(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162319
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20241114BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/229 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/342 101
H01M50/209
H01M50/229
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077701
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森沖 卓也
(72)【発明者】
【氏名】井上 重行
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB02
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC05
5H040DD08
5H040JJ03
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】電池モジュールの上方に機器台座が配置される構成を採用する場合に、電池セルの発煙時の短絡を効果的に抑制できるようにする。
【解決手段】電池パックは、電池モジュールと、周辺機器と、機器台座とを備える。電池モジュールは、上面に排煙弁を有する複数の電池セルを含む。機器台座は、電池モジュールの上方に配置され、周辺機器を支持する。機器台座は、耐火性樹脂材料により形成され、且つ、電池パックの排煙経路の一部を構成する孔部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に排煙弁を有する複数の電池セルを含む電池モジュールと、
周辺機器と、
前記電池モジュールの上方に配置され、前記周辺機器を支持する機器台座と、
を備える電池パックであって、
前記機器台座は、耐火性樹脂材料により形成され、且つ、前記電池パックの排煙経路の一部を構成する孔部を有する
ことを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電池パックを開示している。当該電池パックは、電池スタックと、電子機器と、機器台座とを含む。機器台座は、電池スタックの上方に設けられ、電子機器を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電池パックにおいて機器台座が鋼板等の金属素材を用いて形成されていると、次のような課題が生じ得る。すなわち、電池セルの発煙時に当該電池セルからの噴出物(デブリ)が機器台座と電池セルとの間の空間において詰まってしまう可能性がある。このデブリは導電性異物であるため、上記の詰まりが生じると、デブリを介して電池セルと機器台座との間で短絡が発生し得る。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、電池モジュールの上方に機器台座が配置される構成を採用する場合に、電池セルの発煙時の短絡を効果的に抑制できるようにした電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電池パックは、電池モジュールと、周辺機器と、機器台座とを備える。電池モジュールは、上面に排煙弁を有する複数の電池セルを含む。機器台座は、電池モジュールの上方に配置され、周辺機器を支持する。機器台座は、耐火性樹脂材料により形成され、且つ、電池パックの排煙経路の一部を構成する孔部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、機器台座は、耐火性樹脂材料により形成されている。これにより、機器台座の絶縁性と耐熱性とを好適に両立できる。そして、機器台座には、デブリの抜き穴としての孔部が形成されている。これにより、発煙時に、デブリの拡散経路を良好に確保できる。これらの構成によれば、電池セルの発煙時の短絡を効果的に抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る電池パックの要部の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面とともに本開示の実施の形態を説明する。
【0010】
1.電池パックの構成
図1は、実施の形態に係る電池パック10の要部の構成を概略的に示す断面図である。電池パック10は、バッテリ電気自動車(BEV)等の電動車両に搭載され、電動車両を駆動する電動機に電力を供給する。
【0011】
電池パック10は、電池モジュール12と電池ケース14とを備える。電池ケース14は、電池モジュール12を収容している。電池ケース14は、例えば、ロアケース14aとアッパーカバー14bとを含む。ロアケース14aは、ケース本体部に相当し、アッパーカバー14bは、ロアケース14aを覆っている。
【0012】
電池モジュール12は、複数の電池セル16を含む。例えば、電池モジュール12は、電池セル16とスペーサ(図示省略)とを交互に積層して構成されている。電池セル16は、例えば、角型セルであり、上面16aに排煙弁18を有する。
図1は、電池セル16の積層方向から見た電池パック10の断面図に相当する。電池パック10は、一例として、互いに並列に配置された複数本の電池モジュール12を備えている。なお、電池セル16の上面16aには、隣り合う電池セル16の電極端子間を接続するバスバ20が配置されている。
【0013】
また、電池パック10は、周辺機器22と、機器台座24とを備える。周辺機器22は、ジャンクションボックス、及び電子制御ユニット(ECU)等の各種機器である。機器台座24は、電池モジュール12の上方(より詳細には、例えば、鉛直方向上方)に配置され、周辺機器22を支持している。すなわち、周辺機器22は、機器台座24の上に搭載されている。より詳細には、
図1に示す電池パック10のように複数本の電池モジュール12を備える構成では、機器台座24は、例えば、何れか1つの電池モジュール12を上方から覆うように配置されている。ここでいう「何れか1つの電池モジュール12」としては、例えば、電動車両の前方側の端又は後方側の端に位置する電池モジュール12が該当する。
【0014】
図1に示すように、機器台座24は、アッパーカバー14bの内側において各電池モジュール12(複数の電池セル16)を覆うように形成されている。機器台座24は、例えばロアケース14aの支持部26及び補強部材28によって支持されている。補強部材28は、隣り合う電池モジュール12に並行して延びている。アッパーカバー14bは、周辺機器22が配置される部位において開口している。そして、この開口部は、機器カバー30によって覆われている。すなわち、機器カバー30は、電池ケース14の一部として機能している。機器カバー30は、例えば、アッパーカバー14bとともに締結具32を用いて機器台座24に固定されている。
【0015】
本実施形態に係る機器台座24は、耐火性樹脂材料により形成されている。ここでいう耐火性樹脂材料は、一例として、フェノール樹脂成形材料等の耐火性に優れたシートモールディングコンパウンド(SMC)である。
【0016】
また、本実施形態に係る機器台座24は、孔部34を有する。孔部34は、電池パック10の排煙経路Rの一部を構成している。排煙経路Rは、電池セル16から放出される排煙を電動車両の外部に導くための経路であり、電池パック10の内部に形成されている。より詳細には、孔部34は、一例として、排煙弁18の真上の位置に対して所定方向にオフセットした位置において機器台座24に形成されている。当該所定方向は、排煙弁18を上方から見下ろしたときに電池セル16の積層方向に対して直交する方向(
図1では、紙面左右方向)である。
【0017】
2.効果
以上説明したように、本実施形態に係る電池パック10では、電池モジュール12の上方に配置されて周辺機器22を支持する機器台座24は、耐火性樹脂材料により形成されている。これにより、機器台座24の絶縁性と耐熱性とを好適に両立できる。このため、電池セル16の発煙時に、当該電池セル16から噴出する導電性異物(デブリ)と機器台座24を介して閉回路が形成されて短絡に至ることを抑制できる。なお、当該閉回路は、例えば次のように形成され得る。すなわち、電池モジュール12に含まれる2つの電池セル16からの排煙が生じた際に、一方の電池セル16、当該一方の電池セル16からのデブリ、機器台座24、他方の電池セル16のデブリ、及び当該他方の電池セル16という順で閉回路が形成され得る。
【0018】
また、本実施形態に係る機器台座24には、上記のデブリの抜き穴(すなわち、デブリの抜け道)としての孔部34が形成されている。これにより、発煙時に、デブリの拡散経路を良好に確保できるので、デブリの局所的な堆積を抑制できる。このことも、上記の短絡の抑制につながる。
【0019】
以上のように、本実施形態に係る電池パック10によれば、電池モジュール12の上方に機器台座24が配置される構成を採用する場合に、電池セル16の発煙時の短絡を効果的に抑制できる。
【0020】
付け加えると、鋼板等の金属素材に代えて樹脂材料により形成された機器台座24によれば、樹脂の形状自由度を活かし、次のような効果も得られる。すなわち、デブリが直撃する部位24a、及びゴムガスケット36のシール平面24bなどのように強度及び剛性が求められる部位の板厚を他の部位の板厚と比べて自在に増やすことが可能となる。このため、機器台座24に関し、板厚が一定となる鋼板等の金属の板部材の利用時と比べて質量効率の良い形状を実現できる。
【符号の説明】
【0021】
10 電池パック、 12 電池モジュール、 14 電池ケース、 14a ロアケース、 14b アッパーカバー、 16 電池セル、 16a 電池セルの上面、 18 排煙弁、 22 周辺機器、 24 機器台座、 30 機器カバー、 34 機器台座の孔部