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  • -電磁比例減圧弁 図1
  • -電磁比例減圧弁 図2
  • -電磁比例減圧弁 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162287
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電磁比例減圧弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077651
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】花田 祥一
(72)【発明者】
【氏名】小倉 祐二
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA04
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC09
3H106DC18
3H106DD07
3H106EE35
3H106EE48
3H106GB06
3H106JJ03
3H106JJ09
3H106KK03
(57)【要約】
【課題】スプールの傾きを好適に防止しつつ、研削工数ひいては工程時間の削減を図ることが可能な電磁比例減圧弁を提供する。
【解決手段】本発明にかかる電磁比例減圧弁の構成は、スリーブと、スプールと、電磁部と、ポンプポートと、アクチュエータポートと、タンクポートとを備え、スリーブは、アクチュエータポートのポンプポート側に形成された小径部と、アクチュエータポートのタンクポート側に形成された大径部とを有し、スプールは、小径部を移動してアクチュエータポートとポンプポートを開閉する小径ランドと、大径部を移動してアクチュエータポートとタンクポートを開閉する大径ランドと、小径ランドと大径ランドとを連結するグルーブと、グルーブに形成された接触部と、を有し、接触部は、小径部と摺動する摺動縁と、摺動縁を切り欠かれて形成され作動油が流通する溝とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブと、
前記スリーブ内を移動するスプールと、
前記スプールを移動させる電磁部と、
前記スリーブに設けられたポンプポート、アクチュエータポート、タンクポートと、
を備え、
前記スリーブは、
前記アクチュエータポートの前記ポンプポート側に形成された小径部と、
前記アクチュエータポートの前記タンクポート側に形成された大径部とを有し、
前記スプールは、
前記小径部を移動して前記アクチュエータポートと前記ポンプポートを開閉する小径ランドと、
前記大径部を移動して前記アクチュエータポートと前記タンクポートを開閉する大径ランドと、
前記小径ランドよりも径が小さく該小径ランドと前記大径ランドとを連結するグルーブと、
前記グルーブに形成された接触部と、
を有し、
前記接触部は、前記小径部と摺動する摺動縁と、該摺動縁を切り欠かれて形成され作動油が流通する溝とを有することを特徴とする電磁比例減圧弁。
【請求項2】
スリーブと、
前記スリーブ内を移動するスプールと、
前記スプールを移動させる電磁部と、
前記スリーブに設けられたポンプポート、アクチュエータポート、タンクポートと、
を備え、
前記スリーブは、
前記アクチュエータポートの前記ポンプポート側に形成された小径部と、
前記アクチュエータポートの前記タンクポート側に形成された大径部とを有し、
前記スプールは、
前記小径部を移動して前記アクチュエータポートと前記ポンプポートを開閉する小径ランドと、
前記大径部を移動して前記アクチュエータポートと前記タンクポートを開閉する大径ランドと、
前記小径ランドよりも径が小さく該小径ランドと前記大径ランドとを連結するグルーブと、
前記グルーブに形成された接触部と、
を有し、
前記接触部は、前記大径部と摺動する摺動縁と、該摺動縁を切り欠かれて形成され作動油が流通する溝とを有することを特徴とする電磁比例減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路において高圧の流体の圧力を所定の圧力に減圧する電磁比例減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧駆動装置に油圧を供給する油圧回路では、作動油の流れる方向を切り換える電磁弁(電磁切替弁)が設けられることがある。しかしながら、油圧回路において作動油を減圧する必要がある場合には、油圧回路に減圧弁を追加する必要がある。そこで例えば特許文献1に、減圧弁としての機能を有する電磁弁が開示されている。
【0003】
特許文献1の電磁弁は、作動油が流入する流入ポート及び作動油が流出する流出ポートを有するボディ、およびボディ内に移動可能に収容されたスプールとを備えている。かかるスプールには、前記流入ポートを開閉する小径ピストン部(小径ランド)、及びこの小径ピストン部に間隔をあけて対向する大径ピストン部(大径ランド)が前記スプールに設けられている。
【0004】
更に特許文献1の電磁弁では小径ピストン部には、「前記流入ポートから前記流出ポートに流れる作動油の圧力を受けて前記第1の付勢部材の付勢力と同方向の第1のフィードバック力を発生させる第1の受圧面」が設けられている。また大径ピストン部には、「前記流入ポートから前記流出ポートに流れる作動油の圧力を受けて前記第1のフィードバック力を打ち消すとともに、前記第1の付勢部材の付勢力に均衡する第2のフィードバック力を発生させ、この第2のフィードバック力により前記流入ポートの開口量を制限する第2の受圧面」が設けられている。特許文献1によれば、電磁弁が減圧弁として機能することにより、ポンプ側の減圧弁を不要とすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-267037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなスプール式の電磁弁では、大径ピストン部(大径ランド)および小径部ピストン部(小径ランド)がスプール収容空間の大径空間(大径部)と小径空間(小径部)に接することにより、スプールの傾きが防止されている。したがって、スプールがスプール収容空間を摺動する際の摩擦を低減するために、大径ピストン部と大径空間、および小径部ピストン部と小径空間を、それぞれ研削(研磨)する必要があった。しかしながら、合計4箇所を高精度で研削(研磨)すると、工数ひいては工程時間を多く要することが課題となっていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、減圧弁としても機能するスプール式の電磁弁において、スプールの傾きを好適に防止しつつ、研削工数ひいては工程時間の削減を図ることが可能な電磁比例減圧弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電磁比例減圧弁の代表的な構成は、スリーブと、スリーブ内を移動するスプールと、スプールを移動させる電磁部と、スリーブに設けられたポンプポート、アクチュエータポート、タンクポートと、を備え、スリーブは、アクチュエータポートのポンプポート側に形成された小径部と、アクチュエータポートのタンクポート側に形成された大径部とを有し、スプールは、小径部を移動してアクチュエータポートとポンプポートを開閉する小径ランドと、大径部を移動してアクチュエータポートとタンクポートを開閉する大径ランドと、小径ランドよりも径が小さく小径ランドと大径ランドとを連結するグルーブと、グルーブに形成された接触部と、を有し、接触部は、小径部と摺動する摺動縁と、摺動縁を切り欠かれて形成され作動油が流通する溝とを有することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電磁比例減圧弁の他の構成は、スリーブと、スリーブ内を移動するスプールと、スプールを移動させる電磁部と、スリーブに設けられたポンプポート、アクチュエータポート、タンクポートと、を備え、スリーブは、アクチュエータポートのポンプポート側に形成された小径部と、アクチュエータポートのタンクポート側に形成された大径部とを有し、スプールは、小径部を移動してアクチュエータポートとポンプポートを開閉する小径ランドと、大径部を移動してアクチュエータポートとタンクポートを開閉する大径ランドと、小径ランドよりも径が小さく小径ランドと大径ランドとを連結するグルーブと、グルーブに形成された接触部と、を有し、接触部は、大径部と摺動する摺動縁と、摺動縁を切り欠かれて形成され作動油が流通する溝とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減圧弁としても機能するスプール式の電磁弁において、スプールの傾きを好適に防止しつつ、研削工数ひいては工程時間の削減を図ることが可能な電磁比例減圧弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかる電磁比例減圧弁を説明する図である。
図2】第2実施形態にかかる電磁比例減圧弁を説明する図である。
図3】従来の電磁比例減圧弁を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
電磁比例減圧弁は、油圧回路の所定の油路に配置され、作動油の流れる方向の切り換え、および作動油の減圧を行う装置である。油路は、タンクの作動油を送り出す油圧ポンプなどを含む油圧源から加工母機まで接続されていて、その途中に電磁比例減圧弁が配置される。なお加工母機は、油圧シリンダや油圧モータなどを含む油圧駆動のアクチュエータである。
【0014】
(従来構造)
図3は、従来の電磁比例減圧弁300を説明する図である。図3に示す従来の電磁比例減圧弁300は、スリーブ310と、スリーブ310内を移動するスプール320と、スプール320を移動させる電磁部330とを含んで構成される。
【0015】
スリーブ310には、ポンプポートP、アクチュエータポートA、タンクポートTが設けられている。ポンプポートPは、電磁比例減圧弁300に作動油を入力(供給)するポートである。アクチュエータポートAは、電磁比例減圧弁300から作動油を出力(吐出)するポートである。タンクポートTは、タンク(不図示)に作動油を戻すポートであり、ドレンポートとも称される。
【0016】
またスリーブ310は、アクチュエータポートAのポンプポートP側に形成された小径部312と、アクチュエータポートAのタンクポートT側に形成された大径部314とを有する。更にスリーブ310の内部において、スプール320と電磁部330との間には、リターンスプリング350が配置されている。
【0017】
スプール320は、小径ランド322、大径ランド324およびグルーブ326を有する。小径ランド322は、径D1を有し、スリーブ310の小径部312を移動してアクチュエータポートAとポンプポートPを開閉する。大径ランド324は、径D2を有し、スリーブ310の大径部314を移動してアクチュエータポートAとタンクポートTを開閉する。小径ランド322と大径ランド324は、小径ランド322よりも径が小さい径D3を有するグルーブ326によって連結されている。
【0018】
電磁部330は、プランジャ332、電磁コイル334、固定鉄心336を含んで構成される。プランジャ332は、固定鉄心336に挿通されたロッド340が一体に固定されている。かかるプランジャ332は、電磁コイルの励磁または非励磁により固定鉄心336に対して離接する方向に移動する。ロッド340は、電磁コイル334が非励磁のときにはリターンスプリング350によってプランジャ332に向かって付勢されている。
【0019】
図3に示す電磁比例減圧弁300では、通電時に電磁コイル334が励磁されると、プランジャ332が電磁コイル334に吸引されて、リターンスプリング350の付勢力に抗して移動する。すると、プランジャ332に固定されたロッド340がスプール320を押圧し、スプール320がスリーブ310内を移動する。これにより、アクチュエータポートAとポンプポートPが連通した状態となる。このとき、タンクポートTは閉じられた状態となっている。
【0020】
上述したようにスプール320は径が異なる小径ランド322および大径ランド324を有していて、その径の差によって、小径ランド322の受圧面322aおよび大径ランド324の受圧面324aでは面積差が生じる。このためスプール320では、この面積差に起因する油圧力が発生する。したがって、通電時の電磁比例減圧弁300では、「電磁部330において発生する吸引力F1」と「スプール320の面積差に発生する油圧力F2」と「リターンスプリング350のスプリング力F3」がバランスすることで、アクチュエータポートAの圧力を制御している。
【0021】
一方、非通電時には電磁コイル334は非励磁状態となる。すると、ロッド340ひいてはプランジャ332には、リターンスプリング350によってスプール320から離間する方向のスプリング力がかかる。これにより、アクチュエータポートAとタンクポートTが連通した状態となり、ポンプポートPが閉じた状態となる。
【0022】
図3に示す従来の電磁比例減圧弁300では、スプール320は、小径ランド322および大径ランド324がそれぞれスリーブ310の小径部312および大径部314に支持されていることにより、傾きが防止されている。このため、スプール320の小径ランド322および大径ランド324、ならびにスリーブ310の小径部312および大径部314は寸法精度が高い必要があり、それらの摺動摩擦の低減も目的として、スプール320の小径ランド322の外周面322bおよび大径ランド324の外周面324b、ならびにスリーブの小径部312および大径部314は高精度の研削が必要となる。すると、研削工数ひいては工程時間を多く要してしまう。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる電磁比例減圧弁100を説明する図である。図1(a)は、電磁比例減圧弁100の模式的な断面図である。図1(b)は、図1(a)のスプール120の接触部128の断面図である。なお、以下の実施形態では、図3の電磁比例減圧弁300と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0024】
図1(a)に示す第1実施形態の電磁比例減圧弁100は、グルーブ326に接触部128が形成されたスプール120を有する。図1(b)に示す接触部128は、小径ランド322と同径(D1)であって、小径部312と摺動する摺動縁128aと、摺動縁128aを切り欠かれて形成され作動油が流通する溝128bとを有する。
【0025】
上記構成によれば、スプール120は、小径ランド322および接触部128の摺動縁128aにおいてスリーブ310に2点接触で支持されることになる。これにより、スプールの傾きを好適に防止することができる。また接触部128には溝128bが形成されているため、スリーブ310内における作動油の流れの阻害をすることなく、上記効果を得ることができる。
【0026】
スプール120を支持しない大径ランド324およびスリーブ310の大径部314は高精度とするための研削加工が不要となり、旋削加工(切削加工)で仕上げることができる。小径ランド322と接触部128は同径であるため、同一の研削(研磨)加工を行うこととなる。このため、従来の行われていた小径の研削加工のみを行えばよいため、研削工数ひいては工程時間の削減を図ることが可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態にかかる電磁比例減圧弁200を説明する図である。図2(a)は、200の模式的な断面図である。図2(b)は、図2(a)のスプール220の接触部228の断面図である。
【0028】
図2(a)に示す第2実施形態の電磁比例減圧弁200は、グルーブ326に接触部228が形成されたスプール220を有する。図2(b)に示す接触部128は、大径ランド324と同径(D2)であって、大径部314と摺動する摺動縁228aと、摺動縁228aを切り欠かれて形成され作動油が流通する溝228bとを有する。
【0029】
第2実施形態の構成によれば、スプール220は、大径ランド324および接触部228の摺動縁228aにおいてスリーブ310に2点接触で支持されることになる。これにより、スプール220の傾きを好適に防止することができる。
【0030】
そしてスプール220を支持しない小径ランド322およびスリーブ310の小径部312は旋削加工(切削加工)で仕上げることができる。大径ランド324と接触部228は同径であるため、同一の研削(研磨)加工を行うこととなる。したがって、第1実施形態の電磁比例減圧弁100と同様に、スプール220の傾きを好適に防止しつつ、研削工数ひいては工程時間の削減を図ることが可能となる。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、油圧回路において高圧の流体の圧力を所定の圧力に減圧する電磁比例減圧弁として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
D1…径、D2…径、D3…径、100…電磁比例減圧弁、120…スプール、128…接触部、128a…摺動縁、128b…溝、220…スプール、228…接触部、228a…摺動縁、228b…溝、300…電磁比例減圧弁、310…スリーブ、312…小径部、314…大径部、320…スプール、322…小径ランド、322a…受圧面、322b…外周面、324…大径ランド、324a…受圧面、324b…外周面、326…グルーブ、330…電磁部、332…プランジャ、334…電磁コイル、336…固定鉄心、340…ロッド、350…リターンスプリング、A…アクチュエータポート、P…ポンプポート、T…タンクポート
図1
図2
図3