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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162338
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241114BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241114BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/12 301L
H01L23/48 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077737
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野月 善一
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆一
(72)【発明者】
【氏名】後閑 博
(57)【要約】
【課題】半導体装置のチップ上、および基板上の接合部の接合状態を検出する超音波探傷検査では、接合部に複数のバスバが重なっていると接合部に到達する超音波が減少するため、接合部の異常の検出能力が低下する。しかし、接合部に複数のバスバが重ならないようなバスバ形状とするとバスバ形状が複雑化しインダクタンスが増加する問題があった。
【解決手段】上下アームを構成するP側半導体チップとN側半導体チップが内包された半導体装置において、接合部上方に複数のバスバが重ならないようにバスバにクランク部を形成したことを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導体基板に搭載される第1の半導体チップと、
第2の導体基板に搭載される第2の半導体チップと、
前記第1の導体基板と電源の正極とを電気的に接続するための第1のバスバと、
前記第2の半導体チップと前記電源の負極とを電気的に接続するための第2のバスバと、
前記第1の半導体チップと前記第2の導体基板とを電気的に接続するための第3のバスバと、を備える半導体装置であって、
前記第1のバスバは、一端部に前記電源の正極に接続される第1の端子、他端部に前記第1の導体基板に接合される第1の接合部を有し、
前記第1の端子の前記第1の導体基板からの突出方向をY軸の正方向とすると、前記Y軸の正方向と反対の負方向に前記第2の導体基板および前記第2の半導体チップが配置され、
前記第3のバスバは、一端部に前記第1の半導体チップと接合される第2の接合部、他端部に第2の導体基板に接合される第3の接合部を有し、
前記第2のバスバは、一端部に前記第2の半導体チップと接合される第4の接合部、他端部に前記Y軸の正方向に突出し、前記電源の負極に接続される第2の端子を有するとともに、前記第4の接合部から前記第2の端子までの間に前記Y軸と直交するX軸方向に屈曲するクランク部を有し、前記クランク部は、前記Y軸と垂直なZ軸方向から見て前記第2の接合部に前記第2のバスバが重ならないように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の端子および前記第2の端子は、平滑コンデンサを経由して前記電源の正極および負極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のバスバ、前記第2のバスバ、および前記第3のバスバのうち、少なくともいずれかのバスバは樹脂で封止されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3のバスバの幅を前記第2のバスバの幅よりも大きくし、前記第2のバスバと重ならない両端部に前記第3の接合部を有し、前記第3の接合部の間に前記第2のバスバが配置されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の接合部が、前記第1の半導体チップのY軸方向に延びる一辺に沿うように形成され、前記クランク部の前記Y軸方向に延びる部分において、前記第1のバスバと前記第2のバスバが一部で重なって対向し、かつ、前記第2のバスバは前記第1の接合部に重ならないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のバスバの前記第1の端子から前記第1の接合部への部分を前記X軸方向に屈曲させることにより、前記X軸方向に延びる屈曲部の電流経路と前記第1の導体基板に流れる電流経路とが互いに逆方向となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2のバスバは一体化され、樹脂で封止されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の半導体チップが前記X軸方向に複数並列に接続され、前記第2の半導体チップが前記X軸方向に前記第1の半導体チップと同数並列に接続され、前記第1のバスバから前記複数の第1の半導体チップに電流が供給されるとともに、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップと同数の前記第3のバスバにより前記第2の半導体チップに電流が供給され、前記第1の半導体チップおよび前記第2の半導体チップと同数のクランク部を有する第2のバスバにより、電流が前記第2の端子に流れるように電流経路が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の半導体チップが前記X軸方向に複数並列に接続され、前記第2の半導体チップが前記X軸方向に前記第1の半導体チップと同数並列に接続され、前記第3のバスバの一端部が前記複数の第1の半導体チップに接合され、他端部が複数の第2の半導体チップが配置された前記第2の導体基板に接合され、前記第1のバスバから前記複数の前記第1の半導体チップに電流が供給されるとともに、前記第3のバスバにより前記複数の第2の半導体チップに電流が供給され、前記第1の半導体チップおよび前記第2の半導体チップと同数のクランク部を有する第2のバスバにより、電流が前記第2の端子に流れるように電流経路が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1の導体基板に搭載される第1の半導体チップと、
第2の導体基板に搭載される第2の半導体チップと、
を備える半導体モジュールがU相、V相、W相の別に並列に配置され、
前記第1の導体基板と電源の正極とを電気的に接続するための第1のバスバは、一端部に前記電源の正極に接続された第1の端子、前記第1の導体基板に接合される第1の接合部を有し、前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間、および前記V相の第1の半導体チップと前記W相の第1の半導体チップとの間にそれぞれ配置され、
前記第1の半導体チップと前記第2の導体基板とを電気的に接続するための第3のバスバは、一端部に前記第1の半導体チップと接合される第2の接合部、他端部に前記第2の導体基板に接合される第3の接合部を有し、
前記第2の半導体チップと前記電源の負極とを電気的に接続するための第2のバスバは、一端部に前記第2の半導体チップと接合される第4の接合部、他端部に、前記電源の負極に接続される第2の端子を有するとともに、前記第4の接合部から前記第2の端子までの間に前記第2の接合部と重ならないように形成されたクランク部を有し、
前記クランク部の一部は、前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間、および前記V相の第1の半導体チップと前記W相の第1の半導体チップとの間にそれぞれ配置され、前記第1の接合部を除いて前記第1のバスバと対向して配置され、
前記第1の端子から入力されたU相とV相の電流が、前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された第1の接合部で分岐し、前記U相と前記V相のそれぞれの半導体モジュールの前記第2の接合部、前記第3の接合部、前記第4の接合部を経由した後、前記クランク部で合流して前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された前記第2のバスバの第2の端子から出力される第1の電流経路を形成するように構成され、
前記第1の端子から入力されたW相とV相の電流が、前記W相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された第1の接合部で分岐し、前記W相と前記V相のそれぞれの半導体モジュールの前記第2の接合部、前記第3の接合部、前記第4の接合部を経由した後、前記クランク部で合流して前記W相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された前記第2のバスバの第2の端子から出力される第2の電流経路を形成するように構成されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、RC-IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor;逆導通絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、及びIGBT(Insurated Gate Bipolar Transistor)とダイオードなどのスイッチング素子を複数備えたスイッチング素子群により、例えばn相を2×n個のスイッチング単位でモジュール内に収めた装置である。
【0003】
スイッチング素子群を1つのモジュールに収納するために、バスバ及び制御信号の配線がモジュール内に引き回されている。近年、大電力用のスイッチング素子を実装した半導体装置の実装工程の簡略化、小型化、及び高周波ノイズの発生源となるアーム構成のパワー主回路に寄生する一巡ループインダクタンス(以下、一巡Lsと称する)の低減が進められている。例えば特許文献1および2に開示された構成では、Pバスバ、およびACバスバとNバスバを対向させることで一巡Lsを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-17319号公報
【特許文献2】特開2011-23570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2では、バスバとチップの接合部、もしくはバスバと基板上の接合部の上方に複数のバスバが配置される。半導体モジュール内の一巡Lsを低減するためには、半導体モジュールのP側端子からN側端子までをできるだけ平行平板とする必要がある。しかし、チップ上、および基板上の接合部の接合状態を検出する超音波探傷検査(以下、SATと称す)では、接合部に複数のバスバが重なっていると接合部に到達する超音波が減少するため、接合部の異常の検出能力が低下するという問題があった。しかし、接合部に複数のバスバが重ならないようなバスバ形状とするとバスバ形状が複雑化しインダクタンスが増加する。このため、接合部の接合状態のSATの検出精度低下を抑制し、かつ低インダクタンス化する技術が求められている。
【0006】
本願は、上述のような問題を解決するためになされたもので、半導体装置内の接合部の異常を検出するためのSATの検出能力の低下を抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される半導体装置は、
第1の導体基板に搭載される第1の半導体チップと、
第2の導体基板に搭載される第2の半導体チップと、
第1の導体基板と電源の正極とを電気的に接続するための第1のバスバと、
第2の半導体チップと前記電源の負極とを電気的に接続するための第2のバスバと、
第1の半導体チップと前記第2の導体基板とを電気的に接続するための第3のバスバと、を備える半導体装置であって、
第1のバスバは、一端部に電源の正極に接続される第1の端子、他端部に前記第1の導体基板に接合される第1の接合部を有し、
第1の端子の第1の導体基板からの突出方向をY軸の正方向とすると、Y軸の正方向と反対の負方向に第2の導体基板および第2の半導体チップが配置され、
第3のバスバは、一端部に第1の半導体チップと接合される第2の接合部、他端部に第2の導体基板に接合される第3の接合部を有し、
第2のバスバは、一端部に第2の半導体チップと接合される第4の接合部、他端部にY軸の正方向に突出し、電源の負極に接続される第2の端子を有するとともに、第4の接合部から第2の端子までの間にY軸方向と直交するX軸方向に屈曲するクランク部を有し、クランク部は、Y軸方向と垂直なZ軸方向から見て第2の接合部に第2のバスバが重ならないように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される半導体装置は、半導体装置における接合部の上方に複数のバスバが重ならないため、SATによる接合部の異常の検出能力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るインバータ、直流電源およびモータの電気的構成を説明する図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の斜視図である。
図3】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
図4】比較例の半導体モジュールの上面図である。
図5】比較例の半導体モジュールを展開した斜視図である。
図6】比較例の半導体モジュールの電流経路を説明する透過上面図である。
図7】実施の形態1に係る半導体モジュールを展開した斜視図である。
図8】実施の形態1に係る半導体モジュールのバスバ接合部の位置を説明する透過上面図である。
図9】実施の形態2に係る半導体モジュールの上面図である。
図10】実施の形態2に係る半導体モジュールを展開した斜視図である。
図11】実施の形態2に係る半導体モジュールの電流経路およびバスバ接合部の位置を説明する透過上面図である。
図12】実施の形態3に係る半導体モジュールを展開した斜視図である。
図13】実施の形態3に係る半導体モジュールの電流経路およびバスバ接合部の位置を説明する透過上面図である。
図14】実施の形態4に係る半導体モジュールの斜視図である。
図15】実施の形態4に係る半導体モジュールの電流経路およびバスバ接合部の位置を説明する透過上面図である。
図16】実施の形態5に係る半導体装置の斜視図である。
図17】実施の形態5に係る半導体モジュールの斜視図である。
図18】実施の形態5に係る半導体モジュールの電流経路およびバスバ接合部の位置を説明する透過上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願に係る半導体装置の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、同一内容および相当部については同一符号を配し、その詳しい説明は省略する。以降の実施形態も同様に、同一符号を付した構成について重複した説明は省略する。
【0011】
実施の形態1.
以下、実施の形態1に係る半導体装置について、図面を参照して説明する。図1は、半導体モジュール4を含む半導体装置1と直流電源0、およびモータ8の接続を示す回路図である。本実施の形態では、半導体装置1を、インバータ1として説明するがこれに限るものではない。図2はインバータ1の内部構造を示す斜視図である。
【0012】
図1を参照して、インバータ1、直流電源0、およびモータ8の電気的構成を説明する。以下の説明ではインバータ1として、3相駆動方式のインバータ1を例に説明するがこれに限るものではない。インバータ1は、例えば車両に搭載される。図1に示すように、インバータ入力端子2にバッテリー等の直流電源0が接続され、インバータ出力端子3にモータ8が接続される。インバータ1は直流電源0から出力される直流電力を交流電力に変換してモータ8に供給する。
【0013】
インバータ1は、複数の並列接続されたコンデンサ素子15が内包された平滑コンデンサ10と3つの半導体モジュール4を備える。平滑コンデンサ10はインバータ入力端子2の正極と負極との間に接続される。なお、平滑コンデンサ10は1つのコンデンサ素子15のみを有する構成でもよい。平滑コンデンサ10は、直流電源0の電力変動、また半導体モジュール4側の電力変動に対して、電圧が変動しないよう安定させる働きがある。
各半導体モジュール4は、直流電源0の正極と負極との間に接続される。各半導体モジュール4は、上アーム側の、例えばRC-IGBTであるスイッチング素子SW1、下アーム側の、例えばRC-IGBTであるスイッチング素子SW2、を備える。スイッチング素子SW1、SW2はMOSFETでもよい。スイッチング素子SW1、SW2の材料としてSi以外にもSiCまたはGaNベースにしたものでもよい。また、スイッチング素子SW1、SW2のサイズは、例えば14mm×14mmである。スイッチング素子SW1、SW2は直列接続される。各半導体モジュール4のスイッチング素子SW1とSW2との接続点は、モータ8のU相、V相、W相のそれぞれのモータコイルに接続される。そして、インバータ1が3相駆動方式の場合、U相とV相とW相に流れる電流の位相差をそれぞれ120°ずらした状態でモータ8を駆動する。
【0014】
次に図2図3を用いて、インバータ1の構造を説明する。図2は、筐体を取り除いたインバータ1の斜視図である。図2のようにインバータ1はインバータ入力端子2と、平滑コンデンサ10と、複数の半導体モジュール4と、ヒートシンク5とインバータ出力端子3と、制御基板9(図3参照)とを有する。平滑コンデンサ10は複数のコンデンサ入力端子11と、複数のコンデンサ出力端子12が突出している。コンデンサ入力端子11の正極と負極がインバータ入力端子2の正極と負極にそれぞれ、ネジなどで電気的に接続される。
【0015】
半導体モジュール4は例えば封止材でモールドされたモールドモジュールで、モジュールP端子31、モジュールN端子41、モジュール出力端子21、制御端子29がモールドから突出している。半導体モジュール4のサイズは例えば幅30mm、長さ60mmである。
【0016】
複数のコンデンサ出力端子12の正極のそれぞれが、複数の半導体モジュール4のうち、対応する半導体モジュール4のモジュールP端子31と接続され、複数のコンデンサ出力端子12の負極のそれぞれが、対応する半導体モジュール4のモジュールN端子41に接続される。また、それぞれの半導体モジュール4から突出するモジュール出力端子21がU相、V相、W相のインバータ出力端子3に接続される。コンデンサ出力端子12とモジュールP端子31の接続箇所、コンデンサ出力端子12とモジュールN端子41の接続箇所、およびモジュール出力端子21とインバータ出力端子3の接続箇所は、例えばTIG溶接によって電気的に接続されていてもよく、ネジ端子台で接続されてもよい。また、半導体モジュール4はヒートシンク5に熱接続可能に接合される。熱接続可能な接合とは、例えばはんだ付けである。
【0017】
半導体モジュール4から突出した制御端子29は、図3に示す制御基板9に電気的に接続される。図3で示すように、本実施の形態では制御基板9はZ軸の正方向に配置されている。次に図3を参照して、半導体モジュール4内部のZ軸方向の構造を説明する。図3図2をA方向に見た時の断面図である。概念図であるため実際の寸法とは異なる。平滑コンデンサ10の内部には、コンデンサ素子15とコンデンサ素子15の正極、負極にそれぞれ接続されたコンデンサPバスバ13とコンデンサNバスバ14が樹脂封止されている。コンデンサPバスバ13、コンデンサNバスバ14は、それぞれコンデンサ出力端子12の正極、または負極と一体化して形成されていても良い。
【0018】
半導体モジュール4は、P側半導体チップ22と、P側半導体チップ22がチップ下接合材26によって接合されたP側導体基板24と、N側半導体チップ23と、N側半導体チップ23がチップ下接合材26によって接合されたN側導体基板25と、一端がモジュールP端子31であり、他端がP側導体基板24に接合されるモジュールPバスバ30と、一端がP側半導体チップ22に接合され、他端がN側導体基板25に接合されるモジュールACバスバ50と、一端がN側半導体チップ23に接合され、他端がモジュールN端子41であるモジュールNバスバ40と、P側導体基板24とN側導体基板25とを搭載する絶縁シート27と、絶縁シート27と面接触する銅板28と、を有する。P側導体基板24、およびN側導体基板25の材質として、例えば銅または銅合金でもよく、アルミニウム、アルミニウム合金、またはプリント基板でも良い。また、絶縁シート27の材料としてAl、Si、AlNなどのセラミック化合物、または窒化ホウ素、窒化ケイ素、アルミナなどの熱伝導性フィラーを混合したエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂であってもよい。
【0019】
チップ下接合材26の材料は銀(Ag)でもよく、はんだでも良い。モジュールPバスバ30とP側導体基板24の接合部をバスバ接合部60a、モジュールACバスバ50とP側半導体チップ22の接合部をバスバ接合部60b、モジュールACバスバ50とN側導体基板25の接合部をバスバ接合部60c、モジュールNバスバ40とN側半導体チップ23の接合部をバスバ接合部60d、モジュール出力端子21とN側導体基板25の接合部をバスバ接合部60eと称す。バスバ接合部60a~60eは、例えばはんだによって接合されており、接合されるそれぞれの端部を電気的に接続する。
【0020】
半導体モジュール4の銅板28とヒートシンク5とをモジュール下接合部20により熱接続可能に接合している。モジュール下接合部20は例えばはんだでも放熱シートでも良い。また、シリコーングリスまたは熱硬化性樹脂でもよい。筐体底面6にヒートシンク5が組み込まれることで、水路7が形成され、半導体モジュール4が発する熱が水路7を流れる冷却水によって放熱される。
【0021】
次に比較例として、図4図5の半導体モジュール4Aの構造を説明する。図4は半導体モジュール4の上面図、図5は半導体モジュール4Aを展開した斜視図である。なお、制御端子、および封止材は省略している。比較例の半導体モジュール4Aは一巡Lsを低減するために、モジュールACバスバ50とモジュールNバスバ40をできるだけ重ねて対向させている。
【0022】
図6を参照して、比較例の半導体モジュール4Aの問題を説明する。図6は、比較例の半導体モジュール4Aの電流経路と半導体モジュール4Aのバスバ接合部60a~60eを説明するための透過上面図である。流れる電流を矢印で示している。モジュールP端子31からモジュールN端子41に流れる電流経路が作る面積が大きいほど半導体モジュール4Aの一巡Lsが大きくなる。比較例の半導体モジュール4AはモジュールACバスバ50とモジュールNバスバ40をできるだけ重ねて対向させることで電流経路の面積を小さくして一巡Lsを低減している。
【0023】
しかし、この構造では、図5および図6に示すように、P側半導体チップ22とモジュールACバスバ50のバスバ接合部60bの上方、およびN側導体基板25とモジュールACバスバ50のバスバ接合部60cの上方にモジュールACバスバ50とモジュールNバスバ40が重なって配置されている。このようにバスバ接合部60b、60cの上方に複数のバスバが重なっている構造では、バスバ接合部60b、60cの異常を検出するSATにおいて、バスバ接合部60b、60cに到達する超音波が減少するため、異常の検出能力が低下する。
【0024】
図7図8を参照して、実施の形態1の構造と効果を説明する。図7は、半導体モジュール4を展開した斜視図である。モジュールACバスバ50は、一端がP側半導体チップ22に接合される本体部51と、X軸の正負の方向に突出し、モジュールNバスバ40のX軸方向の幅よりも広い幅の接続部52と、を有する。接続部52のX軸の正負方向に延びる両端部はバスバ接合部60cによってN側導体基板25に接合される。モジュールNバスバ40はN側半導体チップ23に接合された一端部から、モジュールACバスバ50と一定の間隙をもって対向し、P側半導体チップ22とモジュールACバスバ50のバスバ接合部60bの上方への配置を避けるようにクランク形状に形成されたクランク部42を有する。クランク部42は、P側半導体チップ22のX軸正方向の一辺に沿った後、Y軸正方向の一辺に沿うように形成され、モジュールN端子41に接続する。
【0025】
すなわち、モジュールPバスバ30は、一端部にコンデンサ出力端子12の正極に接続されるモジュールP端子31、他端部にP側導体基板24に接合されるバスバ接合部60aを有する。モジュールP端子31のP側導体基板24からの突出方向を図7のY軸の正方向とすると、Y軸の正方向と反対の負方向にN側導体基板25とN側半導体チップ23が配置される。モジュールACバスバ50は、一端部にP側半導体チップ22と接合されるバスバ接合部60b、他端部にN側導体基板25と接合されるバスバ接合部60dを有する。モジュールNバスバ40は、一端部にN側半導体チップ23と接合されるバスバ接合部60d、他端部にY軸の正方向に突出し、コンデンサ出力端子12の負極に接続されるモジュールN端子41を有する。モジュールNバスバ40は、バスバ接合部60dからモジュールN端子41までの間にY軸方向と直交するX軸方向(図7参照)に屈曲するクランク部42を有し、クランク部42は、Y軸方向と垂直なZ軸方向(図7参照)から見てバスバ接合部60bにモジュールNバスバ40が重ならないように形成される。
【0026】
さらに、モジュールACバスバ50のX軸方向の幅をモジュールNバスバ40の幅よりも大きくし、モジュールNバスバ40と重ならない両端部にバスバ接合部60cを有し、バスバ接合部60cの間にモジュールNバスバ40が配置される。このような構成により、例えばモジュールP端子31からの電流は、モジュールPバスバ30を経由してバスバ接合部60aからP側半導体チップ22に供給され、バスバ接合部60bからモジュールACバスバ50を経由してバスバ接合部60cからN側半導体チップ23に供給され、バスバ接合部60dからモジュールNバスバ40を経由してモジュールN端子41に流れる電流経路を形成する。
【0027】
図8は、図7の半導体モジュール4内のバスバ接合部60a~60dの位置を説明するための透過上面図である。図8のように、半導体モジュール4内のバスバ接合部60a~60dの上方に複数のバスバが重なることがない。このような構造にすることで、SATにおいてバスバ接合部60a~60dの異常を検出する能力の低下を抑制することが可能となる。
【0028】
実施の形態2.
図9は実施の形態2に係るインバータ1を構成する半導体モジュール4の上面図である。図10は、半導体モジュール4を展開した斜視図である。なお、実施の形態1と同様の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図9図10を用いて実施の形態2の構造を説明する。モジュールPバスバ30は、一端部がモジュールP端子31に接続され、P側半導体チップ22のY軸方向の一辺に沿うように延伸する延伸部32を有し、延伸部32の一部がP側半導体チップ22のY軸方向の一辺に沿うように形成されたバスバ接合部60fによってP側導体基板24に接合される。
【0030】
モジュールNバスバ40は、N側半導体チップ23に接合された一端部から、モジュールACバスバ50と一定の間隙を隔てて対向してY軸方向に延び、バスバ接合部60bとバスバ接合部60cの間で、バスバ接合部60bの上部を通過する前に、P側半導体チップ22の一辺に沿うように形成されたバスバ接合部60fに向かって、X軸方向に屈曲する第1のクランク部43を有し、さらにモジュールNバスバ40の上部をバスバ接合部60fの部分を除いてY軸方向に延伸した後、第1のクランク部43と反対方向に屈曲する第2のクランク部44を有する。第2のクランク部44はモジュールN端子41に接続される。
【0031】
続いて、図11を用いて、実施の形態2に係るインバータ1の効果を説明する。図11は、半導体モジュール4を流れる電流経路とバスバ接合部60b~60fの配置を説明する上面図である。例えばモジュールP端子31からの電流は、モジュールPバスバ30を経由してバスバ接合部60fからP側半導体チップ22に供給され、バスバ接合部60bからモジュールACバスバ50を経由してバスバ接合部60cからN側半導体チップ23に供給され、バスバ接合部60dからモジュールNバスバ40を経由してモジュールN端子41に流れる電流経路を形成する。図11に示すようにいずれのバスバ接合部60b~60fも上方に複数のバスバが重なっていないため、SATにおけるバスバ接合部60b~60fの異常の検出能力の低下を抑制できる。
【0032】
次に、実施の形態2における一巡Lsの低減効果ついて説明する。図11の矢印に示すような電流経路になることで、以下の(1)~(3)の効果を奏する。このように半導体モジュール4を流れる電流が磁束を打ち消し合うような電流経路となるため、一巡Lsを低減することができる。
(1)モジュールPバスバ30の延伸部32を流れる電流70Aと、モジュールNバスバ40の第1のクランク部43から第2のクランク部44に向けて流れる電流74Cとが互いに反対方向に流れ、互いの磁束を打ち消し合う。
(2)モジュールACバスバ50の本体部51を流れる電流72AとN側半導体チップ23から第1のクランク部43に向かって流れる電流74Aが互いに反対方向に流れ、互いの磁束を打ち消し合う。
(3)さらに、P側導体基板24を流れる電流71と、モジュールNバスバ40の第1のクランク部43に流れる電流74Aとが互いに反対方向に流れ、互いの磁束を打ち消し合う。
【0033】
実施の形態3.
図12は実施の形態3に係るインバータ1を構成する半導体モジュール4の斜視図である。なお、実施の形態2と同様の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
実施の形態3における半導体モジュール4の特徴はモジュールPバスバ30が屈曲部33を有し、実施の形態2と比較してモジュールP端子31とモジュールN端子41の配置が入れ替わっていることである。それ以外は実施の形態2と同様の特徴を有する。
【0035】
図13は実施の形態3に係るインバータ1を構成する半導体モジュール4の電流経路をとバスバ接合部60b~60fを説明する上面図である。例えばモジュールP端子31からの電流は、モジュールPバスバ30を経由してバスバ接合部60fからP側半導体チップ22に供給され、バスバ接合部60bからモジュールACバスバ50を経由してバスバ接合部60cからN側半導体チップ23に供給され、バスバ接合部60dからモジュールNバスバ40を経由してモジュールN端子41に流れる電流経路を形成する。図13を用いて実施の形態3の効果を説明する。図13に示すようにいずれのバスバ接合部60b~60fも、上方に複数のバスバが重なっていないため、SATにおけるバスバ接合部60b~60fの異常の検出能力の低下を抑制できる。
【0036】
次に、実施の形態3における一巡Lsの低減効果について説明する。実施の形態2の効果において説明した、(1)~(3)に加え、以下の(4)の効果も奏するため、実施の形態2よりもさらに一巡Lsの低減が可能となる。
(4)モジュールP端子31の屈曲部33のX軸の正方向に電流70Bが流れるため、P側導体基板24を流れる電流71と互いに反対方向に流れ、互いに磁束を打ち消し合う。
【0037】
実施の形態4.
図14は実施の形態4に係る半導体装置(インバータ)1を構成する半導体モジュール4の斜視図である。なお、実施の形態2、3と同様の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
実施の形態4における半導体モジュール4の特徴はP側導体基板24に複数のP側半導体チップ22が接合され、N側導体基板25に複数のN側半導体チップ23が接合されている。そして、P側半導体チップ22、およびN側半導体チップ23のそれぞれに対応したモジュールACバスバ50とモジュールNバスバ40が搭載されている。複数のP側半導体チップ22、および複数のN側半導体チップ23は例えばRC-IGBTでもよいし、IGBTとダイオードの組み合わせ、あるいはMOSFETとダイオードとの組み合わせでもよい。半導体モジュール4のサイズは例えば幅50mm、長さ60mmである。
【0039】
複数のP側半導体チップ22、および複数のN側半導体チップ23はそれぞれX軸方向に配置され、並列接続される。モジュールACバスバ50は半導体チップの並列接続数と同数を有する。モジュールNバスバ40はP側半導体チップ22、N側半導体チップ23の並列接続数と同数(図14では2つ)のクランク部42を持ち、一体化される。
【0040】
図15は実施の形態4に係る半導体モジュール4の電流経路とバスバ接合部60b~60fの配置を説明する上面図である。図15を用いて電流経路を説明する。複数のP側半導体チップ22がX軸方向に配置され、複数のN側半導体チップ23がX軸方向に配置される。例えば、モジュールP端子31からの電流は、バスバ接合部60fからモジュールPバスバ30を経由し、複数のP側半導体チップに電流が供給されるとともに、バスバ接合部60bからP側半導体チップ22及びN側半導体チップ23と同数のモジュールACバスバ50を経由してバスバ接合部60cからN側半導体チップ23に電流が供給され、バスバ接合部60dからP側半導体チップ22およびN側半導体チップ23と同数のクランク部を有するモジュールNバスバ40により、電流がモジュールN端子41に流れるように電流経路が形成されている。
なお、P側半導体チップ22及びN側半導体チップ23と同数のモジュールACバスバ50を配置する代わりに、複数のP側半導体チップ22の電流を複数のN側半導体チップ23に供給するために、複数のP側半導体チップ22のバスバ接合部60bとモジュールACバスバ50を接合するとともに、複数のN側半導体チップ23に電流を供給するバスバ接合部60cとモジュールACバスバ50を接合するようにモジュールACバスバ50を1つのバスバに一体化して形成しても良い。
【0041】
このような配置においてもいずれのバスバ接合部60b~60fも、上方に複数のバスバが重なっていないため、SATにおけるバスバ接合部60b~60fの異常の検出能力の低下を抑制できる。
【0042】
さらに、半導体チップ数が増えても以下の効果により、一巡Lsを低減できる。
(1)モジュールPバスバ30の延伸部32を流れる電流70Aと、モジュールNバスバ40の第1のクランク部43から第2のクランク部44に向けて流れる電流74Cとが互いに反対方向に流れ、互いの磁束を打ち消し合う。
(2)モジュールACバスバ50の本体部51を流れる電流72AとN側半導体チップ23から第1のクランク部43に向かって流れる電流74Aが互いに反対方向に流れ、互いの磁束を打ち消し合う。
(3)P側導体基板24を流れる電流71と、モジュールNバスバ40の2つのクランク部を流れる電流74Bとが互いに反対方向に流れ、互いの磁束を打ち消し合う。
(4)モジュールP端子31の屈曲部33のX軸の正方向に電流70Bが流れるため、P側導体基板24を流れる電流71と互いに反対方向に流れ、互いに磁束を打ち消し合う。
【0043】
実施の形態5.
図16は実施の形態5に係るインバータ1の内部構造を示す斜視図である。なお、実施の形態3と同様の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態5の特徴は複数の半導体モジュール4を一体化した構造である。実施の形態5のインバータ1は例えば、3相分の半導体モジュール4を樹脂封止したモールドモジュールとして説明する。
【0044】
図17は3相分の半導体モジュール4を一体化した構造を示す斜視図である。封止材と制御端子は省略する。1つのP側導体基板24に3相分のP側半導体チップ22がチップ下接合材26によって接合される。モジュールP端子31と接合するモジュールPバスバ30を2つ有し、それぞれのモジュールPバスバ30がP側半導体チップ22のX軸方向に直交する一辺に沿うように形成されたバスバ接合部60fによってP側導体基板24に接合される。
【0045】
モジュールACバスバ50は実施の形態1~3と同様の特徴を持つ。モジュールNバスバ40はそれぞれのN側半導体チップ23にバスバ接合部60dで電気的に接続され、それぞれのクランク部42を経由して隣接する相のクランク部42と一体化する。このため、3相分のモジュールNバスバ40が2つのモジュールN端子41にそれぞれ接続される。
【0046】
すなわち、図17および図18において、P側導体基板24に搭載されるP側半導体チップ22と、N側導体基板25に搭載されるN側半導体チップ23と、を備える半導体モジュール4がU相、V相、W相の別に並列に接続され、配置される。
【0047】
P側導体基板24と直流電源0の正極とを電気的に接続するためのモジュールPバスバ30は、端部に直流電源0の正極に接続されたモジュールP端子31、P側導体基板24に接合されるバスバ接合部60fを有し、U相のP側半導体チップ22とV相のP側半導体チップ22との間、およびV相のP側半導体チップ22とW相のP側半導体チップ22との間にそれぞれ配置される。
【0048】
P側半導体チップ22とN側導体基板25とを電気的に接続するためのモジュールACバスバ50は、一端部にP側半導体チップ22と接合されるバスバ接合部60b、他端部にN側導体基板25に接合されるバスバ接合部60cを有する。
【0049】
N側半導体チップ23と直流電源0の負極とを電気的に接続するためのモジュールNバスバは、一端部にN側半導体チップ23と接合されるバスバ接合部60d、他端部に、直流電源0の負極に接続されるモジュールN端子41を有するとともに、バスバ接合部60dからモジュールN端子41までの間にバスバ接合部60bと重ならないように形成されたクランク部42を有し、クランク部42の一部は、U相のP側半導体チップ22とV相のP側半導体チップ22との間、およびV相のP側半導体チップ22とW相のP側半導体チップ22との間にそれぞれ配置され、バスバ接合部60fを除いてモジュールPバスバ30と対向して配置される。
【0050】
モジュールP端子31から入力されたU相とV相の電流が、U相のP側半導体チップ22とV相のP側半導体チップ22との間に配置されたバスバ接合部60fで分岐し、U相とV相のそれぞれの半導体モジュール4のバスバ接合部60b、バスバ接合部60c、バスバ接合部60dを経由した後、クランク部42で合流してU相のP側半導体チップ22とV相のP側半導体チップ22との間に配置されたモジュールNバスバのモジュールN端子41から出力される電流経路を形成するように構成される。
【0051】
また、モジュールP端子31から入力されたW相とV相の電流が、W相のP側半導体チップ22とV相のP側半導体チップ22との間に配置されたバスバ接合部60fで分岐し、W相とV相のそれぞれの半導体モジュール4のバスバ接合部60b、バスバ接合部60c、バスバ接合部60dを経由した後、クランク部42で合流してW相のP側半導体チップ22とV相のP側半導体チップ22との間に配置されたモジュールNバスバのモジュールN端子41から出力される電流経路を形成するように構成される。
【0052】
次に図18を用いて、実施の形態5の効果を説明する。図18は実施の形態5の電流経路とバスバ接合部を示す透過上面図である。実施の形態5における半導体モジュール4のサイズは例えば幅70mm、長さ60mmである。複数の半導体モジュール4を一体化することで、独立した複数の半導体装置を複数個並列接続するよりも実装面積を小型化できる。また、コンデンサ出力端子12と接続されるモジュールP端子31、およびモジュールN端子41が2組であるため、平滑コンデンサ10との接続箇所が低減され、組み立て性が改善される。
【0053】
さらに、U相を流れる電流経路75と、V相を流れる電流経路76はU相とV相のP側半導体チップ22の間にあるバスバ接合部60fで分岐し、それぞれのモジュールACバスバ50、N側半導体チップ23を経由し、モジュールNバスバ40のクランク部42で合流する。W相にはU相を流れる電流経路75と中心線Pで対象の経路で電流が流れる。またV相にはV相を流れる電流経路76と中心線Pで対象、かつ並列となる経路で電流が流れる。このようにU相とW相の電流経路が線対称であるため、一巡Lsのアンバランスが生じない。このため、実施の形態5によれば、小型で組み立て性がよく、一巡Lsの低い半導体モジュール4を提供できる。
【0054】
また、実施の形態1~4同様、バスバ接合部60b~60fの上方に複数のバスバが重なっていないため、SATにおけるバスバ接合部60b~60fの異常の検出能力の低下を抑制できるとともに、半導体チップ数が増えても一巡Lsを低減できる。
【0055】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0056】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
第1の導体基板に搭載される第1の半導体チップと、
第2の導体基板に搭載される第2の半導体チップと、
前記第1の導体基板と電源の正極とを電気的に接続するための第1のバスバと、
前記第2の半導体チップと前記電源の負極とを電気的に接続するための第2のバスバと、
前記第1の半導体チップと前記第2の導体基板とを電気的に接続するための第3のバスバと、を備える半導体装置であって、
前記第1のバスバは、一端部に前記電源の正極に接続される第1の端子、他端部に前記第1の導体基板に接合される第1の接合部を有し、
前記第1の端子の前記第1の導体基板からの突出方向をY軸の正方向とすると、前記Y軸の正方向と反対の負方向に前記第2の導体基板および前記第2の半導体チップが配置され、
前記第3のバスバは、一端部に前記第1の半導体チップと接合される第2の接合部、他端部に第2の導体基板に接合される第3の接合部を有し、
前記第2のバスバは、一端部に前記第2の半導体チップと接合される第4の接合部、他端部に前記Y軸の正方向に突出し、前記電源の負極に接続される第2の端子を有するとともに、前記第4の接合部から前記第2の端子までの間に前記Y軸と直交するX軸方向に屈曲するクランク部を有し、前記クランク部は、前記Y軸と垂直なZ軸方向から見て前記第2の接合部に前記第2のバスバが重ならないように形成されていることを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記第1の端子および前記第2の端子は、平滑コンデンサを経由して前記電源の正極および負極に接続されていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記第1のバスバ、前記第2のバスバ、および前記第3のバスバのうち、少なくともいずれかのバスバは樹脂で封止されていることを特徴とする付記1または2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記第3のバスバの幅を前記第2のバスバの幅よりも大きくし、前記第2のバスバと重ならない両端部に前記第3の接合部を有し、前記第3の接合部の間に前記第2のバスバが配置されることを特徴とする付記1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
前記第1の接合部が、前記第1の半導体チップのY軸方向に延びる一辺に沿うように形成され、前記クランク部の前記Y軸方向に延びる部分において、前記第1のバスバと前記第2のバスバが一部で重なって対向し、かつ、前記第2のバスバは前記第1の接合部に重ならないことを特徴とする付記1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1のバスバの前記第1の端子から前記第1の接合部への部分を前記X軸方向に屈曲させることにより、前記X軸方向に延びる屈曲部の電流経路と前記第1の導体基板に流れる電流経路とが互いに逆方向となるようにしたことを特徴とする付記1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記第2のバスバは一体化され、樹脂で封止されていることを特徴とする付記1から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記8)
前記第1の半導体チップが前記X軸方向に複数並列に接続され、前記第2の半導体チップが前記X軸方向に前記第1の半導体チップと同数並列に接続され、前記第1のバスバから前記複数の第1の半導体チップに電流が供給されるとともに、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップと同数の前記第3のバスバにより前記第2の半導体チップに電流が供給され、前記第1の半導体チップおよび前記第2の半導体チップと同数のクランク部を有する第2のバスバにより、電流が前記第2の端子に流れるように電流経路が形成されていることを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
前記第1の半導体チップが前記X軸方向に複数並列に接続され、前記第2の半導体チップが前記X軸方向に前記第1の半導体チップと同数並列に接続され、前記第3のバスバの一端部が前記複数の第1の半導体チップに接合され、他端部が複数の第2の半導体チップが配置された前記第2の導体基板に接合され、前記第1のバスバから複数の前記第1の半導体チップに電流が供給されるとともに、前記第3のバスバにより前記複数の第2の半導体チップに電流が供給され、前記第1の半導体チップおよび前記第2の半導体チップと同数のクランク部を有する第2のバスバにより、電流が前記第2の端子に流れるように電流経路が形成されていることを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記10)
第1の導体基板に搭載される第1の半導体チップと、
第2の導体基板に搭載される第2の半導体チップと、
を備える半導体モジュールがU相、V相、W相の別に並列に配置され、
前記第1の導体基板と電源の正極とを電気的に接続するための第1のバスバは、一端部に前記電源の正極に接続された第1の端子、前記第1の導体基板に接合される第1の接合部を有し、前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間、および前記V相の第1の半導体チップと前記W相の第1の半導体チップとの間にそれぞれ配置され、
前記第1の半導体チップと前記第2の導体基板とを電気的に接続するための第3のバスバは、一端部に前記第1の半導体チップと接合される第2の接合部、他端部に前記第2の導体基板に接合される第3の接合部を有し、
前記第2の半導体チップと前記電源の負極とを電気的に接続するための第2のバスバは、一端部に前記第2の半導体チップと接合される第4の接合部、他端部に、前記電源の負極に接続される第2の端子を有するとともに、前記第4の接合部から前記第2の端子までの間に前記第2の接合部と重ならないように形成されたクランク部を有し、
前記クランク部の一部は、前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間、および前記V相の第1の半導体チップと前記W相の第1の半導体チップとの間にそれぞれ配置され、前記第1の接合部を除いて前記第1のバスバと対向して配置され、
前記第1の端子から入力されたU相とV相の電流が、前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された第1の接合部で分岐し、前記U相と前記V相のそれぞれの半導体モジュールの前記第2の接合部、前記第3の接合部、前記第4の接合部を経由した後、前記クランク部で合流して前記U相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された前記第2のバスバの第2の端子から出力される第1の電流経路を形成するように構成され、
前記第1の端子から入力されたW相とV相の電流が、前記W相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された第1の接合部で分岐し、前記W相と前記V相のそれぞれの半導体モジュールの前記第2の接合部、前記第3の接合部、前記第4の接合部を経由した後、前記クランク部で合流して前記W相の第1の半導体チップと前記V相の第1の半導体チップとの間に配置された前記第2のバスバの第2の端子から出力される第2の電流経路を形成するように構成されていることを特徴とする半導体装置。
【符号の説明】
【0057】
0:直流電源、1:インバータ、2:インバータ入力端子、3:インバータ出力端子、4:半導体モジュール、5:ヒートシンク、6:筐体底面、7:水路、8:モータ、9:制御基板、10:平滑コンデンサ、11:コンデンサ入力端子、12:コンデンサ出力端子、13:コンデンサPバスバ、14:コンデンサNバスバ、15:コンデンサ素子、20:モジュール下接合部、21:モジュール出力端子、22:P側半導体チップ、23:N側半導体チップ、24:P側導体基板、25:N側導体基板、26:チップ下接合材、27:絶縁シート、28:銅板、29:制御端子、30:モジュールPバスバ、31:モジュールP端子、32:延伸部、33:屈曲部、40:モジュールNバスバ、41:モジュールN端子、42:クランク部、43:第1のクランク部、44:第2のクランク部、50:モジュールACバスバ、51:本体部、52:接続部、60a~60f:バスバ接合部。
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