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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162285
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】刺繍配線構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/06 20060101AFI20241114BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
H01B7/06
A61B5/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077647
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】522157996
【氏名又は名称】有限会社 川島エンブ
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】川島 英治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 欽一
(72)【発明者】
【氏名】黒▲崎▼ 紘史
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
【テーマコード(参考)】
4C127
5G311
【Fターム(参考)】
4C127AA01
4C127LL13
4C127LL18
5G311BA02
5G311BB06
5G311BC01
5G311BC02
(57)【要約】
【課題】従来の刺繍技術を用いた配線構造では、コネクタ等の外部の電子機器との接続作業性が悪いという課題がある。
【解決手段】
本発明の刺繍配線構造10では、刺繍技術を用いて配線部12が、絶縁性基布11に形成されると共に、電極端子部13が、配線部12の先端に導電糸により形成される。そして、少なくとも電極端子部13の一部が、絶縁性基布11の端部11Aから外部へと導出して形成される。この構造により、刺繍配線構造10では、電極端子部13での接続抵抗値が低減されると共に、電極端子部13を介して外部の電子機器との接続性が向上される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基布に縫製した導電糸により形成される配線部と、
前記配線部と電気的に接続し、縫製した前記導電糸により形成される電極端子部と、を備え、
前記電極端子部の先端側は、少なくとも前記絶縁性基布の端部から外側へと延在することを特徴とする刺繍配線構造。
【請求項2】
前記配線部の先端側には、前記配線部と連続する導電連結部が形成され、
前記電極端子部は、前記導電連結部をその内部に包含して形成されることを特徴とする請求項1に記載の刺繍配線構造。
【請求項3】
前記導電連結部は、前記配線部の導電部と連続し、縫製した前記導電糸が前記絶縁性基布の端部から外側へと延在した刺繍体または前記配線部の導電部と連続し、前記絶縁性基布に縫製された前記刺繍体であることを特徴とする請求項2に記載の刺繍配線構造。
【請求項4】
前記電極端子部の端子幅は、前記導電連結部との重畳領域よりも先端側に位置する前記導電連結部との非重畳領域の方が狭くなることを特徴とする請求項3に記載の刺繍配線構造。
【請求項5】
前記電極端子部の外周端部には、縫製した前記導電糸により形成される壁部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の刺繍配線構造。
【請求項6】
作業台に絶縁性基布を固定すると共に、前記絶縁性基布と少なくとも一部が積層するように刺繍用基材を前記作業台に固定し、前記刺繍用基材を前記絶縁性基布の端部よりも外側まで配設する工程と、
前記絶縁性基布に対して導電糸を縫製し、配線部の導電部を前記絶縁性基布の前記端部あるいは前記端部近傍まで形成する工程と、
前記刺繍用基材に対して前記導電糸を縫製し、前記導電部と電気的に接続する電極端子部を形成する工程と、
前記絶縁性基布から前記刺繍用基材を除去する工程と、を有することを特徴とする刺繍配線構造の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁性基布の前記端部を跨ぐように前記導電糸を縫製し、前記配線部の前記導電部と重畳すると共に、前記刺繍用基材まで延在する導電連結部を形成する工程と、を有し、
前記電極端子部を形成する工程では、前記導電連結部を内部に包含するように前記導電糸を縫製することを特徴とする請求項6に記載の刺繍配線構造の製造方法。
【請求項8】
作業台に絶縁性基布を固定する工程と、
前記絶縁性基布に対して導電糸を縫製し、配線部の導電部を形成する工程と、
前記絶縁性基布を前記作業台から取り外し、前記導電部の先端側の一部が絶縁性基布の裁断ラインよりも突出するように前記絶縁性基布を裁断する工程と、
前記作業台に対して刺繍用基材を固定した後、前記導電部の前記露出領域が前記刺繍用基材の上面に位置するように、前記作業台に対して裁断後の前記絶縁性基布を固定する工程と、
前記絶縁性基布及び前記刺繍用基材に対して前記導電糸を縫製し、前記露出領域の前記導電部を内部に包含するように電極端子部を形成する工程と、
前記絶縁性基布から前記刺繍用基材を除去する工程と、を有することを特徴とする刺繍配線構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍配線構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、刺繍技術を用いて、伸縮性及び絶縁性を有する下地材に対して導電糸を縫製した配線構造や電極構造が開示されている。配線構造は、刺繍用ミシンを用いて、導電糸を平面視にて波状となるように、下地材に縫製して形成される。そして、配線構造は、上記波状となることで、下地材の伸縮方向に引き延ばされた後に元の長さまで収縮する。このとき、配線構造は、曲線形状となることで応力の集中が抑制され、破断し難く、信頼性に優れた構造となる。尚、電極構造も、配線構造と同様に、平面視にて波状となるように形成される。
【0003】
下地材の表面には、伸縮性及び絶縁性を有するカバーが配設される。カバーが、上記配線構造や電極構造を覆うように配設されることで、上記配線構造や電極構造は、絶縁処理される。そして、配線構造の端部は、コネクタに接続される。コネクタは、配線構造を伝送する信号を取り出すためのケーブル等を接続する接続端子である。
【0004】
特許文献2には、刺繍技術を用いた静電容量式のタッチセンサが開示されている。センサシートは、絶縁性基材と、絶縁層と、絶縁性連結基材と、静電シールド層と、が積層して形成される。そして、例えば、絶縁性基材は、不織布であり、絶縁性基材に形成される各電極や連結部は、不織布に対して導電性繊維を刺繍して形成される。
【0005】
また、絶縁性基材には、例えば、刺繍により各電極と接続する引出配線が形成される。引出配線は、絶縁性基材の端部まで引き出され、コネクタに接続される。コネクタは、接触位置検知システムと電気的に接続する。そして、上記構造から成る静電容量式タッチセンサは、折り曲げ、あるいは、折り畳むことが可能であり、ウェアラブル端末として使用可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-94280号公報
【特許文献2】特許第6671910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、複数のコネクタが、下地材の中央部に形成され、コネクタは、接続端子として用いられる。そして、配線構造は、その一部がコネクタと重なるように下地材に形成される。
【0008】
しかしながら、特許文献1には、コネクタは、外部ケーブル等に対して具体的にどのようにして接続するかに関して全く開示が成されてなく、接続部の信頼性や低抵抗化への対応が不明である。そして、上記配線構造や電極構造が、ウェアラブル端末として用いられる場合には、コネクタが、例えば、シャツ等の被服の中央部に形成されることで、外部ケーブル等との接続領域が制限され、使い勝手が悪いという課題がある。
【0009】
また、上記特許文献2では、引出配線が、絶縁性基材の端部まで形成され、上記端部にてコネクタに接続される。そして、引用文献2においても、引出配線が、具体的にどのようにしてコネクタに接続するかに関して全く開示されてなく、引出配線の接続部の信頼性や低抵抗化への対応が不明である。
【0010】
更には、複数の引出配線が上記端部まで引き出され、個々の引出配線に対して異なる信号処理等を行う場合には、コネクタの各ソケットに対して引出配線の先端部をそれぞれ接続する必要がある。この場合、上記特許文献1及び特許文献2のように、配線が生地に対して一体に縫製される構造では、コネクタの各ソケットに対して配線の先端部を接続させることが難しく、その作業性が悪いという課題がある。一方、引出配線とコネクタとが一体構造となる場合には、コネクタが、常時、絶縁性基材に配設されることで、絶縁性基材を洗濯して、清潔な状態にて繰り返し使用し難くなるという課題がある。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも電極端子部の一部を絶縁性基布から導出して形成し、電極端子部とコネクタとの脱着作業を容易とし、電極端子部とコネクタとの接続信頼性を向上させる刺繍配線構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態である刺繍配線構造では、絶縁性基布に縫製した導電糸により形成される配線部と、前記配線部と電気的に接続し、縫製した前記導電糸により形成される電極端子部と、を備え、前記電極端子部の先端側は、少なくとも前記絶縁性基布の端部から外側へと延在することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施形態である刺繍配線構造の製造方法では、作業台に絶縁性基布を固定すると共に、前記絶縁性基布と少なくとも一部が積層するように刺繍用基材を前記作業台に固定し、前記刺繍用基材を前記絶縁性基布の端部よりも外側まで配設する工程と、前記絶縁性基布に対して導電糸を縫製し、配線部の導電部を前記絶縁性基布の前記端部あるいは前記端部近傍まで形成する工程と、前記刺繍用基材に対して前記導電糸を縫製し、前記導電部と電気的に接続する電極端子部を形成する工程と、前記絶縁性基布から前記刺繍用基材を除去する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一実施形態である刺繍配線構造の製造方法では、作業台に絶縁性基布を固定する工程と、前記絶縁性基布に対して導電糸を縫製し、配線部の導電部を形成する工程と、前記絶縁性基布を前記作業台から取り外し、前記導電部の先端側の一部が絶縁性基布の裁断ラインよりも突出するように前記絶縁性基布を裁断する工程と、前記作業台に対して刺繍用基材を固定した後、前記導電部の前記露出領域が前記刺繍用基材の上面に位置するように、前記作業台に対して裁断後の前記絶縁性基布を固定する工程と、前記絶縁性基布及び前記刺繍用基材に対して前記導電糸を縫製し、前記露出領域の前記導電部を内部に包含するように電極端子部を形成する工程と、前記絶縁性基布から前記刺繍用基材を除去する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態である刺繍配線構造では、電極端子部が、配線部の先端に導電糸により形成されると共に、絶縁性基布から導出して形成される。この構造により、刺繍配線構造では、電極端子部での接続抵抗値が低減されると共に、電極端子部を介して電子機器との接続性が向上される。
【0016】
また、本発明の一実施形態である刺繍配線構造の製造方法では、絶縁性基布と刺繍用基材を積層して作業台に固定した後、上記絶縁性基布等に対して配線部及び電極端子部を形成する。この製造方法により、作業者は、作業台に対して絶縁性基布を何回も固定し、あるいは取り外す作業が不要となり、生産性が向上される。
【0017】
また、本発明の一実施形態である刺繍配線構造の製造方法では、絶縁性基布に導電糸を縫製して導電連結部を形成する。そして、その導電連結部を包含するように導電糸を縫製して電極端子部を形成する。この製造方法により、刺繍配線構造の配線部と電極端子部とが、導電連結部を介して強固に連結することで、断線等が発生し難い高品質の刺繍配線構造が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である刺繍配線構造を説明する上面図である。
図2】本発明の一実施形態である刺繍配線構造を説明する上面図である。
図3】本発明の一実施形態である刺繍配線構造を説明する断面図である。
図4】本発明の一実施形態である刺繍配線構造を説明する断面図である。
図5】本発明の一実施形態である刺繍配線構造を説明する断面図である。
図6】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図7】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図8】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図9】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図10】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図11】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図12】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図13】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図14】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造の製造方法を説明する上面図である。
図15】本発明の他の実施形態である刺繍配線構造を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る刺繍配線構造10に関して図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は、本実施形態の刺繍配線構造10を説明する上面図であり、実際に製作された刺繍配線構造10を示す。図2は、本実施形態の刺繍配線構造10を説明する上面図であり、図1に示す丸印15の領域を拡大した状態を示す。図3は、本実施形態の刺繍配線構造10を説明する断面図であり、図2に示すA-A線方向の断面を示す。図4は、本実施形態の刺繍配線構造10を説明する断面図であり、図2に示すB-B線方向の断面を示す。図5は、本実施形態の刺繍配線構造10を説明する断面図であり、図2に示すC-C線方向の断面を示す。
【0021】
図1に示すように、刺繍配線構造10は、機械ミシン(図示せず)を用いて、絶縁性基布11等に導電糸や非導電糸を縫製して形成される。刺繍配線構造10は、主に、絶縁性基布11に形成される配線部12と、配線部12の先端側に形成される電極端子部13と、少なくとも電極端子部13の内部に包含して形成される導電連結部14と、を備える。そして、刺繍配線構造10は、例えば、着用者等の被服等の絶縁性基布11に対して刺繍技術により形成され、着用者の健康状態を判定する判定装置やウェアラブル端末等の配線構造として用いられる。
【0022】
刺繍配線構造10は、例えば、コネクタ(図示せず)を介して上記判定装置等に対して電気的に接続される。具体的には、刺繍配線構造10の電極端子部13が、コネクタのソケットに対して装着されることで、刺繍配線構造10と上記判定装置等とは電気的に接続される。一方、上記判定装置等の不使用時には、コネクタは、刺繍配線構造10の電極端子部13から離脱可能となる。その結果、刺繍配線構造10が形成された被服等の絶縁性基布11は、洗濯機を使用した洗濯や乾燥機を使用した乾燥に対応可能となる。そして、刺繍配線構造10は、導電糸から形成され、乾燥後には、洗濯前と同等の電気特性等の品質を維持することで、絶縁性基布11は、洗濯により清潔な状態を維持し、繰り返しの使用が可能となる。尚、コネクタとは、刺繍配線構造10を伝送する信号を上記判定装置等へ送信し、あるいは、上記判定装置等から刺繍配線構造10へと制御信号や電力を送信するための中継部材である。
【0023】
絶縁性基布11は、主に、配線部12を支持する基材として用いられる。絶縁性基布11としては、例えば、ポリエステル撚糸で織った布帛、フェルト地、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維で織った布地、綿繊維等の天然繊維で織った布地、キュプラ、レーヨン等の再生繊維で織った布地、可撓性を有するポリエステルフィルム(PETフィルム)などのプラスチックフィルム等が用いられる。尚、刺繍配線構造10が、シャツ、ブラウス、医療用検査着等の被服に形成される場合には、上記被服の生地が、絶縁性基布11として用いられる。また、刺繍配線構造10が、車両用シート等に形成される場合には、上記シートの皮革が、絶縁性基布11として用いられる。
【0024】
配線部12は、例えば、刺繍技術を用いて、絶縁性基布11に導電糸や非導電糸を縫製して形成される。詳細は後述するが、配線部12は、導電部12A(図3参照)と、絶縁部12B(図3参照)とを有し、所望の配線幅W1を有し、線状に形成される。そして、配線部12は、使用用途等に応じて絶縁性基布11に対して任意の配線パターンにて形成される。図示したように、本実施形態では、絶縁部12Bが、その内部に導電部12Aを包含するように形成されることで、配線部12は絶縁処理される。
【0025】
電極端子部13は、例えば、刺繍技術を用いて絶縁性基布11や刺繍用基材21(図6参照)に導電糸を縫製して形成される。そして、電極端子部13は、配線部12の先端側に形成される。詳細は後述するが、電極端子部13は、密集状態に縫製された導電糸により形成されることで、コネクタ等との接続抵抗の増大を防止すると共に、導電糸が解れ難くなることで、接続信頼性が向上される。
【0026】
図示したように、少なくとも電極端子部13の先端側の一部は、絶縁性基布11の端部11Aよりも外側へと延在して形成される。この構造により、コネクタは、絶縁性基布11から突出する電極端子部13に対して装着されることで、電極端子部13のコネクタへの脱着時の作業性が向上される。尚、詳細は後述するが、電極端子部13を形成する際に用いられる刺繍用基材21は、電極端子部13を形成した後に除去される。
【0027】
導電連結部14は、縫製された導電糸により形成され、電極端子部13の内部に包含して形成される。また、導電連結部14は、電極端子部13と配線部12の境界を跨ぐように、配線部12の導電部12Aと連続して形成されると共に、配線部12より先端側では導電糸単独の刺繍体として形成される。この構造により、導電連結部14は、電極端子部13と配線部12との連結領域の強度を補強する部材として機能すると共に、この連結領域での低抵抗化が実現される。尚、本実施形態の導電連結部14は、本願発明の刺繍体に対応する。
【0028】
ここで、導電糸としては、導電性を有する糸であれば制限するものではない。例えば、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン等の金属からなる繊維、又は、金属を2種以上含む合金(ステンレス鋼、炭素鋼、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル等)からなる金属繊維、炭素繊維、黒鉛化炭素繊維、イオン導電性高分子等の繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の非導電性繊維の表面に、銅、銀、ニッケル等の金属をメッキ又は蒸着等によって被覆した各種繊維、炭素材料で被覆された金属繊維の他、金属微粒子、カーボンナノチューブ、ナノカーボン等を含有する各種繊維又はそれらを含む導電性材料で被覆された繊維等が挙げられる。これらを複合した繊維、鞘芯構造の繊維などでも差し支えない。また、非導電糸としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維の撚糸、綿繊維等の天然繊維の撚糸やキュプラ、レーヨン等の再生繊維の撚糸が用いられる。
【0029】
図2に示すように、配線部12は、絶縁性基布11に対してその端部11Aまで連続して形成され、導電部12A(図3参照)は、絶縁部12Bにより被覆される。そして、導電連結部14の紙面左側の半分程度は、配線部12の導電部12Aと連続して形成され、絶縁部12Bにて被覆される。一方、導電連結部14の紙面右側の半分程度は、電極端子部13の内部に形成される。
【0030】
電極端子部13は、導電連結部14と連結して一体に形成される。そして、本実施形態では、導電連結部14の紙面前後方向の両側では、電極端子部13は、絶縁性基布11の端部11Aから1~2mm程度離間して形成される。つまり、本実施形態の刺繍配線構造10では、配線部12と電極端子部13とは、導電連結部14を介して連結し、電気的に接続状態となる。尚、導電連結部14が、絶縁性基布11の端部11A近傍の配線部12と連結して形成される場合でも良い。
【0031】
また、図示したように、電極端子部13では、導電連結部14との重畳領域の端子幅W2は、導電連結部14との非重畳領域の端子幅W3よりも幅広く形成される。言い換えると、電極端子部13の先端側では、その端子幅W3が狭めて形成されることで、コネクタの接続作業性が向上される。詳細は後述するが、電極端子部13の端子幅W3の領域では、略全体構造が、壁部16により構成されることで、接続端子としての強度が実現され、コネクタ等との接続信頼性が向上される。
【0032】
図3に示すように、配線部12の形成領域では、絶縁性基布11の表裏面側のそれぞれに、導電部12A、導電連結部14、絶縁部12Bの順序にて積層して形成される。上述したように、導電部12A及び導電連結部14が、絶縁性基布11と絶縁部12Bとの間に形成され、電流経路として用いられる。
【0033】
導電部12Aが、絶縁性基布11の表裏面に対して、例えば、上糸及び下糸が導電糸にてランニングステッチにより形成される。上述したように、導電部12Aは、絶縁性基布11に対して所望の配線パターンにて連続して形成される。
【0034】
このとき、上糸の導電糸が、絶縁性基布11及び刺繍用基材21(図6参照)を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、ランニングステッチが、配線部12の延在方向に繰り返される。その結果、導電部12Aは、絶縁性基布11の表裏面に所望の厚みT1にて形成されると共に、絶縁性基布11の内部には、上糸の導電糸が縫製される。
【0035】
導電連結部14が、導電部12Aに積層するように、絶縁性基布11に対して、例えば、上糸及び下糸が導電糸にてランニングステッチにより形成される。図2を用いて上述したように、導電連結部14の延在方向の約半分程度が、導電部12Aと重畳して形成される。
【0036】
このとき、上糸の導電糸が、導電部12A、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を貫通し、導電部12Aの下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、ランニングステッチが、配線部12の延在方向に繰り返される。
【0037】
この縫製技術により、導電連結部14は、その間に導電部12Aを締め付けながら縫製される。その結果、導電連結部14の導電糸と導電部12Aの導電糸とが絡みながら、導電糸の密集状態が高まった状態にて、導電連結部14と導電部12Aとが一体化される。
【0038】
絶縁部12Bが、絶縁性基布11に対して、例えば、上糸及び下糸が非導電糸にてサテンステッチにより形成される。非導電糸は、導電部12Aをその配線幅方向に跨ぎながら、導電部12Aの延在方向へと繰り返し縫製される。その結果、導電部12Aが、絶縁部12Bの内部に包含されることで、配線部12の絶縁処理が成される。
【0039】
上述したように、刺繍配線構造10の配線部12では、導電部12Aが、絶縁性基布11の表裏面側のそれぞれに対して密集状態にて形成される。この構造により、絶縁性基布11の表裏面側に形成される導電部12Aが、低抵抗化されることで、電流経路として用いられる。
【0040】
また、導電部12Aは、配線部12の延在方向に対してランニングステッチにより形成されることで、絶縁性基布11の折れ曲がり動作や撓み動作に追従し易くなる。この構造により、導電部12Aは、絶縁性基布11の折れ曲がり動作等に対して断線し難くなり、刺繍配線構造10は、様々な技術分野での使用可能性が高まる。
【0041】
また、導電部12Aは、絶縁性基布11の表裏面の略全面に渡り絶縁部12Bにより被覆されると共に、絶縁部12Bを介しても絶縁性基布11に対して縫製によりしっかりと締め付けられた状態となる。この構造により、導電部12Aは、絶縁性基布11により支持されると共に絶縁部12Bにより保護される。そして、配線部12が、着用者の皮膚等と繰り返し接触しても解れ難くなり、刺繍配線構造10としての耐久性や耐摩耗性が向上される。
【0042】
図4に示すように、電極端子部13の形成領域では、導電連結部14が、刺繍用基材21(図6参照)に対して、例えば、上糸及び下糸が導電糸にてランニングステッチにより形成される。図2を用いて上述したように、導電連結部14の延在方向の約半分程度が、電極端子部13と重畳して形成される。
【0043】
電極端子部13が、刺繍用基材21(図6参照)に対して、例えば、上糸及び下糸が導電糸にてタタミステッチにより形成される。図示したように、電極端子部13は、導電連結部14をその内部に包含するように形成される。具体的には、上糸の導電糸が、刺繍用基材21及び導電連結部14を貫通し、導電連結部14の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、電極端子部13の形成領域に対して、タタミステッチが繰り返される。
【0044】
この縫製技術により、導電連結部14の配置領域では、電極端子部13は、その略中心部に導電連結部14を包含して形成される。その結果、電極端子部13の導電糸と導電連結部14の導電糸とが絡みながら、導電糸の密集状態が高まった状態にて、電極端子部13と導電連結部14とが一体化される。一方、導電連結部14の非配置領域では、電極端子部13単体にて形成される。
【0045】
図2図4及び図5に示すように、電極端子部13の形成領域では、電極端子部13の外周端部に沿って1周に渡り壁部16が形成される。壁部16は、刺繍用基材21(図6参照)に対して、例えば、上糸及び下糸が導電糸にてサテンステッチにより形成される。図示したように、壁部16は、電極端子部13の外周端面及びその周辺領域をその内部に包み込むように被覆して形成される。具体的には、上糸の導電糸が、刺繍用基材21及び電極端子部13を貫通し、電極端子部13の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、サテンステッチが繰り返される。
【0046】
上述したように、壁部16は、サテンステッチにより形成され、電極端子部13は、タタミステッチにより形成されることで、電極端子部13の導電糸と壁部16の導電糸とが、複雑に絡み合う。更には、壁部16は、電極端子部13の外周端部をその内部に包み込むように形成される。そして、壁部16の形成領域では、電極端子部13の導電糸を締め付けながら導電糸の密集状態が高まることで、その硬度、強度、耐久性や耐摩耗性が向上される。
【0047】
本実施形態の刺繍配線構造10では、上述したように、例えば、電極端子部13が、コネクタのソケットに対して装着されることで、刺繍配線構造10と上記判定装置等とは電気的に接続される。そして、電極端子部13は、コネクタに対して脱着可能となることで、絶縁性基布11は、電極端子部13からコネクタを外すことで繰り返し洗濯して使用可能となる。このとき、電極端子部13は、コネクタに対して装着状態や離脱状態を繰り返すが、電極端子部13の外周端部が壁部16により保護されることで、解れ難くなる。その結果、電極端子部13が、縫製時の状態を維持することで、電極端子部13とコネクタとの接続信頼性が向上すると共に、電極端子部13とコネクタとの接続領域での高抵抗化が防止される。
【0048】
また、刺繍配線構造10では、露出状態の電極端子部13が、コネクタに対して装着や離脱を繰り返す場合に限定するものではない。電極端子部13の先端側の形状に合わせた円筒形状の金属部材(図示せず)を準備し、その金属部材が、電極端子部13に対して加締め加工により取り付けられ、電極端子部13の一部として用いられる場合でも良い。この構造においても、電極端子部13の外周端部が壁部16により保護されることで、金属部材と電極端子部13との接触状態が安定化する。そして、少なくとも電極端子部13のコネクタとの接続領域が、金属部材により保護されることで、電極端子部13の硬度、強度、耐久性や耐摩耗性が向上され、電極端子部13での接続信頼性が向上される。尚、上記金属部材に替えて、例えば、一液低温硬化型フレキシブル導電性接着剤等の導電性接着剤等により、電極端子部13の表面をコーティングし、電極端子部13の形状が保持される場合でも良い。
【0049】
更には、上述したように、刺繍配線構造10では、配線部12が導電糸や非導電糸により形成されることで、絶縁性基布11の折れ曲がり動作等に追従しても断線等が発生し難くなる。その一方、上記判定装置等の配線構造として使用される際には、電極端子部13が、コネクタに対して固定されることで、丸印17にて示す、電極端子部13と配線部12との接続領域及びその周辺領域には、絶縁性基布11の動作に連動して、繰り返し引張動作や折れ曲がり動作等によるストレスが加わる。
【0050】
そこで、本実施形態の刺繍配線構造10では、導電連結部14が、電極端子部13及び配線部12の導電部12Aに対して、導電糸の密集状態にて一体化して形成される。この構造により、丸印17に示す領域の電流経路では、導電連結部14が補強部材としての機能も有することで、導電糸が解れ、あるいは破断し難くなると共に、導電糸同士の密集状態が維持されることで、配線としての低抵抗化が実現され、品質信頼性も向上される。
【0051】
尚、本実施形態の刺繍配線構造10では、導電連結部14が、電極端子部13及び配線部12の導電部12Aに対して導電糸を縫製し、それぞれの導電糸の密集状態にて一体化して形成される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、上述した導電連結部14と同程度の長さを有する銅線等の金属細線や金属プレート等の導電性金属部材を準備し、上記導電性金属部材を電極端子部13及び導電部12Aの内部に包含させ、縫製技術を用いて固定することで、導電連結部14として用いる場合でも良い。この場合でも、導電連結部14は、上述したように、配線部12と電極端子部13との連結部の補強部材として機能すると共に、配線構造としての低抵抗化が実現される。
【0052】
また、刺繍配線構造10では、電極端子部13がコネクタに対して装着される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、電極端子部13が、制御基板等の端子等に対して、直接、半田等の導電材料を介して接続される場合でも良い。そして、電極端子部13が、導電糸に替えて銅線等の金属細線を縫製して形成される場合でも良い。
【0053】
次に、本発明の他の実施形態に係る刺繍配線構造10の製造方法に関して図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の本実施形態の説明の際には、図1から図5を用いて説明した刺繍配線構造10と同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。そして、図6から図9は、図1に示す刺繍配線構造10の製造方法を説明する上面図である。
【0054】
図6では、刺繍用基材21及び絶縁性基布11を準備する工程を示す。
【0055】
作業者は、刺繍配線構造10の配線部12の配線パターンに合わせて刺繍用基材21を準備し、機械ミシン(図示せず)の作業台の縫製エリアに対して固定する。
【0056】
ここで、刺繍用基材21とは、刺繍技術を用いて、刺繍配線構造10を縫製により形成する際に、上記導電糸等が縫製されるベース材であり、最終的には刺繍配線構造10から除去される。そして、本実施形態では、刺繍用基材21として、例えば、水溶性不織布を用いるが、熱剥離フィルムが用いられる場合でも良い。尚、刺繍用基材21とは、刺繍技術を用いて、刺繍配線構造30を縫製により形成する際に、上記導電糸等が縫製されるベース材であれば良く、例えば、上記フェルト地等の布地でもフィルム材でも良い。そして、刺繍用基材21は、最終的には刺繍配線構造30から全面的に、あるいは、その大部分が除去される。
【0057】
次に、作業者は、刺繍配線構造10の配線部12の配線パターンに合わせて絶縁性基布11を準備し、絶縁性基布11を刺繍用基材21の上面に位置合わせして固定する。このとき、一点鎖線にて示すように、電極端子部13の形成領域22では、刺繍用基材21のみが配置されるように、絶縁性基布11の端部11Aの位置合わせをしながら、絶縁性基布11を固定する。
【0058】
尚、本実施形態では、刺繍用基材21は、電極端子部13の形成領域22を除いて絶縁性基布11と略全面に渡り積層して配設されるが、この場合に限定するものではない。刺繍用基材21は、少なくとも電極端子部13の形成領域22に配置されていれば良く、任意の設計変更が可能である。
【0059】
図7では、配線部12の導電部12A及び導電連結部14を形成する工程を示す。
【0060】
先ず、作業者は、機械ミシンの上糸として導電糸、下糸として導電糸を設定する。そして、作業者は、配線パターンのデザインデータに基づき機械ミシンを稼働させることで、絶縁性基布11に対して、例えば、ランニングステッチにより導電部12Aを形成する。
【0061】
このとき、機械ミシンでは、上糸の導電糸が、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、配線部12の延在方向(紙面左右方向)にランニングステッチを繰り返す。
【0062】
この縫製方法により、導電部12Aは、その間に絶縁性基布11及び刺繍用基材21を挟み込むように、絶縁性基布11の表裏面側のそれぞれに形成される。そして、導電部12Aでは、隣接する導電糸同士が上記延在方向にて重なり合うように縫製されることで、導電部12Aは、所望の配線幅W1にて形成される。
【0063】
尚、導電部12Aは、上糸及び下糸の両方が導電糸の場合について説明したが、この場合に限定するものではない。導電部12Aは、電流経路としての機能を有していれば良く、例えば、上糸または下糸のどちらか一方が非導電糸の場合でも良い。
【0064】
次に、機械ミシンでは、上記デザインデータに基づき、導電部12Aの形成作業に連続して導電連結部14を形成する。絶縁性基布11の端部11Aを跨ぐように、絶縁性基布11及び刺繍用基材21に対して、例えば、ランニングステッチにより導電連結部14を形成する。
【0065】
このとき、機械ミシンでは、上糸の導電糸が、導電部12A、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、配線部12の延在方向にランニングステッチを繰り返す。
【0066】
この縫製方法により、導電連結部14は、その間に導電部12A、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を挟み込むように、絶縁性基布11の表裏面側のそれぞれに形成される。そして、配線部12の形成領域では、導電連結部14の導電糸と導電部12Aの導電糸とが密集状態にて絡み合う。その結果、導電連結部14が導電部12Aと一体化することで、配線としての硬度が高まると共に、配線としての低抵抗化が実現される。
【0067】
図8では、配線部12の絶縁部12Bを形成する工程を示す。
【0068】
先ず、作業者は、機械ミシンの上糸として非導電糸、下糸として非導電糸を設定する。作業者は、上記デザインデータに基づき機械ミシンを稼働させることで、絶縁性基布11及び刺繍用基材21に対して、例えば、サテンステッチにより絶縁部12Bを形成する。
【0069】
このとき、機械ミシンでは、上糸の非導電糸が、導電部12A(図7参照)を配線幅方向に跨ぎながら、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の非導電糸と絡みながら、配線部12の延在方向にサテンステッチを繰り返す。
【0070】
この縫製方法により、絶縁部12Bは、その間に導電部12A、導電連結部14、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を挟み込むように、絶縁性基布11の表裏面側のそれぞれに形成される。そして、導電部12A及び導電連結部14が、絶縁部12Bの内部に包含されることで、配線部12の絶縁処理が成される。
【0071】
図9では、電極端子部13及び壁部16を形成する工程を示す。
【0072】
先ず、作業者は、機械ミシンの上糸として導電糸、下糸として導電糸を設定する。作業者は、上記デザインデータに基づき機械ミシンを稼働させることで、刺繍用基材21に対して、例えば、タタミステッチにより電極端子部13を形成する。
【0073】
このとき、機械ミシンでは、上糸の導電糸が、導電連結部14及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、電極端子部13の形状に合わせてタタミステッチを繰り返す。
【0074】
この縫製方法により、電極端子部13は、その中心部に導電連結部14(図8参照)を包含するように形成される。そして、電極端子部13の導電糸と導電連結部14の導電糸とが密集状態にて絡み合う。
【0075】
次に、機械ミシンでは、上記デザインデータに基づき、電極端子部13の形成作業に連続して壁部16を形成する。電極端子部13の外周端部に沿って1周に渡り、刺繍用基材21及び電極端子部13に対して、例えば、サテンステッチにより壁部16を形成する。
【0076】
このとき、機械ミシンでは、上糸の導電糸が、電極端子部13及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、電極端子部13の外周端部に沿ってサテンステッチを繰り返す。
【0077】
この縫製方法により、壁部16は、電極端子部13の外周端面及びその周辺領域をその内部に包み込むように被覆し、電極端子部13の外周端部に沿って1周に渡り形成される。そして、壁部16の導電糸と電極端子部13の導電糸とが密集状態にて絡み合う。その結果、壁部16が、電極端子部13と一体化することで、電極端子部13が、高硬度の壁部16により囲まれ、電極端子との形状が維持される。
【0078】
次に、作業者は、刺繍配線構造10が形成された絶縁性基布11及び刺繍用基材21を作業台から取り外す。そして、作業者は、絶縁性基布11をぬるま湯や水に浸し、絶縁性基布11の裏面側に配設される刺繍用基材21としての水溶性不織布を除去する。その後、作業者は、絶縁性基布11を自然乾燥等により乾燥させることで、刺繍配線構造10が完成する。尚、刺繍用基材21として熱剥離フィルムを用いた場合には、作業者は、例えば、はんだごて等の加熱装置を用いて、熱剥離フィルムを除去する。
【0079】
上述したように、本実施形態の刺繍配線構造10の製造方法では、作業者が、作業台の刺繍エリアに対して刺繍用基材21と絶縁性基布11とを積層して配設し、絶縁性基布11からずらして配設された刺繍用基材21に対しても導電糸を縫製する。この縫製方法により、電極端子部13が、絶縁性基布11の端部11Aから外側へと突出し、配線部12から連続した状態にて形成される。そして、作業者は、機械ミシンに対して上糸や下糸を変更するのみで、一連の縫製作業にて絶縁性基布11に対して刺繍配線構造10を形成することが出来る。その結果、作業者は、作業台に対して何回も絶縁性基布11の固定作業や取り外し作業を繰り返す必要がなく、作業性が向上し、作業時間も短縮できる。
【0080】
次に、図10から図13を用いて、刺繍配線構造30の製造方法に関して詳細に説明する。そして、刺繍配線構造30は、刺繍配線構造10に対して外観上はほぼ同一の構造となるが、導電連結部31の構造が、刺繍配線構造10の導電連結部14の構造とは異なる。そのため、以下の説明では、図1から図9を用いて説明した刺繍配線構造10及びその製造方法と同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。そして、図10から図13は、刺繍配線構造30の製造方法を説明する上面図である。
【0081】
図10では、刺繍用基材21及び絶縁性基布11を準備する工程を示す。
【0082】
作業者は、刺繍配線構造30の配線部12の配線パターンに合わせて刺繍用基材21を準備し、機械ミシン(図示せず)の作業台の縫製エリアに対して固定する。
【0083】
ここで、刺繍用基材21とは、刺繍技術を用いて、刺繍配線構造30を縫製により形成する際に、上記導電糸等が縫製されるベース材であり、最終的には刺繍配線構造30から除去される。そして、本実施形態では、刺繍用基材21として、上述したように、例えば、水溶性不織布を用いるが、熱剥離フィルムが用いられる場合でも良い。
【0084】
次に、作業者は、刺繍配線構造30の配線部12の配線パターンに合わせて絶縁性基布11を準備し、絶縁性基布11を刺繍用基材21の上面に位置合わせして固定する。尚、本実施形態では、刺繍用基材21は、絶縁性基布11と略全面に渡り積層して配設されるが、この場合に限定するものではない。例えば、作業台の刺繍エリアの全面に絶縁性基布11が配設される際には、刺繍用基材21が不要となる場合でも良い。
【0085】
図11では、配線部12の導電部12A及び導電連結部31を形成する工程を示す。
【0086】
先ず、作業者は、機械ミシンの上糸として導電糸、下糸として導電糸を設定する。そして、作業者は、配線パターンのデザインデータに基づき機械ミシンを稼働させることで、絶縁性基布11に対して、例えば、ランニングステッチにより導電部12Aを形成する。尚、詳細は後述するが、刺繍配線構造30では、絶縁性基布11の端部11A側の導電部12Aが、導電連結部31として用いられる。
【0087】
このとき、機械ミシンでは、上糸の導電糸が、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、配線部12の延在方向(紙面左右方向)にランニングステッチを繰り返す。
【0088】
この縫製方法により、導電部12Aは、その間に絶縁性基布11及び刺繍用基材21を挟み込むように、絶縁性基布11の表裏面側のそれぞれに形成される。そして、導電部12Aでは、隣接する導電糸同士が上記延在方向にて重なり合うように縫製されることで、導電部12Aは、所望の配線幅W1にて形成される。
【0089】
尚、導電部12Aは、上糸及び下糸の両方が導電糸の場合について説明したがこの場合に限定するものではない。導電部12Aは、電流経路としての機能を有していれば良く、例えば、上糸または下糸のどちらか一方が非導電糸の場合でも良い。
【0090】
図12では、配線部12の絶縁部12Bを形成する工程を示す。
【0091】
先ず、作業者は、機械ミシンの上糸として非導電糸、下糸として非導電糸を設定する。作業者は、上記デザインデータに基づき機械ミシンを稼働させることで、絶縁性基布11及び刺繍用基材21に対して、例えば、サテンステッチにより絶縁部12Bを形成する。
【0092】
このとき、機械ミシンでは、上糸の非導電糸が、導電部12A(図11参照)を配線幅方向に跨ぎながら、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の非導電糸と絡みながら、配線部12の延在方向にサテンステッチを繰り返す。
【0093】
この縫製方法により、絶縁部12Bは、その間に導電部12A、導電連結部31、絶縁性基布11及び刺繍用基材21を挟み込むように、絶縁性基布11の表裏面側のそれぞれに形成される。そして、導電部12Aが、絶縁部12Bの内部に包含されることで、配線部12の絶縁処理が成される。
【0094】
その一方、刺繍配線構造30では、絶縁部12Bは、絶縁性基布11の端部11Aから例えば、10mm程度手前まで形成される。そして、絶縁部12Bから露出する導電部12Aの先端側が、導電連結部31として用いられる。
【0095】
図13では、導電連結部31まで形成された絶縁性基布11を作業台へと固定する工程を示す。
【0096】
先ず、作業者は、図12に示す状態の絶縁性基布11及び刺繍用基材21を作業台から取り外す。そして、作業者は、絶縁性基布11をぬるま湯や水に浸し、絶縁性基布11の裏面側に配設される刺繍用基材21としての水溶性不織布を除去する。その後、作業者は、絶縁性基布11を自然乾燥等により乾燥させる。
【0097】
次に、作業者は、導電連結部31としても機能する導電部12Aの先端側の一部が、絶縁性基布11の裁断ラインである端部11Aから突出するように、絶縁性基布11の端部11A側の先端部をハサミ等により裁断する。この作業により、絶縁性基布11の端部11Aは、導電連結部31の長さ分だけ後退する。そして、導電連結部31は、絶縁性基布11及び絶縁性基布11の表裏面側に縫製して形成された導電部12Aとから構成される。尚、本実施形態の絶縁性基布11の表裏面側に縫製して形成された導電部12Aは、本願発明の刺繍体に対応する。
【0098】
次に、作業者は、刺繍配線構造30の電極端子部13の形成領域に合わせて刺繍用基材21を準備し、機械ミシン(図示せず)の作業台の縫製エリアに対して固定する。その後、上記導電連結部31まで形成された絶縁性基布11を刺繍用基材21の上面に位置合わせして固定する。尚、本実施形態では、刺繍用基材21は、電極端子部13の形成領域に合わせて部分的に配設されるが、刺繍用基材21は、絶縁性基布11と略全面に渡り積層して配設される場合でも良い。
【0099】
図14では、電極端子部13及び壁部16を形成する工程を示す。
【0100】
先ず、作業者は、機械ミシンの上糸として導電糸、下糸として導電糸を設定する。作業者は、上記デザインデータに基づき機械ミシンを稼働させることで、刺繍用基材21に対して、例えば、タタミステッチにより電極端子部13を形成する。
【0101】
このとき、機械ミシンでは、上糸の導電糸が、導電連結部31及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、電極端子部13の形状に合わせてタタミステッチを繰り返す。
【0102】
この縫製方法により、電極端子部13は、その中心部に導電連結部31(図13参照)を包含するように形成される。そして、電極端子部13の導電糸と導電連結部14の導電糸とが密集状態にて絡み合う。また、電極端子部13の導電糸の一部は、導電連結部31の絶縁性基布11に対して縫製される。
【0103】
次に、機械ミシンでは、上記デザインデータに基づき、電極端子部13の形成作業に連続して壁部16を形成する。電極端子部13の外周端部に沿って1周に渡り、刺繍用基材21及び電極端子部13に対して、例えば、サテンステッチにより壁部16を形成する。
【0104】
このとき、機械ミシンでは、上糸の導電糸が、電極端子部13及び刺繍用基材21を貫通し、刺繍用基材21の下方にて回転釜を介して下糸の導電糸と絡みながら、電極端子部13の外周端部に沿ってサテンステッチを繰り返す。
【0105】
この縫製方法により、壁部16は、電極端子部13の外周端面及びその周辺領域をその内部に包み込むように被覆し、電極端子部13の外周端部に沿って1周に渡り形成される。そして、壁部16の導電糸と電極端子部13の導電糸とが密集状態にて絡み合う。その結果、壁部16が、電極端子部13と一体化することで、電極端子部13が、高硬度の壁部16により囲まれることで、電極端子との形状が維持される。尚、壁部16の一部は、導電連結部31の絶縁性基布11に対して縫製される。
【0106】
次に、作業者は、刺繍配線構造30が形成された絶縁性基布11及び刺繍用基材21を作業台から取り外す。そして、作業者は、絶縁性基布11をぬるま湯や水に浸し、絶縁性基布11の裏面側に配設される刺繍用基材21としての水溶性不織布を除去する。その後、作業者は、絶縁性基布11を自然乾燥等により乾燥させることで、刺繍配線構造30が完成する。尚、刺繍用基材21として熱剥離フィルムを用いた場合には、作業者は、例えば、はんだごて等の加熱装置を用いて、熱剥離フィルムを除去する。
【0107】
最後に、図15に示すように、刺繍配線構造30では、導電連結部31は、導電糸が絶縁性基布11の表裏面に縫製された状態にて形成される。そして、電極端子部13が縫製される絶縁性基布11は、配線部12が形成される絶縁性基布11と一体となる。この構造により、電極端子部13は、配線部12が形成される絶縁性基布11と連続して形成されることで、絶縁性基布11の動作に連動して繰り返し加わる引張動作等のストレスに強い構造となる。そして、丸印32に示す領域の電流経路では、導電糸が解れ、あるいは破断し難くなると共に、導電糸同士の密集状態が維持されることで、配線としての低抵抗化が実現され、品質信頼性も向上される。
【0108】
尚、本実施形態の刺繍配線構造30においても、上述した刺繍配線構造10と同様に、電極端子部13の先端部側に円筒形状の金属部材(図示せず)が、加締め加工により取り付けられる場合でも良い。また、上記金属部材に替えて導電性接着剤等により、電極端子部13の表面をコーティングし、電極端子部13の形状が保持される場合でも良い。また、導電連結部31では、絶縁性基布11の表裏面に縫製された導電糸に替えて銅線等の金属細線を絶縁性基布11の表裏面に縫製等により固定する場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
10 刺繍配線構造
11 絶縁性基布
11A 端部
12 配線部
12A 導電部
12B 絶縁部
13 電極端子部
14 導電連結部
16 壁部
21 刺繍用基材
30 刺繍配線構造
31 導電連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15