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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162299
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電磁アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/06 20060101AFI20241114BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20241114BHJP
   H01F 7/128 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01F7/06 C
H01F7/16 D
H01F7/16 E
H01F7/16 G
H01F7/16 H
H01F7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077672
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 俊樹
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA04
5E048AB01
5E048AD02
5E048BA01
(57)【要約】
【課題】構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減を図りつつ、削り屑等の異物を排除でき、可動子の円滑な動作を保証し得る電磁アクチュエータを提供する。
【解決手段】可動子80、固定子10,20、ボビンモジュールBm、第1環状シール部材Srを備え、ボビンモジュールBmが、固定子を軸線の方向に通す貫通孔h、貫通孔の一端側開口h1の外側に隣接して形成され第1環状シール部材を受けるボビン側受け部51、貫通孔の一端側開口寄りにおいて内壁面32aから突出して形成された突出部34を含み、固定子10は、突出部に嵌合される外周嵌合部13、ボビン側受け部と協働して第1環状シール部材を受ける固定子側受け部14を含み、ボビンモジュール及び固定子は、外周嵌合部が突出部に嵌合された組付け状態において、突出部から外れた貫通孔の内部空間Isから第1環状シール部材まで連通する連通路Cpを画定する。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線に沿って往復動する可動子と、前記可動子を前記軸線の方向に往復動自在に収容する固定子と、前記固定子の周りに配置されたボビンモジュールと、前記ボビンモジュールと前記固定子の間に介在する第1環状シール部材と、を備え、
前記ボビンモジュールは、前記固定子を前記軸線の方向に通す貫通孔と、前記貫通孔の一端側開口の外側に隣接して形成され前記第1環状シール部材を受けるボビン側受け部と、前記貫通孔の一端側開口寄りにおいて内壁面から突出して形成された突出部を含み、
前記固定子は、前記突出部に嵌合される外周嵌合部と、前記ボビン側受け部と協働して前記第1環状シール部材を受ける固定子側受け部を含み、
前記ボビンモジュール及び前記固定子は、前記外周嵌合部が前記突出部に嵌合された組付け状態において、前記突出部から外れた前記貫通孔の内部空間から前記第1環状シール部材まで連通する連通路を画定する、
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記ボビンモジュールは、前記貫通孔の一端側開口の内周縁領域において環状テーパ面を含み、
前記突出部は、前記軸線方向において前記環状テーパ面から外れた領域に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記固定子は、前記軸線の方向に離隔して配置された第1固定子及び第2固定子を含み、
前記第1環状シール部材は、前記第1固定子と前記ボビンモジュールの間に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記ボビンモジュールは、前記貫通孔及び前記突出部を画定するボビンと、前記ボビンに巻回された励磁用のコイルと、前記コイルを覆う共に前記コイルの端部に接続された端子を囲繞するコネクタ部を形成する外側カバー部材を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記ボビン側受け部は、前記外側カバー部材又は前記ボビンに形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記第2固定子と前記ボビンの間に第2環状シール部材が配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記ボビンは、前記軸線の方向において前記貫通孔の一端側開口寄りに形成されて前記第1固定子を前記軸線上に位置決めする第1位置決め部と、前記軸線の方向において前記貫通孔の他端側開口寄りに形成されて前記第2固定子を前記軸線上に位置決めする第2位置決め部を含み、
前記突出部は、前記第1位置決め部である、
ことを特徴とする請求項4ないし6いずれか一つに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項8】
前記貫通孔は、前記軸線を中心とする第1貫通孔と、前記軸線の方向において前記第1貫通孔に隣接する共に前記第1貫通孔よりも小径の第2貫通孔を含み、
前記第1位置決め部は、前記第1貫通孔の領域において前記第1貫通孔の内壁面から突出して前記軸線の方向に伸長する複数の突条部を含み、
前記連通路は、前記複数の突条部同士の間の凹み領域により画定される、
ことを特徴とする請求項7に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項9】
前記外周嵌合部は、前記軸線の方向において前記第1位置決め部の途中まで嵌合される、
ことを特徴とする請求項8に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項10】
前記第1固定子は、前記可動子を受け入れる内周面を画定する円筒部と、前記円筒部の一端側を閉塞すると共に前記可動子の休止位置を規定する底壁部と、前記円筒部から径方向に延出するフランジ部を含み、
前記第2固定子は、前記可動子を受け入れると共にその先端において前記可動子を露出させる挿通孔を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項11】
前記固定子側受け部は、前記フランジ部であり、
前記ボビン側受け部は、前記軸線の方向において前記フランジ部と協働して前記第1環状シール部材を受けるべく前記ボビンモジュールに形成された環状受け部である、
ことを特徴とする請求項10に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項12】
前記可動子は、磁性材料により形成されたプランジャと、非磁性材料により形成されると共に前記プランジャに固定されて外部に駆動力を及ぼすシャフトを含み、
前記第2固定子は、前記可動子の作動位置を規定するストッパ部と、前記シャフトを摺動自在にガイドするガイド孔を含み、
前記第1固定子の前記内周面は、前記プランジャを非接触にて往復動自在に受け入れ、
前記第2固定子の前記挿通孔は、前記シャフトを非接触にて往復動自在に受け入れる、
ことを特徴とする請求項10に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項13】
前記第1固定子及び前記第2固定子に接続されて磁路を形成する外側磁路部材を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項14】
前記外側磁路部材は、前記第1固定子に接続されると共に前記ボビンモジュールの周りを囲繞する円筒部材と、前記第2固定子及び前記円筒部材に接続される平板部材を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項15】
前記平板部材は、取付対象物に取り付けるためのフランジ部材を兼ねる、
ことを特徴とする請求項14に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項16】
前記可動子には、前記第1固定子に当接して休止位置に戻る際に衝撃を吸収する緩衝ユニットが設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁アクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドの電磁力を駆動力とする電磁アクチュエータに関し、特に、可動子を往復動自在に収容する円筒状の固定子(インナーヨーク)を備えた電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁アクチュエータとしては、所定の軸線方向に往復動するプランジャ(可動子)と、プランジャに固定されたシャフトピンと、プランジャを往復動自在に収容すると共に磁路を形成する二つの部材からなるインナーヨークとしての第1のコア部(第1固定子)及び第2のコア部(第2固定子)と、第1のコア部と第2のコア部の位置決め(軸心合わせ)を行う円筒状をなす樹脂製のカラーと、インナーヨーク及びカラーの周りに配置されたボビンと、ボビンに巻回された励磁用のコイルと、磁路を形成するアウターヨークとしてのケースと、ボビンとケースの間に配置された二つのシール部材と、を備えた電磁ソレノイドが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上記の電磁アクチュエータにおいて、シール部材は、プランジャの往復動方向におけるボビンの両端面において、ボビンとケースの間に介在してシール機能を及ぼすだけのものである。また、第1のコア部と第2コア部をカラーに圧入して位置決めを行う場合、第1コア部及び第2コア部の外壁面がカラーの内壁面を押圧しながら挿入される。
したがって、第1コア部及び第2コア部の外壁面やカラーの内壁面に付着した粉塵やカラーの内壁面が削られて生じた削り屑等の異物が、プランジャ及びシャフトピンの移動空間内に入り込んで噛み込みを生じ、作動不良を招く虞がある。それ故に、削り屑等の異物が発生した場合には異物を排除できる構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7031171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等図りつつ、削り屑等の異物を排除でき、可動子の円滑な動作を保証し得る電磁アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁アクチュエータは、所定の軸線に沿って往復動する可動子と、可動子を軸線の方向に往復動自在に収容する固定子と、固定子の周りに配置されたボビンモジュールと、ボビンモジュールと固定子の間に介在する第1環状シール部材とを備え、ボビンモジュールは、固定子を軸線の方向に通す貫通孔と、貫通孔の一端側開口の外側に隣接して形成され第1環状シール部材を受けるボビン側受け部と、貫通孔の一端側開口寄りにおいて内壁面から突出して形成された突出部を含み、固定子は、突出部に嵌合される外周嵌合部と、ボビン側受け部と協働して第1環状シール部材を受ける固定子側受け部を含み、ボビンモジュール及び固定子は、外周嵌合部が突出部に嵌合された組付け状態において、突出部から外れた貫通孔の内部空間から第1環状シール部材まで連通する連通路を画定する、構成となっている。
【0007】
上記電磁アクチュエータにおいて、ボビンモジュールは、貫通孔の一端側開口の内周縁領域において環状テーパ面を含み、突出部は、軸線の方向において環状テーパ面から外れた領域に形成されている、構成を採用してもよい。
【0008】
上記電磁アクチュエータにおいて、固定子は、軸線の方向に離隔して配置された第1固定子及び第2固定子を含み、第1環状シール部材は、第1固定子とボビンモジュールの間に配置されている、構成を採用してもよい。
【0009】
上記電磁アクチュエータにおいて、ボビンモジュールは、貫通孔及び突出部を画定するボビンと、ボビンに巻回された励磁用のコイルと、コイルを覆う共にコイルの端部に接続された端子を囲繞するコネクタ部を形成する外側カバー部材を含む、構成を採用してもよい。
【0010】
上記電磁アクチュエータにおいて、ボビン側受け部は、外側カバー部材又はボビンに形成されている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記電磁アクチュエータにおいて、第2固定子とボビンの間に第2環状シール部材が配置されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記電磁アクチュエータにおいて、ボビンは、軸線方向において貫通孔の一端側開口寄りに形成されて第1固定子を軸線上に位置決めする第1位置決め部と、軸線の方向において貫通孔の他端側開口寄りに形成されて第2固定子を軸線上に位置決めする第2位置決め部を含み、突出部は、第1位置決め部である、構成を採用してもよい。
【0013】
上記電磁アクチュエータにおいて、貫通孔は、軸線を中心とする第1貫通孔と、軸線の方向において第1貫通孔に隣接する共に第1貫通孔よりも小径の第2貫通孔を含み、第1位置決め部は、第1貫通孔の領域において第1貫通孔の内壁面から突出して軸線の方向に伸長する複数の突条部を含み、連通路は、複数の突条部同士の間の凹み領域により画定される、構成を採用してもよい。
【0014】
上記電磁アクチュエータにおいて、外周嵌合部は、軸線の方向において第1位置決め部の途中まで嵌合される、構成を採用してもよい。
【0015】
上記電磁アクチュエータにおいて、第1固定子は、可動子を受け入れる内周面を画定する円筒部と、円筒部の一端側を閉塞すると共に可動子の休止位置を規定する底壁部と、円筒部から径方向に延出するフランジ部を含み、第2固定子は、可動子を受け入れると共にその先端において可動子を露出させる挿通孔を含む、構成を採用してもよい。
【0016】
上記電磁アクチュエータにおいて、固定子側受け部は、フランジ部であり、ボビン側受け部は、軸線の方向において環状フラン部と協働して第1環状シール部材を受けるべくボビンモジュールに形成された環状受け部である、構成を採用してもよい。
【0017】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子は、磁性材料により形成されたプランジャと、非磁性材料により形成されると共にプランジャに固定されて外部に駆動力を及ぼすシャフトを含み、第2固定子は、可動子の作動位置を規定するストッパ部と、シャフトを摺動自在にガイドするガイド孔を含み、第1固定子の内周面は、プランジャを非接触にて往復動自在に受け入れ、第2固定子の挿通孔は、シャフトを非接触にて往復動自在に受け入れる、構成を採用してもよい。
【0018】
上記電磁アクチュエータにおいて、第1固定子及び第2固定子に接続されて磁路を形成する外側磁路部材を含む、構成を採用してもよい。
【0019】
上記電磁アクチュエータにおいて、外側磁路部材は、第1固定子に接続されると共にボビンモジュールの周りを囲繞する円筒部材と、第2固定子及び円筒部材に接続される平板部材を含む、構成を採用してもよい。
【0020】
上記電磁アクチュエータにおいて、平板部材は、取付対象物に取り付けるためのフランジ部材を兼ねる、構成を採用してもよい。
【0021】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子には、第1固定子に当接して休止位置に戻る際に衝撃を吸収する緩衝ユニットが設けられている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成をなす電磁アクチュエータによれば、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成しつつ、削り屑等の異物を排除でき、可動子の円滑な動作を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、一方向の斜めから視た外観斜視図である。
図2】一実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、他方向(適用対象物に取り付ける側)から視た外観斜視図である。
図3】一実施形態に係る電磁アクチュエータの分解斜視図である。
図4】一実施形態に係る電磁アクチュエータの斜視断面図である。
図5】一実施形態に係る電磁アクチュエータを、軸線を含む面で切断した断面図である。
図6】一実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュール(ボビン、励磁用のコイル、外側カバー部材、端子)の分解斜視図である。
図7】一実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュールの斜視断面図である。
図8】一実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュールを、軸線を含む面で切断した断面図である。
図9】一実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュールを軸線方向の一方側から視た端面図である。
図10】一実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれる固定子(第1固定子及び第2固定子)を示す側面図である。
図11図10に示す固定子(第1固定子及び第2固定子)を、軸線を含む面で切断した断面図である。
図12】一実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれる可動子の分解斜視図である。
図13】一実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれる可動子を、軸線を含む面で切断した断面図である。
図14】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子、第1環状シール部材、及びボビンモジュールの組付け作業を示す工程図である。
図15】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子、第1環状シール部材、及びボビンモジュールの組付け作業を示す工程図である。
図16】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子、第1環状シール部材、及びボビンモジュールの組付け作業を示す工程図である。
図17】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子、第1環状シール部材、及びボビンモジュールの組付け後において、第1固定子及びボビンモジュールにより画定される連通路を示す断面図である。
図18】第1固定子及びボビンモジュールにより画定される連通路の領域を部分的に拡大した拡大部分断面図である。
図19】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第2固定子、第2環状シール部材、及びボビンモジュールの組付け作業を示す工程図である。
図20】一実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第2固定子、第2環状シール部材、及びボビンモジュールの組付け作業を示す工程図である。
図21】一実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が休止位置に位置する状態を示す部分断面図である。
図22】一実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が作動位置に位置する状態を示す部分断面図である。
図23】一実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が作動位置から休止位置に戻る状態を示す部分断面図である。
図24】他の実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子、第1環状シール部材、及びボビンモジュールの組付け状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る電磁アクチュエータは、外部に駆動力を及ぼす適用対象物として、例えば内燃エンジンのカム切替機構、又は、油路切替弁あるいはその他のオン/オフの切替機構に適用されるものである。
【0025】
一実施形態に係る電磁アクチュエータは、図1ないし図13に示すように、固定子としての第1固定子10及び第2固定子20、ボビンモジュールBm、外側磁路部材としての円筒部材60及び平板部材70、可動子80、緩衝ユニット90、環状シール部材Sr,Sr,Srを備えている。ここで、ボビンモジュールBmは、ボビン30、励磁用のコイル40及び端子41,42、ボビン30及びコイル40を埋設した外側カバー部材50を備えている。
【0026】
第1固定子10は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され磁力線を通す磁路として機能するものであり、図3ないし図5図10図11に示すように、円筒部11、底壁部12、外周嵌合部13、フランジ部14を備えている。
【0027】
円筒部11は、軸線Sを中心とする内周面11aと外周面11bを備えている。内周面11aは、可動子80のプランジャ81を非接触にて軸線S方向に移動自在に収容するべく、軸線Sに垂直な径方向に所定の隙間をおいて可動子80(プランジャ81)の外周面81aと対向する。
外周面11bは、フランジ部14を挟んだ軸線S方向の両側において軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。外周面11bは、組付け状態において、ボビン30の第1貫通孔32及び環状テーパ面32bと非接触の状態に維持される。
【0028】
底壁部12は、円筒部11に連続して軸線Sに垂直な円板状に形成され、円筒部11と協働して可動子80を覆うと共に、可動子80の休止位置を規定するストッパ部として機能する内壁面12aを備えている。
外周嵌合部13は、ボビン30の突出部としての第1位置決め部34に嵌合されるべく、円筒部11の先端側寄りにおいて外周面11bと同一外径で軸線Sを中心とする円筒状の外周面として形成されている。
【0029】
フランジ部14は、第1環状シール部材としての環状シール部材Srを軸線S方向において受ける固定子側受け部として機能し、円筒部11の外周から軸線Sに垂直な径方向に延在する円環板状に形成され、外縁領域において四つの切欠き部14aと、円筒部材60が接合される接合面14bを備えている。
そして、フランジ部14は、円筒部材60と協働してボビンモジュールBmを覆うと共に、円筒部材60に接合されてカシメ処理により固定される。
【0030】
第2固定子20は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され、磁力線を通す磁路として機能すると共にコイル40の通電時に可動子80のプランジャ81を吸引する固定鉄心として機能するものであり、図3ないし図5図10図11に示すように、凹部21、挿通孔22、外周面23、外周嵌合部24、鍔部25、嵌合部26、嵌合部27を備えている。
【0031】
凹部21は、作動位置に移動する可動子80のプランジャ81を受け入れる領域であり、軸線Sを中心とする円筒状の内周面21a、軸線Sに垂直な平坦面をなすストッパ部21bを画定する。
内周面21aは、作動位置に移動する可動子80のプランジャ81を非接触にて受け入れるべく、プランジャ81の先端側外径部81bよりも大きい内径に形成されている。
ストッパ部21bは、浸炭等の硬化処理を施した別部材として形成された後に嵌合固定されたものであり、プランジャ81の端面81cを当接させて作動位置を規定する。また、ストッパ部21bには、可動子80のシャフト82を軸線S方向に摺動自在にガイドするべく、軸線Sを中心とする円筒孔をなすガイド孔21cが形成されている。
このように、硬化処理したストッパ部21bを採用することにより、軟鉄等の材料で形成する場合に比べて、プランジャ81の衝突に対する耐摩耗性及び機械的強度を高めることができ、又、第2固定子20の全体を硬化処理する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0032】
挿通孔22は、軸線Sを中心とする円筒孔として形成され、可動子80のシャフト82を軸線S方向において非接触にて往復動自在に挿通させると共にその先端において外部に駆動力を及ぼす可動子80のシャフト82を露出させる。
また、挿通孔22には、その先端側寄りにおいて軸受Bが嵌合されている。軸受Bは、硬質の金属材料により円筒状に形成されたブッシュであり、可動子80のシャフト82を軸線S方向に摺動自在にガイドするガイド孔Bを画定する。
【0033】
外周面23は、軸線Sを中心とする円筒面であり、ボビン30の第2貫通孔33の内壁面33a及び第2位置決め部35の内径よりも小さい外径に形成されている。すなわち、外周面23は、内壁面33a及び第2位置決め部35と非接触にて第2貫通孔33に挿入可能に形成されると共に第2位置決め部35から外れた領域において内壁面33aと対向するように形成されている。
また、外周面23には、環状溝23a及び外周環状テーパ面23bが形成されている。
すなわち、ボビン30の軸線S方向において他端側開口hから貫通孔h内の奥側に向かうにつれて、外周嵌合部24、環状溝23a、外周環状テーパ面23bの順序で並ぶように形成されている。環状溝23aは、ボビン30の第2貫通孔33の領域において、第2環状シール部材としての環状シール部材Srを嵌め込むべく形成されている。
【0034】
外周環状テーパ面23bは、軸線Sを中心として第1固定子10の円筒部11に向けて先細る円錐面状に形成されている。そして、外周環状テーパ面23bは、コイル40の通電時に生じる磁力線を、第1固定子10の円筒部11から可動子80のプランジャ81を経由した後に、第2固定子20の軸線S方向に流線的に導く役割をなす。
【0035】
外周嵌合部24は、外周面23よりも軸線S方向の外側において、ボビン30の第2位置決め部35に嵌合されるべく、外周面23よりも僅かに大きい外径で軸線Sを中心とする円筒状の外周面として形成されている。
【0036】
環状シール部材Srは、ゴム材料により形成されたOリングであり、環状溝23aに嵌め込まれ、軸線Sに垂直な径方向においてボビン30と第2固定子20の間に介在する。
そして、環状シール部材Srは、外周嵌合部24及び第2位置決め部35が位置する空間領域と外周環状テーパ面23bが位置する空間領域の間に介在して両空間領域の連通を遮断する。
【0037】
鍔部25は、外周嵌合部24よりも大きい外径の円環状部として形成され、環状端面25a及び環状端面25bを画定する。環状端面25aには、平板部材70の環状接合面72が接合される。環状端面25bは、ボビン30の環状テーパ面33bと軸線S方向において非接触にて対向する。
嵌合部26は、平板部材70の中央孔71が密接に嵌合されるべく、軸線Sを中心とする円筒状の外周面として形成されている。
嵌合部27は、適用対象物の嵌合凹部に嵌合されるように形成されており、その外周面において環状溝27a、その内側において挿通孔22よりも大きい内径をなす凹部27bを備えている。環状溝27aには、環状シール部材Srが嵌め込まれる。
環状シール部材Srは、ゴム材料により形成されたOリングであり、環状溝27aに嵌め込まれ、軸線Sに垂直な方向において適用対象物と第2固定子20の間に介在する。
【0038】
ボビンモジュールBmは、図6に示すように、ボビン30、励磁用のコイル40及び端子41,42、及び外側カバー部材50を備えている。
ボビン30は、樹脂材料を用いて形成され、図7ないし図9に示すように、軸線Sを中心とする円筒部31、貫通孔hとしての第1貫通孔32及び第2貫通孔33、突出部としての第1位置決め部34、第2位置決め部35、フランジ部36、フランジ部37を備えている。
【0039】
円筒部31は、その外側において巻回されたコイル40を保持する。
第1貫通孔32は、軸線Sを中心とする円筒状の内壁面32aと、環状テーパ面32bを画定する。そして、第1貫通孔32は、第1固定子10の円筒部11及び外周嵌合部13を非接触にて通すように形成されている。
環状テーパ面32bは、貫通孔hの一端側開口hの内周縁領域において、軸線Sを中心として貫通孔hの内部中央に向けて先細る円錐面の一部をなすように形成されている。
第2貫通孔33は、軸線S方向において第1貫通孔32に隣接すると共に軸線Sを中心とする円筒状でかつ第1貫通孔32の内壁面32aの内径よりも小さい内径をなす内壁面33aと、環状テーパ面33bを画定する。そして、第2貫通孔33は、第2固定子20の外周面23及び外周嵌合部24を非接触にて通すように形成されている。
環状テーパ面33bは、貫通孔hの他端側開口hの内周縁領域において、軸線Sを中心として貫通孔hの内部中央に向けて先細る円錐面の一部をなすように形成されている。
【0040】
第1位置決め部34は、貫通孔hの一端側開口h寄りにおいて、すなわち、第1貫通孔32の領域でかつ環状テーパ面32bから外れた領域において、内壁面32aから径方向内向きに突出して軸線S方向に伸長すると共に周方向に等間隔で配置された複数(ここでは、五つ)の突条部34aとして形成されている。また、第1位置決め部34は、その突出端34aが第2貫通孔33の内壁面33aと面一になるように形成されている。
そして、第1位置決め部34は、第1固定子10の外周嵌合部13を嵌合させることで、第1固定子10を軸線S上に位置決めする、すなわち、内周面11aの中心線を軸線S上に位置合わせするようになっている。
このように、第1位置決め部34が、貫通孔h(第1貫通孔32)の内壁面32aから突出して軸線S方向に伸長する複数の突条部34aとして形成されているため、嵌合作業をより円滑に行うことができる。
【0041】
第2位置決め部35は、貫通孔hの他端側開口h寄りにおいて、すなわち、第2貫通孔33の領域でかつ他端側開口h寄りの領域において、内壁面33aから径方向内向きに突出して軸線S方向に伸長すると共に周方向に等間隔で配置された複数(ここでは、五つ)の突条部35aとして形成されている。
そして、第2位置決め部35は、第2固定子20の外周嵌合部24を嵌合させることで、第2固定子20を軸線S上に位置決めする、すなわち、内周面21a及び挿通孔22並びにガイド孔21c,Bの中心線を軸線S上に位置合わせするようになっている。
このように、第2位置決め部35が、貫通孔h(第2貫通孔33)の内壁面33aから突出して軸線S方向に伸長する複数の突条部35aとして形成されているため、嵌合作業をより円滑に行うことができる。
【0042】
フランジ部36は、軸線Sを中心とする円環板状に形成され、外側カバー部材50を介在させて第1固定子10のフランジ部14と対向するように配置される。また、フランジ部36は、コイル40の端部40a,40bをそれぞれ接続する端子41,42が嵌合される嵌合穴36a,36bを備えている。
フランジ部37は、軸線Sを中心とする円環板状に形成され、外側カバー部材50を介在させて平板部材70と対向するように配置される。また、フランジ部37は、平板部材70に直接当接するべく、軸線Sを中心とする突出円筒部37aを備えている。
【0043】
コイル40は、通電により磁力を生じる励磁用のソレノイドであり、ボビン30の円筒部31に巻回され、その端部40a,40bが巻回部分から引き出されてそれぞれ二つの端子41,42に接続されている。
外側カバー部材50は、ボビン30にコイル40を巻回しかつ端部40a,40bに端子41,42が接続されたモジュール品を型内に配置した状態で、全体を覆うように樹脂材料を用いてモールド(インサート成形)されたものであり、ボビン側受け部としての環状受け部51、環状端部52、コネクタ部53を備えている。
環状受け部51は、軸線S方向の一端側において、すなわち、貫通孔hの一端側開口hの外側に隣接して、第1環状シール部材としての環状シール部材Srが配置されるように形成されている。
環状シール部材Srは、ゴム材料により形成されたOリングであり、環状受け部51に嵌め込まれ、軸線S方向においてボビンモジュールBmの一部をなす外側カバー部材50と第1固定子10のフランジ部14の間に介在する。
環状端部52は、軸線S方向の他端側において、平板部材70に当接するように形成されている。コネクタ部53は、端子41,42を囲繞して内部に露出させるように成形されている。
【0044】
円筒部材60は、磁力線を通す磁路として機能すると共にボビンモジュールBmの周りを囲繞するものであり、軟鉄等からなる鉄板を用いて、切断及びロール加工等の機械加工により軸線Sを中心とする円筒状に形成されている。
そして、円筒部材60は、図1ないし図5に示すように、連結部61、軸線S方向の一端側において円弧状端面62、四つのカシメ片63、切欠き部64、軸線S方向の他端側において円環状端面65を備えている。
【0045】
連結部61は、予め所定形状に切断された鉄板片をロール加工して円筒状に形成した後に凹部と凸状を噛み合わせてパズル状に連結したものである。
円弧状端面62は、第1固定子10に含まれるフランジ部14の接合面14bが密接して接合される領域である。
カシメ片63は、第1固定子10のフランジ部14が円弧状端面62に接合された状態で、フランジ部14を外側から押圧するようにカシメ処理される。
切欠き部64は、ボビンモジュールBmのコネクタ部53を露出させるべく矩形状に形成されている。
円環状端面65は、平板部材70の環状接合面73に密接して接合される領域である。
【0046】
そして、円筒部材60は、円弧状端面62に第1固定子10のフランジ部14の接合面14bが接合された状態で、カシメ片63がカシメ処理されて第1固定子10に固定される。すなわち、円筒部材60は、円弧状端面62を介して第1固定子10に通じる磁路を形成する。ここでは、円筒部材60が切断及びロール加工等により形成されているため、切削や鍛造加工等に比べて低コスト化を達成することができる。
【0047】
平板部材70は、軟鉄等からなる鉄板を用いて、切断等の機械加工により略菱形の輪郭をなすように形成され、図1ないし図5に示すように、中央孔71、中央孔71の周縁領域に位置する環状接合面72、環状接合面72と同心上に位置する環状接合面73、締結用のボルトを通す二つの円孔74を備えている。
中央孔71は、軸線Sを中心とする円孔として形成され、第2固定子20の嵌合部26が密接に嵌合される内径寸法をなす。
環状接合面72は、第2固定子20の鍔部25の環状端面25aと密接に接合される。
環状接合面73は、円筒部材60の円環状端面65と密接に接合される。
【0048】
そして、平板部材70は、中央孔71に第2固定子20の嵌合部26が嵌合されかつ環状接合面72が環状端面25aに接合された状態で、中央孔71の周縁領域にレーザー溶接が施されて第2固定子20に固定される。また、平板部材70は、環状接合面73に円筒部材60の円環状端面65が接合された状態で、円環状端面65の周縁領域にレーザー溶接が施されて円筒部材60に固定される。
すなわち、平板部材70は、第2固定子20と円筒部材60の間に介在して磁路を形成すると共に、適用対象物に取り付けるためのフランジ部材を兼ねるようになっている。
ここでは、円筒部材60と平板部材70とが別体として形成された後に溶接等により一体的に固定されるため、切削や鍛造等により両者を一体形成する場合に比べて低コスト化を達成することができる。
【0049】
可動子80は、図4図5図12図13に示すように、プランジャ81と、プランジャ81に固定されたシャフト82により構成されている。
プランジャ81は、磁力線を通す磁路として機能すると共にコイル40の通電時に軸線S方向に移動する可動鉄心として機能するものであり、磁性材料、例えば快削鋼(SUM)等を用いて、機械加工又は鍛造により有底円筒状に形成されている。
そして、プランジャ81は、外周面81a、先端側外径部81b、端面81c、嵌合孔81d、ガイド内壁面81e、底壁部81f、開口部81gを備えている。
【0050】
外周面81aは、軸線Sを中心とする円筒面であり、第1固定子10の内周面11aと所定隙間をおいて対向する。
先端側外径部81bは、外周面81aと同一外径に形成され、第2固定子20の凹部21内に入り込んだ状態で内周面21aと所定隙間をおいて対向する。
端面81cは、軸線Sに垂直な円環状平面として形成され、作動位置において第2固定子20のストッパ部21bに当接する。
嵌合孔81dは、軸線Sを中心とする円筒孔をなし、シャフト82の嵌合部82aが圧入されるように形成されている。
ガイド内壁面81eは、嵌合孔81dと同一内径で軸線Sを中心とする円筒面をなし、軸線S方向において緩衝ユニット90に含まれるロッド91を摺動自在にガイドする。
底壁部81fは、軸線S方向において、緩衝ユニット90に含まれるロッド91の当接部91cを当接させて抜け落ちを規制する。
開口部81gは、軸線Sを中心とする円孔をなし、ロッド91の突出部91bを外部に突出させる。
ここで、プランジャ81は、第1固定子10の内周面11aに対して隙間をおいて非接触に配置されることにより、コイル40に通電した際の相互の吸引を抑制ないし防止して、第2固定子20との吸引により応答性に優れた円滑な移動を得ることができる。
【0051】
シャフト82は、適用対象物に駆動力を及ぼすものであり、非磁性材料、例えばステンレス鋼等を用いて、軸線S方向に長尺な円柱状に形成され、嵌合部82a、軸部82b、自由端部82c、端面82d、受け部82eを備えている。
嵌合部82aは、プランジャ81の嵌合孔81dに嵌合される領域であり、軸部82bよりも大きい外径に形成されている。
軸部82bは、軸線S方向に伸長して、第2固定子20の挿通孔22に非接触にて挿入されると共に、第2固定子20のガイド孔21c,Bに摺動自在にガイドされる。
自由端部82cは、休止位置において、第2固定子20の挿通孔22から外側に突出して凹部27bに臨むように配置される。
端面82dは、プランジャ81内に臨むように配置され、緩衝ユニット90の緩衝部材93が離脱可能に当接する。
受け部82eは、付勢部材92の一端部92aを受けるべく、軸線Sを中心とする円環状端面として形成されている。
【0052】
緩衝ユニット90は、図4図5図12図13に示すように、可動子80のプランジャ81に保持されると共に可動子80が休止位置に戻る際に衝撃を吸収しつつ可動子80を休止位置に位置付けるものであり、ロッド91、付勢部材92、緩衝部材93を備えている。
【0053】
ロッド91は、ステンレス鋼等を用いて形成され、本体部91a、突出部91b、当接部91c、受け部91d、嵌合部91eを備えている。
本体部91aは、プランジャ81のガイド内壁面81eに摺動自在に接触するべく、軸線Sを中心とする円柱状に形成されている。
突出部91bは、プランジャ81の開口部81gから突出するように配置されて第1固定子10のストッパ部(内壁面12a)に離脱可能に当接し得るべく、軸線Sを中心としかつ本体部91aよりも小径の円柱状に形成されている。
当接部91cは、軸線S方向において、プランジャ81の底壁部81fに離脱可能に当接する。
受け部91dは、付勢部材92の他端部92bを受けるべく、軸線Sを中心とする円環状端面として形成されている。
嵌合部91eは、緩衝部材93の嵌合凹部93aに嵌合されて緩衝部材93を軸線Sに垂直な方向において位置決めするべく、軸線Sを中心とする円柱状に形成されている。
【0054】
付勢部材92は、圧縮型のコイルバネであり、一端部92aがシャフト82の受け部82eに当接し、他端部92bがロッド91の受け部91dに当接した状態で、軸線S方向に圧縮して配置される。そして、付勢部材92は、ロッド91を軸線S方向において底壁部81fに当接するように付勢する。
すなわち、組付けが完了した電磁アクチュエータにおいて、付勢部材92は、ロッド91を第1固定子10に向けて付勢する。
ここで、付勢部材92の付勢力は、適用対象物が及ぼす戻し力よりも大きくなるように設定されている。これにより、付勢部材92は、適用対象物の戻し力に打ち勝って、可動子80を所定の休止位置に位置付ける。
【0055】
緩衝部材93は、衝撃を吸収し得る材料を用いて、例えばゴム材料等により円柱状に形成されており、図12及び図13に示すように、嵌合凹部93a、底面93b、端面93cを備えている。
嵌合凹部93aは、ロッド91の嵌合部91eが嵌合されると共に、嵌合部91eの端面が底面93bに当接するように形成されている。このように、嵌合凹部93aに嵌合部91eが嵌合されることにより、緩衝部材93を予めロッド91に組み付けた状態で、ロッド91と一緒にプランジャ81に挿入することで、組付け作業を容易に行うことができる。また、緩衝部材93を軸線Sに垂直な方向において位置決めすることができ、付勢部材92との干渉を防止することができる。
端面93cは、軸線Sに垂直な平面として形成され、シャフト82の端面82dと対向するように配置される。
【0056】
そして、緩衝部材93は、組付け状態において、すなわち、可動子80が休止位置に位置する休止状態において、端面93cと端面82dの間に僅かな隙間が形成されるように配置される。この隙間は、緩衝部材93やその他の部材の製造上の寸法誤差を吸収するためであり、休止状態で緩衝部材93が圧縮されないようにすることで、所望する緩衝作用を得ることができる。
【0057】
次に、電磁アクチュエータの組付け作業について説明する。
先ず、サブラインにおいて、以下の作業が行われる。
プランジャ81に対して緩衝ユニット90が組み込まれ、その外側からシャフト82が圧入されて、緩衝ユニット90を設けた可動子80が形成される。
また、第2固定子20に対して、ストッパ部21b及び軸受Bが組み込まれる。
また、ボビン30にコイル40が巻回され、コイル40の端部40a,40bにそれぞれ端子41,42が接続されたモジュール品が、型内に配置されて樹脂材料により外側カバー部材50が成形されてボビンモジュールBmが形成される。
【0058】
次に、メインラインにおいて、図3に示すように、第1固定子10、第2固定子20、ボビンモジュールBm、円筒部材60、平板部材70、可動子80、環状シール部材Sr,Sr,Srが準備される。
【0059】
先ず、平板部材70が第2固定子20に固定される。すなわち、平板部材70の中央孔71に第2固定子20の嵌合部26が嵌合され、環状接合面72が鍔部25の環状端面25aに接合される。そして、嵌合部26と中央孔71の境界領域(中央孔71の周縁領域)においてレーザー溶接が施され、第2固定子20に平板部材70が固定される。
続いて、円筒部材60が平板部材70に固定される。すなわち、平板部材70の環状接合面73に円筒部材60の円環状端面65が接合される。そして、円環状端面65と環状接合面73の境界領域(円環状端面65の周縁領域)においてレーザー溶接が施され、平板部材70に円筒部材60が固定される。
【0060】
続いて、図14ないし図16に示すように、第1固定子10がボビンモジュールBmに固定される。すなわち、外側カバー部材50の環状受け部51に第1環状シール部材としての環状シール部材Srが嵌め込まれる。そして、第1固定子10の円筒部11が、ボビン30の第1貫通孔32に対して所定位置まで挿入され、第1固定子10の外周嵌合部13が突出部としての第1位置決め部34に対して嵌合される。
【0061】
これにより、第1固定子10の内周面11aの中心線が軸線S上に位置決めされる。また、環状シール部材Srは、第1固定子10のフランジ部14に押圧されて、ボビン30の第1貫通孔32の内壁面32aと第1固定子10の外周面11bとの間の隙間が外部に連通しないように遮断する。
【0062】
さらに、この組付け状態において、すなわち、外周嵌合部13が突出部としての第1位置決め部34に嵌合された組付け状態において、図16及び図17に示すように、ボビンモジュールBm及び第1固定子10は、第1位置決め部34から外れた貫通孔hの内部空間Isから環状シール部材Srまで連通する五つの連通路Cpを画定するように形成されている。具体的には、連通路Cpは、円筒部11の外周面11b及び外周嵌合部13とボビン30の内壁面32a及び環状テーパ面32bとの間において、五つの突条部34a同士の間の五つの凹み領域により画定される。
また、外周嵌合部13は、嵌合完了の状態で、軸線S方向において第1位置決め部34の途中まで嵌合されるように形成されている。これにより、第1位置決め部34から外れた貫通孔hの内部空間Isと連通路Cpとは、外周嵌合部13により分断されることなく常に連通する状態に維持される。
【0063】
ところで、第1固定子10をボビンモジュールBmに嵌合する嵌合(圧入)工程において、第1位置決め部34の突出端の一部が外周嵌合部13により削り取られて削り屑Cが発生し、削り屑Cが、嵌合作業の際に環状シール部材Srに臨む領域に侵入する場合がある。
そこで、図18に示すように、貫通孔hの他端側開口hからエア噴射ノズルNを内部空間Isに挿入して、いずれかの連通路Cp内に向けて高速のエアを噴出させる。これにより、環状シール部材Srの近傍に侵入した削り屑C等の異物を他の連通路Cpから排出させることができる。必要に応じて、他の連通路Cpに対して吸引ノズルを配置して、侵入した削り屑C等の異物を積極的に吸い出してもよい。
【0064】
続いて、図19に示すように、可動子80及び第2環状シール部材としての環状シール部材Srが、第2固定子20に組み付けられる。すなわち、環状シール部材Srが、第2固定子20の環状溝23aに嵌め込まれる。そして、可動子80のシャフト82が第2固定子20の挿通孔22に挿入されると共にガイド孔21c,Bに摺動自在に挿入され、端面81cがストッパ部21bに当接した状態に保持される。
【0065】
続いて、図20に示すように、第2固定子20が、第1固定子10を組み付けたボビンモジュールBmに固定される。すなわち、円筒部材60及び平板部材70を組み付けた第2固定子20を治具等で固定した状態で、ボビンモジュールBmが円筒部材60の内側に挿入されると共に、ボビン30の第2貫通孔33に対して第2固定子20が挿入され、第2固定子20の外周嵌合部24が第2位置決め部35に対して嵌合される。
そして、ボビンモジュールBmの端面(環状端部52及び突出円筒部37a)が平板部材70に当接し、第1固定子10のフランジ部14(接合面14b)が円筒部材60の円弧状端面62に接合される。
これにより、第2固定子20の内周面21a及び挿通孔22並びにガイド孔21c,Bの中心線が軸線S上に位置決めされる。
【0066】
この嵌合工程においては、軸線S方向の一方側から、第2固定子20の外周面23が貫通孔h内に挿入されるとき、外周面23は、ボビン30の内壁面33a及び第2位置決め部35と非接触にて第2貫通孔33内に挿入され、環状シール部材Srは、環状溝23aに保持された状態で第2位置決め部35の突出端(内縁)を滑るように移動して第2位置決め部35から外れた領域に位置する内壁面33aと密接する。
ところで、外周嵌合部24がボビン30の第2位置決め部35に嵌合(圧入)されるとき、第2位置決め部35の突出端の一部が外周嵌合部24により削り取られて削り屑Cが発生する場合がある。仮に削り屑Cが発生したとしても、削り屑Cは、嵌合方向(圧入方向)において環状シール部材Srよりも後方(手前側)に発生するため、環状シール部材Srよりも内側(奥側)の空間、すなわち、可動子80が移動する空間内に侵入するのを防止することができる。
【0067】
続いて、第1固定子10が円筒部材60に固定される。すなわち、四つのカシメ片63が、第1固定子10のフランジ部14を外側から押圧するようにカシメ処理される。
そして、第2固定子20の嵌合部27の環状溝27aに環状シール部材Srが嵌め込まれる。或は、環状シール部材Srは、第2固定子20を準備する段階で予め環状溝27aに嵌め込まれていてもよい。これにより、電磁アクチュエータの組付けが完了する。
尚、環状シール部材Srは、電磁アクチュエータが適用対象物に適用される際に、嵌合部27の環状溝27aに嵌め込まれてもよい。
上記の組付け作業の手順は一例であって、サブライン及びメインラインの区別なく、一つの組付けラインで作業が行われてもよく、段取り等を含めた手順についてもその他の手法を採用してもよい。
【0068】
この電磁アクチュエータにおいては、適用対象物に適用される前の状態で、可動子80が休止位置(ロッド91が内壁面12aに当接する位置)と作動位置(端面81cがストッパ部21bに当接する位置)の間で軸線S方向に移動自在となっている。
そして、電磁アクチュエータが適用対象物に取り付けられると、適用対象物に設けられた付勢部材の戻し力により、シャフト82が後退するように付勢されて、図4及び図5に示すように、ロッド91の突出部91bが第1固定子10の内壁面12aに当接した休止位置に保持される。
【0069】
次に、電磁アクチュエータが適用対象物に適用された状態での動作について、図21ないし図23を参照しつつ説明する。
先ず、コイル40が通電されない非通電の状態において、図21に示すように、可動子80は、適用対象物が及ぼす戻し力Fにより押し戻されて、ロッド91の突出部91bが底壁部12(内壁面12a)に当接した休止位置に位置付けられる。
【0070】
この休止状態において、コイル40が通電されると、第1固定子10の円筒部11から可動子80のプランジャ81を経由して第2固定子20に流れ込む磁力線(電磁力)が生じて、プランジャ81は第2固定子20に向けて引き寄せられる。そして、図22に示すように、プランジャ81の端面81cが第2固定子20のストッパ部21bに当接する作動位置に移動して停止すると共に、適用対象物に駆動力を及ぼして切替等の動作を行う。
【0071】
一方、この作動状態において、コイル40の通電が断たれると、可動子80は適用対象物が及ぼす戻し力Fにより押し戻されて休止位置に向けて後退する。この後退過程において、先ず、ロッド91の突出部91bが底壁部12(内壁面12a)に当接し、図23に示すように、可動子80は慣性力により所定の休止位置(図23中の二点鎖線)を超えて過移動し、緩衝部材93がロッド91とシャフト82の間で弾性変形する。この移動過程で、シャフト82と一体的に移動するプランジャ81、すなわち可動子80の衝撃力が吸収される。
【0072】
そして、付勢部材92の付勢力により、過移動した可動子80は逆向きに押し戻されて、図21に示すように、所定の休止位置に停止する。
このように、緩衝ユニット90(ロッド91、付勢部材92、緩衝部材93)の作用により、可動子80が休止位置に戻る際の衝撃力が吸収されると共に、可動子80は所定の休止位置に高精度に位置付けされる。
【0073】
上記一実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、ボビンモジュールBmが、固定子(第1固定子10)を軸線S方向に通す貫通孔h(第1貫通孔32)と、貫通孔hの一端側開口hの外側に隣接して形成され第1環状シール部材(環状シール部材Sr)を受けるボビン側受け部(環状受け部51)と、貫通孔hの一端側開口h寄りにおいて内壁面32aから突出して形成された突出部(第1位置決め部34)を含み、固定子(第1固定子10)が、突出部(第1位置決め部34)に嵌合される外周嵌合部13と、ボビン側受け部(環状受け部51)と協働して第1環状シール部材(環状シール部材Sr)を受ける固定子側受け部(フランジ部14)を含み、ボビンモジュールBm及び固定子(第1固定子10)は、外周嵌合部13が突出部(第1位置決め部34)に嵌合された組付け状態において、突出部(第1位置決め部34)から外れた貫通孔hの内部空間Isから第1環状シール部材(環状シール部材Sr)まで連通する連通路Cpを画定するようになっている。
これによれば、嵌合作業の際に削り屑Cが発生して環状シール部材Srに臨む領域に侵入しても、連通路Cp内に向けてエア噴射ノズル等で高速のエアを噴出させて、侵入した削り屑C等の異物を他の連通路Cpから排出させることができる。
すなわち、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成しつつ、削り屑C等の異物を排除でき、可動子80の円滑な動作を保証することができる。
【0074】
また、ボビンモジュールBmが、貫通孔hの一端側開口hの内周縁領域において環状テーパ面32bを含み、突出部としての第1位置決め部34が、軸線S方向において環状テーパ面32bから外れた領域に形成されることにより、嵌合作業の際に、ボビン側受け部(環状受け部51)の近傍で削り屑C等が発生するのを抑制ないし防止することができ、又、侵入した削り屑C等の異物を環状テーパ面32bに沿わせて連通路Cpから外部にスムーズに排出させることができる。
【0075】
また、突出部が、第1位置決め部34として第1貫通孔32の領域において第1貫通孔32の内壁面32aから突出して軸線S方向に伸長する複数の突条部34aを含み、連通路Cpが複数の突条部34a同士の間の凹み領域により画定され、外周嵌合部13が、軸線S方向において第1位置決め部34の途中まで嵌合されることにより、貫通孔hの内部空間Isと連通路Cpとを常に連通する状態に維持することができる。
【0076】
また、突出部が、第1固定子10を軸線S上に位置決めする第1位置決め部34であるため、専用の位置決め部材を採用することなく、第1固定子10を軸線S上に位置決めすることができる。それ故に、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成することができる。特に、ボビン30の貫通孔hの一部を第1位置決め部34として利用するため、嵌合作業を円滑に行うことができ、又、ボビン30における過度の嵌合応力の発生を抑制して、ボビン30の破損等を防止することができる。
【0077】
また、第1固定子10が、可動子80(プランジャ81)を受け入れる内周面11aを画定する円筒部11と、円筒部11の一端側を閉塞すると共に可動子80の休止位置を規定する底壁部12と、円筒部11から径方向に延出するフランジ部14を含み、第2固定子20が、可動子80(シャフト82)を受け入れると共にその先端において可動子80(シャフト82)を露出させる挿通孔22を含み、固定子側受け部として、フランジ部14を採用し、ボビン側受け部として、ボビンモジュールBmの外側カバー部材50に形成された環状受け部51を採用することで、軸線S方向において環状シール部材Srで密閉すると共に弾性付勢力を及ぼしつつボビンモジュールBmを保持することができる。
【0078】
また、可動子80が、磁性材料により形成されたプランジャ81と、非磁性材料により形成されると共にプランジャ81に固定されて外部に駆動力を及ぼすシャフト82を含み、第2固定子20が、可動子80の作動位置を規定するストッパ部21bと、シャフト82を摺動自在にガイドするガイド孔21b,Bを含み、第1固定子10の内周面11aがプランジャ81を非接触にて往復動自在に受け入れ、第2固定子20の挿通孔22がシャフト82を非接触にて往復動自在に受け入れることにより、第1固定子10及び第2固定子20に対して、可動子80を円滑に往復動するように収容することができる。
また、第2固定子20が、可動子80の作動位置を規定するストッパ部21bを含むため、適用対象物の構造に依存することなく、電磁アクチュエータ自体で可動子80の作動位置を規定することができる。
【0079】
以上述べたように、一実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等図りつつ、削り屑C等の異物を排除して、可動子80の円滑な動作を保証することができる。
【0080】
上記実施形態においては、第1環状シール部材としての環状シール部材Srが、軸線S方向においてシール作用を及ぼすべく、環状受け部51とフランジ部14の間に介在する構成を示したが、これに限定されるものではなく、図24に示すように、環状受け部51に替えてフランジ部36から軸線S方向に突出する突出円筒部151をボビン側受け部として採用し、第1固定子10の外周面11bを固定子側受け部として採用し、突出円筒部151の内壁面151aと第1固定子10の外周面11bの間において、第1環状シール部材Sr11が配置され、内部空間Isから第1環状シール部材Sr11まで連通する連通路Cpが画定される構成であってもよい。
【0081】
上記実施形態においては、突出部として、五つの突条部34aからなる第1位置決め部34を示したが、これに限定されるものではなく、その他の形態をなす突出部を採用してもよい。
上記実施形態においては、固定子として第1固定子10及び第2固定子20を含む構成を示したが、これに限定されるものではなく、その他の形態をなす固定子を採用してもよい。
【0082】
以上述べたように、本発明の電磁アクチュエータは、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成しつつ、削り屑等の異物を排除でき、可動子の円滑な動作を保証することができるため、エンジン又は車両に関する種々の切替機構の切替動作のために適用できるのは勿論のこと、その他の分野における切替機構等においても有用である。
【符号の説明】
【0083】
S 軸線
10 第1固定子(固定子)
11 円筒部
11a 内周面
12 底壁部
13 外周嵌合部
14 フランジ部(固定子側受け部)
20 第2固定子(固定子)
21 凹部
21a 内周面
21b ストッパ部
21c ガイド孔
22 挿通孔
B 軸受
ガイド孔
23 外周面
23a 環状溝
24 外周嵌合部
25 鍔部
26,27 嵌合部
Bm ボビンモジュール
30 ボビン
31 円筒部
h 貫通孔
一端側開口
他端側開口
Cp 連通路
,C 削り屑
Is 内部空間
32 第1貫通孔
32a 内壁面
32b 環状テーパ面
33 第2貫通孔
33a 内壁面
33b 環状テーパ面
34 第1位置決め部(突出部)
34a 複数の突条部
35 第2位置決め部
35a 複数の突条部
36,37 フランジ部
40 コイル
40a,40b 端部
41,42 端子
50 外側カバー部材
53 コネクタ部
60 円筒部材(外側磁路部材)
70 平板部材(外側磁路部材、フランジ部材)
80 可動子
81 プランジャ
82 シャフト
90 緩衝ユニット
91 ロッド
92 付勢部材
93 緩衝部材
Sr 環状シール部材(第1環状シール部材)
Sr 環状シール部材(第2環状シール部材)
図1
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