(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162301
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光アイソレータ及びレーザー照射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/28 20060101AFI20241114BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B27/28 A
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077675
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古山 忠仁
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H149AA24
2H149AB01
2H149BA02
2H149DA06
2H199AA14
2H199AA23
2H199AA34
2H199AA82
(57)【要約】
【課題】筐体内における反射戻り光の散乱を抑制することができ、信頼性に優れる、光アイソレータを提供する。
【解決手段】光軸方向Xにおいて光入射側に設けられている、第1の偏光子2と、光軸方向Xにおいて光出射側に設けられている、第2の偏光子3と、第1の偏光子2及び第2の偏光子3の間に配置されている、ファラデー回転子4と、第1の偏光子2、第2の偏光子3、及びファラデー回転子4を収納している、筐体6と、を有する光アイソレータ1であって、第1の偏光子2は、第2の偏光子3及びファラデー回転子4を透過した反射戻り光Aが光軸方向Xとは異なる方向に反射するように構成されており、光軸方向Xとは異なる方向に反射した反射戻り光Aの光路には、反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収する吸収部材5が設けられている、光アイソレータ1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向において光入射側に設けられている、第1の偏光子と、
前記光軸方向において光出射側に設けられている、第2の偏光子と、
前記第1の偏光子及び前記第2の偏光子の間に配置されている、ファラデー回転子と、
前記第1の偏光子、前記第2の偏光子、及び前記ファラデー回転子を収納している、筐体と、を有する光アイソレータであって、
前記第1の偏光子は、前記第2の偏光子及び前記ファラデー回転子を透過した反射戻り光が前記光軸方向とは異なる方向に反射するように構成されており、
前記光軸方向とは異なる方向に反射した反射戻り光の光路には、前記反射戻り光の少なくとも一部を吸収する吸収部材が設けられている、光アイソレータ。
【請求項2】
前記吸収部材は、前記反射戻り光の光路において、前記第1の偏光子と、前記筐体の壁部との間に配置されている、請求項1に記載の光アイソレータ。
【請求項3】
前記吸収部材が、前記反射戻り光を減衰させる、光減衰面を有する、請求項1又は2に記載の光アイソレータ。
【請求項4】
前記光減衰面が、前記反射戻り光の一部を吸収し、かつ吸収されなかった前記反射戻り光を複数回反射させるように、配置されている、請求項3に記載の光アイソレータ。
【請求項5】
前記吸収部材が、複数の前記光減衰面を有し、
複数の前記光減衰面が、前記反射戻り光の一部を吸収し、かつ吸収されなかった前記反射戻り光を複数回反射させるように、配置されている、請求項3に記載の光アイソレータ。
【請求項6】
前記吸収部材が、溝部又は穴部を有し、
前記吸収部材の溝部又は穴部における内壁面が、前記光減衰面であり、
前記溝部又は穴部が、前記反射戻り光の進行方向に向かって幅が狭くなる、テーパー形状を有する、請求項3に記載の光アイソレータ。
【請求項7】
前記吸収部材が、溝部又は穴部を有し、
前記吸収部材の溝部又は穴部における内壁面が、前記光減衰面であり、
前記溝部又は穴部は、前記反射戻り光の進行方向に向かって拡幅する、逆テーパー形状を有する、請求項3に記載の光アイソレータ。
【請求項8】
前記吸収部材が、
部材本体と、
前記部材本体の少なくとも一部を覆っており、前記反射戻り光の少なくとも一部を吸収する、表面処理層と、
を有し、
前記表面処理層の表面が、前記光減衰面である、請求項3に記載の光アイソレータ。
【請求項9】
前記表面処理層が、非晶質酸化アルミニウム、クロム、ニッケル、又はカーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載の光アイソレータ。
【請求項10】
前記表面処理層の表面処理が、アルマイト処理、めっき処理、蒸着処理、吹き付け塗装処理、又は刷毛塗り塗装処理である、請求項8に記載の光アイソレータ。
【請求項11】
前記吸収部材が、ガラスにより構成されている、請求項1又は2に記載の光アイソレータ。
【請求項12】
前記筐体の内壁面に表面処理層が設けられており、
前記吸収部材が、前記表面処理層により構成されている、請求項1又は2に記載の光アイソレータ。
【請求項13】
レーザー光を発生させる、光源と、
請求項1又は2に記載の光アイソレータと、
を備える、レーザー照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アイソレータ及び該光アイソレータを用いたレーザー照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光アイソレータは、光を一方向だけに伝搬し、反射して戻る光を阻止する磁気光学素子である。光アイソレータは、光通信システムやレーザー加工システム等に用いられるレーザー照射装置に使用されている。
【0003】
このような光アイソレータとして、下記の特許文献1には、ファラデー回転子と、ファラデー回転子の光軸両端面に配する偏光子とを備える、光アイソレータが開示されている。このような光アイソレータでは、入射した光を、入射面側の偏光子を通過して偏光し、ファラデー回転子を通過して偏光面を45°だけ回転し、出射面側の偏光子を通過して出射する。また、戻り光が出射面側に到達した場合、戻り光は、出射面側の偏光子で偏光され、ファラデー回転子を通過して45°だけ回転されて入射面側の偏光子に到達するが、この光の偏光面が入射面側の偏光子の透過偏光方向と直交するので、戻り光が入射面側から出射されることがなく除去できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような光アイソレータにおいて、偏光子やファラデー回転子等の部材は、筐体内に配置されて用いられる。このとき、入射面側の偏光子に到達した反射戻り光は、入射面側の偏光子で反射するので、反射した反射戻り光が、筐体内で散乱して迷光となり、アイソレーション特性等の特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明の目的は、筐体内における反射戻り光の散乱を抑制することができ、信頼性に優れる、光アイソレータ及び該光アイソレータを用いたレーザー照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する光アイソレータ及びレーザー照射装置の各態様について説明する。
【0008】
本発明の態様1に係る光アイソレータは、光軸方向において光入射側に設けられている、第1の偏光子と、前記光軸方向において光出射側に設けられている、第2の偏光子と、前記第1の偏光子及び前記第2の偏光子の間に配置されている、ファラデー回転子と、前記第1の偏光子、前記第2の偏光子、及び前記ファラデー回転子を収納している、筐体と、を有する光アイソレータであって、前記第1の偏光子は、前記第2の偏光子及び前記ファラデー回転子を透過した反射戻り光が前記光軸方向とは異なる方向に反射するように構成されており、前記光軸方向とは異なる方向に反射した反射戻り光の光路には、前記反射戻り光の少なくとも一部を吸収する吸収部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
態様2の光アイソレータでは、態様1において、前記吸収部材が、前記反射戻り光の光路において、前記第1の偏光子と、前記筐体の壁部との間に配置されていることが好ましい。
【0010】
態様3の光アイソレータでは、態様1又は態様2において、前記吸収部材が、前記反射戻り光を減衰させる、光減衰面を有していてもよい。
【0011】
態様4の光アイソレータでは、態様3において、前記光減衰面が、前記反射戻り光の一部を吸収し、かつ吸収されなかった前記反射戻り光を複数回反射させるように、配置されていてもよい。
【0012】
態様5の光アイソレータでは、態様3又は態様4において、前記吸収部材が、複数の前記光減衰面を有し、複数の前記光減衰面が、前記反射戻り光の一部を吸収し、かつ吸収されなかった前記反射戻り光を複数回反射させるように、配置されていることが好ましい。
【0013】
態様6の光アイソレータでは、態様3から態様5のいずれか1つの態様において、前記吸収部材が、溝部又は穴部を有し、前記吸収部材の溝部又は穴部における内壁面が、前記光減衰面であり、前記溝部又は穴部が、前記反射戻り光の進行方向に向かって幅が狭くなる、テーパー形状を有していてもよい。
【0014】
態様7の光アイソレータでは、態様3から態様6のいずれか1つの態様において、前記吸収部材が、溝部又は穴部を有し、前記吸収部材の溝部又は穴部における内壁面が、前記光減衰面であり、前記溝部又は穴部が、前記反射戻り光の進行方向に向かって拡幅する、逆テーパー形状を有していてもよい。
【0015】
態様8の光アイソレータでは、態様3から態様7のいずれか1つの態様において、前記吸収部材が、部材本体と、前記部材本体の少なくとも一部を覆っており、前記反射戻り光の少なくとも一部を吸収する、表面処理層とを有し、前記表面処理層の表面が、前記光減衰面であってもよい。
【0016】
態様9の光アイソレータでは、態様8において、前記表面処理層が、非晶質酸化アルミニウム、クロム、ニッケル、及びカーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0017】
態様10の光アイソレータでは、態様8又は態様9において、前記表面処理層の表面処理が、アルマイト処理、めっき処理、蒸着処理、又は吹き付け、刷毛塗りなどの塗装処理であることが好ましい。
【0018】
態様11の光アイソレータでは、態様1又は態様2において、前記吸収部材が、ガラスにより構成されていてもよい。
【0019】
態様12の光アイソレータでは、態様1又は態様2において、前記筐体の内壁面に表面処理層が設けられており、前記吸収部材が、前記表面処理層により構成されていてもよい。
【0020】
本発明の態様13に係るレーザー照射装置は、レーザー光を発生させる、光源と、態様1から態様12のいずれか1つの態様の光アイソレータとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、筐体内における反射戻り光の散乱を抑制することができ、信頼性に優れる、光アイソレータ及び該光アイソレータを用いたレーザー照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータを示す模式的斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う模式的断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す断面の簡略図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向と直交する方向に沿う模式的断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【
図5】
図5(a)は、第1の変形例の光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第2の変形例の光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【
図7】
図7は、第3の変形例の光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【
図8】
図8は、第4の変形例の光アイソレータの光軸方向に沿う断面の簡略図である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の第2の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う断面の簡略図であり、
図9(b)は、
図9(a)の光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す模式的斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う断面の簡略図である。
【
図11】
図11(a)は、本発明の第4の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う模式的断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す断面の簡略図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係るレーザー照射装置の光軸方向に沿う断面の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0024】
[光アイソレータ]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータを示す模式的斜視図である。
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う模式的断面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示す断面の簡略図である。また、
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向と直交する方向に沿う模式的断面図である。なお、
図2(a)においては、図示の都合上、吸収部材5の位置のみを示しており、その形状は省略している。吸収部材5の形状は、
図2(b)や後述の
図4(a)及び(b)で詳細に示している。
【0025】
図2(a)及び(b)に示すように、光アイソレータ1は、第1の偏光子2と、第2の偏光子3と、ファラデー回転子4と、吸収部材5と、筐体6とを備える。第1の偏光子2は、光軸方向Xにおいて、光入射側に設けられている。第2の偏光子3は、光軸方向Xにおいて、光出射側に設けられている。ファラデー回転子4は、第1の偏光子2及び第2の偏光子3の間に設けられている。
【0026】
ファラデー回転子4は、磁石7と、ファラデー素子8とを有する。磁石7は、角筒状の形状を有する。また、磁石7は、貫通孔7aを有し、この貫通孔7a内を光が通過する。なお、光が磁石7の貫通孔7aを通過する方向を光軸方向Xとする。また、ファラデー素子8は、光を透過する常磁性体からなる。
【0027】
磁石7は、第1の端面7b及び第2の端面7cと、側面7dとを有する。第1の端面7b及び第2の端面7cは、光軸方向Xにおいて互いに対向している。第1の端面7bは、磁石7の光軸方向Xにおける一方側端面である。第2の端面7cは、磁石7の光軸方向Xにおける他方側端面である。第1の端面7b及び第2の端面7cに、側面7dが接続されている。また、第1の端面7b及び第2の端面7cの双方において、貫通孔7aが開口している。
【0028】
図3に示すように、磁石7の貫通孔7aにおける光軸方向Xと直交する方向に沿う断面形状は、正方形である。なお、貫通孔7aの断面形状は、上記のような正方形を含む略矩形状に限定されず、円形を含む略円形状等であってもよい。なお、磁石7の形状も角筒状に限定されず、例えば円筒状等であってもよい。
【0029】
磁石7の貫通孔7a内には、管部材9が設けられている。本実施形態では、管部材9は金属パイプである。管部材9は、円筒状の形状を有する。また、管部材9は、貫通孔9aを有し、その貫通孔9a内を光が通過する。なお、管部材9の貫通孔9aにおける光軸方向Xと直交する方向に沿う断面形状は、円形である。本実施形態では、管部材9の材料としてSUS304が用いられている。もっとも、管部材9の形状や材料は、特に限定されない。
【0030】
管部材9の貫通孔9a内に、ファラデー素子8が配置されている。なお、管部材9は必ずしも設けられていなくともよい。この場合、磁石7の貫通孔7a内にファラデー素子8が設けられていればよい。
【0031】
図2(a)及び(b)に戻り、磁石7の第1の端面7b側に、第1の偏光子2が設けられている。磁石7の第2の端面7c側に、第2の偏光子3が設けられている。第1の偏光子2及び第2の偏光子3は、光軸方向Xにおいてファラデー素子8を挟むように設けられており、かつ互いに対向するように設けられている。
【0032】
光アイソレータ1では、光が第1の偏光子2側から入射し、ファラデー素子8を通り、第2の偏光子3側から出射される。第1の偏光子2及び第2の偏光子3は、それぞれ、光透過軸を有する。第1の偏光子2を通った光は、光透過軸に応じた直線偏光となる。ファラデー素子8は、直線偏光の偏光面を回転させる。ファラデー素子8が偏光面を回転させる角度が、回転角である。第2の偏光子3における光透過軸の第1の偏光子2における光透過軸に対する角度は、回転角と等しくされている。
【0033】
本実施形態において、第1の偏光子2及び第2の偏光子3はいずれも、偏光ビームスプリッタ(PBS)である。よって、P偏光またはS偏光が、第1の偏光子2を通りファラデー素子8に入射する。第2の偏光子3は、P偏光及びS偏光のうち、ファラデー素子8に入射する方を、光軸方向Xに通過させるように配置されている。もっとも、第1の偏光子2及び第2の偏光子3は、PBSに限定されるものではない。PBSとしては、例えば、2つの三角プリズムが、偏光分離膜を介して接合されてなる、偏光ビームスプリッタを用いることができる。プリズムの材料としては、例えば、ガラスを用いることができる。
【0034】
また、ファラデー素子8としては、常磁性体を用いることができる。常磁性体としては、ガラス材を用いることが好ましい。ガラス材からなるファラデー素子8は、単結晶材料のように欠陥等によるベルデ定数の変動や消光比の低下が少なく、接着剤からの応力の影響も少ないため、安定したベルデ定数と高い消光比を保つことができる。なお、ファラデー素子8には、ガラス材以外の常磁性体を用いることもできる。
【0035】
ファラデー素子8に用いるガラス材は、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tmから選択される少なくとも1種の希土類元素を含有することが好ましい。特にTbを含有することが好ましい。なお、ガラス材中においてTbは3価や4価の状態で存在するが、本明細書ではこれら全てをTb2O3に換算した値として表す。
【0036】
本実施形態において、第1の偏光子2、第2の偏光子3、及びファラデー回転子4は、筐体6内に設けられている。筐体6の材料としては、例えば、アルミニウム合金を用いることができる。もっとも、筐体6の材料は、特に限定されない。
【0037】
本実施形態において、光アイソレータ1に入射する光は、第1の偏光子2を通過し、直線偏光となって、ファラデー素子8に入射する。入射した光はファラデー素子8により45°回転し、第2の偏光子3を通過する。第2の偏光子3を通過した光の一部が反射戻り光Aとなり、偏光面が45°の角度で第2の偏光子3を通過する。第2の偏光子3を通過した反射戻り光Aは、ファラデー素子8により、さらに45°回転される。これにより、反射戻り光Aの偏光面は、第1の偏光子2の光透過軸に対して90°の直交偏光面となる。そのため、反射戻り光Aは第1の偏光子2を透過できず、遮断される。なお、第1の偏光子2では、反射戻り光Aが反射され、光軸方向Xとは異なる方向(本実施形態においては光軸方向Xに直交する方向)に進行する。このようにして、第1の偏光子2では、レーザー光の反射戻り光Aを遮断することができる。
【0038】
図2(b)に示すように、光アイソレータ1では、第1の偏光子2で反射した反射戻り光Aの光路に、吸収部材5が設けられている。吸収部材5は、第1の偏光子2で反射した反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収することができる部材である。本実施形態において、吸収部材5は、第1の偏光子2と筐体6の壁部との間に配置されている。
【0039】
本実施形態の光アイソレータ1は、上記の構成を備えるので、筐体6内における反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、信頼性に優れている。
【0040】
従来、光アイソレータにおいて、偏光子やファラデー回転子等の部材は、筐体内に配置されて用いられる。このとき、入射面側の偏光子に到達した反射戻り光は、入射面側の偏光子で反射するので、反射した反射戻り光が、筐体内で散乱し、アイソレーション特性等に悪影響を及ぼすことがあり、光アイソレータの信頼性を十分に高められないという問題があった。
【0041】
これに対して、本実施形態の光アイソレータ1では、第1の偏光子2で反射した反射戻り光Aの光路に、反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収することのできる吸収部材5が設けられている。そのため、光アイソレータ1では、反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、アイソレーション特性等の特性に悪影響を及ぼし難くすることができる。従って、光アイソレータ1は、信頼性に優れている。
【0042】
図4(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【0043】
図4(a)に示すように、本実施形態の吸収部材5は、略四角柱状のブロックに、略V字状の溝部11が設けられた構造を有している。なお、
図4(a)では、吸収部材5の形状を説明するために、吸収部材5を反転させて図示しているが、実際は、
図2(b)に示すように、吸収部材5の溝部11が、第1の偏光子2に面するように配置されるものとする。
【0044】
また、
図4(b)に示すように、吸収部材5の溝部11は、反射戻り光Aの進行方向に向かって幅が狭くなる、テーパー形状を有している。また、溝部11を構成する内壁面5a、5bは、反射戻り光Aの一部を吸収させ、かつ吸収されなかった反射戻り光Aを反射させる、光減衰面である。
【0045】
本実施形態において、吸収部材5は、部材本体と、表面処理層とを有する。表面処理層は、反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収する層である。本実施形態では、部材本体を表面処理層で覆うことにより、光減衰面である内壁面5a、5bを構成している。
【0046】
本実施形態のように、表面処理層は、少なくとも内壁面5a、5bにおいて、部材本体を覆うように設けられていることが好ましい。なお、表面処理層は、反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収することができる限りにおいて、内壁面5a、5bの一部を覆っていてもよく、全部を覆っていてもよい。また、表面処理層は、内壁面5a、5b以外の部材本体の表面を覆っていてもよい。従って、表面処理層は、部材本体の表面における全面を覆っていてもよい。
【0047】
部材本体としては、例えば、アルミニウムブロック、SUS304等を用いることができる。また、表面処理層は、例えば、非晶質酸化アルミニウム、クロム、ニッケル、又はカーボン等を含有することができる。また、表面処理層の表面処理としては、特に限定されず、アルマイト処理、めっき処理、蒸着処理、又は吹き付け、刷毛塗りなどの塗装処理であることが好ましい。
【0048】
なお、具体的に、表面処理層は、使用するレーザー光の波長により適宜選定することができる。例えば、アルマイト処理による黒色の表面処理層を用いた場合、可視波長域で、反射戻り光Aの吸収率を高めることができる。なお、アルマイト処理による可視波長域(400nm~650nm)の反射率は、3%~10%程度である。また、アルマイト処理による黒色の表面処理層は、通常、より波長の大きい赤外波長域での反射率が高いため、赤外波長域で好適に使用することが難しいが、例えば、ツヤ消等の処理をすることにより、赤外波長域での反射率を低下させて用いることができる。ツヤ消等の処理をすることにより、例えば、通常のツヤ有アルマイト処理で波長1030nmの反射率が60%程度であるところ、反射率を5%~50%の範囲まで低減することができる。
【0049】
また、クロムめっきや、無電解ニッケルめっき等により黒色の表面処理をした場合は、可視波長域に加えて赤外波長域でも、反射戻り光Aの吸収率を高めることができる。なお、クロムめっき処理による可視波長域(400nm~650nm)の反射率は、3%~10%程度であり、また、赤外波長域(800nm~1400nm)の反射率は、3%~10%程度である。また、無電解ニッケルめっき処理による可視波長域(400nm~650nm)の反射率は、2%~10%程度であり、また、赤外波長域(800nm~1400nm)の反射率は、4%~15%程度である。
【0050】
表面処理層の厚みは、例えば、1μm以上、100μm以下とすることができる。
【0051】
本実施形態では、第1の偏光子2で反射された反射戻り光Aの一部が吸収部材5の内壁面5aで吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5aで反射する。内壁面5aで反射した反射戻り光Aの一部は、吸収部材5の内壁面5bで吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5bで反射する。なお、
図4(b)では、内壁面5a、5bで反射した反射戻り光Aの経路の一例を破線で示している。
【0052】
このように、本実施形態では、反射戻り光Aの一部を内壁面5a、5bで吸収することができるため、反射戻り光Aを減衰させることができる。従って、光アイソレータ1では、吸収部材5を設けることにより、筐体6内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ1の信頼性を高めることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、反射戻り光Aを内壁面5a、5bで、2回反射させるように、吸収部材5を配置していたが、反射戻り光Aを内壁面5a、5bで3回以上繰り返し吸収及び反射させるように吸収部材5を配置してもよい。反射戻り光Aをより確実に減衰させる観点からは、反射戻り光Aを内壁面5a、5bで繰り返し吸収及び反射させるように、吸収部材5を配置することが望ましいが、本発明においては、反射戻り光Aを内壁面5a、5bで少なくとも1回、吸収及び反射させればよい。
【0054】
第1の変形例:
図5(a)は、第1の変形例の光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【0055】
図5(a)及び(b)に示すように、第1の変形例の吸収部材5Aでは、略四角柱状のブロックが円錐状にくりぬかれることにより、溝部11Aが構成されている。なお、吸収部材5Aも、
図2(b)において、吸収部材5が設けられる位置に配置され、吸収部材5Aの溝部11Aが第1の偏光子2に面するように配置されるものとする。
【0056】
図5(b)に示すように、第1の変形例の吸収部材5Aにおける溝部11Aも、反射戻り光Aの進行方向に向かって幅が狭くなる、テーパー形状を有している。また、溝部11Aを構成する内壁面5Aaは、反射戻り光Aの一部を吸収させ、かつ吸収されなかった反射戻り光を反射させる、光減衰面である。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
第1の変形例においても、第1の偏光子2で反射された反射戻り光Aの一部が吸収部材5Aの内壁面5Aaで吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5Aaで反射する。内壁面5Aaで反射した反射戻り光Aの一部は、吸収部材5Aの内壁面5Aaの他の部分で吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5Aaの上記他の部分で反射する。このように、第1の変形例でも、反射戻り光Aの一部を内壁面5Aaで吸収させることができるため、反射戻り光Aを減衰させることができる。また、内壁面5Aaが円錐形であることで反射した光は拡がりをもち、より広い面積の内壁面5Aaにあたり吸収させることができる。従って、この吸収部材5Aを設けることにより、筐体6内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ1の信頼性を高めることができる。なお、
図5(b)においても内壁面5Aaで反射した反射戻り光Aの経路の一例を破線で示しているが、実際にもあらゆる方向に反射し吸収されることとなる。
【0058】
第2の変形例;
図6(a)は、第2の変形例の光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【0059】
図6(a)に示すように、第2の変形例の吸収部材5Bでは、略四角柱状のブロックが異形な四角柱状にくりぬかれることにより、穴部が形成されている。なお、四角柱状の穴部の一部はブロックの主面に至っており、それによって溝部11Bが構成されている。また、吸収部材5Bも、
図2(b)において、吸収部材5が設けられる位置に配置され、吸収部材5Bの溝部11Bが第1の偏光子2に面するように配置されるものとする。
【0060】
図6(b)に示すように、第2の変形例の吸収部材5Bにおける溝部11Bは、反射戻り光Aの進行方向に向かって幅が狭くなる、テーパー形状を有する部分と、反射戻り光Aの進行方向に向かって幅が広くなる、逆テーパー形状を有する部分とを備えている。また、溝部11Bを構成する内壁面5Ba~5Bdは、反射戻り光Aの一部を吸収させ、かつ吸収されなかった反射戻り光Aを反射させる、光減衰面である。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
第2の変形例においても、第1の偏光子2で反射された反射戻り光Aの一部が吸収部材5Bの内壁面5Bbで吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5Bbで反射する。内壁面5Bbで反射した反射戻り光Aの一部は、吸収部材5Bの内壁面5Baで吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5Baで反射する。本実施形態では、反射戻り光Aの入る溝部11bが小さいことから、内壁面5Ba~5Bdで反射と吸収が繰り返されるため、反射戻り光Aをより一層減衰させることができる。従って、この吸収部材5Bを設けることにより、筐体6内での反射戻り光Aの散乱をより一層抑制することができ、光アイソレータ1の信頼性を高めることができる。なお、
図6(b)においても内壁面5Ba~5Bd等で反射した反射戻り光Aの経路の一例を破線で示しているが、実際にもあらゆる方向に反射し吸収されることとなる。
【0062】
第3の変形例:
図7(a)は、第3の変形例の光アイソレータにおける吸収部材を拡大して示す斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)の吸収部材の模式的断面図である。
【0063】
図7(a)に示すように、第3の変形例の吸収部材5Cでは、略四角柱状のブロックが円錐状にくりぬかれており、円錐の頂点が吸収部材5Cの主面に至るように、穴部11Cが構成されている。なお、吸収部材5Cも、
図2(b)において、吸収部材5が設けられる位置に配置され、吸収部材5Cの穴部11C(円錐の頂点側)が第1の偏光子2に面するように配置されるものとする。
【0064】
図7(b)に示すように、第3の変形例の吸収部材5Cにおける穴部11Cは、反射戻り光Aの進行方向に向かって幅が広くなる、逆テーパー形状を有している。また、穴部11Cを構成する内壁面5Caは、反射戻り光Aの一部を吸収させ、かつ吸収されなかった反射戻り光を反射させる、光減衰面である。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
第3の変形例では、第1の偏光子2で反射された反射戻り光Aが穴部11Cを通過し、筐体6の壁部で反射して、吸収部材5Cの内壁面5Caに至る。吸収部材5Cの内壁面5Caに至った反射戻り光Aは、吸収部材5Cの内壁面5Caで吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5Caで反射する。内壁面5Caで反射した反射戻り光Aの一部は、吸収部材5Cの内壁面5Caの他の部分で吸収され、吸収されなかった反射戻り光Aが内壁面5Caの上記他の部分で反射する。このように、本実施形態では、反射戻り光Aの一部が内壁面5Caで吸収されるため、反射戻り光Aを減衰させることができる。従って、この吸収部材5Cを設けることにより、筐体6内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ1の信頼性を高めることができる。なお、
図7(b)に示すように、本実施形態において、反射戻り光Aを反射させる筐体6の壁部は、湾曲していることが望ましい。これにより、
図7(b)に破線で示すように、反射戻り光Aをあらゆる方向から内壁面5Caに入射させ、吸収及び反射させることができる。
【0066】
第4の変形例;
図8は、第4の変形例の光アイソレータの光軸方向に沿う断面の簡略図である。
【0067】
図8に示すように、光アイソレータ1の第4の変形例では、筐体6の壁部の一部がくりぬかれており、くりぬかれた位置に嵌め込まれるように吸収部材5Dが配置されている。吸収部材5Dは、第1の実施形態の吸収部材5と同様の構成とすることができる。その他の点も、第1の実施形態と同様である。
【0068】
第4の変形例においても、第1の偏光子2で反射した反射戻り光Aの光路に、反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収することのできる吸収部材5Dが設けられている。そのため、筐体6内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ1の信頼性を高めることができる。
【0069】
(第2の実施形態)
図9(a)は、本発明の第2の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う断面の簡略図である。
図9(b)は、本発明の第2の実施形態に係る光アイソレータの吸収部材を拡大して示す模式的斜視図である。
【0070】
図9(a)及び(b)に示すように、光アイソレータ21では、第1の偏光子2で反射された反射戻り光Aの光路に略円柱状の吸収部材25が配置されている。本実施形態では、円柱状の吸収部材25の主面25aが第1の偏光子2に面している。また、吸収部材25は、ガラスにより構成されている。
【0071】
ガラスとしては、例えば、鉄、銅などを含有する組成を有するガラスを用いることができる。
【0072】
なお、吸収部材25は、ガラス以外の材料により構成されていてもよい。吸収部材25は、使用するレーザー光の波長に応じて適宜選定することができる。
【0073】
吸収部材25は、例えば、セラミック、多孔質体などにより構成されていてもよい。
【0074】
その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0075】
第2の実施形態においても、第1の偏光子2で反射した反射戻り光Aの光路に、反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収することのできる吸収部材25が設けられている。そのため、筐体6内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ21におけるアイソレーション特性等の特性に悪影響を及ぼし難くすることができる。従って、光アイソレータ21は、信頼性に優れている。
【0076】
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う断面の簡略図である。
【0077】
図10に示すように、光アイソレータ31では、筐体36の内壁面36aに表面処理層が形成されている。本実施形態では、この表面処理層が、吸収部材35である。
【0078】
吸収部材35の表面処理層は、例えば、非晶質酸化アルミニウム、クロム、ニッケル、カーボン等を含有することができる。また、表面処理層の表面処理としては、特に限定されず、アルマイト処理、めっき処理、蒸着処理、又は吹き付け、刷毛塗り等の塗装処理であることが好ましい。
【0079】
なお、具体的に、表面処理層は、使用するレーザー光の波長により適宜選定することができる。例えば、アルマイト処理による黒色の表面処理層を用いた場合、可視波長域で、反射戻り光Aの吸収率を高めることができる。なお、アルマイト処理による可視波長域(400nm~650nm)の反射率は、3%~10%程度である。また、アルマイト処理による黒色の表面処理層は、通常、より波長の大きい赤外波長域での反射率が高いため、赤外波長域で好適に使用することが難しいが、例えば、ツヤ消等の処理をすることにより、赤外波長域での反射率を低下させて用いてもよい。ツヤ消等の処理をすることにより、例えば、通常のツヤ有アルマイト処理で波長1030nmの反射率が60%程度であるところ、反射率を5%~50%の範囲まで低減することができる。
【0080】
また、クロムめっきや、無電解ニッケルめっき等により黒色の表面処理をした場合は、可視波長域に加えて赤外波長域でも、反射戻り光Aの吸収率を高めることができる。なお、クロムめっき処理による可視波長域(400nm~650nm)の反射率は、3%~10%程度であり、また、赤外波長域(800nm~1400nm)の反射率は、3%~10%程度である。また、無電解ニッケルめっき処理による可視波長域(400nm~650nm)の反射率は、2%~10%程度であり、また、赤外波長域(800nm~1400nm)の反射率は、4%~15%程度である。
【0081】
吸収部材35の表面処理層の厚みは、例えば、1μm以上、100μm以下とすることができる。
【0082】
その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0083】
第3の実施形態においても、第1の偏光子2で反射した反射戻り光Aの光路に、反射戻り光Aの少なくとも一部を吸収することのできる吸収部材35が設けられている。そのため、筐体36内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ31におけるアイソレーション特性等の特性に悪影響を及ぼし難くすることができる。従って、光アイソレータ31は、信頼性に優れている。
【0084】
(第4の実施形態)
図11(a)は、本発明の第4の実施形態に係る光アイソレータの光軸方向に沿う模式的断面図である。また、
図11(b)は、
図11(a)に示す断面の簡略図である。
【0085】
図11(a)及び(b)に示すように、光アイソレータ41では、筐体46の壁部の一部に貫通孔45が設けられている。貫通孔45は、第1の偏光子2により反射した反射戻り光Aの少なくとも一部を通過させるように設けられている。従って、貫通孔45は、反射戻り光Aの光路に設けられている。
【0086】
貫通孔45の形状は、反射戻り光Aの少なくとも一部を通過させることができる限りにおいて、特に限定されないが、例えば、略円状や略矩形状、長孔とすることができる。
【0087】
貫通孔45の大きさは、特に限定されないが、例えば、1mm以上、8mm以下とすることができる。貫通孔45は、反射戻り光Aが透過できる透明部材によって塞がれていても良く、反射戻り光Aがより透過し易いように上記透明部材に反射防止膜を形成しても良い。
【0088】
その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0089】
第4の実施形態では、第1の偏光子2により反射した反射戻り光Aの光路において、反射戻り光Aの少なくとも一部を通過させるように貫通孔45が設けられている。そのため、筐体46内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ41におけるアイソレーション特性等の特性に悪影響を及ぼし難い。従って、光アイソレータ41は、信頼性に優れている。
【0090】
[レーザー照射装置]
図12は、本発明の一実施形態に係るレーザー照射装置の光軸方向に沿う断面の簡略図である。
【0091】
図12に示すように、レーザー照射装置51は、光アイソレータ1と、光源52とを備える。光アイソレータ1の吸収部材5としては、上述したように、光源52から発せられるレーザー光A
0の波長に応じて、適宜選定することができる。
【0092】
レーザー照射装置51では、光源52から発せられるレーザー光A0が第1の偏光子2を通過し、直線偏光となって、ファラデー素子8に入射する。入射した光はファラデー素子8により45°回転し、第2の偏光子3を通過する。第2の偏光子3を通過した光の一部が反射戻り光Aとなり、偏光面が45°の角度で第2の偏光子3を通過する。一方、第2の偏光子3を通過した反射戻り光Aは、ファラデー素子8により、さらに45°回転される。これにより、反射戻り光Aの偏光面は、第1の偏光子2の光透過軸に対して90°の直交偏光面となる。そのため、反射戻り光Aは第1の偏光子2を透過できず、遮断される。なお、第1の偏光子2では、反射戻り光Aが反射され、光軸方向Xに直交する方向に進行する。これにより、第1の偏光子2では、レーザー光A0の反射戻り光Aを遮断することができる。
【0093】
また、レーザー照射装置51では、第1の偏光子2で反射された反射戻り光Aの少なくとも一部が吸収部材5で吸収されるため、反射戻り光Aを減衰させることができる。従って、レーザー照射装置51では、この吸収部材5を設けることにより、筐体6内での反射戻り光Aの散乱を抑制することができ、光アイソレータ1におけるアイソレーション特性等の特性に悪影響を及ぼし難くすることができる。従って、レーザー照射装置51は、信頼性に優れている。
【符号の説明】
【0094】
1、21、31、41…光アイソレータ
2…第1の偏光子
3…第2の偏光子
4…ファラデー回転子
5、5A、5B、5C、5D、25、35…吸収部材
5a、5b、5Aa、5Ba、5Bb、5Bc、5Bd、5Ca、36a…内壁面
6、36、46…筐体
7…磁石
7a、9a、45…貫通孔
7b…第1の端面
7c…第2の端面
7d…側面
8…ファラデー素子
9…管部材
11、11A、11B…溝部
11C…穴部
25a…主面
51…レーザー照射装置
52…光源
A0…レーザー光
A…反射戻り光
X…光軸方向