(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162311
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】防災シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077689
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】315005657
【氏名又は名称】創伸産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 茂昭
(72)【発明者】
【氏名】岩城 誠
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA07
2E139AB00
2E139AB24
2E139AC26
(57)【要約】
【課題】階段を上ることなく短時間で避難することが可能で、しかも津波の高さが想定を超える場合にも安全を確保でき、更に日常的にも利用することが可能でコスト的にも有利な防災シェルターを提供する。
【解決手段】防災シェルター1は、津波避難タワーのように階段を上ることで高所に移動する必要がないので、短時間で避難を完了することができる。実際に発生した津波が想定を超える高さであっても、ハウジング3内に居ることで安全を確保することが可能である。底壁部5は地盤の支持層Sに鋼管杭11を介して連結されているので、巨大地震に対しても十分に耐えることができ、津波を受けてもハウジング3が流されるのを防止することが可能である。ドア23によって出入口21を閉じ、ハッチ27によって脱出口25を閉じれば、ハウジング3内に海水が侵入するのを防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部と、前記底壁部の周縁から起立するように設けられた側壁部と、側壁部の上面に設けられ内部領域を封鎖する天井壁部が一体に形成された鉄筋コンクリートによって構成されるハウジングを備え、前記側壁部には出入口が形成されており、前記出入口を開閉して閉じた状態で前記ハウジングを水密構造にするドアが備えられた防災シェルターであって、
前記底壁部はその上面が地面とほぼ同じ高さとなるように埋設されており、且つ底壁部は地盤の支持層に連結部材を介して連結されていることを特徴とする防災シェルター。
【請求項2】
請求項1に記載した防災シェルターにおいて、天井壁部の外面はドーム状に形成されていることを特徴とする防災シェルター。
【請求項3】
請求項1に記載した防災シェルターにおいて、側壁部の外側の角部分はアール状に形成されていることを特徴とする防災シェルター。
【請求項4】
請求項1に記載した防災シェルターにおいて、天井壁部には脱出口が設けられ、前記脱出口を開閉して閉じた状態で前記ハウジングを水密構造にするハッチが備えられていることを特徴とする防災シェルター。
【請求項5】
請求項1に記載した防災シェルターにおいて、ハウジングの外面にはポリウレア樹脂が塗布されていることを特徴とする防災シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防災シェルターに係り、特に岩盤、れき層等の支持層に強固に固定された防災シェルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の防災意識の高まりによって、種々の防災施設が建設されている。
防災施設としては例えば特許文献1に示された津波避難タワーがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地域によっては津波到達時間が極めて短い場合があり、津波到達前に津波避難タワーに到着することができるか否かの問題がある。例えば高齢者は階段を短時間で上ることが難しく、確実な避難ができないことも想定される。
また、津波の高さが津波避難タワーの高さを越えるおそれがある。津波避難タワーを建設した後に、想定される津波の高さが津波避難タワーの高さを越える可能性があることを理由に、津波避難タワーの使用が禁止される事態も発生している。
【0005】
更に、津波避難タワーは日常的に利用できる施設ではないことから、維持管理費用を含めたコスト面における問題もある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、階段を上ることなく、短時間で避難することが可能で、しかも津波の高さが想定を超える場合にも安全を確保でき、更に日常的にも利用することが可能でコスト的にも有利な防災シェルターの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、底壁部と、前記底壁部の周縁から起立するように設けられた側壁部と、側壁部の上面に設けられ内部領域を封鎖する天井壁部が一体に形成された鉄筋コンクリートによって構成されるハウジングを備え、前記側壁部には出入口が形成されており、前記出入口を開閉して閉じた状態で前記ハウジングを水密構造にするドアが備えられた防災シェルターであって、前記底壁部はその上面が地面とほぼ同じ高さとなるように埋設されており、且つ底壁部は地盤の支持層に連結部材を介して連結されていることを特徴とする防災シェルターである。
【0007】
好ましくは、天井壁部の外面はドーム状に形成されていることを特徴とする防災シェルターである。
【0008】
好ましくは、側壁部の外側の角部分はアール状に形成されていることを特徴とする防災シェルターである。
【0009】
好ましくは、天井壁部には脱出口が設けられ、前記脱出口を開閉して閉じた状態で前記ハウジングを水密構造にするハッチが備えられていることを特徴とする防災シェルターである。
【0010】
好ましくは、ハウジングの外面にはポリウレア樹脂が塗布されていることを特徴とする防災シェルターである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防災シェルターでは、津波避難タワーと異なり階段を上ることなく、短時間で避難することが可能である。
しかも津波の高さが想定を超える場合にも安全を確保でき、更に日常的に利用することが可能でコスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る防災シェルターのハウジングの斜視図である。
【
図3】
図1の防災シェルターの鋼管杭の上端部分の構造を示す斜視図である。
【
図4】
図1の防災シェルターの鋼管杭の下端部分の構造を示す斜視図である。
【
図5】
図1の防災シェルターのハウジングの間取り、ハウジング内の装備を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る防災シェルター1を図面にしたがって説明する。
図1、
図2に示すように防災シェルター1は鉄筋コンクリートによって構成されたハウジング3を有している。このハウジング3の構成を説明する。
図2において符号5は底壁部を示し、この底壁部5の周縁から起立するように側壁部7が一体に設けられている。側壁部7の上面には内部領域を封鎖するように天井壁部9が一体に設けられている。
上記のようにハウジング3は鉄筋コンクリート製の底壁部5、側壁部7及び天井壁部9が一体となって構成されている。
底壁部5は平面視が正方形で、側壁部7は平面視が四角の枠状に形成されている。側壁部7の外側の角部分7aはアール状に形成されている。また、天井壁部9の外面はドーム状に形成されている。
【0014】
底壁部5の一辺の寸法は10.5mであり、厚さ寸法は1.0mである。
側壁部7の高さ寸法は2.2mであり、厚さ寸法は0.3mである。
天井壁部9の高さ寸法は最も高い部分で0.8mであり、厚さ寸法は0.3mである。
【0015】
底壁部5はその上面が地面Gとほぼ同じ高さとなるように埋設されている。
更に底壁部5は岩盤、れき層等の支持層Sに連結部材としての鋼管杭11を介して連結されている。従って、津波による引き抜き力に抵抗することができ、ハウジング3が浮き上がるのを防止することができる。
図2におけるA部の拡大斜視図となる
図3に示すように鋼管杭11の上端部分の外周面には4本の異形鉄筋13がフレア溶接によって固定されている。4本の異形鉄筋13は途中部分で略水平方向に曲げられている。鋼管杭11の上端部分は4本の異形鉄筋13と共に底壁部5を構成するコンクリートに埋設されている。
図2におけるB部の拡大斜視図となる
図4に示すように鋼管杭11の下端部分には掘削刃15が設けられ、更に外周面には上翼17と下翼19が設けられている。鋼管杭11の上翼17と下翼19が支持層Sに埋設状に備えられているので大きな引き抜き力に対し抵抗することができる。
【0016】
ハウジング3の側壁部7には出入口21が設けられ、この出入口21は水密構造のドア23によって開閉できるようになっている。ドア23によって出入口を閉じた状態ではハウジング3を水密構造にすることができる。
また、天井壁部9の
図1において右側に寄った位置には脱出口25が設けられ、この脱出口25はハッチ27によって開閉できるようになっている。ハッチ27を閉じた状態ではハウジング3を水密構造にすることができる。
天井壁部9の中心部分の凹部にはGPSアンテナ箱29が収容された状態で固定されている。このGPSアンテナ箱29内にはGPS衛星から発せられた電波を受信し、防災シェルター1の位置を特定するための機器が収容されている。
ハウジング3、ドア23及びハッチ27の外面にはポリウレア樹脂が塗布されている。更に、ドア23の外面には蓄光塗料が塗布されている。
【0017】
ハウジング3内には内壁4が設けられており、この内壁4には開口6が形成されている。
ハウジング3内には、ハウジング3の床面から脱出口25に続く回り階段31が備えられている。
更に、ハウジング3内には、シートベルト付椅子33、ベッド35、図示しない酸素発生装置、蓄電池39、食料等の備蓄用品を収容する棚41及び給水タンク43、二酸化炭素吸収装置50が備えられており、これらはいずれもハウジング3内に固定具を介して固定されている。また、ハウジング3内には車椅子45が備えられ、この車椅子45は固定ベルトによってハウジング3内に着脱可能に固定することができる。
また、ハウジング3内には2つのトイレ室47が設けられ、トイレ室47内には脱臭装置49が備えられている。
【0018】
防災シェルター1は以上のように構成されており、地震、津波等の災害が発生した場合は避難所として使用する。
この防災シェルター1は、津波避難タワーのように階段を上ることで高所に移動する必要がないので、短時間で避難を完了することができる。
また、ドア23の外面には蓄光塗料が塗布されているので夜間においてもドア23の位置を容易に確認することができ、ハウジング3内へ速やかに避難することができる。
発生した津波が想定を超える高さであっても、後述するようにハウジング3内に居ることで避難者の安全を確保することが可能である。
【0019】
防災シェルター1のハウジング3は鉄筋コンクリートによって構成されており、底壁部5の上面が地面Gとほぼ同じ高さとなるように埋設され、しかも底壁部5は支持層Sに鋼管杭11を介して連結されて固定されているので、巨大地震に対しても十分に耐えることができ、津波を受けてもハウジング3が流されることも防止することが可能である。
また、津波を被った状態になってもドア23によって出入口21を閉じ、ハッチ27によって脱出口25を閉じればハウジング3を水密構造にすることができるので、ハウジング3内に海水が侵入するのを防止することが可能である。
従って、津波が引くまでの間、ハウジング3内に居る避難者の安全を確保することができる。
【0020】
側壁部7の外側の角部分7aはアール状にされ、天井壁部9の外面はドーム状に形成されており、しかもハウジング3の外面、ドア23及びハッチ27にはポリウレア樹脂が塗布されているので、地震時に落下物、津波による漂流物等が衝突してもハウジング3が破損するのを防止することができる。
上記のように角部分7aはアール状にされているので、漂流物等が衝突しても広い面積で衝撃を受けることになる。従って、衝撃が緩和されて角部分7aが破損するのを防ぐことがきる。
上記のように天井壁部9の外面はドーム状に形成されているので、落下物等が当たっても曲面を滑ることになる。従って、衝撃が緩和されて天井壁部9が破損するのを防ぐことがきる。
また、ハウジング3は上記のように鉄筋コンクリートによって構成されているので、近隣に火災が発生した場合でも焼損することはない。
【0021】
上述のようにハウジング3内には、シートベルト付椅子33が設けられているので、椅子に座りシートベルトによって体を固定することで地震の強い揺れでも体が投げ出される危険を回避することができる。また、車椅子45を利用する者は固定ベルトによって車椅子45を固定することができ、車椅子45が不用意に移動してしまうのを防止することが可能である。
ハウジング3内にはベッド35、図示しない酸素発生装置、蓄電池39、食料等の備蓄用品を収容する棚41及び給水タンク43、二酸化炭素吸収装置50が備えられており、更に2つのトイレ室47が設けられ、トイレ室47内には脱臭装置49が備えられているので、ハウジング3全体が海水に浸かって外部へ出ることができない状態となっても、一定期間はハウジング3内の人の生命に危険が及ぶことなく過ごすことができる。
【0022】
GPSアンテナ箱29内にはGPS衛星から発せられた電波を受信し、防災シェルター1の位置を特定することができる機器が収容されているので、迅速な救助を受けることが可能である。
ドア23を開けると出入口21から海水がハウジング3へ流入してしまう場合などにおいては、回り階段31を上りハッチ27を開けて脱出口25から脱出する。
【0023】
上記の防災シェルター1を地域ごとに想定される避難者の人数を勘案して設けることで、高齢者等を含めて迅速且つ確実な避難が可能となる。
なお、災害時以外の場合はハウジング3を集会所、倉庫等の通常の建物として利用することが可能であり、コスト面においても有利である。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記実施の形態では連結部材として鋼管杭を用いたが、本発明はこれに限定されず、垂直アンカー、ワイヤ等を用いてもよい。
天井壁部の外面はドーム状に限らず、津波などの圧力を逃がすことができる形状であれば、頂部が四角形の平坦部と、この頂部に連続し、下方へ傾斜する台形の傾斜部からなる形状等であってもよい。
また、ハウジングのサイズ、間取り、内部に備える設備等は敷地形状、敷地面積、収容人数等によって変更できることは勿論である。
例えば、底壁部は平面視が正方形のものに限定されず、長方形としてもよい。
また、例えば、底壁部の厚さ寸法は上記した寸法に限定されず、津波の水圧等を考慮して強度計算の結果に基づいて十分な強度を有する値に変更することができるのは勿論である。更に側壁部の高さ寸法も上記した寸法に限定されず、津波に対する抵抗を少なくするため低く設定するなど、変更してもよい。
上記実施の形態では、4本の異形鉄筋を鋼管杭に溶接したが、4本より多くても少なくてもよく、数本の範囲で設定する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本考案は防災シェルターの建築業において利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0026】
1…防災シェルター 3…ハウジング 4…内壁
5…底壁部 6…開口 7…側壁部
7a…角部分 9…天井壁部 11…鋼管杭
13…異形鉄筋 15…掘削刃 17…上翼
19…下翼 21…出入口 23…ドア
25…脱出口 27…ハッチ 29…GPSアンテナ箱
31…回り階段 33…シートベルト付椅子
35…ベッド 39…蓄電池 41…棚
43…給水タンク 45…車椅子 47…トイレ室
49…脱臭装置 50…二酸化炭素吸収装置
G…地面 S…支持層