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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162300
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電磁アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/126 20060101AFI20241114BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20241114BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01F7/16 K
H01F7/06 C
H01F7/16 D
H01F7/16 E
H01F7/16 R
H01F7/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077673
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛規
(72)【発明者】
【氏名】工藤 剛史
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA04
5E048AD02
5E048BA01
(57)【要約】
【課題】構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減を図れ、必要な磁路面積を確保でき、可動子の円滑な動作を保証し得る電磁アクチュエータを提供する。
【解決手段】所定の軸線Sに沿って往復動する可動子80、可動子を軸線の方向に往復動自在に収容すると共に軸線の方向に離隔して配置された第1固定子10及び第2固定子20、第1固定子及び第2固定子の周りに配置され励磁用のコイル40が巻回されたボビン30、ボビンの周りを囲繞しかつ第1固定子に接続されて磁路を形成する所定の板厚をなす筒部材60、第2固定子及び筒部材に接続されて磁路を形成する平板部材70を備え、筒部材60は、軸線の方向の一端部において板厚の幅をなす環状端面を含むと共に前記環状端面が前記平板部材に密接した状態で、冶金的接合又は圧入により平板部材に固定されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線に沿って往復動する可動子と、前記可動子を前記軸線の方向に往復動自在に収容すると共に前記軸線の方向に離隔して配置された第1固定子及び第2固定子と、前記第1固定子及び前記第2固定子の周りに配置され励磁用のコイルが巻回されたボビンと、前記ボビンの周りを囲繞しかつ前記第1固定子に接続されて磁路を形成する所定の板厚をなす筒部材と、前記第2固定子及び前記筒部材に接続されて磁路を形成する平板部材と、を備え、
前記筒部材は、前記板厚の幅をなす環状端面を含むと共に前記環状端面が前記平板部材に密接した状態で、冶金的接合又は圧入により前記平板部材に固定されている、
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記平板部材は、前記軸線の方向に開口して環状底面及び環状内壁面を画定する環状凹部を含み、
前記筒部材は、前記環状端面を含む端部領域が前記環状凹部に嵌合され、前記環状端面が前記環状底面に密接しかつ前記環状端面に連続する内周面及び外周面が前記環状内壁面に密接した状態で固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記冶金的接合は、溶接、ろう接、圧接のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記筒部材は、前記板厚をなす平板材を切断及びロール加工して成形された成形品である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記筒部材は、前記軸線の方向の前記環状端面と反対側において、周方向に交互に配置された前記板厚の幅をなす複数の弧状端面及び複数のカシメ片を含み、
前記第1固定子は、前記軸線に垂直な方向に延出する環状フランジ部を含むと共に前記環状フランジ部が前記複数の弧状端面に密接した状態で前記カシメ片がカシメ処理されて前記筒部材に固定されている、
ことを特徴とする請求項1,2,4いずれか一つに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記環状フランジ部の外縁領域には、周方向に複数の切欠き部が形成され、
前記複数のカシメ片は、前記複数の切欠き部にそれぞれ嵌め込んでカシメ処理されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記平板部材は、取付対象物に取り付けるためのフランジ部材を兼ねる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項8】
前記ボビンは、前記第1固定子及び前記第2固定子を通す貫通孔と、前記貫通孔において部分的に形成され前記第1固定子及び前記第2固定子を嵌合させて前記軸線上に位置決めする位置決め部を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項9】
前記位置決め部は、前記軸線の方向において前記貫通孔の一端側開口寄りに形成されて前記第1固定子を位置決めする第1位置決め部と、前記軸線の方向において前記貫通孔の他端側開口寄りに形成されて前記第2固定子を位置決めす第2位置決め部を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項10】
前記位置決め部は、前記貫通孔の内壁面から突出して前記軸線の方向に伸長する複数の突条部を含む、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項11】
前記貫通孔は、前記軸線を中心とする第1貫通孔と、前記軸線の方向において前記第1貫通孔に隣接する共に前記第1貫通孔よりも小径の第2貫通孔を含み、
前記第1位置決め部は、前記第1貫通孔の領域に形成され、
前記第2位置決め部は、前記第2貫通孔の領域に形成されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項12】
前記第1固定子は、前記可動子を受け入れる内周面を画定する円筒部と、前記円筒部の一端側を閉塞すると共に前記可動子の休止位置を規定する底壁部と、前記第1位置決め部に嵌合される外周嵌合部を含み、
前記第2固定子は、前記可動子を受け入れると共にその先端において前記可動子を露出させる挿通孔と、前記第2位置決め部に嵌合される外周嵌合部を含む、
ことを特徴とする請求項9又は11に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項13】
前記可動子は、磁性材料により形成されたプランジャと、非磁性材料により形成されると共に前記プランジャに固定されて外部に駆動力を及ぼすシャフトを含み、
前記第2固定子は、前記シャフトを摺動自在にガイドするガイド孔を含み、
前記第1固定子の前記内周面は、前記プランジャを非接触にて往復動自在に受け入れ、
前記第2固定子の前記挿通孔は、前記シャフトを非接触にて往復動自在に受け入れる、
ことを特徴とする請求項12に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項14】
前記第2固定子は、前記可動子の作動位置を規定するストッパ部を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項15】
前記可動子には、前記第1固定子に当接して休止位置に戻る際に衝撃を吸収する緩衝ユニットが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドの電磁力を駆動力とする電磁アクチュエータに関し、特に、可動子を往復動自在に収容する円筒状の固定子(インナーヨーク)を備えた電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁アクチュエータとしては、所定の軸線方向に往復動するプランジャと、プランジャと一緒に移動するピンと、プランジャ及びピン(可動子)を往復動自在に収容すると共に磁路を形成する二つの部材からなるヨーク(第1固定子)及びコア(第2固定子)と、有底円筒状のハウジングと、ヨーク及びコアの周りに配置されてコイルが巻回されたボビンと、ハウジングの端部においてカシメ処理に固定されたブラケットを備えたソレノイド部を含む電磁弁が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、ハウジングは、端部において、ハウジングの板厚よりも幅の狭い環状端面と、環状端面の周囲を囲むと共にブラケットの取付部を延出させるべく切欠き部が形成されたカシメ部を備え、環状端面にブラケットの円板状部を接合させて、円板状部の外縁領域を囲むようにカシメ部をカシメ処理してハウジングのブラケットを固定している。このようなカシメ手法では、カシメ部の内周壁と円板状部の外周壁との間に隙間が生じ易く、又、環状端面の幅が狭いため、必要な磁路面積を確保することが困難である。
【0004】
また、プランジャ及びピンが円滑に移動できるように、ヨークとコアの位置決め(軸心合わせ)を行う円筒状のカラーを採用している。このように、位置決め専用の部品であるカラーを採用してヨーク及びコアの位置決めを行う構成では、部品点数の増加、構造の複雑化、及び高コスト化を招く。
さらに、ハウジングは有底状であるため、鍛造又は切削により成形する必要があり、高コスト化を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6999089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減を図れ、必要な磁路面積を確保でき、可動子の円滑な動作を保証し得る電磁アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁アクチュエータは、所定の軸線に沿って往復動する可動子と、可動子を軸線の方向に往復動自在に収容すると共に軸線の方向に離隔して配置された第1固定子及び第2固定子と、第1固定子及び第2固定子の周りに配置され励磁用のコイルが巻回されたボビンと、ボビンの周りを囲繞しかつ第1固定子に接続されて磁路を形成する所定の板厚をなす筒部材と、第2固定子及び筒部材に接続されて磁路を形成する平板部材を備え、筒部材は、上記板厚の幅をなす環状端面を含むと共に環状端面が平板部材に密接した状態で、冶金的接合又は圧入により平板部材に固定されている、構成となっている。
【0008】
上記電磁アクチュエータにおいて、平板部材は、軸線の方向に開口して環状底面及び環状内壁面を画定する環状凹部を含み、筒部材は、環状端面を含む端部領域が環状凹部に嵌合され、環状端面が環状底面に密接しかつ環状端面に連続する内周面及び外周面が環状内壁面に密接した状態で固定されている、構成を採用してもよい。
【0009】
上記電磁アクチュエータにおいて、冶金的接合は、溶接、ろう接、圧接のいずれかを含む、構成を採用してもよい。
【0010】
上記電磁アクチュエータにおいて、筒部材は、上記板厚をなす平板材を切断及びロール加工して成形された成形品である、構成を採用してもよい。
【0011】
上記電磁アクチュエータにおいて、筒部材は、軸線の方向の環状端面と反対側において、周方向に交互に配置された上記板厚の幅をなす複数の弧状端面及び複数のカシメ片を含み、第1固定子は、軸線に垂直な方向に延出する環状フランジ部を含むと共に環状フランジ部が複数の弧状端面に密接した状態でカシメ片がカシメ処理されて筒部材に固定されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記電磁アクチュエータにおいて、環状フランジ部の外縁領域には、周方向に複数の切欠き部が形成され、複数のカシメ片は、複数の切欠き部にそれぞれ嵌め込んでカシメ処理されている、構成を採用してもよい。
【0013】
上記電磁アクチュエータにおいて、平板部材は、取付対象物に取り付けるためのフランジ部材を兼ねる、構成を採用してもよい。
【0014】
上記電磁アクチュエータにおいて、ボビンは、第1固定子及び第2固定子を通す貫通孔と、貫通孔において部分的に形成され第1固定子及び第2固定子を嵌合させて軸線上に位置決めする位置決め部を含む、構成を採用してもよい。
【0015】
上記電磁アクチュエータにおいて、位置決め部は、軸線の方向において貫通孔の一端側開口寄りに形成されて第1固定子を位置決めする第1位置決め部と、軸線の方向において貫通孔の他端側開口寄りに形成されて第2固定子を位置決めす第2位置決め部を含む、構成を採用してもよい。
【0016】
上記電磁アクチュエータにおいて、位置決め部は、貫通孔の内壁面から突出して軸線の方向に伸長する複数の突条部を含む、構成を採用してもよい。
【0017】
上記電磁アクチュエータにおいて、貫通孔は、軸線を中心とする第1貫通孔と、軸線の方向において第1貫通孔に隣接する共に第1貫通孔よりも小径の第2貫通孔を含み、第1位置決め部は、第1貫通孔の領域に形成され、第2位置決め部は、第2貫通孔の領域に形成されている、構成を採用してもよい。
【0018】
上記電磁アクチュエータにおいて、第1固定子は、可動子を受け入れる内周面を画定する円筒部と、円筒部の一端側を閉塞すると共に可動子の休止位置を規定する底壁部と、第1位置決め部に嵌合される外周嵌合部を含み、第2固定子は、可動子を受け入れると共にその先端において可動子を露出させる挿通孔と、第2位置決め部に嵌合される外周嵌合部を含む、構成を採用してもよい。
【0019】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子は、磁性材料により形成されたプランジャと、非磁性材料により形成されると共にプランジャに固定されて外部に駆動力を及ぼすシャフトを含み、第2固定子は、シャフトを摺動自在にガイドするガイド孔を含み、第1固定子の内周面は、プランジャを非接触にて往復動自在に受け入れ、第2固定子の挿通孔は、シャフトを非接触にて往復動自在に受け入れる、構成を採用してもよい。
【0020】
上記電磁アクチュエータにおいて、第2固定子は、可動子の作動位置を規定するストッパ部を含む、構成を採用してもよい。
【0021】
上記電磁アクチュエータにおいて、可動子には、第1固定子に当接して休止位置に戻る際に衝撃を吸収する緩衝ユニットが設けられている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成をなす電磁アクチュエータによれば、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成しつつ、必要な磁路面積を確保することができ、可動子の円滑な動作を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、一方向の斜めから視た外観斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、他方向(適用対象物に取り付ける側)から視た外観斜視図である。
図3】第1実施形態に係る電磁アクチュエータの分解斜視図である。
図4】第1実施形態に係る電磁アクチュエータの斜視断面図である。
図5】第1実施形態に係る電磁アクチュエータを、軸線を含む面で切断した断面図である。
図6】第1実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュール(ボビン、励磁用のコイル、外側カバー部材、端子)の分解斜視図である。
図7】第1実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュールの斜視断面図である。
図8】第1実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュールを、軸線を含む面で切断した断面図である。
図9】第1実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれるボビンモジュールを軸線方向の一方側から視た端面図である。
図10】第1実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれる第1固定子及び第2固定子を示す側面図である。
図11図10に示す第1固定子及び第2固定子を、軸線を含む面で切断した断面図である。
図12】第1実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれる可動子の分解斜視図である。
図13】第1実施形態に係る電磁アクチュエータに含まれる可動子を、軸線を含む面で切断した断面図である。
図14】第1実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、筒部材を平板部材に固定する工程を示す斜視断面図である。
図15】第1実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、筒部材を平板部材に固定する工程を示す断面図である。
図16】第1実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子を筒部材に固定する工程を示す斜視断面図である。
図17】第1実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子を筒部材に固定する工程を示す断面図である。
図18】第1実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、第1固定子を筒部材にカシメ処理により固定した状態を示す平面図である。
図19】従来のカシメ処理と本発明のカシメ処理を説明する模式図である。
図20】第1実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が休止位置に位置する状態を示す部分断面図である。
図21】第1実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が作動位置に位置する状態を示す部分断面図である。
図22】第1実施形態に係る電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、可動子が作動位置から休止位置に戻る状態を示す部分断面図である。
図23】第2実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、筒部材と平板部材の接合部分を示す部分断面図である。
図24】第3実施形態に係る電磁アクチュエータにおいて、筒部材と平板部材の接合部分を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る電磁アクチュエータは、外部に駆動力を及ぼす適用対象物として、例えば内燃エンジンのカム切替機構、又は、油路切替弁あるいはその他のオン/オフの切替機構に適用されるものである。
【0025】
第1実施形態に係る電磁アクチュエータは、図1ないし図13に示すように、第1固定子10、第2固定子20、ボビンモジュールBm、筒部材60、平板部材70、可動子80、緩衝ユニット90、環状シール部材Sr,Sr,Srを備えている。
ここで、ボビンモジュールBmは、ボビン30、励磁用のコイル40及び端子41,42、ボビン30及びコイル40を埋設した外側カバー部材50を備えている。
【0026】
第1固定子10は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され磁力線を通す磁路として機能するものであり、図3ないし図5図10図11に示すように、円筒部11、底壁部12、外周嵌合部13、環状フランジ部14を備えている。
【0027】
円筒部11は、軸線Sを中心とする内周面11aと外周面11bを備えている。内周面11aは、可動子80のプランジャ81を非接触にて軸線S方向に移動自在に収容するべく、軸線Sに垂直な径方向に所定の隙間をおいて可動子80(プランジャ81)の外周面81aと対向する。
外周面11bは、環状フランジ部14を挟んだ軸線S方向の両側において軸線Sを中心とする円筒面として形成されている。外周面11bは、組付け状態において、ボビン30の環状テーパ面32bと非接触の状態に維持される。
【0028】
底壁部12は、円筒部11に連続して軸線Sに垂直な円板状に形成され、円筒部11と協働して可動子80を覆うと共に、可動子80の休止位置を規定するストッパ部として機能する内壁面12aを備えている。
外周嵌合部13は、ボビン30の第1位置決め部34に嵌合されるべく、円筒部11の先端側寄りにおいて外周面11bと同一外径で軸線Sを中心とする円筒状の外周面として形成されている。
【0029】
環状フランジ部14は、円筒部11の外周から軸線Sに垂直な径方向に延在する円環板状に形成され、外縁領域において複数(ここでは、四つ)の切欠き部14aと、筒部材60が接合される接合面14bを備えている。
そして、環状フランジ部14は、筒部材60と協働してボビンモジュールBmを覆うと共に、筒部材60に接合されてカシメ処理により固定される。
【0030】
第2固定子20は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され、磁力線を通す磁路として機能すると共にコイル40の通電時に可動子80のプランジャ81を吸引する固定鉄心として機能するものであり、図3ないし図5図10図11に示すように、凹部21、挿通孔22、外周面23、外周嵌合部24、鍔部25、嵌合部26、嵌合部27を備えている。
【0031】
凹部21は、作動位置に移動する可動子80のプランジャ81を受け入れる領域であり、軸線Sを中心とする円筒状の内周面21a、軸線Sに垂直な平坦面をなすストッパ部21bを画定する。
内周面21aは、作動位置に移動する可動子80のプランジャ81を非接触にて受け入れるべく、プランジャ81の先端側外径部81bよりも大きい内径に形成されている。
ストッパ部21bは、浸炭等の硬化処理を施した別部材として形成された後に嵌合固定されたものであり、プランジャ81の端面81cを当接させて作動位置を規定する。また、ストッパ部21bには、可動子80のシャフト82を軸線S方向に摺動自在にガイドするべく、軸線Sを中心とする円筒孔をなすガイド孔21cが形成されている。
このように、硬化処理したストッパ部21bを採用することにより、軟鉄等の材料で形成する場合に比べて、プランジャ81の衝突に対する耐摩耗性及び機械的強度を高めることができ、又、第2固定子20の全体を硬化処理する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0032】
挿通孔22は、軸線Sを中心とする円筒孔として形成され、可動子80のシャフト82を軸線S方向において非接触にて往復動自在に挿通させると共にその先端において外部に駆動力を及ぼす可動子80のシャフト82を露出させる。
また、挿通孔22には、その先端側寄りにおいて軸受Bが嵌合されている。軸受Bは、硬質の金属材料により円筒状に形成されたブッシュであり、可動子80のシャフト82を軸線S方向に摺動自在にガイドするガイド孔Bを画定する。
【0033】
外周面23は、軸線Sを中心とする円筒面であり、ボビン30の内壁面33a及び第2位置決め部35と非接触にて第2貫通孔33に挿入可能に形成されると共に第2位置決め部35から外れた領域において内壁面33aと対向するように形成されている。
また、外周面23には、環状溝23a及び外周環状テーパ面23bが形成されている。
環状溝23aには、環状シール部材Srが嵌め込まれる。
環状シール部材Srは、ゴム材料により形成されたOリングであり、環状溝23aに嵌め込まれ、軸線Sに垂直な径方向においてボビン30の内壁面33aと第2固定子20の間に介在する。
外周環状テーパ面23bは、軸線Sを中心として第1固定子10の円筒部11に向けて先細る円錐面状に形成されている。そして、外周環状テーパ面23bは、コイル40の通電時に生じる磁力線を、第1固定子10の円筒部11から可動子80のプランジャ81を経由した後に、第2固定子20の軸線S方向に流線的に導く役割をなす。
【0034】
外周嵌合部24は、外周面23よりも軸線S方向の外側において、ボビン30の第2位置決め部35に嵌合されるべく、外周面23よりも僅かに大きい外径で軸線Sを中心とする円筒状の外周面として形成されている。尚、外周嵌合部24の外周面の外径は、外周面23の外径と同一であってもよい。
鍔部25は、外周嵌合部24よりも大きい外径の円環状部として形成され、環状端面25a及び環状端面25bを画定する。環状端面25aには、平板部材70の環状接合面72が接合される。環状端面25bは、ボビン30の環状テーパ面33bと軸線S方向において対向する。
嵌合部26は、平板部材70の中央孔71が密接に嵌合されるべく、軸線Sを中心とする円筒状の外周面として形成されている。
嵌合部27は、適用対象物の嵌合凹部に嵌合されるように形成されており、その外周面において環状溝27a、その内側において挿通孔22よりも大きい内径をなす凹部27bを備えている。環状溝27aには、環状シール部材Srが嵌め込まれる。
環状シール部材Srは、ゴム材料により形成されたOリングであり、環状溝27aに嵌め込まれ、軸線Sに垂直な方向において適用対象物と第2固定子20の間に介在する。
【0035】
ボビンモジュールBmは、図6に示すように、ボビン30、励磁用のコイル40及び端子41,42、及び外側カバー部材50を備えている。
ボビン30は、樹脂材料を用いて形成され、図7ないし図9に示すように、軸線Sを中心とする円筒部31、貫通孔hとしての第1貫通孔32及び第2貫通孔33、第1位置決め部34、第2位置決め部35、フランジ部36、フランジ部37を備えている。
【0036】
円筒部31は、その外側において巻回されたコイル40を保持する。
第1貫通孔32は、軸線Sを中心とする円筒状の内壁面32aと、環状テーパ面32bを画定する。そして、第1貫通孔32は、第1固定子10の円筒部11及び外周嵌合部13を非接触にて通すように形成されている。
第2貫通孔33は、軸線S方向において第1貫通孔32に隣接すると共に軸線Sを中心とする円筒状でかつ第1貫通孔32の内壁面32aの内径よりも小さい内径をなす内壁面33aと、環状テーパ面33bを画定する。そして、第2貫通孔33は、第2固定子20の外周面23及び外周嵌合部24を非接触にて通すように形成されている。
【0037】
第1位置決め部34は、貫通孔hの一端側開口h寄りにおいて、すなわち、第1貫通孔32の領域において、内壁面32aから径方向内向きに突出して軸線S方向に伸長すると共に周方向に等間隔で配置された複数(ここでは、五つ)の突条部34aとして形成されている。また、第1位置決め部34は、その突出端34aが第2貫通孔33の内壁面33aと面一になるように形成されている。
そして、第1位置決め部34は、第1固定子10の外周嵌合部13を嵌合させることで、第1固定子10を軸線S上に位置決めする、すなわち、内周面11aの中心線を軸線S上に位置合わせするようになっている。
【0038】
第2位置決め部35は、貫通孔hの他端側開口h寄りにおいて、すなわち、第2貫通孔33の領域において、内壁面33aから径方向内向きに突出して軸線S方向に伸長すると共に周方向に等間隔で配置された複数(ここでは、五つ)の突条部35aとして形成されている。
そして、第2位置決め部35は、第2固定子20の外周嵌合部24を嵌合させることで、第2固定子20を軸線S上に位置決めする、すなわち、内周面21a及び挿通孔22並びにガイド孔21c,Bの中心線を軸線S上に位置合わせするようになっている。
【0039】
フランジ部36は、軸線Sを中心とする円環板状に形成され、外側カバー部材50を介在させて第1固定子10のフランジ部14と対向するように配置される。また、フランジ部36は、コイル40の端部40a,40bをそれぞれ接続する端子41,42が嵌合される嵌合穴36a,36bを備えている。
フランジ部37は、軸線Sを中心とする円環板状に形成され、外側カバー部材50を介在させて平板部材70と対向するように配置される。また、フランジ部37は、平板部材70に直接当接するべく、軸線Sを中心とする突出円筒部37aを備えている。
【0040】
コイル40は、通電により磁力を生じる励磁用のソレノイドであり、ボビン30の円筒部31に巻回され、その端部40a,40bが巻回部分から引き出されてそれぞれ二つの端子41,42に接続されている。
外側カバー部材50は、ボビン30にコイル40を巻回しかつ端部40a,40bに端子41,42が接続されたモジュール品を型内に配置した状態で、全体を覆うように樹脂材料を用いてモールド(インサート成形)されたものであり、環状凹部51、環状端部52、コネクタ部53を備えている。
環状凹部51は、軸線S方向の一端側において、環状シール部材Srが配置されるように形成されている。
環状シール部材Srは、ゴム材料により形成されたOリングであり、環状凹部51に嵌め込まれ、軸線S方向においてボビンモジュールBmの外側カバー部材50と第1固定子10の環状フランジ部14の間に介在する。
環状端部52は、軸線S方向の他端側において、平板部材70に当接するように形成されている。コネクタ部53は、端子41,42を囲繞して内部に露出させるように成形されている。
【0041】
筒部材60は、磁力線を通す磁路として機能するものであり、軟鉄等からなる板厚Tの平板材、例えば鉄板を用いて、切断及びロール加工等の機械加工により軸線Sを中心とする円筒状に形成された成形品である。尚、筒部材60は、円筒状に限るものではなく、ボビン30すなわちボビンモジュールBmの周りを囲繞して固定できるものであれば、円筒状以外の筒状のもでもよい。
そして、筒部材60は、図1ないし図5に示すように、連結部61、軸線S方向の一端側において周方向に交互に配置された複数(ここでは、四つ)の弧状端面62及び複数(ここでは、四つ)のカシメ片63、切欠き部64、軸線S方向の他端側において環状端面65を備えている。
【0042】
連結部61は、予め所定形状に切断された鉄板片をロール加工して円筒状に形成した後に凹部と凸状を噛み合わせてパズル状に連結したものである。
弧状端面62は、板厚Tと同じ幅をなし、軸線Sを中心とする円弧状に形成され、第1固定子10に含まれるフランジ部14の接合面14bが密接して接合される領域である。
カシメ片63は、板厚Tと同じ厚さをなし、第1固定子10の環状フランジ部14が弧状端面62に接合された状態で、切欠き部14aに嵌め込まれて、環状フランジ部14を外側から押圧するようにカシメ処理される。
ここで、カシメ片63の周方向における幅寸法は、機械的強度が確保される限りできるだけ狭く形成され、一方、弧状端面62の周方向における長さは、できるだけ長くするように設定される。
切欠き部64は、ボビンモジュールBmのコネクタ部53を露出させるべく矩形状に形成されている。
環状端面65は、板厚Tと同じ幅をなし、軸線Sを中心とする円環状に形成され、平板部材70の環状接合面73に密接して接合される領域である。
上記構成において、複数の弧状端面62及び複数のカシメ片63は、軸線S方向において、環状端面65と反対側に位置している。
【0043】
そして、筒部材60は、環状端面65が平板部材70の環状接合面73に密接した状態で冶金的接合により平板部材70に固定され、又、弧状端面62が第1固定子10の環状フランジ部14の接合面14bが密接した状態でカシメ片63が切欠き部14aに嵌め込まれてカシメ処理されて第1固定子10に固定される。すなわち、筒部材60は、環状端面65を介して平板部材70に通じる磁路を形成すると共に弧状端面62及びカシメ片63の接触面を介して第1固定子10に通じる磁路を形成する。
【0044】
これによれば、環状端面65が板厚Tと同じ幅をなすため、より幅狭い場合に比べて磁路面積を大きくすることができ、又、複数の弧状端面62が板厚Tと同じ幅をなすため、より幅狭い場合に比べて磁路面積を大きくすることができる。さらに、カシメ片63が切欠き部14aに嵌め込まれてカシメ処理されるため、カシメ処理されたカシメ片63が環状フランジ部14の外側面に密接することができ、この領域を磁路として使用することができ、上述同様に磁路面積を大きくすることができる。
また、筒部材60は、板厚Tをなす平板材を切断及びロール加工して形成された成形品であるため、切削や鍛造加工等に比べて、又、有底筒部材として形成される場合に比べて、低コスト化を達成することができる。
【0045】
平板部材70は、軟鉄等からなる鉄板を用いて、切断等の機械加工により略菱形の輪郭をなすように形成され、図1ないし図5に示すように、中央孔71、中央孔71の周縁領域に位置する環状接合面72、環状接合面72と同心上に位置する環状接合面73、締結用のボルトを通す二つの円孔74を備えている。
中央孔71は、軸線Sを中心とする円孔として形成され、第2固定子20の嵌合部26が密接に嵌合される内径寸法をなす。
環状接合面72は、第2固定子20の鍔部25の環状端面25aと密接に接合される。
環状接合面73は、筒部材60の環状端面65と密接に接合される。
【0046】
そして、平板部材70は、中央孔71に第2固定子20の嵌合部26が嵌合されかつ環状接合面72が環状端面25aに接合された状態で、中央孔71の周縁領域にレーザー溶接が施されて第2固定子20に固定される。また、平板部材70は、環状接合面73に筒部材60の環状端面65が接合された状態で、環状端面65の周縁領域にレーザー溶接が施されて筒部材60に固定される。
すなわち、平板部材70は、第2固定子20と筒部材60の間に介在して磁路を形成すると共に、適用対象物に取り付けるためのフランジ部材を兼ねるようになっている。
ここでは、筒部材60と平板部材70とが別体として形成された後に溶接等により一体的に固定されるため、切削や鍛造等により両者を一体形成する場合に比べて低コスト化を達成することができる。
【0047】
可動子80は、図4図5図12図13に示すように、プランジャ81と、プランジャ81に固定されたシャフト82により構成されている。
プランジャ81は、磁力線を通す磁路として機能すると共にコイル40の通電時に軸線S方向に移動する可動鉄心として機能するものであり、磁性材料、例えば快削鋼(SUM)等を用いて、機械加工又は鍛造により有底円筒状に形成されている。
そして、プランジャ81は、外周面81a、先端側外径部81b、端面81c、嵌合孔81d、ガイド内壁面81e、底壁部81f、開口部81gを備えている。
【0048】
外周面81aは、軸線Sを中心とする円筒面であり、第1固定子10の内周面11aと所定隙間をおいて対向する。
先端側外径部81bは、外周面81aと同一外径に形成され、第2固定子20の凹部21内に入り込んだ状態で内周面21aと所定隙間をおいて対向する。
端面81cは、軸線Sに垂直な円環状平面として形成され、作動位置において第2固定子20のストッパ部21bに当接する。
嵌合孔81dは、軸線Sを中心とする円筒孔をなし、シャフト82の嵌合部82aが圧入されるように形成されている。
ガイド内壁面81eは、嵌合孔81dと同一内径で軸線Sを中心とする円筒面をなし、軸線S方向において緩衝ユニット90に含まれるロッド91を摺動自在にガイドする。
底壁部81fは、軸線S方向において、緩衝ユニット90に含まれるロッド91の当接部91cを当接させて抜け落ちを規制する。
開口部81gは、軸線Sを中心とする円孔をなし、ロッド91の突出部91bを外部に突出させる。
ここで、プランジャ81は、第1固定子10の内周面11aに対して隙間をおいて非接触に配置されることにより、コイル40に通電した際の相互の吸引を抑制ないし防止して、第2固定子20との吸引により応答性に優れた円滑な移動を得ることができる。
【0049】
シャフト82は、適用対象物に駆動力を及ぼすものであり、非磁性材料、例えばステンレス鋼等を用いて、軸線S方向に長尺な円柱状に形成され、嵌合部82a、軸部82b、自由端部82c、端面82d、受け部82eを備えている。
嵌合部82aは、プランジャ81の嵌合孔81dに嵌合される領域であり、軸部82bよりも大きい外径に形成されている。
軸部82bは、軸線S方向に伸長して、第2固定子20の挿通孔22に非接触にて挿入されると共に、第2固定子20のガイド孔21c,Bに摺動自在にガイドされる。
自由端部82cは、休止位置において、第2固定子20の挿通孔22から外側に突出して凹部27bに臨むように配置される。
端面82dは、プランジャ81内に臨むように配置され、緩衝ユニット90の緩衝部材93が離脱可能に当接する。
受け部82eは、付勢部材92の一端部92aを受けるべく、軸線Sを中心とする円環状端面として形成されている。
【0050】
緩衝ユニット90は、図4図5図12図13に示すように、可動子80のプランジャ81に保持されると共に可動子80が休止位置に戻る際に衝撃を吸収しつつ可動子80を休止位置に位置付けるものであり、ロッド91、付勢部材92、緩衝部材93を備えている。
【0051】
ロッド91は、ステンレス鋼等を用いて形成され、本体部91a、突出部91b、当接部91c、受け部91d、嵌合部91eを備えている。
本体部91aは、プランジャ81のガイド内壁面81eに摺動自在に接触するべく、軸線Sを中心とする円柱状に形成されている。
突出部91bは、プランジャ81の開口部81gから突出するように配置されて第1固定子10のストッパ部(内壁面12a)に離脱可能に当接し得るべく、軸線Sを中心としかつ本体部91aよりも小径の円柱状に形成されている。
当接部91cは、軸線S方向において、プランジャ81の底壁部81fに離脱可能に当接する。
受け部91dは、付勢部材92の他端部92bを受けるべく、軸線Sを中心とする円環状端面として形成されている。
嵌合部91eは、緩衝部材93の嵌合凹部93aに嵌合されて緩衝部材93を軸線Sに垂直な方向において位置決めするべく、軸線Sを中心とする円柱状に形成されている。
【0052】
付勢部材92は、圧縮型のコイルバネであり、一端部92aがシャフト82の受け部82eに当接し、他端部92bがロッド91の受け部91dに当接した状態で、軸線S方向に圧縮して配置される。そして、付勢部材92は、ロッド91を軸線S方向において底壁部81fに当接するように付勢する。
すなわち、組付けが完了した電磁アクチュエータにおいて、付勢部材92は、ロッド91を第1固定子10に向けて付勢する。
ここで、付勢部材92の付勢力は、適用対象物が及ぼす戻し力よりも大きくなるように設定されている。これにより、付勢部材92は、適用対象物の戻し力に打ち勝って、可動子80を所定の休止位置に位置付ける。
【0053】
緩衝部材93は、衝撃を吸収し得る材料を用いて、例えばゴム材料等により円柱状に形成されており、図12及び図13に示すように、嵌合凹部93a、底面93b、端面93cを備えている。
嵌合凹部93aは、ロッド91の嵌合部91eが嵌合されると共に、嵌合部91eの端面が底面93bに当接するように形成されている。このように、嵌合凹部93aに嵌合部91eが嵌合されることにより、緩衝部材93を予めロッド91に組み付けた状態で、ロッド91と一緒にプランジャ81に挿入することで、組付け作業を容易に行うことができる。また、緩衝部材93を軸線Sに垂直な方向において位置決めすることができ、付勢部材92との干渉を防止することができる。
端面93cは、軸線Sに垂直な平面として形成され、シャフト82の端面82dと対向するように配置される。
【0054】
そして、緩衝部材93は、組付け状態において、すなわち、可動子80が休止位置に位置する休止状態において、端面93cと端面82dの間に僅かな隙間が形成されるように配置される。この隙間は、緩衝部材93やその他の部材の製造上の寸法誤差を吸収するためであり、休止状態で緩衝部材93が圧縮されないようにすることで、所望する緩衝作用を得ることができる。
【0055】
次に、電磁アクチュエータの組付け作業について説明する。
先ず、サブラインにおいて、以下の作業が行われる。
筒部材60が予め成形品として形成される。すなわち、板厚Tの平板材(鉄板)が所定寸法に切断され、その後ロール加工されて、成形品としての筒部材60が形成される。
また、プランジャ81に対して緩衝ユニット90が組み込まれ、その外側からシャフト82が圧入されて、緩衝ユニット90を設けた可動子80が形成される。
また、第2固定子20に対して、ストッパ部21b及び軸受Bが組み込まれる。
さらに、ボビン30にコイル40が巻回され、コイル40の端部40a,40bにそれぞれ端子41,42が接続されたモジュール品が、型内に配置されて樹脂材料により外側カバー部材50が成形されてボビンモジュールBmが形成される。
【0056】
次に、メインラインにおいて、図3に示すように、第1固定子10、第2固定子20、ボビンモジュールBm、筒部材60、平板部材70、可動子80、環状シール部材Sr,Sr,Srが準備される。
【0057】
先ず、平板部材70が第2固定子20に固定される。すなわち、平板部材70の中央孔71に第2固定子20の嵌合部26が嵌合され、環状接合面72が鍔部25の環状端面25aに接合される。そして、嵌合部26と中央孔71の境界領域(中央孔71の全周縁領域)においてレーザー溶接が施され、第2固定子20に平板部材70が固定される。
【0058】
続いて、図14及び図15に示すように、筒部材60が平板部材70に固定される。すなわち、平板部材70の環状接合面73に筒部材60の環状端面65が密接して保持される。そして、環状端面65と環状接合面73の境界領域(環状端面65の全周縁領域)において、冶金的接合により、例えば、溶接装置Mにより溶接が施され、ここでは、レーザー光が照射されてレーザー溶接が施され、平板部材70に筒部材60が固定される。
尚、冶金的接合としては、溶接に限らず、機械的強度を考慮しつつ、ろう接(ろう付け)、圧接等を選択することができる。
【0059】
続いて、第1固定子10がボビンモジュールBmに固定される。すなわち、外側カバー部材50の環状凹部51に環状シール部材Srが嵌め込まれる。そして、第1固定子10の円筒部11が、ボビン30の第1貫通孔32に対して所定位置まで挿入され、第1固定子10の外周嵌合部13が第1位置決め部34に対して嵌合される。
これにより、第1固定子10の内周面11aの中心線が軸線S上に位置決めされる。また、環状シール部材Srは、第1固定子10のフランジ部14に押圧されて、ボビン30の第1貫通孔32の内壁面32aと第1固定子10の外周面11bとの間の隙間が外部に連通しないように遮断する。
【0060】
続いて、可動子80及び環状シール部材Srが、第2固定子20に組み付けられる。すなわち、環状シール部材Srが、第2固定子20の環状溝23aに嵌め込まれる。そして、可動子80のシャフト82が第2固定子20の挿通孔22に挿入されると共にガイド孔21c,Bに摺動自在に挿入され、端面81cがストッパ部21bに当接した状態に保持される。
【0061】
続いて、図16及び図17に示すように、第2固定子20が、第1固定子10を組み付けたボビンモジュールBmに固定される。すなわち、筒部材60及び平板部材70を組み付けた第2固定子20を治具等で固定した状態で、ボビンモジュールBmが筒部材60の内側に挿入されると共に、ボビン30の第2貫通孔33に対して第2固定子20が挿入され、第2固定子20の外周嵌合部24が第2位置決め部35に対して嵌合される。
これにより、第2固定子20の内周面21a及び挿通孔22並びにガイド孔21c,Bの中心線が軸線S上に位置決めされる。
【0062】
また、ボビンモジュールBmの端面(環状端部52及び突出円筒部37a)が平板部材70に当接し、第1固定子10の環状フランジ部14(接合面14b)が筒部材60の弧状端面62に密接して保持される。
この状態において、環状シール部材Srは、ボビン30の第2貫通孔33の内壁面33aに密接して、ボビン30の第2貫通孔33の内壁面33aと第2固定子20の外周面23との間の隙間が外部に連通しないように遮断する。
【0063】
続いて、第1固定子10が筒部材60に固定される。すなわち、図1及び図18に示すように、四つのカシメ片63が、切欠き部14aに嵌め込まれて、環状フランジ部14を外側から押圧するようにカシメ処理される。これにより、第1固定子10は筒部材60に固定される。
このカシメ処理においては、カシメ片63が、弧状端面62の幅寸法と同一の板厚Tをなすと共に、切欠き部14aに嵌め込まれてカシメ処理されるため、図19に示すように、従来のカシメ処理に比べて、筒部材60と第1固定子10との密接領域を増やすことができ、必要な磁路面積を確保することができる。
【0064】
最後に、第2固定子20の嵌合部27の環状溝27aに環状シール部材Srが嵌め込まれる。或は、環状シール部材Srは、第2固定子20を準備する段階で予め環状溝27aに嵌め込まれていてもよい。これにより、電磁アクチュエータの組付けが完了する。
尚、環状シール部材Srは、電磁アクチュエータが適用対象物に適用される際に、嵌合部27の環状溝27aに嵌め込まれてもよい。
上記の組付け作業の手順は一例であって、サブライン及びメインラインの区別なく、一つの組付けラインで作業が行われてもよく、段取り等を含めた手順についてもその他の手法を採用してもよい。
【0065】
この電磁アクチュエータにおいては、適用対象物に適用される前の状態で、可動子80が休止位置(ロッド91が内壁面12aに当接する位置)と作動位置(端面81cがストッパ部21bに当接する位置)の間で軸線S方向に移動自在となっている。
そして、電磁アクチュエータが適用対象物に取り付けられると、適用対象物に設けられた付勢部材の戻し力により、シャフト82が後退するように付勢されて、図4及び図5に示すように、ロッド91の突出部91bが第1固定子10の内壁面12aに当接した休止位置に保持される。
【0066】
次に、電磁アクチュエータが適用対象物に適用された状態での動作について、図20ないし図22を参照しつつ説明する。
先ず、コイル40が通電されない非通電の状態において、図20に示すように、可動子80は、適用対象物が及ぼす戻し力Fにより押し戻されて、ロッド91の突出部91bが底壁部12(内壁面12a)に当接した休止位置に位置付けられる。
【0067】
この休止状態において、コイル40が通電されると、第1固定子10の円筒部11から可動子80のプランジャ81を経由して第2固定子20に流れ込む磁力線(電磁力)が生じて、プランジャ81は第2固定子20に向けて引き寄せられる。そして、図21に示すように、プランジャ81の端面81cが第2固定子20のストッパ部21bに当接する作動位置に移動して停止すると共に、適用対象物に駆動力を及ぼして切替等の動作を行う。
【0068】
一方、この作動状態において、コイル40の通電が断たれると、可動子80は適用対象物が及ぼす戻し力Fにより押し戻されて休止位置に向けて後退する。この後退過程において、先ず、ロッド91の突出部91bが底壁部12(内壁面12a)に当接し、図22に示すように、可動子80は慣性力により所定の休止位置(図22中の二点鎖線)を超えて過移動し、緩衝部材93がロッド91とシャフト82の間で弾性変形する。この移動過程で、シャフト82と一体的に移動するプランジャ81、すなわち可動子80の衝撃力が吸収される。
【0069】
そして、付勢部材92の付勢力により、過移動した可動子80は逆向きに押し戻されて、図20に示すように、所定の休止位置に停止する。
このように、緩衝ユニット90(ロッド91、付勢部材92、緩衝部材93)の作用により、可動子80が休止位置に戻る際の衝撃力が吸収されると共に、可動子80は所定の休止位置に高精度に位置付けされる。
【0070】
上記第1実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、ボビン30の周りを囲繞しかつ第1固定子10に接続されて磁路を形成する所定の板厚Tをなす筒部材60と、第2固定子20及び筒部材60に接続されて磁路を形成する平板部材70とを備え、筒部材60が、板厚Tの幅をなす環状端面65を含むと共に環状端面65が平板部材70に密接した状態で冶金的接合により平板部材70に固定されている。
これによれば、環状端面65が筒部材60の板厚Tと同じ幅をなすため、より幅狭い場合に比べて磁路面積を大きくすることができる。すなわち、低コスト化等を達成しつつ、必要な磁路面積を確保して、可動子の円滑な動作を保証することができる。
【0071】
また、筒部材60が、軸線S方向の環状端面65と反対側において、周方向に交互に配置された板厚Tの幅をなす複数の弧状端面62及び複数のカシメ片63を含み、第1固定子10が、軸線Sに垂直な方向に延出する環状フランジ部14を含むと共に環状フランジ部14が複数の弧状端面62に密接した状態でカシメ片63がカシメ処理されて筒部材60に固定されている。
これによれば、複数の弧状端面62が筒部材60の板厚Tと同じ幅をなすため、より幅狭い場合に比べて磁路面積を大きくすることができる。すなわち、必要な磁路面積を確保して、可動子の円滑な動作を保証することができる。
【0072】
また、第1固定子10が、環状フランジ部14の外縁領域において周方向に配列された複数の切欠き部14aを含み、複数のカシメ片63が、複数の切欠き部14aにそれぞれ嵌め込んでカシメ処理されているため、カシメ処理されたカシメ片63が環状フランジ部14の外側面に密接することができ、この領域を磁路として使用することができ、上述同様に磁路面積を大きくすることができる。
【0073】
また、ボビン30が、第1固定子10及び第2固定子20を通す貫通孔hと、貫通孔hにおいて部分的に形成され第1固定子10及び第2固定子20を嵌合させて軸線S上に位置決めする位置決め部(第1位置決め部34、第2位置決め部35)を含むため、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成しつつ、第1固定子10及び第2固定子20を軸線S上に位置決めすることができる。
【0074】
また、可動子80が、磁性材料により形成されたプランジャ81と、非磁性材料により形成されると共にプランジャ81に固定されて外部に駆動力を及ぼすシャフト82を含み、第1固定子10の内周面11aがプランジャ81を非接触にて往復動自在に受け入れ、第2固定子20の挿通孔22がシャフト82を非接触にて往復動自在に受け入れ、第2固定子20がシャフト82を摺動自在にガイドするガイド孔21b,Bを含むため、可動子80をより円滑に往復動するように収容することができる。
また、第2固定子20が、可動子80の作動位置を規定するストッパ部21bを含むため、適用対象物の構造に依存することなく、電磁アクチュエータ自体で可動子80の作動位置を規定することができる。
【0075】
以上述べたように、第1実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成しつつ、必要な磁路面積を確保することができ、可動子の円滑な動作を保証することができる。
【0076】
図23は、本発明の第2実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、筒部材60及び平板部材70に替えて筒部材160及び平板部材170を採用した以外は、第1実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態において、平板部材170は、中央孔71、環状接合面72、二つの円孔74、環状凹部173を備えている。
環状凹部173は、軸線S方向に開口すると共にその断面が深さ寸法Dの凹溝をなし、環状底面173a及び環状内壁面173b,173cを画定している。
また、筒部材160は、軸線S方向において、その端部領域Aが深さ寸法Dだけ長く形成された以外は筒部材60と同一であり、連結部61、複数(ここでは、四つ)の弧状端面62及び複数(ここでは、四つ)のカシメ片63、切欠き部64、環状端面65を備えている。
【0077】
そして、筒部材160は、環状端面65を含む端部領域Aが、環状凹部173に嵌合され、環状端面65が環状底面173aに密接し、環状端面65に連続する内周面160a及び外周面160bがそれぞれ環状内壁面173b,173cに密接した状態で、圧入により平板部材170に固定されている。
尚、必要に応じて、環状凹部173から露出した端部領域Aの内周縁領域及び外周縁領域において、冶金的接合、例えば溶接(ここでは、レーザー溶接)、ろう接(ろう付け)等が施されてもよい。
【0078】
第2実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、筒部材160の端部領域Aが環状凹部173に嵌合(圧入)されるため、平板部材170から筒部材160に通じる磁路面積が大きくなり、必要な磁路面積を確保することができ、可動子の円滑な動作を保証することができる。
【0079】
図24は、本発明の第3実施形態に係る電磁アクチュエータを示すものであり、平板部材170に替えて平板部材270を採用した以外は、第2実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第3実施形態において、平板部材270は、中央孔71、環状接合面72、二つの円孔74、環状凹部173、二つの環状V溝275,276を備えている。
環状V溝275,276は、ポンチ等の工具を用いて押圧されることにより、カシメ作用を及ぼす領域である。
【0080】
そして、筒部材160は、環状端面65を含む端部領域Aが、環状凹部173に嵌合され、環状端面65が環状底面173aに密接し、環状端面65に連続する内周面160a及び外周面160bがそれぞれ環状内壁面173b,173cに密接した状態で、圧入により平板部材270に固定されている。
続いて、ポンチ等を用いて、環状V溝275,276の斜面が押圧され、環状凹部173の内周側及び外周側の肉部分が端部領域Aに寄せ付けられて、カシメ処理と同様の締め付けがなされる。
尚、必要に応じて、環状凹部173から露出した端部領域Aの内周縁領域及び外周縁領域において、冶金的接合、例えば溶接(ここでは、レーザー溶接)、ろう接(ろう付け)等が施されてもよい。
【0081】
第3実施形態に係る電磁アクチュエータによれば、筒部材160の端部領域Aが環状凹部173に嵌合(圧入)されるため、平板部材270から筒部材160に通じる磁路面積が大きくなり、必要な磁路面積を確保することができ、可動子の円滑な動作を保証することができる。また、筒部材160と平板部材170との固定状態をより堅固にすることができる。
【0082】
上記実施形態においては、筒部材として円筒状の筒部材60,160を示したが、これに限定されるものではなく、ボビン30すなわちボビンモジュールBmを囲繞して固定できる構造であれば、円筒以外の形態を採用してもよい。
上記実施形態においては、平板部材として、略菱形状をなす平板部材70,170,270を示したが、これに限定されるものではなく、その他の形態をなす平板部材を採用してもよい。
【0083】
上記実施形態においては、第1固定子として第1固定子10及び第2固定子として第2固定子20を示したが、これに限定されるものではなく、その他の形態をなす第1固定子及び第2固定子を採用してもよい。
また、上記実施形態においては、ボビンとして、ボビン30を示したが、貫通孔hにおいて部分的に形成された位置決め部を備えるものであれば、その他の形態をなすボビンを採用してもよい。
【0084】
以上述べたように、本発明の電磁アクチュエータは、構造の簡素化、低コスト化、部品点数の削減等を達成しつつ、必要な磁路面積を確保でき、可動子の円滑な動作を保証することができるため、エンジン又は車両に関する種々の切替機構の切替動作のために適用できるのは勿論のこと、その他の分野における切替機構等においても有用である。
【符号の説明】
【0085】
S 軸線
10 第1固定子
11 円筒部
11a 内周面
12 底壁部
13 外周嵌合部
14 環状フランジ部
14a 切欠き部
14b 接合面
20 第2固定子
21 凹部
21a 内周面
21b ストッパ部
21c ガイド孔
22 挿通孔
B 軸受
ガイド孔
23 外周面
23a 環状溝
24 外周嵌合部
25 鍔部
26,27 嵌合部
Bm ボビンモジュール
30 ボビン
31 円筒部
h 貫通孔
一端側開口
他端側開口
32 第1貫通孔
32a 内壁面
33 第2貫通孔
33a 内壁面
34 第1位置決め部(位置決め部)
34a 複数の突条部
35 第2位置決め部(位置決め部)
35a 複数の突条部
36,37 フランジ部
40 コイル
40a,40b 端部
41,42 端子
50 外側カバー部材
53 コネクタ部
60 筒部材(外側磁路部材)
61 連結部
62 弧状端面
63 カシメ片
64 切欠き部
65 環状端面
70 平板部材(フランジ部材)
80 可動子
81 プランジャ
82 シャフト
90 緩衝ユニット
91 ロッド
92 付勢部材
93 緩衝部材
160 筒部材
A 端部領域
160a 内周面
160b 外周面
170 平板部材
173 環状凹部
173a 環状底面
173b,173c 環状内壁面
270 平板部材
275,276 環状V溝
図1
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図24