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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162362
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】慣性センサーモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077786
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】大谷 富美和
(57)【要約】
【課題】出力される計測データが2つの慣性センサーのいずれによって検出された物理量に基づいて生成されたかを外部から特定可能な慣性センサーモジュールを提供すること。
【解決手段】慣性センサーモジュールに加わる第1範囲の物理量を検出し、第1検出信号を出力する第1慣性センサーと、前記慣性センサーモジュールに加わる前記第1範囲よりも広い第2範囲の前記物理量を検出し、第2検出信号を出力する第2慣性センサーと、前記第1検出信号及び前記第2検出信号が入力され、前記第1検出信号及び前記第2検出信号の一方に基づいて計測データを生成し、生成した前記計測データと、前記計測データが前記第1検出信号及び前記第2検出信号のいずれに基づいて生成されたかを示すセンサー識別情報とを出力する処理装置と、を備える、慣性センサーモジュール。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサーモジュールであって、
前記慣性センサーモジュールに加わる第1範囲の物理量を検出し、第1検出信号を出力する第1慣性センサーと、
前記慣性センサーモジュールに加わる前記第1範囲よりも広い第2範囲の前記物理量を検出し、第2検出信号を出力する第2慣性センサーと、
前記第1検出信号及び前記第2検出信号が入力され、前記第1検出信号及び前記第2検出信号の一方に基づいて計測データを生成し、生成した前記計測データと、前記計測データが前記第1検出信号及び前記第2検出信号のいずれに基づいて生成されたかを示すセンサー識別情報とを出力する処理装置と、
を備える、慣性センサーモジュール。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2範囲は、前記第1範囲と、前記第1範囲以外の範囲である第3範囲とを含み、
前記処理装置は、前記物理量が前記第1範囲に含まれるとき、前記第1検出信号に基づいて前記計測データを生成し、前記物理量が前記第3範囲に含まれるとき、前記第2検出信号に基づいて前記計測データを生成する、慣性センサーモジュール。
【請求項3】
請求項2において、
前記処理装置は、前記第2検出信号に基づいて、前記物理量が前記第1範囲に含まれるか否かを判定する、慣性センサーモジュール。
【請求項4】
請求項2において、
前記処理装置は、前記物理量が前記第1範囲と前記第3範囲との境界値であるときの前記第1検出信号に基づく前記計測データと前記第2検出信号に基づく前記計測データとが一致するように補正した前記第2検出信号に基づく前記計測データを生成する、慣性センサーモジュール。
【請求項5】
請求項4において、
前記処理装置は、前記第3範囲の前記物理量を変数とする3次以上の多項式に基づいて、前記第2検出信号に基づく前記計測データを補正する、慣性センサーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X軸、Y軸及びZ軸を検出軸として角速度を検出する3軸慣性センサーと、Z軸を検出軸として3軸慣性センサーよりも高い精度で角速度を検出する1軸慣性センサーと、1軸慣性センサーが検出したZ軸回りの角速度に基づく第1出力信号と、3軸慣性センサーが検出したZ軸回りの角速度に基づく第2出力信号のいずれか一方を選択して出力する演算回路と、を備えた慣性センサーモジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-42129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の慣性センサーモジュールと接続されるホストデバイスは、慣性センサーモジュールから出力される信号が第1出力信号と第2出力信号のいずれであるかを判断することができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る慣性センサーモジュールの一態様は、
前記慣性センサーモジュールに加わる第1範囲の物理量を検出し、第1検出信号を出力する第1慣性センサーと、
前記慣性センサーモジュールに加わる前記第1範囲よりも広い第2範囲の前記物理量を検出し、第2検出信号を出力する第2慣性センサーと、
前記第1検出信号及び前記第2検出信号が入力され、前記第1検出信号及び前記第2検出信号の一方に基づいて計測データを生成し、生成した前記計測データと、前記計測データが前記第1検出信号及び前記第2検出信号のいずれに基づいて生成されたかを示すセンサー識別情報とを出力する処理装置と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】慣性センサーモジュールの被装着面への固定態様を示す斜視図。
図2】慣性センサーモジュールを被装着面側から観察した斜視図。
図3】慣性センサーモジュールの分解斜視図。
図4】回路基板の斜視図。
図5】慣性計測システムの構成を示す図。
図6】慣性センサーの構成例を示す図。
図7】慣性センサーの構成例を示す図。
図8】慣性センサーに対する角速度の入出力特性を概念的に示す図。
図9】計測データ及び識別情報の一例を示す図。
図10】第1実施形態における処理装置の構成例を示す図。
図11】慣性センサーに対する角速度の入出力特性と補正関数との関係を概念的に示す図。
図12】補正関数の作成方法について説明するための図。
図13】第2実施形態における処理装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0008】
1.第1実施形態
1-1.慣性センサーモジュールの構造
図1は、本実施形態の慣性センサーモジュール2の被装着面への固定態様を示す斜視図である。図2は、慣性センサーモジュール2を被装着面側から観察した斜視図である。まず、本実施形態の慣性センサーモジュール2の概要について説明する。慣性センサーモジュール2は、例えば、自動車や、ロボットなどの被装着体の挙動を検出する。
【0009】
図1に示すように、慣性センサーモジュール2は、平面形状が略正方形の直方体をなしており、正方形の一辺の長さが数センチ程度とコンパクトに構成されている。慣性センサーモジュール2の対角線方向には2ヶ所の切欠き穴52が設けられている。慣性センサーモジュール2は、切欠き穴52に挿通される2本のネジ80により、自動車などの被装着体の被装着面81に固定される。なお、被装着体は自動車などの運動体に限らず、例えば、橋梁や、高架軌道などの建造物であっても良い。建造物に取付けられる場合は、例えば、建造物の健全度をチェックする構造ヘルスモニタリングシステムとして用いられる。
【0010】
図2に示すように、慣性センサーモジュール2は、直方体状のアウターケース51の中にインナーケース70を収納した構成となっている。インナーケース70には、長方形状の開口部71が形成されている。以下、この開口部71の長辺方向をY(+)方向とする。また、Y(+)方向と直交する方向をX(+)方向とし、アウターケース51の厚さ方向をZ(+)として座標軸で示して説明する。なお、インナーケース70の開口部71からは、プラグ型のコネクター66が露出しており、Y(+)方向はコネクター66における複数のピンの配列方向と一致している。また、この座標軸は、慣性センサーモジュール2の検出軸である。
【0011】
図3は、慣性センサーモジュール2の分解斜視図である。図3に示すように、慣性センサーモジュール2は、アウターケース51、接合部材60、回路基板65、インナーケース70などから構成される。
【0012】
アウターケース51は、外形が直方体をなした箱状の筐体である。アウターケース51の材質は、例えば、アルミニウムであるが、他の金属やセラミックであってもよい。アウターケース51の外側には、前述した2つの切欠き穴52が形成されている。ただし、アウターケース51に丸穴等の貫通孔が形成され、当該貫通孔がネジ止めされてもよい。あるいは、アウターケース51の側面にフランジが形成され、フランジ部分がネジ止めされてもよい。
【0013】
アウターケース51には、回路基板65がセットされた状態のインナーケース70を収納するための収納部55が設けられている。収納部55は、底部53aを底面とした第1凹部53と、第1凹部53を囲う受け部54aを有する第2凹部54とから構成される。第1凹部53には、回路基板65が収納される。受け部54aは、底部53aから階段状に立ち上がったリング状のインナーケース70の受け部であり、第2凹部54には、接合部材60を介してインナーケース70が収納される。接合部材60は、アウターケース51とインナーケース70との間に配置される樹脂製の緩衝部材である。接合部材60は、受け部54aと同様なリング状の部材であり、受け部54aの上にセットされる。
【0014】
インナーケース70は、回路基板65を支持する部材であり、アウターケース51の第2凹部54に収納され得る形状に構成されている。インナーケース70は、アウターケース51と同じ材質で構成されている。インナーケース70には、回路基板65のコネクター66を外部に露出させるための開口部71と、回路基板65に実装された電子部品を収納するための第3凹部73とが設けられている。なお、実際には、第3凹部73には樹脂が充填されるが、図3では図示が省略されている。また、アウターケース51における収納部55の第1凹部53にも、同様に樹脂が充填され得るが、図3では図示が省略されている。
【0015】
このような構成により、アウターケース51の中に、回路基板65を含むインナーケース70が収納され一体化された状態で、図1に示したように、2本のネジ80により、被装着体の被装着面81に慣性センサーモジュール2が固定されて使用される。
【0016】
図4は、回路基板65の斜視図である。回路基板65は、複数のスルーホールが形成された多層基板であり、ガラスエポキシ基板が用いられる。ただし、回路基板65は、ガラスエポキシ基板に限られず、複数の慣性センサーや、電子部品、コネクターなどを実装可能なリジットな基板であればよく、例えば、コンポジット基板やセラミック基板が用いられてもよい。回路基板65の外形は、平面視において一部が切り掛かれた変形の八角形に形成されている。回路基板65のZ(+)側の面を第1面65a、第1面65aとは反対側の面を第2面65bという。
【0017】
図4に示すように、回路基板65の第1面65aには、コネクター66、慣性センサー20,10Zなどが実装されている。コネクター66は、プラグ型のコネクターであり、複数のピンが等ピッチで配置されている2列の接続端子を備えている。端子数は、設計仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0018】
図4に示すように、回路基板65におけるX(+)方向の一辺の側面には、慣性センサー10Xが実装されている。また、回路基板65におけるY(+)方向の一辺の側面には、慣性センサー10Yが実装されている。
【0019】
慣性センサー20は、X軸、Y軸、Z軸の3軸回りの角速度及びX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の加速度を検出する6DOFセンサーである。DOFは、Degrees Of Freedomの略である。例えば、慣性センサー20は、シリコン基板をMEMS技術で加工した静電容量型のセンサーである。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【0020】
慣性センサー10Xは、X軸回りの角速度を検出する角速度センサーである。慣性センサー10Yは、Y軸回りの角速度を検出する角速度センサーである。慣性センサー10Zは、Z軸回りの角速度を検出する角速度センサーである。
【0021】
例えば、慣性センサー10X,10Y,10Zは、それぞれ、水晶を材料とするセンサー素子を有し、振動する物体に加わるコリオリの力から角速度を検出する振動ジャイロセンサーである。
【0022】
回路基板65の第2面65bには、処理装置30が実装されている。ただし、処理装置30は、回路基板65の第1面65aに実装されてもよい。処理装置30は、例えばMCUであり、1チップのICとして構成されている。MCUは、Micro Controller Unitの略である。慣性センサー10X,10Y,10Z,20は、それぞれ、回路基板65に設けられた不図示の配線により処理装置30と接続されている。なお、回路基板65には、その他にも、例えば温度センサー等の複数の電子部品が実装されていてもよい。
【0023】
1-2.慣性計測システムの構成
次に、慣性センサーモジュール2を用いた慣性計測システム1の構成及び機能について説明する。また、慣性センサーモジュール2の機能的な構成についても併せて説明する。図5は、慣性計測システム1の構成を示す図である。図5に示すように、慣性計測システム1は、慣性センサーモジュール2とホストデバイス3とを備える。
【0024】
慣性センサーモジュール2は、慣性センサー10X,10Y,10Z,20と、処理装置30と、温度センサー40と、を備える。なお、慣性センサーモジュール2は、図5の構成要素の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0025】
前述の通り、慣性センサー10Xは、X軸回りの角速度を検出する角速度センサーである。また、慣性センサー10Yは、Y軸回りの角速度を検出する角速度センサーである。また、慣性センサー10Zは、Z軸回りの角速度を検出する角速度センサーである。図6は、慣性センサー10X,10Y,10Zの構成例を示す図である。
【0026】
図6に示すように、慣性センサー10Xは、センサー素子11Xと、処理回路12Xと、を含む。例えば、慣性センサー10Xは、センサー素子11Xと処理回路12Xとが実装されたプリント基板がパッケージに収容されたデバイスであってもよい。処理回路12Xは、例えば、半導体により実現されるICチップであってもよい。ICは、Integrated
Circuitの略である。そして、慣性センサー10Xは、パッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS1X、端子TCK1X、端子TDI1X、端子TDO1X及び端子TR1Xを有する。
【0027】
センサー素子11Xは、水晶を材料とするセンサー素子であり、X軸を検出軸とし、物理量としてX軸回りの角速度を検出する。
【0028】
処理回路12Xは、センサー素子11Xから出力される信号に対して物理量の検出処理を行い、検出処理によって得られた検出信号SD1Xを出力する。処理回路12Xは、センサー素子11Xから出力される信号に対して物理量の検出処理を行う検出回路121Xと、検出回路121Xの検出処理によって得られた検出信号SD1Xを出力するインターフェース回路122Xと、を含む。
【0029】
検出回路121Xは、センサー素子11Xから出力される信号を所定の周期で取得し、所定の演算を行って検出信号SD1Xを生成する。検出信号SD1Xは、センサー素子11Xの出力信号に基づいて得られたX軸角速度検出信号SD1GXを含む。また、検出回路121Xは、検出信号SD1Xの生成を完了する毎に検出信号SD1Xの準備完了を知らせるデータレディー信号DRDY1Xを生成する。検出信号SD1Xはインターフェース回路122Xに出力され、データレディー信号DRDY1Xは、端子TR1Xから出力され、処理装置30の端子TMR1Xに入力される。
【0030】
インターフェース回路122Xは、処理装置30から入力される読み出しコマンドに応じて、検出回路121Xから出力される検出信号SD1Xを取得し、取得した検出信号SD1Xを処理装置30に出力する。
【0031】
図6に示すように、慣性センサー10Yは、センサー素子11Yと、処理回路12Yと、を含む。例えば、慣性センサー10Yは、センサー素子11Yと処理回路12Yとが実装されたプリント基板がパッケージに収容されたデバイスであってもよい。処理回路12Yは、例えば、半導体により実現されるICチップであってもよい。そして、慣性センサー10Yは、パッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS1Y、端子TC
K1Y、端子TDI1Y、端子TDO1Y及び端子TR1Yを有する。
【0032】
センサー素子11Yは、水晶を材料とするセンサー素子であり、Y軸を検出軸とし、物理量としてY軸回りの角速度を検出する。
【0033】
処理回路12Yは、センサー素子11Yから出力される信号に対して物理量の検出処理を行い、検出処理によって得られた検出信号SD1Yを出力する。処理回路12Yは、センサー素子11Yから出力される信号に対して物理量の検出処理を行う検出回路121Yと、検出回路121Yの検出処理によって得られた検出信号SD1Yを出力するインターフェース回路122Yと、を含む。
【0034】
検出回路121Yは、センサー素子11Yから出力される信号を所定の周期で取得し、所定の演算を行って検出信号SD1Yを生成する。検出信号SD1Yは、センサー素子11Yの出力信号に基づいて得られたY軸角速度検出信号SD1GYを含む。また、検出回路121Yは、検出信号SD1Yの生成を完了する毎に検出信号SD1Yの準備完了を知らせるデータレディー信号DRDY1Yを生成する。検出信号SD1Yはインターフェース回路122Yに出力され、データレディー信号DRDY1Yは、端子TR1Yから出力され、処理装置30の端子TMR1Yに入力される。
【0035】
インターフェース回路122Yは、処理装置30から入力される読み出しコマンドに応じて、検出回路121Yから出力される検出信号SD1Yを取得し、取得した検出信号SD1Yを処理装置30に出力する。
【0036】
図6に示すように、慣性センサー10Zは、センサー素子11Zと、処理回路12Zと、を含む。例えば、慣性センサー10Zは、センサー素子11Zと処理回路12Zとが実装されたプリント基板がパッケージに収容されたデバイスであってもよい。処理回路12Zは、例えば、半導体により実現されるICチップであってもよい。そして、慣性センサー10Zは、パッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS1Z、端子TCK1Z、端子TDI1Z、端子TDO1Z及び端子TR1Zを有する。
【0037】
センサー素子11Zは、水晶を材料とするセンサー素子であり、Z軸を検出軸とし、物理量としてZ軸回りの角速度を検出する。
【0038】
処理回路12Zは、センサー素子11Zから出力される信号に対して物理量の検出処理を行い、検出処理によって得られた検出信号SD1Zを出力する。処理回路12Zは、センサー素子11Zから出力される信号に対して物理量の検出処理を行う検出回路121Zと、検出回路121Zの検出処理によって得られた検出信号SD1Zを出力するインターフェース回路122Zと、を含む。
【0039】
検出回路121Zは、センサー素子11Zから出力される信号を所定の周期で取得し、所定の演算を行って検出信号SD1Zを生成する。検出信号SD1Zは、センサー素子11Zの出力信号に基づいて得られたZ軸角速度検出信号SD1GZを含む。また、検出回路121Zは、検出信号SD1Zの生成を完了する毎に検出信号SD1Zの準備完了を知らせるデータレディー信号DRDY1Zを生成する。検出信号SD1Zはインターフェース回路122Zに出力され、データレディー信号DRDY1Zは、端子TR1Zから出力され、処理装置30の端子TMR1Zに入力される。
【0040】
インターフェース回路122Zは、処理装置30から入力される読み出しコマンドに応じて、検出回路121Zから出力される検出信号SD1Zを取得し、取得した検出信号SD1Zを処理装置30に出力する。
【0041】
図5の説明に戻り、前述の通り、慣性センサー20は、X軸、Y軸、Z軸の3軸回りの角速度及びX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の加速度を検出する6DOFセンサーである。図7は、慣性センサー20の構成例を示す図である。図7に示すように、慣性センサー20は、センサー素子21,22,23,24,25,26と、処理回路27と、を含む。例えば、慣性センサー20は、センサー素子21,22,23,24,25,26及び処理回路27が形成されたシリコン基板がパッケージに収容された、シリコンMEMSセンサーであってもよい。そして、慣性センサー20は、パッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS2、端子TCK2、端子TDI2、端子TDO2及び端子TR2を有する。
【0042】
センサー素子21は、X軸を検出軸とし、物理量としてX軸回りの角速度を検出するセンサー素子である。センサー素子22は、Y軸を検出軸とし、物理量としてY軸回りの角速度を検出するセンサー素子である。センサー素子23は、Z軸を検出軸とし、物理量としてZ軸回りの角速度を検出するセンサー素子である。
【0043】
センサー素子24は、X軸を検出軸とし、物理量としてX軸方向の加速度を検出するセンサー素子である。センサー素子25は、Y軸を検出軸とし、物理量としてY軸方向の加速度を検出するセンサー素子である。センサー素子26は、Z軸を検出軸とし、物理量としてZ軸方向の加速度を検出するセンサー素子である。
【0044】
処理回路27は、センサー素子21,22,23,24,25,26からそれぞれ出力される信号に対して物理量の検出処理を行い、検出処理によって得られた検出信号SD2を出力する。処理回路27は、センサー素子21,22,23,24,25,26からそれぞれ出力される信号に対して物理量の検出処理を行う検出回路271と、検出回路271の検出処理によって得られた検出信号SD2を出力するインターフェース回路272と、を含む。
【0045】
検出回路271は、センサー素子21,22,23,24,25,26からそれぞれ出力される信号を所定の周期で取得し、所定の演算を行って検出信号SD2を生成する。検出信号SD2は、センサー素子21の出力信号に基づいて得られたX軸角速度検出信号SD2GX、センサー素子22の出力信号に基づいて得られたY軸角速度検出信号SD2GY及びセンサー素子23の出力信号に基づいて得られたZ軸角速度検出信号SD2GZを含む。さらに、検出信号SD2は、センサー素子24の出力信号に基づいて得られたX軸加速度検出信号SD2AX、センサー素子25の出力信号に基づいて得られたY軸加速度検出信号SD2AY及びセンサー素子26の出力信号に基づいて得られたZ軸加速度検出信号SD2AZを含む。また、検出回路271は、検出信号SD2の生成を完了する毎に検出信号SD2の準備完了を知らせるデータレディー信号DRDY2を生成する。検出信号SD2はインターフェース回路272に出力され、データレディー信号DRDY2は、端子TR2から出力され、処理装置30の端子TMR2に入力される。
【0046】
インターフェース回路272は、処理装置30から入力される読み出しコマンドに応じて、検出回路271から出力される検出信号SD2を取得し、取得した検出信号SD2を処理装置30に出力する。
【0047】
図5の説明に戻り、慣性センサーモジュール2は、慣性センサー10X,10Y,10Z,20と処理装置30とを電気的に接続するデジタルインターフェースバスBSを含む。
【0048】
デジタルインターフェースバスBSは、インターフェース回路122X,122Y,1
22Z,272が行うインターフェース処理の通信規格に準拠したバスである。本実施形態では、デジタルインターフェースバスBSは、SPIの通信規格に準拠したバスであり、2つのデータ信号線、クロック信号線及びチップセレクト信号線を含む。SPIは、Serial Peripheral Interfaceの略である。具体的には、慣性センサー10Xは、端子TCS1X、端子TCK1X、端子TDI1X、端子TDO1Xを介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、慣性センサー10Yは、端子TCS1Y、端子TCK1Y、端子TDI1Y、端子TDO1Yを介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、慣性センサー10Zは、端子TCS1Z、端子TCK1Z、端子TDI1Z、端子TDO1Zを介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、慣性センサー20は、端子TCS2、端子TCK2、端子TDI2、端子TDO2を介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、処理装置30は、端子TMCS1、端子TMCS2、端子TMCK、端子TMDO、端子TMDIを介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。ここで、電気的に接続とは電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。ただし、デジタルインターフェースバスBSは、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などに準拠したバスであってもよい。I2Cは、Inter-Integrated Circuitの略である。
【0049】
処理装置30は、慣性センサー10X,10Y,10Z,20に対してマスターとなるコントローラーである。処理装置30は、集積回路装置であり、例えばMCUなどのプロセッサーにより実現される。或いは、処理装置30は、ゲートアレイなどの自動配置配線によるASICにより実現されてもよい。
【0050】
処理装置30は、端子TMCS1からチップセレクト信号XMCS1を出力し、端子TMCS2からチップセレクト信号XMCS2を出力し、端子TMCKからシリアルクロック信号MSCLKを出力し、端子TMDOからシリアルデータ信号MSDIを出力する。
【0051】
インターフェース回路122Xは、端子TCS1Xから入力されるチップセレクト信号XMCS1、端子TCK1Xから入力されるシリアルクロック信号MSCLK及び端子TDI1Xから入力されるシリアルデータ信号MSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、シリアルデータ信号MSDIが検出信号SD1Xの読み出しコマンドである場合、端子TDO1Xに検出信号SD1Xを出力する。
【0052】
インターフェース回路122Yは、端子TCS1Yから入力されるチップセレクト信号XMCS1、端子TCK1Yから入力されるシリアルクロック信号MSCLK及び端子TDI1Yから入力されるシリアルデータ信号MSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、シリアルデータ信号MSDIが検出信号SD1Yの読み出しコマンドである場合、端子TDO1Yに検出信号SD1Yを出力する。
【0053】
インターフェース回路122Zは、端子TCS1Zから入力されるチップセレクト信号XMCS1、端子TCK1Zから入力されるシリアルクロック信号MSCLK及び端子TDI1Zから入力されるシリアルデータ信号MSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、シリアルデータ信号MSDIが検出信号SD1Zの読み出しコマンドである場合、端子TDO1Zに検出信号SD1Zを出力する。
【0054】
インターフェース回路272は、端子TCS2から入力されるチップセレクト信号XMCS2、端子TCK2から入力されるシリアルクロック信号MSCLK及び端子TDI2から入力されるシリアルデータ信号MSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、シリアルデータ信号MSDIが検出信号SD2の読み出しコマンドで
ある場合、端子TDO2に検出信号SD2を出力する。
【0055】
慣性センサー10Xの端子TDO1Xから出力された検出信号SD1X、慣性センサー10Yの端子TDO1Yから出力された検出信号SD1Y、慣性センサー10Zの端子TDO1Zから出力された検出信号SD1Z、及び、慣性センサー20の端子TDO2から出力された検出信号SD2は、それぞれシリアルデータ信号MSDOとして処理装置30の端子TMDIに入力される。
【0056】
処理装置30は、慣性センサー10X,10Y,10Zからそれぞれ出力される検出信号SD1X,SD1Y,SD1Zと、慣性センサー20から出力される検出信号SD2とが入力され、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2に基づく計測データを出力する。具体的には、処理装置30は、端子TMR1Xからデータレディー信号DRDY1Xが入力されると、慣性センサー10Xに検出信号SD1Xの読み出しコマンドを出力して検出信号SD1Xを読み出し、検出信号SD1Xに対して各種の演算処理を行う。また、処理装置30は、端子TMR1Yからデータレディー信号DRDY1Yが入力されると、慣性センサー10Yに検出信号SD1Yの読み出しコマンドを出力して検出信号SD1Yを読み出し、検出信号SD1Yに対して各種の演算処理を行う。また、処理装置30は、端子TMR1Zからデータレディー信号DRDY1Zが入力されると、慣性センサー10Zに検出信号SD1Zの読み出しコマンドを出力して検出信号SD1Zを読み出し、検出信号SD1Zに対して各種の演算処理を行う。また、処理装置30は、端子TMR2からデータレディー信号DRDY2が入力されると、慣性センサー20に検出信号SD2の読み出しコマンドを出力して検出信号SD2を読み出し、検出信号SD2に対して各種の演算処理を行う。
【0057】
例えば、処理装置30は、温度センサー40から出力されて端子TSENから入力される温度信号TMPOに基づいて、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2に対する温度補正演算を行ってもよい。温度補正演算は、あらかじめ決められた温度範囲において、温度に応じて検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2を増加又は減少させることにより、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2の温度依存性を低減させるように補正する演算である。なお、温度センサー40は、慣性センサー10X,10Y,10Z,20のいずれかに設けられてもよい。
【0058】
また、処理装置30は、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2に対して、感度補正演算、オフセット補正演算、アラインメント補正演算等を行ってもよい。感度補正演算は、各軸の検出感度が基準値となるように補正する演算である。オフセット補正演算は、各軸のゼロ点が基準値となるように補正する演算である。アラインメント補正演算は、各センサー素子の検出軸と慣性センサーモジュール2のX軸、Y軸又はZ軸とのずれによる誤差を補正する演算である。
【0059】
また、処理装置30は、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2に基づいて、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度、角度等を算出する演算を行ってもよい。
【0060】
なお、処理装置30は、一連の演算を行う周期がデータレディー信号DRDY1X,DRDY1Y,DRDY1Z,DRDY2の各周期よりも長い場合、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2の一部を間引くダウンサンプリング演算を行ってもよい。
【0061】
本実施形態では、処理装置30は、端子THCS、端子THCK、端子THDI、端子THDO及び端子THRを介してホストデバイス3と電気的に接続される。ホストデバイス3は、処理装置30に対してマスターとなるコントローラーである。処理装置30は、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z,SD2に対する一連の演算が完了する毎に、端
子THRから計測データの準備完了を知らせるデータレディー信号DRDYをホストデバイス3に出力する。ホストデバイス3は、端子THRからデータレディー信号DRDYが入力される毎に、SPIの通信規格に準拠した、チップセレクト信号XHCS、シリアルクロック信号HSCLK及び計測データの読み出しコマンドであるシリアルデータ信号HSDIを処理装置30に出力する。処理装置30は、端子THCSから入力されるチップセレクト信号XHCS、端子THCKから入力されるシリアルクロック信号HSCLK及び端子THDIから入力されるシリアルデータ信号HSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、端子THDOに計測データを出力する。処理装置30の端子THDOから出力された計測データは、シリアルデータ信号HSDOとしてホストデバイス3に入力される。ただし、処理装置30は、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などのインターフェース処理を行ってもよい。
【0062】
前述の通り、慣性センサー20が有するセンサー素子24は、X軸方向の加速度を検出する。そのため、処理装置30は、検出信号SD2に含まれるX軸加速度検出信号SD2AXに基づいてX軸加速度計測データAを生成し、ホストデバイス3からX軸加速度計測データAの読み出しコマンドを受信すると、生成したX軸加速度計測データAを出力する。同様に、慣性センサー20が有するセンサー素子25は、Y軸方向の加速度を検出する。そのため、処理装置30は、検出信号SD2に含まれるY軸加速度検出信号SD2AYに基づいてY軸加速度計測データAを生成し、ホストデバイス3からY軸加速度計測データAの読み出しコマンドを受信すると、生成したY軸加速度計測データAを出力する。同様に、慣性センサー20が有するセンサー素子26は、Z軸方向の加速度を検出する。そのため、処理装置30は、検出信号SD2に含まれるZ軸加速度検出信号SD2AZに基づいてZ軸加速度計測データAを生成し、ホストデバイス3からZ軸加速度計測データAの読み出しコマンドを受信すると、生成したZ軸加速度計測データAを出力する。
【0063】
また、前述の通り、慣性センサー10Xが有するセンサー素子11Xと慣性センサー20が有するセンサー素子21とは、ともにX軸回りの角速度を検出する。そのため、処理装置30は、検出信号SD1Xに含まれるX軸角速度検出信号SD1GX及び検出信号SD2に含まれるX軸角速度検出信号SD2GXの一方に基づいてX軸角速度計測データGを生成する。そして、処理装置30は、ホストデバイス3からX軸角速度計測データGの読み出しコマンドを受信すると、生成したX軸角速度計測データGと、X軸角速度計測データGがX軸角速度検出信号SD1GX及びX軸角速度検出信号SD2GXのいずれに基づいて生成されたかを示すX軸角速度識別情報FLGとを出力する。
【0064】
同様に、慣性センサー10Yが有するセンサー素子11Yと慣性センサー20が有するセンサー素子22とは、ともにY軸回りの角速度を検出する。そのため、処理装置30は、検出信号SD1Yに含まれるY軸角速度検出信号SD1GY及び検出信号SD2に含まれるY軸角速度検出信号SD2GYの一方に基づいてY軸角速度計測データGを生成する。そして、処理装置30は、ホストデバイス3からY軸角速度計測データGの読み出しコマンドを受信すると、生成したY軸角速度計測データGと、Y軸角速度計測データGがY軸角速度検出信号SD1GY及びY軸角速度検出信号SD2GYのいずれに基づいて生成されたかを示すY軸角速度識別情報FLGとを出力する。
【0065】
同様に、慣性センサー10Zが有するセンサー素子11Zと慣性センサー20が有するセンサー素子23とは、ともにZ軸回りの角速度を検出する。そのため、処理装置30は、検出信号SD1Zに含まれるZ軸角速度検出信号SD1GZ及び検出信号SD2に含まれるZ軸角速度検出信号SD2GZの一方に基づいてZ軸角速度計測データGを生成する。そして、処理装置30は、ホストデバイス3からZ軸角速度計測データGの読み出
しコマンドを受信すると、生成したZ軸角速度計測データGと、Z軸角速度計測データGがZ軸角速度検出信号SD1GZ及びZ軸角速度検出信号SD2GZのいずれに基づいて生成されたかを示すZ軸角速度識別情報FLGとを出力する。
【0066】
本実施形態では、センサー素子11X,11Y,11Zは、水晶を材料とする素子であるのに対して、センサー素子21,22,23は、シリコン基板からMEMS技術を用いて形成した素子である。したがって、センサー素子11X,11Y,11Zをそれぞれ有する慣性センサー10X,10Y,10Zは、センサー素子21,22,23を有する慣性センサー20と比較して、周波数温度特性や周波数安定度が高く、ノイズやジッターが低いため、高価ではあるものの検出精度が高い。
【0067】
一方、センサー素子11X,11Y,11Zとセンサー素子21,22,23との材質や構造の違いに起因して、検出可能な角速度の範囲については、慣性センサー20の方が慣性センサー10X,10Y,10Zよりも広い。すなわち、慣性センサー10X,10Y,10Zは、慣性センサーモジュール2に加わる第1範囲R1の角速度をそれぞれ検出するのに対して、慣性センサー20は、慣性センサーモジュール2に加わる第1範囲R1よりも広い第2範囲R2の角速度を検出する。第2範囲R2は、第1範囲R1と、第1範囲R1以外の範囲である第3範囲R3とを含む。なお、検出可能な角速度の範囲は、例えば、各センサー素子に入力される角速度と各センサー素子から出力される信号との間の線形性が満たされる入力角速度の範囲である。
【0068】
図8は、慣性センサー10X,10Y,10Zに対する角速度の入出力特性と慣性センサー20に対する角速度の入出力特性を概念的に示す図である。なお、図8では、出力角速度は入力角速度に対して線形に変化しているが、実際には線形に変化するとは限らない。図8の例では、慣性センサー10X,10Y,10Zが角速度を検出可能な第1範囲R1は-ω1以上+ω1以下の範囲であり、慣性センサー20が角速度を検出可能な第2範囲R2は-ω2以上+ω2以下の範囲である。したがって、-ω2以上+ω1未満の範囲と+ω1よりも大きく+ω2以下の範囲が、第3範囲R3である。
【0069】
処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるとき、検出信号SD1Xに含まれるX軸角速度検出信号SD1GXに基づいてX軸角速度計測データGを生成する。また、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれるとき、検出信号SD2に含まれるX軸角速度検出信号SD2GXに基づいてX軸角速度計測データGを生成する。例えば、処理装置30は、X軸角速度検出信号SD1GX又はX軸角速度検出信号SD2GXに基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるか否かを判定する。慣性センサー20は、慣性センサー10XよりもX軸回りの角速度の検出範囲が広いので、処理装置30は、X軸角速度検出信号SD2GXに基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるか否かを判定するのが好ましい。
【0070】
同様に、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるとき、検出信号SD1Yに含まれるY軸角速度検出信号SD1GYに基づいてY軸角速度計測データGを生成する。また、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれるとき、検出信号SD2に含まれるY軸角速度検出信号SD2GYに基づいてY軸角速度計測データGを生成する。例えば、処理装置30は、Y軸角速度検出信号SD1GY又はY軸角速度検出信号SD2GYに基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるか否かを判定する。慣性センサー20は、慣性センサー10YよりもY軸回りの角速度の検出範囲が広いので、処理装置30は、Y軸角速度検出信号SD2GYに基づ
いて、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるか否かを判定するのが好ましい。
【0071】
同様に、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるとき、検出信号SD1Zに含まれるZ軸角速度検出信号SD1GZに基づいてZ軸角速度計測データGを生成する。また、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれるとき、検出信号SD2に含まれるZ軸角速度検出信号SD2GZに基づいてZ軸角速度計測データGを生成する。慣性センサー20は、慣性センサー10ZよりもZ軸回りの角速度の検出範囲が広いので、処理装置30は、Z軸角速度検出信号SD2GZに基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるか否かを判定するのが好ましい。
【0072】
なお、ホストデバイス3は、X軸角速度計測データG、Y軸角速度計測データG、Z軸角速度計測データG、X軸加速度計測データA、Y軸加速度計測データA及びZ軸加速度計測データAを含む計測データの読み出しコマンドを送信してもよい。処理装置30は、当該コマンドを受信すると、図9に示すように、X軸角速度計測データG、Y軸角速度計測データG、Z軸角速度計測データG、X軸加速度計測データA、Y軸加速度計測データA及びZ軸加速度計測データAとともに、X軸角速度識別情報FLG、Y軸角速度識別情報FLG及びZ軸角速度識別情報FLGを送信する。ホストデバイス3は、図9に示すフォーマットの計測データを受信し、X軸角速度識別情報FLGの値によって、X軸角速度計測データGがX軸角速度検出信号SD1GX及びX軸角速度検出信号SD2GXのいずれに基づいて生成されたかを認識することができる。同様に、ホストデバイス3は、Y軸角速度識別情報FLGの値によって、Y軸角速度計測データGがY軸角速度検出信号SD1GY及びY軸角速度検出信号SD2GYのいずれに基づいて生成されたかを認識することができる。同様に、ホストデバイス3は、Z軸角速度識別情報FLGの値によって、Z軸角速度計測データGがZ軸角速度検出信号SD1GZ及びZ軸角速度検出信号SD2GZのいずれに基づいて生成されたかを認識することができる。
【0073】
1-3.処理装置の構成
次に、処理装置30の具体的な構成について説明する。図10は、処理装置30の構成例を示す図である。図10に示すように、処理装置30は、デジタルインターフェース回路31、処理回路32、ホストインターフェース回路33及びメモリー34を含む。
【0074】
デジタルインターフェース回路31は、慣性センサー10X,10Y,10Z及び慣性センサー20とのインターフェース処理を行う回路である。すなわち、デジタルインターフェース回路31は、インターフェース回路122X,122Y,122Z及びインターフェース回路272との間でマスターとしてのインターフェース処理を行う。デジタルインターフェース回路31は、端子TMCS1、端子TMCS2、端子TMCK、端子TMDO、端子TMDIを介してデジタルインターフェースバスBSに接続される。本実施形態では、デジタルインターフェース回路31は、インターフェース回路122X,122Y,122Z,272と同様に、SPIの通信規格のインターフェース処理を行う。ただし、デジタルインターフェース回路31は、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などのインターフェース処理を行ってもよい。デジタルインターフェースバスBS及びデジタルインターフェース回路31は、慣性センサー10X,10Y,10Z,20に対して、共通に設けられていてもよいし、慣性センサー10X,10Y,10Zと慣性センサー20とに対して、それぞれ別個に設けられていてもよい。
【0075】
ホストインターフェース回路33は、ホストデバイス3とのインターフェース処理を行う回路である。すなわち、ホストインターフェース回路33は、ホストデバイス3との間でスレーブとしてのインターフェース処理を行う。ホストインターフェース回路33は、端子THCS、端子THCK、端子THDO、端子THDIを介して、ホストデバイス3に対してSPIの通信規格のインターフェース処理を行う。ただし、ホストインターフェース回路33は、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などのインターフェース処理を行ってもよい。
【0076】
処理回路32は、デジタルインターフェース回路31やホストインターフェース回路33の制御処理、各種の演算処理等を行う。処理回路32は、レジスター部321と、検出信号取得回路322、判定回路323、演算回路324及び計測データ生成回路325を含む。処理回路32は、不揮発性のメモリー34に記憶されている不図示のプログラムを実行することにより、制御処理や演算処理を行ってもよい。
【0077】
レジスター部321は、各種のレジスターを含む。
【0078】
検出信号取得回路322は、端子TMR1Xからデータレディー信号DRDY1Xが入力される毎に、検出信号SD1Xの読み出しコマンドを、デジタルインターフェース回路31を介して慣性センサー10Xに出力し、慣性センサー10Xから出力される検出信号SD1Xを、デジタルインターフェース回路31を介して取得する。また、検出信号取得回路322は、端子TMR1Yからデータレディー信号DRDY1Yが入力される毎に、検出信号SD1Yの読み出しコマンドを、デジタルインターフェース回路31を介して慣性センサー10Yに出力し、慣性センサー10Yから出力される検出信号SD1Yを、デジタルインターフェース回路31を介して取得する。また、検出信号取得回路322は、端子TMR1Zからデータレディー信号DRDY1Zが入力される毎に、検出信号SD1Zの読み出しコマンドを、デジタルインターフェース回路31を介して慣性センサー10Zに出力し、慣性センサー10Zから出力される検出信号SD1Zを、デジタルインターフェース回路31を介して取得する。また、検出信号取得回路322は、端子TMR2からデータレディー信号DRDY2が入力される毎に、検出信号SD2の読み出しコマンドを、デジタルインターフェース回路31を介して慣性センサー20に出力し、慣性センサー20から出力される検出信号SD2を、デジタルインターフェース回路31を介して取得する。
【0079】
判定回路323は、不揮発性のメモリー34に記憶されている範囲情報341に基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3とのいずれに含まれるかを判定する。範囲情報341は、第1範囲R1及び第3範囲R3を規定する情報である。例えば、判定回路323は、検出信号SD2に含まれるX軸角速度検出信号SD2GXに基づいて、X軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3とのいずれに含まれるかを判定する。同様に、判定回路323は、範囲情報341に基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3とのいずれに含まれるかを判定する。例えば、判定回路323は、検出信号SD2に含まれるY軸角速度検出信号SD2GYに基づいて、Y軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3とのいずれに含まれるかを判定する。同様に、判定回路323は、範囲情報341に基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3とのいずれに含まれるかを判定する。例えば、判定回路323は、検出信号SD2に含まれるZ軸角速度検出信号SD2GZに基づいて、Z軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3とのいずれに含まれるかを判定する。
【0080】
演算回路324は、検出信号取得回路322が取得した検出信号SD1X,SD1Y,
SD1Z,SD2に対して、各種の演算を実行する。例えば、演算回路324は、端子TSENから入力される温度信号TMPOに基づいて、検出信号SD1Xに含まれるX軸角速度検出信号SD1GX、検出信号SD1Yに含まれるY軸角速度検出信号SD1GY及び検出信号SD1Zに含まれるZ軸角速度検出信号SD1GZに対する温度補正演算を行う。同様に、演算回路324は、端子TSENから入力される温度信号TMPOに基づいて、検出信号SD2に含まれる、X軸角速度検出信号SD2GX、Y軸角速度検出信号SD2GY、Z軸角速度検出信号SD2GZ、X軸加速度検出信号SD2AX、Y軸加速度検出信号SD2AY及びZ軸加速度検出信号SD2AZに対する温度補正演算を行う。また、演算回路324は、X軸角速度検出信号SD1GX、Y軸角速度検出信号SD1GY及びZ軸角速度検出信号SD1GZに対して、感度補正演算、オフセット補正演算、アラインメント補正演算等を行う。同様に、演算回路324は、X軸角速度検出信号SD2GX、Y軸角速度検出信号SD2GY、Z軸角速度検出信号SD2GZ、X軸加速度検出信号SD2AX、Y軸加速度検出信号SD2AY及びZ軸加速度検出信号SD2AZに対して、感度補正演算、オフセット補正演算、アラインメント補正演算等を行う。なお、演算回路324は、温度補正演算、感度補正演算、オフセット補正演算及びアラインメント補正演算の一部を行わなくてもよいし、他の補正演算を行ってもよい。
【0081】
演算回路324は、これらの一連の演算により、X軸角速度検出信号SD1GXに基づくX軸角速度計測データGX1、Y軸角速度検出信号SD1GYに基づくY軸角速度計測データGY1及びZ軸角速度検出信号SD1GZに基づくZ軸角速度計測データGZ1を生成する。同様に、演算回路324は、これらの一連の演算により、X軸角速度検出信号SD2GXに基づくX軸角速度計測データGX2、Y軸角速度検出信号SD2GYに基づくY軸角速度計測データGY2、Z軸角速度検出信号SD2GZに基づくZ軸角速度計測データGZ2、X軸加速度検出信号SD2AXに基づくX軸加速度計測データA、Y軸加速度検出信号SD2AYに基づくY軸加速度計測データA及びZ軸加速度検出信号SD2AZに基づくZ軸加速度計測データAを生成する。
【0082】
なお、演算回路324は、一連の演算を行う周期がデータレディー信号DRDY1X,DRDY1Y,DRDY1Zの各周期やデータレディー信号DRDY2の周期よりも長い場合、検出信号SD1X,SD1Y,SD1Z及び検出信号SD2の一部を間引くダウンサンプリング演算を行った後、各種の演算処理を行う。
【0083】
さらに、演算回路324は、X軸角速度計測データGX1,GX2の一方を選択してX軸角速度計測データGとする。例えば、演算回路324は、判定回路323が、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれると判定した場合はX軸角速度計測データGX1を選択し、X軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれると判定した場合はX軸角速度計測データGX2を選択する。そして、演算回路324は、X軸角速度計測データGX1,GX2のいずれを選択したかを示すX軸角速度識別情報FLGを生成する。同様に、演算回路324は、Y軸角速度計測データGY1,GY2の一方を選択してY軸角速度計測データGとする。例えば、演算回路324は、判定回路323が、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれると判定した場合はY軸角速度計測データGY1を選択し、Y軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれると判定した場合はY軸角速度計測データGY2を選択する。そして、演算回路324は、Y軸角速度計測データGY1,GY2のいずれを選択したかを示すY軸角速度識別情報FLGを生成する。同様に、演算回路324は、Z軸角速度計測データGZ1,GZ2の一方を選択してZ軸角速度計測データGとする。例えば、演算回路324は、判定回路323が、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれると判定した場合はZ軸角速度計測データGZ1を選択し、Z軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれると判定した場合はZ軸角速度計測データGZ2を選択する。そして、演算回路324は、Z軸角速度計測データGZ1,GZ2のいずれを選択したか
を示すZ軸角速度識別情報FLGを生成する。
【0084】
さらに、演算回路324は、X軸角速度計測データG、Y軸角速度計測データG、Z軸角速度計測データG、X軸加速度計測データA、Y軸加速度計測データA及びZ軸加速度計測データAに基づいて、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを算出する演算を行ってもよい。姿勢は、ロール、ピッチ、ヨーで表現されてもよいし、オイラー角やクォータニオンで表現されてもよい。
【0085】
演算回路324は、一連の演算が完了すると、データレディー信号DRDYを、端子THRを介してホストデバイス3に出力する。
【0086】
X軸角速度計測データG、Y軸角速度計測データG、Z軸角速度計測データG、X軸加速度計測データA、Y軸加速度計測データA及びZ軸加速度計測データAは、それぞれ、レジスター部321の互いに異なるレジスターに保存される。また、X軸角速度識別情報FLG、Y軸角速度識別情報FLG及びZ軸角速度識別情報FLGもレジスターに保存される。また、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度及び角度のデータも、それぞれ、レジスター部321の互いに異なるレジスターに保存される。ホストデバイス3は、互いに異なるアドレスを指定して、X軸角速度計測データG、Y軸角速度計測データG、Z軸角速度計測データG、X軸加速度計測データA、Y軸加速度計測データA及びZ軸加速度計測データAをそれぞれ読み出すこともできるし、複数の計測データをまとめて読み出すこともできる。
【0087】
計測データ生成回路325は、ホストデバイス3からの計測データの読み出しコマンドがホストインターフェース回路33を介して入力されると、コマンドで要求される計測データを生成する。そして、計測データ生成回路325は、生成した計測データを、ホストインターフェース回路33を介してホストデバイス3に出力する。計測データ生成回路325は、計測データにX軸角速度計測データGが含まれる場合、当該計測データにX軸角速度識別情報FLGを付加してホストデバイス3に出力する。同様に、計測データ生成回路325は、計測データにY軸角速度計測データGが含まれる場合、当該計測データにY軸角速度識別情報FLGを付加してホストデバイス3に出力する。同様に、計測データ生成回路325は、計測データにZ軸角速度計測データGが含まれる場合、当該計測データにZ軸角速度識別情報FLGを付加してホストデバイス3に出力する。
【0088】
なお、本実施形態において、慣性センサー10Xは「第1慣性センサー」の一例であり、X軸角速度検出信号SD1GXは「第1検出信号」の一例であり、X軸角速度検出信号SD2GXは「第2検出信号」の一例であり、X軸角速度計測データGは「計測データ」の一例であり、X軸角速度識別情報FLGは「センサー識別情報」の一例である。また、慣性センサー20は、「第2慣性センサー」の一例である。あるいは、慣性センサー10Yは「第1慣性センサー」の他の一例であり、Y軸角速度検出信号SD1GYは「第1検出信号」の他の一例であり、Y軸角速度検出信号SD2GYは「第2検出信号」の他の一例であり、Y軸角速度計測データGは「計測データ」の他の一例であり、Y軸角速度識別情報FLGは「センサー識別情報」の他の一例である。あるいは、慣性センサー10Zは「第1慣性センサー」の他の一例であり、Z軸角速度検出信号SD1GZは「第1検出信号」の他の一例であり、Z軸角速度検出信号SD2GZは「第2検出信号」の他の一例であり、Z軸角速度計測データGは「計測データ」の他の一例であり、Z軸角速度識別情報FLGは「センサー識別情報」の他の一例である。
【0089】
1-4.作用効果
以上に説明したように、第1実施形態の慣性センサーモジュール2では、処理装置30が、計測データとして、X軸角速度計測データG、Y軸角速度計測データG及びZ軸
角速度計測データGをそれぞれ出力するとともに、センサー識別情報として、X軸角速度識別情報FLG、Y軸角速度識別情報FLG及びZ軸角速度識別情報FLGをそれぞれ出力する。したがって、ホストデバイス3は、各センサー識別情報に基づいて、各計測データが慣性センサー10X,10Y,10Z及び慣性センサー20のいずれによって検出された角速度に基づいて生成されたかを特定することができる。
【0090】
また、第1実施形態の慣性センサーモジュール2では、処理装置30が、角速度が第1範囲R1に含まれるときは、第1範囲R1が検出可能範囲であって検出精度の高い慣性センサー10X,10Y,10Zからそれぞれ出力される検出信号SD1X,SD1Y,SD1Zに基づく計測データを出力する。一方、角速度が第2範囲R2に含まれ、かつ、第1範囲R1に含まれない第3範囲R3に含まれるときは、処理装置30が、第2範囲R2が検出可能範囲である慣性センサー20から出力される検出信号SD2に基づく計測データを出力する。したがって、第1実施形態の慣性センサーモジュール2によれば、処理装置30は、角速度が第1範囲R1に含まれるときは精度の高い計測データを出力し、角速度が第1範囲R1に含まれず、第3範囲R3に含まれるときも計測データを出力することができる。そして、ホストデバイス3は、各センサー識別情報に基づいて、各計測データが精度の高い計測データであるか否かを特定することができる。
【0091】
また、第1実施形態の慣性センサーモジュール2によれば、処理装置30が、角速度の検出範囲の広い慣性センサー20から出力される検出信号SD2に基づいて、角速度が第1範囲R1に含まれるか否かを判定するので、誤判定が生じるおそれが低減される。したがって、ホストデバイス3は、各センサー識別情報に基づいて各計測データが精度の高い計測データであるか否かを正しく特定し、各計測データに基づく適正な演算を行うことができる。
【0092】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態の慣性センサーモジュール2について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0093】
第1実施形態では、例えば、図9に示したように、慣性センサーモジュール2に加わる角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界である-ω又は+ωのときに、慣性センサー10X,10Y,10Zが検出する角速度と慣性センサー20が検出する角速度とが一致していない。そのため、慣性センサーモジュール2に加わる角速度が第1範囲R1と第3範囲R3の境界付近で変化すると、生成される角速度計測データG,G,Gが不連続に変化することになる。これに対して、第2実施形態では、慣性センサーモジュール2に加わる角速度が第1範囲R1と第3範囲R3の境界付近で変化した場合も角速度計測データG,G,Gが連続的に変化するように、補正関数を用いて角速度計測データGX2,GY2,GZ2を補正する。
【0094】
具体的には、第2実施形態では、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるとき、検出信号SD1Xに含まれるX軸角速度検出信号SD1GXに基づいてX軸角速度計測データGを生成する。また、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれるとき、補正関数に基づいて、検出信号SD2に含まれるX軸角速度検出信号SD2GXに基づく計測データを補正してX軸角速度計測データGを生成する。同様に、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるとき、検出信号SD1Yに含まれるY軸角速度検出信号SD1GYに基づいてY軸角速度計測データGを生成する。また、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれるとき、補正関数に基づいて、検出信号SD2に
含まれるY軸角速度検出信号SD2GYに基づく計測データを補正してY軸角速度計測データGを生成する。同様に、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第1範囲R1に含まれるとき、検出信号SD1Zに含まれるZ軸角速度検出信号SD1GZに基づいてZ軸角速度計測データGを生成する。また、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第3範囲R3に含まれるとき、補正関数に基づいて、検出信号SD2に含まれるZ軸角速度検出信号SD2GZに基づく計測データを補正してZ軸角速度計測データGを生成する。
【0095】
図11は、慣性センサー10X,10Y,10Z,20に対する角速度の入出力特性と補正関数との関係を概念的に示す図である。図11において、慣性センサー10X,10Y,10Z,20に対する角速度の入出力特性は、図8と同じである。図11の例では、第3範囲R3のうちの-ω2以上+ω1未満の範囲では、角速度計測データGX2,GY2,GZ2は低域補正関数に基づいて補正される。また、第3範囲R3のうちの+ω1よりも大きく+ω2以下の範囲では、角速度計測データGX2,GY2,GZ2は高域補正関数に基づいて補正される。
【0096】
図12は、図11に示した補正関数の作成方法について説明するための図である。例えば、慣性センサーモジュール2の検査工程において、まず、検査装置が、慣性センサーモジュール2に第1範囲R1に含まれる複数の値のX軸回りの角速度を順番に印加して、検出信号SD1Xに含まれるX軸角速度検出信号SD1GXの複数の値を取得する。図12において、5つの黒い丸が取得された複数の値に相当する。次に、検査装置は、取得したX軸角速度検出信号SD1GXの複数の値を、入力角速度の多項式で近似した近似関数を算出する。図12において、中域近似関数がこの近似関数に相当する。次に、検査装置は、算出した近似関数を用いて、第1範囲R1と第3範囲R3との境界におけるX軸角速度検出信号SD1GXの値を算出する。図12において、2つの白抜きの丸が算出された値に相当する。次に、検査装置は、慣性センサーモジュール2に第3範囲R3に含まれる複数の値のX軸回りの角速度を順番に印加して、検出信号SD2に含まれるX軸角速度検出信号SD2GXの複数の値を取得する。図12において、3つの白抜きの四角及び3つの白抜きの三角が、それぞれこの複数の値に相当する。次に、検査装置は、第1範囲R1と第3範囲R3との境界におけるX軸角速度検出信号SD1GXの値とX軸角速度検出信号SD2GXの値とが一致するように、取得したX軸角速度検出信号SD2GXの複数の値を、入力角速度の多項式で近似した近似関数を算出し、この近似関数を補正関数とする。図12において、低域近似関数及び高域近似関数がこの近似関数に相当し、それぞれ低域補正関数及び高域補正関数となる。なお、第3範囲R3における角速度の計測精度を向上させるために、補正関数は3次以上の多項式であることが好ましい。Y軸回りの角速度に関する補正関数及びZ軸回りの角速度に関する補正関数の作成手順も同様である。
【0097】
このように、第2実施形態では、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値であるときのX軸角速度検出信号SD1GXに基づくX軸角速度計測データGX1とX軸角速度検出信号SD2GXに基づくX軸角速度計測データGX2とが一致するように補正したX軸角速度計測データGX2を生成する。例えば、処理装置30は、第3範囲R3の角速度を変数とする3次以上の多項式に基づいて、X軸角速度計測データGX2を補正する。同様に、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値であるときのY軸角速度検出信号SD1GYに基づくY軸角速度計測データGY1とY軸角速度検出信号SD2GYに基づくY軸角速度計測データGY2とが一致するように補正したY軸角速度計測データGY2を生成する。例えば、処理装置30は、第3範囲R3の角速度を変数とする3次以上の多項式に基づいて、Y軸角速度計測データGY2を補正する。同様に、処理装置30は、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値であるときのZ軸角速度検出信号SD1G
Zに基づくZ軸角速度計測データGZ1とZ軸角速度検出信号SD2GZに基づくZ軸角速度計測データGZ2とが一致するように補正したZ軸角速度計測データGZ2を生成する。例えば、処理装置30は、第3範囲R3の角速度を変数とする3次以上の多項式に基づいて、Z軸角速度計測データGZ2を補正する。
【0098】
図13は、第2実施形態における処理装置30の構成例を示す図である。図13において、図10と同様の構成要素には同じ符号が付されている。図13に示すように、処理装置30は、デジタルインターフェース回路31、処理回路32、ホストインターフェース回路33及びメモリー34を含む。デジタルインターフェース回路31及びホストインターフェース回路33の機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0099】
処理回路32は、レジスター部321と、検出信号取得回路322、判定回路323、演算回路324、計測データ生成回路325及び補正回路326を含む。レジスター部321と、検出信号取得回路322、判定回路323、演算回路324及び計測データ生成回路325の機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0100】
補正回路326は、不揮発性のメモリー34に記憶されている補正情報342に基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるX軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値であるときのX軸角速度検出信号SD1GXに基づくX軸角速度計測データGX1とX軸角速度検出信号SD2GXに基づくX軸角速度計測データGX2とが一致するように補正したX軸角速度計測データGX2を生成する。補正情報342は、例えば、補正関数の多項式の各係数値であってもよいし、角速度と補正値との対応テーブルであってもよい。例えば、処理装置30は、第3範囲R3の角速度を変数とする3次以上の多項式に基づいて、X軸角速度計測データGX2を補正する。同様に、補正回路326は、補正情報342に基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるY軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値であるときのY軸角速度検出信号SD1GYに基づくY軸角速度計測データGY1とY軸角速度検出信号SD2GYに基づくY軸角速度計測データGY2とが一致するように補正したY軸角速度計測データGY2を生成する。例えば、処理装置30は、第3範囲R3の角速度を変数とする3次以上の多項式に基づいて、Y軸角速度計測データGY2を補正する。同様に、補正回路326は、補正情報342に基づいて、慣性センサーモジュール2に加わるZ軸回りの角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値であるときのZ軸角速度検出信号SD1GZに基づくZ軸角速度計測データGZ1とZ軸角速度検出信号SD2GZに基づくZ軸角速度計測データGZ2とが一致するように補正したZ軸角速度計測データGZ2を生成する。例えば、処理装置30は、第3範囲R3の角速度を変数とする3次以上の多項式に基づいて、Z軸角速度計測データGZ2を補正する。
【0101】
なお、本実施形態において、慣性センサー10Xは「第1慣性センサー」の一例であり、X軸角速度検出信号SD1GXは「第1検出信号」の一例であり、X軸角速度検出信号SD2GXは「第2検出信号」の一例であり、X軸角速度計測データGは「計測データ」の一例であり、X軸角速度識別情報FLGは「センサー識別情報」の一例である。また、慣性センサー20は、「第2慣性センサー」の一例である。あるいは、慣性センサー10Yは「第1慣性センサー」の他の一例であり、Y軸角速度検出信号SD1GYは「第1検出信号」の他の一例であり、Y軸角速度検出信号SD2GYは「第2検出信号」の他の一例であり、Y軸角速度計測データGは「計測データ」の他の一例であり、Y軸角速度識別情報FLGは「センサー識別情報」の他の一例である。あるいは、慣性センサー10Zは「第1慣性センサー」の他の一例であり、Z軸角速度検出信号SD1GZは「第1検出信号」の他の一例であり、Z軸角速度検出信号SD2GZは「第2検出信号」の他の一例であり、Z軸角速度計測データGは「計測データ」の他の一例であり、Z軸角速度識別情報FLGは「センサー識別情報」の他の一例である。
【0102】
以上に説明した第2実施形態の慣性センサーモジュール2は、第1実施形態の慣性センサーモジュール2と同様の効果を奏する。
【0103】
さらに、第2実施形態の慣性センサーモジュール2によれば、処理装置30が、角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値であるときの角速度計測データGX1,GY1,GZ1と角速度計測データGX2,GY2,GZ2とがそれぞれ一致するように補正した角速度計測データGX2,GY2,GZ2を生成するので、角速度が第1範囲R1と第3範囲R3との境界値付近で変化する場合でも連続的に値が変化する角速度計測データG,G,Gを出力することができる。特に、第2実施形態の慣性センサーモジュール2によれば、処理装置30は、第3範囲R3の角速度を変数とする3次以上の多項式に基づいて、角速度計測データGX2,GY2,GZ2を精度よく補正することができる。
【0104】
3.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0105】
例えば、上記の各実施形態では、第1慣性センサーはそれぞれ角速度センサーである慣性センサー10X,10Y,10Zであり、第2慣性センサーは6Dofセンサーである慣性センサー20であるが、第1慣性センサー及び第2慣性センサーは、これに限られない。第1慣性センサーと第2慣性センサーとが少なくとも1つの同じ軸について同じ種類の物理量を検出可能であればよい。第1慣性センサー及び第2慣性センサーが検出する物理量は、角速度以外にも、例えば、加速度、角加速度、速度等であってもよい。
【0106】
また、上記の各実施形態では、それぞれ第1慣性センサーである慣性センサー10X,10Y,10Zは1軸の物理量を検出しているが、第1慣性センサーは、2軸以上の物理量を検出してもよい。また、上記の各実施形態では、第2慣性センサーである慣性センサー20は6軸の物理量を検出しているが、第2慣性センサーは、1軸、2軸、3軸、4軸、5軸又は7軸以上の物理量を検出してもよい。
【0107】
また、上記の各実施形態では、それぞれ第1慣性センサーである慣性センサー10X,10Y,10Zが相対的に検出精度の高い水晶センサーであり、第2慣性センサーである慣性センサー20が相対的に検出範囲の広いシリコンMEMSセンサーである例を挙げたが、第1慣性センサー及び第2慣性センサーの種類はこれに限られない。例えば、第1慣性センサーが相対的に検出精度の高いFOGセンサーであり、第2慣性センサーが相対的に検出範囲の広いシリコンMEMSセンサーであってもよい。FOGは、Fiber Optic Gyroscopeの略である。
【0108】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0109】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0110】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0111】
慣性センサーモジュールの一態様は、
前記慣性センサーモジュールに加わる第1範囲の物理量を検出し、第1検出信号を出力する第1慣性センサーと、
前記慣性センサーモジュールに加わる前記第1範囲よりも広い第2範囲の前記物理量を検出し、第2検出信号を出力する第2慣性センサーと、
前記第1検出信号及び前記第2検出信号が入力され、前記第1検出信号及び前記第2検出信号の一方に基づいて計測データを生成し、生成した前記計測データと、前記計測データが前記第1検出信号及び前記第2検出信号のいずれに基づいて生成されたかを示すセンサー識別情報とを出力する処理装置と、
を備える。
【0112】
この慣性センサーモジュールによれば、計測データとともにセンサー識別情報を出力するので、計測データが第1慣性センサー及び第2慣性センサーのいずれによって検出された物理量に基づいて生成されたかを外部から特定することができる。
【0113】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記第2範囲は、前記第1範囲と、前記第1範囲以外の範囲である第3範囲とを含み、
前記処理装置は、前記物理量が前記第1範囲に含まれるとき、前記第1検出信号に基づいて前記計測データを生成し、前記物理量が前記第3範囲に含まれるとき、前記第2検出信号に基づいて前記計測データを生成してもよい。
【0114】
この慣性センサーモジュールによれば、物理量が第1範囲に含まれるときは検出範囲の狭い第1慣性センサーから出力される第1検出信号に基づく計測データを出力し、物理量が第2範囲に含まれ、かつ、第1範囲に含まれないときは検出範囲の広い第2慣性センサーから出力される第2検出信号に基づく計測データを出力することができる。
【0115】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記処理装置は、前記第2検出信号に基づいて、前記物理量が前記第1範囲に含まれるか否かを判定してもよい。
【0116】
この慣性センサーモジュールによれば、検出範囲の広い第2慣性センサーから出力される第2検出信号に基づいて、物理量が前記第1範囲に含まれるか否かを判定するので、誤判定が生じるおそれが低減される。
【0117】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記処理装置は、前記物理量が前記第1範囲と前記第3範囲との境界値であるときの前記第1検出信号に基づく前記計測データと前記第2検出信号に基づく前記計測データとが一致するように補正した前記第2検出信号に基づく前記計測データを生成してもよい。
【0118】
この慣性センサーモジュールによれば、物理量が第1範囲と第3範囲との境界値付近で変化する場合でも連続的に値が変化する計測データを生成することができる。
【0119】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記処理装置は、前記第3範囲の前記物理量を変数とする3次以上の多項式に基づいて、前記第2検出信号に基づく前記計測データを補正してもよい。
【0120】
この慣性センサーモジュールによれば、物理量が第3範囲に含まれるときの計測データを精度よく補正することができる。
【符号の説明】
【0121】
1…慣性計測システム、2…慣性センサーモジュール、3…ホストデバイス、10X,10Y,10Z…慣性センサー、11X,11Y,11Z…センサー素子、12X,12Y,12Z…処理回路、20…慣性センサー、21,22,23,24,25,26…センサー素子、27…処理回路、30…処理装置、31…デジタルインターフェース回路、32…処理回路、33…ホストインターフェース回路、34…メモリー、40…温度センサー、51…アウターケース、52…切欠き穴、53…第1凹部、53a…底部、54…第2凹部、54a…受け部、55…収納部、60…接合部材、65…回路基板、65a…第1面、65b…第2面、66…コネクター、70…インナーケース、71…開口部、73…第3凹部、80…ネジ、81…被装着体の被装着面、121X,121Y,121Z…検出回路、122X,122Y,122Z…インターフェース回路、271…検出回路、272…インターフェース回路、321…レジスター部、322…検出信号取得回路、323…判定回路、324…演算回路、325…計測データ生成回路、326…補正回路、341…範囲情報、342…補正情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13