(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162339
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241114BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241114BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20241114BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241114BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20241114BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M10/0587
H01M50/531
H01M4/36 C
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077739
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 武志
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆太
(72)【発明者】
【氏名】上薗 知之
(72)【発明者】
【氏名】池田 丈典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029HJ01
5H029HJ07
5H043AA02
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043EA06
5H043EA32
5H043EA35
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA21
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】帯状電極の幅方向において、反応ムラを低減すること。
【解決手段】蓄電セルは、巻回電極体および電極端子を含む。巻回電極体は、帯状電極を含む。平面視において、帯状電極は、長さ方向および幅方向を有する。幅方向は、長さ方向と直交している。帯状電極は、集電体および合材層を含む。合材層は、活物質粒子を含む。合材層は、集電体の表面に配置されている。平面視の幅方向において、帯状電極は、第1領域、第2領域および第3領域を含む。第1領域は、幅方向の端部に配置されている。第1領域において、集電体が露出している。第1領域において、集電体が電極端子に電気的に接続されている。第2領域および第3領域は、合材層に被覆されている。幅方向において、第2領域は、第1領域と第3領域との間に配置されている。第2領域は、第3領域に比して大きい、単位面積あたりの反応抵抗を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回電極体および電極端子を含み、
前記巻回電極体は、帯状電極を含み、
平面視において、前記帯状電極は、長さ方向および幅方向を有し、
前記幅方向は、前記長さ方向と直交しており、
前記帯状電極が前記長さ方向に巻回されることにより、前記巻回電極体が形成されており、
前記帯状電極は、集電体および合材層を含み、
前記合材層は、活物質粒子を含み、
前記合材層は、前記集電体の表面に配置されており、
前記平面視の前記幅方向において、前記帯状電極は、第1領域、第2領域および第3領域を含み、
前記第1領域は、前記幅方向の端部に配置されており、
前記第1領域において、前記集電体が露出しており、
前記第1領域において、前記集電体が前記電極端子に電気的に接続されており、
前記第2領域および前記第3領域は、前記合材層に被覆されており、
前記幅方向において、前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間に配置されており、かつ
前記第2領域は、前記第3領域に比して大きい、単位面積あたりの反応抵抗を有する、
蓄電セル。
【請求項2】
前記第2領域において、前記合材層は、第1活物質粒子を含み、
前記第3領域において、前記合材層は、第2活物質粒子を含み、かつ
前記第1活物質粒子は、前記第2活物質粒子に比して小さい、BET比表面積を有する、
請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記第2領域において、前記合材層は、第1複合粒子を含み、
前記第3領域において、前記合材層は、第2複合粒子を含み、
前記第1複合粒子および前記第2複合粒子の各々は、前記活物質粒子およびバインダを含み、
前記バインダは、前記活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、かつ
前記第1複合粒子は、前記第2複合粒子に比して大きい、前記バインダの質量分率を有する、
請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記第2領域において、前記合材層は、第1層および第2層を含み、
前記帯状電極の断面視において、前記第1層は、前記集電体と前記第2層との間に配置されており、かつ
前記第2層は、前記第1層に比して小さい、前記活物質粒子の質量分率を有する、
請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記帯状電極は、内周面および外周面を有し、
前記巻回電極体において、前記内周面は、内周側に配置されており、
前記外周面は、前記内周面の反対面であり、
前記内周面に第1合材層が配置されており、
前記外周面に第2合材層が配置されており、かつ
前記第1合材層は、前記第2合材層に比して大きい、単位面積あたりの前記反応抵抗を有する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-018680号公報(特許文献1)は、帯状電極を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電セルは、発電要素を含む。発電要素は、例えば、巻回電極体を含む。巻回電極体は、帯状電極が渦巻き状に巻回されることにより形成される。帯状電極は集電部を有する。集電部は、電極端子(外部端子)と電気的に接続される。例えば、帯状電極の長さ方向の端部に、集電部が配置され得る。集電部が長さ方向の端部に配置される場合、帯状電極の長さ方向において、電極反応のムラが生じる可能性がある。以下、電極反応のムラが「反応ムラ」とも記される。反応ムラは性能劣化を促進する可能性がある。
【0005】
長さ方向における反応ムラを低減するため、帯状電極の幅方向の端部に、長さ方向に連続的に延びる集電部を形成することが考えられる。しかし、この場合、幅方向において反応ムラが生じる可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、帯状電極の幅方向において、反応ムラを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.蓄電セルは、巻回電極体および電極端子を含む。巻回電極体は、帯状電極を含む。平面視において、帯状電極は、長さ方向および幅方向を有する。幅方向は、長さ方向と直交している。帯状電極が長さ方向に巻回されることにより、巻回電極体が形成されている。帯状電極は、集電体および合材層を含む。合材層は、活物質粒子を含む。合材層は、集電体の表面に配置されている。平面視の幅方向において、帯状電極は、第1領域、第2領域および第3領域を含む。第1領域は、幅方向の端部に配置されている。第1領域において、集電体が露出している。第1領域において、集電体が電極端子に電気的に接続されている。第2領域および第3領域は、合材層に被覆されている。幅方向において、第2領域は、第1領域と第3領域との間に配置されている。第2領域は、第3領域に比して大きい、単位面積あたりの反応抵抗を有する。
【0008】
第1領域は、集電部に相当する。第2領域は、第3領域に比して集電部(第1領域)に近接している。第2領域は、第3領域に比して電流密度が高くなる傾向がある。第3領域に比して、第2領域における電極反応が促進されることにより、反応ムラが生じると考えられる。
【0009】
上記「1」に記載の蓄電セルにおいては、局所的に、単位面積あたりの反応抵抗が異なっている。以下「単位面積あたりの反応抵抗」が単に「反応抵抗」とも記される。第2領域は、第3領域に比して大きい反応抵抗を有する。すなわち、第3領域に比して、第2領域においては電極反応が進行し難い。したがって、帯状電極の幅方向における、反応ムラの低減が期待される。
【0010】
2.上記「1」に記載の蓄電セルは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。第2領域において、合材層は、第1活物質粒子を含む。第3領域において、合材層は、第2活物質粒子を含む。第1活物質粒子は、第2活物質粒子に比して小さい、BET比表面積を有する。
【0011】
活物質粒子のBET比表面積が小さい程、活物質粒子とキャリアイオン(例えばLiイオン)との反応場(反応面積)が小さいと考えられる。反応面積が小さい程、反応抵抗が増大すると考えられる。すなわち、活物質粒子のBET比表面積により、各領域の反応抵抗が調整され得る。
【0012】
3.上記「1」または「2」に記載の蓄電セルは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。第2領域において、合材層は、第1複合粒子を含む。第3領域において、合材層は、第2複合粒子を含む。第1複合粒子および第2複合粒子の各々は、活物質粒子およびバインダを含む。バインダは、活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。第1複合粒子は、第2複合粒子に比して大きい、バインダの質量分率を有する。
【0013】
例えば、活物質粒子およびバインダが複合粒子を形成していてもよい。バインダはイオン伝導を阻害し得る。活物質粒子の表面においてバインダが付着した部分においては、反応抵抗が増大し得ると考えられる。複合粒子におけるバインダの質量分率は、バインダの付着量および活物質粒子の被覆率に対応すると考えられる。複合粒子におけるバインダの質量分率が大きい程、反応抵抗が増大し得ると考えられる。すなわち複合粒子におけるバインダの質量分率により、各領域の反応抵抗が調整され得る。
【0014】
4.上記「1」~「3」のいずれか1項に記載の蓄電セルは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。第2領域において、合材層は、第1層および第2層を含む。帯状電極の断面視において、第1層は、集電体と第2層との間に配置されている。第2層は、第1層に比して小さい、活物質粒子の質量分率を有する。
【0015】
合材層の表層(第2層)において、活物質粒子の質量分率が小さいことにより、反応抵抗の増大が期待される。第2層における活物質粒子の質量分率は、例えば、ゼロであってもよい。例えば、第1層の表面にポリマー溶液が塗布されることにより、第2層が形成されてもよい。
【0016】
5.上記「1」~「4」のいずれか1項に記載の蓄電セルは、例えば、次の構成を含んでいてもよい。帯状電極は、内周面および外周面を有する。巻回電極体において、内周面は、内周側に配置されている。外周面は、内周面の反対面である。内周面に第1合材層が配置されている。外周面に第2合材層が配置されている。第1合材層は、第2合材層に比して大きい、単位面積あたりの反応抵抗を有する。
【0017】
巻回電極体において、内周面は、外周面に比して放熱し難い傾向がある。すなわち、内周面は、外周面に比して高温になる傾向がある。内周面と外周面との間の温度差により、内周面と外周面との間で反応ムラが生じる可能性がある。外周面の合材層(第2合材層)に比して、内周面の合材層(第1合材層)が大きい反応抵抗を有することにより、内周面と外周面との間の温度差が低減し得る。温度差の低減により、内周面と外周面との間の反応ムラが低減することが期待される。
【0018】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態は、本開示の技術的範囲を限定しない。本実施形態は、全ての点で例示である。本実施形態は、非制限的である。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態における蓄電セルの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における帯状電極の一例を示す概略平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における複合粒子の概念図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における帯状電極の一例を示す第1概略断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における帯状電極の一例を示す第2概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<用語の説明>
「単位面積あたりの反応抵抗」は、次の手順により測定される。完全放電状態の蓄電セルが解体されることにより、帯状電極が回収される、測定対象(第2領域、第3領域)から、所定面積の試料がそれぞれ切り出される。評価セル(シングルセルまたはハーフセル)が作製される。評価セルは、作用極として試料を含む。対極は、例えばLi箔等であってもよい。交流インピーダンス測定が実施される。測定結果に基づいて、コールコールプロットが作成される。コールコールプロットにおいて、円弧と実軸(横軸)との2つの交点が特定される。2つの交点の差(絶対値)が反応抵抗とみなされる。試料(作用極)と対極との対向面積によって、反応抵抗が除されることにより、単位面積あたりの値が求まる。
【0021】
「比表面積」は、単位質量あたりの表面積を示す。「BET比表面積」は、気体吸着法(BET1点法)により測定される比表面積を示す。気体吸着測定における吸着質は、窒素である。
【0022】
「平面視」は、対象物(例えば帯状電極)の厚さ方向と平行な視線で、対象物を視ることを示す。平面視は平面図に対応する。「断面視」は、対象物の厚さ方向と直交する視線で、対象物を視ることを示す。断面視は断面図に対応する。
【0023】
幾何学的な用語(例えば「平行」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。読者の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0024】
「電気的に接続」は、2つの対象物が導通していることを示す。2つの対象物は、直接接続されていてもよい。電気伝導性を有する部材が、2つの対象物を接続していてもよい。
【0025】
単数形で表現される用語は、特に断りの無い限り、複数形の態様も示す。例えば「粒子」は、「1個の粒子」のみならず、「複数個の粒子(粒子群)」および「粒子の集合体(粉体)」も示す。
【0026】
例えば「m~n%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。
【0027】
「蓄電セル」は、充電が可能なセルを示す。蓄電セルは、例えば「二次電池」とも称される。蓄電セルは、任意の電池系であり得る。蓄電セルは、例えばリチウムイオン電池等であってもよい。蓄電セルは、液系電池、ポリマー電池、または全固体電池のいずれでもよい。蓄電セルは、任意の外形を有し得る。蓄電セルは、例えば、円筒形、角形、またはパウチ形のいずれでもよい。パウチ形は、外装体が金属箔ラミネートフィルム製のパウチである形態を示す。本実施形態においては、一例として、円筒形の液系電池が説明される。
【0028】
<蓄電セル>
図1は、本実施形態における蓄電セルの一例を示す概略断面図である。蓄電セル100は、円筒形である。蓄電セル100は、高さ方向(H方向)および径方向(R方向)を有する。蓄電セル100は、巻回電極体50を含む。蓄電セル100は、ケース30をさらに含んでいてもよい。ケース30は、巻回電極体50を収納している。ケース30は、例えば、金属製であってもよい。ケース30は、円筒形である。ケース30は、例えば、キャップ31および缶32を含んでいてもよい。蓄電セル100は、電極端子を含む。例えば、キャップ31および缶32が、それぞれ、電極端子として機能してもよい。すなわち、キャップ31は、缶32と異なる極性を有し得る。キャップ31が正極性である時、缶32は負極性である。キャップ31が負極性である時、缶32は正極性である。例えば、ガスケット33が、缶32からキャップ31を電気的に分離していてもよい。
【0029】
巻回電極体50は、円筒状または円柱状の外形を有する。なお、例えば蓄電セル100が角形またはパウチ形である時、巻回電極体50がR方向にプレスされることにより、巻回電極体50が扁平状に成形されていてもよい。
【0030】
巻回電極体50は、正極51および負極52を含む。正極51および負極52は、いずれも帯状電極である。すなわち巻回電極体50は、帯状電極を含む。巻回電極体50は、セパレータ53をさらに含んでいてもよい。セパレータ53は、正極51と負極52との間に介在する。セパレータ53は、正極51を負極52から電気的に分離している。例えば、正極51、セパレータ53および負極52がこの順に積層されることにより積層体が形成されてもよい。積層体が渦巻き状に巻回されることにより、巻回電極体50が形成され得る。例えば、巻回電極体50の巻回軸が、H方向と平行になるように、巻回電極体50がケース30に収納されていてもよい。
【0031】
セパレータ53は、例えば、樹脂製の多孔質フィルム等を含んでいてもよい。電解液(不図示)はセパレータ53を透過し得る。電解液は、例えば有機溶媒および支持電解質(例えばLi塩)等を含んでいてもよい。
【0032】
第1集電タブ61は、正極51とキャップ31とを電気的に接続している。第2集電タブ62は、負極52と缶32とを電気的に接続している。蓄電セル100は、例えば「タブレス構造」を有していてもよい。タブレス構造は、集電タブを有しない。タブレス構造においては、帯状電極(正極51および負極52の少なくとも一方)が、直接、電極端子に接続され得る。
【0033】
<帯状電極>
図2は、本実施形態における帯状電極の一例を示す概略平面図である。
図2における帯状電極10は、正極51または負極52のいずれでもよい。帯状電極10は、長さ方向(L方向)および幅方向(W方向)を有する。W方向は、L方向と直交している。帯状電極10がL方向に巻回されることにより、巻回電極体50が形成される。帯状電極10のW方向は、蓄電セル100のH方向に対応する。帯状電極10において、W方向の寸法に対する、L方向の寸法の比は、例えば、2以上、5以上、10以上、または100以上のいずれでもよい。
【0034】
帯状電極10は、集電体11および合材層12を含む。集電体11は、電気伝導性を有する。集電体11は、帯状電極10の基材であり得る。集電体11は、例えば、金属箔等を含んでいてもよい。集電体11は、例えば、Al、Cu、Ti、NiおよびFeからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0035】
合材層12は、集電体11の表面に配置されている。合材層12は、例えば、集電体11の片面のみに配置されていてもよい。合材層12は、例えば、集電体11の両面に配置されていてもよい。合材層12は、集電体の表面に合材が塗工されることにより形成され得る。
【0036】
合材層12は、活物質粒子を含む。合材層12は、バインダおよび導電材等をさらに含んでいてもよい。活物質粒子は、電極反応(正極反応または負極反応)を生起し得る。活物質粒子は、任意の成分を含み得る。活物質粒子は、例えば、正極活物質を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、および、LiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。活物質粒子は、例えば、負極活物質を含んでいてもよい。負極活物質は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、Si、SiO、Si-C、Si基合金、Sn、SnO、Sn基合金、および、Li4Ti5O12からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。なお「Si-C」は、Siと炭素との複合材料を示す。
【0037】
バインダは、固体材料を結合し得る。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、例えば、100質量部の活物質粒子に対して、0.1~10質量部であってもよい。
【0038】
導電材は、電子伝導パスを形成し得る。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材の配合量は、例えば、100質量部の活物質粒子に対して、0.1~10質量部であってもよい。
【0039】
<第1領域、第2領域、第3領域>
平面視(
図2)のW方向において、帯状電極10は、第1領域101、第2領域102、および、第3領域103を含む。第1領域101は、W方向の端部に配置されている。第1領域101は、W方向の片端のみに配置されていてもよい。第1領域101は、W方向の両端に配置されていてもよい。第1領域101においては、集電体11が露出している。第1領域101は、例えば「非塗工部」等と換言されてもよい。第1領域101は、L方向の全域にわたって連続的に形成されていてもよい。第1領域101は、L方向の一部に形成されていてもよい。
【0040】
第1領域101は、集電部である。すなわち、第1領域101において、集電体11が電極端子(キャップ31または缶32)に電気的に接続される。第1集電タブ61が、集電体11とキャップ31とを電気的に接続していてもよい(
図1参照)。第2集電タブ62が、集電体11と缶32とを電気的に接続していてもよい(
図1参照)。各集電タブは、例えば、第1領域101に溶接されていてもよい。例えば、タブレス構造の場合、巻回電極体50において、第1領域101(集電体11)が、内周側に折り曲げられることにより、端面が形成されてもよい(
図2参照)。端面は、巻回電極体50の巻回軸と直交し得る。端面は平面であってもよいし、曲面であってもよい。端面は凹凸を有していてもよい。端面に集電プレートが溶接されてもよい。端面は集電プレートに面接触していてもよい。端面に、キャップ31等が直接、溶接されていてもよい。
【0041】
第2領域102および第3領域103は、合材層12に被覆されている。第2領域102および第3領域103は、例えば「塗工部」等と換言されてもよい。W方向において、第2領域102は、第1領域101と第3領域103との間に配置されている。第2領域102は、第1領域101と隣接していてもよい。第2領域102は、第3領域103と隣接していてもよい。
【0042】
第2領域102は、第3領域103に比して大きい反応抵抗を有する。よってW方向における、反応ムラの低減が期待される。第3領域103の反応抵抗(r3)に対する、第2領域102の反応抵抗(r2)の比(r2/r3)は、例えば、1.1以上、1.5以上、2以上、5以上、または、10以上のいずれでもよい。比(r2/r3)は、例えば、10以下、5以下、2以下、または、1.5以下のいずれでもよい。
【0043】
第2領域102および第3領域103は、例えば、2種の合材がストライプ状に塗工されることにより形成されてもよい。W方向における、第2領域102の寸法(W2)と、第3領域103の寸法(W3)とは、例えば、「W2/W3=5/5~1/9」または「W2/W3=3/7~1/9」の関係を満たしていてもよい。W方向における、第1領域101の寸法(W1)は、例えば集電構造等に合わせて任意に設定され得る。
【0044】
<比表面積>
各領域の反応抵抗は、例えば、活物質粒子のBET比表面積により調整されてもよい。例えば、第2領域102において、合材層12は、第1活物質粒子を含んでいてもよい。第3領域103において、合材層12は、第2活物質粒子を含んでいてもよい。第1活物質粒子は、第2活物質粒子に比して小さい、BET比表面積を有していてもよい。第1活物質粒子のBET比表面積(S1)が、第2活物質粒子のBET比表面積(S2)に比して小さいことにより、第2領域102が第3領域103に比して大きい、反応抵抗を有していてもよい。なお、第1活物質粒子の化学組成は、第2活物質粒子と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
第2活物質粒子のBET比表面積(S2)に対する、第1活物質粒子のBET比表面積(S1)の比(S1/S2)は、例えば、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または、0.1以下のいずれでもよい。比(S1/S2)は、例えば、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、または、0.8以上のいずれでもよい。BET比表面積(S1)およびBET比表面積(S2)は、それぞれ独立に、例えば、0.1~10m2/gであってもよい。
【0046】
<複合粒子>
図3は、本実施形態における複合粒子の概念図である。例えば、複合粒子5は、活物質粒子1およびバインダ2を含む。バインダ2は、活物質粒子1の表面の少なくとも一部を被覆している。複合粒子5は、導電材(不図示)をさらに含んでいてもよい。例えばバインダ2が導電材を活物質粒子1に固着していてもよい。複合粒子5は、任意の粒子複合化処理により形成され得る。例えば、強いせん断力が加わる条件下で、活物質粒子1およびバインダ2が混合されることにより、複合粒子5が形成されてもよい。例えば、日本コークス工業社製の製品名「メカノハイブリッド」等により粒子複合化処理が実施されてもよい。
【0047】
例えば、複合粒子におけるバインダの質量分率により、各領域の反応抵抗が調整されてもよい。例えば、第2領域102において、合材層12は、第1複合粒子を含んでいてもよい。第3領域103において、合材層12は、第2複合粒子を含んでいてもよい。第1複合粒子は、第2複合粒子に比して大きい、バインダの質量分率を有していてもよい。第1複合粒子におけるバインダの質量分率(B1)が、第2複合粒子におけるバインダの質量分率(B2)に比して大きいことにより、第2領域102が第3領域103に比して大きい、反応抵抗を有していてもよい。なお、第1複合粒子における活物質粒子およびバインダの化学組成は、第2複合粒子と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
第2複合粒子におけるバインダの質量分率(B2)に対する、第1複合粒子におけるバインダの質量分率(B1)の比(B1/B2)は、例えば、1.1以上、1.5以上、2以上、5以上、または、10以上のいずれでもよい。比(B1/B2)は、例えば、10以下、5以下、2以下、または、1.5以下のいずれでもよい。バインダの質量分率(B1)およびバインダの質量分率(B2)は、それぞれ独立に、0.1~10%であってもよい。
【0049】
<多層構造>
図4は、本実施形態における帯状電極の一例を示す第1概略断面図である。帯状電極10の厚さ方向(T方向)は、蓄電セル100のR方向に対応する。例えば、第2領域102において、合材層12が多層構造を有することにより、各領域の反応抵抗が調整されてもよい。例えば、第2領域102において、合材層12は、第1層12Lおよび第2層12Uを含んでいてもよい。第1層12Lおよび第2層12Uは、例えば、下層および上層等と換言されてもよい。断面視(
図4)において、第1層12Lは、集電体11と第2層12Uとの間に配置されている。第2層12Uは、第1層12Lに比して小さい、活物質粒子の質量分率を有していてもよい。第1層12Lにおける活物質粒子の質量分率(A
1)に対する、第2層12Uにおける活物質粒子の質量分率(A
2)の比(A
2/A
1)は、例えば、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または、0.1以下のいずれでもよい。比(A
2/A
1)は、例えば、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、または、0.8以上のいずれでもよい。第2層12Uにおける活物質粒子の質量分率(A
2)は、例えばゼロであってもよい。
【0050】
第2層12Uは、例えば、無機フィラー、固体電解質、ゲル電解質、ポリマー等を含んでいてもよい。第2層12Uは、例えば、アルミナ、ベーマイト、チタニア、ポリエチレン(PE)、PI、アラミド、PVdF、PVdF-HFP、PAA、CMC、ポリビニルアルコール(PVA)、および、ポリエチレンオキシド(PEO)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。第2層12Uが活物質粒子を含まない時、W方向において、第2層12Uは、例えば集電体11の表面の一部を覆うように延びていてもよい。第1層12Lは、例えば、第3領域103における合材層12と同一組成を有していてもよい。例えば、第2領域102(合材層12)の表面に、ポリマー溶液(例えばPVdF-HFP溶液等)が塗工されることにより、第2層12Uが形成されてもよい。
【0051】
<グラデーション(組成傾斜)>
第2領域102において合材層12の組成が変化していてもよい。例えば、W方向において、合材層12の組成が連続的または段階的に変化していてもよい。例えば、第1領域101(集電部)に近づく程、反応抵抗が大きくなるように、合材層12の組成が変化していてもよい。例えば、第1領域101に近づく程、活物質粒子の質量分率が低減してもよい。例えば、第1領域101に近づく程、バインダの質量分率が増大してもよい。
【0052】
<内周面および外周面>
図5は、本実施形態における帯状電極の一例を示す第2概略断面図である。帯状電極10は、内周面P1および外周面P2を有する。巻回電極体50において、内周面P1は、内周側に配置されている。外周面P2は、内周面P1の反対面である。内周面P1に第1合材層12Fが配置されている。外周面P2に第2合材層12Bが配置されている。例えば、第1合材層12Fは、第2合材層12Bに比して大きい反応抵抗を有していてもよい。例えば、第1合材層12Fにおける第2領域102は、第2合材層12Bにおける第2領域102に比して大きい反応抵抗を有していてもよい。例えば、第1合材層12Fにおける第3領域103は、第2合材層12Bにおける第3領域103に比して大きい反応抵抗を有していてもよい。
【0053】
第2合材層12Bの反応抵抗(rB)に対する、第1合材層12Fの反応抵抗(rF)の比(rF/rB)は、例えば、1.1以上、1.5以上、2以上、5以上、または、10以上のいずれでもよい。比(rF/rB)は、例えば、10以下、5以下、2以下、または、1.5以下のいずれでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 活物質粒子、2 バインダ、5 複合粒子、10 帯状電極、11 集電体、12 合材層、12F 第1合材層、12B 第2合材層、12L 第1層、12U 第2層、30 ケース、31 キャップ、32 缶、33 ガスケット、50 巻回電極体、51 正極、52 負極、53 セパレータ、61 第1集電タブ、62 第2集電タブ、100 蓄電セル、101 第1領域、102 第2領域、103 第3領域、P1 内周面、P2 外周面。