(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162331
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ヒートシール用感熱記録体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/333 20060101AFI20241114BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20241114BHJP
B41M 5/337 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/42 220
B41M5/42 221
B41M5/337 230
B41M5/337 214
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077726
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 健二
(72)【発明者】
【氏名】田渕 和幸
(72)【発明者】
【氏名】登坂 昌也
(72)【発明者】
【氏名】越 達朗
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB24
2H026DD01
2H026DD32
2H026DD45
2H026DD48
2H026DD53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒートシール処理時の加熱による感熱記録層の発色を防止するヒートシール用感熱記録体を提供する。
【解決手段】基材上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を有し、該感熱記録領域層上にさらに保護層を有し、該基材上の該感熱記録層とは反対面にヒートシール層を有する、ヒートシール用感熱記録体であって、該感熱記録層が、ヒートシール処理されない領域に設けられており、該保護層が、バインダーとしてアクリル系樹脂を含有し、該電子受容性顕色剤の融点が140℃以上である、ヒートシール用感熱記録体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を有し、該感熱記録領域層上にさらに保護層を有し、該基材上の該感熱記録層とは反対面にヒートシール層を有する、ヒートシール用感熱記録体であって、
該感熱記録層が、ヒートシール処理されない領域に設けられ、
該保護層が、バインダーとしてアクリル系樹脂を含有し、
該電子受容性顕色剤の融点が140℃以上である、ヒートシール用感熱記録体。
【請求項2】
前記電子受容性顕色剤が、下記一般式(化1)で表されるウレア化合物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のヒートシール用感熱記録体。
【化1】
(式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
1は、水素原子または-SO
2-R
3を表し、R
3は、置換若しくは無置換のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、R
2は、水素原子又はアルキル基を表し、mは0又は1を表す。)
【請求項3】
前記保護層が含有するアクリル系樹脂が、下記(1)及び(2)から成る群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のヒートシール用感熱記録体。
(1)ガラス転移点(Tg)が50℃より高く95℃以下である非コアシェル型アクリル系樹脂
(2)下記(a1)、(a2)及び(a3)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Aから成るコアと、下記(a1)及び(a2)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Bから成るシェルとから成るコアシェル型粒子の水性エマルジョンである、シラン変性アクリル系樹脂。
(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル
(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤
【請求項4】
前記保護層が、更に、カルボジイミド系の架橋剤を含有する請求項1に記載のヒートシール用感熱記録体。
【請求項5】
前記感熱記録層が、更に、バインダーとして、下記(1)又は(2)のアクリル系樹脂及びSBラテックスから成る群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のヒートシール用感熱記録体。
(1)ガラス転移点(Tg)が50℃より高く95℃以下である非コアシェル型アクリル系樹脂
(2)下記(a1)、(a2)及び(a3)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Aから成るコアと、下記(a1)及び(a2)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Bから成るシェルとから成るコアシェル型粒子の水性エマルジョンである、シラン変性アクリル系樹脂。
(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル
(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤
【請求項6】
前記感熱記録層が、更に、カルボジイミド系の架橋剤を含有する請求項5に記載のヒートシール用感熱記録体。
【請求項7】
前記感熱記録層が、50%粒径が1μm以下の炭酸カルシウム又はカオリンを含有する請求項1に記載のヒートシール用感熱記録体。
【請求項8】
前記感熱記録層と保護層が重なる部分のヘイズ値が15~60である、請求項1に記載のヒートシール用感熱記録体。
【請求項9】
前記保護層が、感熱記録層のみを覆う、請求項1に記載のヒートシール用感熱記録体。
【請求項10】
前記保護層が顔料を含有し、該顔料が、50%粒径が1μm以下の炭酸カルシウム又はカオリンである請求項1に記載のヒートシール用感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材上にヒートシール層と感熱記録層とを設けたヒートシール用感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
成形した食品などの包装材、袋、容器、箱、カップ、蓋材などの包装材料に、ヒートシール層を有するフィルムを熱融着(シートシール処理)させることが一般に行われている。また、このフィルムに印刷領域を設けたり、フィルムのヒートシール層とは反対面に感熱記録層を設けて、内容物等の情報を印字できるようにしたヒートシール用感熱記録体も一般に使用されている。
このようなヒートシール用感熱記録体について、ヒートシール処理時の加熱により、感熱記録層が発色してしまわないように様々な工夫がなされている(特許文献1~4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-8089
【特許文献2】特開2019-126910
【特許文献3】特開2020-93447
【特許文献4】特開2022-151636
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートシール処理時の加熱による感熱記録層の発色を防止するために、例えば、感熱記録層をヒートシール処理されない領域に設けたとしても(例えば、特許文献4[0002]12~13行目等)、ヒートシール機の加熱部は非常に高熱になり、直接接触することがなくても、加熱部の近傍に位置する感熱記録層が、その熱雰囲気によって地発色してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、基材上にヒートシール層と感熱記録層とを設けたヒートシール用感熱記録体であって、ヒートシール処理時の熱雰囲気による感熱記録層の地発色を防止し、ヒートシール用感熱記録体としての性能が優良なヒートシール用感熱記録体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、ヒートシール用感熱記録体として、適切な顕色剤を使用して、感熱記録領域層上に保護層を設け、この保護層にアクリル系樹脂を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、基材上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を有し、該感熱記録領域層上にさらに保護層を有し、該基材上の該感熱記録層とは反対面にヒートシール層を有する、ヒートシール用感熱記録体であって、該感熱記録層が、ヒートシール処理されない領域に設けられ、該保護層が、バインダーとしてアクリル系樹脂を含有し、該電子受容性顕色剤の融点が140℃以上である、ヒートシール用感熱記録体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ヒートシール処理時の熱雰囲気による感熱記録層の地発色しないヒートシール用感熱記録体を提供することができ、可変情報を感熱プリンタにより印字できるので、ヒートシール用紙に感熱ラベルを貼り付ける等の作業が不要となる、等のメリットがある。また、基材および感熱記録層に透明性が高い材料を使用した場合には、視認性に優れるヒートシール用感熱記録体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本願発明のヒートシール用感熱記録体(左上)と被着物(左下)をヒートシール処理(熱融着)する様子の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のヒートシール用感熱記録体の一例を
図1左上に示す。基材の一面上に感熱記録層を有し、この感熱記録領域層上にさらに保護層を有する。この感熱記録層は、ヒートシール処理されない領域に設けられている。この保護層は感熱記録層全体を覆うものであっても感熱記録層のみを覆うものであってもよい。また、基材上の感熱記録層とは反対面にヒートシール層を有する。ヒートシール層は、基材の全面を覆うものであっても、その一部を覆うものであってもよい。なお、基材のヒートシール層側に印刷する領域(印刷領域)を設けてもよい。この基材のヒートシール層側への印刷は、グラビア、オフセット、フレキソ、凸版、インクジェット、スクリーン、トナー、デジタルなど、公知の方法で行うことができる。
感熱記録層と保護層が重なる部分のヘイズ値は、好ましくは15~60、より好ましくは18~40である。このヘイズ値は、分光光度計で測定する。
【0009】
本発明の基材としては、上質紙、再生紙、コート紙等の紙、不織布、合成紙、プラスチックフィルム、発泡プラスチックフィルムなどシート状であれば特に限定されず使用可能であり、またこれらを組み合わせた複合シートとを使用してもよい。
【0010】
本発明の感熱記録層は、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう。)と電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう。)を含有し、これらの発色反応を利用して発色させる。
本発明で用いる顕色剤の融点は、140℃以上であり、好ましくは145~200℃、より好ましくは150~190℃である。この融点は、示差走査熱量測定(DSC)で測定する。
【0011】
このような顕色剤として、好ましくは、下記一般式(化1)で表されるウレア化合物が挙げられ、本発明の感熱記録層は、更に好ましくは、顕色剤としてこのウレア化合物を少なくとも1種含有する。
【化1】
(式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
1は、水素原子または-SO
2-R
3を表し、R
3は、置換若しくは無置換のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、R
2は、水素原子又はアルキル基を表し、mは0又は1を表す。)
【0012】
このウレア化合物は、好ましくは、下記(1)又は(2)である。
(1)下記一般式(化2)で表される第1のウレア化合物、
【化2】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、上記と同様に定義される。)
(2)下式(化3)で表される第2のウレア化合物
【化3】
(式中、R
2は上記と同様に定義され、R
4~R
8の定義は後述する。)
【0013】
本発明で用いる第1のウレア化合物は、好ましくは下式(化4)で表される。
【化4】
【0014】
一般式(化2)及び一般式(化4)中、R3は、置換若しくは無置換であってもよい、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、好ましくは置換若しくは無置換のアリール基である。
これらが置換されている場合、その置換基は、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子である。また、複数のR3は、同じであっても異なっていてもよい。
一般式(化2)のベンゼン環中のR1-O-の位置は、同じであっても異なってもよく、好ましくは、3位、4位又は5位である。
一般式(化2)及び一般式(化4)のベンゼン環中のR3-SO2-O-の位置は、同じであっても異なってもよく、好ましくは、3位、4位又は5位である。
【0015】
このアルキル基は、例えば、直鎖状、分岐鎖状若しくは脂環状のアルキル基であり、炭素数は好ましくは1~12である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが挙げられる。
【0016】
このアラルキル基の炭素数は好ましくは7~12である。このアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、p-メチルベンジル基、m-メチルベンジル基、m-エチルベンジル基、p-エチルベンジル基、p-i-プロピルベンジル基、p-t-ブチルベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、o-メトキシベンジル基、m,p-ジ-メトキシベンジル基、p-エトキシ-m-メトキシベンジル基、p-フェニルメチルベンジル基、p-クミルベンジル基、p-フェニルベンジル基、o-フェニルベンジル基、m-フェニルベンジル基、p-トリルベンジル基、m-トリルベンジル基、o-トリルベンジル基、p-クロロベンジル基などの無置換又はアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基若しくはハロゲン原子で置換されたアラルキル基などが挙げられる。
【0017】
このアリール基の炭素数は好ましくは6~12である。このアリール基としては、例えば、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、メシチレン基、p-エチルフェニル基、p-i-プロピルフェニル基、p-t-ブチルフェニル基、p-メトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基、p-クロロフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、t-ブチル化ナフチル基などの無置換又はアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基若しくはハロゲン原子で置換されたアリール基などが挙げられる。
【0018】
上記一般式(化1、2、4)中、R
3は、好ましくは下式で表される基である。
【化5】
上記式中、R
4~R
8は、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、又はアリールアミノ基を表す。
【0019】
R2は、水素原子又はアルキル基、好ましくは水素原子を表し、このアルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などである。
一般式(化2)のベンゼン環中のR2の位置は、同じであっても異なってもよく、好ましくは3位、4位又は5位である。
【0020】
本発明の第1のウレア化合物として、下記一般式(化6)で表されるウレア化合物が更に好ましい。
【化6】
一般式(化6)中、R
9はアルキル基又はアルコキシ基、好ましくはアルキル基であり、oは0~3、好ましくは0~2、より好ましくは0~1の整数を表す。このアルキル基の炭素数は、例えば、1~12、好ましくは1~8、より好ましくは1~4である。
一般式(化6)のベンゼン環中のR
9の位置は、同じであっても異なってもよく、好ましくは3位、4位又は5位、好ましくは4位である。
【0021】
また、本発明の第1のウレア化合物として、例えば、N,N'-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)-4-メチル-フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)-4-エチル-フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)-5-メチル-フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)-4-プロピル-フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(m-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)-4-メチル-フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-キシレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(m-キシレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(1-ナフタレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-エチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-プロピルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-イソプロピルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-t-ブチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(m-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(o-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(m,p-ジメトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-エトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-プロポキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-ブトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-クミルベンジルスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-クミルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(o-フェニルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-フェニルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(p-クロロベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[4-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N'-ジ-[3-(ベンジルスルホニルオキシ)フェニル]尿素、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明で用いる第2のウレア化合物として、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドが好ましく、この化合物は下式で表され、例えば、日本曹達株式会社から商品名NKK1304として入手可能である。
【化7】
【0023】
本発明の感熱記録層中のウレア化合物の含有量(固形分、ウレア化合物を複数含む場合は総量)は、1.0~70.0重量%、好ましくは5.0~65.0重量%、より好ましくは10.0~60.0重量部である。
本発明の感熱記録層中の前記第1のウレア化合物の同含有量は、1.0~50.0重量%、好ましくは5.0~40.0重量%である。また、前記第2のウレア化合物の同含有量は、5.0~50.0重量%、好ましくは5.0~40.0重量%である。
なお、本発明の感熱記録層が、第1及び第2のウレア化合物を含む場合、感熱記録層中の前記第2のウレア化合物の含有量は、前記第1のウレア化合物1.0重量部に対して、好ましくは0.1~30.0重量部、より好ましくは0.5~25.0重量部、更に好ましくは1.0~20.0重量部、特に好ましくは2.0~15.0重量部である。
【0024】
本発明の感熱記録層は、前記第1又は第2のウレア化合物以外の顕色剤を使用してもよく、このような顕色剤として、例えば、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウムなどの無機酸性物質、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-n-プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4'-メチルジフェニルスルホン、4-ヒドロキシフェニル-4'-ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4'-メチルフェニルスルホン、1-[4-(4-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]-4-[4-(4-イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタン、特開2003-154760号公報記載のフェノール縮合組成物、特開平8-59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4-ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5-ジ(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3-オキサペンタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[α-メチル-α-(4'-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3-ビス[α-メチル-α-(4'-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、2,2'-チオビス(3-tert-オクチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-tert-オクチルフェノール)、WO02/081229号あるいは特開2002-301873号公報記載の化合物、またN,N'-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p-クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4-[2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4-[3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5-[p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、及びこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。これらの顕色剤は、単独又は2種以上混合して使用することもできる。1-[4-(4-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]-4-[4-(4-イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタンは、例えば、株式会社エーピーアイコーポレーション製商品名JKY-214として入手可能であり、特開2003-154760号公報記載のフェノール縮合組成物は、例えば、株式会社エーピーアイコーポレーション製商品名JKY-224として入手可能である。また、WO02/081229号等に記載の化合物は、日本曹達(株)製商品名NKK-395、D-100として入手可能である。この他、特開平10-258577号公報記載の高級脂肪酸金属複塩や多価ヒドロキシ芳香族化合物などの金属キレート型発色成分を含有することもできる。
【0025】
本発明の感熱記録層が、第1又は第2のウレア化合物以外の顕色剤を含有する場合、感熱記録層中に含有される全顕色剤(前記第1及び/又は第2のウレア化合物を含む)に対する、使用する第1及び/又は第2のウレア化合物の合計含有量(固形分)は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
【0026】
本発明の感熱記録層は、上記顕色剤以外に、ロイコ染料を必須に含有し、更に任意に、増感剤、バインダー、顔料、架橋剤、画像安定剤、その他の成分を含有してもよい。
本発明で使用するロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙分野で公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系化合物、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料前駆体は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
【0028】
<フルオラン系ロイコ染料>
3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔a〕フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔c〕フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-キシルアミノ)-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイディノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-メトキシ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ニトロ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-アミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-フェニル-6-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ベンジル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ヒドロキシ-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2,4-ジメチル-6-〔(4-ジメチルアミノ)アニリノ〕-フルオラン
【0029】
<フルオレン系ロイコ染料>
3,6,6'-トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕、3,6,6'-トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕
【0030】
<ジビニル系ロイコ染料>
3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス-〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド
【0031】
<その他>
3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-シクロヘキシルエチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(3'-ニトロ)アニリノラクタム、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(4'-ニトロ)アニリノラクタム、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジニトリルエタン、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2-β-ナフトイルエタン、1,1-ビス-〔2',2',2'',2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジアセチルエタン、ビス-〔2,2,2',2'-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-メチルマロン酸ジメチルエステル
【0032】
本発明で使用する増感剤としては、従来公知の増感剤を使用することができる。かかる増感剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アマイド、エチレンビスアミド、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、1,2-ビス-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-ベンジルビフェニル、β-ベンジルオキシナフタレン、4-ビフェニル-p-トリルエーテル、m-ターフェニル、1,2-ジフェノキシエタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、テレフタル酸ジベンジル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-α-ナフチルカーボネート、1,4-ジエトキシナフタレン、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニルエステル、o-キシレン-ビス-(フェニルエーテル)、4-(m-メチルフェノキシメチル)ビフェニル、4,4'-エチレンジオキシ-ビス-安息香酸ジベンジルエステル、ジベンゾイルオキシメタン、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エチレン、ビス[2-(4-メトキシ-フェノキシ)エチル]エーテル、p-ニトロ安息香酸メチル、p-トルエンスルホン酸フェニル、o-トルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホンアミドなどを例示することができる。これらの増感剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0033】
本発明で使用する顔料としては、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられ、要求品質に応じて併用することもできる。この顔料としては、50%粒径が1μm以下の炭酸カルシウム又はカオリンが好ましい。
【0034】
本発明の感熱記録層で使用できるバインダーとしては、SBラテックス及び後述の保護層で挙げられる(1)又は(2)のアクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
SBラテックスとして、例えば、DL-612、L-7063、L-5930、L-7431、A-7688、L-7850(以上、旭化成製)、ローデックス0695、ローデックス0696、ローデックス0561、ローデックス2108、ローデックス0533、ローデックス0545、ローデックス0548、ローデックス0568、ローデックス0569、ローデックス0573(以上、JSR製)、Nipol LX110、Nipol LX421、Nipol LX432M、Nipol LX435(以上、日本ゼオン製)、ナルスターSR-107、ナルスターSR-110、ナルスターSR-112、ナルスターSR-113、ナルスターSR-116、ナルスターSR-117、ナルスターSR-118、ナルスターSR-130、ナルスターSR-140、ナルスターSR-142、SN307R(以上、日本A&L製)等を使用できる。
【0035】
本発明においては、このほかのバインダーを使用してもよい。このようなバインダーとして、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、シラン変性アクリル系樹脂、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるその他のアクリル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの澱粉類、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、カゼイン、アラビヤゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などを例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することもできる。
【0036】
また、本発明の感熱記録層中に架橋剤を併用することもできる。架橋剤としては、カルボジイミド系の架橋剤、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等のエピクロロヒドリン系樹脂、ポリアミド尿素系樹脂、ポリアルキレンポリアミン樹脂、ポリアルキレンポリアミド樹脂、ポリアミンポリ尿素系樹脂、変性ポリアミン樹脂、変性ポリアミド樹脂、ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂、又はポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂等のポリアミン/ポリアミド系樹脂、グリオキザール、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウムなどを例示することができるが、カルボジイミド系の架橋剤を含有することが好ましい。
【0037】
本発明で使用する滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類などが挙げられる。
【0038】
本発明においては、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、画像部の耐油性等を向上させる安定剤として、4,4′-ブチリデン(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2′-ジ-t-ブチル-5,5′-ジメチル-4,4′-スルホニルジフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等を添加することもできる。このほかにベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等を使用することができる。
【0039】
本発明の感熱記録層で使用するロイコ染料、顕色剤、増感剤、その他の各種成分の種類及び量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ染料1重量部に対して顕色剤0.5~10重量部、増感剤0.1~10重量部、顔料0.5~20重量部、安定化剤0.01~10重量部、その他の成分0.01~10重量部程度を使用する。バインダーは感熱記録層固形分中5~25重量%程度が適当である。
感熱記録層中、バインダー中のSBラテックスの量は、固形分で、好ましくは5.0~40重量%、より好ましくは10~30重量%である。
また感熱記録層中の架橋剤の量は、固形分で、好ましくは0.3~5.0重量%、より好ましくは0.5~3.0重量%である。
【0040】
本発明において、ロイコ染料、顕色剤並びに必要に応じて添加する材料は、ボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダー及び目的に応じて各種の添加材料を加えて塗工液とする。この塗工液に用いる溶媒としては水あるいはアルコール等を用いることができ、その固形分は20~40重量%程度である。
【0041】
本発明の感熱記録体においては、感熱記録層上に更に保護層を設け、この保護層は、アクリル系樹脂を含有する。アクリル樹脂は、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体であり、例えば、ポリアクリル酸及びその誘導体、スチレン/アクリル酸共重合体及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミド及びそれらの誘導体、スチレン/アクリル酸/アクリルアミド共重合体、アクリル酸エステル系(共)重合体、スチレン/アクリル系共重合体などが挙げられる。
本発明においては、このアクリル樹脂として、好ましくは、シラン変性アクリル系樹脂又は高Tgアクリル系樹脂を使用する。
【0042】
本発明で用いるシラン変性アクリル系樹脂は、界面活性剤の存在下で、複数種類の重合性不飽和単量体を多段階乳化重合して得られる水性樹脂エマルションである。
このシラン変性アクリル系樹脂は、下記(a1)、(a2)及び(a3)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Aから成るコアと、下記(a1)及び(a2)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Bから成るシェルとから成るコアシェル型粒子の水性エマルジョンである。
(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル
(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(b)アリル基、及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤
この共重合体Aは、前記(a1)、(a2)及び(a3)にスチレンモノマーを加えて(b)の存在下で重合させて成ってもよく、及び/又は共重合体Bが、前記(a1)及び(a2)にスチレンモノマーを加えて(b)の存在下で重合させて成ってもよい。
【0043】
<(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル>について
本明細書では、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の双方を示し、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種を含むことを意味する。
「(メタ)アクリル酸エステル」とは(メタ)アクリル酸のエステル、すなわち(メタ)アクリレートをいう。(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートの双方を示し、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種を含むことを意味する。
尚、ビニル基と酸素が結合した構造を有するビニルエステル、例えば酢酸ビニル等は、本明細書において、(メタ)アクリレートに含まれない。
【0044】
(メタ)アクリレートの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ベヘニル及びドコシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等を例示できる。
これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0045】
本発明の実施形態において、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸n-ブチル(n-BA)、メタクリル酸n-ブチル(n-BMA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
<(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体>について
アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体とは、乳化重合反応によって得られる水性樹脂エマルション樹脂に、アルコキシシリル基を付与することができる化合物をいい、本発明の水性樹脂エマルションを得ることができるものであれば特に制限されるものではない。
アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体は、アルコキシシリル基とエチレン性二重結合を共に有し、アルコキシシリル基とエチレン性二重結合は、例えば、エステル結合、アミド結合及びアルキレン基等の他の官能基を介して結合してよい。
ここで「アルコキシシリル基」とは、加水分解することによってケイ素に結合するヒドロキシル基(Si-OH)を与えるケイ素含有の官能基をいう。「アルコキシシリル基」として、例えば、トリメトキシシル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシシリル基、モノエトキシシリル基、及びモノメトキシシリル基等のアルコキシシルリ基を例示できる。特に、トリメトキシシリル基及びトリエトキシシリル基が好ましい。
【0047】
本明細書において「エチレン性二重結合」とは、重合反応(ラジカル重合)し得る炭素原子間二重結合をいう。そのようなエチレン性二重結合を有する官能基として、例えば、ビニル基(CH2=CH-)、(メタ)アリル基(CH2=CH-CH2-及びCH2=C(CH3)-CH2-)、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CH-COO-及びCH2=C(CH3)-COO-)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(CH2=CH-COO-R-及びCH2=C(CH3)-COO-R-)及び-COO-CH=CH-COO-等を例示できる。
尚、アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体は、上述の(メタ)アクリル酸エステルに含まれない。
【0048】
アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体として、下記式(1)で示される化合物を例示できる。
R11Si(OR12)(OR13)(OR14) (1)
式中、R11はエチレン性二重結合を有する官能基であり、R12、R13及びR14は、炭素数1~5のアルキル基である。R12、R13及びR14は、相互に同一でも異なってもよい。
R11のエチレン性二重結合を有する官能基として、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル基、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル基、3-(メタ)アクリロイルオキシブチル基、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルを例示できる。
【0049】
R12、R13及びR14の炭素数1~5のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、及びn-ペンチル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を例示できる。
「アルコキシシリル基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体」として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリn-ブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランが挙げられる。
具体的には、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましく、特に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
これらのアルコキシシリル基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0050】
<(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体>について
カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上述したように、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。(メタ)アクリル酸として、アクリル酸を用いることが特に好ましい。
「エチレン性二重結合」については、上述の通りである。
【0051】
<(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤>について
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩としては、アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸エステルアンモニウム塩、アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸エステルナトリウム塩、アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸エステルカリウム塩が挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルカリウム塩;α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステルアンモニウム塩、α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステルナトリウム塩、α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステルカリウム塩;等が挙げられる。これら硫酸塩は、単独でも複数で用いられても良い。
【0052】
本発明のアリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩としては、硫酸アンモニウム塩が好ましく、すなわち、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩が本発明には好ましく、特にポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩が本発明にとって最も望ましい。
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩の市販品として、例えば、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である第一工業製薬社製の「アクアロンKH-10」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長10)、「アクアロンKH-1025」(商品名、「アクアロンKH-10」の25%水溶液);α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩である旭電化工業社製の「アデカリアソープ(商標)SR-1025」等が挙げられる。
【0053】
なお、この重合性不飽和単量体は、目的とする水性樹脂エマルションが得られる限り、「その他の単量体」を含んでよい。「その他の単量体」とは、(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体、(メタ)アクリル酸以外の単量体をいう。
「その他の単量体」の一例を以下に示すが、以下に限定されるものではない。スチレン及びスチレンスルホン酸等のスチレン系単量体;イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル;及び (メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド。
【0054】
<多段階乳化重合>
本発明のシラン変性アクリル系樹脂(水性樹脂エマルション)は、界面活性剤の存在下で、重合性不飽和単量体が多段階乳化重合することで得られる。
本発明の一つの実施態様において、重合性不飽和単量体を複数段階(実質2段階)の工程で乳化重合する。最終段以外の重合時に用いられる重合性不飽和単量体(上記a1、a2、a3及びb)を重合性不飽和単量体Aとし、得られた重合体を共重合体Aといい、最終段階の重合時に用いられる重合性不飽和単量体(上記a1、a2及びb)を重合性不飽和単量体Bとし、得られた重合体を共重合体Bという。
多段階乳化重合によって最終的に得られる水性樹脂エマルションは、重合性不飽和単量体Aが重合して得られるプレエマルションに、重合性不飽和単量体Bを重合させることで得られる。
【0055】
多段階乳化重合で得られた水性樹脂エマルションは、多層構造(コアシェル)である。
本発明では、多段階乳化重合に用いられる重合性不飽和単量体Aは、最終段階以外で用いる重合性不飽和単量体Aと最終段階で用いる重合性不飽和単量体Bとを有し、重合性不飽和単量体Bと重合性不飽和単量体Aとの質量比(重合性不飽和単量体B/重合性不飽和単量体A)が30/70~70/30が好ましく、特に40/60~60/40が好ましい。
重合性不飽和単量体Bと重合性不飽和単量体Aとの質量比が上記割合であることによって、本発明の水性樹脂組成物(水性樹脂エマルション)は、塗工性と耐久性(耐水性、耐溶剤性)のバランスに優れたものとなる。
【0056】
共重合体A中、上記a1、a2及びa3の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a2重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは0.05~1.0重量%、より好ましくは0.4~0.8重量%であり、上記a3重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは2.0~6.0重量%であり、残部はa1重合性不飽和単量体であるが、上記a1、a2及びa3の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a1重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは89~99重量%、より好ましくは90~98重量%である。
共重合体B中、上記a1及びa2の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a2重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは0.01~1.0重量%、より好ましくは0.1~0.4重量%であり、残部はa1重合性不飽和単量体であるが、上記a1及びa2の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a1重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは85~99.9重量%、より好ましくは95~99.9重量%である。
なお、共重合体A及びB(即ち、シラン変性アクリル系樹脂)の合成における、上記a1、a2及びa3の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤の割合は、該合成工程における総量で、好ましくは0.5~5重量%である。
本発明のシラン変性アクリル系樹脂(水性樹脂エマルション)は、例えば、ヘンケルジャパン株式会社から商品名:AQUENCE EPIX BC 21066として入手可能である。
【0057】
以下、この多段階乳化重合の工程の一例を記載する。
先ず、反応容器に、(a1)(メタ)アクリル酸エステル 、(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体 及び(a3)カルボキシル基を有する単量体を均一に混合し、重合性不飽和単量体Aの混合物を調製する。
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩に水(若しくは水性媒体)を加えて水溶液とし、この水溶液に重合性不飽和単量体Aの混合物を添加し、単量体乳化物Aを調製する。
別の容器内に、単量体乳化物Aとは別に、単量体乳化物Bを調製する。単量体乳化物Bの調製は、単量体乳化物Aの調製と同様で差し支えない。具体的には、(a1)(メタ)アクリル酸エステル及び(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体 を有する単量体を均一に混合し、重合性不飽和単量体Bの混合物を調製する。
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩の水溶液に重合性不飽和単量体Bの混合物を添加し、単量体乳化物Bとする。
【0058】
次に、撹拌機、温度計等を備えた反応器に、水及び(b)アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩を仕込み、単量体乳化物Aの一部と、触媒を添加する。反応器内の温度を適温に保ったまま、単量体乳化物Aの残りと、触媒をさらに滴化し、プレエマルションを調製する。
このプレエマルションに、単量体乳化物Bと触媒を滴下して重合することで、最終生成物である水性樹脂エマルションを多段階乳化重合で合成する。
ここで用いる触媒としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t-ブチルペルオキシベンゾエート、2,2-アゾビスイソブチトニトリル(AIBN)及び2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、及び2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 等を例示することができ、特に、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムが好ましい。
【0059】
本発明の保護層で用いるシラン変性アクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)は、好ましくは-10℃以上50℃以下、より好ましくは0℃以上50℃以下である。また、共重合体Aのガラス転移温度は、好ましくは共重合体Bのガラス転移温度より低い。また、共重合体Aのガラス転移温度が-20~20℃であることが好ましく、-10~20℃であることがより好ましく、-10~15℃であることが特に好ましい。さらに、共重合体Bのガラス転移温度が10~50℃であることが好ましく、25~50℃であることがより好ましく、30~50℃であることが特に好ましい。
また、本発明で用いるアクリル系樹脂の最低造膜温度(MFT)は好ましくは25℃以下であり、より好ましくは、0℃~25℃である。最低造膜温度(MFT)が0℃~25℃の場合、特に溶剤バリア性が良好となる。
なお、アクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)及び最低造膜温度(MFT)は示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
【0060】
本発明の保護層で用いる高Tgアクリル系樹脂は、非コアシェル型アクリル系樹脂であって、そのガラス転移点(Tg)は、50℃より高く95℃以下である。このTgは示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
この高Tgアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分を含み、(メタ)アクリル酸が非コアシェル型アクリル系樹脂100重量部中1~10重量部であることが好ましい。(メタ)アクリル酸は、アルカリ可溶性であり、中和剤の添加により非コアシェル型アクリル系樹脂を水溶性樹脂にする特性を有している。非コアシェル型アクリル系樹脂を水溶性樹脂に変化させることによって、特に保護層中に顔料を含有する場合、顔料への結合性が著しく向上し、多量の顔料含有下でも優れた強度を有する保護層を形成することができる。(メタ)アクリル酸と共重合可能な成分としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどのアクリル酸アルキル樹脂及びエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、スチレン又はその誘導体によって変性された上記アクリル酸アルキル樹脂などの変性アクリル酸アルキル樹脂、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキルアクリル酸エステルを例示できるが、特に(メタ)アクリロニトリル及び/又はメタクリル酸メチルを配合することが好ましい。(メタ)アクリロニトリルは非コアシェル型アクリル系樹脂100部中15~70部配合することが好ましい。また、メタクリル酸メチルは非コアシェル型アクリル系樹脂100部中20~80部含むことが好ましい。(メタ)アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルを含む場合、(メタ)アクリロニトリルを非コアシェル型アクリル系樹脂100部中15~18部、メタクリル酸メチルを非コアシェル型アクリル系樹脂100部中20~80部配合することが好ましい。
【0061】
本発明の保護層で使用できるその他のバインダーとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるアクリル系樹脂(上記のシラン変性アクリル系樹脂及び高Tgアクリル系樹脂を除く)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの澱粉類、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、カゼイン、アラビヤゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などを例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することもできる。
【0062】
本発明の保護層は、バインダー(上記のシラン変性アクリル系樹脂及び高Tgアクリル系樹脂を含む)を含有し、必要に応じて、感熱記録層について示した顔料や架橋剤などの任意成分を含有してもよい。
保護層中のバインダーの量又はバインダーと顔料の総量は、固形分で、通常80.0~100.0重量%、好ましくは90.0~100.0重量%であり、顔料100重量部に対してバインダーは30.0~300.0重量部程度であることが好ましい。
本発明の保護層中のアクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5.0~80.0重量%、より好ましくは5.0~60.0重量%、更に好ましくは15.0~50.0である。
また、本発明の保護層中のシラン変性アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは10.0~70.0重量%、より好ましくは30.0~60.0重量%であり、該保護層中の高Tgアクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5.0~50.0重量%、より好ましくは10.0~40.0重量%である。
また保護層中の架橋剤の量は、固形分で、好ましくは1.0~15重量%、より好ましくは2.0~7.0重量%である。
その外の成分は、それぞれ保護層中15.0重量%、好ましくは10.0重量%を超えない。
【0063】
本発明において、感熱記録層及び感熱記録層以外の塗工層、即ち保護層、下塗り層などを塗工する手段は特に限定されるものではなく、周知慣用技術に従って塗布することができる。例えばエアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ベントブレードコーター、ベベルブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーターなど各種コーターを備えたオフマシン塗工機やオンマシン塗工機が適宜選択され使用される。
感熱記録層及び感熱記録層以外の塗工層の塗工量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、感熱記録層の一般的な塗工量は固形分で2~12g/m2程度であり、保護層の塗工量は固形分で0.5~5.0g/m2が好ましい。
また、各塗工層の塗工後にスーパーカレンダー掛けなどの平滑化処理を施すなど、感熱記録体分野における各種公知の技術を必要適宜付加することができる。
【0064】
本発明で用いるヒートシール層は、特に制限されず、スチレン-アクリル系共重合体、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系共重合体、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のヒートシール用途に用いられる熱可塑性樹脂を特に制限することなく使用することができる。
【0065】
次に、本発明のヒートシール用感熱記録体を製造する方法の一例を説明する。
本発明のヒートシール用感熱記録体は、基材の一方の面に感熱記録層/保護層を設け、他方の面にヒートシール層を設けて形成される。感熱記録層/保護層とヒートシール層はどちらを先に形成しても良く、特に限定されるものではない。
ヒートシール層は、押出しラミネーション法、共押出しラミネーション法を単独またはこれらを適宜組み合せて形成することが可能である。押出しラミネーションとは、熱可塑性樹脂を溶融状態でTダイに導き、Tダイから押出して基材上に熱可塑性樹脂を積層接着する方法である。
その加工条件は、樹脂の種類や装置等により特に限定されないが、例えば、加工温度250~330℃、加工速度100~200m/分で溶融押出しを行うことができる。さらに基材が紙である場合は、紙との接着性を高める為に押出し塗工前の基材の表面にフレーム(火炎)処理、コロナ放電処理及び予熱処理、又は積層されるべき樹脂層の基材と接する面にオゾン処理等の処理を施すと、低温で両層間に接着性を付与することが望ましい。さらにラミネート後のラミネート樹脂層表面にコロナ処理、フレーム処理等各種表面処理を施すことも可能である。これら表面処理を施すことによりヒートシール適性を向上する事ができる
【0066】
ヒートシール処理は、本願発明のヒートシール用感熱記録体のヒートシール層領域を、被着物(例えば、容器)に被せた状態で、感熱記録層が設けられた側から、ヒートシールバーを、感熱記録層の領域に接しないように、ヒートシール用感熱記録体に押し当てて加熱することにより、ヒートシール層を被着物に融着させる(例えば、
図1)。良好なシール性を得るために、ヒートシール温度は、150℃以上が好ましい。
【実施例0067】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例及び比較例中、特にことわらない限り「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
感熱記録体を製造するため、各分散液と塗工液を以下のように調製した。
【0068】
下記配合の顕色剤分散液(A1~A6液)、ロイコ染料分散液(B液)、増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5μmになるまで湿式磨砕を行い、調製した。
【0069】
顕色剤分散液(A1液)
N,N'-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素(三光株式
会社製、S176、融点160℃) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:PVA117、
固形分10%) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液(A2液)
N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(日本曹達
株式会社製、NKK1304、融点159℃) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液(A3液)
ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン(日本化薬株式会社製、
商品名:TGSA、融点146℃) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液(A4液)
4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホン(日華化学株式会社製、
商品名:BPS-MA3、融点164℃) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液(A5液)
4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン(三菱ケミカル株式会社
製、商品名:NYDS、融点128℃) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液(A6液)
下式で表される化合物(日本曹達株式会社製、商品名:D90、融点123℃)
【化8】
6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
【0070】
ロイコ染料分散液(B液)
3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(山本化成株式会社製、
商品名:ODB-2) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
増感剤分散液(C液)
1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン(三光株式会社製、商品名:KS232)
6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
【0071】
次いで、下記のようにシラン変性アクリル樹脂を合成した。
[シラン変性アクリル系樹脂]
以下の製造例で、水性エマルションを、(A)単量体乳化物(共重合体A)及び(B)単量体乳化物(共重合体B)から調製した。(A)及び(B)を製造するための重合性不飽和単量体、界面活性剤、及び各添加剤について以下に記載する。
尚、重合性不飽和単量体のホモポリマーTgは、文献値であり、(a)重合性不飽和単量体の共重合体のTgと(b)重合性不飽和単量体の共重合体のTgは、理論計算式で算出された値である。
【0072】
<重合性不飽和単量体>
メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート、以下、「MMA」という、富士フィルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=105℃)
アクリル酸2-エチルヘキシル(2-エチルヘキシルアクリレート、以下、「2EHA」という、富士フィルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=-70℃)
アクリル酸n-ブチル(n-ブチルアクリレート、以下、「n-BA」という、富士フィルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=-54℃)
メタクリル酸n-ブチル(n-ブチルメタクリレート、以下、「n-BMA」という、富士フィルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=20℃)
メタクリル酸シクロヘキシル(シクロヘキシルメタクリレート、以下、「CHMA」という、富士フィルム和光純薬製、ホモポリマーのTg=83℃)
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(富士フィルム和光純薬製社製)
アクリル酸(以下、「AA」という、富士フィルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=106℃)
スチレン(以下、「St」という、富士フィルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=100℃)
<界面活性剤>
ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル流酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、アクアロンKH10)(以下「b」で表す)
【0073】
[製造例1]
複数の重合性不飽和単量体から単量体乳化物を調製し、その後、単量体乳化物からプレエマルションを調製し、プレエマルションから水性樹脂エマルションを合成した。具体的な工程は以下のとおりである。
【0074】
((A)単量体乳化物の調製)
表1に示されるように、(a1-1)MMA5質量部、(a1-3)BA23質量部、(a1-4)BMA10質量部、(a1-5)CHMA10質量部、(a2)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部、(a3)AA2質量部を均一に混合し、重合性不飽和単量体溶液(50.3質量部)を調製した。
水14質量部、(b)ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.1質量部が均一に混合された溶液に、上記重合性不飽和単量体溶液を添加し、攪拌機でこれら混合溶液を攪拌して(A)単量体乳化物を得た。
【0075】
((B)単量体乳化物の調製)
(A)表1に示されるように、(a1-1)MMA16.6質量部、(a1-3)BA13質量部、(a1-4)BMA10質量部、(a1-5)CHMA10質量部、(a2)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.1質量部を均一に混合し、重合性不飽和単量体溶液を調製した。
水14質量部、(b)ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.1質量部が均一に混合された溶液に、上記重合性不飽和単量体溶液を添加し、攪拌機でこれら混合溶液を攪拌して(B)単量体乳化物を得た。
【0076】
(プレエマルションの合成)
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた反応器に、水78質量部及び(b)ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩1.25質量部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、その仕込み液を80℃に加熱した。
その後、その仕込み液に、(A)単量体乳化物(重合性不飽和単量体を50.3質量部含み、その重合性不飽和単量体の10.1質量部に相当する部分)、1質量%の過硫酸ナトリウム(以下、「SPS」ともいう)水溶液2質量部を添加した。
さらに10分後、反応器内の温度を80℃に保ったまま、上述の(A)単量体乳化物の残り((a)重合性不飽和単量体40.2質量部に相当する部分)及び重合触媒であるSPSの1%水溶液4質量部を各々同時に2時間かけて滴下し、プレエマルジョン((a)重合性不飽和単量体に基づく水性樹脂エマルション)を得た。
【0077】
(水性樹脂エマルションの合成)
反応器内の温度を80℃に保ち、滴下終了から30分後、上述の(B)単量体乳化物(不飽和重合性単量体を49.7質量部含む)、SPSの1%水溶液4質量部を、各々同時に2時間かけて上述のプレエマルションに滴下し、水性樹脂エマルションを得た。
得られた水性樹脂エマルジョンをアンモニア水でpH8.0に調整した。水性樹脂エマルションは、(A)重合性不飽和単量体(共重合体A)ガラス転移温度が-3.8℃、(B)重合性不飽和単量体(共重合体B)のガラス転移温度が26.7℃、固形分濃度が45質量%であった。固形分は、105℃のオーブン中で3時間乾燥し、乾燥前の質量に対する残留する部分の質量百分率である。
このシラン変性アクリル系樹脂は、Tg18℃、MFT22℃、固形分40%であって、またヘンケル社から商品名:AD221としても入手可能である。
得られた水性樹脂エマルションをシラン変性アクリル系樹脂又はAD221と呼ぶ。
【0078】
次いで、下記の割合で各分散液を混合して感熱記録層用塗工液を調製した。
<感熱記録層用塗工液1>
炭酸カルシウム分散液1(粒子径0.15μm、粒固形分60%、以下"ナノ炭カル"
ともいう。) 2.0部
顕色剤分散液(A1液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(日本A&L製、商品名:SN307R、
固形分48%、以下"SBR"という。) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル製、商品名:カルボジライトSV-02、
固形分40%) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(花王社製、ペレックスOT-P、
固形分70%) 0.5部
【0079】
<感熱記録層用塗工液2>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A2液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0080】
<感熱記録層用塗工液3>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A3液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0081】
<感熱記録層用塗工液4>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A4液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0082】
<感熱記録層用塗工液5>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A1液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シラン変性アクリル系樹脂 34.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0083】
<感熱記録層用塗工液6>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A1液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0084】
<感熱記録層用塗工液7>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A1液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0085】
<感熱記録層用塗工液8>
炭酸カルシウム分散液2(白石カルシウム社製、商品名:カルライトKT、
粒子径2.3μm、固形分50%) 2.4部
顕色剤分散液(A1液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0086】
<感熱記録層用塗工液9>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A5液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0087】
<感熱記録層用塗工液10>
炭酸カルシウム分散液1 2.0部
顕色剤分散液(A6液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SN307R) 20.0部
シラン変性アクリル系樹脂 10.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(ペレックスOT-P) 0.5部
【0088】
次いで、下記の割合で各分散液を混合して保護層用塗工液を調製した。
<保護層用塗工液1>
炭酸カルシウム分散液1 5.0部
シラン変性アクリル系樹脂 5.0部
非コアシェル型アクリル系樹脂(三井化学社製、商品名:ASN1004K、
シラン変性なし、スチレンアクリル、Tg55℃、MFT18℃、固形分18%)
11.1部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 1.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
【0089】
<保護層用塗工液2>
炭酸カルシウム分散液1 5.0部
非コアシェル型アクリル系樹脂(ASN1004K) 22.2部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 1.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
【0090】
<保護層用塗工液3>
炭酸カルシウム分散液1 5.0部
シラン変性アクリル系樹脂1 10.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 1.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
【0091】
<保護層用塗工液4>
炭酸カルシウム分散液1 5.0部
シラン変性アクリル系樹脂1 5.0部
非コアシェル型アクリル系樹脂(ASN1004K) 11.1部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 1.0部
【0092】
<保護層用塗工液5>
炭酸カルシウム分散液2(カルライトKT) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 40.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 1.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
【0093】
<保護層用塗工液6>
炭酸カルシウム分散液1 5.0部
エチレン酢酸ビニル系樹脂(Wacker社製、EP706K、固形分55%)
7.3部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 1.0部
カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02) 2.0部
【0094】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(TOYOBO社製、スペースクリーン、ヘイズ5、厚さ30μm、以下「PET」という)上の一部に、感熱記録層用塗工液1を乾燥後の塗布量が5.0g/m2となるように、グラビア印刷機で塗布、乾燥した。この上に、保護層用塗工液1を乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように、グラビア方式で全面に塗布、乾燥した後に、感熱記録層の反対面に、グラビア方式で市松模様を印刷し、感熱記録体を得た。
続いて、ヒートシール性を持つ透明無延伸ポリプロピレンフィルム(TOYOBO製、パイレンP1128、厚さ30μm)に、ニッポランID-816(東ソー株式会社製)18部およびHARDENER300(東ソー株式会社製)1部を混合した接着剤を4g/m2になるようにグラビアコーターで塗布した後に、上記感熱記録体と、ポリプロピレンフィルムに塗布した接着剤が、感熱記録層の反対面(市松模様を印刷した面)に接するように、ドライラミネートし、ヒートシール用感熱記録体を作製した。
【0095】
[実施例2]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例3]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液3に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例4]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液4に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例5]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液5に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例6]
実施例1の保護層用塗工液1を、保護層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
【0096】
[実施例7]
実施例1の保護層用塗工液1を、保護層用塗工液3に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例8]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液6に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例9]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液7に変更し、保護層用塗工液1を、保護層用塗工液4に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例10]
実施例1の保護層用塗工液1を、保護層用塗工液5に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[実施例11]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液8に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
【0097】
[比較例1]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液9に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[比較例2]
実施例1の感熱記録層用塗工液1を、感熱記録層用塗工液10に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
[比較例3]
実施例1の保護層用塗工液1を、保護層用塗工液6に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール用感熱記録体を作製した。
【0098】
作製したヒートシール用感熱記録体について、下記評価を行った。
<熱雰囲気による地発色>
作製したヒートシール用感熱記録体について、感熱記録層領域と保護層領域が重なる部分の試験片を切り出し、温度90℃および120℃の環境に3分間保持した。処理後の地発色について、その濃度をマクベス濃度計(RD-914、アンバーフィルター使用)で測定し、以下の基準で評価した。評価が優か可であれば、前記のヒートシール加工について、実用上問題がない。
[評価基準]
優:濃度が0.3以下。
可:濃度が0.5以下。
不可:濃度が0.7以上。
【0099】
<ヒートシール時の融着>
作製したヒートシール用感熱記録体について、保護層のみの部分から試験片を切り出し、同じ大きさの上質紙と重ねて、加圧温度160℃、加圧圧力2kgf/cm2、加圧時間1秒でヒートシールした。試験片の、ヒートシールされた箇所を目視で観察し、以下の基準でヒートシール適性を評価した。評価が優か可であれば、実用上問題がない。
[評価基準]
優:ヒートシール機の加熱部に記録体表面が融着しない。
可:ヒートシール機の加熱部に記録体表面が少し融着するが、すぐ剥がれる。
不可:ヒートシール機の加熱部に記録体表面が融着する。
【0100】
<ヒートシール強度>
作製したヒートシール用感熱記録体について、保護層のみの部分から試験片を切り出し、同じ大きさの上質紙と重ねて、加圧温度160℃、加圧圧力2kgf/cm2、加圧時間1秒でヒートシールした。また、ヒートシール処理は、感熱記録領域がフィルム上の一部である場合は、感熱記録領域を避けて行った。
ヒートシールされた試験片を23℃50%Rhの室内で6時間静置した後、試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いてT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。この剥離強度が3N/15mm以上であれば、実用上問題がない。
【0101】
<耐熱破壊性>
作製したヒートシール用感熱記録体について、ゼブラ社製ラベルプリンタ140XiIIIを用い、印字レベル+30、印字速度50mm/秒(2インチ/秒)でベタ印字を行い、プリンタからの過剰な熱エネルギーに対する塗工層の耐熱性に関して、ベタ印字部の状態を以下の基準で目視評価した。
優:ベタ印字部が均一
可:ベタ印字部表面に少しムラがある
不可:ベタ印字部のムラが大きい
【0102】
<溶剤バリア性>
作製したヒートシール用感熱記録体の感熱記録層領域に、エタノール(99.5%)を綿棒で塗布し、23℃×50%RH環境条件下に24時間静置した後、以下の基準で目視評価した。
優:全く発色しない
可:僅かに発色する
不可:強く発色する
【0103】
<内容物の視認性>
作製したヒートシール用感熱記録体について、反対面に印刷した市松模様の見え方を、以下の基準で目視評価した。
優:市松模様がクリアに見える
可:市松模様がぼやけるが、視認可能
不可:市松模様が判読できない
<ヘイズ度>
作製したヒートシール用感熱記録体について、分光光度計(日立ハイテク製U-3900H)を用いて、感熱記録層領域と保護層領域が重なる部分のヘイズ度を測定した。
【0104】
評価結果を下表に示す。
【表1】
この表から、本発明のヒートシール用感熱記録体は、ヒートシール処理時の熱雰囲気による感熱記録層の地発色が防止され、ヒートシール用感熱記録体としての性能が優良であることが分かる。