(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162350
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 13/70 20060101AFI20241114BHJP
F16D 13/60 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F16D13/70 B
F16D13/60 A
F16D13/60 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077752
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】今西 義夫
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056BA04
3J056BE09
3J056CC13
3J056CC33
3J056DA25
3J056GA12
3J056GA13
(57)【要約】
【課題】スムーズに第1回転部材と第2回転部材とを組み立てることができるクラッチ装置を提供する。
【解決手段】クラッチ装置は、第1回転部材、第2回転部材、及び案内部を備える。第1回転部材は、凹部及び第1面を有する。凹部は、軸方向第1側に開口する。第1面は、凹部と周方向において隣接する。第1面は、軸方向第1側を向く。第1回転部材は、回転可能に配置される。第2回転部材は、凸部を有する。凸部は、軸方向第2側を向く第2面を含む。凸部は、凹部内に配置される。第2回転部材は、第1回転部材と相対回転可能に配置される。案内部は、第1回転部材と第2回転部材との組立時において凸部を凹部内に案内するように構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向第1側に開口する凹部、及び前記凹部と周方向において隣接し軸方向第1側を向く第1面を有し、回転可能に配置される第1回転部材と、
軸方向第2側を向く第2面を含み前記凹部内に配置される凸部を有し、前記第1回転部材と相対回転可能に配置される第2回転部材と、
前記第1回転部材と前記第2回転部材との組立時において前記凸部を前記凹部内に案内するように構成される案内部と、
を備える、クラッチ装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記第1面上に配置される、
請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記凹部に向かって延びる傾斜面を有する、
請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記第1回転部材は、前記第1面から軸方向第1側に延びる柱部を有し、
前記案内部は、前記柱部と連結する、
請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記第1回転部材は、第1カム面を有し、
前記第2回転部材は、前記第1カム面と対向する第2カム面を有し、
前記第1カム面は、前記凹部の側面を画定し、前記第1面と連結し、軸方向第2側を向き、
前記第2カム面は、前記凸部の側面を画定し、軸方向第1側を向く、
請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記案内部は、周方向において前記第1面の端縁と間隔をあけて配置され、
前記案内部は、前記凹部に向かって延びる傾斜面を有し、
前記傾斜面は、軸方向第1側に配置される第1端縁と、軸方向第2側に配置される第2端縁と、を有し、
前記第2端縁は、前記第1面と軸方向において間隔をあけて配置される、
請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項7】
前記案内部は、前記第2面上に形成される、
請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項8】
前記案内部は、周方向を向くとともに軸方向第2側を向く傾斜面を有する、
請求項7に記載のクラッチ装置。
【請求項9】
前記第1回転部材と前記第2回転部材との間に配置されるクラッチ部をさらに備え、
前記第1回転部材及び前記第2回転部材の一方は、受圧面を有し、
前記第1回転部材及び前記第2回転部材の他方は、押圧面を有し、
前記クラッチ部は、前記受圧面と前記押圧面との間に配置される、
請求項1に記載のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車及びバギーなどのモータサイクルには、エンジンからの動力をトランスミッションに伝達又は遮断するためにクラッチ装置が用いられている。クラッチ装置は、互いに相対回転可能な第1回転部材(例えば、クラッチセンタ)、及び第2回転部材(例えば、プレッシャプレート)等を有している(特許文献1参照)。第1回転部材と第2回転部材とを組み立てる際、第1回転部材に形成された凹部内に第2回転部材の凸部を合わせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1回転部材と第2回転部材とを組み立てる際に、凸部と凹部の位置が合っていないと組み立てられないため、第1回転部材と第2回転部材とを互いに回転させて凸部と凹部の位置を合わせる必要がある。このように、凸部と凹部との位置合わせの作業に手間が掛かるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、スムーズに第1回転部材と第2回転部材とを組み立てることができるクラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係るクラッチ装置は、第1回転部材、第2回転部材、及び案内部を備える。第1回転部材は、凹部及び第1面を有する。凹部は、軸方向第1側に開口する。第1面は、凹部と周方向において隣接する。第1面は、軸方向第1側を向く。第1回転部材は、回転可能に配置される。第2回転部材は、凸部を有する。凸部は、軸方向第2側を向く第2面を含む。凸部は、凹部内に配置される。第2回転部材は、第1回転部材と相対回転可能に配置される。案内部は、第1回転部材と第2回転部材との組立時において凸部を凹部内に案内するように構成される。
【0007】
この構成によれば、クラッチ装置は、凸部を凹部に案内するように構成された案内部を備えているため、第1回転部材と第2回転部材とを組み立てる際に、凸部と凹部との位置合わせをする必要が無い。このため、スムーズに第1回転部材と第2回転部材とを組み立てることができる。
【0008】
第2態様に係るクラッチ装置は、第1態様に係るクラッチ装置において、次のように構成される。案内部は、第1面上に配置される。
【0009】
第3態様に係るクラッチ装置は、第2態様に係るクラッチ装置において、次のように構成される。案内部は、凹部に向かって延びる傾斜面を有する。この構成によれば、凸部が傾斜面に沿って凹部へと案内されるため、凸部と凹部との位置合わせが不要となる。
【0010】
第4態様に係るクラッチ装置は、第2又は第3態様に係るクラッチ装置において、次のように構成される。第1回転部材は、第1面から軸方向第1側に延びる柱部を有する。案内部は、柱部と連結する。
【0011】
第5態様に係るクラッチ装置は、第2から第4態様のいずれかに係るクラッチ装置において、次のように構成される。第1回転部材は、第1カム面を有する。第2回転部材は、第1カム面と対向する第2カム面を有する。第1カム面は、凹部の側面を画定する。第1カム面は、第1面と連結する。第1カム面は、軸方向第2側を向く。第2カム面は、凸部の側面を画定する。第2カム面は、軸方向第1側を向く。
【0012】
第6態様に係るクラッチ装置は、第2から第5態様のいずれかに係るクラッチ装置において、次のように構成される。案内部は、周方向において第1面の端縁と間隔をあけて配置される。案内部は、凹部に向かって延びる傾斜面を有する。傾斜面は、軸方向第1側に配置される第1端縁と、軸方向第2側に配置される第2端縁と、を有する。第2端縁は、第1面と軸方向において間隔をあけて配置される。
【0013】
第7態様に係るクラッチ装置は、第1から第6態様のいずれかに係るクラッチ装置において、次のように構成される。案内部は、第2面上に形成される。
【0014】
第8態様に係るクラッチ装置は、第7態様に係るクラッチ装置において、次のように構成される。案内部は、傾斜面を有する。傾斜面は、周方向を向くとともに軸方向第2側を向く。
【0015】
第9態様に係るクラッチ装置は、第1~第8態様に係るクラッチ装置において、クラッチ部をさらに備える。クラッチ部は、第1回転部材と第2回転部材との間に配置される。第1回転部材及び第2回転部材の一方は、受圧面を有する。第1回転部材及び第2回転部材の他方は、押圧面を有する。クラッチ部は、受圧面と押圧面との間に配置される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スムーズに第1回転部材と第2回転部材とを組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図8】第1回転部材と第2回転部材との組立を説明するための概略図。
【
図9】第1回転部材と第2回転部材との組立を説明するための概略図。
【
図10】第1回転部材と第2回転部材との組立を説明するための概略図。
【
図11】変形例に係るクラッチ装置の
図5に相当する図。
【
図12】変形例に係るクラッチ装置の
図2に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態に係るクラッチ装置100について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、クラッチ装置100の回転軸Oが延びる方向である。また軸方向第1側とは、
図2の右側、軸方向第2側とは、
図2の左側を意味する。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。第1回転方向とは、走行時にクラッチ装置が回転する方向であり、第2回転方向とは、第1回転方向とは逆の回転方向である。
【0019】
[クラッチ装置]
図1はクラッチ装置100の平面図、
図2は
図1のII-II線断面図である。
図1及び
図2に示すように、クラッチ装置100は、駆動源(例えばエンジン)からの動力を駆動輪へと伝達したり、その伝達を遮断したりするように構成されている。クラッチ装置100は、第1回転方向R1(
図1の反時計回り)に動力を伝達するように構成されている。クラッチ装置100は、回転可能に構成されている。詳細には、クラッチ装置100は、回転軸Oを中心に第1回転方向R1に回転する。
【0020】
クラッチ装置100は、クラッチハウジング2、第1回転部材3、第2回転部材4、クラッチ部5、及びサポートプレート6を有している。また、クラッチ装置100は、複数のボルト8と、複数のコイルスプリング9とを有している。
【0021】
[クラッチハウジング]
図2に示すように、クラッチハウジング2は、円板部21及び筒状部22を有する。クラッチハウジング2は、入力ギア10に連結されている。この入力ギア10は、エンジン(図示省略)で発生した動力が入力される環状の部材である。入力ギア10は、エンジン側のクランク軸に固定された駆動ギア(図示せず)に噛み合っている。
【0022】
円板部21は、複数のコイルスプリング(図示省略)を介して、入力ギア10と連結されている。筒状部22は、円板部21の外周縁部から軸方向第1側に延びている。筒状部22は、軸方向に延びる複数の切欠き221を有している。複数の切欠きは、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0023】
[第1回転部材]
図3は軸方向第1側から見た第1回転部材3の平面図、
図4は第1回転部材3の斜視図、
図5は
図1のV-V線断面図である。なお、
図5において、図解を容易にするために、第1回転部材3、第2回転部材4、サポートプレート6、及びボルト8以外の記載を省略している。
【0024】
図2に示すように、第1回転部材3は、クラッチハウジング2に対して軸方向第1側に配置されている。また、第1回転部材3は、クラッチハウジング2の筒状部22に対して、径方向内側に配置されている。第1回転部材3は、回転軸Oを中心に、回転可能に配置されている。第1回転部材3は、クラッチハウジング2と相対回転するように構成されている。第1回転部材3は、軸方向において移動不能に配置されている。
【0025】
図2から
図5に示すように、第1回転部材3は、第1ボス部31、複数のベース部32、複数の柱部33、複数の凹部34、複数の案内部35、第1円筒部36、第1フランジ部37、及び受圧面38を有している。
【0026】
図2及び
図3に示すように、第1ボス部31は、軸方向に延びている。第1ボス部31は、円筒状である。第1ボス部31は、その中央部において、軸方向に延びるスプライン孔31aを有している。スプライン孔31aに、トランスミッションの入力シャフト(図示省略)がスプライン係合する。軸方向において、第1ボス部31と入力ギア10との間には、スラストプレート14が設けられている。
【0027】
各ベース部32は、第1ボス部31の外周面から、径方向外側に延びている。各ベース部32は、第1ボス部31に対して、径方向外側に配置されている。各ベース部32は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。各ベース部32は、第1円筒部36と連結している。各ベース部32は、軸方向第1側を向く第1面321を有している。第1面321は、軸方向と直交する。
【0028】
柱部33は、ベース部32の第1面321から軸方向第1側に延びている。柱部33は円筒状である。柱部33は、軸方向に貫通するネジ孔331を有している。
【0029】
各凹部34は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。各凹部34は、周方向において、各ベース部32と交互に配置されている。凹部34は、軸方向視において、第1面321と周方向において隣接している。各凹部34は、軸方向第1側に開口している。なお、本実施形態では、各凹部34は、軸方向に貫通しているため、軸方向第2側にも開口している。
【0030】
図4及び
図5に示すように、第1回転部材3は、第1カム面341と第3カム面342とを有している。第1カム面341及び第3カム面342は、凹部34の側面を画定している。詳細には、第1カム面341及び第3カム面342は、凹部34の周方向の側面を画定している。第1カム面341は、凹部34の第1回転方向R1側の側面を画定している。第3カム面342は、凹部34の第2回転方向R2側の側面を画定している。
【0031】
第1カム面341は、周方向を向くとともに、軸方向第2側を向くように傾斜している。詳細には、第1カム面341は、第2回転方向R2を向いている。第1カム面341は、第1面321と連結している。
【0032】
第3カム面342は、周方向を向くとともに、軸方向第1側を向くように傾斜している。詳細には、第3カム面342は、第1回転方向R1を向いている。第3カム面342は、第1カム面341と反対を向いている。第3カム面342は、第1面321と連結している。
【0033】
図3~
図5に示すように、案内部35は、第1面321上に形成されている。案内部35は、一つの部材によってベース部32と一体的に形成されている。案内部35は、周方向において、柱部33と隣接している。案内部35は、柱部33に対して第2回転方向R2側に配置されている。案内部35は、柱部33と連結している。この構成によれば、コイルスプリング9を柱部33に取り付けようとしても、案内部35がコイルスプリング9に干渉して取り付けることができない。このため、コイルスプリング9を柱部33に誤って取り付けることを防止することができる。なお、案内部35は、一つの部材によって柱部33と一体的に形成されている。
【0034】
第1面321は、周方向において、第1カム面341から第3カム面342まで延びている。案内部35は、この第1カム面341から第3カム面342まで延びる第1面321上において、第1カム面341側に配置されている。案内部35は、軸方向視において、第1カム面341と重複するように配置されている。
【0035】
案内部35は、径方向視において、三角形状となっている。案内部35は、傾斜面351を有している。傾斜面351は、凹部34に向かって延びている。詳細には、傾斜面351は、周方向を向くとともに、軸方向第1側を向くように傾斜している。なお、傾斜面351は、第2回転方向R2側を向いている。
【0036】
図3及び
図4に示すように、第1円筒部36は、軸方向に延びている。第1円筒部36は、その外周面に複数の第1外歯361が形成されている。各第1外歯361は、軸方向に延びている。
【0037】
第1円筒部36は、各ベース部32に対して間隔をあけて径方向外側に配置されている。このため、各ベース部32と、第1円筒部36との間には、周方向に延びる谷部301が形成されている。なお、第1円筒部36は、各ベース部32の軸方向第2側端部と連結している。
【0038】
第1フランジ部37は、第1円筒部36から径方向外側に延びている。詳細には、第1フランジ部37は、第1円筒部36の軸方向第2側の端部から径方向外側に延びている。第1フランジ部37の軸方向第1側を向く面が受圧面38となる。すなわち、受圧面38は、軸方向第1側を向いている。受圧面38は、周方向に延びる環状である。受圧面38は、第1回転部材3の外周部に配置されている。
【0039】
[第2回転部材]
図6は軸方向第2側から見た第2回転部材の斜視図、
図7は軸方向第1側から見た第2回転部材の斜視図である。
図2、
図5、
図6、及び
図7に示すように、第2回転部材4は、軸方向に移動可能に配置されている。すなわち、第2回転部材4は、第1回転部材3に対して、軸方向に相対移動可能である。第2回転部材4は、回転軸Oを中心に、回転可能に配置されている。第2回転部材4は、第1回転部材3に対して、所定の範囲において、相対回転可能である。第2回転部材4は、軸方向において、第1回転部材3とサポートプレート6との間に配置されている。
【0040】
第2回転部材4は、第2ボス部41、複数の凸部42、複数の連結部43、第2フランジ部44、押圧面45、及び第2円筒部46を有している。
【0041】
図6及び
図7に示すように、第2ボス部41は、円筒状であって、軸方向に延びている。第2ボス部41は、レリーズ機構(図示省略)が取り付けられるように構成されている。各凸部42は、第2ボス部41に対して径方向外側に配置されている。
【0042】
図5及び
図6に示すように、各凸部42は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。各凸部42は、各凹部34内に配置されている。各凸部42は、軸方向第2側に突出している。各凸部42は、軸方向第2側を向く第2面421を有している。第2面421は、各凸部42の先端面を構成している。すなわち、第2面421は、各凸部42の軸方向第2側の端面である。
【0043】
図6及び
図7に示すように、各凸部42は、第2ボス部41から径方向外側に延びている。各凸部42は、コイルスプリング9を保持するように構成された保持凹部424を有している。保持凹部424は、軸方向に延びている。保持凹部424は、軸方向第1側に開口している。
【0044】
図5に示すように、各凸部42は、第2カム面422と第4カム面423とを有している。第2カム面422及び第4カム面423は、凸部42の側面を画定している。詳細には、第2カム面422及び第4カム面423は、凸部42の周方向の側面を画定している。第2カム面422は、凸部42の第1回転方向R1側の側面を画定している。第4カム面423は、凸部42の第2回転方向R2側の側面を画定している。
【0045】
第2カム面422は、第1カム面341と対向している。第2カム面422は、周方向を向くとともに、軸方向第1側を向くように傾斜している。詳細には、第2カム面422は、第1回転方向R1を向いている。第2カム面422は、第2面421と連結している。
【0046】
第4カム面423は、第3カム面342と対向している。第4カム面423は、周方向を向くとともに、軸方向第2側を向くように傾斜している。詳細には、第4カム面423は、第2回転方向R2を向いている。第4カム面423は、第2面421と連結している。
【0047】
図6に示すように、連結部43は、各凸部42を連結している。連結部43はベース部32と第1円筒部36との間を周方向に延びている。すなわち、連結部43は、谷部301内を周方向に延びている(
図2参照)。
【0048】
第2フランジ部44は、凸部42及び連結部43に対して径方向外側に配置されている。第2フランジ部44の軸方向第2側を向く面が押圧面45となる。すなわち、押圧面45は、軸方向第2側を向いている。押圧面45は、周方向に延びる環状である。押圧面45は、第2回転部材4の外周部に配置されている。
【0049】
図5に示すように、押圧面45は、受圧面38に対して、軸方向第1側に配置されている。軸方向視において、押圧面45は、受圧面38と重複している。
【0050】
図6に示すように、第2円筒部46は、第2フランジ部44の内周端部から軸方向第2側に延びている。第2円筒部46は、第1円筒部36と軸方向において隣り合うように配置されている。なお、第2円筒部46は、第1円筒部36と軸方向において間隔をあけて配置されている。
【0051】
第2円筒部46は、その外周面上に、複数の第2外歯461が形成されている。各第2外歯461は、軸方向に延びている。第2外歯461の寸法は、軸方向の寸法を除き、第1外歯361の寸法と同じである。第2円筒部46の歯先円直径は、第1円筒部36の歯先円直径と同じである。また、第2円筒部46の歯底円直径は、第1円筒部36の歯底円直径と同じである。
【0052】
以上のように構成された第1回転部材3と第2回転部材4との組立について、
図8~
図10を参照しつつ説明する。
図8~
図10は、第1回転部材3と第2回転部材4との組立を説明するための概略図である。
【0053】
図8に示すように、第1回転部材3と第2回転部材4とを組み立てる際は、第2回転部材4を第1回転部材3に向かって軸方向第2側に移動させる。ここで、従来の構成であれば、第2回転部材4の凸部42を第1回転部材3の凹部34内に収容するために、周方向(
図8の左右方向)において、凸部42と凹部34との位置合わせをする必要がある。一方、本実施形態では、案内部35を有しているために、以下に説明するように、凸部42と凹部34との位置合わせの必要が無い。
【0054】
図9に示すように、第2回転部材4を軸方向第2側に移動させると、第2回転部材4の凸部42が案内部35の傾斜面351に当接する。そして、さらに第2回転部材4を軸方向第2側に移動させると、第2回転部材4の凸部42は、案内部35の傾斜面351に沿って周方向に回転しながら第1回転部材3の凹部34へと案内される。そして、
図10に示すように、最終的に、第2回転部材4の凸部42は、第1回転部材3の凹部34内に配置される。
このように、案内部35は、第1回転部材3と第2回転部材4との組立時において、凸部42を凹部34内に案内するように構成されている。
【0055】
[クラッチ部]
図2に示すように、クラッチ部5は、クラッチハウジング2と第1回転部材3との間で動力の伝達をしたり、その伝達を遮断したりするように構成されている。クラッチ部5は、第1回転部材3と第2回転部材4との間に配置されている。詳細には、クラッチ部5は、受圧面38と押圧面45との間に配置されている。
【0056】
クラッチ部5は、複数のドライブプレート51と、複数のドリブンプレート52とを有している。ドライブプレート51、及びドリブンプレート52は、受圧面38と押圧面45との間に配置されている。ドライブプレート51と、ドリブンプレート52とは、軸方向において交互に配置されている。
【0057】
ドライブプレート51は、クラッチハウジング2に対して、軸方向に移動可能であり且つ相対回転不能である。すなわち、ドライブプレート51は、クラッチハウジング2と一体的に回転する。ドライブプレート51には両面に摩擦材が貼付されている。
【0058】
ドリブンプレート52は、第1円筒部36又は第2円筒部46に対して、軸方向に移動可能であり且つ相対回転不能である。すなわち、ドリブンプレート52は、第1回転部材3又は第2回転部材4と一体的に回転する。
【0059】
[サポートプレート]
図1及び
図2に示すように、サポートプレート6は、周方向に延びる環状である。サポートプレート6は、第1回転部材3に対して、軸方向第1側に配置されている。サポートプレート6は、柱部33の先端部に取り付けられている。詳細には、ボルト8が、第1回転部材3とサポートプレート6とを締結している。このため、サポートプレート6は、第1回転部材3と一体的に回転する。
【0060】
[コイルスプリング]
コイルスプリング9は、周方向において、柱部33と間隔をあけて配置されている。詳細には、複数のコイルスプリング9と複数の柱部33とが周方向において交互に配置されている。コイルスプリング9は、軸方向において、第2回転部材4とサポートプレート6との間に圧縮された状態で配置されている。なお、コイルスプリング9の軸方向第2側の端部は、第2回転部材4の保持凹部424内に配置されている。コイルスプリング9は、保持凹部424によって保持されることにより、径方向及び周方向への移動が規制されている。
【0061】
コイルスプリング9は、第2回転部材4を軸方向第2側に付勢している。このため、押圧面45が受圧面38に近付くように付勢され、クラッチ部5がクラッチオン状態となり、動力が伝達される。なお、レリーズ部材によって、コイルスプリング9の付勢力に抗して第2回転部材4を軸方向第1側に移動させることにより、押圧面45が受圧面38から離れるように移動する。この結果、クラッチ部5がクラッチオフ状態となり、クラッチハウジング2と第1回転部材3との間での動力の伝達が遮断される。
【0062】
[カム機構の動作]
加速時などにおいて第2回転部材4が第1回転部材3に対して第1回転方向R1に相対回転すると、第1カム面341と第2カム面422とが互いに押し合い、第2回転部材4が軸方向第2側に移動する。この結果、押圧面45が受圧面38に近付くように移動するため、クラッチ部5による結合力が増加する。
【0063】
一方、減速時などにおいて第1回転部材3が第2回転部材4に対して第1回転方向R1に相対回転すると、第3カム面342と第4カム面423とが互いに押し合い、第2回転部材4が軸方向第1側に移動する。この結果、押圧面45が受圧面38から離れるように移動するため、クラッチ部5による結合力が低減する。
【0064】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の各変形例は、基本的には同時に適用することができる。
【0065】
(a)上記実施形態では、案内部35は、第1回転部材3に形成されているが、クラッチ装置100の構成はこれに限定されない。例えば、
図11に示すように、案内部35は、第2回転部材4に形成されていてもよい。詳細には、案内部35は、第2回転部材4の凸部42の第2面421上に形成されていてもよい。この場合、案内部35の傾斜面351は、周方向を向くとともに軸方向第2側を向くように傾斜している。なお、傾斜面351は、第1回転方向R1側を向いている。この案内部35も、第1回転部材3と第2回転部材4との組立時において、凸部42を凹部34内に案内するように構成されている。なお、クラッチ装置100は、第1回転部材3に形成される案内部35に加えて、第2回転部材4に形成される案内部を有していてもよい。
【0066】
(b)上記実施形態では、第1回転部材3は軸方向において移動不能に配置され、第2回転部材4は軸方向に移動可能に配置されていたが、クラッチ装置100の構成はこれに限定されない。すなわち、
図12に示すように、第1回転部材3は軸方向において移動可能に配置され、第2回転部材4は軸方向に移動不能に配置されていてもよい。
【0067】
(c)
図13は、案内部35の変形例を示す概略図である。
図12に示すように、案内部35は、周方向において、第1面321の端縁322と間隔をあけて配置されていてもよい。案内部35の傾斜面351は、第1端縁352と、第2端縁353とを有している。第1端縁352は、軸方向第1側に配置される端縁である。第2端縁353は、軸方向第2側に配置される端縁である。第2端縁353は、軸方向において、第1面321と間隔をあけて配置されている。すなわち、第2端縁353は、第1面321に対して軸方向第1側に配置されている。傾斜面351を凹部34に向かって延ばした仮想面(
図13の二点鎖線)は、第1面321と交差することなく、凹部34まで延びる。
【符号の説明】
【0068】
3 :第1回転部材
321 :第1面
322 :端縁
33 :柱部
34 :凹部
341 :第1カム面
35 :案内部
351 :傾斜面
352 :第1端縁
353 :第2端縁
4 :第2回転部材
42 :凸部
421 :第2面
422 :第2カム面
100 :クラッチ装置