換ユニットHPを介して地温管理用の面状熱交換器31の熱媒体と熱交換チューブ230内の熱媒体との熱交換が行われるが、地中熱熱交換ユニットHPを介在させることなく、地温管理用の面状熱交換器31の熱媒体を熱交換チューブ230内に流してもよい。
【0052】
この例においては、熱交換井210には、充填材層225に水を注入して、熱交換チューブ230の熱交換効率を高める注水手段240が設けられている。注水手段240は、水を貯留するための貯水タンク241と、貯水タンク241から熱交換井210に水を送る送水管242と、充填材層225内に設置される注水パイプ243とを備えている。
【0053】
充填材層225内には温度センサ244が埋設されており、温度センサ244による温度情報を元に図示しない制御部が送水管242の開閉バルブ245を開閉し、充填材層225に対する注水が制御される。これにより、熱交換チューブ230のほぼ全長を熱交換のために有効に使用することができる。
【0054】
第1実施形態によれば、栽培植物Pの根元付近に配置(埋設)される面状熱交換器31内にオープンループ方式もしくはクローズドループ方式の地中熱熱交換手段にて地中熱と熱交換された熱媒体が流されることにより、加温器等による室温管理に加えて地温管理が行われるため、植物栽培の育成管理費のエネルギーコストを節約することができるばかりでなく、加温器の使用負担が減らせるため、化石燃料に由来するCO2排出量をより低減することができる。
【0055】
また、地温管理の最適化により、果実や花などの育成管理方法の改善・検討が可能になる。さらには、地温管理により、土中に潜在するパナマ病などの病気の原因であるフザリウム菌などを不活性化させることが可能になる。また、地温管理により、散水方法、肥料散布方法の最適化も可能になる、等の効果が奏される。
【0056】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、
図2bに示すように、栽培される植物(例えば苗木)Pが植えられている土塊Bを1基(1単位)として地温管理を行う。この地温管理には、土塊Bを包む袋部材として例えばフレキシブルコンテナバックが用いられる。フレキシブルコンテナバッグは、略して「フレコンバッグ(もしくはコンテナバッグ)」と呼ばれるが、俗称して「トンパック」)と呼ばれることもある。
【0057】
図7a,
図7bを参照して、栽培される植物(例えば苗木)Pは、その土塊Bがフレコンバッグ51に入れられ、可搬用のパレット(架台)52上に載置されて栽培に供されることから、ここではフレコンバッグ型の可搬植物50と言う。
【0058】
可搬植物50の土塊Bの周り(フレコンバッグ51の周り)に、
図4で説明した面状熱交換器31が巻き付けられる。この例では、面状熱交換器31の周りに例えば羊毛を含む断熱材53が配置され、さらに断熱材53の周りに遮熱シート54が巻き付けられる。
【0059】
図8には、可搬植物50が例えば10基として園芸ハウス1の第2栽培エリア20内に配置された状態が示されている。この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、10基分の面状熱交換器31が流入側(往路側)ヘッダユニット41および流出側(戻り側)ヘッダユニット42に接続される。
【0060】
流入側ヘッダユニット41と流出側ヘッダユニット42は、ともに10個の接続ポートを有し、各面状熱交換器31の第1端管311は流入側ヘッダユニット41に対して並列に接続され、また、各面状熱交換器31の第2端管312も流出側ヘッダユニット42に対して並列に接続される。
【0061】
そして、各面状熱交換器31は、流入側ヘッダユニット41の往路配管41aと流出側ヘッダユニット42の復路配管42aを介して熱源側の
図5で説明したオープンループ方式の地中熱熱交換手段100もしくは
図6で説明したクローズドループ方式の地中熱熱交換手段200と接続される。
【0062】
なお、各面状熱交換器31の第1端管311側および/または第2端管312側に例えば流量調整弁を設けて、面状熱交換器31を個別的、所定個数のグループ別に地温管理することもできる。
【0063】
この第2実施形態によれば、栽培する植物を可搬植物としてフレコンバッグでの栽培を行うことにより、フォークリフト等で移動することが可能となり、日射等の条件を適宜変えることなどで現状に即した栽培が可能となる。
【0064】
また、加温器等による室温管理に合わせてグループ毎の地温管理を導入することにより、育成管理費のエネルギーコストを節約することができる。また、地温管理の最適化により、果実/花等の育成管理方法の改善・検討が可能になる。
【0065】
さらには、立体的に地温を管理することにより、埋設法(敷設法)よりも効率的な栽培が行える。また、地温管理により、土中に潜在するパナマ病などの病気の原因であるフザリウム属菌などを不活性化することが可能になる。
【0066】
また、パナマ病などが発生した場合でも、フレコンバッグ毎の管理により、病気の原源と正常な植物が隔離されているため、病気が蔓延し難い。フレコンバッグ毎のグループによる地温管理が可能となり、育成条件の最適化、エネルギーコストの低減が可能となる。また、フレコンバッグ毎の散水方法、肥料散布方法などの最適化も可能となる、等々の効果が奏される。
【0067】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。当業者であるならば上記実施形態に加えられる変更もしくは改良も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 園芸ハウス
1c 圃場
10 第1栽培エリア
20 第2栽培エリア
30 熱交換器
31 面状熱交換器
311 第1端管
312 第2端管
313 熱交換チューブ
41 流入側ヘッダユニット
42 流出側ヘッダユニット
45 ヒートポンプ
50 可搬植物
51 フレコンバッグ
52 パレット
53 断熱材
54 遮熱シート
100 オープンループ方式の地中熱熱交換手段
200 クローズドループ方式の地中熱熱交換手段