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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162283
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】塗膜形成方法及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20241114BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20241114BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241114BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241114BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D183/10
C09D7/63
C09D7/61
C09D5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077644
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平本 勇也
(72)【発明者】
【氏名】永井 彰典
(72)【発明者】
【氏名】管本 圭司
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG021
4J038DG191
4J038DL132
4J038GA15
4J038HA446
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA06
4J038MA09
4J038NA05
4J038PA19
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】
落書きを容易に、かつきれいに除去可能であるリムーバブル性を有する耐汚染塗膜の形成方法を提供すること
【解決手段】
アクリルポリオール(A)及び有機溶剤を含有する主剤成分、並びにポリイソシアネート化合物(B)及び有機溶剤を含有する硬化剤成分を含む多液型熱硬化性塗料組成物を塗装し加熱硬化する塗膜形成方法であって、形成する塗膜が40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minが2.6×10Pa以上である耐汚染性塗膜である、塗膜形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリオール(A)及び有機溶剤を含有する主剤成分、並びにポリイソシアネート化合物(B)及び有機溶剤を含有する硬化剤成分を含む多液型熱硬化性塗料組成物を塗装し加熱硬化する塗膜形成方法であって、
形成する塗膜が40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minが2.6×10Pa以上である耐汚染性塗膜である、塗膜形成方法。
【請求項2】
前記アクリルポリオール(A)がアルコキシシリル基を含有する、請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート化合物(B)がイソシアヌレート3量体を含有する、請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
前記多液型熱硬化性塗料組成物が、アミジン化合物、グアニジン化合物、ホスファゼン化合物、イミダゾール化合物、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種の触媒化合物(C)をさらに含有する、請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
前記多液型熱硬化性塗料組成物が、水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)をさらに含有する、請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
前記多液型熱硬化性塗料組成物が、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)をさらに含有する、請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の塗膜形成方法で塗装された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜形成方法及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築構造物や鉄道車両、大型車両等への人為的な落書きは、美観や景観を損なうだけでなく、治安の悪化にもつながりうるため、大きな社会問題である。しかし、被塗物上にスプレー式塗料や油性ペン等で描かれた落書きの除去作業は、時間や労力がかかる上にきれいに除去するのが難しく、既存の塗膜が侵される危険性もある。そのため、落書きを容易に、かつきれいに除去可能であるリムーバブル性を有する塗料組成物が求められている。
【0003】
特許文献1には、水酸基及びアルコキシシリル基を有する樹脂(A)、硬化剤(B)及びアクリル樹脂被覆シリカ粒子(C)分散体を含有する塗料組成物であって、該アクリル樹脂被覆シリカ粒子(C)分散体が、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(c1)と、重合性不飽和モノマー混合物(c2)との反応物である、アクリル樹脂被覆シリカ粒子(C)分散体であり、かつ該重合性不飽和モノマー混合物(c2)が、その成分の少なくとも一部として、式(I)で示されるポリシロキサン構造を有する重合性不飽和モノマー(c21)及びアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(c22)を含む、塗料組成物が開示されており、汚染除去性、耐擦り傷性及び透明性に優れた塗膜を形成できることが記載されている。しかし、汚染除去性が十分に得られない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/131444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、落書きを容易に、かつきれいに除去可能であるリムーバブル性を有する耐汚染性塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アクリルポリオール(A)及び有機溶剤を含有する主剤成分、並びにポリイソシアネート化合物(B)及び有機溶剤を含有する硬化剤成分を含む多液型熱硬化性塗料組成物を塗装し加熱硬化する塗膜形成方法であって、形成する塗膜が40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minが2.6×10Pa以上である耐汚染性塗膜である、塗膜形成方法によって、前記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の多液型熱硬化性塗料組成物、多液型熱硬化性塗料組成物を用いた塗膜形成方法及び塗装物品、並びに耐汚染性塗膜を提供するものである。
項1.アクリルポリオール(A)及び有機溶剤を含有する主剤成分、並びにポリイソシアネート化合物(B)及び有機溶剤を含有する硬化剤成分を含む多液型熱硬化性塗料組成物を塗装し加熱硬化する塗膜形成方法であって、
形成する塗膜が40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minが2.6×10Pa以上である耐汚染性塗膜である、塗膜形成方法。
項2.前記アクリルポリオール(A)がアルコキシシリル基を含有する、項1に記載の塗膜形成方法。
項3.前記ポリイソシアネート化合物(B)がイソシアヌレート3量体を含有する、項1または2に記載の塗膜形成方法。
項4.前記多液型熱硬化性塗料組成物が、アミジン化合物、グアニジン化合物、ホスファゼン化合物、イミダゾール化合物、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種の触媒化合物(C)をさらに含有する、項1~3のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
項5.前記多液型熱硬化性塗料組成物が、水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)をさらに含有する、項1~4のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
項6.前記多液型熱硬化性塗料組成物が、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)をさらに含有する、項1~5のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
項7.項1~6のいずれか1項に記載の塗膜形成方法で塗装された物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗膜形成方法によれば、落書きを容易に、かつきれいに除去可能である耐汚染塗膜を形成できる。本発明の塗膜形成方法を用いて形成された塗膜は、硬度に優れるとともに、耐汚染性や透明感のある仕上がり性、耐擦り傷性も有するため、種々の用途に幅広く適用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0010】
尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0011】
本明細書において、「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0012】
アクリルポリオール(A)
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物は、アクリルポリオール(A)を含有する。その含有量は、主剤成分に含まれる樹脂固形分質量を基準にした場合50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有させることが好適であり、多液型熱硬化性塗料組成物全体に含まれる樹脂固形分質量を基準にした場合20~80質量%、好ましくは30~75質量%、より好ましくは40~70質量%含有することが好適である。
【0013】
アクリルポリオール(A)は、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)及び共重合可能なその他の重合性不飽和モノマー(a13)を、共重合せしめることによって製造することができる。
【0014】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個以上有する化合物である。なお、本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0015】
また、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)に基づく水酸基は、得られるアクリルポリオール(A)の架橋性官能基として機能することができる。
【0016】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)としては、具体的には、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2~10の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性水酸基含有(メタ)アクリレート、4-メチロールシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。カプロラクトン変性水酸基含有(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、「プラクセルFM」(商品名、ダイセル化学社製)等が挙げられ、4-メチロールシクロヘキシルアクリレートの市販品としては、例えば、「CHDMMA」(商品名、日本化成社製)等が挙げられる。これらの水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0018】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)としては、インクや汚染物の浸透を阻止する観点から、特に炭素原子数2~20の水酸基含有炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-メチロールシクロヘキシルアクリレート等を使用することが好ましい。
【0019】
前記共重合可能なその他の重合性不飽和モノマー(a13)は、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)以外の、1分子中に1個以上の重合性不飽和基を有する化合物であり、その具体例を以下の(1)~(11)に列挙する。
(1)芳香族系重合性不飽和モノマー:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(2)分岐構造を有する炭素原子数8以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
(3)炭素原子数3~20の脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー:例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5-ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3-テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数10~20の有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数3~12の脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー。
(4)(メタ)アクリル酸の炭素数1~7の直鎖状又は分岐状アルキルエステル:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等。
(5)(メタ)アクリル酸の炭素数8~22の直鎖状アルキルエステル:例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等。
(6)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等。
(7)窒素含有重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等。
(8)その他のビニル化合物:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ジビニルエーテル、バーサティック酸ビニルエステルである「ベオバ9」、「ベオバ10」(商品名、Hexion社製)等。
(9)不飽和基含有ニトリル化合物:例えば、(メタ)アクリロニトリル等。
(10)酸性官能基含有重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有不飽和モノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロプロピルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系不飽和モノマー。
(11)ポリジメチルシロキサン構造を有する重合性不飽和モノマー:例えば、市販品として、「サイラプレーンFM-0721」、「サイラプレーンFM-0711」、「サイラプレーンFM-0725」(以上、JNC社製、商品名)、「X-22-174ASX」、「X-22-174BX」、「KF-2012」、「X-22-2426」、「X-22-2404」、「X-22-2475」(以上、信越化学工業社製、商品名)等。
(12)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー:1分子中にアルコキシシリル基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個以上有する化合物。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等を挙げることができる。これらのうち、好ましいアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
上記その他の共重合可能な重合性不飽和モノマー(a13)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、酸性官能基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを用いることが好ましい。
【0021】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)及び共重合可能なその他の重合性不飽和モノマー(a13)からなる重合性不飽和モノマー混合物を共重合することで、アクリルポリオール(A)を得ることができる。 水酸基含有重合性不飽和モノマー(a11)の使用割合は、得られる塗膜の汚染除去性、耐擦り傷性及び耐水性等の点から、アクリルポリオール(A)を構成する共重合モノマー成分の全質量に基づいて、15~55質量%、好ましくは20~50質量%であることが適当である。
【0022】
その他の重合性不飽和モノマー(a13)のうち、カルボキシル基含有不飽和モノマー、スルホン酸基含有不飽和モノマー、酸性リン酸エステル系不飽和モノマー等の酸性官能基含有重合性不飽和モノマーは、得られたアクリルポリオール(A)がポリイソシアネート化合物と架橋反応する時の内部触媒として作用することができるものであり、その使用量はアクリルポリオール(A)を構成する共重合モノマー成分の全質量に基づいて、0~5質量%程度の範囲内が好ましく、0~3質量%程度の範囲内がより好ましい。
【0023】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合、使用割合は、得られる塗膜の汚染除去性、耐擦り傷性及び透明性等の点から、アクリルポリオール(A)を構成する共重合モノマー成分の全質量に基づいて、5~60質量%、好ましくは20~50質量%であることが適当である。 上記モノマー混合物を共重合してアクリルポリオール(A)を得るための共重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の共重合方法を用いることができる。中でも、重合開始剤の存在下で有機溶剤中にて重合を行なう溶液重合法を用いるのが好ましい。
【0024】
上記溶液重合法に際して使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、高沸点芳香族系炭化水素等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネート等を挙げることができる。高沸点芳香族系炭化水素の市販品としては、例えば、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油(株)製、高沸点石油系溶剤)を挙げることができる。
【0025】
これらの有機溶剤は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。アクリルポリオール(A)が高い水酸基価を有する場合、有機溶剤としては、高沸点のエステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用することが樹脂の溶解性の点から好ましい。また、更に、高沸点の芳香族系溶剤を高沸点のエステル系溶剤、ケトン系溶剤と組合せて使用することもできる。
【0026】
アクリルポリオール(A)の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、2,2-ジ(t-アミルパーオキシ)ブタン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルパーオクトエート、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等の公知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0027】
アクリルポリオール(A)は、1種の共重合体からなっていてもよいが、2種以上の共重合体からなっていてもよい。
【0028】
アクリルポリオール(A)の水酸基価は、汚染除去性の観点から、120~200mgKOH/g、好ましくは130~200mgKOH/g、さらに好ましくは140~200mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0029】
アクリルポリオール(A)の重量平均分子量は、汚染除去性、耐擦傷性及び透明性等の観点から、5,000~30,000、特に5,000~20,000、さらに特に6,000~15,000の範囲内であることが好ましい。
【0030】
なお、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/分、検出器;RIの条件で行った。
【0031】
アクリルポリオール(A)のガラス転移温度は、汚染除去性、耐擦傷性及び平滑性等の点から、-30℃~50℃、特に-10℃~40℃の範囲内であることが好ましい。
【0032】
なお、本発明において、ガラス転移温度Tgは、下記式により算出される値である。
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)-273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度をセイコー電子工業DSC220U(示差走査型熱量計)により測定した値である。測定は試料50mgを専用のサンプル皿に所定量秤取し、130℃で3時間乾燥させた後、不活性気体中で、-50℃から10℃/分のスピードで150℃まで昇温し、得られた熱量変化カーブの変曲点の温度を読み取ることにより行った。
【0033】
ポリイソシアネート化合物(B)
本発明におけるポリイソシアネート化合物(B)は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。
【0034】
該ポリイソシアネート化合物(B)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0035】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-若しくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0037】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0038】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0039】
また、上記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0040】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0041】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物において、ポリイソシアネート化合物(B)はイソシアヌレート3量体を含有することが好ましい。ポリイソシアネート化合物(B)がイソシアヌレート3量体を含有することで、形成される塗膜の架橋密度が高くなるため、リムーバブル性が良好となる。
【0042】
ポリイソシアネート化合物(B)としては、前記ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基がブロック化されたブロック化ポリイソシアネート化合物を用いても良い。ブロック化剤としては、例えば、フェノール化合物;ラクタム化合物;アルコール化合物;オキシム化合物;メルカプタン化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等の活性メチレン化合物等を好適に使用することができる。ブロック化は、ブロック化していないポリイソシアネート化合物とブロック化剤とを混合することによって容易に行うことができる。これらのポリイソシアネート化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、ブロック化していないポリイソシアネート化合物とブロック化ポリイソシアネート化合物とを併用することもできる。
【0043】
上記ポリイソシアネート化合物(B)の塗料組成物中の含有量は、得られる塗膜の汚染除去性、耐擦傷性及び硬化性等の観点から、ポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基と、塗料組成物中の水酸基含有樹脂の水酸基との当量比(NCO/OH)が、通常0.5~2.0、特に0.6~1.2の範囲内であることが好ましい。
【0044】
また、上記ポリイソシアネート化合物(B)の塗料組成物中の含有量は、得られる塗膜の汚染除去性、耐擦傷性及び硬化性等の観点から、塗料組成物中の樹脂固形分質量を基準として、ポリイソシアネート化合物(B)の固形分含有量が、0.1~50質量%の範囲内であることが好ましく、5~45質量%の範囲内であることがより好ましく、10~40質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0045】
触媒化合物(C)
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物は、硬化性及び耐汚染性の点から、アミジン化合物、グアニジン化合物、ホスファゼン化合物、イミダゾール化合物、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種の触媒化合物(C)を含有することが好ましい。
【0046】
アミジン化合物としては、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)及びその誘導体、1,5-ジアザビシクロ[4,4,0]-デセン-5及びその誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)及びその誘導体、5-ヒドロキシプロピル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7及びその誘導体、5-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7及びその誘導体等が挙げられる。
【0047】
グアニジン化合物としては、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジメチルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)等が挙げられる。
【0048】
ホスファゼン化合物としては、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン及びその誘導体、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン及びその誘導体、1-tert-オクチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)及びその誘導体等が挙げられる。
【0049】
イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダソール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0050】
リン酸エステル化合物としては、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリプロピルリン酸、トリブチルリン酸、トリヘキシルリン酸、トリス(2-エチルヘキシル)リン酸、トリオクチルリン酸、トリノニルリン酸、トリデシルリン酸、トリラウリルリン酸、トリミリスチルリン酸、トリセチルリン酸、トリステアリルリン酸、トリオレイルリン酸、トリベヘニルリン酸、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸モノプロピル、リン酸ジプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノペンチル、リン酸ジペンチル、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノ2-エチルヘキシル、リン酸ジ2-エチルヘキシル、リン酸モノデシル、リン酸ジデシル、リン酸モノイソデシル、リン酸ジイソデシル、リン酸モノウンデシル、リン酸ジウンデシル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸モノテトラデシル、リン酸ジテトラデシル、リン酸モノヘキサデシル、リン酸ジヘキサデシル、リン酸モノオクタデシル、リン酸ジオクタデシル、リン酸モノフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノベンジル、リン酸ジベンジルなどが挙げられる。
【0051】
亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリ-o-トリル、亜リン酸ジ-o-トリル、亜リン酸トリ-m-トリル、亜リン酸ジ-m-トリル、亜リン酸トリ-p-トリル、亜リン酸ジ-p-トリル、亜リン酸ジ-o-クロロフェニル、亜リン酸トリ-p-クロロフェニル、亜リン酸ジ-p-クロロフェニルなどが挙げられる。 これらの触媒化合物(C)は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでもアミジン化合物を含有することが好ましく、特に1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)及びその誘導体を含有することが好ましい。
【0052】
触媒化合物(C)は、主剤成分に含まれる樹脂固形分質量を基準にして、0.01~10質量%、好ましくは0.1~8質量%、より好ましくは0.2~6質量%範囲内で含有させることが好適である。
【0053】
水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物は、水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)を含有することが好ましい。水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)を含有する塗料組成物から得られる塗膜は、インクをはじいて落書きが定着しにくくなる、いわゆるリペレント性が向上する。
【0054】
多液型熱硬化性塗料組成物が水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)を含む場合、主剤成分に含まれる樹脂固形分質量を基準にして、0.01~20質量%、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲内で含有させることが好適である。
【0055】
本発明における水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)の水酸基価としては、10~200mgKOH/gであることが好ましく、20~150mgKOH/gであることがより好ましい。
【0056】
本発明における水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)の数平均分子量としては、好ましくは1000~100000、より好ましくは3000~50000の範囲内であることが好適である。
【0057】
水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)の市販品としては、ポリエーテル構造をポリマー構造に含むX-22-4952、KF-6123(信越化学工業社製)等;ポリエステル構造をポリマー構造に含むBYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-SILCLEAN3720(ビックケミー・ジャパン社製)等;アクリル構造をポリマー構造に含むBYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン社製)、ZX-028-G(T&KTOKA社製)、サイマックUS-270(東亞合成社製)等が挙げられる。
【0058】
有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物は、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)を含有することが好ましい。有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)を含有することで、塗膜表層に高架橋密度の相を形成し、耐汚染性及び耐擦り傷性が向上する。
【0059】
有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)は、アルコール類、グリコール類、エーテル類などの有機溶剤中に、粒子径が約5~120nm程度のシリカ微粒子が安定に分散されたものであって、市販品としては、スノーテックスMPA-ST、スノーテックスIPA-ST、スノーテックスIPA-ST-UP、スノーテックスIPA-ST-ZL、スノーテックスEG-ST、スノーテックスNPC-ST-30、スノーテックスDMAC-ST、スノーテックスMEK-ST、スノーテックスMEK-ST-UP、スノーテックスMEK-ST-L、スノーテックスMIBK-ST、スノーテックスXBA-ST、スノーテックスPMA-ST、スノーテックスPGM-ST(以上、日産化学工業社製)、NANOBYK-3650、NANOBYK-3651、NANOBYK-3652(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、オスカル(OSCAL)シリーズ(日揮触媒化成社製)、等を挙げることができる。
【0060】
塗料中での安定性のために、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)はシリカ表面が樹脂により変性されていることが好ましい。このような変性方法としては、上記コロイダルシリカに3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどを反応させる方法等が挙げられる。中でも、国際公開第2021/131444号に記載されているようなポリシロキサン構造を有するアクリル樹脂で被覆されたコロイダルシリカが特に好ましい。
【0061】
上記コロイダルシリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)の平均一次粒子径は、5~100nmが好ましく、5~50nmがより好ましい。平均一次粒子径が5nm未満であると、本分散体を他の有機材料と混合して使用した場合に、機械特性等の改良効果が小さくなる場合がある。平均一次粒子径が100nmを超えると、透明性が損なわれる場合がある。
【0063】
本明細書において、「平均一次粒子径」は、体積基準粒度分布のメジアン径(d50)を意味し、体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱法によって測定される。本発明において、本分散体の体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックNT3300」(商品名、日機装社製)を使用して測定した。その際、サンプル濃度は装置に設定された所定の透過率の範囲となるように調整した。
【0064】
多液型熱硬化性塗料組成物が有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)を含有する場合、主剤成分に含まれる樹脂固形分質量を基準にして、0.1~50質量%、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは1~30質量%の範囲内で含有させることが好適である。
【0065】
多液型熱硬化性塗料組成物
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物は、主剤成分と硬化剤成分を含有する。主剤成分は前述のアクリルポリオール(A)及び有機溶剤を含有し、硬化剤成分は前述のポリイソシアネート化合物(B)及び有機溶剤を含有する。
【0066】
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、主剤成分と硬化剤成分とで同一の有機溶剤を用いてもよく、異なる有機溶剤を用いてもよい。
【0067】
上記有機溶剤は、粘度の調整、塗布性の調整等の目的に応じて適宜組合せて使用することができる。
【0068】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物が前述の触媒化合物(C)を含有する場合、主剤成分、硬化剤成分のどちらに含まれていてもよく、両方に含まれていてもよく、主剤成分や硬化剤成分とは異なる第3成分に含まれていてもよいが、貯蔵安定性及び作業性の観点から主剤成分や硬化剤成分とは異なる第3成分に含まれることが好適である。
【0069】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物が前述の水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)を含有する場合、貯蔵安定性の観点から主剤成分又は主剤成分や硬化剤成分とは異なる第3成分に含まれることが好ましく、作業性の観点から主剤成分に含まれることが特に好適である。
【0070】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物が前述の有機溶剤分散型コロイダルシリカ(E)を含有する場合、貯蔵安定性の観点から主剤成分又は主剤成分や硬化剤成分とは異なる第3成分に含まれることが好ましく、作業性の観点から主剤成分に含まれることが特に好適である。
【0071】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物は、さらに、アクリルポリオール以外の樹脂、顔料、紫外線吸収剤(例えばベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等)、光安定剤(例えば、ヒンダードピペリジン類等)、脱水剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤等を、それぞれ単独でもしくは2種以上組合せて含有させることができる。
【0072】
アクリルポリオール(A)以外の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(水酸基を含むものを除く)、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、酢酸ビニル・ベオバ樹脂等が挙げられる。
【0073】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の配合量は、本塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、0.1~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2~5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3~2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0074】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物が光安定剤を含有する場合、光安定剤の配合量は、本塗料組成物中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、0.1~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2~5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3~2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0075】
前記脱水剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ジルコニウムノルマルブチレート、エチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン等の金属アルコキシド類;オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリイソプルピル、ジメトキシプロパンなどの有機アルコキシ化合物類;「アディティブTI」(住化バイエルウレタン社製、商品名)等の単官能イソシアネート類;等を挙げることができ、これらは単独で又は2種もしくはそれ以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物が脱水剤を含有する場合、脱水剤の配合量は、本塗料中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、0.01~15質量部の範囲内であることが好ましく、0.1~8質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0077】
本発明の塗膜形成方法で用いる多液型熱硬化性塗料組成物の固形分は特に限定されるものではない。例えば、硬化塗膜の平滑性及び乾燥時間の短縮化の点で、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が15~60秒の範囲となるように、上述の有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0078】
本明細書において固形分とは、揮発成分を除いた残存物を意味するものであり、残存物は常温で固形状であっても液状であっても差し支えない。固形分質量は、乾燥させた時の残存物質量の乾燥前質量に対する割合を固形分率とし、固形分率を乾燥前の試料質量に乗じることで算出することができる。
【0079】
耐汚染塗膜の形成方法
本発明の塗膜形成方法で得られる耐汚染性塗膜は、前述の多液型熱硬化性塗料組成物を塗装して形成した塗膜の40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minが2.6×10Pa以上である。貯蔵弾性率の最小値E’minが2.6×10Pa以上であると、架橋密度が高い塗膜であるため、落書きに用いられるインキ等が染み込みにくく、高いリムーバブル性を有する。中でも、3.6×10Pa以上であることが好ましく、4.6×10Pa以上であることが特に好ましい。また、塗膜のワレ性の観点から、該塗料組成物を塗装し80℃で30分加熱硬化し1時間静置して形成した塗膜の40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minが1.0×10Pa以下であることが好ましい。
【0080】
本明細書において、貯蔵弾性率の測定に用いる塗膜の作製方法は以下である。
1.塗料組成物をポリプロピレン板上に硬化膜厚が40μmになるように塗布し、80℃で30分乾燥を行い、1時間静置することにより硬化塗膜を形成する。
2.該硬化塗膜を長さ20mm、幅5mmの短冊状に裁断し、ポリプロピレン板から剥離し得られた短冊状のフリー塗膜を試料とする。
【0081】
本明細書において、貯蔵弾性率は、FTレオロジースペクトラー「Rheogel E-400」(UBM株式会社製)を用いて測定した。上記の条件で作成したフリー塗膜について、周波数11ヘルツ、昇温速度4℃/分、温度範囲室温~200℃の条件下で動的粘弾性測定を行うことで、40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minが得られる。
【0082】
本塗膜形成方法を適用される被塗物としては、特に限定されるものではない。例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等を挙げることができる。またこれらにより形成された自動車、トラック、オートバイ、バス、鉄道車両、二輪車、産業機械、建設機械、船体、建材、住宅設備機器等及びそれらの部品を挙げることができ、中でも鉄道車両、建材、住宅設備機器に対して特に好適に用いることができる。また、被塗物としては、上記金属基材や車体の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物としては、上記金属基材や車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、該下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成されたものであってもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜が形成されたものであってもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤコート塗膜が形成されたものであってもよい。
【0083】
塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法が挙げられ、これらの方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法では、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうちでは、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装又は回転霧化塗装が特に好ましい。
【0084】
塗布量は、通常、硬化膜厚として、10~100μm程度となる量とするのが好ましい。
【0085】
被塗物に塗料を塗装してなるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行う。加熱硬化は公知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、特に制限されるものではないが、生産効率や省エネルギーの観点から、50℃以上120℃以下で加熱することが好ましく、50℃以上100℃以下で加熱することがより好ましく、50℃以上80℃以下で加熱することが特に好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、生産効率や省エネルギーの観点から、10~60分間、好ましくは15~30分間の範囲内であるのが好適である。また、加熱硬化後の塗膜は、必要に応じて、追加で常温硬化又は加熱硬化(アフターキュア)を行ってもよい。アフターキュアを行う場合は、常温で1日以上、或いは30~50℃で30分以上乾燥させることが好ましいが、生産効率や省エネルギーの観点から、アフターキュアを行わないことが好ましい。
【0086】
本塗膜形成方法は、上塗りトップクリヤ膜を形成する際に好適に用いることができる。
【実施例0087】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【0088】
製造例1(アルコキシシリル基含有アクリルポリオールの製造)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油(株)製、芳香族系有機溶剤)30部及びn-ブタノール10部を仕込んだ。反応容器に窒素ガスを吹き込みながら125℃で仕込み液を攪拌し、この中にγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート35部、スチレン20部、イソブチルメタクリレート15部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(重合開始剤)3部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下した。次いで、125℃で30分間熟成させた後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.5部及び「スワゾール1000」5.0部からなる溶液を1時間かけて均一速度で滴下した。その後、125℃で1時間熟成させた後冷却し、さらに酢酸イソブチルを加えて希釈し、固形分濃度60質量%のアルコキシシリル基含有アクリルポリオール(A-1)溶液を得た。得られたアルコキシシリル基含有アクリルポリオール(A-1)のアルコキシシリル基含有量は1.2mmol/g、水酸基価は151mgKOH/g、重量平均分子量は7,000、ガラス転移温度16.6℃であった。
【0089】
製造例2(アルコキシシリル基未含有アクリルポリオールの製造)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油(株)製、芳香族系有機溶剤)30部及びn-ブタノール10部を仕込んだ。反応容器に窒素ガスを吹き込みながら125℃で仕込み液を攪拌し、この中に2-ヒドロキシプロピルアクリレート35部、スチレン20部、イソブチルメタクリレート45部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(重合開始剤)3部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下した。その後、125℃で30分間熟成させた後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.5部及び「スワゾール1000」5.0部からなる溶液を1時間かけて均一速度で滴下した。次いで、125℃で1時間熟成させた後冷却し、さらに酢酸イソブチルを加えて希釈し、固形分濃度60質量%のアクリルポリオール(A-2)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(A-2)の水酸基価は151mgKOH/g、重量平均分子量は7,000、ガラス転移温度36.4℃であった。
【0090】
製造例3(アクリル樹脂被覆コロイダルシリカの製造)
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、「PGM-ST」(商品名、日産化学工業社製、シリカ平均一次粒子径;15nm、シリカ濃度;30質量%、分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル)333部(固形分100部)及び脱イオン水10部を入れた後、「KBM-503」(商品名、信越化学工業社製、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)10部を添加し、80℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行い、その後、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテル30部を添加し、次いで減圧状態で揮発成分を留出させて、表面が修飾されたシリカ粒子の固形分40%の重合性不飽和基含有コロイダルシリカ分散液を得た。
【0091】
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を取り付けたセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル104.5部及びオルト酢酸トリメチル8.5部を仕込み、窒素ガス通気下で100℃まで昇温した。100℃に達した後、上記重合性不飽和基含有コロイダルシリカ分散液 375部(固形分150部)と「X-22-174ASX」(商品名、信越シリコーン社製)1部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート35部、スチレン20部、イソブチルメタクリレート14部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(重合開始剤)3部及びオルト酢酸トリメチル23.5部からなるモノマー混合物を、2時間かけて滴下した。次いで、100℃で1時間熟成させた後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(重合開始剤)1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル19.5部の混合溶液を投入し、更に2時間熟成させた。不揮発分から求めた重合率は99%であった。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、減圧状態で共沸留出することにより溶剤を置換し、実測された不揮発分が40%であるアクリル樹脂被覆コロイダルシリカ分散体(E-1)を得た。
【0092】
製造例4
製造例1で得たアルコキシシリル基含有アクリルポリオール(A-1)100部(固形分60部)、「BYK-SILCLEAN3700」(商品名、ビックケミー・ジャパン社製、水酸基含有樹脂で変性されたシリコーン(D)、有効成分25%)4.0部(固形分1.0部)、製造例3で得たアクリル樹脂被覆コロイダルシリカ分散体(E-1)25部(固形分10部)、オルト酢酸トリメチル(脱水剤)5.0部、酢酸ブチル32部(有機溶剤)を配合し、均一になるまで攪拌して主剤を作製した。
別の容器に、「スミジュール N3300」(商品名、住化コベストロウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、固形分含有率100%)35.5部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート17.5部を配合し、均一になるまで混合して硬化剤を作製した。
主剤166部、硬化剤53部、「U-CAT SA102」(商品名、サンアプロ社製、硬化触媒、DBU-オクチル酸塩、有効成分100%)1.5部を混合し、塗料固形分が40%となるように酢酸ブチルを加えて攪拌して、塗料組成物(X-1)を得た。
【0093】
製造例5~14
表1に示す配合とする以外は製造例4と同様にして、塗料組成物(X-2)~(X-11)を得た。
































【0094】
【表1】
【0095】
なお、表中の(注)については以下の通りである。
「NANOBYK-3652」:商品名、ビックケミー・ジャパン社製、有機溶剤分散型コロイダルシリカ、固形分含有率31%、シリカ含有率25%
「NACURE 4167」:商品名、KING INDUSTRIES社製、アルキルリン酸のトリエチルアミン塩、硬化触媒、有効成分25%、
「CAT-AC」:商品名、信越シリコーン社製、アルミキレート、硬化触媒、有効成分50%。
【0096】
実施例1
前述の塗料組成物(X-1)の粘度を、酢酸ブチルを添加してフォードカップNo.4を用いて20℃で25秒の粘度に調整した。
リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、「エレクロンGT-10」(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱し硬化させ、その上に水性ベースコート「WBC713T」(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系自動車上塗りベースコート塗料、白塗色)を乾燥膜厚15μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で10分間プレヒートを行った後、140℃で30分間加熱硬化させた。その後、該硬化したベースコート塗膜上に上記実施例及び比較例にて製造・粘度調整した各塗料組成物を膜厚35μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、80℃で30分間加熱し硬化させることにより塗膜(Y-1)を得た。
【0097】
実施例2~15、比較例1~5
表2及び表3に示す塗料及び乾燥条件とする以外は実施例1と同様にして、塗膜(Y-2)~(Y-20)を得た。

























【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
貯蔵弾性率の測定
表2及び3に記載の塗料組成物をポリプロピレン板上に硬化膜厚が40μmになるように塗布し、表2及び3に記載の乾燥条件で乾燥させることにより各硬化塗膜を形成した。該硬化塗膜を長さ20mm、幅5mmの短冊状に裁断し、ポリプロピレン板から剥離し得られた短冊状のフリー塗膜を試料とした。
【0101】
貯蔵弾性率は、FTレオロジースペクトラー「Rheogel E-400」(UBM株式会社製)を用いて測定した。上記の条件で作製したフリー塗膜について、周波数11ヘルツ、昇温速度4℃/分、温度範囲室温~200℃の条件下で動的粘弾性測定を行うことで、40~200℃の範囲における貯蔵弾性率の最小値E’minを得た。
【0102】
評価試験
作製した塗膜(Y-1)~(Y-20)について、以下の評価試験を行った。結果を表2及び3に記載する。
【0103】
リムーバブル性(マーカー)
各試験板に、油性マーカーで10mm×10mmの正方形を描き汚染した。汚染時の油性マーカーには、「edding 850 permanent marker-red」(商品名、edding社製、赤色マーカー)、「edding 750 paint marker-black」(商品名、edding社製、黒色マーカー)、「Camlin Kokuyo Permanent Marker blue」(商品名、Camlin社製、青色マーカー)、「Camlin Kokuyo Permanent Marker red」(商品名、Camlin社製、赤色マーカー)、「マジックインキ極太 赤」(商品名、寺西化学工業社製、赤色マーカー)、「マジックインキ極太 黒」(商品名、寺西化学工業社製、黒色マーカー)の6種類を用いた。各マーカーで汚染後、5分間静置してから、「強力らくがき落とし スプレー」(商品名、アサヒペン社製、落書き除去剤)をむらのないようにふきつけ、乾いたキムワイプ(商品名)を用いて、汚染部分をふき取った。この作業を1サイクルとし、1サイクル目で汚染した部分と同じ箇所に対して同様の作業をあと2サイクル行った。
3サイクル終了後、マーカーによる汚染後の静置時間を24時間にして、同様の作業を1サイクル行った。
上記汚染/除去作業(5分静置のサイクルを3回、24時間静置のサイクルを1回)行った後、汚染/除去を行った部分を観察し、以下の基準で評価した。A及びBが合格レベルである。
A:色残りがない、
B:わずかに色残りが認められる、
C:顕著な色残りが認められる、又は塗膜が落書き除去剤によって溶解する。
【0104】
リムーバブル性(マーカー以外)
JIS Z8910に規定する、関東ローム焼成品(JIS試験用粉体1 7種)とギヤーオイルを重量比1:1で混合し、模擬汚染液を得た。
赤缶カレー粉(エスビー食品社製)と日清キャノーラ油(日清オイリオグループ社製、食用なたね油)を重量比1:1で混合し、カレー汚染液を得た。
ネスカフェゴールドブレンド(ネスレ日本社製、レギュラーソリュブルコーヒー粉)と水を重量比1:5で混合し、コーヒー汚染液を得た。
【0105】
30mm角に切断したコットンを3枚試験板上に載せ、各汚染液をそれぞれのコットン上に5mlずつ垂らし、コットンと試験板の塗膜面を十分に接触させた。その後、汚染液が揮発しないよう、接触面全体を直径60mmのポリプロピレン製の蓋で覆い、マスキングテープで固定した。50℃で24時間静置後、コットンを外して、試験面を上水と新品のコットンでよく洗浄した。洗浄後の塗面外観から、汚染液に対する耐汚染性を3段階で評価した。A及びBが合格レベルである。
A:色残りがない、
B:わずかに色残りが認められる、
C:顕著な色残りが認められる。
【0106】
(参考試験)リペレント性
各試験板に、「edding 850 permanent marker-red」(商品名、edding社製、赤色マーカー)で10mm×10mmの正方形を描き汚染し、インクのはじき具合を評価した。A及びBが合格レベルである。
A:塗面がインクをはじいており、塗面が50%以上見える、
B:塗面がインクをわずかにはじいており、塗面が10~50%見える、
C:インクをはじかず、塗面がほぼ見えない。